(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】埋込磁石形回転子および回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20230719BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2019228989
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】上野 駿
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109067039(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0175681(US,A1)
【文献】国際公開第2020/095823(WO,A1)
【文献】特開2001-231196(JP,A)
【文献】特開2006-254620(JP,A)
【文献】特開2014-200150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/276
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心の周方向に磁極を複数形成した埋込磁石形回転子であって、
各々の前記磁極は、前記鉄心の外周側から軸心にかけて永久磁石が複数層配置されるとともにフラックスバリアを有し、
第1パターンの前記フラックスバリアと、前記第1パターンとは形状の異なる第2パターンの前記フラックスバリアが、前記鉄心の周方向または軸方向に周期的に配置され、
前記第1パターンの前記フラックスバリアを有する領域と、前記第2パターンの前記フラックスバリアを有する領域の間で、前記永久磁石の形状および配置が共通であ
り、
前記磁極には、前記鉄心の周方向に間隔をおいて一対の前記フラックスバリアが配置され、
各々の前記磁極は、前記鉄心の外周側に配置された前記永久磁石に対応する一対の第1のフラックスバリアと、前記鉄心の軸心側に配置された前記永久磁石に対応する一対の第2のフラックスバリアとを有し、
前記第1パターンにおける前記第1のフラックスバリアの周方向間隔は、前記第2パターンにおける前記第1のフラックスバリアの周方向間隔よりも大きく設定され、
前記第2パターンにおける前記第2のフラックスバリアの周方向間隔は、前記第1パターンにおける前記第2のフラックスバリアの周方向間隔よりも大きく設定される
埋込磁石形回転子。
【請求項2】
固定子と、
請求項
1に記載の埋込磁石形回転子と
を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込磁石形回転子および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
EV,HEV,PHEV等の電動車両においては、さらなる低振動化、低騒音化が要望されている。かかる低振動化や低騒音化のためには、モータにおけるコギングトルクやトルクリプル等の電磁加振力の低減が重要になる。
【0003】
例えば、永久磁石が多層で埋め込まれた埋込磁石形回転子を採用したモータの電磁加振力を低減させる手法として、例えば、非特許文献1には、回転子の磁極間で、V字に配置された永久磁石の配置を変化させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“Retrospective of Electric Machines for EV and HEV Traction Applications at General Motors” IEEE 2016, Khwaja Rahman et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、回転子の磁極間で永久磁石の寸法や配置角度などを変更すると、磁極間で異なる治具を用いて永久磁石を回転子に挿入する必要が生じて回転子の組立作業がその分煩雑となってしまう。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、組立作業の煩雑さを抑制しつつ、電磁加振力を低減できる埋込磁石形回転子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、鉄心の周方向に磁極を複数形成した埋込磁石形回転子である。各々の磁極は、鉄心の外周側から軸心にかけて永久磁石が複数層配置されるとともにフラックスバリアを有する。埋込磁石形回転子において、第1パターンのフラックスバリアと、第1パターンとは形状の異なる第2パターンのフラックスバリアが、鉄心の周方向または軸方向に周期的に配置され、第1パターンのフラックスバリアを有する領域と、第2パターンのフラックスバリアを有する領域の間で、永久磁石の形状および配置が共通である。
【0008】
上記の埋込磁石形回転子において、前記磁極には、鉄心の周方向に間隔をおいて一対のフラックスバリアが配置されてもよく、第1パターンおよび第2パターンの間で、一対のフラックスバリアの周方向間隔が異なっていてもよい。
【0009】
上記の埋込磁石形回転子において、各々の磁極は、鉄心の外周側に配置された永久磁石に対応する一対の第1のフラックスバリアと、鉄心の軸心側に配置された永久磁石に対応する一対の第2のフラックスバリアとを有していてもよい。また、第1パターンおよび第2パターンの間で、一対の第1のフラックスバリアおよび一対の第2のフラックスバリアの少なくともいずれかの周方向間隔が異なっていてもよい。
【0010】
また、第1パターンにおける第1のフラックスバリアの周方向間隔は、第2パターンにおける第1のフラックスバリアの周方向間隔よりも大きく設定されてもよく、第2パターンにおける第2のフラックスバリアの周方向間隔は、第1パターンにおける第2のフラックスバリアの周方向間隔よりも大きく設定されてもよい。
また、本発明の他の態様に係る回転電機は、固定子と、上記の埋込磁石形回転子とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の埋込磁石形回転子によれば、組立作業の煩雑さを抑制しつつ、電磁加振力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】第1実施形態のロータの横断面を示す部分断面図である。
【
図3】第2実施形態のロータの構成例を示す図である。
【
図4】ロータにおける主磁極のパターンの変形例を示す図である。
【
図5】ロータにおける主磁極のパターンの変形例を示す図である。
【
図6】ロータにおける主磁極のパターンの変形例を示す図である。
【
図7】実施例におけるロータのトルク波形を示す図である。
【
図8】実施例におけるロータの誘起電圧波形を示す図である
【
図9】比較例におけるロータの誘起電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の回転電機における回転軸Axに直交する方向の横断面を示す断面図である。
図1に示す回転電機1は、インナーロータ型モータであり、埋込磁石形回転子の一例であるロータ2と、ロータ2の外周に配置される円筒形状のステータ3とを有する。
図1において、回転電機1の回転軸Axの延長方向(軸方向)は紙面垂直方向である。
【0015】
ロータ2の外周には、エアギャップを隔ててステータ3が配置される。回転電機1においては、コイルの電流制御によりステータ3の磁界を順番に切り替えることで、ロータ2の磁界との吸引力または反発力により、回転軸Axを中心としてロータ2が回転する。
【0016】
ステータ3は、回転軸Axを中心とする中央の空間部分にロータ2を収容する。ステータ3の内周側には、それぞれ回転軸Axに向けて径方向内側に突出するティース3aが周方向に等間隔をおいて複数並んで設けられている。隣り合うティース3aの間の空間は、それぞれスロット3bを形成する。スロット3bには、ロータ2の外周に沿って図示しないステータコイルが装着される。
【0017】
ロータ2は、鉄心4と、シャフト5と、永久磁石6を有する。
ロータ2の鉄心4は、例えば、打ち抜き加工された珪素鋼板を軸方向に積層して形成される円筒状の部材である。鉄心4を構成する個々の珪素鋼板の間には絶縁性接着剤が介在しており、個々の珪素鋼板は互いに絶縁状態にある。そして、鉄心4の軸心部には、回転軸Axに沿ってシャフト5が嵌入されている。回転電機1において、シャフト5は軸受(図示省略)により回転自在に支持されている。
【0018】
第1実施形態のロータ2は8極ロータであり、ロータ2の鉄心4には、周方向に沿って等間隔に8つの主磁極が構成されるように所定の配列で複数の永久磁石6が配置される。なお、ロータ2において周方向に隣り合う主磁極は、それぞれ逆の極性となるように永久磁石6が配置される。
【0019】
第1実施形態の鉄心4は、後述するように、それぞれフラックスバリアの形状が相違する2つの主磁極のパターン(第1パターン、第2パターン)を有している。
図1に示すように、第1パターンの主磁極と第2パターンの主磁極は鉄心4の周方向に交互に配置されており、周方向に隣接する主磁極の間ではフラックスバリアの形状が相違している。
【0020】
ここで、
図2を参照して、d軸、q軸について説明する。
図2は、ロータ2の回転軸Axに直交する方向の横断面を示す部分断面図である。
図2では、ロータ2の周方向に隣接する2つの主磁極を示している。その他の磁極は、
図2と同様であるので図示および重複説明はいずれも省略する。
【0021】
鉄心4において、
図1のロータ2の軸心(回転軸Ax)と、マグネットトルクを生成する任意の主磁極の中心(例えば、一対の永久磁石13a,13b(15a,15b)間の中央位置)とを結ぶ軸が、d-q軸座標のd軸となる。また、鉄心4のうち、一磁極分の主磁極の永久磁石13a,13b(15a,15b)と、この主磁極に周方向に隣接する主磁極の永久磁石13a,13b(15a,15b)との間の鉄心4は、リアクタンストルクを生成する補助磁極部16となる。さらに、ロータ2の軸心と補助磁極部16の中心とを結ぶ軸、即ち、上記のd軸と電気角で直交する軸が、d-q軸座標のq軸となる。
【0022】
また、
図2に示すように、各々の主磁極には、鉄心4の外周側と軸心側にそれぞれ一対ずつ磁石挿入孔がV字状に形成されている。
まず、鉄心4の外周側には、一対の磁石挿入孔12a,12bが形成されている。
図1に示すように、磁石挿入孔12a,12bは、鉄心4の周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、各々の磁石挿入孔12a,12bは、鉄心4の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に沿って鉄心を貫通するように形成されている。
【0023】
また、磁石挿入孔12a,12bよりもさらに鉄心4の軸心側においては、一対の磁石挿入孔14a,14bが、磁石挿入孔12a,12bと同様に、軸方向に沿って鉄心4を貫通するように形成されている。特に、磁石挿入孔14a,14bは、外周側の磁石挿入孔12a,12bよりも長径に形成されている。そして、この磁石挿入孔14a,14bも、
図1に示すように、鉄心4の周方向に沿って等間隔に形成されている。
【0024】
磁石挿入孔12a,12b,14a,14bは、主磁極のd軸に対して線対称の配置であり、且つ、鉄心4の外周に近づくにつれて配置角度が広くなるV字状に配置されている。特に、軸心側の磁石挿入孔14a,14bのV字の配置角度は、外周側の磁石挿入孔12a,12bの当該配置角度よりも小さく設定されている。
【0025】
また、磁石挿入孔12a,12bには、鉄心4の軸方向に沿う長板状の永久磁石13a,13bがそれぞれ挿入される。これにより、1つの主磁極において、鉄心4の外周側には鉄心4の周方向に一対の永久磁石13a,13bがV字状に配置される。
【0026】
同様に、磁石挿入孔14a,14bには、鉄心4の軸方向に沿う長板状の永久磁石15a,15bがそれぞれ挿入される。これにより、1つの主磁極において、鉄心4の軸心側には鉄心の周方向に一対の永久磁石15a,15bがV字状に配置される。なお、
図2に示すように、永久磁石15a,15bの横断面の長手方向の寸法L2は、永久磁石13a,13bの横断面の長手方向の寸法L1よりも長く設定されている。
【0027】
磁石挿入孔12a,12b,14a,14bに永久磁石13a,13b,15a,15bが挿入されることで、鉄心4の各磁極は、外周側と軸心側とで永久磁石が二層に配置された構造となる。また、永久磁石13a,13b,15a,15bのそれぞれにおいて外周側に臨む磁極面はいずれも同一の磁気極性(S極またはN極)になっている。以上のようにして、永久磁石13a,13b,15a,15bにより1つの主磁極が形成される。
【0028】
また、磁石挿入孔12aの外周側に臨む端部には、鉄心4の外周に沿ってd軸側へ内向きに延びる形状の第1のフラックスバリア17aが形成されている。同様に、磁石挿入孔12bの外周側に臨む端部にも、鉄心4の外周に沿ってd軸側へ内向きに延びる形状の第1のフラックスバリア17bが形成されている。第1のフラックスバリア17a,17bは、主磁極のd軸に対して線対称の配置であり、いずれも鉄心4の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に沿って鉄心4を貫通するように形成されている。
【0029】
また、磁石挿入孔14a,14bのそれぞれ外周側に臨む端部の近傍には、第2のフラックスバリア18a,18bが形成されている。例えば、第2のフラックスバリア18a,18bは、永久磁石15a,15bから鉄心4の外周側に延びるように配置されている。第2のフラックスバリア18a,18bは、主磁極のd軸に対して線対称の配置であり、いずれも鉄心4の一方の端面から他方の端面に亘って軸方向に沿って鉄心4を貫通するように形成されている。
【0030】
第1のフラックスバリア17a,17bおよび第2のフラックスバリア18a,18bはいずれも孔(空間)であり、鉄心4に比べて透磁率が極めて小さく磁束が通り難くなるので、磁気的な遮断部として機能する。なお、これらのフラックスバリア17a,17b,18a,18bを形成する孔(空間)内に、非磁性で透磁率の低い金属(例えば、アルミニウムや真鍮など)や、接着剤、ワニス、樹脂等を充填した場合も、それぞれ磁気的な遮断部として機能する。
【0031】
ここで、第1のフラックスバリア17a,17bがロータ2のd軸とq軸の間に形成されることで磁束密度の波形に含まれる高調波成分が抑制される。これにより、永久磁石13a,13bによってロータ2の外周面に発生する磁束密度の分布が変化し、特に主磁極の周方向の両端部分での磁束密度分布が正弦波に近づく。その結果として、ロータ2のトルクリプル及び電磁加振力が効果的に低減され、回転電機1の騒音及び振動の低減化が図られる。
また、第2のフラックスバリア18a,18bは、磁束の流れを円滑化してトルクの向上や磁石の損失を低減する機能を担う。
【0032】
さらに、第1実施形態では、第1パターンの主磁極と第2パターンの主磁極の間でフラックスバリア17a,17b,18a,18bの各形状が相違する。なお、第1パターンと第2パターンのいずれでも、永久磁石13a,13b,15a,15bの寸法および配置される位置は共通である。
【0033】
図2に示すように、第1パターンの第1のフラックスバリア17a,17bは、第2パターンの第1のフラックスバリア17a,17bと比べて、鉄心4の外周に沿って延びる円弧部分が短く設定されている。そのため、第1パターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bの周方向間隔(第1のフラックスバリア17a,17bの対向する端部同士の周方向間隔)を示す開き角θaは、第2パターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bの周方向間隔を示す開き角θcよりも大きく設定されている(θa>θc)。
【0034】
また、
図2に示すように、第2パターンの第2のフラックスバリア18a,18bは、第1パターンの第2のフラックスバリア18a,18bと比べて、d軸側の角部が周方向に離間するように配置されている。そのため、第2パターンにおける第2のフラックスバリア18a,18bの周方向間隔(第2のフラックスバリア18a,18bのd軸側角部同士の周方向間隔)を示す開き角θdは、第1パターンにおける第2のフラックスバリア18a,18bの周方向間隔を示す開き角θbよりも大きく設定されている(θd>θb)。
【0035】
以下、第1実施形態の構成における効果を述べる。
第1実施形態では、ロータ2の周方向において、フラックスバリアの形状の異なる第1パターンの主磁極と第2パターンの主磁極とが交互に周期的に配置されている。これにより、第1パターンの主磁極と第2パターンの主磁極の間ではトルク波形の位相にずれが生じる。ロータ2の回転時には、第1パターンのトルク波形と第2パターンのトルク波形が合成されることで、合成後のトルク波形の振幅が抑制される。これにより、ロータ2の負荷時のトルクリプルと、ロータ2の無負荷時のコギングトルクがそれぞれ抑制される。特に、コギングトルクは負荷時のロータ2のトルク波形にも重畳されるため、コギングトルクが抑制されることでロータ2の低負荷時のトルクリプルが効果的に低減される。
【0036】
ここで、第1のフラックスバリア17a,17bの開き角を小さくするとその主磁極での磁束が抑制されるので、ロータ2のトルクは低下する傾向を示す。しかし、第1実施形態では、第1のフラックスバリア17a,17bの開き角(θa)が大きい第1パターンと、第1のフラックスバリア17a,17bの開き角(θc)が小さい第2パターンとを交互に配置することで、第2パターンでのトルクの低下の影響が抑制され、ロータ2全体としてトルクの大きさを維持することができる。
【0037】
また、第1実施形態の第1パターンと第2パターンの間で永久磁石13a,13b,15a,15bの寸法および配置される位置はいずれも共通である。したがって、第1パターンの主磁極と第2パターンの主磁極に永久磁石を組み付けるときに共通の治具を使用できる。そのため、ロータ2の組立時に第1パターンと第2パターンで治具を使い分けずに済み、ロータ2の電磁加振力を低減しつつもロータ2の組立作業を容易にできる。しかも、磁石挿入孔12a,12b,14a,14bはいずれも軸方向に沿って形成されており、すべての磁石を鉄心4の同じ面から挿入できるので作業性が向上する。
【0038】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態のロータの構成例を示す図である。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0039】
第2実施形態は、第1パターンと第2パターンをロータ2の軸方向に周期的に配置した構成である。
図3(a)は、ロータ2の軸方向において第1パターンのブロックと第2パターンのブロックを交互に配置した構成例を示している。
図3(b)は、ロータ2の軸方向において鉄心4を4分割し、軸方向に沿って第1パターンのブロックと第2パターンのブロックを順に配置し、さらに隣接する領域では逆に第2パターンのブロックと第1パターンのブロックを順に配置する構成例を示している。
なお、
図3(a)や
図3(b)の構成は、鉄心4を形成するときにフラックスバリアのパターンの異なる珪素鋼板を軸方向に積層することで容易に得ることができる。
【0040】
第2実施形態のように、フラックスバリアの形状の異なる第1パターンのブロックと第2パターンのブロックを軸方向に周期的に配置した場合においても、第1パターンのトルク波形と第2パターンのトルク波形が合成されてトルク波形の振幅が抑制される。そのため、第2実施形態の構成においても、第1実施形態と同様の効果を生じさせることができる。
【0041】
また、第1パターンのブロックと第2パターンのブロックにおいて、永久磁石13a,13b,15a,15bの寸法および配置される位置はいずれも共通であり、ロータ2の組み立てに際してはすべての磁石を鉄心4の同じ面から軸方向に沿って挿入可能である。そのため、第2実施形態においても、ロータ2の電磁加振力を低減しつつもロータ2の組立作業を容易にできる。
【0042】
<実施形態の変形例>
上記の実施形態における主磁極の永久磁石やフラックスバリアは、配置および形状を種々変更することができる。例えば、ロータ2における主磁極のパターンを、以下の
図4から
図6のように変更してもよい。
【0043】
図4(a)は、軸心側の磁石挿入孔14a,14bと、軸心側の永久磁石に対応するフラックスバリア18a,18bを分割した例を示している。また、
図4(b)は、軸心側の永久磁石についてd軸と交差する配置で永久磁石15を中央に1つ追加し、3つの永久磁石15を軸心側にU字状に配置した例を示している。
【0044】
図5(a)は、軸心側に永久磁石15を2つ追加し、軸心側に4つの永久磁石15を半円状に配置した例を示している。なお、
図4(a)、(b)および
図5(a)において、外周側の永久磁石13a,13bおよびフラックスバリア17a,17bは第1実施形態と同様である。
【0045】
図5(b)は、3つの永久磁石を三角形状に配置した例を示している。
図5(b)では、軸心側に長尺の2つの永久磁石15a,15bがV字状に配置されるとともに、外周側にd軸と交差するように1つの永久磁石13が配置される。なお、この場合の第1のフラックスバリア17a,17bは、外周側の永久磁石13の両端部から互いにd軸側へ内向きに延びるように形成される。
【0046】
図6(a)は、永久磁石を台形状に配置した例を示している。
図6(a)では、軸心側の3つの永久磁石15の配置は
図4(b)と同様であり、外周側の1つの永久磁石13の配置と第1のフラックスバリア17a,17bの形状は、
図5(b)と同様である。
【0047】
図6(b)は、外周側および軸心側にそれぞれ一対ずつ円弧状の永久磁石13a,13b,15a,15bを配置し、外周側の永久磁石13a,13bを円弧状に配置するとともに、軸心側の永久磁石15a,15bを半円状に配置した例を示している。
【0048】
なお、
図4から
図6に示す各変形例においても、上記実施形態と同様に、フラックスバリアの開き角を変更することで第1パターンと第2パターンを設定できる。つまり、これらの変形例においても、第1パターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bの周方向間隔を示す開き角θaは、第2パターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bの周方向間隔を示す開き角θcよりも大きく設定される(θa>θc)。同様に、これらの変形例においても、第2パターンにおける第2のフラックスバリア18a,18bの周方向間隔を示す開き角θdは、第1パターンにおける第2のフラックスバリア18a,18bの周方向間隔を示す開き角θbよりも大きく設定される(θd>θb)。
【0049】
<実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例では、第1実施形態のロータと、全ての磁極が第1パターンのロータ(比較例1)と、全ての磁極が第2パターンのロータ(比較例2)とを用いて、これらのロータのトルク波形および誘起電圧波形をそれぞれ求めた。
【0050】
図7は、実施例におけるロータのトルク波形を示す図である。
図7の縦軸はトルクであり、
図7の横軸は電気角である。比較例1および比較例2のトルク波形に比べると、実施例のトルク波形は、位相の異なる波形の重ね合わせによって振幅が減少していることが分かる。
【0051】
図8は、実施例のロータの誘起電圧波形を示す図である。
図9(a)は比較例1のロータの誘起電圧波形を示す図であり、
図9(b)は比較例2のロータの誘起電圧波形を示す図である。
図8、
図9の各図の縦軸は誘起電圧であり、
図8、
図9の各図の横軸は電気角である。
図9に示す比較例1、比較例2の誘起電圧波形と比べると、
図8に示す実施例の誘起電圧波形は、位相の異なる波形の重ね合わせによって高調波成分が打ち消されてより正弦波に近い波形となっている。このような誘起電圧波形の正弦波化により、実施例においてはモータの制御性や効率の向上も期待できる。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0053】
例えば、第1パターンおよび第2パターンの間において、フラックスバリアの開き角の関係が上記実施形態と異なっていてもよい。
例えば、第1パターンおよび第2パターンの間において、第1のフラックスバリア17a,17bの開き角または第2のフラックスバリア18a,18bの開き角のいずれかのみを変更してもよい。すなわち、第1パターンおよび第2パターンの間において、第1のフラックスバリア17a,17bまたは第2のフラックスバリア18a,18bのいずれかの開き角が同じであってもよい。
【0054】
また、第1のパターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bおよび第2のフラックスバリア18a,18bの各開き角を、第2のパターンにおける第1のフラックスバリア17a,17bおよび第2のフラックスバリア18a,18bの開き角よりも大きくしてもよい。すなわち、フラックスバリアの開き角の関係を、θa>θcかつθb>θdに設定してもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、フラックスバリアの形状が相違する2つの主磁極のパターンをロータ2の周方向または軸方向に周期的に配置する例を説明したが、フラックスバリアの形状が相違する2以上の主磁極のパターンをロータ2の周方向または軸方向に周期的に配置してもよい。
【0056】
また、上記実施形態ではモータの構成例を説明したが、本発明の埋込磁石形回転子は、発電機のロータとして適用することも可能である。
【0057】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…回転電機、2…ロータ、3…ステータ、4…鉄心、5…シャフト、6,13,13a,13b,15,15a,15b…永久磁石、17a,17b…第1のフラックスバリア、18a,18b…第2のフラックスバリア