(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】蓄電システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230719BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20230719BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2019146950
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053854(JP,A)
【文献】特開2017-005930(JP,A)
【文献】特開2015-015855(JP,A)
【文献】特開2016-063717(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235220(WO,A1)
【文献】特開2021-005978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 7/12
H02J 7/34 -11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電ユニットを含み、
前記複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、
交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、
特定負荷に接続される出力端子と、
当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を短絡又は開放する開閉部と、
蓄電池と、
当該蓄電ユニットの前記出力端子、前記開閉部及び前記蓄電池に接続され、前記蓄電池から出力される第1の直流電力を第1の交流電力に変換して前記出力端子に出力し、前記開閉部から入力される第2の交流電力を第2の直流電力に変換して前記蓄電池に出力する変換部とを含み、
自立運転時に、前記交流電源
の出力電力が前記特定負荷の消費電力よりも小さければ、
前記複数の蓄電ユニットのうちの1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの前記開閉部により、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を短絡し、前記交流電源の前記出力電力を、当該蓄電ユニットの前記出力端子から前記特定負荷に供給し、且つ、
前記複数の蓄電ユニットのうち、前記1つの蓄電ユニット以外の少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの前記変換部を介して、前記特定負荷に、当該蓄電ユニットの前記蓄電池から前記特定負荷の不足電力を供給し、
前記少なくとも1つの蓄電ユニットは、電流制御により前記不足電力を前記特定負荷に供給し、
前記少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの前記蓄電池からの放電電流を、前記1つの蓄電ユニットの前記出力端子から前記特定負荷に供給される交流電圧の波形の歪みを補正する大きさで、前記特定負荷に供給する、蓄電システム。
【請求項2】
前記複数の蓄電ユニットの各々の前記変換部は、当該変換部に対応する前記蓄電池を、前記複数の蓄電ユニットの前記蓄電池の蓄電量が均等になるように充電する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記放電電流は、前記交流電源の出力電力をPg(t)とし、前記特定負荷の負荷電力をPr(t)とし、前記少なくとも1つの蓄電ユニットの前記蓄電池の放電電圧をVb(t)として、(Pr(t)-Pg(t))/Vb(t)により算出される値である、請求項1または請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの蓄電ユニットの前記蓄電池の蓄電量が前記不足電力以下になれば、
前記1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの前記開閉部により、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を開放し、当該蓄電ユニットの前記変換部を介して、前記特定負荷に、当該蓄電ユニットの前記蓄電池から前記特定負荷の不足電力を供給し、
前記少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの前記開閉部により、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を短絡し、前記交流電源の前記出力電力を、当該蓄電ユニットの前記出力端子から前記特定負荷に供給する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記出力電力が前記特定負荷の消費電力よりも小さく、且つ、前記複数の蓄電ユニットのうちいずれの蓄電ユニットからも前記特定負荷の不足電力を供給できなければ、前記複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、
当該蓄電ユニットの前記開閉部により、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を開放し、
当該蓄電ユニットの前記変換部により、当該蓄電ユニットの前記蓄電池から前記特定負荷に電力を供給する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
複数の蓄電ユニットを含み、前記複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、特定負荷に接続される出力端子と、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を短絡又は開放する開閉部と、蓄電池と、当該蓄電ユニットの前記出力端子、前記開閉部及び前記蓄電池に接続され、前記蓄電池から出力される第1の直流電力を第1の交流電力に変換して前記出力端子に出力し、前記開閉部から入力される第2の交流電力を第2の直流電力に変換して前記蓄電池に出力する変換部とを含む、蓄電システムの制御方法であって、
自立運転時に、前記交流電源
の出力電力が前記特定負荷の消費電力よりも小さければ、
前記複数の蓄電ユニットのうちの1つの蓄電ユニットが、当該蓄電ユニットの前記開閉部により、当該蓄電ユニットの前記入力端子及び当該蓄電ユニットの前記出力端子を短絡し、前記交流電源の前記出力電力を、当該蓄電ユニットの前記出力端子から前記特定負荷に供給し、且つ、
前記複数の蓄電ユニットのうち、前記1つの蓄電ユニット以外の少なくとも1つの蓄電ユニットが、当該蓄電ユニットの前記変換部を介して、前記特定負荷に、当該蓄電ユニットの前記蓄電池から前記特定負荷の不足電力を供給する第1ステップと、
前記少なくとも1つの蓄電ユニットが、電流制御により前記不足電力を前記特定負荷に供給する第2ステップとを含み、
前記第2ステップは、前記少なくとも1つの蓄電ユニットが、当該蓄電ユニットの前記蓄電池からの放電電流を、前記1つの蓄電ユニットの前記出力端子から前記特定負荷に供給される交流電圧の波形の歪みを補正する大きさで、前記特定負荷に供給するステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続され、一旦蓄電池に蓄えた電力を、停電時等に電力変換装置を介して負荷に供給できる蓄電システムが知られている。太陽光発電システムにも接続され、負荷に供給される電力を超えた発電電力(余剰電力)を蓄電池に蓄える蓄電システムも知られている。
【0003】
蓄電システムに関しては、狭い場所への設置を可能にするために、小型化及び軽量化することが考えられる。そのような蓄電システムを使用して、大きな蓄電容量が要求されるときには、蓄電システムを複数設置することで対応することになる。例えば、後掲の特許文献1には、
図1に示すように、並列接続された2つの蓄電部(蓄電システム)及び太陽光発電システムの出力電力を、電力変換システムを介して負荷に供給する構成が開示されている。
【0004】
図1を参照して、電力変換システム10は、DC-ACコンバータ11a及び11bと、制御部12a及び12bと、DC-DCコンバータ13a、13b、14a及び14bとを含む。DC-ACコンバータ11aは、DC-DCコンバータ13aを介して蓄電部20aから供給される直流電力と、DC-DCコンバータ14aを介して太陽光発電システム30aから供給される直流電力とを交流電力に変換する。同様に、DC-ACコンバータ11bは、DC-DCコンバータ13bを介して蓄電部20bから供給される直流電力と、DC-DCコンバータ14bを介して太陽光発電システム30bから供給される直流電力とを交流電力に変換する。蓄電部20aは、蓄電池21a及び監視部22aを含む。同様に、蓄電部20bは、蓄電池21b及び監視部22bを含む。制御部12aは、監視部22aから監視データを取得するとともに、DC-ACコンバータ11aを制御する。同様に、制御部12bは、監視部22bから監視データを取得するとともに、DC-ACコンバータ11bを制御する。DC-ACコンバータ11aの交流出力経路と、DC-ACコンバータ11bの交流出力経路は結合されており、それらの交流出力電流の合計電流が負荷2に供給される。負荷2に供給される電流は、電流センサCTにより測定され、制御部12bに入力される。
【0005】
このように構成された電力変換システム10において、自立運転時には、制御部12aは、DC-ACコンバータ11aの出力電圧を設定し、蓄電部20aの蓄電池21aの残容量を制御部12bに通知する。制御部12bは、負荷2に供給される合計電流(電流センサCTの測定値)と、蓄電部20aの蓄電池21aの残容量と、蓄電部20bの蓄電池21bの残容量とを基に、蓄電池21aの残容量及び蓄電池21bの残容量が近づくようにDC-ACコンバータ11bの出力電流を制御する。
【0006】
自立運転時に太陽光発電システム30a及び30bが発電している場合、それらの発電量をも考慮して、制御部12bは、DC-ACコンバータ11bの出力電流を制御する。太陽光発電システム30aの発電量が、負荷2に供給される電力を超えており、余剰電力があれば、その余剰電力により蓄電部20aの蓄電池21aを充電する。同様に、太陽光発電システム30bに余剰電力があれば、その余剰電力により蓄電部20bの蓄電池21bを充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された構成では、太陽光発電システム(以下、太陽光システムともいう)が1つの場合には、太陽光発電システムの発電電力により、一方の蓄電部を充電できるが、他方の蓄電部を充電できない問題がある。また、特許文献1に開示された構成では、蓄電部の増設が容易でない問題がある。例えば、既設のシステムにおいて、供給可能な電力を増大するために蓄電部を増設する場合、電力変換システムの改造又は置換えが必要である。また、直流電力を合成した後に交流電力に変換して負荷に供給する構成であるので、既設のシステムに対して、直流電力に関する仕様が異なる他社製品の蓄電部を増設することは困難である。
【0009】
したがって、本開示は、太陽光システムよりも蓄電ユニットが多く設置される場合であっても、自立運転時に太陽光システムにより複数の蓄電ユニットを充電でき、蓄電ユニットの増設が容易な蓄電システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面に係る蓄電システムは、複数の蓄電ユニットを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、特定負荷に接続される出力端子と、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡又は開放する開閉部と、当該蓄電ユニットの出力端子に接続される蓄電池と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換部とを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、自立運転時に、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも大きければ、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給し、当該蓄電ユニットの入力端子に入力される交流電源の出力電力の余剰電力により、当該蓄電ユニットの変換部を介して当該蓄電ユニットの蓄電池を充電する。
【0011】
本開示の別の局面に係る制御方法は、複数の蓄電ユニットを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、特定負荷に接続される出力端子と、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡又は開放する開閉部と、当該蓄電ユニットの出力端子に接続される蓄電池と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換部とを含む、蓄電システムの制御方法であって、自立運転時に、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも大きければ、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給するステップと、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットの入力端子に入力される交流電源の出力電力の余剰電力により、当該蓄電ユニットの変換部を介して当該蓄電ユニットの蓄電池を充電するステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、交流電源(太陽光システム等)よりも蓄電ユニットが多く設置される場合であっても、自立運転時に交流電源により複数の蓄電ユニットを充電でき、蓄電ユニットの増設が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、従来の電力変換システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る蓄電システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した蓄電システムの状態を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した蓄電システムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図2に示した蓄電システムの
図3と異なる状態を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した蓄電システムの
図3及び
図5のいずれともと異なる状態を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1変形例に係る蓄電システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、非線形素子を含む構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、
図9の回路に交流電圧が供給される場合の電圧及び電流を示す波形図である。
【
図12】
図12は、第2変形例に係る蓄電システムにおける放電電流の算出方法を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1)本開示の第1の局面に係る蓄電システムは、複数の蓄電ユニットを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、特定負荷に接続される出力端子と、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡又は開放する開閉部と、当該蓄電ユニットの出力端子に接続される蓄電池と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換部とを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、自立運転時に、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも大きければ、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給し、当該蓄電ユニットの入力端子に入力される交流電源の出力電力の余剰電力により、当該蓄電ユニットの変換部を介して当該蓄電ユニットの蓄電池を充電する。これにより、交流電源よりも蓄電ユニットが多く設置される場合であっても、自立運転時に交流電源により複数の蓄電ユニットを充電できる。また、交流電源から蓄電ユニットに交流電力を供給するので、蓄電ユニットの増設が容易である。
【0016】
(2)好ましくは、複数の蓄電ユニットの各々の変換部は、当該変換部に対応する蓄電池を、複数の蓄電ユニットの蓄電池の蓄電量が均等になるように充電する。これにより、蓄電池の蓄電量が異なっていても、速やかに蓄電量を同じ状態にでき、特定の蓄電池が満充電に近い状態で維持されることにより、その蓄電池のみの劣化が進むことを防止できる。
【0017】
(3)より好ましくは、自立運転時に、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも小さければ、複数の蓄電ユニットのうちの1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給し、複数の蓄電ユニットのうち、1つの蓄電ユニット以外の少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの変換部を介して、特定負荷に、当該蓄電ユニットの蓄電池から特定負荷の不足電力を供給する。これにより、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも小さい場合にも、特定負荷が必要とする電力を供給できる。
【0018】
(4)さらに好ましくは、少なくとも1つの蓄電ユニットは、電流制御により不足電力を特定負荷に供給する。これにより、特定負荷に供給される交流電圧に影響を与えることなく、特定負荷が必要とする電流を供給できる。
【0019】
(5)好ましくは、少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの蓄電池からの放電電流を、1つの蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給される交流電圧の波形の歪みを補正する大きさで、特定負荷に供給する。これにより、特定負荷に供給される交流電圧の歪みを防止できる。
【0020】
(6)より好ましくは、少なくとも1つの蓄電ユニットの蓄電池の蓄電量が不足電力以下になれば、1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を開放し、当該蓄電ユニットの変換部を介して、特定負荷に、当該蓄電ユニットの蓄電池から特定負荷の不足電力を供給し、少なくとも1つの蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給する。これにより、より長時間、特定負荷に不足電力を供給できる。
【0021】
(7)さらに好ましくは、出力電力が特定負荷の消費電力よりも小さく、且つ、複数の蓄電ユニットのうちいずれの蓄電ユニットからも特定負荷の不足電力を供給できなければ、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、当該蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を開放し、当該蓄電ユニットの変換部により、当該蓄電ユニットの蓄電池から特定負荷に電力を供給する。これにより、交流電源からの出力電力がより小さい場合にも、特定負荷に電力を供給できる。
【0022】
(8)本開示の第2の局面に係る制御方法は、複数の蓄電ユニットを含み、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットは、交流電源の自立出力端子に接続される入力端子と、特定負荷に接続される出力端子と、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡又は開放する開閉部と、当該蓄電ユニットの出力端子に接続される蓄電池と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換部とを含む、蓄電システムの制御方法であって、自立運転時に、交流電源の出力電力が特定負荷の消費電力よりも大きければ、複数の蓄電ユニットの各々の蓄電ユニットの開閉部により、当該蓄電ユニットの入力端子及び当該蓄電ユニットの出力端子を短絡し、交流電源の出力電力を、当該蓄電ユニットの出力端子から特定負荷に供給するステップと、当該蓄電ユニットの入力端子に入力される交流電源の出力電力の余剰電力により、当該蓄電ユニットの変換部を介して蓄電ユニットの蓄電池を充電するステップとを含む。これにより、交流電源よりも蓄電ユニットが多く設置される場合であっても、自立運転時に交流電源により複数の蓄電ユニットを充電できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施の形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
[全体構成]
図2を参照して、本開示の実施形態に係る蓄電システム100は、第1蓄電ユニット102、第2蓄電ユニット104、コントローラ106、切替部110、第1センサ114及び第2センサ116を含む。第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104は並列接続され、太陽光システム180に接続されている。また、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104は、切替部110を介して特定負荷194に接続されている。蓄電システム100は、電力系統190の停電時に自立運転を行う。
【0025】
特定負荷194は、電力系統190に停電が発生していないとき(以下、通常時ともいう)に限らず、電力系統190の停電時にも電力が供給されるべき負荷である。一般負荷192は、通常時に電力が供給されるが、停電時には電力が供給されない負荷である。なお、実際の配電線は複数本(2相又は3相)であるが、
図2では1本のラインで示している。
【0026】
太陽光システム180は、太陽光パネル182及び太陽光PCS184を含む。太陽光パネル182は、光エネルギーを電力に変換することにより発電する電力機器である。太陽光PCS184は、太陽光パネル182により発電された直流電力(直流電圧)を交流電力(交流電圧)に変換して出力する。太陽光PCS184は、通常時には、電力系統190から商用電力を供給する配電線を介して、一般負荷192及び特定負荷194に電力を供給する。このとき、切替部110においては、端子150及び端子154が接続されている。太陽光PCS184は、停電時には、商用電力を供給する配電線への電力供給を停止し、自立出力端子186から電力を供給する。停電の発生は、例えば、電力系統190からの電力供給を検出するセンサ(図示せず)の検出値を観測することにより検出可能である。そのセンサの検出値が所定値以下になれば、停電が発生したと判定できる。
【0027】
第1蓄電ユニット102は、第1PCS120、第1蓄電池122及び第1内部スイッチ128を含む。第1PCS120は、制御部(CPU、マイコン等)と、記憶部(例えば、書換可能な不揮発性メモリ)と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換回路とを含む。第1PCS120は、さらに通信部を含み、コントローラ106の通信部と通信を行う。第1蓄電池122は、リチウムイオン二次電池等の充放電可能な蓄電池である。第1蓄電ユニット102は、第1内部スイッチ128の両端子の短絡(以下、ONという)、開放(以下、OFFという)を制御する。第1内部スイッチ128は、例えばリレーにより実現される。第1内部スイッチ128がONされることにより、太陽光システム180の自立出力端子186に接続されている補助入力端子124から入力される交流電力が、そのまま出力端子126から出力される。第1PCS120は、コントローラ106からの制御を受けて動作し、第1蓄電池122の蓄電電力を交流電力に変換して出力端子126から出力する。また、第1PCS120は、補助入力端子124から入力される交流電力(第1内部スイッチ128はON)を直流電力に変換して、第1蓄電池122を充電する。
【0028】
同様に、第2蓄電ユニット104は、第2PCS130、第2蓄電池132及び第2内部スイッチ138を含む。第2PCS130は、制御部と、記憶部と、直流電力及び交流電力を相互に変換する変換回路とを含む。第2PCS130は、さらに通信部を含み、コントローラ106の通信部と通信を行う。第2蓄電池132は、リチウムイオン二次電池等の充放電可能な蓄電池である。第2蓄電ユニット104は、第2内部スイッチ138のON、OFFを制御する。第2内部スイッチ138は、例えばリレーにより実現される。第2内部スイッチ138がONされることにより、太陽光システム180の自立出力端子186に接続されている補助入力端子134から入力される交流電力は、そのまま出力端子136から出力される。第2PCS130は、コントローラ106からの制御を受けて動作し、第2蓄電池132の蓄電電力を交流電力に変換して出力端子136から出力する。また、第2PCS130は、補助入力端子134から入力される交流電力(第2内部スイッチ138はON)を直流電力に変換して、第2蓄電池132を充電する。
【0029】
コントローラ106は、制御部(CPU、マイコン等)と記憶部(例えば、書換可能な不揮発性メモリ)と通信部とを含み、切替部110、第1PCS120及び第2PCS130を制御する。コントローラ106は、停電時には、切替部110、第1PCS120及び第2PCS130の各々に対して、後述するように所定の動作を実行させる。
【0030】
切替部110において、端子150は、商用電力が供給される配電線に接続され、端子152は、第1蓄電ユニット102の出力端子126及び第2蓄電ユニット104の出力端子136に接続され、端子154は、特定負荷194に接続されている。切替部110は、通常時には、上記したように端子150及び端子154を接続している。停電時には、切替部110は、コントローラ106の制御を受けて接続状態を変更し、端子152及び端子154を接続する。切替部110は、例えばリレーにより実現される。
【0031】
第1センサ114及び第2センサ116は、例えば電流センサであり、設置された位置で電線に流れる電流(交流)を測定し、対応する情報(電流値等)を出力する。第1センサ114は、太陽光システム180の自立出力端子186から出力される電流を測定し、測定値は第1PCS120に出力される。第2センサ116は、特定負荷194に供給される電流を測定し、測定値は第1PCS120に出力される。第1PCS120は、第1センサ114及び第2センサ116の測定値から、それぞれ太陽光システム180の出力電力(発電電力)及び特定負荷194に供給される電力(消費電力)を求め、後述する処理において利用する。
【0032】
このように構成されることにより、蓄電システム100は、通常時には
図2に示したように、太陽光システム180の発電電力を、電力系統190から商用電力を供給する配電線を介して一般負荷192に供給し、切替部110を介して特定負荷194に供給する。停電時には蓄電システム100は自立運転を行い、
図3を参照して、上記したように、コントローラ106により切替部110における接続状態が変更される。
図3は、太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力よりも大きい場合を示している。
図3において、矢印は電流の流れる方向を示す。上記したように、停電時には太陽光システム180は、商用電力を供給する配電線への発電電力の供給を停止し、発電電力を自立出力端子186から出力するので、太陽光システム180の発電電力は第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104を介して特定負荷194に供給される。太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力よりも大きいので、太陽光システム180の余剰電力により、第1蓄電ユニット102の第1PCS120は第1蓄電池122を充電し、第2蓄電ユニット104の第2PCS130は第2蓄電池132を充電する。太陽光システム180の出力電力(発電電力)をPgで表し、特定負荷194の消費電力をPrで表し、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の充電電力をそれぞれP1及びP2で表すと、余剰電力はP1+P2であり、P1+P2=Pg-Prである。
【0033】
[制御動作]
以下に、
図4を参照して、電力系統190の停電時における蓄電システム100の動作を説明する。
図4のフローチャートはコントローラ106により実行される。具体的には、コントローラ106の制御部は、停電が発生したことを検知すると、切替部110を停電時の状態に設定して特定負荷194を電力系統190から切り離した後、コントローラ106内部の記憶部から所定のプログラムを読出して実行する。ここでは、停電の発生直後において、第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122及び第2蓄電ユニット104の第2蓄電池132の総蓄電量は特定負荷194の消費電力よりも大きく、特定負荷194に電力供給可能であるとする。
【0034】
ステップ300において、コントローラ106は、第1PCS120から、太陽光システム180の出力電力(発電電力)及び特定負荷194の消費電力を取得する。第1PCS120は、上記したように、第1センサ114及び第2センサ116から入力される電流値から、それぞれ太陽光システム180の出力電力及び特定負荷194の消費電力を算出する。
【0035】
ステップ302において、コントローラ106は、太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力よりも大きいか否かを判定する。具体的には、コントローラ106は、ステップ300で取得した太陽光システム180の出力電力及び特定負荷194の消費電力を比較する。太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力よりも大きいと判定された場合、制御はステップ304に移行する。そうでなければ、制御はステップ308に移行する。
【0036】
ステップ304において、コントローラ106は、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104から、それぞれの内部の第1蓄電池122及び第2蓄電池132の蓄電量(以下、SOC(State Of Charge)という)を取得する。具体的には、コントローラ106は、第1PCS120及び第2PCS130からSOC(%)を取得する。その後、制御はステップ306に移行する。第1蓄電池122及び第2蓄電池132のSOCを、それぞれSOC1(%)及びSOC2(%)で表す。
【0037】
ステップ306において、コントローラ106は、太陽光システム180の余剰電力により第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の各々を充電する電力(以下、充電電力という)を決定し、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104に充電を指示する。具体的には、ステップ300で算出した太陽光システム180の発電電力Pgから特定負荷194の消費電力Prを減算して余剰電力(Pg-Pr)を算出し、ステップ304で取得したSOC1及びSOC2の大きさに応じて、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の各々の充電電力を決定する。ここでは、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の蓄電池の蓄電量が均等になるように、即ち、蓄電量の差が減少するように、SOCがより小さい(蓄電量が少ない)蓄電池に対してより大きい充電電力を決定する。例えば、SOCの値に反比例するように余剰電力(Pg-Pr)を配分し、充電電力を算出する。即ち、第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122の充電電力P1を、P1=(Pg-Pr)×(SOC2/(SOC1+SOC2))により算出し、第2蓄電池132の充電電力P2を、P2=(Pg-Pr)×(SOC1/(SOC1+SOC2))により算出する。コントローラ106は、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104に充電を指示し、決定した充電電力P1及びP2をそれぞれ第1PCS120及び第2PCS130に伝送する。その後、制御はステップ316に移行する。
【0038】
第1蓄電ユニット102の第1PCS120は、コントローラ106からの指示にしたがって、受信した充電電力P1から充電条件(充電電流)を決定し、第1蓄電池122を充電する。同様に、第2蓄電ユニット104の第2PCS130は、コントローラ106からの指示にしたがって、受信した充電電力P2から充電条件(充電電流)を決定し、第2蓄電池132を充電する。
【0039】
一方、太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力以下(ステップ302での判定結果がNO)であれば、ステップ308において、コントローラ106は、ステップ304と同様に、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104から、それぞれの内部の第1蓄電池122及び第2蓄電池132の蓄電量を取得する。その後、制御はステップ310に移行する。
【0040】
ステップ310において、コントローラ106は、特定負荷194の消費電力に対して太陽光システム180の発電電力では不足している電力を、第1蓄電ユニット102又は第2蓄電ユニット104から供給できるか否かを判定する。具体的には、コントローラ106は、電力系統190の消費電力Prから太陽光システム180の発電電力Pgを減算して不足電力を算出し、SOC1又はSOC2が不足電力(Pr-Pg)以上であるか否を判定することにより、不足電力を一方の蓄電ユニットから供給できるか否かを判定する。即ち、SOC1≧Pr-Pg 及び SOC2≧Pr-Pgの少なくとも一方が成り立てば、不足電力を供給可能と判定し、制御はステップ312に移行する。そうでなければ(SOC1<Pr-Pg 及び SOC2<Pr-Pg)、制御はステップ314に移行する。
【0041】
ステップ312において、コントローラ106は、ステップ310において、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の内、SOCi≧Pr-Pg(iは1又は2)が成り立つ蓄電池を含む一方の蓄電ユニットのPCSに放電を指示し、他方の蓄電ユニットのPCSに充放電の停止を指示する。このときコントローラ106は、一方の蓄電ユニットに、不足電力(Pr-Pg)の情報を伝送する。例えば、SOC2≧Pr-Pgであれば、コントローラ106は、第2蓄電ユニット104の第2PCS130に放電を指示し、Pr-Pgの値を伝送する、一方、第1蓄電ユニット102の第1PCS120には、コントローラ106は停止を指示する。その後、制御はステップ316に移行する。
【0042】
このとき、停止を指示された蓄電ユニット(例えば第1蓄電ユニット102)のPCS(第1PCS120)は、内部スイッチ(第1内部スイッチ128)をONにする(ONになっていればONを維持する)。これにより、停止を指示された蓄電ユニット(第1蓄電ユニット102)の出力端子(出力端子126)からは、太陽光システム180の自立出力端子186からの出力電圧がそのまま出力される。一方、放電を指示された蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)のPCS(第2PCS130)は、コントローラ106から伝送された不足電力(Pr-Pg)の情報に基づき放電を実行する。このとき、放電を指示された蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)は電流制御で動作する。即ち、放電を指示された蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)はその出力端子(出力端子136)から、停止を指示された蓄電ユニット(第1蓄電ユニット102)の出力端子(出力端子126)から出力される電圧に同期させて、放電電流を出力し、不足電力(不足電流)を特定負荷194に供給する。
【0043】
なお、SOC1≧Pr-Pg 且つ SOC2≧Pr-Pg であれば、コントローラ106は、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104のいずれに放電を指示してもよい。コントローラ106は、例えばより大きいSOCを有する蓄電池を含む蓄電ユニットに放電を指示する。例えば、SOC1<SOC2であれば、コントローラ106は第2蓄電ユニット104の第2PCS130に放電を指示し、Pr-Pgの値を伝送する。一方、第1蓄電ユニット102の第1PCS120には、コントローラ106は充放電の停止を指示する。
【0044】
一方、特定負荷194の消費電力に対して不足電力を第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104のいずれからも供給できない場合(ステップ310の判定結果がNOの場合)、ステップ314において、コントローラ106は、第1蓄電ユニット102の第1PCS120及び第2蓄電ユニット104の第2PCS130に放電を指示する。このとき、コントローラ106は、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の各々の放電量を特定負荷194の消費電力Prから算出して、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104に伝送する。例えば、コントローラ106は、ステップ308で取得した第1蓄電池122及び第2蓄電池132のSOCのうち、より大きいSOCの蓄電池を含む蓄電ユニットにより大きい方電量を伝送する。例えば、上記の充電電力の算出と同様に、SOCに反比例するように特定負荷194の消費電力Prを分配し、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の放電電力を決定する。その後、制御はステップ316に移行する。
【0045】
このとき、一方の蓄電ユニット(例えば第1蓄電ユニット102)のPCS(第1PCS120)は、電圧制御で出力端子(出力端子126)から電力を出力する。他方の蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)は、上記したように電流制御で動作する。即ち、他方の蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)のPCS(第2PCS130)は、一方の蓄電ユニット(第1蓄電ユニット102)の出力端子(出力端子126)から出力される電圧に同期させて、出力端子(出力端子136)から電流を出力する。
【0046】
ステップ316において、コントローラ106は、終了するか否かを判定する。例えば、電力系統190の停電が解消し、電力系統190から電力の供給が開始されたことにより、コントローラ106は終了すると判定する。終了すると判定された場合、コントローラ106は、切替部110を通常時の状態に変更し、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104に対して停止を指示する。その後、本プログラムは終了する。そうでなければ、制御はステップ300に戻り、終了すると判定されるまで、ステップ300以降の処理が繰返される。
【0047】
以上により、電力系統190の停電時には、コントローラ106は、切替部110を制御して特定負荷194を電力系統190から切り離した後、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の各々の内部の蓄電池のSOCに応じて、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104に充電、放電又は停止を指示する。太陽光システム180の発電電力Pgが特定負荷194の消費電力Prよりも大きければ、
図3に示したように、太陽光システム180の余剰電力(Pg-Pr)により、第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122及び第2蓄電ユニット104の第2蓄電池132を充電させる(ステップ306)。太陽光システム180の発電電力が特定負荷194の消費電力よりも小さければ(例えば、
図3の状態の後、太陽光システム180の発電電力Pgが低下し、特定負荷194の消費電力Prよりも小さくなれば)、
図5に示すように、不足電力を第1蓄電ユニット102又は第2蓄電ユニット104から供給する(ステップ312)。
図5では、第1内部スイッチ128はONされ、太陽光システム180の出力電力は第1蓄電ユニット102を介して供給され、第2内部スイッチ138はOFFされ、第2蓄電ユニット104から不足電力が供給されている(SOC2>Pr-Pg)。
【0048】
不足電力を供給している第2蓄電ユニット104の第2蓄電池132の蓄電量は減少するので、
図5の状態が続けば、第2蓄電ユニット104が不足電力を供給できなくなる可能性がある。即ち、第2蓄電ユニット104の第2蓄電池132の蓄電量が、特定負荷194の不足電力未満になれば、第2蓄電ユニット104から特定負荷194に不足電力を供給できない。その場合、第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122から不足電力を供給可能(SOC1>Pr-Pg)であれば、
図6に示すように、第1蓄電ユニット102と第2蓄電ユニット104の役割を交換する。即ち、
図6では、第2内部スイッチ138はONされ、太陽光システム180の出力電力は第2蓄電ユニット104を介して供給され、第1内部スイッチ128はOFFされ、第1蓄電ユニット102から不足電力が供給されている。
【0049】
第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122から不足電力を供給できなければ、
図7に示すように、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104から特定負荷194に電力を供給する(ステップ314)。
図7では、第1内部スイッチ128及び第2内部スイッチ138のいずれもOFFされ、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104から特定負荷194に電力が供給されている。
【0050】
図3、
図5、
図6及び
図7に示した状態は、必ずしもこの順に遷移するものではなく、太陽光システム180の出力電力Pg、特定負荷194の消費電力Pr、第1蓄電池122の蓄電量(SOC1)、及び、第2蓄電池132の蓄電量(SOC2)に依存して任意に遷移し得る。例えば、太陽光システム180の発電電力が低下して特定負荷194の消費電力よりも小さくなった最初の段階において、
図5、
図6又は
図7の状態になることがある。また、
図7の状態で、太陽光システム180の発電電力が増大し、特定負荷194の消費電力よりも大きくなれば、例えば、
図3の状態になることもある。
【0051】
このように、蓄電システム100は、自立運転時に、1つの太陽光システム180により第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104を充電できる。
【0052】
また、太陽光システム180の出力電力Pg、特定負荷194の消費電Pr、並びに、第1蓄電池122及び第2蓄電池132のSOCに応じて、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の各々に、適切に充電又は放電を実行させることができる。即ち、太陽光システム180の発電電力が低下し、出力電力が特定負荷194の消費電力よりも小さくなれば、第1蓄電池122及び第2蓄電池132の一方から不足電力を供給するので、自立運転時に長時間、特定負荷194に必要な電力を供給できる。このとき、放電電流を電流制御して特定負荷194に供給するので、特定負荷194に供給される交流電圧に影響を与えることなく、特定負荷194が必要とする電流を供給できる。
【0053】
不足電力を供給していた一方の蓄電ユニットの蓄電池の蓄電量が放電により低下し、特定負荷194に不足電力を供給できなくなれば、他方の蓄電ユニットに、放電により特定負荷194に不足電力を供給させる。これにより、自立運転時に、より長時間、特定負荷194に必要な電力を供給できる。また、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104から特定負荷194に電力を供給することにより、太陽光システム180の出力電力がより一層低下しても、特定負荷194に必要な電力を供給できる。
【0054】
上記では、ステップ306において、第1蓄電ユニット102の第1蓄電池122及び第2蓄電ユニット104の第2蓄電池132の蓄電量に応じて、第1蓄電池122及び第2蓄電池132が同じ蓄電量になるように、蓄電量がより小さい蓄電池をより大きい充電電力で充電する場合を説明した。これにより、第1蓄電池122及び第2蓄電池132の蓄電量が異なっていても、速やかに蓄電量を同じ状態にできる。したがって、一方の蓄電池が満充電に近い状態で維持されることにより、その蓄電池のみの劣化が進むことを防止できる。
【0055】
しかし、第1蓄電池122及び第2蓄電池132の充電制御は、これに限定されず、任意である。例えば、ステップ306において、第1蓄電池122及び第2蓄電池132を同じ充電電力で充電してもよい。即ち、充電電力P1及びP2を、P1=P2=(Pg-Pr)/2により決定してもよい。一方の蓄電ユニッチの蓄電池が満充電になれば、他方の蓄電ユニットの蓄電池のみを充電する。
【0056】
(第1変形例)
図2の蓄電システム100では、第1蓄電ユニット102の第1PCS120が第1センサ114及び第2センサ116の測定値から、太陽光システム180の出力電力及び特定負荷194の消費電力を求めるが、これに限定されない。コントローラ106又は第2蓄電ユニット104が、第1センサ114及び第2センサ116の測定値から、太陽光システム180の出力電力及び特定負荷194の消費電力を算出してもよい。例えば、
図8を参照して、蓄電システム200のように、第1センサ114及び第2センサ116の測定値をコントローラ206に入力してもよい。
図8の蓄電システム200は、
図2の蓄電システム100において、コントローラ106をコントローラ206で代替し、第1センサ114及び第2センサ116を第1PCS120に接続せずに、コントローラ206に接続したものである。
図8において、
図2と同じ符号を付した要素は、蓄電システム100と同じ機能を有するので、重複説明を行わない。
【0057】
コントローラ206は、コントローラ106と同様に構成され、制御部と記憶部と通信部とを含む。コントローラ206は停電時に、コントローラ106と同様に、切替部110を制御して特定負荷194を電力系統190から切り離した後、
図4のステップ300~316の処理を実行し、第1PCS120及び第2PCS130の各々を制御する。但し、第1センサ114及び第2センサ116は、第1PCS120ではなくコントローラ206に入力されるので、ステップ300において、コントローラ206は、第1センサ114及び第2センサ116の測定値から、太陽光システム180の出力電力及び特定負荷194の消費電力を算出する。
【0058】
(第2変形例)
上記の蓄電システムにより電力が供給される特定負荷が、非線形負荷(非線形素子(ダイオード、サイリスタ、トライアック等)を含む負荷)である場合が考えられる。例えば、
図2の特定負荷194が、
図9に示すように、ダイオードブリッジ220及びコンデンサ222を備えた整流回路を介して負荷224に電力を供給する構成である場合が考えられる。この場合、正弦波の交流電圧が供給されても、正弦波が維持されない問題がある。即ち、
図10に示すように、正弦波の交流電圧の頂点付近において、パルス状に電流が流れることにより破線で示すように電圧波形が歪み(頂点がつぶれて)、電圧が低下する。そのために、太陽光システム180からの電力供給不足となり、蓄電ユニットからの放電による電力供給に切替る問題がある。
【0059】
本変形例は、そのような問題を防止することを目的とする。即ち、
図11を参照して、太陽光システム180の電力供給能力以上になる電圧の頂点付近において、不足電流(斜線部分)を蓄電ユニットから供給することにより、電圧波形が正弦波に維持されるようにする。蓄電システムの構成は、
図2と同じであればよいので、重複説明を繰返さない。太陽光システム180の出力電力に対する不足電流を補うためには、例えば、
図5に示したように電流を供給する。即ち、太陽光システム180の出力電力(出力電圧)は、第1蓄電ユニット102を介して出力端子126からそのまま出力される。不足電流は、第2蓄電ユニット104の放電により出力端子136から供給される。
【0060】
図12を参照して、第2蓄電ユニット104の出力電流の算出方法に関して説明する。
図12の上段の波形は、特定負荷194の電流(以下、負荷電流という)及び電圧(以下、負荷電圧という)を示している。負荷電圧は正弦波である。中段の波形は、太陽光システム180の発電による電流(以下、発電電流という)及び電圧(以下、発電電圧という)を示している。下段の波形は、第2蓄電ユニット104が出力すべき電流(以下、放電電流という)及び電圧(以下、放電電圧という)を示している。電流値は左側の縦軸で表され、電圧値は右側の縦軸で表されている。算出すべきは、各瞬間における第2蓄電ユニット104の放電電流(下段の波形参照)である。
【0061】
各瞬間tにおいて、負荷電力Pr(t)は負荷電圧Vr(t)及び負荷電流Ir(t)の積で求められ、太陽光システム180の発電電力Pg(t)は発電電圧Vg(t)及び発電電流Ig(t)の積で求められる。即ち、
Pr(t)=Vr(t)×Ir(t)
Pg(t)=Vg(t)×Ig(t)
である。また、第2蓄電ユニット104が放電により供給すべき電力(不足電力)は、負荷電力-発電電力=Pr(t)-Pg(t)である。各瞬間tにおいて、第2蓄電ユニット104の放電電力は、放電電圧Vb(t)及び放電電流Ib(t)の積であるので、次式が成り立つ。
Ib(t)=(Pr(t)-Pg(t))/Vb(t) ・・・(式1)
【0062】
各瞬間tにおける発電電力Pg(t)及び負荷電力Pr(t)は、それぞれ第1センサ114及び第2センサ116により測定された電流値から、第1蓄電ユニット102の第1PCS120により算出され、コントローラ106に伝送される。したがって、第2蓄電ユニット104の第2PCS130は、コントローラ106から伝送される発電電力Pg(t)及び負荷電力Pr(t)と、自己の放電電圧Vb(t)とを用いて、上記の式1により放電電流Ib(t)を算出できる。第2蓄電ユニット104の第2PCS130が、式1により算出した値の放電電流を出力端子136から出力することにより、負荷電圧Vr(t)は正弦波に維持され、歪みが防止される。
【0063】
第2蓄電ユニット104の第2PCS130は、使用される半導体デバイスのスイッチング周期(例えば、スイッチング周波数は10kHz~20kHz)で、上記の計算を繰返し実行し、放電電流の目標値(次のタイミングで出力する値)を更新しながら、目標値の放電電流を出力する。目標値が算出されてから、その目標値の放電電流が実際に出力されるまでには、1周期の遅れが生じるので、放電電流の算出に使用する放電電圧Vb(t)には、1周期後の値を使用することが好ましい。放電電圧Vb(t)は、第2PCS130により生成される正弦波であるので、第2PCS130は任意の瞬間における放電電圧の値を特定できる。
【0064】
以上のように、太陽光システム180の発電電力の不足電力を第2蓄電ユニット104の放電により補うことにより、特定負荷194に供給される電圧の歪みを防止できる、即ち、特定負荷194が非線形負荷であっても、特定負荷194に対して、蓄電システム100から正弦波の交流電圧又はそれに近い波形の交流電圧を供給できる。
【0065】
上記では、
図5に示した状態において、第2蓄電ユニット104から不足電力を供給する際に、第2PCS130が不足電流の値を算出することを説明したが、これに限定されない。
図6に示した状態においては、第1蓄電ユニット102から不足電力を供給する際に、第1PCS120が不足電流を算出して、放電電流の値を決定すればよい。また、
図7に示した状態においては、第1蓄電ユニット102及び第2蓄電ユニット104の一方の蓄電ユニット(例えば第1蓄電ユニット102)が電圧制御で動作し、他方の蓄電ユニット(第2蓄電ユニット104)が電流制御で動作してそのPCS(第2PCS130)が、上記のように不足電流を算出して、放電電流の値を決定してもよい。
【0066】
上記では、第1センサ114及び第2センサ116の測定値が第1PCS120に入力される
図2の蓄電システム100において、第2変形例が実行されることを説明したが、これに限定されない。第2変形例は、
図8の蓄電システム200においても、実行され得る。蓄電システム200においては、第1センサ114及び第2センサ116の測定値はコントローラ206に入力されるので、コントローラ206は算出した太陽光システム180の発電電力及び特定負荷194の消費電力を第1PCS120及び第2PCS130に伝送し、第1PCS120又は第2PCS130は、取得した太陽光システム180の発電電力及び特定負荷194の消費電力を用いて不足電流の値を算出する。これにより、特定負荷194が非線形負荷であっても、特定負荷194に対して、蓄電システム200から正弦波の交流電圧又はそれに近い波形の交流電圧を供給できる。なお、コントローラ及び2つのPCSの相互間で、第1センサ114及び第2センサ116の測定値から算出された180の発電電力及び特定負荷194の消費電力が伝送されことによる遅延時間をなくすために、第1センサ114及び第2センサ116を各PCSに接続することが好ましい。
【0067】
上記では、蓄電システムが、蓄電ユニットを2つ含む場合を説明したが、これに限定されない。3つ以上の蓄電ユニットを含む構成であってもよい。その場合、
図2と同様に、3つ以上の蓄電ユニットは相互に並列接続され、各蓄電ユニットの補助入力端子は1つの太陽光システムの自立出力端子に接続され、各蓄電ユニットは補助入力端子と出力端子とを接続する内部スイッチを含んでいればよい。例えば、太陽光システムの発電電力Pgが特定負荷の消費電力Prよりも大きい場合には、
図3と同様に、3つ以上の蓄電ユニットの各々は、内部の蓄電池を余剰電力により充電できる。このとき、例えば、各蓄電ユニットの蓄電池を同じ充電電力で充電してもよい。また、蓄電池の蓄電量が均等になるように、蓄電量がより小さい蓄電池をより大きい充電電力で充電してもよい。さらに、1つの太陽光システムに限定されず、太陽光システムの数は、蓄電システムの設置数よりも少なければよい。
【0068】
上記では、太陽光システムから供給される交流電力により複数の蓄電ユニットを充電する場合を説明したが、これに限定されない。交流電源であればよく、太陽光システム以外の発電システムから供給される交流電力により複数の蓄電ユニットを充電してもよい。
【0069】
以上、実施の形態を説明することにより本発明を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本発明は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0070】
2、224 負荷
10 電力変換システム
11a、11b DC-ACコンバータ
12a、12b 制御部
13a、13b、14a、14b DC-DCコンバータ
20a、20b 蓄電部
21a、21b 蓄電池
22a、22b 監視部
30a、30b 太陽光発電システム
100、200 蓄電システム
102 第1蓄電ユニット
104 第2蓄電ユニット
106、206 コントローラ
110 切替部
114 第1センサ
116 第2センサ
120 第1PCS
122 第1蓄電池
124、134 補助入力端子
126、136 出力端子
128 第1内部スイッチ
130 第2PCS
132 第2蓄電池
138 第2内部スイッチ
150、152、154 端子
180 太陽光システム
182 太陽光パネル
184 太陽光PCS
186 自立出力端子
190 電力系統
192 一般負荷
194 特定負荷
220 ダイオードブリッジ
222 コンデンサ
300、302、304、306、308、310、312、314、316 ステップ
CT 電流センサ