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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20230719BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230719BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230719BHJP
【FI】
F04B39/06 T
F04B39/00 106A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020012575
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116787
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内藤 篤志
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-165324(JP,A)
【文献】特開2018-207784(JP,A)
【文献】特開2015-48800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F04B 39/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮部と、
前記回転軸を回転させる電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ回路と、
前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに直流電源に対して並列接続されているコンデンサを含むフィルタ素子と、
前記フィルタ素子を保持する樹脂製のホルダと、
前記コンデンサに電気的に接続されるリード部を有する抵抗と、
前記インバータ回路、前記ホルダ、及び前記抵抗を収容するインバータ収容室を有する金属製のハウジングと、を備えている電動圧縮機であって、
前記ホルダには、雌ねじ孔が形成された金属板が設けられており、
前記抵抗は、前記雌ねじ孔に螺合するボルトにより前記金属板を介して前記ホルダに保持されており、
前記ホルダは前記ハウジングに固定されており、
前記リード部と前記ハウジングとの間には、前記ホルダが介在されており、
前記金属板と前記ハウジングとの間には、絶縁性の伝熱部材が介在されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記フィルタ素子及び前記抵抗が実装される回路基板と、
前記直流電源と前記回路基板とを電気的に接続するための接続端子と、を備え、
前記ホルダと、前記接続端子が設置される端子台は、一体化していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、回転軸と、回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮部と、回転軸を回転させる電動モータと、電動モータを駆動するインバータ回路と、を備えている。また、電動圧縮機は、インバータ回路の入力側に設けられるとともに直流電源に対して並列接続されているコンデンサを含むフィルタ素子を備えている。そして、電動圧縮機は、インバータ回路及びフィルタ素子を収容するインバータ収容室を有する金属製のハウジングを備えている。
【0003】
例えば特許文献1の電動圧縮機では、フィルタ素子が樹脂製のホルダに保持されている。そして、ホルダがインバータ収容室内に配置された状態でボルトによってハウジングに取り付けられることにより、フィルタ素子がインバータ収容室内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-48800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動圧縮機には、コンデンサに電気的に接続される抵抗が設けられる場合がある。電動圧縮機に設けられる抵抗には、高い許容損失が求められる場合がある。抵抗の体格は許容損失に比例するため、許容損失が高い抵抗は大型となる。大型の抵抗は、基板に取り付け難い。したがって、抵抗は、インバータ収容室内に配置された状態でハウジングに直接取り付けられることにより、インバータ回路及びフィルタ素子と共にインバータ収容室内に収容される。この場合、抵抗のリード部とハウジングとの絶縁を確保するために、抵抗のリード部とハウジングとの沿面距離を確保するための絶縁部材を配置する必要があるが、電動圧縮機の体格の大型化を招き、さらに、大型の抵抗から生じる熱を効率良く放熱することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化を招くことが無く、抵抗から生じる熱を効率良く放熱することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、回転軸と、前記回転軸の回転によって流体を圧縮する圧縮部と、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに直流電源に対して並列接続されているコンデンサを含むフィルタ素子と、前記フィルタ素子を保持する樹脂製のホルダと、前記コンデンサに電気的に接続されるリード部を有する抵抗と、前記インバータ回路、前記ホルダ、及び前記抵抗を収容するインバータ収容室を有する金属製のハウジングと、を備えている電動圧縮機であって、前記ホルダには、雌ねじ孔が形成された金属板が設けられており、前記抵抗は、前記雌ねじ孔に螺合するボルトにより前記金属板を介して前記ホルダに保持されており、前記ホルダは前記ハウジングに固定されており、前記リード部と前記ハウジングとの間には、前記ホルダが介在されており、前記金属板と前記ハウジングとの間には、絶縁性の伝熱部材が介在されている。
【0008】
これによれば、ボルトを金属板の雌ねじ孔に螺合することにより、抵抗をハウジングに固定されているホルダに保持することができるため、インバータ収容室内において、抵抗をハウジングに直接取り付ける必要が無い。さらには、抵抗のリード部とハウジングとの間に樹脂製のホルダが介在されている。したがって、フィルタ素子を保持するために必要な既存の構成であるホルダによって、抵抗のリード部とハウジングとの沿面距離を確保することができる。よって、抵抗のリード部とハウジングとの絶縁を確保するために、抵抗のリード部とハウジングとの沿面距離を確保するための絶縁部材を、ホルダとは別に配置する必要が無く、電動圧縮機の体格の大型化を招くことが無い。また、抵抗は、金属板を介してホルダに保持されており、金属板とハウジングとの間に絶縁性の伝熱部材が介在されているため、抵抗から生じる熱が、金属板及び伝熱部材を介してハウジングに効率良く放熱される。以上により、大型化を招くことが無く、抵抗から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0009】
上記電動圧縮機において、前記フィルタ素子及び前記抵抗が実装される回路基板と、前記直流電源と前記回路基板とを電気的に接続するための接続端子と、を備え、前記ホルダと、前記接続端子が設置される端子台は、一体化しているとよい。
【0010】
これによれば、フィルタ素子を保持するために必要な既存の構成であるホルダを、直流電源と回路基板とを電気的に接続するための接続端子が設置される端子台として機能させることができるため、ホルダと端子台とを別部品とした構成に比べると、部品点数を削減することができ、電動圧縮機の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、大型化を招くことが無く、抵抗から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の電気的構成を示す回路図。
図3】インバータ収容室内の一部分を示す平面図。
図4】ホルダの平面図。
図5】電動圧縮機の一部分を示す断面図。
図6】インバータケースの一部分を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10は、筒状である金属製のハウジング11を備えている。ハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、モータハウジング13に連結されるインバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。モータハウジング13の周壁13bには、モータハウジング13内に流体としての冷媒を吸入する吸入口13hが形成されている。
【0014】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。回転軸15は、回転軸15の軸線がモータハウジング13の周壁13bの軸心に一致した状態でモータハウジング13内に収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。したがって、ハウジング11は、圧縮部16及び電動モータ17を収容している。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。
【0015】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0016】
電動モータ17は、筒状のステータ18と、ステータ18の内側に配置されるロータ19とから構成されている。ロータ19は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ18は、ロータ19を取り囲んでいる。ロータ19は、回転軸15に止着されたロータコア19aと、ロータコア19aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ18は、筒状のステータコア18aと、ステータコア18aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0017】
吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0018】
インバータケース14は、有底筒状のケース本体14aと、ケース本体14aの開口部を閉塞する蓋部14bと、を有している。ケース本体14aは、板状の本体底壁141aと、本体底壁141aの外周部から筒状に延びる本体周壁141bと、を有している。インバータケース14の内部には、ケース本体14aの内面と蓋部14bの内面とによってインバータ収容室14cが形成されている。
【0019】
インバータケース14は、ケース本体14aの本体底壁141aがモータハウジング13の底壁13aに連結されることによって、モータハウジング13に取り付けられている。本体底壁141aの面積は、モータハウジング13の底壁13aの面積よりも大きい。このため、本体底壁141aの一部は、モータハウジング13の底壁13aの縁部よりも外側にはみ出している。本体底壁141aにおけるモータハウジング13の底壁13aの縁部よりもはみ出した部位には、本体底壁141aを貫通するコネクタ挿通孔14hが形成されている。
【0020】
電動圧縮機10は、電動モータ17を駆動するインバータ回路30を備えている。インバータ回路30は、回路基板31に実装されている。インバータ回路30は、インバータ収容室14c内に収容されている。したがって、インバータ回路30は、インバータケース14内に収容されている。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ回路30は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0021】
図2に示すように、モータコイル21は、u相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wを有する三相構造になっている。本実施形態において、u相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wは、Y結線されている。
【0022】
インバータ回路30は、複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を有している。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、電動モータ17を駆動するためにスイッチング動作を行う。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、IGBT(パワースイッチング素子)である。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2がそれぞれ接続されている。ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2は、スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2に対して並列に接続されている。
【0023】
各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のコレクタは、第1接続ラインEL1を介して直流電源32の正極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のエミッタは、第2接続ラインEL2を介して直流電源32の負極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のエミッタ及び各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のコレクタは、それぞれ直列に接続された中間点からu相コイル21u、v相コイル21v、及びw相コイル21wにそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
制御コンピュータ28は、電動モータ17の駆動電圧をパルス幅変調により制御する。具体的には、制御コンピュータ28は、搬送波信号と呼ばれる高周波の三角波信号と、電圧を指示するための電圧指令信号とによってPWM信号を生成する。そして、制御コンピュータ28は、生成したPWM信号を用いて各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作の制御(オンオフ制御)を行う。これにより、直流電源32からの直流電圧が交流電圧に変換される。そして、変換された交流電圧が駆動電圧として電動モータ17に印加されることにより、電動モータ17の駆動が制御される。
【0025】
また、制御コンピュータ28は、PWM信号を制御することにより、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作のデューティ比を可変制御する。これにより、電動モータ17の回転数が制御される。制御コンピュータ28は、空調ECU29と電気的に接続されており、空調ECU29から電動モータ17の目標回転数に関する情報を受信すると、その目標回転数で電動モータ17を回転させる。
【0026】
電動圧縮機10は、コンデンサ33及びコイル34を備えている。コンデンサ33は、インバータ回路30の入力側に設けられるとともに直流電源32に対して並列接続されている。コンデンサ33は、第1バイパスコンデンサ331、第2バイパスコンデンサ332、及び平滑コンデンサ333を含む。第1バイパスコンデンサ331の一端は、第1接続ラインEL1に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ331の他端は、第2バイパスコンデンサ332の一端に電気的に接続されている。よって、第1バイパスコンデンサ331と第2バイパスコンデンサ332とは直列接続されている。第2バイパスコンデンサ332の他端は、第2接続ラインEL2に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ331の他端と第2バイパスコンデンサ332の一端との中間点は、例えば、車両のボデーに接地されている。
【0027】
平滑コンデンサ333の一端は、第1接続ラインEL1に電気的に接続されている。平滑コンデンサ333の他端は、第2接続ラインEL2に電気的に接続されている。第1バイパスコンデンサ331及び第2バイパスコンデンサ332と平滑コンデンサ333とは並列接続されている。平滑コンデンサ333は、第1バイパスコンデンサ331及び第2バイパスコンデンサ332よりも各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2寄りに設けられている。
【0028】
コイル34は、コモンモードチョークコイルである。コイル34は、第1接続ラインEL1上に設けられる第1巻線341と、第2接続ラインEL2上に設けられる第2巻線342と、を有している。また、コイル34は、第1巻線341及び第2巻線342とは別に、仮想ノーマルモードコイルL1,L2を有している。仮想ノーマルモードコイルL1,L2は、コイル34からの漏れ磁束によるノーマルモードインダクタンス成分を有する。すなわち、本実施形態のコイル34は、等価回路的には、第1巻線341、第2巻線342、及び仮想ノーマルモードコイルL1,L2を有している。第1巻線341は、仮想ノーマルモードコイルL1に直列接続されるとともに、第2巻線342は、仮想ノーマルモードコイルL2に直列接続されている。
【0029】
コイル34、第1バイパスコンデンサ331、第2バイパスコンデンサ332、及び平滑コンデンサ333は、コモンモードノイズを低減する。コモンモードノイズとは、第1接続ラインEL1及び第2接続ラインEL2に同一方向の電流が流れるノイズである。コモンモードノイズは、電動圧縮機10と直流電源32とが、例えば、車両のボデーなど、第1接続ラインEL1及び第2接続ラインEL2以外の経路を介して電気的に接続された場合に生じ得る。したがって、コイル34、第1バイパスコンデンサ331、第2バイパスコンデンサ332、及び平滑コンデンサ333は、フィルタ素子35(フィルタ回路)を構成する。よって、フィルタ素子35は、コンデンサ33を含む。
【0030】
電動圧縮機10は、コンデンサ33に電気的に接続される抵抗36を備えている。抵抗36は、コンデンサ33に対して並列接続されている。抵抗36は、例えば、第1接続ラインEL1や第2接続ラインEL2などの電源ラインが断線した場合に、コンデンサ33に蓄積された電荷を放電する放電抵抗である。抵抗36の一端であるリード部36bは、第1接続ラインEL1における直流電源32の正極とコイル34との間に電気的に接続されている。抵抗36の他端であるリード部36bは、第2接続ラインEL2における直流電源32の負極とコンデンサ33の他端との間に電気的に接続されている。
【0031】
図3に示すように、電動圧縮機10は、フィルタ素子35を保持する樹脂製のホルダ40を備えている。ホルダ40は板状である。本実施形態のホルダ40は、コイル34を保持している。ホルダ40は、インバータ収容室14c内に収容されている。また、抵抗36は、ボルト41によりホルダ40に保持されている。よって、抵抗36は、インバータ収容室14c内に収容されている。したがって、インバータ収容室14cは、インバータ回路30、ホルダ40、及び抵抗36を収容する。ハウジング11は、インバータ回路30、ホルダ40、及び抵抗36を収容するインバータ収容室14cを有している。なお、コンデンサ33は、ホルダ40とは別部品である図示しないホルダに保持された状態で、インバータ収容室14c内に収容されている。コイル34及びコンデンサ33は、回路基板31に実装されている。したがって、フィルタ素子35は、回路基板31に実装されている。
【0032】
コネクタ挿通孔14hには、直流電源32が接続されるコネクタ接続部42が取り付けられている。コネクタ接続部42には、配線43が2つ設けられている。各配線43は、コネクタ接続部42から引き出されて、インバータ収容室14c内に配置されている。各配線43におけるコネクタ接続部42とは反対側の端部には、金属製の接続端子44がそれぞれ設けられている。接続端子44には、挿通孔44hがそれぞれ形成されている。
【0033】
図4に示すように、ホルダ40には、バスバー45が2つ設けられている。各バスバー45は、ホルダ40に一体的に設けられている。各バスバー45は、各接続端子44と電気的に接続される平板状の第1接続部45aと、第1接続部45aから延びて回路基板31に電気的に接続される第2接続部45bと、を有している。各バスバー45は、各バスバー45の第1接続部45aの厚み方向がホルダ40の厚み方向と一致した状態でホルダ40に設けられている。各バスバー45の第1接続部45aには、バスバー雌ねじ孔45hがそれぞれ形成されている。バスバー45とホルダ40の一部は、接続端子44が接続される端子台を構成している。
【0034】
そして、図3に示すように、各接続端子44の挿通孔44hそれぞれに挿通される接続端子用ボルト46が、各バスバー45の第1接続部45aのバスバー雌ねじ孔45hにそれぞれ螺合されることにより、各接続端子44が各バスバー45に電気的に接続される。これにより、直流電源32と回路基板31とが、コネクタ接続部42、各配線43、各接続端子44、及び各バスバー45を介して電気的に接続されている。したがって、各接続端子44は、直流電源32と回路基板31とを電気的に接続するために用いられる。そして、ホルダ40と、各接続端子44が設置される端子台は一体化している。
【0035】
図5及び図6に示すように、ケース本体14aの本体底壁141aの内面には、円筒状のボス部47が2つ突設されている。各ボス部47には、ボス雌ねじ孔47hがそれぞれ形成されている。ホルダ40には、ワッシャ48が2つ設けられている。各ワッシャ48は、ホルダ40に一体的に設けられている。ホルダ40には、各ワッシャ48を保持するワッシャ保持孔49がそれぞれ形成されている。各ワッシャ保持孔49の軸心方向は、ホルダ40の厚み方向に一致している。各ワッシャ48は、各ワッシャ保持孔49内に収容された状態でホルダ40に保持されている。そして、各ワッシャ48を通過した各固定ボルト50が各ボス部47のボス雌ねじ孔47hにそれぞれ螺合することにより、ホルダ40がケース本体14aの本体底壁141aの内面に固定されている。したがって、ホルダ40はハウジング11に固定されている。
【0036】
図3及び図4に示すように、ホルダ40は、筒状のコイル収容壁40aを有している。コイル収容壁40aの軸心方向は、ホルダ40の厚み方向に一致している。コイル34は、コイル収容壁40a内に収容された状態でホルダ40に保持されている。図6に示すように、ケース本体14aの本体底壁141aの内面には、コイル保持用凹部51が形成されている。コイル保持用凹部51内には、絶縁性のコイル用ポッティング樹脂52が塗布されている。そして、コイル34は、コイル収容壁40aに保持された状態で、コイル用ポッティング樹脂52を介してケース本体14aに熱的に結合されている。
【0037】
図3に示すように、抵抗36は、図示しない抵抗器を内蔵した長四角板状のモールド部36aと、モールド部36aにおける長手方向の一端に位置する一端面から突出する一対のリード部36bと、を有している。図5に示すように、抵抗36は、一対のリード部36bが回路基板31に電気的に接続されることにより、回路基板31に実装されている。モールド部36aには、貫通孔36hが形成されている。貫通孔36hは、モールド部36aを厚み方向に貫通している。
【0038】
図3及び図4に示すように、ホルダ40は、モールド部36aの短手方向に位置する両側面に沿って延びる薄板平板状の一対の第1側壁401を有している。また、ホルダ40は、モールド部36aにおける長手方向の他端に位置する他端面に沿って延びる薄板平板状の第2側壁402を有している。一対の第1側壁401は、互いに平行に延びている。第2側壁402は、ホルダ40を平面視すると、一対の第1側壁401の延設方向に対して直交する方向に延びている。リード部36bとケース本体14aの本体底壁141aとの間には、ホルダ40の一部が介在されている。したがって、リード部36bとハウジング11との間には、ホルダ40が介在されている。
【0039】
図4及び図5に示すように、ホルダ40には、金属板53が設けられている。金属板53は、ホルダ40を平面視すると、一対の第1側壁401の間に配置されている。金属板53の厚み方向に位置する両面は、ホルダ40の厚み方向に位置する両面に臨んでいる。金属板53の厚み方向に位置する両面は、ホルダ40の厚み方向に位置する両面とそれぞれ同一面上に位置している。
【0040】
金属板53には、雌ねじ孔53hが形成されている。雌ねじ孔53hは、金属板53を厚み方向に貫通している。そして、抵抗36は、貫通孔36hを通過したボルト41が雌ねじ孔53hに螺合することにより、金属板53を介してホルダ40に固定されている。したがって、抵抗36は、雌ねじ孔53hに螺合するボルト41により金属板53を介してホルダ40に保持されている。抵抗36のモールド部36aは、金属板53に接触している。
【0041】
図5及び図6に示すように、ケース本体14aの本体底壁141aの内面には、金属板用凹部55が形成されている。金属板用凹部55内には、絶縁性の金属板用ポッティング樹脂56が塗布されている。金属板53は、金属板用ポッティング樹脂56に密着している。そして、金属板53は、金属板用ポッティング樹脂56を介してケース本体14aに熱的に結合されている。したがって、金属板用ポッティング樹脂56は、金属板53とハウジング11との間に介在される絶縁性の伝熱部材である。そして、抵抗36は、金属板53及び金属板用ポッティング樹脂56を介してケース本体14aに熱的に結合されている。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
抵抗36は、金属板53を介してホルダ40に保持されている。よって、ホルダ40によって、抵抗36とハウジング11との沿面距離が確保されている。また、金属板53とケース本体14aとの間に絶縁性の金属板用ポッティング樹脂56が介在されているため、抵抗36から生じる熱が、金属板53及び金属板用ポッティング樹脂56を介してケース本体14aに効率良く放熱される。したがって、抵抗36が効率良く冷却され、抵抗36の耐久性が向上する。
【0043】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ホルダ40には、雌ねじ孔53hが形成された金属板53が設けられている。抵抗36は、雌ねじ孔53hに螺合するボルト41により金属板53を介してホルダ40に保持されている。ホルダ40は、ケース本体14aの本体底壁141aに固定されている。そして、金属板53とハウジング11との間には、絶縁性の金属板用ポッティング樹脂56が介在されている。これによれば、ボルト41を金属板53の雌ねじ孔53hに螺合することにより、抵抗36をハウジング11に固定されているホルダ40に保持することができるため、インバータ収容室14c内において、抵抗36をケース本体14aの本体底壁141aの内面に直接取り付ける必要が無い。さらには、リード部36bとケース本体14aの本体底壁141aとの間には、ホルダ40が介在されている。したがって、フィルタ素子35を保持するために必要な既存の構成であるホルダ40によって、抵抗36のリード部36bとハウジング11との沿面距離を確保することができる。よって、抵抗36のリード部36bとハウジング11との絶縁を確保するために、抵抗36のリード部36bとハウジング11との沿面距離を確保するための絶縁部材を、ホルダ40とは別に配置する必要が無く、電動圧縮機10の体格の大型化を招くことが無い。また、抵抗36は、金属板53を介してホルダ40に保持されており、金属板53とハウジング11との間に絶縁性の金属板用ポッティング樹脂56が介在されているため、抵抗36から生じる熱が、金属板53及び金属板用ポッティング樹脂56を介してケース本体14aに効率良く放熱される。以上により、大型化を招くことが無く、抵抗36から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0044】
(2)ホルダ40と、直流電源32と回路基板31とを電気的に接続するための各接続端子44が設置される端子台は、一体化している。これによれば、フィルタ素子35を保持するために必要な既存の構成であるホルダ40を、直流電源32と回路基板31とを電気的に接続するための各接続端子44が設置される端子台として機能させることができる。このため、ホルダ40と端子台とを別部品とした構成に比べると、部品点数を削減することができ、電動圧縮機10の構成を簡素化することができる。
【0045】
(3)ホルダ40は、モールド部36aの短手方向に位置する両側面に沿って延びる薄板平板状の一対の第1側壁401と、モールド部36aにおける長手方向の他端に位置する他端面に沿って延びる薄板平板状の第2側壁402と、を有している。これによれば、ホルダ40が一対の第1側壁401及び第2側壁402を有していない構成である場合に比べると、一対の第1側壁401及び第2側壁402によって、抵抗36とハウジング11との沿面距離を長くすることができるため、抵抗36とハウジング11との絶縁を確保し易くすることができる。
【0046】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
○ 実施形態において、ホルダ40と、直流電源32と回路基板31とを電気的に接続するための接続端子44が設置される端子台は、一体化していなくてもよい。要は、電動圧縮機10は、ホルダ40と端子台とを別部品とした構成であってもよい。
【0048】
○ 実施形態において、金属板53とハウジング11との間に、例えば、熱伝導性に優れた絶縁性のシート材を伝熱部材として介在させてもよい。この場合、金属板用凹部55に金属板用ポッティング樹脂56が塗布されていなくてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、ホルダ40に、コンデンサ33が保持されていてもよい。要は、ホルダ40は、フィルタ素子35を構成する部品を少なくとも保持していればよく、ホルダ40に保持される部品の種類は特に限定されるものではない。
【0050】
○ 実施形態において、ホルダ40が、例えば、一対の第1側壁401及び第2側壁402を有していない構成であってもよい。
○ 実施形態において、ホルダ40が、例えば、第2側壁402を有していない構成であってもよい。
【0051】
○ 実施形態において、ホルダ40が、例えば、一対の第1側壁401を有していない構成であってもよい。
○ 実施形態において、ホルダ40が、例えば、一対の第1側壁401の一方を有していない構成であってもよい。
【0052】
○ 実施形態において、抵抗36の形状は特に限定されるものではない。例えば、抵抗36のモールド部36aは、長四角板状でなくてもよく、例えば、正方形板状であってもよい。
【0053】
○ 実施形態において、抵抗36は、例えば、ダンピング抵抗であってもよい。要は、抵抗36は、コンデンサ33に電気的に接続されているものであればよく、例えば、コンデンサ33に対して直列接続されているものであってもよい。したがって、抵抗36の用途は特に限定されるものではない。
【0054】
○ 実施形態において、コイル34は、例えば、ノーマルモードチョークコイルであってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、モータハウジング13の底壁13aに、有底筒状のカバー部材が取り付けられており、モータハウジング13の底壁13aの外面、及びカバー部材の内面により、インバータ回路30を収容するインバータ収容室14cが形成されている構成であってもよい。この場合、カバー部材は、ハウジング11の一部である。
【0055】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、インバータ回路30が、モータハウジング13に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ回路30が、この順で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されていなくてもよい。
【0056】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、14c…インバータ収容室、15…回転軸、16…圧縮部、17…電動モータ、30…インバータ回路、31…回路基板、32…直流電源、33…コンデンサ、35…フィルタ素子、36…抵抗、36b…リード部、40…ホルダ、41…ボルト、44…接続端子、53…金属板、53h…雌ねじ孔、56…伝熱部材である金属板用ポッティング樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6