(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】伸縮アクチュエータ及び駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20230719BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230719BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20230719BHJP
F16H 57/028 20120101ALI20230719BHJP
B62D 7/08 20060101ALI20230719BHJP
B62D 5/04 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/22 Z
F16H1/16 Z
F16H57/028
B62D7/08 Z
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2019145934
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立脇 修
(72)【発明者】
【氏名】篠原 茂雄
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-145914(JP,A)
【文献】特開2004-122932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に取り付けられる取付部を備えるハウジングと、
前記ハウジングに支持される第1軸受と、
前記第1軸受に支持されるねじ軸、及び前記ねじ軸が貫通するナットを備えるボールねじと、
前記ねじ軸の回転によって前記ナットと共に前記ねじ軸の軸方向に移動するロッドと、
前記ハウジングに支持されるモータと、
前記モータと前記ねじ軸との間に配置される減速機構と、
を備え
前記第1軸受の全ては、前記減速機構に対して前記取付部とは反対側に配置され
、
前記減速機構は、前記モータの回転軸を中心に回転するウォームと、前記ウォームと噛み合い且つ前記ねじ軸と接続されるウォームホイールと、を備える
伸縮アクチュエータ。
【請求項2】
前記ウォームを支持する第2軸受を備え、
前記ハウジングは、中空状の第1ハウジングボディと、前記取付部を備え且つ前記第1ハウジングボディに固定される第2ハウジングボディと、を備え、
前記第1軸受及び前記第2軸受の両方は、前記第1ハウジングボディに取り付けられる
請求項
1に記載の伸縮アクチュエータ。
【請求項3】
前記モータの回転軸は、鉛直方向に沿っている
請求項
1又は
2に記載の伸縮アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の伸縮アクチュエータである第1伸縮アクチュエータ及び第2伸縮アクチュエータを備え、
前記第1伸縮アクチュエータは、一対の車輪の一方と接続され、
前記第2伸縮アクチュエータは、前記一対の車輪の他方と接続され、
前記第2伸縮アクチュエータは、前記一対の車輪の間の鉛直平面に関して、前記第1伸縮アクチュエータと面対称になるように配置される
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮アクチュエータ及び駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に接続されたロッドを押し引きすることよって車輪の向きを変える伸縮アクチュエータが知られている。このような伸縮アクチュエータの例が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1及び特許文献2に記載されているように、モータの回転力がウォーム、ウォームホイール、及びボールねじによってロッドの往復運動に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-92891号公報
【文献】特開2017-15183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2の伸縮アクチュエータは、両端で支持される。このため、モータ及び減速機構の重量によって、ボールねじが撓む可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ボールねじの撓みを抑制できる伸縮アクチュエータ及び駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る伸縮アクチュエータは、支持部材に取り付けられる取付部を備えるハウジングと、前記ハウジングに支持される第1軸受と、前記第1軸受に支持されるねじ軸、及び前記ねじ軸が貫通するナットを備えるボールねじと、前記ねじ軸の回転によって前記ナットと共に前記ねじ軸の軸方向に移動するロッドと、前記ハウジングに支持されるモータと、前記モータと前記ねじ軸との間に配置される減速機構と、を備え前記第1軸受の全ては、前記減速機構に対して前記取付部とは反対側に配置される。
【0007】
これにより、ねじ軸を支持する第1軸受が減速機構よりも取付部側にないので、取付部を減速機構に近付けることができる。すなわち、支持部材から減速機構までの距離を小さくできる。減速機構及びモータの重量によってハウジングに加わる荷重の作用点が、支持部材と近くなる。このため、ハウジングからボールねじに加わる鉛直方向の荷重が小さくなる。したがって、本開示の伸縮アクチュエータは、ボールねじの撓みを抑制できる。
【0008】
上記の伸縮アクチュエータの望ましい態様として、前記減速機構は、前記モータの回転軸を中心に回転するウォームと、前記ウォームと噛み合い且つ前記ねじ軸と接続されるウォームホイールと、を備える。
【0009】
これにより、伸縮アクチュエータは、モータが生成した駆動トルクの方向を変換すると同時に駆動トルクを増幅できる。減速機構に山歯歯車又は斜歯歯車等を用いる場合と比較して、本開示の伸縮アクチュエータは、小型化できる。
【0010】
上記の伸縮アクチュエータの望ましい態様として、前記ウォームを支持する第2軸受を備え、前記ハウジングは、中空状の第1ハウジングボディと、前記取付部を備え且つ前記第1ハウジングボディに固定される第2ハウジングボディと、を備え、前記第1軸受及び前記第2軸受の両方は、前記第1ハウジングボディに取り付けられる。
【0011】
仮に第1軸受及び第2軸受が異なる部材に取り付けられる場合、第1軸受及び第2軸受の相対的な位置が、第1ハウジングボディ及び第2ハウジングボディを固定する固定部材(例えばボルト)が弾性伸縮する分ずれる可能性がある。この場合、ウォームの回転軸とウォームホイールの回転軸との距離が変動する。すなわち、ウォーム及びウォームホイールの噛み合いがずれる可能性がある。これにより、減速機構において、振動又は異常磨耗が生じることがある。これに対して、本開示においては、第1軸受及び第2軸受の両方は、第1ハウジングボディに取り付けられる。このため、ウォームの回転軸とウォームホイールの回転軸との距離の変動が抑制される。すなわち、ウォームの回転軸とウォームホイールの回転軸との間のずれが抑制される。したがって、本開示の伸縮アクチュエータは、減速機構における振動又は異常磨耗を抑制できる。
【0012】
上記の伸縮アクチュエータの望ましい態様として、前記モータの回転軸は、鉛直方向に沿っている。
【0013】
ねじ軸31と接続されたウォームホイールには、ボールねじ及びロッドの重量によって、少なからず鉛直方向への変位が生じる。仮に、モータの回転軸が水平である場合(ウォームがウォームホイールの上側又は下側に配置される場合)、ウォームホイールに鉛直方向の変位が生じると、ウォームとウォームホイールとの間のバックラッシュが変化する。このため、ウォームとウォームホイールとの噛み合い位置がずれる。その結果、減速機構において、振動又は異常磨耗が生じる可能性がある。これに対して、本開示においては、モータの回転軸が鉛直方向に沿っている。これにより、ウォームホイールに鉛直方向の変位が生じた時に、ウォームとウォームホイールとの噛み合い位置はウォームの軸方向に移動するものの、ウォームとウォームホイールとの間のバックラッシュの変化が生じにくい。したがって、本開示の伸縮アクチュエータは、減速機構における振動又は異常磨耗を抑制できる。
【0014】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る駆動装置は、上記の伸縮アクチュエータである第1伸縮アクチュエータ及び第2伸縮アクチュエータを備え、前記第1伸縮アクチュエータは、一対の車輪の一方と接続され、前記第2伸縮アクチュエータは、前記一対の車輪の他方と接続され、前記第2伸縮アクチュエータは、前記一対の車輪の間の鉛直平面に関して、前記第1伸縮アクチュエータと面対称になるように配置される。
【0015】
これにより、本開示の駆動装置は、車両の幅方向における重量バランスを向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の伸縮アクチュエータ及び駆動装置によれば、ボールねじの撓みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態の車両用操向装置の模式図である。
【
図2】
図2は、車輪の向きを変えるための駆動装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1伸縮アクチュエータ及び第2伸縮アクチュエータの配置を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1伸縮アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態の車両用操向装置の模式図である。
図2は、車輪の向きを変えるための駆動装置の斜視図である。
図3は、第1伸縮アクチュエータ及び第2伸縮アクチュエータの配置を示す模式図である。
図1に示すステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)式の車両用操向装置100は、ハンドル1の操作に基づき、電気信号によって一対の車輪8L及び車輪8Rを操作する装置である。車両用操向装置100は、SBWシステムとも呼ばれる。
図1に示されるように、車両用操向装置100は、反力装置60と、駆動装置70と、コントロールユニット(ECU)50と、を備える。
【0020】
反力装置60は、トルクセンサ10と、舵角センサ14と、反力用モータ61と、減速機構3と、角度センサ74と、を備える。反力装置60は、ハンドル1のコラム軸2に設けられている。トルクセンサ10は、例えばトーションバーを備え、ハンドル1の操舵トルクTsを検出する。舵角センサ14は、操舵角θhを検出する。反力用モータ61は、反力トルクを生成する。減速機構3は、反力トルクを増幅する。角度センサ74は、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。
【0021】
駆動装置70は、車輪8L及び車輪8Rの向きを変えるための装置である。駆動装置70は、第1伸縮アクチュエータ71aと、第2伸縮アクチュエータ71bと、モータ制御部72aと、モータ制御部72bと、ナックルアーム6aと、ナックルアーム6bと、連結ロッド76と、を備える。
【0022】
第1伸縮アクチュエータ71aは、モータ73と、減速機構80と、角度センサ75と、を備える。第1伸縮アクチュエータ71aは、車輪8Lと接続される。モータ73は、車輪8L及び車輪8Rを操作するための駆動トルクを生成する。減速機構80は、駆動トルクを増幅する。角度センサ75は、モータ73のモータ角θtを検出する。
【0023】
第2伸縮アクチュエータ71bは、第1伸縮アクチュエータ71aが備える構成と同じ構成を備える。第2伸縮アクチュエータ71bは、車輪8Rと接続される。
図3に示すように、第2伸縮アクチュエータ71bは、車輪8L及び車輪8Rの間の鉛直平面Pに関して、第1伸縮アクチュエータ71aと面対称になるように配置される。鉛直平面Pは、水平面に対して直交する平面である。鉛直平面Pは、車輪8Lと車輪8Rの中心同士を結ぶ線分を二等分する平面である。
【0024】
モータ制御部72aは、第1伸縮アクチュエータ71aのモータ73を制御する装置である。モータ制御部72bは、第2伸縮アクチュエータ71bのモータ73を制御する装置である。モータ制御部72a及びモータ制御部72bは、コントロールユニット50と電気的に接続されている。
【0025】
ナックルアーム6aは、第1伸縮アクチュエータ71aと接続される。ナックルアーム6aは、自在継手771と、自在継手772と、ピボット773と、を備える。自在継手771及び自在継手772は、例えばボール自在継手である。ピボット773は、自在継手771と自在継手772との間に配置される。ピボット773は、シャーシにバネを介して支持されるアクスルに取り付けられる。ナックルアーム6aは、自在継手771を介して第1伸縮アクチュエータ71aと接続される。ナックルアーム6aは、自在継手772を介して連結ロッド76と接続される。ナックルアーム6aは、ピボット773を介してハブユニット7aと接続される。第1伸縮アクチュエータ71aによってナックルアーム6aが押し引きされることによって、ナックルアーム6aがピボット773を中心に回転し、車輪8Lの向きが変化する。
【0026】
ナックルアーム6bは、第2伸縮アクチュエータ71bと接続される。ナックルアーム6bは、自在継手774と、自在継手775と、ピボット776と、を備える。自在継手774及び自在継手775は、例えばボール自在継手である。ピボット776は、自在継手774と自在継手775との間に配置される。ピボット776は、シャーシにバネを介して支持されるアクスルに取り付けられる。ナックルアーム6bは、自在継手774を介して第2伸縮アクチュエータ71bと接続される。ナックルアーム6bは、自在継手775を介して連結ロッド76と接続される。ナックルアーム6bは、ピボット776を介してハブユニット7bと接続される。第2伸縮アクチュエータ71bによってナックルアーム6bが押し引きされることによって、ナックルアーム6bがピボット776を中心に回転し、車輪8Rの向きが変化する。なお、ナックルアーム6a及びナックルアーム6bが備える上述した自在継手は、必ずしもボール自在継手でなくてもよく、例えば、ピロボールや弾性ブッシュであってもよい。
【0027】
連結ロッド76は、ナックルアーム6aとナックルアーム6bとを連結する。連結ロッド76は、第1伸縮アクチュエータ71aからナックルアーム6aに加わる力をナックルアーム6bに伝達する。又は、連結ロッド76は、第2伸縮アクチュエータ71bからナックルアーム6bに加わる力をナックルアーム6aに伝達する。このため、仮に第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bの一方が正常に動作しない場合でも、車輪8L及び車輪8Rの向きを変化させることが可能である。連結ロッド76は、
図3に示すように、ピボット773及びピボット776に対して、自在継手771及び自在継手774とは反対側に配置される。なお、連結ロッド76は、ピボット773及びピボット776に対して、自在継手771及び自在継手774がある側に配置されてもよい。
【0028】
コントロールユニット50は、操舵角θh、モータ角θt、及び車速センサ12が検出する車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及びモータ73を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
【0029】
コントロールユニット50には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット50は、操舵トルクTsと車速Vsとに基づいて電流指令値の演算を行い、反力用モータ61及びモータ73に供給する電流を制御する。
【0030】
コントロールユニット50には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40等の車載ネットワークが接続されている。また、コントロールユニット50には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
【0031】
コントロールユニット50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、インターフェース(I/F)、A/D(Analog/Digital)変換器、PWM(Pulse Width Modulation)コントローラ等を備える。コントロールユニット50が備える上述した構成がバスで接続されている。
【0032】
図4は、第1伸縮アクチュエータの断面図である。
図5は、
図4の拡大図である。
図6は、
図4のA-A断面図である。
図4から
図6に示すように、第1伸縮アクチュエータ71aは、ハウジング90と、ガイドチューブ38と、ブッシュ39と、第1軸受21と、ボールねじ30と、ロッド35と、モータ73と、2つの第2軸受(第2軸受22及び第2軸受23)と、減速機構80と、を備える。なお、第2伸縮アクチュエータ71bは第1伸縮アクチュエータ71aが備える構成と同じ構成を備えるので、第2伸縮アクチュエータ71bに関する説明は省略する。
【0033】
ハウジング90は、
図2に示す支持部材300に取り付けられる。支持部材300は、ハウジング90が支持部材300に対して回転できるように、ハウジング90を支持する。支持部材300は、シャーシに固定された部材である。
図4に示すように、ハウジング90は、第1ハウジングボディ91と、第2ハウジングボディ92と、を備える。第1ハウジングボディ91は、中空状の部材である。第1ハウジングボディ91は、第1軸受21、ボールねじ30の一部、及び減速機構80を内蔵する。第2ハウジングボディ92は、第1ハウジングボディ91の開口を塞ぐ部材である。第2ハウジングボディ92は、例えばボルト等の固定部材によって第1ハウジングボディ91に固定される。第2ハウジングボディ92は、支持部材300に取り付けられる取付部921を備える。取付部921は、連結部材を取り付けるための孔を備える。ハウジング90は、取付部921の孔を中心として回転でできる。すなわち、ハウジング90は、Z軸と平行な回転軸を中心として回転できる。
【0034】
以下の説明においては、XYZ直交座標軸が用いられる。X軸は、ボールねじ30のねじ軸31の回転軸R1と平行である。Y軸は、モータ73の回転軸R2と平行である。Z軸は、X軸及びY軸の両方に対して直交する。X軸と平行な方向は、単にX方向と記載される。Y軸と平行な方向は、単にY方向と記載される。Z軸と平行な方向は、単にZ方向と記載される。第2ハウジングボディ92に対して第1ハウジングボディ91がある方向を+X方向とする。第1ハウジングボディ91に対してモータ73がある方向を+Y方向とする。+X方向を前とし且つ+Y方向を上とした場合の右方向を、+Z方向とする。
【0035】
図4に示すように、ガイドチューブ38は、ハウジング90に取り付けられる。ガイドチューブ38は、第1ハウジングボディ91に対して+X方向に配置される。ガイドチューブ38は、例えばボルト等の固定部材によって第1ハウジングボディ91に固定される。ガイドチューブ38は、筒状の部材である。ガイドチューブ38は、X方向に延びている。ガイドチューブ38の長手方向は、X方向である。
【0036】
図4に示すように、ブッシュ39は、ガイドチューブ38の内側に配置される。ブッシュ39は、ガイドチューブ38の+X方向の端部に配置される。ブッシュ39は、円筒状の部材である。ブッシュ39は、すべり軸受とも呼ばれる。
【0037】
図5に示すように、第1軸受21は、ハウジング90に支持される。第1軸受21は、第1ハウジングボディ91の内側に配置される。例えば、第1軸受21は、第1ハウジングボディ91の内周面に圧入される。第1軸受21は、ロックナット211によって位置決めされる。第1軸受21は、複列アンギュラ玉軸受である。第1軸受21の全ては、減速機構80に対して+X方向に配置される。第1軸受21の全ては、モータ73の回転軸R2に対して+X方向に配置される。
【0038】
図4に示すように、ボールねじ30は、ねじ軸31と、ナット33と、を備える。ねじ軸31は、第1軸受21に支持される。ねじ軸31は、第1軸受21及びナット33を貫通する。ねじ軸31の-X方向の端部は、第1ハウジングボディ91の内側に配置される。ねじ軸31の+X方向の端部は、ガイドチューブ38の内側に配置される。ねじ軸31は、外周面に螺旋状のねじ溝を備える。ナット33は、ガイドチューブ38の内側に配置される。ナット33は、内周面に螺旋状のねじ溝を備える。ねじ軸31のねじ溝とナット33のねじ溝とで形成される転動路には、複数の転動体が配置される。複数の転動体は、転動路を無限循環する。
【0039】
ボールねじ30は、回転運動を直進運動に変換する装置である。ねじ軸31が回転すると、ナット33がX方向に移動する。仮にナットが回転し且つねじ軸が移動する方式が採用される場合、ねじ軸の最大移動量に等しい長さを有するスペースがハウジング90に必要となる。これに対して、本実施形態ではねじ軸31が移動しないので、ねじ軸31を収納するためのハウジング90内のスペースが小さくすることが可能である。また、ナットが回転し且つねじ軸が移動する方式と比較して、移動する部材の直径が大きくなるので、移動する部材の座屈が抑制される。すなわち、ねじ軸31よりも大きな直径を有するナット33及びロッド35が移動するので、ナット33及びロッド35に座屈が生じにくい。
【0040】
走行時の路面変化等によって、車両のサスペンションが作動すると、第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bにY軸又はZ軸を中心とした曲げが作用する。第1伸縮アクチュエータ71aは、高い曲げ剛性を有することが望ましい。第1伸縮アクチュエータ71aの曲げ剛性を高める方法としては、ボールねじ30及び第1軸受21の曲げ剛性を高くする方法と、ガイドチューブ38の曲げ剛性を高くする方法が挙げられる。ボールねじ30及び第1軸受21の曲げ剛性を高く場合、ボールねじ30における摩擦の増加、摩擦変動の増加、及び振動の発生等が生じる。これに対して、ガイドチューブ38の曲げ剛性を高くする場合、第1伸縮アクチュエータ71aの曲げ剛性を高くでき、且つボールねじ30における摩擦の増加、摩擦変動の増加、及び振動の発生等を抑制できる。
【0041】
図4に示すように、ロッド35は、ナット33と接続される。ロッド35は、ねじ軸31の回転によってナット33と共にX方向に移動する。ロッド35の少なくとも一部は、ガイドチューブ38の内側に配置される。ロッド35は、筒状の部材である。ロッド35の内側に、ねじ軸31の一部が配置される。ロッド35は、ブッシュ39によって支持される。ロッド35の外周面が、ブッシュ39の内周面に接する。ナット33の移動に伴って、ロッド35の+X方向の端部が、ガイドチューブ38から突出する。ロッド35は、+X方向の端部に連結部351を備える。連結部351は、
図3に示す自在継手771を介して、ナックルアーム6aに接続される。
図3に示す自在継手771の中心と
図4に示す取付部921の孔を中心とを通る直線は、回転軸R1と重なる。このため、第1伸縮アクチュエータ71aは、ロッド35が移動する時に生じる曲げモーメントを抑制できる。
【0042】
モータ73は、ハウジング90に支持される。モータ73は、回転軸R2が鉛直方向に沿うように配置される。すなわち、Y軸は、鉛直方向と平行である。回転軸R2は、ねじ軸31の回転軸R1に直交している。
図6に示すように、モータ73は、ステータ731と、ロータ733と、シャフト735と、を備える。ステータ731に設けられるコイルに電力が供給されると、ロータ733が回転軸R2を中心に回転する。シャフト735は、ロータ733と接続されている。シャフト735は、ロータ733と共に回転軸R2を中心に回転する。
【0043】
図6に示すように、第2軸受22及び第2軸受23は、ハウジング90に支持される。第2軸受22及び第2軸受23は、第1ハウジングボディ91の内側に配置される。例えば、第2軸受22及び第2軸受23は、第1ハウジングボディ91の内周面に圧入される。第2軸受22及び第2軸受23は、ウォーム81が回転軸R2を中心に回転できるように、ウォーム81を支持する。第2軸受22は、回転軸R1に対して、-Y方向に配置される。第2軸受23は、回転軸R1に対して、+Y方向に配置される。
【0044】
減速機構80は、モータ73が生成した駆動トルクを増幅してねじ軸31に伝えるための装置である。
図6に示すように、減速機構80は、ウォーム81と、ウォームホイール82と、を備える。ウォーム81及びウォームホイール82は、第1ハウジングボディ91の内側に配置され、第1ハウジングボディ91に支持される。ウォーム81は、モータ73のシャフト735と接続される。ウォーム81は、シャフト735と共に回転軸R2を中心に回転する。ウォームホイール82は、ねじ軸31と接続される。ウォームホイール82は、ねじ軸31と共に回転軸R1を中心に回転する。ウォームホイール82は、ウォーム81と噛み合う。ウォームホイール82の外周面に設けられる複数の歯が、ウォーム81の外周面に設けられる複数の歯と噛み合う。また、
図5に示すように、第1軸受21の全ては、ウォームホイール82に対して+X方向に配置される。
【0045】
なお、駆動装置70は、必ずしも第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bを備えていなくてもよい。駆動装置70は、第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bの一方のみを備えていてもよい。連結ロッド76が設けられているので、1つの伸縮アクチュエータによって車輪8L及び車輪8Rの両方を操作することが可能である。
【0046】
減速機構80は、必ずしもウォーム81及びウォームホイール82を備えていなくてもよい。例えば、減速機構80は、直径の異なる複数の複数の歯車を備えていてもよい。例えば、減速機構80は、直径の異なる複数のプーリ、及び複数のプーリに巻きかけられるベルトを備えていてもよい。
【0047】
第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bは、必ずしも車輪の向きを変えるための駆動装置に用いられなくてもよい。第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bは、物を移動させるための装置に広く適用できる。
【0048】
以上で説明したように、本実施形態の伸縮アクチュエータ(第1伸縮アクチュエータ71a又は第2伸縮アクチュエータ71b)は、ハウジング90と、第1軸受21と、ボールねじ30と、ロッド35と、モータ73と、減速機構80と、を備える。ハウジング90は、支持部材300に取り付けられる取付部921を備える。第1軸受21は、ハウジング90に支持される。ボールねじ30は、第1軸受21に支持されるねじ軸31、及びねじ軸31が貫通するナット33を備える。ロッド35は、ねじ軸31の回転によってナット33と共にねじ軸31の軸方向(X方向)に移動する。モータ73は、ハウジング90に支持される。減速機構80は、モータ73とねじ軸31との間に配置される。第1軸受21の全ては、減速機構80に対して取付部921とは反対側に配置される。
【0049】
これにより、ねじ軸31を支持する第1軸受21が減速機構80よりも取付部921側にないので、取付部921を減速機構80に近付けることができる。すなわち、支持部材300から減速機構80までの距離を小さくできる。減速機構80及びモータ73の重量によってハウジング90に加わる荷重の作用点が、支持部材300と近くなる。このため、ハウジング90からボールねじ30に加わる鉛直方向の荷重が小さくなる。したがって、本実施形態の伸縮アクチュエータは、ボールねじ30の撓みを抑制できる。その結果、本実施形態の伸縮アクチュエータは、より滑らかにロッド35を移動させることができる。
【0050】
本実施形態の伸縮アクチュエータにおいて、減速機構80は、モータ73の回転軸R2を中心に回転するウォーム81と、ウォーム81と噛み合い且つねじ軸31と接続されるウォームホイール82と、を備える。
【0051】
これにより、伸縮アクチュエータは、モータ73が生成した駆動トルクの方向を変換すると同時に駆動トルクを増幅できる。減速機構に山歯歯車又は斜歯歯車等を用いる場合と比較して、本実施形態の伸縮アクチュエータは、小型化できる。
【0052】
本実施形態の伸縮アクチュエータは、ウォーム81を支持する第2軸受22(第2軸受23)を備える。ハウジング90は、中空状の第1ハウジングボディ91と、取付部921を備え且つ第1ハウジングボディ91に固定される第2ハウジングボディ92と、を備える。第1軸受21及び第2軸受22(第2軸受23)の両方は、第1ハウジングボディ91に取り付けられる。
【0053】
仮に第1軸受21及び第2軸受22(第2軸受23)が異なる部材に取り付けられる場合、第1軸受21及び第2軸受22(第2軸受23)の相対的な位置が、第1ハウジングボディ91及び第2ハウジングボディ92を固定する固定部材(例えばボルト)が弾性伸縮する分ずれる可能性がある。この場合、ウォーム81の回転軸とウォームホイール82の回転軸との距離が変動する。すなわち、ウォーム81及びウォームホイール82の噛み合いがずれる可能性がある。これにより、減速機構80において、振動又は異常磨耗が生じることがある。これに対して、本実施形態においては、第1軸受21及び第2軸受22(第2軸受23)の両方は、第1ハウジングボディ91に取り付けられる。このため、ウォーム81の回転軸とウォームホイール82の回転軸との距離の変動が抑制される。すなわち、ウォーム81の回転軸R2とウォームホイール82の回転軸R1との間のずれが抑制される。したがって、本実施形態の伸縮アクチュエータは、減速機構80における振動又は異常磨耗を抑制できる。
【0054】
本実施形態の伸縮アクチュエータにおいて、モータ73の回転軸R2は、鉛直方向に沿っている。
【0055】
ねじ軸31と接続されたウォームホイール82には、ボールねじ30及びロッド35の重量によって、少なからず鉛直方向への変位が生じる。仮に、モータ73の回転軸R2が水平である場合(ウォーム81がウォームホイール82の上側又は下側に配置される場合)、ウォームホイール82に鉛直方向の変位が生じると、ウォーム81とウォームホイール82との間のバックラッシュが変化する。このため、ウォーム81とウォームホイール82との噛み合い位置がずれる。その結果、減速機構80において、振動又は異常磨耗が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態においては、モータ73の回転軸R2が鉛直方向に沿っている。これにより、ウォームホイール82に鉛直方向の変位が生じた時に、ウォーム81とウォームホイール82との噛み合い位置はウォーム81の軸方向に移動するものの、ウォーム81とウォームホイール82との間のバックラッシュの変化が生じにくい。したがって、本実施形態の伸縮アクチュエータは、減速機構80における振動又は異常磨耗を抑制できる。
【0056】
本実施形態の駆動装置70は、第1伸縮アクチュエータ71a及び第2伸縮アクチュエータ71bを備える。第1伸縮アクチュエータ71aは、一対の車輪(車輪8L及び車輪8R)の一方(車輪8L)と接続される。第2伸縮アクチュエータ71bは、一対の車輪の他方(車輪8R)と接続される。第2伸縮アクチュエータ71bは、一対の車輪の間の鉛直平面Pに関して、第1伸縮アクチュエータ71aと面対称になるように配置される。
【0057】
これにより、本実施形態の駆動装置70は、車両の幅方向における重量バランスを向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ハンドル
2 コラム軸
3 減速機構
6a、6b ナックルアーム
7a、7b ハブユニット
8L、8R 車輪
10 トルクセンサ
11 イグニションキー
12 車速センサ
13 バッテリ
14 舵角センサ
21 第1軸受
22、23 第2軸受
31 ねじ軸
33 ナット
35 ロッド
38 ガイドチューブ
39 ブッシュ
50 コントロールユニット(ECU)
60 反力装置
61 反力用モータ
70 駆動装置
71a 第1伸縮アクチュエータ
71b 第2伸縮アクチュエータ
73 モータ
74、75 角度センサ
76 連結ロッド
80 減速機構
81 ウォーム
82 ウォームホイール
90 ハウジング
91 第1ハウジングボディ
92 第2ハウジングボディ
100 車両用操向装置
211 ロックナット
300 支持部材
351 連結部
731 ステータ
733 ロータ
735 シャフト
771、772、774、775 自在継手
773、776 ピボット
921 取付部
P 鉛直平面
R1、R2 回転軸