(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20230719BHJP
F02M 35/12 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F02M35/10 101H
F02M35/10 101N
F02M35/12 L
(21)【出願番号】P 2020011873
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍介
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178904(JP,A)
【文献】特開2019-138208(JP,A)
【文献】特開2019-044751(JP,A)
【文献】特開2007-321600(JP,A)
【文献】特開2018-005081(JP,A)
【文献】特開2008-297936(JP,A)
【文献】中国実用新案第201381915(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成形された繊維材料により形成された圧縮繊維部によって筒状の周壁の少なくとも一部が構成されてなるとともに、前記圧縮繊維部は、高圧縮部と前記高圧縮部よりも低い圧縮率で圧縮成形された低圧縮部とを有してなる内燃機関の吸気ダクトにおいて、
前記高圧縮部は、少なくとも一部が前記低圧縮部に挟まれる態様で、前記周壁の延設方向と直交する面上において延びるとともに前記周壁の周方向における前記圧縮繊維部の全長に渡って連続して延びる周方向部分を有
し、
前記高圧縮部および前記低圧縮部は、前記周壁の厚さ方向から見た外形が同一の四角板状をなすとともに、第1方向および同第1方向と交差する第2方向においてそれぞれ交互に並ぶ態様で配置されており、
前記四角板状における2本の対角線の一方が延びる方向において隣合う前記高圧縮部、および、前記2本の対角線の他方が延びる方向において隣合う前記高圧縮部のそれぞれは、前記四角板状の角部分において繋がっている
ことを特徴とする内燃機関の吸気ダクト。
【請求項2】
前記圧縮繊維部は筒状をなすものであり、
前記周方向部分は、前記周方向において延びる環状をなしている
請求項1に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【請求項3】
前記高圧縮部は、一部が前記低圧縮部に挟まれる態様で、前記周壁の延設方向において前記圧縮繊維部の全長に渡って連続して延びる軸方向部分を有する
請求項1または2に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【請求項4】
前記外形は、対角線が前記周壁の延設方向と直交する面上において延びる菱形状である請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱可塑性樹脂バインダを含む不織布を圧縮成形することにより形成された内燃機関の吸気ダクトが開示されている。この吸気ダクトの周壁は、圧縮率の大きな高圧縮部と圧縮率の小さな低圧縮部とを有している。上記吸気ダクトによれば、周壁の少なくとも一部がある程度の通気性を有する低圧縮部により形成されているため、吸気の音波の一部が低圧縮部を通過することで吸気の音波の定在波が発生することを抑制でき、吸気騒音が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸気ダクトでは、吸気の音波の定在波の発生が抑えられるものの、周壁の低圧縮部を介して吸気ダクトの内部から外部に放射される放射音が大きくなってしまう。上記吸気ダクトは、吸気騒音を抑えるうえでは、この点においてなお改善の余地を残すものとなっている。
【0005】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することのできる内燃機関の吸気ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための内燃機関の吸気ダクトは、圧縮成形された繊維材料により形成された圧縮繊維部によって筒状の周壁の少なくとも一部が構成されてなるとともに、前記圧縮繊維部は、高圧縮部と前記高圧縮部よりも低い圧縮率で圧縮成形された低圧縮部とを有してなる内燃機関の吸気ダクトにおいて、前記高圧縮部は、少なくとも一部が前記低圧縮部に挟まれる態様で、前記周壁の延設方向と直交する面上において延びるとともに前記周壁の周方向における前記圧縮繊維部の全長に渡って連続して延びる周方向部分を有する。
【0007】
上記構成では、圧縮繊維部の各部のうち、繊維材料の圧縮率が高い高圧縮部が配置される部分の強度が、同圧縮率の低い低圧縮部が配置される部分の強度よりも高くなる。上記構成では、そうした高強度の高圧縮部が、低強度の低圧縮部に挟まれる態様で、上記周壁の延設方向と直交する面上において延びるとともに同周壁の周方向における圧縮繊維部の全長に渡って連続して延びている。そのため、周壁が低強度の低圧縮部を有しているとはいえ、高圧縮部が周方向において途切れた構造のものや高圧縮部が周壁の延設方向と直交する面以外の面上において延びる構造のものと比較して、同低圧縮部が設けられた部分およびその周辺、ひいては圧縮繊維部全体の強度を高くすることができる。これにより、上記周壁の厚さ方向における低圧縮部の振動を抑えることができるため、同低圧縮部を介して吸気ダクトの内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。しかも、吸気の音波の一部が、ある程度の通気性を有する低圧縮部を通過することで、吸気の音波の定在波が発生することを抑えることができるため、共鳴による吸気騒音を低減することもできる。このように上記構成によれば、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の内燃機関の吸気ダクトの斜視図。
【
図2】同吸気ダクトの周壁の一部を平面状に展開した状態を示す展開図。
【
図7】(a)~(c)は吸気ダクトの内部に発生する吸気の音波の定在波の圧力分布を示す略図。
【
図9】吸気ダクトの取り付け構造を示す部分断面図。
【
図10】第2実施形態の内燃機関の吸気ダクトを斜め下方から見た斜視図。
【
図11】同吸気ダクトの圧縮繊維部の一部を拡大して示す底面図。
【
図13】他の実施形態にかかる高圧縮部および低圧縮部の配置構造を示す図。
【
図14】他の実施形態にかかる高圧縮部および低圧縮部の配置構造を示す図。
【
図15】他の実施形態にかかる高圧縮部および低圧縮部の配置構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、内燃機関の吸気ダクトの第1実施形態について説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態の吸気ダクト20は円筒状の周壁21を有している。この吸気ダクト20は内燃機関の吸気通路の一部を構成する。
【0010】
吸気ダクト20の周壁21は、熱圧縮成形された不織布により形成されている。本実施形態では、周壁21の全体が、圧縮成形された繊維材料により形成された圧縮繊維部に相当する。周壁21を構成する不織布は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる繊維(PET繊維)と、PETによって芯部が形成されるとともに同PETよりも融点の低い低融点PETによって鞘部が形成された芯鞘構造の繊維(変性PET繊維)とによって構成されている。不織布を熱圧縮成形する際には、変性PET繊維が溶けてバインダとして機能する。変性PET繊維の配合割合は、30~70%であることが好ましい。本実施形態では、変性PETの配合割合が50%とされている。なお、周壁21を構成する不織布は、変性PET繊維に代えて、PETよりも融点の低いPP(ポリプロピレン)からなる繊維(PP繊維)を有するものであってもよい。
【0011】
不織布の目付け量は、500~1500g/m2(m2は平方メートル)であることが好ましい。本実施形態では、不織布の目付け量が800g/m2とされている。吸気ダクト20の周壁21は、例えば30mm~100mmの厚さの不織布シートを熱圧縮(熱プレス)することにより成形されている。
【0012】
吸気ダクト20の周壁21は、比較的高い圧縮率で熱圧縮成形された高圧縮部22と、同高圧縮部22よりも低い圧縮率で熱圧縮成形された低圧縮部23とによって構成されている。
【0013】
高圧縮部22の通気度(JISL1096,A法(フラジール形法))は、略0cm3/cm2・sとされている。また、高圧縮部22の板厚は、0.5~1.5mmであることが好ましい。本実施形態では、高圧縮部22の板厚が0.7mmとされている。
【0014】
また、低圧縮部23の通気度は、3cm3/cm2・sとされている。また、低圧縮部23の板厚は、0.8~3.0mmであることが好ましい。本実施形態では、低圧縮部23の板厚が1.0mmとされている。
【0015】
図2に、平面状に展開した状態の周壁21の一部を示す。
図2に示すように、高圧縮部22および低圧縮部23は共に、周壁21の厚さ方向から見た外形が同一の正四角形(例えば一辺が10mmの正方形状)をなす四角板状になっている。
【0016】
図1および
図2に示すように、高圧縮部22および低圧縮部23は、第1方向(
図2における左斜め上に延びる方向)において交互に並ぶ態様で配置されている。また、高圧縮部22および低圧縮部23は、上記第1方向と交差する第2方向(
図2における右斜め上に延びる方向)において交互に並ぶ態様で配置されている。高圧縮部22および低圧縮部23は、上記正四角形における2本の対角線の一方が延設方向、詳しくは吸気ダクト20の中心線L1(
図1参照)と平行に延びる態様で配置されている。また、高圧縮部22および低圧縮部23は、上記正四角形における2本の対角線の他方が、中心線L1と直交する面上において延びる態様で配置されている。
【0017】
吸気ダクト20において、隣合う高圧縮部22は、上記正方形状における4つの角部分において繋がっている。
これにより、
図2および
図3に示すように、周壁21における高圧縮部22は、一部(詳しくは、大部分)が低圧縮部23に挟まれる態様で、周壁21の周方向における全長に渡って連続して延びて環状をなす周方向部分24を有している。高圧縮部22における周方向部分24は、中心線L1(
図1参照)と直交する面上において延びている。こうした周方向部分24は、延設方向における高圧縮部22の各配設位置にそれぞれ形成されている。
【0018】
また
図2および
図4に示すように、周壁21における高圧縮部22は、周壁21の延設方向における全長に渡って連続して延びる軸方向部分25を有している。高圧縮部22における軸方向部分25は中心線L1(
図1参照)と平行に延びている。こうした軸方向部分25は、周方向における高圧縮部22の各配設位置にそれぞれ形成されている。
【0019】
図3~
図6に示すように、吸気ダクト20の周壁21の外面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差26を介して連なる一方で、周壁21の内面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差のない状態で平らに連なっている。
【0020】
以下、本実施形態の吸気ダクト20による作用について説明する。
吸気ダクト20の内部から外部に放射される放射音の一部は、同吸気ダクト20の低圧縮部23が振動することによって生じる。そのため、吸気ダクト20の強度を高くすることにより、低圧縮部23の振動が抑えられるようになって、放射音も抑えられるようになる。上記吸気ダクト20では、周壁21の各部のうち、前記圧縮率が高い高圧縮部22が配置される部分の強度が、同圧縮率の低い低圧縮部23が配置される部分の強度よりも高くなる。
【0021】
本実施形態の吸気ダクト20では、
図1~
図3に示すように、そうした高強度の高圧縮部22(詳しくは、その周方向部分24)が、低強度の低圧縮部23に挟まれる態様で、中心線L1と直交する面上において延びるとともに周壁21の周囲全周に渡って連続して環状で延びている。そのため、周壁21が低強度の低圧縮部23を有しているとはいえ、高圧縮部22が周方向において途切れた構造のものと比較して、同低圧縮部23が設けられた部分およびその周辺、ひいては周壁21全体の強度を高くすることができる。しかも、高圧縮部22における周方向に延びる部分が中心線L1と直交する面以外の面上で延びる構造のものと比較して、周壁21に径方向の力が加わった場合における同周壁21全体の強度を高くすることができる。
【0022】
また吸気ダクト20では、
図1、
図2および
図4に示すように、高強度の高圧縮部22(詳しくは、その軸方向部分25)が、低強度の低圧縮部23に挟まれる態様で、周壁21の延設方向において同周壁21の全長に渡って連続して延びている。そのため、高圧縮部22が延設方向において途切れた構造のものと比較して、低圧縮部23が設けられた部分およびその周辺、ひいては周壁21全体の強度を高くすることができる。
【0023】
本実施形態の吸気ダクト20では、このようにして周壁21全体の強度を高くすることにより、上記周壁21の厚さ方向における低圧縮部23の振動を抑えることができる。そのため、低圧縮部23を介して吸気ダクト20の内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。
【0024】
また
図1および
図2に示すように、本実施形態の吸気ダクト20では、高圧縮部22および低圧縮部23が、周壁21の厚さ方向から見た外形が同一の正方形状をなすとともに、第1方向および第2方向においてそれぞれ交互に並ぶ態様で配置されている。こうした配置構造を採用することにより、平面積の小さい低圧縮部23を、四方を高圧縮部22に囲まれる態様で、多数配置することが可能になる。これにより、周壁21に比較的強度の低い低圧縮部23が設けられるとはいえ、個々の低圧縮部23における連続して延びる部分の長さを短くすることができるため、低圧縮部23が振動しにくい構造にすることができる。こうした構造によっても、低圧縮部23を介して吸気ダクト20の内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。
【0025】
本実施形態の吸気ダクト20では、吸気の音波の一部が、ある程度の通気性を有する低圧縮部23を通過することで、吸気の音波の定在波が発生することを抑えることができるため、共鳴による吸気騒音を低減することができる。
【0026】
図7(a)~
図7(c)に示すように、吸気の音波の定在波の腹Aとなる位置、すなわち定在波の音圧が最も高くなる位置は、定在波の周波数(波長)によって異なる。吸気ダクト20においては、吸気の音波の定在波の腹Aとなる位置に通気性を有する低圧縮部23が存在すれば、吸気の音波の圧力を、低圧縮部23を通じて逃がすことにより当該定在波の発生を効果的に抑制できる。
【0027】
本実施形態の吸気ダクト20では、
図1、
図2および
図6に示すように、そうした低圧縮部23が、周壁21における延設方向の略全ての位置に配置されている。これにより本実施形態では、低圧縮部23が周壁21における延設方向の全体に実質的に配置されていると云える。そのため、吸気ダクト20の内部に発生し得る様々な周波数の定在波の腹Aとなる位置に低圧縮部23が存在することとなり、幅広い周波数の吸気騒音を低減することができる。
【0028】
また吸気ダクト20では、高圧縮部22と低圧縮部23とが交互に並ぶように配置されている。これにより、
図8に一例を示すように、周壁21に対して低圧縮部23を周方向において均等に配置することができる。そのため、吸気の音波の圧力を、周壁21の周方向の各部において低圧縮部23を通じてバランス良く逃がすことができ、定在波の発生を効果的に抑制することができる。なお
図8では、理解を容易にするために、周方向における低圧縮部23の配置数や高圧縮部22の厚さ、低圧縮部23の厚さを実際の配置数や厚さよりも誇張して示している。
【0029】
このように、本実施形態の吸気ダクト20によれば、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することができる。
図1および
図2に示すように、本実施形態の吸気ダクト20では、高圧縮部22および低圧縮部23が、対角線が中心線L1と直交する面上において延びる菱形状(詳しくは、正方形状)になっている。これにより、周壁21の外面の模様を、同一形状の正方形が延設方向および周方向において整然と並ぶ模様にすることができるため、吸気ダクト20の意匠性を向上させることができる。
【0030】
図9に示すように、吸気ダクト20の取り付けに際しては、同吸気ダクト20の両端に、筒状をなす固定部30が組み付けられる。固定部30は筒状をなしている。固定部30の延設方向における一方の端面には、周囲全周に渡って環状に延びる係合溝31が設けられている。固定部30の係合溝31の延設幅は、周壁21における低圧縮部23の厚さよりも短くなっている。
【0031】
そして、吸気ダクト20への固定部30の組み付けに際しては、周壁21の延設方向における端部が厚さ方向に圧縮されつつ上記固定部30の係合溝31に嵌められる。これにより、周壁21の端部の内周面と固定部30の係合溝31の内側面との接触部分に所定の面圧が発生した状態になり、周壁21と固定部30との隙間がシールされる。
【0032】
本実施形態では、周壁21の内周面が段差のない平らな形状、詳しくは略円筒状になっている。そのため、吸気ダクト20の周壁21を延設方向におけるどの位置で切断しても、周壁21の端部の内周面が平らになる。これにより、吸気ダクト20に固定部30を組み付ける際には、周壁21の内周面と固定部30の係合溝31の内側面とを全周に渡って密着させることができる。したがって、適正なシール性能を得るために、周壁21を切断する位置を厳密に定めたり、係合溝31の内部形状を周壁の断面形状に合わせて複雑な形状にしたりする必要がなくなる。そのため、吸気ダクト20と固定部30とを組み付ける部分を簡単な構造にすることができ、吸気ダクト20への固定部30の組み付けを容易に行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)本実施形態の吸気ダクト20では、高強度の高圧縮部22が、大部分が低圧縮部23に挟まれる態様で、中心線L1と直交する面上において延びるとともに周壁21の周囲全周に渡って連続して環状で延びている。そのため、高圧縮部22が周方向において途切れた構造のものと比較して、低圧縮部23が配置された部分およびその周辺、ひいては周壁21全体の強度を高くすることができる。これにより、低圧縮部23を介して吸気ダクト20の内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。しかも、吸気の音波の一部が、ある程度の通気性を有する低圧縮部23を通過することで、吸気の音波の定在波が発生することを抑えることができるため、共鳴による吸気騒音を低減することもできる。このように吸気ダクト20によれば、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することができる。
【0034】
(2)本実施形態の吸気ダクト20では、高強度の高圧縮部22が、大部分が低圧縮部23に挟まれる態様で、周壁21の延設方向において同周壁21の全長に渡って連続して延びている。そのため、高圧縮部22が延設方向において途切れた構造のものと比較して、低圧縮部23が配置された部分およびその周辺、ひいては周壁21全体の強度を高くすることができる。
【0035】
(3)高圧縮部22および低圧縮部23は、周壁21の厚さ方向から見た外形が同一の正方形状をなす四角板状になっており、第1方向および第2方向においてそれぞれ交互に並ぶ態様で配置されている。隣合う高圧縮部22は、四角板状の角部分において繋がっている。これにより、高圧縮部22の周方向部分24を周壁21の周囲全周に渡って環状で延びる形状にすることができる。しかも、低圧縮部23を周壁21の延設方向における略全ての位置に配置することができるため、共鳴による吸気騒音を広い周波数範囲にわたり抑えることができる。また、低圧縮部23を周壁21の周方向における略全ての位置に均等に配置することができるため、広い周波数範囲の放射音をバランス良く抑えることができる。
【0036】
(4)高圧縮部22および低圧縮部23は、対角線が中心線L1と直交する面上において延びる正方形状になっている。これにより、周壁21外面の模様を、同一形状の正方形が延設方向および周方向において整然と並ぶ模様にすることができるため、吸気ダクト20の意匠性を向上させることができる。
【0037】
(第2の実施形態)
以下、第2実施形態の吸気ダクトについて、第1実施形態の吸気ダクトとの相違点を中心に説明する。なお以下では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号あるいは対応する符号を付し、同構成についての詳細な説明は省略する。
【0038】
第1実施形態の吸気ダクトでは圧縮成形された圧縮繊維部によって周壁の全体が構成されているのに対して、本実施形態の吸気ダクトでは、圧縮繊維部によって周壁の一部が構成されている。この点において、本実施形態と第1実施形態とは異なる。
【0039】
以下、本実施形態の吸気ダクト40について説明する。
図10に示すように、本実施形態の吸気ダクト40の周壁41は、四角筒状をなしている。この周壁41は、硬質の樹脂材料によって形成された四角筒状のダクト本体50と、不織布からなる圧縮繊維部47とを有している。
【0040】
ダクト本体50は四角筒状をなしている。ダクト本体50における下方側(
図10の上方側)の壁部である底壁51には、断面略長方形状で貫通する開口窓部52が設けられている。
【0041】
圧縮繊維部47は、外形が長方形状の略平板形状をなしている。この圧縮繊維部47は、ダクト本体50の底壁51の開口窓部52を塞ぐ態様で、同ダクト本体50に取り付けられている。詳しくは、開口窓部52の内周面には、周囲全周に渡って環状で延びる係合溝(図示略)が設けられている。そして、圧縮繊維部47の外縁が厚さ方向に圧縮された状態で上記ダクト本体50の係合溝に嵌められている。これにより、ダクト本体50の係合溝の内側面と圧縮繊維部47の外縁との接触部分に所定の面圧が発生した状態になり、それらダクト本体50および圧縮繊維部47の間がシールされる。
【0042】
圧縮繊維部47は、高い圧縮率で熱圧縮成形された高圧縮部22と、比較的低い圧縮率で熱圧縮成形された低圧縮部23とによって構成されている。
図10および
図11に示すように、高圧縮部22および低圧縮部23は共に、圧縮繊維部47の厚さ方向から見た外形が同一の菱形(詳しくは、正四角形)をなす四角板状になっている。
【0043】
これら高圧縮部22および低圧縮部23は、第1方向(
図11における左斜め上方向)において交互に並ぶ態様で配置されている。また、高圧縮部22および低圧縮部23は、第2方向(
図11における右斜め上方向)においても、交互に並ぶ態様で配置されている。高圧縮部22および低圧縮部23は、上記正四角形における2本の対角線の一方が延設方向、詳しくは吸気ダクト40の中心線L2(
図10参照)と平行に延びる態様で配置されている。また、高圧縮部22および低圧縮部23は、上記正四角形における2本の対角線の他方が、中心線L2と直交する面上において延びる態様で配置されている。隣合う高圧縮部22は、上記正方形状における4つの角部分において繋がっている。
【0044】
これにより、圧縮繊維部47における高圧縮部22は、一部(詳しくは、大部分)が低圧縮部23に挟まれる態様で、圧縮繊維部47の周方向における全長に渡って連続して延びる周方向部分44を有している。高圧縮部22における周方向部分44は、中心線L2と直交する面上において延びている。こうした周方向部分44は、延設方向における高圧縮部22の各配設位置にそれぞれ形成される。
【0045】
また、圧縮繊維部47における高圧縮部22は、同圧縮繊維部47の延設方向における全長に渡って連続して延びる軸方向部分45を有している。高圧縮部22における軸方向部分45は中心線L2と平行に延びている。こうした軸方向部分45は、周方向における高圧縮部22の各配設位置にそれぞれ形成される。
【0046】
図12に示すように、圧縮繊維部47の外面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差26を介して連なる一方で、圧縮繊維部47の内面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差のない状態で平らに連なっている。
【0047】
以下、本実施形態の吸気ダクト40による作用について説明する。
本実施形態の吸気ダクト40では、高強度の高圧縮部22(詳しくは、その周方向部分44)が、低強度の低圧縮部23に挟まれる態様で、中心線L2と直交する面上において延びるとともに圧縮繊維部47の周方向の全長に渡って連続して延びている。そのため、圧縮繊維部47が低強度の低圧縮部23を有しているとはいえ、高圧縮部22が周方向において途切れた構造のものと比較して、同低圧縮部23が設けられた部分およびその周辺、ひいては圧縮繊維部47全体の強度を高くすることができる。しかも、高圧縮部22における周方向に延びる部分が中心線L2と直交する面以外の面上で延びる構造のものと比較して、同部分の周方向における長さが短くなるため、圧縮繊維部47に厚さ方向の力が加わった場合における同圧縮繊維部47全体の強度を高くすることができる。
【0048】
また吸気ダクト40では、高強度の高圧縮部22(詳しくは、その軸方向部分45)が、低強度の低圧縮部23に挟まれる態様で、圧縮繊維部47の延設方向における全長に渡って連続して延びている。そのため、高圧縮部22が延設方向において途切れた構造のものと比較して、低圧縮部23が設けられた部分およびその周辺、ひいては圧縮繊維部47全体の強度を高くすることができる。
【0049】
本実施形態の吸気ダクト40では、このようにして圧縮繊維部47全体の強度を高くすることにより、上記圧縮繊維部47の厚さ方向における低圧縮部23の振動を抑えることができる。そのため、低圧縮部23を介して吸気ダクト40の内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。
【0050】
本実施形態の吸気ダクト40では、吸気の音波の一部が、ある程度の通気性を有する低圧縮部23を通過することで、吸気の音波の定在波が発生することを抑えることができるため、共鳴による吸気騒音を低減することができる。
【0051】
図10および
図11に示すように、上記吸気ダクト40では、そうした低圧縮部23が、圧縮繊維部47における延設方向の略全ての位置に配置されている。これにより、本実施形態では、低圧縮部23が圧縮繊維部47における延設方向の全体に実質的に配置されていると云える。そのため、吸気ダクト40の内部に発生し得る様々な周波数の定在波の腹A(
図7参照)となる位置に低圧縮部23が存在することとなり、幅広い周波数の吸気騒音を低減することができる。
【0052】
また吸気ダクト40では、高圧縮部22と低圧縮部23とが交互に並ぶように配置されている。これにより、圧縮繊維部47に対して低圧縮部23を周方向において均等に配置することができる。そのため、吸気の音波の圧力を、圧縮繊維部47の周方向の各部において低圧縮部23を通じてバランス良く逃がすことができ、定在波の発生を効果的に抑制することができる。
【0053】
このように、本実施形態の吸気ダクト40によれば、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
【0054】
(5)本実施形態の吸気ダクト40では、高強度の高圧縮部22が、大部分が低圧縮部23に挟まれる態様で、中心線L2と直交する面上において延びるとともに圧縮繊維部47の周方向における全長に渡って連続して延びている。そのため、圧縮繊維部47全体の強度を高くすることができる。これにより、低圧縮部23を介して吸気ダクト40の内部から外部に放射される放射音を抑えることができる。しかも、吸気の音波の一部が、ある程度の通気性を有する低圧縮部23を通過することで、吸気の音波の定在波が発生することを抑えることができるため、共鳴による吸気騒音を低減することもできる。このように吸気ダクト40によれば、放射音を含む吸気騒音を好適に低減することができる。
【0055】
(6)本実施形態の吸気ダクト40では、高強度の高圧縮部22が、大部分が低圧縮部23に挟まれる態様で、延設方向において圧縮繊維部47の全長に渡って連続して延びている。そのため、高圧縮部22が延設方向において途切れた構造のものと比較して、圧縮繊維部47全体の強度を高くすることができる。
【0056】
(7)高圧縮部22および低圧縮部23は、圧縮繊維部47の厚さ方向から見た外形が同一の正方形状をなす四角板状になっており、第1方向および第2方向においてそれぞれ交互に並ぶ態様で配置されている。隣合う高圧縮部22は、四角板状の角部分において繋がっている。これにより、高圧縮部22の周方向部分44を圧縮繊維部47の周方向における全長に渡って延びる形状にすることができる。しかも、低圧縮部23を圧縮繊維部47の延設方向における略全ての位置に配置することができるため、共鳴による吸気騒音を広い周波数範囲にわたり抑えることができる。また、低圧縮部23を圧縮繊維部47の周方向における略全ての位置に均等に配置することができるため、広い周波数範囲の放射音をバランス良く抑えることができる。
【0057】
(8)高圧縮部22および低圧縮部23は、対角線が中心線L2と直交する面上において延びる正方形状になっている。これにより、圧縮繊維部47外面の模様を、同一形状の正方形が延設方向および周方向において整然と並ぶ模様にすることができるため、吸気ダクト40の意匠性を向上させることができる。
【0058】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・第1実施形態において、周壁21を形成する手順としては、不織布を熱圧縮成形して円筒状の周壁を形成するといった手順の他、不織布を熱圧縮成形して断面円弧形状で延びる分割体を複数(例えば2つ)形成するとともに、それら半割体を円筒状になるように合わせた状態で互いに接合するといった手順を採用してもよい。
【0060】
・第1実施形態において、高圧縮部22および低圧縮部23の両方を備える円筒状の圧縮繊維部Bを、吸気ダクトの周壁における延設方向の一部分(例えば中間部分、端部)のみに配置するようにしてもよい。同構成においては、周壁における上記圧縮繊維部B以外の部分を、硬質の樹脂材料によって構成したり、高い圧縮率で熱圧縮成形した高圧縮部によって構成したりすることができる。
【0061】
・第1実施形態において、吸気ダクト20の取り付けのための構造は、固定部30を利用する構造に限らず、任意に変更することができる。
・第2実施形態において、圧縮繊維部47をダクト本体50に取り付ける方法は、例えばねじ締結による固定や、かしめ締結による固定、接合(接着や溶着)による固定など、任意に変更することができる。
【0062】
・第1実施形態において、高圧縮部22および低圧縮部23が交互に並ぶ方向(第1方向および第2方向)は、高圧縮部22の一部が中心線L1と直交する面上において延びるとともに周壁21の周方向における全長に渡って連続して環状で延びる周方向部分24を構成する態様であれば、任意に変更することができる。また、第2実施形態において、高圧縮部22および低圧縮部23が交互に並ぶ方向(第1方向および第2方向)は、高圧縮部22の一部が中心線L2と直交する面上において延びるとともに圧縮繊維部47の周方向における全長に渡って連続して延びる周方向部分44を構成する態様であれば、任意に変更することができる。例えば、第1方向および第2方向は以下のように定めることができる。
【0063】
図13に示す例では、高圧縮部22および低圧縮部23は厚さ方向から見た外形が正方形をなす四角板状をなしている。そして、これら高圧縮部22および低圧縮部23は、周方向(
図13における左右方向)において交互に並ぶ態様で配置されており、延設方向(
図13における上下方向)において交互に並ぶ態様で配置されている。
【0064】
図14に示す例では、高圧縮部22および低圧縮部23は厚さ方向から見た外形が平行四辺形をなす四角板状をなしている。そして、これら高圧縮部22および低圧縮部23は、周方向(
図14における左右方向)において交互に並ぶ態様で配置されており、周方向と交差する方向であり且つ周壁の中心線と平行ではない方向(
図14における左斜め上に延びる方向)において交互に並ぶ態様で配置されている。
【0065】
・高圧縮部22および低圧縮部23を厚さ方向から見た外形は、正方形や長方形、菱形、平行四辺形などの四角形に限らず、任意の形状に変更することができる。例えば、高圧縮部22および低圧縮部23を厚さ方向から見た外形を、4つの角を有するとともに4つの辺のうちの少なくとも1つが波形状をなす形状にしてもよい。
図15に示す例では、高圧縮部22および低圧縮部23を厚さ方向から見た外形が、4つの角を有するとともに2つの辺が波形状をなす形状になっている。
【0066】
・高圧縮部22および低圧縮部23を厚さ方向から見た外形を、それら高圧縮部22および低圧縮部23の全てを同一の形状にすることに限らず、高圧縮部22および低圧縮部23の一部を他と異なる形状にしたり、高圧縮部22および低圧縮部23の全てを互いに異なる形状にしたりすることができる。例えば、高圧縮部22および低圧縮部23を厚さ方向から見た外形を、圧縮繊維部の一部分においては正方形状にするとともに、他の部分では2つの正方形を繋いだ長方形状にすること等が可能である。
【0067】
・高圧縮部22を、周壁21(あるいは圧縮繊維部47)の延設方向における全長に渡って連続して延びる態様で配設することに限らず、延設方向において途切れる態様で配置するようにしてもよい。
【0068】
・吸気ダクトの周壁の内面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差のない状態で平らに連なるようにする一方で、周壁の外面では高圧縮部22と低圧縮部23とが段差を介して連なるようにしてもよい。また、吸気ダクトの周壁の内面および外面の両方において、高圧縮部22と低圧縮部23とが段差を介して連なるようにしてもよい。なお、吸気ダクトの組み付けを容易に行うためには、吸気ダクトの周壁の内面および外面の一方が平らになっていることが好ましい。
【0069】
・上記各実施形態にかかる吸気ダクトは、円筒状の周壁21を有する吸気ダクト20や四角筒状の周壁41を有する吸気ダクト40に限らず、楕円筒状や長円筒状、六角筒状など、任意断面の筒状の周壁を有する吸気ダクトにも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
20,40…吸気ダクト
21,41…周壁
22…高圧縮部
23…低圧縮部
24,44…周方向部分
25,45…軸方向部分
47…圧縮繊維部
50…ダクト本体
51…底壁
52…開口窓部