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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
H01H50/02 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020007663
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114450
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】川島 成則
(72)【発明者】
【氏名】古畑 幸生
(72)【発明者】
【氏名】庄司 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昌良
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-44287(JP,A)
【文献】特開平7-282705(JP,A)
【文献】実開平6-2905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00-50/92
H01H 45/00-45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点と固定接点とが設けられた消弧室と、
前記消弧室が収納される消弧室収納部を有するケースと、
前記ケースに装着され前記消弧室収納部を覆う消弧カバーと、を備えた電磁接触器において、
前記ケースと前記消弧カバーとは、少なくともどちらか一方に第1係合部および第2係合部を有し、
他方に前記第1係合部および前記第2係合部と係合する第3係合部とを有し、
前記第1係合部と前記第3係合部が係合された第1状態および前記第2係合部が前記第3係合部に係合された第2状態のいずれかで前記ケースに前記消弧カバーが保持される電磁接触器。
【請求項2】
前記消弧カバーは、前記第1状態で前記ケースに装着され、
前記第2状態では、前記消弧カバーと前記ケースとの間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記第1状態は前記第2状態よりも前記係合部同士の係合力が弱いことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記消弧カバーの装着方向を示す仮想線と前記第2係合部の第2係合面とのなす第1角度が鋭角であり、
前記仮想線と前記第1係合部の第1係合面とのなす第2角度が前記第1角度よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記仮想線と前記第3係合部の第3係合面とのなす第3角度が鋭角であることを特徴とする請求項4記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記第3係合部の前記第3係合面の反対面は、前記第1係合部が摺動する斜面となっていることを特徴とする請求項5に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記第1乃至第3係合部は、前記消弧カバーの対向する二端とそれに当接する前記ケースの対向する二端にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の電磁接触器。
【請求項8】
前記第1乃至第3係合部は、前記消弧カバーの一端とそれに当接する前記ケースの一端に設けられ、前記消弧カバーの他端はそれに当接する前記ケースの他端に揺動自在に軸支されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電磁接触器。
【請求項9】
前記第1係合部および第2係合部は前記消弧カバーに設けられ、前記第3係合部は前記ケースに設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電磁接触器。
【請求項10】
前記第1係合部および第2係合部は前記ケースに設けられ、前記第3係合部は前記消弧カバーに設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に係わり、特に消弧カバーを保持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、絶縁性を有する合成樹脂材で形成した下ケース及び上ケースを備えており、上ケースには、接点をそれぞれ有する端子部及び電磁石のコイル端子が固定されているとともに、上ケース内の消弧室に可動接点及び固定接点を備えた接点部が収納されている。下ケース内には、接点部を駆動させる電磁石及び駆動レバーが収納されている。また、上ケースには、消弧室内の接点部を覆う消弧カバーと、電磁石のコイル端子を覆う端子カバーとが装着されている。
ここで、短絡事故などで電磁接触器の接点部に異常な大電流が流れると、発生したアークガスによる消弧室の内圧上昇によって消弧カバーが吹き飛ぶおそれがある。
【0003】
そこで、矩形状の消弧カバーの一対の長辺側壁の長手方向一端側から外部に突出するボス軸を形成し、上ケースに一対のボス穴を形成し、この一対のボス穴に一対のボス軸を嵌合した状態で上ケースに消弧カバーを装着した電磁接触器が知られている(例えば、特許文献1)。
この特許文献1の電磁接触器は、消弧室の内圧が上昇すると、上ケースのボス穴に嵌合したボス軸回りに消弧カバーが回転し、消弧カバーの一方の短辺側が他方の短辺側より先に浮き上がった片開き状態となることで、発生したアークガスをガス抜き穴から外部に放出させて、消弧室の内圧を減少させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-44287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電磁接触器は、消弧カバーが片開き状態となってもアークガスの排出量が小さく消弧室の内圧が上昇したままなので、消弧カバーが勢いよく開いて上ケースから脱落しやすい。
そこで、本発明は、消弧室に発生したアークガスを外部に放出しつつ消弧カバーの吹き飛びを確実に防止することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、可動接点と固定接点とが設けられた消弧室と、消弧室が収納される消弧室収納部を有するケースと、ケースに装着され消弧室収納部を覆う消弧カバーと、を備えた電磁接触器において、ケースと消弧カバーとは、少なくともどちらか一方に第1係合部および第2係合部を有し、他方に第1係合部および第2係合部と係合する第3係合部とを有し、第1係合部と第3係合部が係合された第1状態および第2係合部が第3係合部に係合された第2状態のいずれかでケースに前記消弧カバーが保持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電磁接触器によれば、消弧室に発生したアークガスを外部に放出しつつ消弧カバーの吹き飛びを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る電磁接触器を示す斜視図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の上ケースから消弧カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図3】本発明に係る第1実施形態において上ケースに消弧カバーが装着されている状態を示す断面図である。
図4】本発明に係る第1実施形態において上ケースに設けた第3係合部と消弧カバーに設けた第1係合部とが係合している状態を示す要部断面図である。
図5】本発明に係る第1実施形態において上ケースに設けた第3係合部と消弧カバーに設けた第2係合部とが係合している状態を示す要部断面図である。
図6】本発明に係る第2実施形態の消弧カバーの形状を示す斜視図である。
図7】本発明に係る第2実施形態の消弧カバー及び上ケースを示す斜視図である。
図8】本発明に係る第3実施形態において上ケースに設けた第1係合部と消弧カバーに設けた第3係合部とが係合している状態を示す要部断面図である。
図9】本発明に係る第3実施形態において上ケースに設けた第2係合部と消弧カバーに設けた第3係合部とが係合している状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「底」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0011】
[第1実施形態]
図1から図5は、本発明に係る第1実施形態の電磁接触器1を示すものである。
図1は、電磁接触器1の全体構成を示すものであり、絶縁性を有する合成樹脂材で形成した下ケース2及び上ケース3を備えている。上ケース3には、接点をそれぞれ有する端子部4a~4d及び電磁石のコイル端子5が固定されているとともに、後述する収納室Sを収納する消弧室収納部9を覆う消弧カバー7と、端子部4a~4d及び電磁石のコイル端子5を覆う端子カバー8とが装着されている。下ケース2内には、接点部6を駆動させる電磁石(不図示)及び駆動レバー(不図示)が収納されている。
【0012】
図2は、電磁接触器1の上ケース3から消弧カバー7を取り外した状態を示すものである。上ケース3は、一対のケース外壁10a,10bと、これら一対のケース外壁10a,10bの間を平行に仕切る複数のケース隔壁11とで、第1の複数の主回路端子室12a及び第1のコイル端子室13aと、第2の主回路端子室12b及び第2のコイル端子室13bとが互いに背面側で対向して設けられており、これら第1の複数の主回路端子室12a、第1のコイル端子室13aと、第2の主回路端子室12b、第2のコイル端子室12bとの間に複数のケース内壁14を設けることで消弧室収容部9が形成されている。この消弧室収容部9に、接点部6を設けた消弧室Sが収納されている。
【0013】
接点部6は、第1の主回路端子室12a及び第2の主回路端子室12bに配置した接点をそれぞれ有する端子部6aと、消弧室Sに配置した可動接点支え6bと、この可動接点支え6bの長手方向の一端に配置され、可動接点支え6bを長手方向の他端側に付勢する復帰ばね(不図示)とを備えている。
そして、可動接点支え6bの長手方向の他端側は、駆動レバー(不図示)を介して下ケース2に収納された電磁石に連結しており、電磁石を構成する励磁コイル(不図示)が励磁状態になると、復帰ばねに抗して可動接点支え6bが長手方向の一端側に移動していく。
【0014】
消弧カバー7は、図2に示すように、電磁接触器1の取付け姿勢において正面側となる矩形状のカバー本体15と、このカバー本体15の長辺側縁部から互いに対向して形成された一対の長辺壁部16、16と、カバー本体15の短辺側縁部から互いに対向して形成された一対の短辺壁部18,19と、を備えている。また、消弧カバー7は、カバー本体15の一方の短辺側縁部に一方の短辺壁部18を間に位置して短辺方向に離間して形成された一対の係合脚部20と、カバー本体15の他方の短辺側縁部に他方の短辺壁部19を間に位置して短辺方向に離間して形成された一対の係合脚部21と、を備えている。一対の係合脚部20及び係合脚部21は、上ケース3に対する消弧カバー7の装着方向に沿って形成されている。
【0015】
カバー本体15の一方の短辺側縁部に形成されている一対の係合脚部20の基端側には、カバー本体15の長手方向の外側に突出する第1フック部22が形成されており、一対の係合脚部20の先端に、第1フック部22と同一方向に突出する第2フック部23が形成されている。また、カバー本体15の他方の短辺側縁部に形成されている一対の第2の係合脚部21の基端側には、カバー本体15の長手方向の外側に突出する第1フック部24が形成されており、一対の第2の係合脚部21の先端に、第1フック部24と同一方向に突出する第2フック部25が形成されている。
【0016】
図3に示すように、上ケース3のケース外壁10aの内壁には、消弧カバー7の一対の係合脚部20の第1フック部22及び第2フック部23に係合するフック係合部26が形成されている。
また、上ケース3のケース外壁10bに、下ケース2側から上方に延在する2本のスリット27が形成されており(図2参照)、これらスリット27の上端縁部に、消弧カバー7の一対の係合脚部21の第1フック部24及び第2フック部25に係合するフック係合部28が形成されている。
【0017】
図4(a)に示すように、係合脚部20の脚部先端20aに設けた第2フック部23は、脚部先端20aから脚部基端20bに向って曲がる鉤爪形状に形成されており、第2フック部23の脚部基端20bを向く第2フック内面23aは平坦面に形成されている。そして、上ケース3に対する係合脚部20の装着方向を一点鎖線の符号K1で示す仮想線とすると、仮想線K1と第2フック内面23aに添う延長線とのなす角度は鋭角に設定されている。
【0018】
第2フック部23より脚部基端20b側に設けた第1フック部22は、断面三角形状に突出して形成されている。
第1フック部22の脚部基端20bを向く第1フック内面22aは平坦面に形成されている。そして、係合脚部20の仮想線K1と第1フック内面22aに添う延長線とのなす角度は仮想線K1と第2フック内面23aに添う延長線とのなす角度よりも大きく、例えば鈍角に設定されている。
【0019】
また、第1フック部22及び第2フック部23が係合するフック係合部26は、断面三角形状に突出しているとともに、鉤爪形状に形成した第2フック部23の第2フック内面23aに噛み合う係合面26aが形成されている。
このフック係合部26の係合面26aに対して反対側の面(上ケース3の開口部側を向く面)は、係合面26aの先端から上ケース3の開口部に向うに従い傾斜した面(以下、傾斜面26b)として形成されている。
【0020】
また、図4(b)に示すように、係合脚部21の脚部先端21aに設けた第2フック部25は、脚部先端21aから脚部基端21bに向って曲がる鉤爪形状に形成されており、第2フック部25の脚部基端21bを向く第2フック内面25aは平坦面に形成されている。そして、上ケース3に対する係合脚部21の装着方向を一点鎖線の符号K2で示す仮想線とすると、仮想線K2と第2フック内面25aに添う延長線とのなす角度は鋭角に設定されている。
【0021】
第2フック部25より脚部基端21b側に設けた第1フック部24は、断面三角形状に突出して形成されている。
第1フック部24の脚部基端21bを向く第1フック内面24aは平坦面に形成されている。そして、係合脚部21の仮想線K2と第1フック内面24aに添う延長線とのなす角度は仮想線K2と第2フック内面25aに添う延長線とのなす角度よりも大きく、例えば鈍角に設定されている。
【0022】
また、第1フック部24及び第2フック部25が係合するフック係合部28は、断面三角形状に突出しているとともに、鉤爪形状に形成した第2フック部25の第2フック内面25aに噛み合う係合面28aが形成されている。
このフック係合部28の係合面28aに対して反対側の面(上ケース3の開口部側を向く面)は、係合面26aの先端から上ケース3の開口部に向うに従い傾斜した面(以下、傾斜面28b)として形成されている。
【0023】
ここで、係合脚部20の第1フック部22の第1フック内面22aは、仮想線K1とのなす角度が第2フック部23の第2フック内面23aと仮想線K1とのなす角度よりも大きく形成されているので、第2フック部23の第2フック内面23aと比較してフック係合部26の係合面26aとの係合が解除されやすい。この第1フック部22の第1フック内面22aの仮想線K1とのなす角度を変化させるにより、電磁接触器1の製品性能を制御することができる。すなわち、第1フック内面22aを鋭角に近づけるとフック係合部26の係合面26aとの係合が解除されにくくなり、消弧カバー7が外れにくくなって機械的耐久性が向上する。逆に、第1フック内面22aを鈍角に近づけるとフック係合部26の係合面26aとの係合がすぐに解除され、消弧室Sで発生したアークガスのガス抜き性が向上する。消弧室Sのガス抜き性が向上すると、消弧室収容部9の内圧上昇を抑えることができるので、消弧カバー7の上昇速度を抑制し、消弧カバー7の脱落を防止することができる。
【0024】
また、係合脚部21の第1フック部24の第1フック内面24aは、仮想線K2とのなす角度が第2フック部25の第2フック内面25aと仮想線K2とのなす角度よりも大きく形成されているので、第2フック部25の第2フック内面25aと比較してフック係合部28の係合面28aとの係合が解除されやすい。この第1フック部24の第1フック内面24aの仮想線K2とのなす角度を変化させるにより、前述した係合脚部20の第1フック部22の第1フック内面22aと同様に、電磁接触器1の製品性能を制御することができる。
【0025】
そして、消弧カバー7は、消弧室収容部9を覆うように上ケース3に嵌め込まれる(図2の矢印方向)。この際、図3に示すように、一対の長辺壁部16が上ケース3のケース内壁14に摺動して消弧室収容部9に入り込み、一対の係合脚部20及び一対の係合脚部21が弾性変形しながら上ケース3の一対のケース外壁10a,10bの内面に摺動する。そして、係合脚部20の第1フック部22がフック係合部26に係合し、係合脚部21の第1フック部24がフック係合部28に係合する。これにより、消弧カバー7は、消弧室収容部9を覆った状態で上ケース3に装着される。
【0026】
ここで、消弧カバー7を上ケース3に装着するため、消弧カバー7の係合脚部20及び係合脚部21を上ケース3のフック係合部26,28に向けて装着方向に移動すると、係合脚部20は、第2フック部23及び第1フック部22がフック係合部26の傾斜面26bに沿って摺動することで係合脚部20が徐々に弾性変形していくので、係合脚部20の局部的な変形による破損を防止することができる。また、係合脚部21も、第2フック部25及び第1フック部24がフック係合部28の傾斜面28bに沿って摺動することで係合脚部21が徐々に弾性変形していくので、係合脚部21の局部的な変形による破損を防止することができる。
【0027】
そして、第1フック部22の第1フック内面22aにフック係合部26が係合して係合脚部20側の消弧カバー7の上ケース3への装着が完了したときには、弾性変形が解除された係合脚部20がフック係合部26の先端に当接する音が発生するので、消弧カバー7の装着完了を容易に確認することができる。また、第1フック部24の第1フック内面24aにフック係合部28が係合して係合脚部21側の消弧カバー7の上ケース3への装着が完了したときにも、弾性変形が解除された係合脚部21がフック係合部28の先端に当接する音が発生するので、消弧カバー7の装着完了を容易に確認できる。
上記構成の上ケース3及び消弧カバー7を備えた電磁接触器1は、短絡事故などで接点部6に異常な大電流が流れ、発生したアークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇することで、消弧カバー7が上ケース3から離脱して浮き上がろうとする。
【0028】
ここで、消弧室Sの内圧が過大に上昇すると、係合脚部20が右側に弾性変形することで、フック係合部26が第1フック部22の断面三角形状の頂部に移動していき、第1フック部22との係合状態が外れ、係合脚部21が左側に弾性変形することで、フック係合部28が第1フック部24の断面三角形状の頂部に移動していき、第2フック部25との係合状態が外れる。そして、上ケース3に対して消弧カバー7が浮き上がることで、図5(a)に示すように、係合脚部20の第2フック部23の第2フック内面23aがフック係合部26の係合面26aに噛み合って第2フック部23及びフック係合部26の係合が維持され、図5(b)に示すように、係合脚部21の第2フック部25の第2フック内面25aがフック係合部28の係合面28aに噛み合って第2フック部25及びフック係合部28の係合が維持される。これにより、消弧カバー7の一対の長辺壁部16、16及び一対の短辺壁部18,19と、上ケース3のケース外壁10a,10b、ケース内壁14との間、すなわち、カバー本体15の全周に隙間が形成され、この隙間がガス抜き穴となって消弧室S内のアークガスが外部に放出され、消弧室Sの内圧が減少して消弧カバー7の吹き飛びが防止される。
【0029】
したがって、本実施形態の消弧カバー7は、上ケース3に設けたフック係合部26、28に対して係合力が弱い第1フック部22,24と、フック係合部26、28に対して係合力が強い第2フック部23,25を設け、フック係合部26、28に第1フック部22,24を係合した状態で上ケース3に装着されており、アークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇した際には、係止力が弱い第1フック部22,24の係合をフック係合部26、28から外して消弧カバー7を浮き上がらせることで消弧室S内のアークガスを外部に確実に放出することができる。そして、係止力が強い第2フック部23,25をフック係合部26、28に係合することで、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのを確実に防止することができる。
【0030】
また、本実施形態の消弧カバー7は、カバー本体15から延在する一対の係合脚部20,21と、係合脚部20,21の脚部先端20a,21aに設けた第2フック部23,25と、第2フック部23,25より脚部基端20b,21b側に設けた第1フック部22,24と、を一体に形成した簡便な構造の部材なので、製造コストの低減化を図ることができるとともに、上ケース3に取付けるために大きな取付けスペースを必要とせず、電磁接触器1の小型化を図ることができる。
【0031】
また、係合脚部20,21の第2フック部23,25と上ケース3のフック係合部26,28とは、消弧カバー7の装着方向に対して直角ではなく、鉤爪状に形成されている方が好ましい。消弧室Sの内圧が過大に上昇して浮き上がった消弧カバー7は、カバー本体15の中央部が上方に膨出して大きく撓んだ状態となる。このようにカバー本体15が大きく撓んだ状態で消弧カバー7が浮き上がってしまった場合、鉤爪形状の第2フック部23,25の少なくとも第2フック内面23a,25aの先端に、上ケース3に設けたフック係合部26,28の係合面26a,28aが噛み合った状態で係合することができる。従って、カバー本体15が大きく撓んだ状態で消弧カバー7が浮き上がっていても、フック係合部26、28に対する第2フック部23,25の係合力を増大させ、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのをより確実に防止することができる。
【0032】
[第2実施形態]
次に、図6及び図7は、本発明に係る第2実施形態の電磁接触器1の要部を示すものである。なお、第1実施形態の構造と同一構成部分には、同一符号を付して説明は省略する。
第2実施形態の消弧カバー7は、第1実施形態で示した一対の係合脚部20が形成されておらず、一対の長辺壁部16の一方の短辺壁部18に近接する位置に、一対のボス軸29が突出して形成されている。また、第2実施形態の上ケース3は、一方のケース外壁10aの内壁に、第1実施形態で示したフック係合部26が形成されておらず、一方のケース外壁10aに近接する位置に、消弧カバー7の一対のボス軸29がそれぞれ嵌合する一対のボス穴30が形成されている。
【0033】
上記構成の消弧カバー7及び上ケース3を備えた電磁接触器1は、短絡事故などで接点部6に異常な大電流が流れ、発生したアークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇することで、消弧カバー7が上ケース3から離脱して浮き上がろうとする。
消弧室Sの内圧が過大に上昇すると、消弧カバー7は、係合脚部21が左側に弾性変形することでフック係合部28が第1フック部24の断面三角形状の頂部に移動していき、第2フック部25との係合状態が外れ、ボス穴30に嵌合しているボス軸29回りに回転することで他方の短辺壁部19側が浮き上がる。
【0034】
このように、消弧カバー7の他方の短辺壁部19側が浮き上がると、他方の短辺壁部19の下端面と他方のケース外壁10bの上端面との間に隙間が形成され、この隙間がガス抜き穴となって消弧室S内のアークガスが外部に放出され、消弧室Sの内圧が減少して消弧カバー7の吹き飛びが防止される。
【0035】
したがって、本実施形態の上ケース3及び消弧カバー7を備えた電磁接触器1は、上ケース3に設けたフック係合部28に対して係合力が弱い第1フック部24と、フック係合部28に対して係合力が強い第2フック部25を設け、フック係合部28に第1フック部24を係合した状態で消弧カバー7が上ケース3に装着されており、アークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇すると、消弧カバー7は、係止力が弱い第1フック部24の係合がフック係合部28から外れ、係止力が強い第2フック部25がフック係合部28に係合し、ボス穴30に嵌合したボス軸29回りに回転して浮き上がることで消弧室S内のアークガスを外部に確実に放出することができるので、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのを確実に防止することができる。
【0036】
また、アークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇するときに、消弧カバー7は、係止力が強い第2フック部25がフック係合部28に係合することで勢いよく開くことが防止されるので、消弧カバー7のボス軸28及び上ケース3のボス穴30を高強度に形成しなくてもよく、部品コストの低減化を図ることができる。
【0037】
[第3実施形態]
次に、図8及び図9は、本発明に係る第3実施形態の電磁接触器1の要部を示すものである。なお、第3実施形態も、第1実施形態の構造と同一構成部分には、同一符号を付して説明は省略する。
図8(a)に示すように、本実施形態の上ケース3の一方のケース外壁10aには、開口部から離間する内壁に第1フック部31が形成されており、第1フック部31より開口部側に第2フック部32が形成されている。また、図8(b)に示すように、本実施形態の上ケース3の一方のケース外壁10aには、開口部から離間する内壁に第1フック部33が形成されており、第1フック部33より開口部側に第2フック部34が形成されている。
【0038】
図8(a)に示すように、消弧カバー7の一方の短辺壁部側に形成されている係合脚部20の先端には、上ケース3の一方のケース外壁10aに形成した第1フック部31及び第2フック部32に係合するフック係合部35が形成されている。また、図8(b)に示すように、消弧カバー7の他方の短辺壁部側に形成されている係合脚部21の先端には、上ケース3の他方のケース外壁10bに形成した第1フック部33及び第2フック部33に係合するフック係合部36が形成されている。
図8(a)に示すように、上ケース3のケース外壁10aに形成した第2フック部32は、上ケース3の開口部から離間する方向に向って曲がる鉤爪形状に形成されており、開口部に対して逆側の第2フック内面32aは平坦面に形成されている。そして、上ケース3に対する係合脚部20の装着方向を一点鎖線の符号K3で示す仮想線とすると、仮想線K3と第2フック内面32aに添う延長線とのなす角度は鋭角に設定されている。
【0039】
第2フック部32より上ケース3の開口部から離間する方向に形成した第1フック部31は、断面三角形状に突出して形成されている。第1フック部31の上ケース3の開口部に対して逆側の第1フック内面31aは平坦面に形成されている。そして、仮想線K3と第1フック内面31aに添う延長線とのなす角度は仮想線K3と第2フック内面32aに添う延長線とのなす角度よりも大きく、例えば鈍角に設定されている。
また、第1フック部31及び第2フック部32が係合するフック係合部35は、断面三角形状に突出しているとともに、鉤爪形状に形成した第2フック部32の第2フック内面32aに噛み合う係合面35aが形成されている。このフック係合部35の係合面35aに対して反対側の面は、係合面35aの先端から上ケース3の開口部から離間する方向に傾斜した面(以下、傾斜面35b)として形成されている。
【0040】
また、図8(b)に示すように、上ケース3のケース外壁10bに形成した第2フック部34は、上ケース3の開口部から離間する方向に向って曲がる鉤爪形状に形成されており、開口部に対して逆側の第2フック内面34aは平坦面に形成されている。そして、上ケース3に対する係合脚部21の装着方向を一点鎖線の符号K4で示す仮想線とすると、仮想線K4と第2フック内面34aに添う延長線とのなす角度は鋭角に設定されている。
第2フック部34より上ケース3の開口部から離間する方向に形成した第1フック部33は、断面三角形状に突出して形成されている。第1フック部33の上ケース3の開口部に対して逆側の第1フック内面33aは平坦面に形成されている。そして、仮想線K4と第1フック内面33aに添う延長線とのなす角度は仮想線K4と第2フック内面34aに添う延長線とのなす角度よりも大きく、例えば鈍角に設定されている。
【0041】
また、第1フック部33及び第2フック部34が係合するフック係合部36は、断面三角形状に突出しているとともに、鉤爪形状に形成した第2フック部34の第2フック内面34aに噛み合う係合面36aが形成されている。このフック係合部36の係合面36aに対して反対側の面は、係合面36aの先端から上ケース3の開口部から離間する方向に傾斜した面(以下、傾斜面36b)として形成されている。
【0042】
ここで、ケース外壁10aに形成した第1フック部31の第1フック内面31aは、仮想線K3とのなす角度が第2フック部32の第2フック内面32aと仮想線K3とのなす角度よりも大きく形成されているので、第2フック部32の第2フック内面32aと比較してフック係合部35の係合面35aとの係合が解除されやすい。この第1フック部31の第1フック内面31aの仮想線K3とのなす角度を変化させるにより、電磁接触器1の製品性能を制御することができる。すなわち、第1フック内面31aを鋭角に近づけるとフック係合部35の係合面35aとの係合が解除されにくくなり、消弧カバー7が外れにくくなって機械的耐久性が向上する。逆に、第1フック内面31aを鈍角に近づけるとフック係合部35の係合面35aとの係合がすぐに解除され、消弧室Sで発生したアークガスのガス抜き性が向上する。消弧室Sのガス抜き性が向上すると、消弧室Sの内圧上昇を抑えることができるので、消弧カバー7の上昇速度を抑制し、消弧カバー7の脱落を防止することができる。
【0043】
また、ケース外壁10bに形成した第1フック部33の第1フック内面33aは、仮想線K4とのなす角度が第2フック部34の第2フック内面34aと仮想線K4とのなす角度よりも大きく形成されているので、第2フック部34の第2フック内面34aと比較してフック係合部36の係合面36aとの係合が解除されやすい。この第1フック部33の第1フック内面33aの仮想線K4とのなす角度を変化させるにより、前述したース外壁10aに形成した第1フック部31の第1フック内面31aと同様に、電磁接触器1の製品性能を制御することができる。
【0044】
そして、消弧カバー7は、消弧室収容部9を覆った状態で上ケース3に装着される。この際、消弧カバー7の係合脚部20及び係合脚部21を上ケース3のケース外壁10a,10bに沿って装着方向に移動すると、係合脚部20のフック係合部35の傾斜面35bが、ケース外壁10aの第2フック部32及び第1フック部31に摺動するので、係合脚部20が徐々に弾性変形して局部的な変形による破損を防止することができる。また、係合脚部21のフック係合部36の傾斜面36bが、ケース外壁10bの第2フック部34及び第1フック部33に摺動するので、係合脚部21が徐々に弾性変形して局部的な変形による破損を防止することができる
【0045】
そして、第1フック部31の第1フック内面31aにフック係合部35が係合して係合脚部20側の消弧カバー7の上ケース3への装着が完了したときには、弾性変形が解除された係合脚部20が第1フック部31に当接する音が発生するので、消弧カバー7の装着完了を容易に確認することができる。また、第1フック部33の第1フック内面33aにフック係合部36が係合して係合脚部21側の消弧カバー7の上ケース3への装着が完了したときにも、弾性変形が解除された係合脚部21が第1フック部33に当接する音が発生するので、消弧カバー7の装着完了を容易に確認できる。
【0046】
上記構成の上ケース3及び消弧カバー7を備えた電磁接触器1は、消弧室Sの内圧が過大に上昇すると、係合脚部20が右側に弾性変形することで、フック係合部35が第1フック部31の断面三角形状の頂部に移動していき、第1フック部31との係合状態が外れるとともに、係合脚部21が左側に弾性変形することで、フック係合部36が第1フック部33の断面三角形状の頂部に移動していき、第2フック部33との係合状態が外れる。そして、上ケース3に対して消弧カバー7が浮き上がることで、図9(a)に示すように、係合脚部20のフック係合部35がケース外壁10aの第2フック部32の第2フック内面32aに噛み合って第2フック部32及びフック係合部35の係合が維持され、図9(b)に示すように、係合脚部21のフック係合部36がケース外壁10bの第2フック部34の第2フック内面34aに噛み合って第2フック部34及びフック係合部36の係合が維持される。これにより、消弧カバー7に対してカバー本体15の全周に隙間が形成され、この隙間がガス抜き穴となって消弧室S内のアークガスが外部に放出され、消弧室Sの内圧が減少して消弧カバー7の吹き飛びが防止される。
【0047】
したがって、本実施形態の消弧カバー7は、係合脚部20,21に設けたフック係合部35、36に対して係合力が弱い第1フック部31,33と、フック係合部35、36に対して係合力が強い第2フック部32,34をケース3のケース外壁10a,10bに設け、フック係合部35、36に第1フック部31,33を係合した状態で上ケース3に装着されており、アークガスにより消弧室Sの内圧が過大に上昇した際には、係止力が弱い第1フック部31,33の係合をフック係合部35、36から外して消弧カバー7を浮き上がらせることで消弧室S内のアークガスを外部に確実に放出することができる。そして、係止力が強い第2フック部32,34をフック係合部35、36に係合することで、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのを確実に防止することができる。
【0048】
また、係合脚部20,21のフック係合部35,36と上ケース3の第2フック部32,34とは、消弧カバー7の装着方向に対して直角ではなく、鉤爪状に形成されている方が好ましい。消弧室Sの内圧が過大に上昇して浮き上がった消弧カバー7は、カバー本体15の中央部が上方に膨出して大きく撓んだ状態となる。このようにカバー本体15が大きく撓んだ状態で消弧カバー7が浮き上がってしまった場合、鉤爪形状の第2フック部32,34の少なくとも第2フック内面32a,34aの先端に、フック係合部35,36の係合面35a,36aが噛み合った状態で係合することができる。従って、カバー本体15が大きく撓んだ状態で消弧カバー7が浮き上がっていても、フック係合部35、36に対する第2フック部32,24の係合力を増大させ、上ケース3から消弧カバー7が吹き飛ぶのをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 電磁接触器
2 下ケース
3 上ケース(ケース)
4a~4d 端子部
5 コイル端子
6 接点部(可動接点と固定接点)
6a 端子部
6b 可動接点支え
7 消弧カバー
8 端子カバー
9 消弧室収容部
10a,10b ケース外壁
11 ケース隔壁
12a 第1の主回路端子室
12b 第2の主回路端子室
13a 第1のコイル端子室
13b 第2のコイル端子室
14 ケース内壁
15 カバー本体
16 長辺壁部
18,19 短辺壁部
20 係合脚部
20a 脚部先端
20b 脚部基端
21 係合脚部
21a 脚部先端
21b 脚部基端
22 第1フック部(第1係合部)
22a 第1フック内面(第1係合面)
23 第2フック部(第2係合部)
23a 第2フック内面(第2係合面)
24 第1フック部(第1係合部)
24a フック内面(第1係合面)
25 第2フック部(第2係合部)
25a 第2フック内面(第2係合面)
26 フック係合部(第3係合部)
26a 係合面
26b 傾斜面
27 スリット
28 フック係合部(第3係合部)
28a 係合面
28b 傾斜面
29 ボス軸
30 ボス穴
31 第1フック部(第1係合部)
31a 第1フック内面(第1係合面)
32 第2フック部(第2係合部)
32a 第2フック内面(第2係合面)
33 第1フック部(第1係合部)
33a 第1フック内面(第1係合面)
34 第2フック部(第2係合部)
34a 第2フック内面(第2係合面)
35 フック係合部(第2係合部)
35a 係合面
35b 傾斜面
36 フック係合部(第2係合部)
36a 係合面
36b 傾斜面
S 消弧室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9