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  • 特許-トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230719BHJP
   G03G 9/083 20060101ALI20230719BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G03G9/097 351
G03G9/083
G03G9/087 331
G03G9/087 325
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019179241
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056379
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】菊島 誠治
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 貴裕
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138960(JP,A)
【文献】特開2006-154313(JP,A)
【文献】特開2013-257464(JP,A)
【文献】特開2019-35959(JP,A)
【文献】特開2016-126156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/083
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を含むトナーであって、
前記トナー粒子は、トナー母粒子を備え、
前記トナー母粒子は、結着樹脂、磁性粉及び電荷制御剤を含有し、
前記結着樹脂は、ブロックポリマーを含み、
前記ブロックポリマーは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有し、
前記電荷制御剤は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂を含み、
前記トナー母粒子における前記電荷制御剤の含有割合は、1.5質量%以上12.0質量%以下である、トナー。
【請求項2】
温度20℃、湿度65%RHでの時定数τは、0.10秒以上20.00秒以下である、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
水中でのゼータ電位測定により測定される等電点は、3.00以上5.00以下である、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記ブロックポリマーは、前記ポリエステル部位及び前記ビニルポリマー部位を連結する連結部位を更に有し、
前記連結部位は、ビニル基と、カルボキシ基及びアルコール性水酸基のうち少なくとも1種とを有する特定化合物に由来する、請求項1~3の何れか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記特定化合物は、(メタ)アクリル酸を含む、請求項4に記載のトナー。
【請求項6】
前記4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する、請求項1~5の何れか一項に記載のトナー。
【化1】
(一般式(1)中、R1~R3は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表し、R4は、水素原子又はメチル基を表し、R5は、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成においては、トナー粒子を含むトナーが用いられる。トナー粒子は、例えば、結着樹脂及び磁性粉を含有するトナー母粒子を備える。このようなトナー粒子を用いたトナーは、一成分現像剤として用いられる。
【0003】
一成分現像剤として用いるトナーには、現像性に優れ、優れた画像濃度を有する画像を形成できることが要求される。現像性に優れるトナーとしては、例えば、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有するブロックポリマーを結着樹脂として用いたトナーが提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-117958号公報
【文献】特開2004-53863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしならが、特許文献1及び2に記載のトナーは、現像性について更なる改善の余地がある。また、一成分現像剤として用いるトナーには、現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できることも要求されている。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、現像性に優れ、かつ現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナー母粒子を備える。前記トナー母粒子は、結着樹脂、磁性粉及び電荷制御剤を含有する。前記結着樹脂は、ブロックポリマーを含む。前記ブロックポリマーは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有する。前記電荷制御剤は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂を含む。前記トナー母粒子における前記電荷制御剤の含有割合は、1.5質量%以上12.0質量%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトナーは、現像性に優れ、かつ現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のトナーが含むトナー粒子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0011】
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
【0012】
粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径を指す。
【0013】
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、公知の帯電列などで確認できる。
【0014】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
【0015】
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT-500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。
【0016】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
【0017】
<トナー>
本発明の実施形態に係るトナーは、トナー粒子を含む。トナー粒子は、トナー母粒子を備える。トナー母粒子は、結着樹脂、磁性粉及び電荷制御剤を含有する。結着樹脂は、ブロックポリマーを含む。ブロックポリマーは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有する。電荷制御剤は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂(以下、特定スチレンアクリル樹脂と記載することがある)を含む。トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合は、1.5質量%以上12.0質量%以下である。
【0018】
本発明のトナーは、例えば正帯電性を有する磁性トナー(一成分現像剤)として、静電潜像の現像に用いることができる。
【0019】
本発明のトナーは、上述の構成を備えることにより、現像性に優れ、かつ現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できる。ここで、現像スリーブ上でのトナー層乱れについて説明する。一成分現像剤を用いた画像形成の際、トナー及び現像スリーブには鏡像力が働く。この鏡像力により、トナーは、現像スリーブに付着する。その結果、トナーを含むトナー層が現像スリーブ上に形成される。トナー層に含まれるトナーは、必要に応じて現像に供される。しかし、トナー及び現像スリーブに働く鏡像力が過度に大きい場合、トナー層に含まれるトナーのうち一部(具体的には、トナー層の厚さ方向において現像スリーブに近い側の領域に存在するトナー)は、現像スリーブに強固に付着し、現像に供されなくなる傾向がある。その結果、トナー層にムラが発生する。このような現象を現像スリーブ上でのトナー層乱れという。現像スリーブ上でのトナー層乱れは、形成される画像の濃度ムラの原因となる。
【0020】
本発明のトナーが現像性に優れ、かつ現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できる理由を以下に説明する。以下の説明では、トナー層の厚さ方向において、現像スリーブ側の方向を「下」と記載し、現像スリーブと反対側の方向を「上」と記載することがある。まず、現像スリーブ上に形成されるトナー層が帯電するメカニズムを説明する。トナー層では、トナー層の最下部に位置するトナー(現像スリーブと直接接触しているトナー)が、現像スリーブと摩擦することで帯電する。そして、帯電した最下部のトナーから隣接する別のトナーへと電荷移動が発生することで、トナー層の上方のトナーも帯電し、最終的にトナー層に含まれる全てのトナーが帯電する。トナー層における電荷の移動速度は、トナーの時定数τ(トナーの電気抵抗及び誘電率の積)に依存する傾向がある。具体的には、時定数τが小さいトナーにより形成されるトナー層は、電荷の移動速度が高く、トナーの帯電量分布が狭小となる(トナー層に含まれる全てのトナーが安定的に帯電している)傾向がある。トナー層に含まれるトナーの帯電量分布が狭小であると、トナーの現像性が増大し、形成される画像の画像濃度が増大する。また、トナー層は、現像ニップ部において、トナーに対して電界が作用し、トナー層に電荷が注入される現象が発生する。時定数τが小さいトナーにより形成されるトナー層は、上述の現象によって多量の電荷が注入される傾向がある。トナー層に多量の電荷が注入されると、トナーの現像性が更に増大する。但し、時定数τが過度に小さいトナーにより形成されたトナー層は、最下部のトナーから現像スリーブへと電荷が抜けることにより帯電量が低下し(帯電緩和)、トナー層の厚さが低下する傾向がある。トナー層の厚さが低下すると、トナーの現像性が低下する。以上から、トナーは、現像性の観点から、時定数τが適度に低いことが好ましい。
【0021】
本発明のトナーにおいて、時定数τは、トナー母粒子における特定スチレンアクリル樹脂の分散性によって主に決定される。具体的には、特定スチレンアクリル樹脂がトナー母粒子に高度に分散しているトナーは、電気抵抗が高くなるため、時定数τが大きい傾向がある。ここで、本発明のトナーが備えるトナー母粒子は、ブロックポリマーを結着樹脂として含有する。ブロックポリマーは、スチレンアクリル樹脂と親和性の高いビニルポリマー部位と、スチレンアクリル樹脂と親和性の低いポリエステル部位とを有する。その結果、ブロックポリマーは、特定スチレンアクリル樹脂が過度に分散することを抑制する。このように、本発明のトナーは、特定スチレンアクリル樹脂及びブロックポリマーを組み合わせて用いることにより、時定数τが適度に低く調整されているため、現像性に優れる。
【0022】
また、トナーは、トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合が高いほど時定数τが低くなる傾向がある。そのため、電荷制御剤の含有割合は、ある程度高いことが好ましい。但し、電荷制御剤の含有割合が過度に高いトナーは、過剰に帯電し易く、現像スリーブ上に強固に付着してトナー層乱れを発生させる傾向がある。これに対して、本発明のトナーは、電荷制御剤の含有割合が1.5質量%以上12.0質量%以下であるため、優れた現像性を発揮しつつ、現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できる。
【0023】
[時定数τ]
本発明のトナーは、温度20℃、湿度65%HRでの時定数τ(トナーの電気抵抗及び誘電率の積)が0.10秒以上20.00秒以下であることが好ましく、0.50秒以上5.00秒以下であることがより好ましい。本発明のトナーの時定数τを0.10秒以上20.00秒以下とすることで、現像スリーブ上に形成されるトナー層でのトナーの帯電量分布が狭小化する。その結果、本発明のトナーは、より優れた現像性を発揮できる。ここで、本発明のトナーの時定数τは、実施例に記載の方法又はこれに準拠する方法により測定される。本発明のトナーの時定数τは、例えば、結着樹脂の種類、又は電荷制御剤の種類及び含有割合を変更することにより調整することができる。具体的には、トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合を高くするほど、本発明のトナーの時定数τは低くなる傾向がある。
【0024】
[等電点]
本発明のトナーは、水中でのゼータ電位測定により測定される等電点(ゼータ電位が0となるpH)が3.00以上5.00以下であることが好ましく、3.00以上4.00以下であることがより好ましい。本発明のトナーの等電点を3.00以上とすることで、現像性をより向上できる。本発明のトナーの等電点を5.00未満とすることで、現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生をより効果的に抑制できる。ここで、本発明のトナーの等電点は、実施例に記載の方法又はこれに準拠する方法により測定される。本発明のトナーの等電点は、例えば、電荷制御剤の種類及び含有割合を変更することにより調整することができる。具体的には、トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合を高くするほど、本発明のトナーの等電点が高くなる傾向がある。
【0025】
なお、上述の等電点は、現像スリーブ及びトナー間の仕事関数差を示す指標である。詳しくは、トナーの仕事関数は、高精度で測定することが困難である。そこで、トナーの仕事関数と相関する上述の等電点を調整することにより、現像スリーブ及びトナー間の仕事関数差を適切に設計することができる。上述の等電点(ゼータ電位が0となるpH)が3.00以上5.00以下であるトナーは、正帯電性トナーとして適切な帯電性を発揮する傾向がある。
【0026】
以下、トナーの詳細を更に説明する。なお、以下に記載する各成分については、特に断りのない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
[トナー粒子]
図1は、トナーに含まれるトナー粒子1の一例を示す。図1に示すトナー粒子1は、トナー母粒子2と、トナー母粒子2の表面に付着した外添剤とを備える。外添剤は、外添剤粒子3を含む。
【0028】
但し、トナー粒子は、図1に示すトナー粒子1とは異なる構造であってもよい。具体的には、トナー粒子は、外添剤を含んでいなくてもよい。以上、トナー粒子の詳細について、図1を基に説明した。
【0029】
[トナー母粒子]
トナー母粒子は、結着樹脂、磁性紛及び電荷制御剤を含有する。トナー母粒子は、必要に応じて、内添剤(例えば、離型剤及び着色剤の少なくとも1つ)を更に含有してもよい。
【0030】
良好な画像を形成する観点から、トナー母粒子の体積中位径(D50)としては、4μm以上9μm以下が好ましい。
【0031】
(結着樹脂)
トナー母粒子は、例えば主成分として結着樹脂を含有する。結着樹脂は、ブロックポリマーを含む。結着樹脂は、ブロックポリマーに加え、他の樹脂(例えば、ポリエステル樹脂及びビニル樹脂)を更に含んでもよい。
【0032】
トナー母粒子における結着樹脂の含有割合としては、30質量%以上90質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0033】
(ブロックポリマー)
ブロックポリマーは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有する。ブロックポリマーは、ポリエステル部位及びビニルポリマー部位を連結する連結部位を更に有してもよい。連結部位は、例えば、ビニル基と、カルボキシ基及びアルコール性水酸基のうち少なくとも1種とを有する特定化合物(以下、両反応性モノマーと記載することがある)に由来する。
【0034】
ブロックポリマー中のビニルポリマー部位は、ビニル化合物に由来する繰り返し単位を有する。ビニル化合物とは、ビニル基(CH2=CH-)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物である(但し、両反応性モノマーに該当する化合物を除く)。ビニル化合物は、ビニル基又はビニル基中の水素が置換された基に含まれる炭素-炭素二重結合(C=C)により付加重合し、ビニルポリマー部位を形成する。
【0035】
ビニル化合物としては、例えば、スチレン系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルエステル、(メタ)アクリロニトリル及び塩化ビニルが挙げられる。
【0036】
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、及びp-n-ドデシルスチレンが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸フェニルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。
【0039】
ビニル化合物としては、スチレン系化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0040】
ブロックポリマー中のポリエステル部位は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで形成される繰り返し単位を有する。多価アルコールとしては、例えば、以下に示すような、2価アルコール(例えば、ジオール類、及びビスフェノール類)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、以下に示すような、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体(例えば、多価カルボン酸の無水物、及び多価カルボン酸ハライド)を使用してもよい。
【0041】
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ペンテン-1,5-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4-ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0042】
ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0043】
3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0044】
2価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(例えば、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸)、及びアルケニルコハク酸(例えば、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
【0045】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシ-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0046】
ブロックポリマーにおいて、多価カルボン酸としては、テレフタル酸又はイソフタル酸が好ましい。ブロックポリマーにおいて、多価アルコールとしては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物又はエチレングリコールが好ましい。
【0047】
連結部位を形成する両反応性モノマーとしては、ブロックポリマーを合成し易くする観点から、1個のビニル基と1個のカルボキシ基とを有する化合物、又は1個のビニル基と1個の水酸基とを有する化合物が好ましい。
【0048】
両反応性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、フマル酸及びマレイン酸が挙げられる。両反応性モノマーとしては、アクリル酸が好ましい。
【0049】
結着樹脂にブロックポリマーが含まれているか否かは、例えば、GC-MS分析によって確認することができる。具体的には、本発明のトナーをGC-MS分析し、両反応性モノマーに由来する連結部位と、ビニルポリマー部位の断片と、ポリエステル部位の断片とを有するフラグメントイオンが検出された場合、結着樹脂にブロックポリマーが含まれていると確認できる。
【0050】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂の原料となる多価アルコール及び多価カルボン酸としては、例えば、上述のブロックポリマーの原料として例示した多価アルコール及び多価カルボン酸と同様の化合物が挙げられる。
【0051】
ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、エチレングリコールとの縮重合物、テレフタル酸と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、ビスフェノールプロピレンオキサイド付加物との縮重合物、又はイソフタル酸と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、エチレングリコールとの縮重合物が好ましい。
【0052】
(ビニル樹脂)
ビニル樹脂は、ビニル化合物を含む単量体の重合体である。ビニル樹脂の原料となるビニル化合物としては、例えば、上述のブロックポリマーの原料として例示したビニル化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0053】
ビニル樹脂としては、スチレン系化合物を含む単量体の重合体が好ましく、ポリスチレン樹脂がより好ましい。
【0054】
結着樹脂において、ブロックポリマー、ポリエステル樹脂及びビニル樹脂の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0055】
結着樹脂の軟化点としては、例えば、110℃以上130℃以下とすることができる。
【0056】
(結着樹脂の合成方法)
結着樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂と、両反応性モノマーと、ビニル化合物とを付加重合反応させる付加重合工程を備える方法により合成できる。この合成方法では、まず、ポリエステル樹脂の末端のカルボキシ基又は水酸基と、両反応性モノマー中のカルボキシ基又は水酸基とが縮合反応する。これにより、ポリエステル樹脂の末端に、両反応性モノマーに由来する繰り返し単位が導入される。そして、ポリエステル樹脂の末端に導入された両反応性モノマーと、ビニル化合物とで付加重合反応する。これにより、ポリエステル樹脂に由来するポリエステル部位と、両反応性モノマーに由来する連結部位と、ビニル化合物に由来するビニルポリマー部位とを有するブロックポリマーが得られる。詳しくは、ポリエステル樹脂に由来するポリエステル部位と、ポリエステル部位の末端に結合する連結部位と、連結部位に結合するビニルポリマー部位とを有するブロックポリマーが得られる。
【0057】
なお、付加重合工程において、ポリエステル樹脂の一部は、両反応性モノマーと反応せずに反応系に残存する場合がある。また、ビニル化合物の一部は、他のビニル化合物又は両反応性モノマーのみと反応し、ビニル樹脂を形成する場合がある。即ち、上述の合成方法で得られる結着樹脂には、ブロックポリマーに加え、ポリエステル樹脂及びビニル樹脂が含まれる場合がある。
【0058】
付加重合工程では、ポリエステル樹脂、両反応性モノマー及びビニル化合物に加え、多価カルボン酸(又はその無水物)を更に添加してもよい。多価カルボン酸を更に添加することで、ポリエステル樹脂の酸価を増大させることができ、その結果、合成される結着樹脂の酸価を増大させることができる。多価カルボン酸としては、トリメリット酸が好ましい。多価カルボン酸の添加量としては、例えば、ポリエステル樹脂100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である。以下、ポリエステル樹脂、両反応性モノマー及びビニル化合物と、必要に応じて添加される多価カルボン酸とを「反応原料」と記載することがある。
【0059】
反応原料の総量におけるポリエステル樹脂及び多価カルボン酸の合計割合としては、50.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以上80.0質量%以下がより好ましい。
【0060】
反応原料の総量における両反応性モノマーの割合としては、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0061】
反応原料の総量におけるビニル化合物の割合としては、10.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上35.0質量%以下がより好ましい。
【0062】
付加重合工程では、公知のラジカル重合開始剤(例えば、ジクミルパーオキシド)を添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、例えば、反応原料の総量100質量部に対して、0.5質量部以上4.0質量部以下である。
【0063】
(磁性粉)
磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、及びこれら金属の1種以上を含む合金)、強磁性金属酸化物(例えば、フェライト、マグネタイト及び二酸化クロム)、及び強磁性化処理が施された材料(例えば、熱処理により強磁性が付与された炭素材料)が挙げられる。
【0064】
良好な画像を形成する観点から、トナー母粒子における磁性粉の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、40質量部以上120質量部以下が好ましく、60質量部以上90質量部以下がより好ましい。
【0065】
磁性紛の個数平均一次粒子径としては、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.3μm以下がより好ましい。
【0066】
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制する観点から、磁性粉は、表面処理されていることが好ましい。トナー母粒子の表面に金属イオンが溶出すると、トナー母粒子同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナー母粒子同士の固着を抑制できると考えられる。
【0067】
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、特定スチレンアクリル樹脂を含む。ここで、スチレンアクリル樹脂とは、スチレン系化合物(例えば、スチレン)に由来する繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位とを有する樹脂である。電荷制御剤は、特定スチレンアクリル樹脂のみを含むことが好ましい。
【0068】
トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合としては、1.5質量%以上12.0質量%以下であり、3.0質量%以上8.0質量%が好ましい。電荷制御剤の含有割合を1.5質量%以上とすることで、本発明のトナーの現像性を向上できる。電荷制御剤の含有割合を12.0質量%以下とすることで、現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できる。
【0069】
4級アンモニウム基としては、一般式(-N+123)で表される基が好ましい。ここで、R1~R3は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。R1~R3は、各々独立に、メチル基又はエチル基を表すことが好ましい。
【0070】
特定スチレンアクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(A)と記載する場合がある)に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0071】
【化1】
【0072】
一般式(1)中、R1~R3は、各々独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を表す。R4は、水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基を表す。
【0073】
一般式(1)中、R1~R3は、各々独立に、メチル基又はエチル基を表すことが好ましい。R5は、エチレン基を表すことが好ましい。
【0074】
化合物(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル及びパラトルエンスルホン酸アルキルエステルの反応(4級化反応)により得ることができる。詳しくは、上述の4級化反応により、化合物(A)の塩が得られる。
【0075】
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルとしては、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルが好ましい。
【0076】
パラトルエンスルホン酸アルキルエステルとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル及びパラトルエンスルホン酸プロピルが挙げられる。パラトルエンスルホン酸アルキルエステルとしては、反応性の観点から、パラトルエンスルホン酸メチルが好ましい。
【0077】
上述の4級化反応において、パラトルエンスルホン酸アルキルエステルの使用量としては、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル1モルに対して、0.8モル以上1.5モル以下が好ましく、1.0モル以上1.2モル以下がより好ましい。
【0078】
特定スチレンアクリル樹脂は、化合物(A)に由来する繰り返し単位に加え、スチレン系化合物に由来する繰り返し単位、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位のうち少なくとも1種を更に有することが好ましい。特定スチレンアクリル樹脂の原料となるスチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、上述のブロックポリマーの原料として例示したスチレン化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと同様の化合物が挙げられる。
【0079】
特定スチレンアクリル樹脂の有する全繰り返し単位のうち、化合物(A)に由来する繰り返し単位の割合としては、20モル%以上60モル%以下が好ましく、30モル%以上45モル%以下がより好ましい。化合物(A)に由来する繰り返し単位の割合を20モル%以上とすることで、本発明のトナーの帯電性を充分に確保できる。化合物(A)に由来する繰り返し単位の質量割合を60モル%以下とすることで、結着樹脂に対する特定スチレンアクリル樹脂の相溶性を向上できる。その結果、本発明のトナーの耐湿性が向上する。
【0080】
特定スチレンアクリル樹脂は、例えば、単量体(化合物(A)の塩、並びに必要に応じて用いられるスチレン系化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル)を混合し、重合開始剤の存在下に共重合させることで合成できる。得られた特定スチレンアクリル樹脂は、そのまま電荷制御剤として用いてもよく、4級アンモニウム塩(例えば、ベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルホネート)と反応させてから電荷制御剤として用いてもよい。
【0081】
共重合の方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合及び乳化重合が挙げられる。溶液重合で使用する溶剤としては、例えば、ケトン溶剤(例えば、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン)、アルコール溶剤(例えば、ノルマルブタノール及びイソブタノール)、エステル溶剤(例えば、酢酸エチル及び酢酸イソブチル)、及び芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン及びキシレン)が挙げられる。溶剤としては、アルコール溶剤が好ましく、イソブタノールがより好ましい。
【0082】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物系開始剤(例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン及びジベンゾイルパーオキサイド)、及びアゾ系開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))が挙げられる。重合開始剤の使用量としては、例えば、単量体100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下である。
【0083】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、本発明のトナーに耐オフセット性を付与する目的で使用される。
【0084】
離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス(例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス)、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物(例えば、酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体)、植物系ワックス(キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックス)、動物系ワックス(例えば、蜜蝋、ラノリン、及び鯨ろう)、鉱物系ワックス(例えば、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタム)、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス(例えば、モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックス)、並びに脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)が挙げられる。離型剤としては、カルナバワックスが好ましい。
【0085】
トナー母粒子が離型剤を含有する場合、トナー母粒子における離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上12質量部以下がより好ましい。離型剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることで、本発明のトナーの耐オフセット性を向上できる。
【0086】
トナー母粒子が離型剤を含有する場合、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、トナー母粒子は相溶化剤を更に含有してもよい。
【0087】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。
【0088】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。黒色着色剤として、磁性粉を用いてもよい。すなわち、トナー母粒子は、磁性粉以外の着色剤を含まなくてもよい。
【0089】
[外添剤]
トナー粒子は、トナー母粒子の表面に付着する外添剤を備えることが好ましい。外添剤は、外添剤粒子を含む。外添剤粒子としては、無機粒子が好ましい。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子(特に、乾式シリカ粒子)、及び金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウム)の粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ粒子が好ましい。無機粒子の個数平均一次粒子径としては、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下がより好ましい。
【0090】
トナー粒子が外添剤を備える場合、その含有量としては、トナー母粒子100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0091】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法の一例を説明する。トナーの製造方法は、トナー母粒子を調製するトナー母粒子調製工程を備える。また、トナーの製造方法は、トナー母粒子調製工程に加え、他の工程(例えば後述する外添工程)を更に備えてもよい。
【0092】
(トナー母粒子調製工程)
トナー母粒子調製工程では、例えば粉砕法又は凝集法によりトナー母粒子を調製する。
【0093】
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、磁性粉、及び電荷制御剤と、必要に応じて添加される他の内添剤とを混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナー母粒子が得られる。
【0094】
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、磁性粉及び電荷制御剤と、必要に応じて添加される他の内添剤との各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂等を含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、トナー母粒子が得られる。
【0095】
(外添工程)
本工程では、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる方法としては、例えば混合装置を用いて、トナー母粒子と、外添剤粒子とを攪拌しながら混合する方法が挙げられる。
【実施例
【0096】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0097】
[結着樹脂の合成]
以下の方法により、結着樹脂(BP-a)~(BP-c)と、結着樹脂(PEs)と、結着樹脂(St)とを合成した。結着樹脂(BP-a)~(BP-c)は、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有するブロックポリマーを含んでいた。結着樹脂(PEs)は、ポリエステル樹脂を含んでいた。結着樹脂(St)は、スチレン樹脂を含んでいた。
【0098】
(結着樹脂(BP-a))
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した容量10リットルの四つ口フラスコを反応容器として用いた。反応容器に、テレフタル酸810gと、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物585gと、エチレングリコール340gとを投入した。次に、反応容器の内部の空気を窒素ガスで置換した。次に、反応容器をマントルヒーターにセットし、反応容器の内容物を250℃まで昇温させた。そして、反応容器の内容物を250℃で4時間保持することにより、縮重合反応させた(第1縮重合反応)。第1縮重合反応後、反応容器の内容物を160℃に冷却した。冷却後、反応容器の内容物の温度を160℃に保ちつつ、無水トリメリット酸288gを反応容器に添加した。その後、反応容器の内容物の温度を160℃に保ちつつ、反応容器の内容物を攪拌しながら、スチレン818gと、アクリル酸38gと、ジクミルパーオキサイド50gとの混合物を1時間かけて反応容器に滴下した。その後、反応容器の内容物を160℃で1時間保持することにより、付加重合反応させた。付加重合反応後、反応容器の内容物を200℃に昇温させることにより縮重合反応を行った(第2縮重合反応)。第2縮重合反応の反応時間は、反応容器の内容物(樹脂)の軟化点が120℃になる時間に調整した。これにより、結着樹脂(BP-a)を得た。
【0099】
(結着樹脂(BP-b))
以下の点を変更した以外は、結着樹脂(BP-a)の合成と同様の方法により、結着樹脂(BP-b)を合成した。結着樹脂(BP-b)の合成では、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物の添加量を585gから732gに変更した。また、結着樹脂(BP-b)の合成では、エチレングリコール338gを添加する代わりに、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物1838gを添加した。なお、結着樹脂(BP-b)の軟化点は、106℃であった。
【0100】
(結着樹脂(BP-c))
以下の点を変更した以外は、結着樹脂(BP-a)の合成と同様の方法により、結着樹脂(BP-c)を合成した。結着樹脂(BP-c)の合成では、テレフタル酸810gを添加する代わりに、イソフタル酸810gを添加した。なお、結着樹脂(BP-c)の軟化点は、108℃であった。
【0101】
(結着樹脂(PEs))
以下の点を変更した以外は、結着樹脂(BP-a)の合成と同様の方法により、結着樹脂(PEs)を合成した。結着樹脂(PEs)の合成では、テレフタル酸の添加量を810gから1080gに変更した。また、結着樹脂(PEs)の合成では、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物の添加量を585gから680gに変更した。また、結着樹脂(PEs)の合成では、エチレングリコールの添加量を340gから450gに変更した。また、結着樹脂(PEs)の合成では、第1縮重合反応後、反応容器の内容物をそのまま結着樹脂(PEs)(軟化点108℃)として用いた。即ち、結着樹脂(PEs)の合成では、無水トリメリット酸、アクリル酸、スチレン及びジクミルパーオキサイドの添加と、その後の反応(付加重合反応及び第2縮重合反応)とを省略した。
【0102】
(結着樹脂(St))
温度計、ステンレス製攪拌機及び窒素導入管を装備した10Lのオートクレーブを反応容器として用いた。反応容器に、イオン交換水5000gと、部分酸化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノール(登録商標)GH-20」)4.0gと、スチレン2000gと、ベンゾイルパーオキサイド(日油株式会社製「ナイパー(登録商標)BW」)180gとを投入した。次に、反応容器の内部の空気を窒素ガスで置換した。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器の内容物を130℃まで昇温させた。次に、反応容器の内容物を130℃で1時間保持することにより、付加重合反応させた。付加重合反応後、反応容器の内容物に対して、ろ過処理、洗浄処理、脱水処理及び乾燥処理を行うことにより、結着樹脂(St)(軟化点107℃)を得た。
【0103】
[電荷制御剤の準備]
以下の方法により、電荷制御剤(CCR-a)~(CCR-b)を合成した。電荷制御剤(CCR-a)~(CCR-b)は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂であった。
【0104】
(電荷制御剤(CCR-a)の合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計及び窒素導入管を装備した容量2Lのフラスコ(反応容器)に、イソブタノール270gと、ジエチルアミノエチルメタクリレート27gと、パラトルエンスルホン酸メチル27gとを投入した。次に、反応容器の内部の空気を窒素ガスで置換した。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、80℃で1時間保持することで、ジエチルアミノエチルメタクリレートの4級化反応を行った。これにより、ジエチルアミノエチル(メタ)クリレートに由来する4級アンモニウム塩(化合物(A)の塩)を得た。
【0105】
その後、窒素雰囲気を維持しつつ、反応容器に、スチレン315gとアクリル酸ブチル108と、過酸化物系開始剤としてのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート18gとを投入した。その後、反応容器の内容物を攪拌しながら95℃まで昇温させた。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、95℃で3時間保持することで、付加重合反応を行った。次に、窒素雰囲気を維持しつつ、反応容器に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート9gを更に加えた。次に、反応容器の内容物を攪拌しながら、95℃で3時間保持することで、残留モノマーを処理した。これにより、重合体溶液を得た。この重合体溶液を加熱減圧乾燥することで溶剤分を除去した後、得られた固形分を解砕することにより、電荷制御剤(CCR-a)を得た。
【0106】
(電荷制御剤(CCR-b)の合成)
容量5Lのフラスコ(反応容器)に、上述の電荷制御剤(CCR-a)500gと、ベンジルトリブチルアンモニウム-4-ヒドロキシナフタレン-1-スルホネート500gと、溶剤としてのメチルエチルケトン1000gとを投入した。その後、反応容器の内容物を攪拌しながら、固形分が溶剤に溶解するまで反応容器の内容物を昇温させた(第1昇温)。その後、反応容器の内容物を攪拌しながら、反応容器の内容物を140℃に昇温させた(第2昇温)。第2昇温においては、溶剤が沸騰し始めたら、沸騰した溶剤を反応容器外に排出させた。その後、反応容器の内容物の温度を140℃に維持しながら、反応容器内の絶対圧力が10kPa以下になるまで減圧した。これにより、反応容器の内容物から溶剤を除去した。その結果、溶融状態の樹脂を得た。この溶融状態の樹脂成分を反応容器から取り出し、冷却及び粉砕することにより、電荷制御剤(CCR-b)を得た。
【0107】
(電荷制御剤(CCA))
電荷制御剤(CCA)として、ニグロシン染料であるオリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)N-04」を用意した。電荷制御剤(CCA-a)は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂ではない電荷制御剤であった。
【0108】
<トナーの製造>
以下の方法により、実施例1~7のトナーA~G及び比較例1~5のトナーh~lを製造した。下記表1に、各トナーの備えるトナー母粒子の組成を示す。
【0109】
[実施例1]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)に、結着樹脂(BP-a)2040g(100質量部)と、磁性粉(戸田工業株式会社製「マグネタイトMRO-15A」、個数平均一次粒子径0.18μm)1600g(78.4質量部)と、電荷制御剤(CCR-a)200g(9.8質量部)と、離型剤としてのカルナウバワックス(加藤洋行株式会社製「特製カルナバ1号」)160gとを投入した。そして、FMミキサーの内容物を回転速度200rpmで5分間にわたって混合した。
【0110】
得られた混合物を、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM-26SS」)を用いて、材料供給速度75g/分、軸回転速度100rpm、設定温度(シリンダー温度、溶融混練温度に相当)120℃の条件で、溶融混練した。得られた混練物を冷却した後、冷却後の混練物を粉砕機(株式会社ホソカワミクロン製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)で粗粉砕した。その後、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルTA型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製「MJT-1」)に投入し、更なる微粉砕を行いつつ分級した。これにより、トナー母粒子を得た。
【0111】
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10C」)に、上述のトナー母粒子200gと、外添剤としてのシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、BET比表面積90m2/g、体積中位径(D50)20nm)2gとを投入した。そして、FMミキサーの内容物を、回転速度2,000rpmで5分間にわたって混合した。得られた混合物を、200メッシュ(目開き75μm)の篩により篩別した。これにより、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着する外添剤とを備える実施例1のトナーAを得た。
【0112】
[実施例2~7及び比較例1~5]
結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤及び離型剤の種類及び添加量を下記表1に示す通りとした以外は、実施例1のトナーAの製造と同様の方法により、実施例2~7のトナーB~Gと、比較例1~5のトナーh~lとを製造した。
【0113】
なお、下記表1の比較例4において、結着樹脂の欄は、結着樹脂(PEs)370gと結着樹脂(St)1670gとの混合物を結着樹脂として用いたことを示す。
【0114】
【表1】
【0115】
以下の方法により、各トナーの等電点及び時定数τを測定した。測定は、温度20℃、湿度65%RHにて行った。測定結果を下記表2に示す。
【0116】
[等電点の測定]
ノニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)10質量部と、イオン交換水90質量部とを混合し、濃度10質量%の界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液2mLに、測定対象(詳しくは、トナーA~G及びh~lの何れか)50mgを添加した後、超音波照射(周波数:40kHz、出力:500W、照射時間:1分間)した。これにより、トナー分散液を得た。その後、トナー分散液をイオン交換水で50倍に希釈した。希釈されたトナー分散液を、測定溶液とした。
【0117】
測定溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH11.00に調整した。そして、pH11.00の測定溶液について、レーザードップラー方式のゼータ電位計(大塚電子株式会社製「ELSZ-1000」)を用いてゼータ電位を測定した。その後、pH11.00の測定溶液に0.1N硝酸水溶液を滴定することでpHを徐々に低下させながら、上述のゼータ電位計を用いてゼータ電位を測定した。この操作を、測定溶液のpHが3.00になるまで行った。即ち、pH3.00以上pH11.00以下の測定範囲で、測定試料の等電点を測定した。測定結果に基づいて、測定対象の等電点を算出した。
【0118】
[時定数τの測定]
測定対象(詳しくは、トナーA~G及びh~lの何れか)20mgを、安藤電気株式会社製「粉体用電極SE-43形」の電極間に挟んだ。そして、荷重40kgf/cm2を加えることにより、上述の測定試料をペレット化(厚さ100μm)した。次に、上述の電極の両端に、周波数応答解析装置(Solartron Analytical社製「1260型周波数応答解析装置」)を接続した。そして、上述の周波数応答解析装置を用い、測定試料の電気特性を測定してcole-coleプロットを作成した。電気特性の測定条件は、電圧10Vpp、周波数40Hz-100kHz(5pt/decade)、測定回数3サイクルとした。そして、測定試料をRC等価並列回路と見做してフィッティングすることにより、測定試料の電気抵抗及び誘電率を測定した。そして、測定試料の電気抵抗及び誘電率に基づき、測定試料の時定数τ[秒](電気抵抗及び誘電率の積)を算出した。
【0119】
<評価>
以下に示す方法により、各トナーの帯電量、現像性(画像濃度)及びスリーブ上でのトナー層乱れについて評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0120】
各評価において、評価機としては、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「ECOSYS(登録商標)FS-P3060DN」)を用いた。評価機のブラック用現像装置に評価対象(トナーA~G及びh~lの何れか)を投入した。また、評価機のブラック用トナーコンテナに、補給用トナー(評価対象のトナーと同一のトナー)を投入した。
【0121】
[現像性]
温度23℃、湿度50%RHのN/N環境下、評価機を用いて、印字率1%の文字原稿を5,000枚の印刷用紙に両面モードで印刷した。その後、ソリッド画像を含む評価用画像を1枚の印刷用紙に印刷した。反射濃度計(有限会社東京電色製「TC-6D」)を用い、評価用画像が印刷された印刷物のソリッド画像の画像濃度(ID)を測定した。トナーの現像性は、IDが1.20以上の場合を「良好(A)」、1.20未満の場合を「不良(B)」と評価した。
【0122】
[帯電量]
現像性の評価後の評価機から現像装置及び感光体ドラムを取り出した。Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS-1」)を用い、現像装置の現像スリーブにおいて現像ニップ部の直前に相当する領域のトナー層からトナーを吸引してその帯電量[μC/g]を測定した(スリーブ上の帯電量)。また、上述のQ/mメーターを用い、感光体ドラムにおいて現像ニップ部の直後に相当する領域からトナーを吸引してその帯電量[μC/g]を測定した(ドラム上の帯電量)。トナーの帯電量は、その値が大きいほど現像性に優れる傾向があるため好ましい。但し、トナーの帯電量が極端に大きい場合(例えば、帯電量が8.5μC/g以上)は、現像スリーブ上でのトナー層乱れが発生し易いため好ましくない。
【0123】
[トナー層乱れ]
温度10℃、湿度15%RHのL/L環境下、評価機を用いて、印字率1%の文字原稿を5,000枚の印刷用紙に両面モードで印刷した。その後、評価機から現像装置を取り出し、現像スリーブを目視で確認した。トナー層乱れは、現像スリーブ上にトナー層乱れが確認されない場合を「良好(A)」、現像スリーブ上にトナー層乱れが確認された場合を「不良(B)」と評価した。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例1~7のトナーA~Gは、各々、トナー粒子を含んでいた。トナー粒子は、トナー母粒子を備えていた。トナー母粒子は、結着樹脂、磁性粉及び電荷制御剤を含有していた。結着樹脂は、ブロックポリマーを含んでいた。ブロックポリマーは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位とを有していた。電荷制御剤は、4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂を含んでいた。トナー母粒子における電荷制御剤の含有割合は、1.5質量%以上12.0質量%以下であった。表2に示すように、実施例1~7のトナーA~Gは、各々、現像性に優れ、かつ現像スリーブ上でのトナー層乱れの発生を抑制できた。
【0126】
一方、比較例1~5のトナーh~lは、各々、上述の構成を備えていなかったため、現像性に劣るか、又は現像スリーブ上でのトナー層乱れが発生した。
【0127】
詳しくは、比較例1のトナーhは、電荷制御剤の含有割合が1.5質量%未満であった。その結果、比較例1のトナーhは、現像性が低下し、十分な画像濃度を有する画像を形成できなかったと判断される。
【0128】
比較例2のトナーiは、電荷制御剤の含有割合が12.0質量%超であった。その結果、比較例2のトナーiは、過剰に帯電し、トナー層乱れが発生したと判断される。
【0129】
比較例3のトナーjは、結着樹脂がブロックポリマーを含有していなかった。その結果、比較例3のトナーjは、電荷制御剤が結着樹脂に過剰に分散したため、時定数τが増大しと判断される。これにより、比較例3のトナーjは、トナーの帯電量分布が広範になり、現像性が低下したと判断される。
【0130】
比較例4のトナーkは、結着樹脂がポリエステル樹脂及びスチレン樹脂を含有していた。その結果、比較例4のトナーkは、電荷制御剤が結着樹脂に十分に分散しなかったため、時定数τが過度に低下したと判断される。これにより、比較例4のトナーkは、帯電緩和が発生し、現像性が低下したと判断される。
【0131】
比較例5のトナーlは、電荷制御剤が4級アンモニウム基を有するスチレンアクリル樹脂を含んでいなかった。その結果、比較例5のトナーlは、電荷制御剤の分散性を制御できず、電荷制御剤が結着樹脂に十分に分散しなかったため、時定数τが過度に低下したと判断される。これにより、比較例5のトナーlは、帯電緩和が発生し、現像性が低下したと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のトナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0133】
1 トナー粒子
2 トナー母粒子
3 外添剤粒子
図1