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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
A61M5/142 530
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019161053
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037139
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086459(WO,A1)
【文献】特開2014-093159(JP,A)
【文献】特開2003-325440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1二次電池と、
前記第1二次電池と並列に接続された第2二次電池と、
前記第1二次電池及び前記第2二次電池の各二次電池の電力により駆動され、医療機器に用いられる負荷と、
前記各二次電池の電力により駆動され、所定の報知情報を発する報知部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち一方の二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている際に当該一方の二次電池の残量が前記報知部の駆動に必要な電力量以上であって予め設定された設定残量になったときに、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち他方の二次電池の電力によって前記負荷を駆動させ、その後、前記他方の二次電池が、当該他方の二次電池の残量が前記負荷を駆動可能な電力量未満である枯渇状態、及び、当該他方の二次電池の残量が前記負荷を駆動可能な電力量以上でかつ前記他方の二次電池の電力による前記負荷の駆動が中断される異常状態の少なくとも一方の状態になったときに、前記一方の二次電池の電力によって前記報知部を駆動する、医療機器。
【請求項2】
前記第1二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態と前記第2二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態とを切り替える第1切替部と、
前記負荷へ通電される負荷通電状態と前記報知部へ通電される報知部通電状態とを切り替える第2切替部と、をさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1切替部を制御する第1切替部制御部と、
前記第2切替部を制御する第2切替部制御部と、
前記各二次電池の残量を監視可能で、かつ、前記各二次電池の残量が前記設定残量になったこと、前記各二次電池が前記枯渇状態になったこと、及び、前記各二次電池が前記異常状態になったことを検知可能な検知部と、を有し、
前記第1切替部制御部は、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち先に前記負荷に電力を供給している先行二次電池の残量が前記設定残量になったことを前記検知部が検知したときに、前記第1切替部を、前記先行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態から前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち前記先行二次電池とは異なる後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態に切り替え、
前記先行二次電池の残量が前記設定残量になっており、かつ、前記後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている状態において、前記後行二次電池が前記枯渇状態又は前記異常状態になったことを前記検知部が検知したときに、前記第1切替部制御部は、前記第1切替部を前記後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている状態から前記先行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態に切り替え、かつ、前記第2切替部制御部は、前記第2切替部を前記負荷通電状態から前記報知部通電状態に切り替える、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1二次電池及び前記第2二次電池が充電された状態において、前記第1二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始する回数及び前記第2二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始する回数である設定回数を設定可能な開始回数設定部と、
前記第1二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始した第1開始回数と、前記第2二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始した第2開始回数と、を記憶する記憶部と、をさらに有し、
前記第1切替部制御部は、前記記憶部に記憶されている前記第1開始回数が前記設定回数未満であるときは、前記第1切替部を前記第1二次電池から前記負荷に電力が供給される状態とし、前記記憶部に記憶されている前記第1開始回数が前記設定回数以上でかつ前記記憶部に記憶されている前記第2開始回数が前記設定回数未満であるときは、前記第1切替部を前記第2二次電池から前記負荷に電力が供給される状態とする、請求項2に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開第2017/086459号には、メインバッテリと、サブバッテリと、異常警報の音声を出力するスピーカと、を備える医療用ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/086459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような医療機器において、メインバッテリの電力が枯渇した後、サブバッテリの電力によって負荷を駆動している際、当該サブバッテリがショートする等した場合、スピーカ等の報知部から異常警報を発することができない。
【0005】
本発明の目的は、報知部を駆動することができない状況を低減することが可能な医療機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一局面に従った医療機器は、第1二次電池と、前記第1二次電池と並列に接続された第2二次電池と、前記第1二次電池及び前記第2二次電池の各二次電池の電力により駆動され、医療機器に用いられる負荷と、前記各二次電池の電力により駆動され、所定の報知情報を発する報知部と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち一方の二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている際に当該一方の二次電池の残量が前記報知部の駆動に必要な電力量以上であって予め設定された設定残量になったときに、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち他方の二次電池の電力によって前記負荷を駆動させ、その後、前記他方の二次電池が、当該他方の二次電池の残量が前記負荷を駆動可能な電力量未満である枯渇状態、及び、当該他方の二次電池の残量が前記負荷を駆動可能な電力量以上でかつ前記他方の二次電池の電力による前記負荷の駆動が中断される異常状態の少なくとも一方の状態になったときに、前記一方の二次電池の電力によって前記報知部を駆動する。
【0007】
この医療機器では、先に負荷に給電している一方の二次電池に報知部の駆動に必要な電力量(設定残量)を確保した状態で他方の二次電池の電力によって負荷が駆動される状態に切り替えられるため、仮に他方の二次電池が異常状態になった場合(ショート等した場合)においても、一方の二次電池に残っている電力によって報知部が駆動される。よって、報知部を駆動することができない状況が低減される。
【0008】
また、前記医療機器において、前記第1二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態と前記第2二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態とを切り替える第1切替部と、前記負荷へ通電される負荷通電状態と前記報知部へ通電される報知部通電状態とを切り替える第2切替部と、をさらに備え、前記コントローラは、前記第1切替部を制御する第1切替部制御部と、前記第2切替部を制御する第2切替部制御部と、前記各二次電池の残量を監視可能で、かつ、前記各二次電池の残量が前記設定残量になったこと、前記各二次電池が前記枯渇状態になったこと、及び、前記各二次電池が前記異常状態になったことを検知可能な検知部と、を有していてもよい。この場合において、前記第1切替部制御部は、前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち先に前記負荷に電力を供給している先行二次電池の残量が前記設定残量になったことを前記検知部が検知したときに、前記第1切替部を、前記先行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態から前記第1二次電池及び前記第2二次電池のうち前記先行二次電池とは異なる後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態に切り替え、前記先行二次電池の残量が前記設定残量になっており、かつ、前記後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている状態において、前記後行二次電池が前記枯渇状態又は前記異常状態になったことを前記検知部が検知したときに、前記第1切替部制御部は、前記第1切替部を前記後行二次電池の電力によって前記負荷が駆動されている状態から前記先行二次電池の電力によって前記負荷が駆動される状態に切り替え、かつ、前記第2切替部制御部は、前記第2切替部を前記負荷通電状態から前記報知部通電状態に切り替えることが好ましい。
【0009】
この態様では、上記の効果が有効に得られる。
【0010】
また、前記コントローラは、前記第1二次電池及び前記第2二次電池が充電された状態において、前記第1二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始する回数及び前記第2二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始する回数である設定回数を設定可能な開始回数設定部と、前記第1二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始した第1開始回数と、前記第2二次電池の電力により前記負荷の駆動を開始した第2開始回数と、を記憶する記憶部と、をさらに有していてもよい。この場合において、前記第1切替部制御部は、前記記憶部に記憶されている前記第1開始回数が前記設定回数未満であるときは、前記第1切替部を前記第1二次電池から前記負荷に電力が供給される状態とし、前記記憶部に記憶されている前記第2開始回数が前記設定回数未満であるときは、前記第1切替部を前記第2二次電池から前記負荷に電力が供給される状態とすることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、各二次電池が均等に使用されるため、メモリー効果の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、この発明によれば、報知部を駆動することができない状況を低減することが可能な医療機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の医療機器の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1に示される医療機器において、第2二次電池が枯渇状態になった場合を示す図である。
図3図1に示される医療機器において、第2二次電池が異常状態になった場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の医療機器の全体構成を概略的に示す図である。医療機器1として、シリンジポンプ等が挙げられる。
【0016】
医療機器1は、第1二次電池10と、第2二次電池20と、負荷30と、報知部40と、第1切替部51と、第2切替部52と、コントローラ60と、を備えている。
【0017】
第1二次電池10及び第2二次電池20は、互いに並列となるように接続されている。各二次電池10,20は、電力の残量を制御部50に送信可能に構成されている。なお、図1図3では、各二次電池10,20の残量が斜線で示されている。
【0018】
負荷30は、各二次電池10,20に直列となるように接続されており、各二次電池10,20の電力により駆動される。負荷30として、シリンジを駆動する駆動部等が挙げられる。
【0019】
報知部40は、各二次電池10,20に直列となるように接続されており、各二次電池10,20の電力により駆動される。報知部40は、負荷30に並列となるように接続されている。報知部40は、報知情報(音や表示等)を発する。
【0020】
第1切替部51は、第1二次電池10の電力によって負荷30が駆動される状態(図1において二点鎖線で示される状態)と、第2二次電池20の電力によって負荷30が駆動される状態(図1において実線で示される状態)と、を切り替える。
【0021】
第2切替部52は、負荷30へ通電される負荷通電状態(図2において二点鎖線で示される状態)と、報知部40へ通電される報知部通電状態(図2において実線で示される状態)と、を切り替える。
【0022】
コントローラ60は、各二次電池10,20の残量を監視可能で、かつ、第1切替部51及び第2切替部52を制御可能である。
【0023】
コントローラ60は、2つの二次電池10,20のうち一方の二次電池(例えば第1二次電池10)の電力によって負荷30が駆動されている際に当該一方の二次電池の残量が設定残量になったときに、2つの二次電池10,20のうち他方の二次電池(例えば第2二次電池20)の電力によって負荷30を駆動させ、その後、他方の二次電池が枯渇状態及び異常状態の少なくとも一方の状態になったときに、一方の二次電池の電力によって報知部40を駆動する。
【0024】
設定残量(第1二次電池10において斜線で示された残量)は、各二次電池10,20の残量が報知部40の駆動に必要な電力量以上であって予め設定された残量を意味する。
【0025】
枯渇状態(図2に示される第2二次電池20の状態)は、各二次電池10,20の残量が負荷30を駆動可能な電力量未満である状態を意味する。
【0026】
異常状態(図3に示される第2二次電池20の状態)は、各二次電池10,20の残量が負荷30を駆動可能な電力量以上でかつ当該二次電池10,20の電力による負荷30の駆動がショート等によって中断される状態を意味する。
【0027】
具体的に、コントローラ60は、第1切替部制御部61と、第2切替部制御部62と、検知部63と、開始回数設定部64と、記憶部65と、を有している。
【0028】
第1切替部制御部61は、第1切替部51を制御する。
【0029】
第2切替部制御部62は、第2切替部52を制御する。
【0030】
検知部63は、2つの二次電池10,20の残量を監視可能である。検知部63は、各二次電池10の残量が設定残量になったこと、各二次電池10,20が枯渇状態になったこと、及び、各二次電池10,20が異常状態になったことを検知可能である。
【0031】
第1切替部制御部61は、第1二次電池10及び第2二次電池20のうち先に負荷30に電力を供給している先行二次電池(図1では第1二次電池10)の残量が設定残量になったことを検知部63が検知したときに、第1切替部51を、先行二次電池の電力によって負荷30が駆動される状態から第1二次電池10及び第2二次電池20のうち先行二次電池とは異なる後行二次電池(図1では第2二次電池20)の電力によって負荷30が駆動される状態に切り替える。
【0032】
先行二次電池の残量が設定残量になっており、かつ、後行二次電池の電力によって負荷30が駆動されている状態(図1に示される状態)において、後行二次電池が枯渇状態又は異常状態になったことを検知部63が検知したときに、第1切替部制御部61は、第1切替部51を後行二次電池の電力によって負荷30が駆動されている状態から先行二次電池の電力によって負荷30が駆動される状態(図2又は図3に示される状態)に切り替え、かつ、第2切替部制御部62は、第2切替部52を負荷通電状態から報知部通電状態(図2又は図3に示される状態)に切り替える。
【0033】
開始回数設定部64は、2つの二次電池10,20が充電された状態において、第1二次電池10の電力により負荷30の駆動を開始する回数及び第2二次電池20の電力により負荷30の駆動を開始する回数である設定回数を設定可能である。なお、設定回数は、例えば医療従事者が設定する。
【0034】
記憶部65は、第1二次電池10の電力により負荷30の駆動を開始した第1開始回数(第1二次電池10を先行二次電池とした回数)と、第2二次電池20の電力により負荷30の駆動を開始した第2開始回数(第2二次電池20を先行二次電池とした回数)と、を記憶する。
【0035】
第1切替部制御部61は、記憶部65に記憶されている第1開始回数が設定回数未満であるときは、第1切替部51を第1二次電池10から負荷30に電力が供給される状態(図1において二点鎖線で示される状態)、すなわち、第1二次電池10を先行二次電池とする。一方、第1切替部制御部61は、記憶部65に記憶されている第1開始回数が設定回数以上でかつ第2開始回数が設定回数未満であるときは、第1切替部51を第2二次電池20から負荷30に電力が供給される状態(図1において実線で示される状態)、すなわち、第2二次電池20を先行二次電池とする。
【0036】
記憶部65は、第1切替部制御部61が第2二次電池20を先行二次電池としたときに、第1開始回数をゼロとして記憶し、第1切替部制御部61が第1二次電池10を先行二次電池としたときに、第2開始回数をゼロとして記憶する。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態の医療機器1では、先に負荷に給電している先行二次電池に報知部40の駆動に必要な電力量(設定残量)を確保した状態で後行二次電池の電力によって負荷30が駆動される状態に切り替えられるため、仮に後行二次電池が異常状態になった場合(ショート等した場合)においても、先行二次電池に残っている電力によって報知部40が駆動される。よって、報知部40を駆動することができない状況が低減される。
【0038】
また、第1切替部制御部61は、第1開始回数が設定回数未満であるときは、第1二次電池10を先行二次電池とし、第2開始回数が設定回数未満であるときは、第2二次電池20を先行二次電池とするため、各二次電池10,20が均等に使用される。このため、各二次電池10,20におけるメモリー効果の発生が抑制される。
【0039】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 医療機器、10 第1二次電池、20 第2二次電池、30 負荷、40 報知部、51 切替部、52 切替部、60 制御部、61 第1切替部制御部部、62 第2切替部制御部、63 検知部、64 開始回数設定部、65 記憶部。
図1
図2
図3