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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】階段安全装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20230719BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A62B99/00 A
E04F11/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020012635
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021115392
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】河崎 由美子
(72)【発明者】
【氏名】彌重 功
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩前 泰代
(72)【発明者】
【氏名】白波瀬 正子
(72)【発明者】
【氏名】植山 生仁
(72)【発明者】
【氏名】平岡 千穂
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-317002(JP,A)
【文献】特開2000-248704(JP,A)
【文献】特開2009-102815(JP,A)
【文献】特開平10-148021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 2/00-99/00
E04F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り返し部分と、当該折り返し部分よりも上に位置する第1直線部分と、当該折り返し部分よりも下に位置する第2直線部分とを有する折り返し階段を昇降する人が通過する空間を検知領域とし、人の姿勢或いは姿勢変化、及び位置を特定可能な検知情報を出力する検知装置と、
上記第1直線部分或いは当該第1直線部分の側方に配置されており、当該第1直線部分が有する複数の第1踏板が並ぶ方向に沿って並ぶ複数の第1エアバッグ装置と、
上記第2直線部分或いは当該第2直線部分の側方に配置されており、当該第2直線部分が有する複数の第2踏板が並ぶ方向に沿って並ぶ複数の第2エアバッグ装置と、
折り返し部分に隣接する第1壁であって、上記第1直線部分と水平方向において対向する当該第1壁に設けられた第3エアバッグ装置と、
上記検知情報が入力され、かつ複数の上記第1エアバッグ装置、複数の上記第2エアバッグ装置、及び上記第3エアバッグ装置を個別に作動させる駆動信号を出力可能なコントローラと、を備えており、
上記コントローラは、
入力された上記検知情報に基づいて、上記折り返し階段を昇降する人が転落するか否かを判断する第1判断処理と、
上記第1判断処理で転落すると判断した場合、上記検知情報に基づいて特定した位置が上記折り返し部分よりも上であるか下であるかを判断する第2判断処理と、
特定した位置が上記折り返し部分よりも上であると判断したことに基づいて、特定した位置よりも下方に位置する上記第1エアバッグ装置及び上記第3エアバッグ装置を作動させる上記駆動信号を出力する第1出力処理と、
特定した位置が上記折り返し部分よりも下であると判断したことに基づいて、特定した位置よりも下方に位置する上記第2エアバッグ装置を作動させる上記駆動信号を出力する第2出力処理と、を実行する、階段安全装置。
【請求項2】
上記折り返し部分に隣接して設けられた第2壁であって、上記第1壁と交差する第2壁に設けられた第4エアバッグ装置をさらに備えており、
上記第1出力処理は、上記第4エアバッグ装置を駆動させる駆動信号を出力する処理を含む、請求項1に記載の階段安全装置。
【請求項3】
上記折り返し部分が有する第3踏板の下に配置された第5エアバッグ装置をさらに備えており、
上記第出力処理は、上記第5エアバッグ装置を駆動させる駆動信号を出力する処理を含む、請求項1または2に記載の階段安全装置。
【請求項4】
上記階段或いは当該階段に隣接する壁に収容された収容位置と、上記折り返し部分が有する第3踏板の上の空間を区画する区画位置とにスライド可能な衝立部材と、
上記衝立部材を上記収容位置から上記区画位置にスライドさせる駆動源と、をさらに備えており、
上記第1出力処理は、
上記駆動源を通じて上記衝立部材を上記収容位置から上記区画位置にスライドさせる処理を含む、請求項1から3のいずれかに記載の階段安全装置。
【請求項5】
上記検知装置は、上記折り返し階段の上方或いは側方に配置された複数のレーザセンサであって、
上記各レーザセンサは、上記検知領域を区分けした複数の個別検知領域のそれぞれにレーザ光を照射し、かつ照射したレーザ光の反射光を受光し、受光した反射光に応じた個別検知情報及び識別情報を出力するセンサであり、
上記第1判断処理は、上記個別検知情報及び上記識別情報に基づいて、人を検知した上記レーザセンサの上記識別情報を特定し、特定した上記識別情報に基づいて、転落するか否かを判断する処理である、請求項1から4のいずれかに記載の階段安全装置。
【請求項6】
上記検知装置は、上記検知領域を区分けした複数の個別検知領域からそれぞれ入射する赤外線を個別に検知可能な人感知センサ、或いは上記個別検知領域から入射する赤外線の変化を検知可能な人感知センサであって、上記個別検知領域ごとの個別検知情報及び個別識別情報を含む上記検知情報を出力するセンサであり、
上記第1判断処理は、上記個別検知情報に基づいて、転落するか否かを判断する処理である、請求項1または4のいずれかに記載の階段安全装置。
【請求項7】
上記検知装置は、上記検知領域に走査光を照射し、当該走査光の反射光を受光し、受光した反射光に基づいて生成した画像データを上記検知情報として出力する3次元レーザセンサであり、
上記コントローラは、転落姿勢を示す判断画像データを記憶するメモリを有しており、
上記第1判断処理は、上記検知装置から入力された上記検知情報である画像データが示す人の画像と上記判断画像データが示す転落姿勢の人の画像との一致点或いは相違点に基づいて、転落するか否かを判断する処理である、請求項1から4のいずれかに記載の階段安全装置。
【請求項8】
上記検知装置は、
上記第1踏板及び当該第1踏板の上方の空間を撮像する第1カメラと、
上記第2踏板及び当該第2踏板の上方の空間を撮像する第2カメラと、であり、
上記コントローラは、転落姿勢を示す判断画像データを記憶するメモリを有しており、
上記第1判断処理は、上記検知装置から入力された上記検知情報である画像データが示す人の画像と上記判断画像データが示す転落姿勢の人の画像との一致点或いは相違点に基づいて、転落するか否かを判断する処理であり、
上記コントローラは、上記画像データが示す画像に基づいて、転落すると判断した人の高さ位置を特定する位置特定処理をさらに実行する、請求項1から4のいずれかに記載の階段安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段を昇降する人の安全を確保する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、階段を昇降する人の移動速度を測定する速度センサと、階段の各段にそれぞれ設置された複数の衝撃センサと、速度センサ及び衝撃センサの出力に基づいて人の転落を判断する制御装置と、各段にそれぞれ配置された複数のエアバッグと、を備える階段安全装置を開示する。制御装置は、衝撃を検知した段より下の段に配置されたエアバッグを動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-248704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の階段安全装置では、転落した人が、作動した複数のエアバッグの上を滑り降りることにより、転落した人が負傷することを防止する。しかしながら、階段が、折り返し部分を有する折り返し階段である場合、階段の上の部分で転落した人は、エアバッグの上を滑り降りて、折り返し部分に隣接する壁に激突するおそれがある。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、転落した人が折り返し部分に隣接する壁に激突することを防止可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る階段安全装置は、折り返し部分と、当該折り返し部分よりも上に位置する第1直線部分と、当該折り返し部分よりも下に位置する第2直線部分とを有する折り返し階段を昇降する人が通過する空間を検知領域とし、人の姿勢或いは姿勢変化、及び位置を特定可能な検知情報を出力する検知装置と、上記第1直線部分或いは当該第1直線部分の側方に配置されており、当該第1直線部分が有する複数の第1踏板が並ぶ方向に沿って並ぶ複数の第1エアバッグ装置と、上記第2直線部分或いは当該第2直線部分の側方に配置されており、当該第2直線部分が有する複数の第2踏板が並ぶ方向に沿って並ぶ複数の第2エアバッグ装置と、折り返し部分に隣接する第1壁であって、上記第1直線部分と水平方向において対向する当該第1壁に設けられた第3エアバッグ装置と、上記検知情報が入力され、かつ複数の上記第1エアバッグ装置、複数の上記第2エアバッグ装置、及び上記第3エアバッグ装置を個別に作動させる駆動信号を出力可能なコントローラと、を備える。上記コントローラは、入力された上記検知情報に基づいて、上記折り返し階段を昇降する人が転落するか否かを判断する第1判断処理と、上記第1判断処理で転落すると判断した場合、上記検知情報に基づいて特定した位置が上記折り返し部分よりも上であるか下であるかを判断する第2判断処理と、特定した位置が上記折り返し部分よりも上であると判断したことに基づいて、特定した位置よりも下方に位置する上記第1エアバッグ装置及び上記第3エアバッグ装置を作動させる上記駆動信号を出力する第1出力処理と、特定した位置が上記折り返し部分よりも下であると判断したことに基づいて、特定した位置よりも下方に位置する上記第2エアバッグ装置を作動させる上記駆動信号を出力する第2出力処理と、を実行する。
【0007】
本発明に係る階段安全装置は、人の姿勢によって転落か否かを判断するので、人が階段から転落するか否かを、人が階段や階下の床などに衝突する前に検知することができる。また、本発明に係る階段安全装置は、特定した位置が折り返し部分よりも上に位置すると判断すると、第1エアバッグ装置及び第3エアバッグ装置を作動させるので、転落する人が階段及び第1壁に激突することを防止することができる。また、本発明に係る階段安全装置は、特定した位置が折り返し部分よりも下に位置すると判断すると、第2エアバッグ装置を作動させるので、転落する人が階段や階下の床や、及び間取り上存在すれば階下の壁などに激突することを防止することができる。
【0008】
(2) 本発明に係る階段安全装置は、上記折り返し部分に隣接して設けられた第2壁であって、上記第1壁と交差する第2壁に設けられた第4エアバッグ装置をさらに備えていてもよい。上記第1出力処理は、上記第4エアバッグ装置を駆動させる駆動信号を出力する処理を含む。
【0009】
第4エアバッグ装置が作動されることにより、転落した人が、第2壁に激突することを防止することができる。その結果、本発明に係る階段安全装置は、折り返し階段を昇降する人の安全性をさらに高めることができる。
【0010】
(3) 本発明に係る階段安全装置は、上記折り返し部分が有する第3踏板の下に配置された第5エアバッグ装置をさらに備えていてもよい。上記第2出力処理は、上記第5エアバッグ装置を駆動させる駆動信号を出力する処理を含む。
【0011】
折り返し部分が第3踏板を有する場合、第3踏板の下方に第5エアバッグ装置がさらに配置されることにより、本発明に係る階段安全装置は、折り返し階段を昇降する人の安全性をさらに高めることができる。
【0012】
(4) 本発明に係る階段安全装置は、上記階段或いは当該階段に隣接する壁に収容された収容位置と、上記折り返し部分が有する第3踏板の上の空間を区画する区画位置とにスライド可能な衝立部材と、上記衝立部材を上記収容位置から上記区画位置にスライドさせる駆動源と、をさらに備えていてもよい。上記第1出力処理は、上記駆動源を通じて上記衝立部材を上記収容位置から上記区画位置にスライドさせる処理を含む。
【0013】
本発明に係る階段安全装置は、衝立部材を区画位置にスライドさせることにより、折り返し部分を転がり降りる人が、折り返し部分を超えて第2直線部分まで転がることを防止することができる。
【0014】
(5) 上記検知装置は、上記折り返し階段の上方或いは側方に配置された複数のレーザセンサであって、上記各レーザセンサは、上記検知領域を区分けした複数の個別検知領域のそれぞれにレーザ光を照射し、かつ照射したレーザ光の反射光を受光し、受光した反射光に応じた個別検知情報及び識別情報を出力するセンサであり、上記第1判断処理は、上記個別検知情報及び上記識別情報に基づいて、人を検知した上記レーザセンサの上記識別情報を特定し、特定した上記識別情報に基づいて、転落するか否かを判断する処理であってもよい。
【0015】
複数のレーザセンサを用いることにより、人が折り返し階段から転落するか否かを判断することができまた、転落する人の位置を特定することができる。
【0016】
(6) 上記検知装置は、上記検知領域を区分けした複数の個別検知領域からそれぞれ入射する赤外線を個別に検知可能な人感知センサ、或いは上記個別検知領域から入射する赤外線の変化を検知可能な人感知センサであって、上記個別検知領域ごとの個別検知情報及び個別識別情報を含む上記検知情報を出力するセンサであり、上記第1判断処理は、上記個別検知情報に基づいて、転落するか否かを判断する処理であってもよい。
【0017】
人感知センサを用いることにより、人が折り返し階段から転落するか否かを判断することができまた、転落する人の位置を特定することができる。
【0018】
(7) 上記検知装置は、上記検知領域に走査光を照射し、当該走査光の反射光を受光し、受光した反射光に基づいて生成した画像データを上記検知情報として出力する3次元レーザセンサであり、上記コントローラは、転落姿勢を示す判断画像データを記憶するメモリを有しており、上記第1判断処理は、上記検知装置から入力された上記検知情報である画像データが示す人の画像と上記判断画像データが示す転落姿勢の人の画像との一致点或いは相違点に基づいて、転落するか否かを判断する処理であってもよい。
【0019】
3次元レーザセンサを用いることにより、人が折り返し階段から転落するか否かを判断することができまた、転落する人の位置を特定することができる。
【0020】
(8) 上記検知装置は、上記第1踏板及び当該第1踏板の上方の空間を撮像する第1カメラと、上記第2踏板及び当該第2踏板の上方の空間を撮像する第2カメラと、であり、上記コントローラは、転落姿勢を示す判断画像データを記憶するメモリを有しており、上記第1判断処理は、上記検知装置から入力された上記検知情報である画像データが示す人の画像と上記判断画像データが示す転落姿勢の人の画像との一致点或いは相違点に基づいて、転落するか否かを判断する処理であり、上記コントローラは、上記画像データが示す画像に基づいて、転落すると判断した人の高さ位置を特定する位置特定処理をさらに実行してもよい。
【0021】
カメラを用いることにより、人が折り返し階段から転落するか否かを判断することができまた、転落する人の位置を特定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る階段安全装置は、転落した人が折り返し部分に隣接する壁に激突することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、階段安全装置10の機能ブロック図である。
図2図2は、曲がり階段50の模式的な斜視図である。
図3図3は、曲がり階段50の模式的な側面図である。
図4図4は、エアバッグ91が膨張された状態を説明する説明図である。
図5図5は、制御プログラム18が実行する処理を示すフローチャートである。
図6図6は、駆動処理を示すフローチャートである。
図7図7(A)は、第2センサ群32に属する複数のレーザセンサ34のうち、人を検知したレーザセンサ34を示す図であり、図7(B)、(C)は、第1センサ群31に属する複数のレーザセンサ34のうち、人を検知したレーザセンサ34を示す図である。
図8図8は、変形例1において制御プログラム18が実行する処理を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例3に係る図であり、(A)は人感知センサ60が第2壁57に設けられた場合の曲がり階段50の模式的な側面図であり、(B)は人感知センサ60が天井に設けられた場合の曲がり階段50の模式的な平面図である。
図10図10は、変形例3において制御プログラム18が実行する処理を示すフローチャートである。
図11図11(A)は、変形例4に係る図であり、曲がり階段50の模式的な平面図であり、図11(B)は、変形例1に係る図であり、曲がり階段50の模式的な平面図である。
図12図12は、変形例4において制御プログラム18が実行する処理を示すフローチャートである。
図13図13は、変形例7に係る曲がり階段50の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
本実施形態では、2以上の階層を有する建物(不図示)の曲がり階段50(図2)に設置される階段安全装置10について説明する。曲がり階段50は、図2に示されるように、曲がり部分53と、曲がり部分53よりも上に位置する第1直線部分51と、曲がり部分53よりも下に位置する第2直線部分52と、を備える。第1直線部分51は、複数の踏板54を有し、第2直線部分55は、複数の踏板55を有し、曲がり部分53は、複数の踏板56を有する。図2、3に示す例では、第1直線部分51は4つの踏板54を有し、第2直線部分52は4つの踏板55を有し、曲がり部分53は4つの踏板56を有する。すなわち、第1直線部分51及び第2直線部分52は5段であり、曲がり部分53は、3段である。曲がり階段50は、折り返し階段の一例である。曲がり部分53は、折り返し部分の一例である。
【0026】
階段安全装置10は、曲がり階段50において人が転落することを検出したことに応じてエアバッグ装置90(図1)を作動させ、転落する人が負傷することを防止する装置である。以下、詳しく説明する。
【0027】
図1に示されるように、階段安全装置10は、端末装置11と、端末装置11に接続された第1センサ群31、第2センサ群32、及び第3センサ群33と、第1エアバッグ群81、第2エアバッグ群82、第3エアバッグ群83、第4エアバッグ群84、及び第5エアバッグ群85と、を備える。なお、図1において破線で示された衝立装置20やカメラ62、63や、3次元レーザセンサ64、65や、第1センサ群71や、第2センサ群72や、第3センサ群73については、変形例において説明する。以下では、第1センサ群31、第2センサ群32、第3センサ群33を区別しない場合、センサ群31、32、33と記載して説明する。また、第1エアバッグ群81、第2エアバッグ群82、第3エアバッグ群83、第4エアバッグ群84、及び第5エアバッグ群85を区別しない場合、エアバッグ群81、82、83、84、85と記載して説明する。
【0028】
端末装置11は、例えば、パーソナルコンピュータや、建物の室内の壁面に取り付けられて建物の管理を行う管理装置などである。端末装置11は、コントローラ12と、通信インタフェース13と、電源回路14と、を有する。なお、図1では、通信インタフェース13は、通信I/F13として省略されて表記されている。
【0029】
通信インタフェース13は、インターネットプロトコルに準じた通信を行うインタフェースであって、不図示のルータを介してインターネット19と接続されている。
【0030】
電源回路14は、100Vや110Vや120Vや200Vや220Vや240Vなどの商用の交流電源(不図示)と、電源ケーブル等によって接続されている。電源回路14は、交流電圧を直流電圧に変換するAC-DCコンバータである。電源回路14は、コントローラ12や通信インタフェース13やセンサ群31、32、33やエアバッグ群81、82、83、84、85に駆動電力を供給する。なお、電源回路14と通信インタフェース13、センサ群31、32、33、及びエアバッグ群81、82、83、84、85と、を接続する給電線の図示は省略されている。また、スイッチング素子が給電線などに設けられている。このスイッチング素子は、コントローラ12から駆動信号を入力されることにより、オンオフされる。すなわち、センサ群31、32、33等への駆動電力の供給は、コントローラ12によって制御される。電源回路14は、駆動源の一例である。
【0031】
コントローラ12は、中央演算処理装置であるCPU15と、メモリ16と、通信バス17と、を有する。
【0032】
メモリ16は、例えば、ROMや、RAMや、EEPROMや、不図示の装着部に装着されたUSBメモリなどの可搬記憶媒体やバッファなどである。メモリ16は、制御プログラム18と、閾値A、Bと、メールアドレスと、を記憶する。なお、図1に示された判断画像データは、後述の変形例において説明される。
【0033】
制御プログラム18は、CPU15によって実行されるプログラムであって、人の転落を検知する処理や、エアバッグ群81、82、83、84、85のエアバッグ装置90を作動させる処理などを実行するプログラムである。制御プログラム18が実行する処理については、詳しくは後述する。
【0034】
閾値A、Bは、制御プログラム18が、人が転落するか否かを判断する際に用いられる。詳しくは後述する。メールアドレスは、制御プログラム18が人の転落を検知した場合に送信されるメールのアドレスを示す。メールアドレスは、例えば、建物を使用する家人や、当該家人の親類などが登録したメールアドレスである。
【0035】
通信バス17は、CPU15、メモリ16、通信インタフェース13、センサ群31、32、33の各レーザセンサ34、及びエアバッグ群81、82、83、84、85の各エアバッグ装置90とそれぞれ接続されている。すなわち、CPU15によって実行される制御プログラム18は、通信バス17を通じて、情報やデータをメモリ16から読み出し、情報やデータをメモリ16に記憶させることができ、メールや情報やデータを通信インタフェース13を通じて送受信することができ、センサ群31、32、33が検知した検知情報を取得することができ、エアバッグ装置90に駆動信号を出力してエアバッグ装置90を作動させることができる。
【0036】
センサ群31、32、33は、複数のレーザセンサ34をそれぞれ有する。センサ群31、32、33がそれぞれ有するレーザセンサ34の個数は、曲がり階段50の仕様などによって決められる。レーザセンサ34は、全て或いは一部が同一の仕様のレーザセンサであってもよいし、全て相違する仕様のレーザセンサであってもよい。以下では、全てのレーザセンサ34が同一の仕様である例を説明する。
【0037】
レーザセンサ34は、レーザ光を照射する照射部と、人などの物体によって反射された反射光を受光し、受光した反射光を電圧に変換する受光部と、を有する。受光部は、例えばフォトダイオードである。レーザセンサ34は、例えば、識別情報と、レーザ光を照射したタイミングと反射光を受光したタイミングとの差を示す情報と、受光部が出力する電圧値に応じた情報と、を含む検知情報を出力する。
【0038】
識別情報は、複数のレーザセンサ34を個々に識別する情報である。レーザ光を照射したタイミングと反射光を受光したタイミングとの差を示す情報は、曲がり階段50に隣接する第2壁57や曲がり階段50の踏板54、55、56などによってレーザ光が反射されたか、曲がり階段50を昇降する人などの物体によってレーザ光が反射されたかを示す。受光部が出力する電圧値に応じた情報は、第2壁57や踏板54、55、56によってレーザ光が反射されたか、曲がり階段50を昇降する人などの物体によってレーザ光が反射されたかを示す。すなわち、コントローラ12は、レーザセンサ34が出力した検知情報に基づいて、当該レーザセンサ34が人を検知したか否かを個々のレーザセンサ34について個々に判断することができる。別言すれば、コントローラ12は、複数のレーザセンサ34から入力された検知情報に基づいて、複数のレーザセンサ34のうちから、人を検知したレーザセンサ34を個々に特定することができる。
【0039】
なお、レーザセンサ34が出力する検知情報は、人を検知したか否かをコントローラ12が判断可能な情報であればよく、上述の例以外の検知情報であってもよい。また、複数のレーザセンサ34と端末装置11との間に中継装置が設けられていてもよい。中継装置は、各レーザセンサ34から入力された検知情報に基づいて、各レーザセンサ34が人を検知したか否かをそれぞれ判断し、各レーザセンサ34が人を検知したか否かを示す情報を端末装置11に入力してもよい。
【0040】
第1センサ群31のレーザセンサ34は、曲がり階段50を昇降する人が転落姿勢となったか否かを検知するためのセンサである。第1センサ群31のレーザセンサ34は、曲がり階段50に隣接して設けられた対向する一対の第2壁57に設けられている。詳しく説明すると、複数のレーザセンサ34は、鉛直方向及び水平方向に並んで設けられており、いわゆるマトリックス状或いは格子状に配置されている。なお、図3図4では、第1センサ群31に属するレーザセンサ34は、グレーに塗りつぶされた丸で示されている。
【0041】
第1センサ群31のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口41から曲がり部分53に亘って、かつ曲がり部分53から曲がり階段50の降り口42に亘って設けられている。すなわち、第1センサ群31の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の第1直線部分51、第2直線部分52、及び曲がり部分53の上方の空間の全てを検知領域とする。なお、第1センサ群31の複数のレーザセンサ34のうち、登り口41から曲がり部分53までに位置するレーザセンサ34は、対向する一対の第2壁57の一方に設けられ、曲がり部分53から降り口42までに位置するレーザセンサ34は、対向する一対の第2壁57の他方に設けられている。
【0042】
第1センサ群31に属し、かつ鉛直方向に並ぶ列に属する複数のレーザセンサ34のうち、最も下に位置するレーザセンサ34は、曲がり階段50の第1踏板54及び第2踏板55と同一の高さ位置、或いは踏板54、55よりも僅か(数cm)に上となる位置に位置している。鉛直方向に並ぶ列に属する複数のレーザセンサ34のうち、最も上に位置するレーザセンサ34は、踏板54、55に立つ人の頭頂よりも上となる位置に位置している。すなわち、第1センサ群31に属する複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の第1直線部分51或いは第2直線部分52を昇降する人の頭から足までを含む領域を検知領域とする。
【0043】
第1センサ群31のレーザセンサ34は、第2壁57の壁面に略垂直にレーザ光を照射する向きに設置されている。すなわち、第1センサ群31の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の上方の空間であって、曲がり階段50を昇降する人が通過する空間を検知領域(以下、第1検知領域とも記載する)とする。第1検知領域は、第1センサ群31に属する複数のレーザセンサ34がレーザ光を照射する空間(領域)であって、レーザセンサ34が人を検知可能な空間(領域)である。別言すれば、検知領域は、レーザー光などの検知波が照射される空間(領域)であって、人などの物体を検知可能な空間(領域)である。第1センサ群31の各レーザセンサ34がそれぞれレーザ光を照射する各空間は、個別検知領域の一例である。個別検知領域は、曲がり階段50の幅方向(図3の紙面に直交する方向)に長い空間である。すなわち、曲がり階段50において人が昇降する空間である第1検知領域を、曲がり階段50の幅方向に長い複数の個別検知領域に区分けし、各個別検知領域にそれぞれレーザ光が照射されるように、各レーザセンサ34がそれぞれ配置されている。
【0044】
第1センサ群31において、鉛直方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離Hは、例えば階段50の蹴上げと同じ寸法とし、数cmから数十cmであり、好ましくは、10cmから20cmである。水平方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ40の離間距離Dは、例えば階段50の踏面(1段の奥行)と同じ、若しくは踏面の1/2の寸法とし、数cmから数十cmであり、好ましくは、数cmから20cmである。
【0045】
第1センサ群31において、水平方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離Dは、鉛直方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離Hよりも短くされている。すなわち、水平方向における分解能は、鉛直方向における分解能よりも高くされている。水平方向における分解能が、鉛直方向における分解能よりも高くされているのは、曲がり階段50を昇降する人が転落姿勢であることを精度良く検知するためである。転落姿勢は、例えば、前傾姿勢や体を丸めた姿勢などである。水平方向における分解能が高くされていることにより、転落姿勢であるか否かが精度良く検知される。詳しくは後述される。
【0046】
第2センサ群32のレーザセンサ34は、曲がり階段50に進入する人の身長や歩行姿勢を検知するためのセンサである。第2センサ群32のレーザセンサ34は、第2壁57の一部分であって、曲がり階段50の登り口41及び降り口42に隣接する部分に設けられている。
【0047】
第2センサ群32のレーザセンサ34は、曲がり階段50に進入する人の身長や歩行姿勢を検知可能なように、第1センサ群31のレーザセンサ34と同様に、鉛直方向及び水平方向に並んで、マトリックス状或いは格子状に配置されている。
【0048】
第2センサ群32のレーザセンサ34は、第2壁57の壁面に略垂直にレーザ光を照射する向きで第2壁57に取り付けられている。すなわち、第2センサ群32の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口41及び降り口42の廊下や床の上方の空間であって、曲がり階段50に進入する人が歩行する空間を検知領域(以下第2検知領域とも記載する)とする。第2検知領域は、第2センサ群32の各レーザセンサ34がレーザ光を照射する空間(領域)であって、レーザセンサ34が人を検知可能な空間(領域)である。別言すれば、第2検知領域は、レーザー光などの検知波が照射される空間(領域)であって、人などの物体を検知可能な空間(領域)である。
【0049】
第2センサ群32において、水平方向に並ぶレーザセンサ34の個数、すなわち図3の左右方向における第2センサ群32が人を検知可能な領域の長さは、例えば、腰を曲げて歩行する人の頭頂と背中とにレーザ光が同時に照射可能に設定されている。また、鉛直方向に並ぶレーザセンサ34の個数、すなわち、鉛直方向における第2センサ群32が人を検知可能な領域の長さは、直立した人の頭頂と足とにレーザ光が同時に照射可能に設定されている。なお、図3では、第2センサ群32に属するレーザセンサ34は、白抜きされた丸で示されている。
【0050】
第2センサ群32において、鉛直方向及び水平方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離は、登り口41或いは降り口42を歩行する人の身長及び歩行姿勢を検知可能な距離に設定されている。具体的には、第2センサ群32において、鉛直方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離は、上述の離間距離Hと同じにされてもよいし、離間距離Hと異なっていてもよい。また、第2センサ群32において、水平方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離は、上述の離間距離Dと同じにされてもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
第3センサ群33のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口41及び降り口42に人が進入したことを検知するためのセンサである。第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32を挟んで第1センサ群31の反対側に設けられている。第3センサ群33の複数のレーザセンサ34は、鉛直方向に並んで設けられている。また、第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2壁57の壁面に略垂直にレーザ光を照射する向きで第2壁57に取り付けられている。なお、第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32のレーザセンサ34とともに、曲がり階段50の登り口41及び降り口42を歩行する人の身長や歩行姿勢の検知に用いられてもよい。すなわち、第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32に属する複数のレーザセンサ34の一部であってもよい。
【0052】
第3センサ群33のレーザセンサ34であって、鉛直方向において隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離は、歩行する人を検知可能な距離に設定されている。例えば、当該離間距離は、十数cmから数十cmに設定されている。
【0053】
図1に示されるように、エアバッグ群81、82、83、84、85は、複数のエアバッグ装置90をそれぞれ備えている。
【0054】
エアバッグ装置90は、エアバッグ91と、エアバッグ91に注入するガス(例えば窒素ガス)を発生させる駆動装置92と、を備える。駆動装置92は、不図示の給電線により、電源回路14と接続されている。駆動装置92は、給電線を通じて供給される直流電力をオンオフするスイッチング素子93を有している。スイッチング素子93は、コントローラ12の通信バス17と接続されており、コントローラ12が出力した駆動信号によってオンオフされる。コントローラ12は、駆動信号を出力することにより、駆動装置92を駆動させてガスを発生させる。発生したガスは、エアバッグ91を膨張させる。すなわち、コントローラ12は、駆動信号を出力することによって、エアバッグ群81、82、83、84、85の各エアバッグ91を個々に膨張させることができる。
【0055】
第1エアバッグ群81の複数のエアバッグ装置90は、曲がり階段50の第1直線部分51に隣接する第2壁57の内側、或いは第1直線部分51の第1踏板54の下方に配置されている。図4に示す例では、第1エアバッグ群81のエアバッグ装置90は、第2壁57の内側に配置されている。複数のエアバッグ装置90は、複数の第1踏板54が並ぶ方向に並んで配置されている。第1エアバッグ群81のエアバッグ装置90は、第1エアバッグ装置の一例である。
【0056】
第1エアバッグ群81のエアバッグ91として、膨張した状態において水平方向に広がるマット状或いは直方体状や円板状などの板状となるエアバッグが用いられる。膨張したエアバッグ91の幅は、第1踏板54の幅とほぼ同じ幅であり、膨張したエアバッグ91の奥行の長さは、第1踏板54の奥行の長さとほぼ同じか僅かに長い。
【0057】
第2壁57は、膨張された各エアバッグ91がそれぞれ飛び出す複数の開口35を有している。膨張して開口35から飛び出したエアバッグ91は、第1踏板54の上に位置する。すなわち、膨張したエアバッグ91は、転落する人を受け止め、転落する人が第1踏板54に激突することを防止することができる。なお、膨張したエアバッグ91は、図4において破線によって示されている。
【0058】
第2エアバッグ群82の複数のエアバッグ装置90は、曲がり階段50の第2直線部分52に隣接する第2壁57の内側、或いは第2直線部分52の第2踏板55(図3)の下方に配置されている。第2エアバッグ群82の複数のエアバッグ装置90は、複数の第2踏板55が並ぶ方向に並んで配置されている。第2エアバッグ群82のエアバッグ装置90は、第2エアバッグ装置の一例である。
【0059】
第2エアバッグ群82のエアバッグ91として、膨張した状態において水平方向に広がるマット状或いは直方体状や円板状などの板状となるエアバッグが用いられる。膨張したエアバッグ91の幅は、第2踏板55の幅とほぼ同じ幅であり、膨張したエアバッグ91の奥行の長さは、第2踏板55の奥行の長さとほぼ同じか僅かに長い。
【0060】
第2壁57は、膨張された各エアバッグ91がそれぞれ飛び出す複数の開口(不図示)を有している。膨張して開口から飛び出したエアバッグ91は、第2踏板55の上に位置する。すなわち、膨張したエアバッグ91は、転落する人を受け止め、転落する人が第2踏板55に激突することを防止することができる。
【0061】
第3エアバッグ群83の複数のエアバッグ装置90は、曲がり階段50の曲がり部分53に隣接する壁であって、水平方向において第1直線部分51と対向する第1壁58の内側に配置されている。複数のエアバッグ装置90は、鉛直方向に並んで配置されている。第3エアバッグ群84のエアバッグ装置90は、第3エアバッグ装置の一例である。
【0062】
第3エアバッグ群83のエアバッグ91として、膨張した状態において鉛直方向に広がるマット状或いは直方体状や円板状などの板状となるエアバッグが用いられる。膨張したエアバッグ91の幅は、第1壁58の幅とほぼ同じである。すなわち、エアバッグ91は、第1壁58の横幅全体に広がって膨張する。
【0063】
第1壁58は、膨張された各エアバッグ91がそれぞれ飛び出す複数の開口36を有している。複数の開口36は、鉛直方向に並んでいる。膨張して開口36から飛び出した複数のエアバッグ91は、上下に重なって、第1壁58を覆う。すなわち、膨張した複数のエアバッグ91は、第1エアバッグ群81のエアバッグ91の上を滑べり降りた人、或いは転がり降りた人を受け止め、転落する人が第1壁58に激突することを防止する。なお、膨張したエアバッグ91の幅は、第1壁58の幅の約半分であってもよい。その場合、第3エアバッグ群83のエアバッグ91は、水平方向において第1直線部分51と対向する位置に配置される。
【0064】
第4エアバッグ群84の複数のエアバッグ装置90は、第2壁57のうち、曲がり部分53に接続する端部の内側に配置されている。複数のエアバッグ装置90は、鉛直方向に並んで配置されている。第4エアバッグ群84のエアバッグ91として、膨張した状態において鉛直方向に広がるマット状或いは直方体状や円板状などの板状となるエアバッグが用いられる。膨張したエアバッグ91の幅は、第2壁57の端部であって、曲がり部分53に向き合う端部を覆うことができる長さとされる。第4エアバッグ群84のエアバッグ装置90は、第4エアバッグ装置の一例である。
【0065】
第2壁57は、膨張された各エアバッグ91がそれぞれ飛び出す複数の開口37を有している。複数の開口37は、鉛直方向に並んでいる。膨張して開口37から飛び出した複数のエアバッグ91は、上下に重なって、第2壁57の端部を覆う。すなわち、膨張した複数のエアバッグ91は、第1エアバッグ群81のエアバッグ91の上を滑べり降りた人が第2壁57に激突することを防止することができる。
【0066】
また、第3エアバッグ群83の複数のエアバッグ91、或いは第4エアバッグ群84の複数のエアバッグ91のうち、一番下に位置するエアバッグ91は、膨張した場合に、曲がり部分53の一番上の第3踏板56を覆う大きさとされている。すなわち、一番下に位置するエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91は、水平方向にも広がっている。膨張した一番下のエアバッグ91は、曲がり部分53の一番上の第3踏板56を覆い、第1エアバッグ群81のエアバッグ91の上を滑べり降りた人或いは転がり降りた人が曲がり部分53の一番上の第3踏板56に激突することを防止する。
【0067】
第5エアバッグ群85の複数のエアバッグ装置90は、曲がり階段50の曲がり部分53の第3踏板56の下に配置されている。第5エアバッグ群85のエアバッグ91として、膨張した状態において水平方向に広がるマット状或いは直方体状や円板状などの板状となるエアバッグが用いられる。膨張したエアバッグ91は、例えば、第3踏板56と同じ大きさ及び形状とされる。すなわち、膨張したエアバッグ91は、第3踏板56を覆う。第5エアバッグ群85のエアバッグ装置90は、第5エアバッグ装置の一例である。
【0068】
曲がり部分53の蹴込み板は、膨張された各エアバッグ91がそれぞれ飛び出す開口38をそれぞれ有している。膨張して開口38から飛び出した複数のエアバッグ91は、第3エアバッグ群83の膨張したエアバッグ91で弾んだ人を受け止め、転落する人が曲がり部分53の第3踏板56に激突することを防止する。
【0069】
なお、図13に示されるように、曲がり部分53に相当する折り返し部分39が第3踏板56を有さない場合、階段安全装置10は、第5エアバッグ群85のエアバッグ装置90を備えなくてもよい。
【0070】
以下、制御プログラム18が実行する処理について、図5を参照して説明する。まず、制御プログラム18は、第3センサ群33の各レーザセンサ34に駆動電力を供給して、第3センサ群33の各レーザセンサ34が出力する第3検知情報を取得する(S11)。そして、制御プログラム18は、取得した第3検知情報に基づいて、第3センサ群33の各レーザセンサ34が人を検知したか否かを判断する(S12)。すなわち、制御プログラム18は、ステップS12において、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入したか否かを判断する。
【0071】
制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入していないと判断すると(S12:No)、ステップS11の処理を再度実行する。ステップS11の処理は、メモリ16に記憶された所定期間ごとに繰り返し実行される。すなわち、制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入したか否かを定期的に検出する。所定期間は、例えば数mm秒から1秒程度である。
【0072】
制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入したと判断すると(S12:Yes)、第2センサ群32の各レーザセンサ34にそれぞれ駆動電力を供給し(S14)、第2センサ群32の各レーザセンサ34がそれぞれ出力する第2検知情報を取得する(S15)。そして、制御プログラム18は、取得した第2検知情報に基づいて、第2センサ群32の各レーザセンサ34が人を検知したか否かを判断する(S16)。
【0073】
制御プログラム18は、第2センサ群32のレーザセンサ34が人を検知していないと判断すると(S16:No)、第2センサ群32への駆動電力の供給を停止して(S13)、ステップS11の処理を再度実行する。例えば、第3センサ群33のレーザセンサ34がレーザ光を照射する位置まで歩行した人が引き返した場合、制御プログラム18は、ステップS16において、人を検知していないと判断する(S16:No)。
【0074】
制御プログラム18は、第2センサ群32のレーザセンサ34が人を検知したと判断すると(S16:Yes)、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42を歩行する人の身長及び歩行姿勢を特定する(S17)。詳しく説明すると、制御プログラム18は、第2センサ群32の複数のレーザセンサ34のうち、人を検知したレーザセンサ34を個々に特定し、特定したレーザセンサ34のうち、最も高い位置に配置されたレーザセンサ34の高さ位置を、身長として特定する。なお、メモリ16は、例えば、各レーザセンサ34にそれぞれ付与された上述の識別情報と、身長とを対応付けたテーブルを予め記憶する。制御プログラム18は、特定したレーザセンサ34と対応付けられた身長を取得し、取得した身長のうち、最も高い身長を、登り口41或いは降り口42を歩行する人の身長として特定する。また、制御プログラム18は、人を検知した複数のレーザセンサ34が、鉛直方向に並ぶことに応じて、歩行姿勢を「直立歩行姿勢」に特定する。制御プログラム18は、人を検知した複数のレーザセンサ34が、鉛直方向及び水平方向に並んで略L字状であることに応じて、歩行姿勢を「湾曲歩行姿勢」に特定する。すなわち、制御プログラム18は、歩行姿勢を、「直立歩行姿勢」或いは「湾曲歩行姿勢」に特定する。
【0075】
制御プログラム18は、特定した身長及び歩行姿勢から、メモリ16に記憶された閾値A、Bを補正する。閾値A、Bは、曲がり階段50を昇降する人が転落姿勢になったか否かの判断(S24)に用いられる。閾値A、Bの補正及び人の転落の判断(S24)の詳細については後述する。
【0076】
なお、転倒姿勢は、前傾姿勢に限られず、体を丸めた姿勢など、他の姿勢を含む。そして、各転倒姿勢ごとに閾値が設けられてもよい。さらに、閾値は、個数a、bの変化量として設定されていてもよい。昇降姿勢からの個数a、bの変化量が閾値A、Bを超えたことに基づいて、制御プログラム18は、曲がり階段50を昇降する人が転倒すると判断する。
【0077】
制御プログラム18は、ステップS18の処理の実行後、第1センサ群31の各レーザセンサ34に駆動電力を供給し(S19)、第1センサ群31の各レーザセンサ34が出力した第1検知情報を取得する(S20)。そして、制御プログラム18は、取得した第1検知情報に基づいて、第1センサ群31の各レーザセンサ34が人を検知したか否かを判断する(S21)。
【0078】
制御プログラム18は、第1センサ群31のレーザセンサ34が人を検知していないと判断すると(S21:No)、第1センサ群31への駆動電力の供給を停止して(S22)、ステップS14の処理を再度実行する。例えば、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42まで進入した人が引き返した場合、制御プログラム18は、ステップS21において人を検知していないと判断する(S21:No)。
【0079】
制御プログラム18は、第1センサ群31のレーザセンサ34が人を検知したと判断すると(S21:Yes)、取得した第1検知情報に基づいて、人を検知したレーザセンサ34を個々に特定し、鉛直方向における特定したレーザセンサ34の個数aと、水平方向における特定したレーザセンサの個数bとをカウントする(S23)。
【0080】
制御プログラム18は、カウント値である個数a、bと、ステップS18で補正した閾値A、Bとを用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S24)。閾値A、Bの補正及び転落姿勢であるか否かの判断について、図6を参照して詳しく説明する。
【0081】
図7(A)は、所定身長かつ直立歩行姿勢である人が曲がり階段50を昇降する場合において、人を検知したレーザセンサ34及びその個数と、所定身長よりも低い身長かつ湾曲歩行姿勢である人が曲がり階段50を昇降する場合において、人を検知したレーザセンサ34及びその個数と、を示す。図7(B)は、所定身長かつ直立歩行姿勢である人が転落姿勢となった場合において、人を検知したレーザセンサ34及びその個数を示す。図7(C)は、所定身長より低い身長かつ湾曲歩行姿勢である人が転落姿勢となった場合において、人を検知したレーザセンサ34及びその個数を示す。
【0082】
図6(A)、(B)に示すように、所定身長の人が直立歩行姿勢から転倒姿勢になると、鉛直方向において人を検知したレーザセンサ34の個数aは、9個から6個に減少し、水平方向において人を検知したレーザセンサ34の個数bは、5個から9個に増加する。閾値A、Bは、所定身長かつ直立歩行姿勢である人の転落を判断可能な値として、例えばテストによって予め決定され、メモリ16に記憶される。閾値Aは、例えば「7」であり、閾値Bは、例えば「7」である。
【0083】
制御プログラム18は、ステップS24(図5)において、カウント値aが閾値A以下であり、かつ、カウント値bが閾値B以上であることに応じて、転落姿勢であると判断すし(S24:Yes)、カウント値aが閾値A以下でなく、或いは、カウント値bが閾値B以上でないことに応じて、転落姿勢でないと判断する(S24:No)。ステップS24の処理は、第1判断処理の一例である。
【0084】
次に、閾値A、Bの補正について説明する。メモリ16は、例えば、直立歩行姿勢用の対応テーブルである第1テーブルと、湾曲歩行姿勢用の対応テーブルである第2テーブルと、を予め記憶する。第1テーブル及び第2テーブルは、身長と、補正後の閾値A、Bとを対応付けたテーブルである。或いは、第1テーブル及び第2テーブルは、身長と、補正後の閾値A、Bを決定可能な補正値と、を対応付けたテーブルである。例えば、ステップS17で特定した歩行姿勢が直立歩行姿勢であり、かつ特定した身長が所定身長よりも低い場合、閾値A、Bは、元の閾値A、Bよりも小さい値に補正される。また、ステップS17で特定した歩行姿勢が湾曲歩行姿勢であり、かつ特定した身長が所定身長よりも低い場合、閾値A、Bは、元の閾値A、Bよりも小さい値であって、直立歩行姿勢の場合の補正後の閾値A、Bよりもさらに小さい値に補正される。すなわち、閾値A、Bは、曲がり階段50を昇降する人の身長や歩行姿勢に応じて補正される。閾値A、Bが補正されることにより、曲がり階段50を昇降する人が転落姿勢となったか否かの検知精度が良くなる。
【0085】
制御プログラム18は、図5に示されるように、転落姿勢でないと判断すると(S24:No)、ステップS20以降の処理を再度実行する。ステップS20の処理は、メモリ16に記憶された所定期間ごとに繰り返し実行される。すなわち、制御プログラム18は、第1検知情報を定期的に取得し、人が転落するか否かを定期的に判断する。所定期間は、例えば数mm秒から数百mm秒である。
【0086】
制御プログラム18は、転落すると判断すると(S24:Yes)、駆動処理を実行する(S25)。駆動処理は、エアバッグ群81、82、83、84、85に属するエアバッグ装置90を作動させる処理である。図6を参照して、駆動処理について説明する。
【0087】
制御プログラム18は、ステップS20で取得した第1検知情報に基づいて、人の位置を特定する(S51)。具体的には、例えばメモリ16は、レーザセンサ34の識別情報と高さ位置とを対応付けたテーブルを予め記憶する。制御プログラム18は、人を検知したレーザセンサ34の識別情報と対応する高さ位置を取得し、取得した高さ位置のうち、最も低い高さ位置を、人の高さ位置として特定する。
【0088】
制御プログラム18は、特定した高さ位置が曲がり部分53の高さ位置としてメモリ16に予め記憶された所定位置よりも高い位置を示すか否かを判断する(S52)。すなわち、制御プログラム18は、転落すると判断した人が第1直線部分51にいるか否かを判断する。なお、制御プログラム18は、人を検知したレーザセンサ34の識別情報が第1直線部分51に配置されたレーザセンサ34の識別情報を示すか否かによって、転落すると判断した人が第1直線部分51にいるか否かを判断してもよい。ステップS52の処理は、第2判断処理の一例である。
【0089】
制御プログラム18は、転落する人が第1直線部分51にいないと判断すると(S52:No)、第2直線部分52に配置された第2エアバッグ群82の複数のエアバッグ装置90のスイッチング素子93うち、ステップS51で特定した高さ位置よりも低い位置に設置された全てのエアバッグ91に対応するスイッチング素子93を特定する。そして、制御プログラム18は、特定したスイッチング素子93の全てに駆動信号を入力し、エアバッグ装置90を作動させる(S53)。すなわち、制御プログラム18は、転落する人の位置よりも下に位置する全てのエアバッグ91を膨張させる。制御プログラム18は、ステップS53の処理の実行後、駆動処理を終了し、図5に示される処理に戻る(リターン)。ステップS53の処理は、第2出力処理の一例である。
【0090】
制御プログラム18は、ステップS52において、転落する人が第1直線部分51にいると判断すると(S52:Yes)、第1直線部分51に配置された第1エアバッグ群81の複数のエアバッグ装置90のスイッチング素子93うち、ステップS51で特定した高さ位置よりも低い位置にある全てのエアバッグ91に対応するスイッチング素子93を特定する。そして、制御プログラム18は、特定したスイッチング素子93の全てに駆動信号を入力し、エアバッグ装置90を作動させる(S54)。すなわち、制御プログラム18は、転落する人の位置よりも下に位置する全てのエアバッグ91を膨張させる。ステップS54の処理は、第1出力処理の一例である。
【0091】
次に、制御プログラム18は、第3エアバッグ群83、第4エアバッグ群84、及び第5エアバッグ群85のエアバッグ装置90のスイッチング素子93に駆動信号を入力して、エアバッグ装置90を作動させる(S55)。すなわち、制御プログラム18は、エアバッグ群83、84、85のエアバッグ91を膨張させ、膨張したエアバッグ91によって、曲がり部分53に隣接する第1壁58及び第2壁57の端部を覆い、かつ、エアバッグ群85のエアバッグ91を膨張させ、曲がり部分53の第3踏板56を覆う。
【0092】
転落する人は、第1エアバッグ群81のエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91によって受け止められる。また、第1エアバッグ群81のエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91の上を滑り降りた人或いは転げ降りた人は、エアバッグ群83、84のエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91によって受け止められる。また、エアバッグ群83、84のエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91によって弾んだ人は、第5エアバッグ群85のエアバッグ91であって、膨張したエアバッグ91によって受け止められる。
【0093】
制御プログラム18は、ステップS55の処理の実行後、駆動処理を終了し、図5に示される処理に戻る(リターン)。なお、図6におけるステップS56の処理については、後述の変形例において説明する。
【0094】
制御プログラム18は、図5に示されるように、ステップS25の駆動処理の実行後、曲がり階段50において人が転落したことを示す文章を含むメールを、メモリ16に記憶されたメールアドレス宛に、通信インタフェース13を通じて送信し(S26)、処理を終了する。なお、当該メールを視認した人は、例えば、建物に設置された電話や建物の家人に電話をするなどして、当該家人の安否を確認する。
【0095】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、階段安全装置10は、第1直線部分51において人が転落すると判断すると、第1直線部分51に設けられたエアバッグ91と、曲がり部分53に設けられたエアバッグ91とを膨張させる。したがって、階段安全装置10は、曲がり階段50から転落する人が曲がり階段50や第1壁58に激突して負傷することを防止することができる。
【0096】
本実施形態では、第1直線部分51において人が転落すると判断すると、第2壁57に設けられたエアバッグ91のうち、曲がり部分53に繋がる端部に設けられたエアバッグ91が膨張される。したがって、階段安全装置10は、曲がり階段50から転落する人が曲がり階段50に隣接する第2壁57の端部に激突して負傷することを防止することができる。
【0097】
本実施形態では、第1直線部分51において人が転落すると判断すると、曲がり部分53の第3踏板56の下に配置されたエアバッグ91が膨張される。したがって、階段安全装置10は、曲がり階段50から転落する人が第3エアバッグ群83のエアバッグ91で弾んで第3踏板56に衝突して負傷することを防止することができる。
【0098】
[変形例1]
上述の実施形態では、複数のレーザセンサ34が、第2壁57に設けられた例を説明した。本変形例では、複数のレーザセンサ34が、曲がり階段50の上方の天井に設けられた例を説明する。
【0099】
本変形例では、図11(B)に示されるように、第1センサ群31に属する複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の上方に位置する天井に取り付けられており、第2センサ群32及び第3センサ群33に属する複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口(不図示)の上方に位置する天井及び降り口42の上方に位置する天井に取り付けられている。
【0100】
第1センサ群31のレーザセンサ34は、鉛直下向きにレーザ光を照射する向きで上記天井に取り付けられている。すなわち、第1センサ群31の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の上方の空間であって、曲がり階段50を昇降する人が通過する空間を検知領域(第1検知領域)とする。なお、図11(B)では、第1センサ群31に属するレーザセンサ34は、グレーに塗りつぶされた丸で示されている。
【0101】
第1センサ群31に属する複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の幅方向(図11(B)における左右方向)、及び曲がり階段50の奥行方向(図11(B)における上下方向)に並んで、いわゆるマトリックス状或いは格子状に配置されている。
【0102】
幅方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離L2は、例えば階段50の蹴上げと同じ寸法とし、数cmから数十cmであり、好ましくは、10cmから20cmである。水平方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ40の離間距離Dは、例えば階段50の踏面(1段の奥行)と同じ、若しくは踏面の1/2の寸法とし、数cmから数十cmであり、好ましくは、数cmから20cmである。
【0103】
奥行方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離L1は、幅方向に並んで隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離L2よりも短くされている。すなわち、奥行方向における分解能は、幅方向における分解能よりも高くされている。奥行方向における分解能が、幅方向における分解能よりも高くされているのは、曲がり階段50を昇降する人が転落姿勢であることを精度良く検知するためである。転落姿勢は、例えば、前傾姿勢であって、奥行方向に長く伸びた姿勢である。奥行方向における分解能が高くされていることにより、転落姿勢であるか否かが精度良く検知される。ただし、転落姿勢は、体を丸めた姿勢など、他の姿勢を含んでいてもよい。
【0104】
第2センサ群32のレーザセンサ34は、曲がり階段50に進入する人の歩行姿勢を特定可能なように、第1センサ群31のレーザセンサ34と同様に、幅方向及び奥行方向に並んで、マトリックス状或いは格子状に配置されている。なお、図11(B)では、第2センサ群32に属するレーザセンサ34は、白抜きされた丸で示されている。
【0105】
第2センサ群32のレーザセンサ34は、鉛直下向きにレーザ光を照射する向きで上記天井に設置されている。すなわち、第2センサ群32の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口及び降り口42の廊下や床の上方の空間であって、曲がり階段50に進入する人が歩行する空間を検知領域(第2検知領域)とする。
【0106】
奥行方向及び幅方向に並ぶレーザセンサ34の個数、すなわち図11(B)の上下方向及び左右方向における第2センサ群32が人を検知可能な領域の長さは、例えば、腰を曲げて歩行する人の頭頂と背中とにレーザ光が同時に照射可能に設定されている。
【0107】
第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32を挟んで第1センサ群31の反対側に設けられている。第3センサ群33の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口及び降り口42を囲むように並んで設けられている。図11(B)に示される例では、第3センサ群33の複数のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口及び降り口42を囲むように略L字状に配置されている。
【0108】
また、第3センサ群33のレーザセンサ34は、鉛直下向きにレーザ光を照射する向きで上記天井に取り付けられている。なお、第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32のレーザセンサ34とともに、曲がり階段50の登り口及び降り口42を歩行する人の歩行姿勢の検知に用いられてもよい。すなわち、第3センサ群33のレーザセンサ34は、第2センサ群32に属する複数のレーザセンサ34の一部であってもよい。
【0109】
第3センサ群33のレーザセンサ34であって、隣り合う2つのレーザセンサ34の離間距離は、歩行する人を検知可能な距離に設定されている。例えば、当該離間距離は、十数cmから数十cmに設定されている。
【0110】
図8を参照して、本変形例において制御プログラム18が実行する処理について説明する。なお、実施形態と同様の処理については、実施形態で用いたステップ番号を用いて説明を省略する。後述する他の変形例においても同様である。
【0111】
制御プログラム18は、実施形態と同様に、ステップS11からS16の処理を実行する。制御プログラム18は、ステップS16において、第2センサ群32に属するレーザセンサ34が人を検知したと判断すると(S16:Yes)、ステップS15で取得した第2検知情報に基づいて、曲がり階段50の登り口或いは降り口42を歩行する人の歩行姿勢を、実施形態と同様にして特定する(S31)。そして、制御プログラム18は、特定した歩行姿勢を用いて、メモリ16に記憶された閾値Bを、実施形態と同様にして補正する(S32)。
【0112】
次に、制御プログラム18は、実施形態と同様にしてステップS19、S20、S21、S22の処理を実行する。制御プログラム18は、第1センサ群31に属するレーザセンサ34が人を検知したと判断すると(S21:Yes)、ステップS20で取得した第1検知情報に基づいて、人を検知したレーザセンサ34の識別情報を特定し、特定したレーザセンサ34が奥行方向において並ぶ個数cを、実施形態と同様にしてカウントする(S33)。
【0113】
制御プログラム18は、カウントした個数cと、ステップS32で補正した補正値Bとに基づいて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S34)。具体的には、制御プログラム18は、個数cが閾値B以下であるか否かを判断する。
【0114】
制御プログラム18は、個数cが閾値Bより大きく、転落しないと判断すると(S34:No)、ステップS20以降の処理を再度実行する。制御プログラム18は、個数cが閾値B以上であって、転落すると判断すると(S34:Yes)、ステップS25、S26の処理を実行する。
【0115】
[変形例1の作用効果]
レーザセンサ34が曲がり階段50の上方に配置されていても、階段安全装置10は、人の転落を、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0116】
[変形例2]
上述の実施形態では、カウントした個数a、bと、メモリ16に記憶された閾値A、Bとを用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する例を説明した。本変形例では、曲がり階段50を昇降する人の姿勢を画像に描画して、人が転落するか否かを判断する例を説明する。なお、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、実施形態で説明した構成及び処理と同じである。
【0117】
本変形例では、制御プログラム18は、画像を描画する描画モジュールを備える。制御プログラム18は、位置を示す位置情報を描画モジュールに受け渡し、描画モジュールが描画した画像を示す画像データを取得することができる。なお、描画モジュールは、制御プログラム18とは別のプログラムであってもよい。
【0118】
メモリ16は、閾値A、Bに代えて、判断画像データ(図1)を予め記憶する。判断画像データは、転落姿勢である人の外形の画像である判断画像を示すデータである。判断画像は、例えば、前傾姿勢である人の外形を示す画像や、体を丸めた状態の人の外形を示す画像などである。また、メモリ16は、直立歩行姿勢に対応した判断画像データと、湾曲歩行姿勢に対応した判断画像データとを記憶する。
【0119】
また、メモリ16は、各レーザセンサ34の識別情報と位置情報とを対応付けた第1対応テーブルと、身長と拡縮率とを対応付けた第2対応テーブルと、を予め記憶する。
【0120】
制御プログラム18は、図5に示されるステップS11からS17の処理を実行し、曲がり階段50の登り口41及び降り口42に進入した人の身長や歩行姿勢を特定する(S17)。そして、制御プログラム18は、ステップS18の処理に代えて、判断画像を特定するとともに特定した判断画像を補正する処理を実行する。詳しく説明すると、制御プログラム18は、ステップS17で特定した歩行姿勢と対応する判断画像を示す判断画像データを、メモリ16に記憶された複数の判断画像データのうちから特定する。また、制御プログラム18は、ステップS17で特定した身長と対応付けられた拡縮率を第2対応テーブルにおいて特定する。制御プログラム18は、特定した拡縮率を用いて判断画像を拡大或いは縮小して補正する。
【0121】
次に、制御プログラム18は、ステップS19からS22までの処理を実行し、ステップS21において、曲がり階段50に人が進入したと判断すると(S21:Yes)、ステップS20で取得した第1検知情報と、補正した判断画像とを用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S24)。詳しく説明すると、制御プログラム18は、ステップS20で取得した第1検知情報に基づいて、人を検知したレーザセンサ34の識別情報を特定し、特定した識別情報と対応付けられた位置情報を第1対応テーブルにおいて特定する。そして、制御プログラム18は、特定した位置情報を描画モジュールに受け渡し、曲がり階段50にいる人の外形を示す画像データを描画モジュールに生成させる。制御プログラム18は、描画モジュールが生成した画像データが示す人の外形と、補正した判断画像が示す人の外形との一致点或いは相違点の個数或いは割合を、パターンマッチング等を用いて算出する。制御プログラム18は、一致点の個数或いは割合が、メモリ16に予め記憶された閾値以上であることに基づいて、或いは相違点の個数或いは割合がメモリ16に予め記憶された閾値未満であることに基づいて、曲がり階段50を昇降する人が転落すると判断する(S24:Yes)。
【0122】
制御プログラム18は、曲がり階段50を昇降する人が転落しないと判断すると(S24:No)、ステップS20以降の処理を再度実行する。すなわち、制御プログラム18は、第1検知情報を定期的に取得し、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを定期的に判断する。制御プログラム18は、曲がり階段50を昇降する人が転落すると判断すると(S24:Yes)、ステップS25、S26の処理を実行する。
【0123】
[変形例2の作用効果]
本変形例では、曲がり階段50を昇降する人の外形が転落姿勢である人の外形と一致するか否かによって人の転落を判断するので、曲がり階段50を昇降する人の鉛直方向及び水平方向の長さの変化によって転落するか否かを判断する実施形態よりも、転落するか否かの判断の精度が良くなる。
【0124】
本実施形態では、曲がり階段50を昇降する人の身長や歩行姿勢を用いて、メモリ16に記憶された判断画像を特定及び補正し、補正した判断画像を用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する。したがって、曲がり階段50を昇降する人の身長や歩行姿勢を用いて判断画像を特定及び補正しない場合に比べ、階段安全装置10は、転落姿勢であるか否かの判断の精度を高めることができる。
【0125】
[変形例3]
上述の実施形態では、レーザセンサ34を用いた例を説明した。本変形例では、レーザセンサ34に代えて、人感知センサ60(図9)を用いた例を説明する。なお、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、実施形態で説明した構成及び処理と同じである。
【0126】
階段安全装置10は、レーザセンサ34に代えて複数の人感知センサ60を有する第1センサ群31と、レーザセンサ34に代えて複数の人感知センサ60を有する第2センサ群32と、レーザセンサ34に代えて複数の人感知センサ60を有する第3センサ群33と、を備える。人感知センサ60は、スイッチング素子を介して電源回路14と給電線によって接続され、また、コントローラ12の通信バス17と接続されている。
【0127】
人感知センサ60は、人が発する赤外線を検知するセンサである。以下では、複数の小検知領域61(図9(A))を有する種類の人感知センサ60が用いられた例が説明される。具体的には、人感知センサ60は、赤外線を受光し、受光した赤外線の強度に応じた電圧を出力する複数の受光部と、各小検知領域61からそれぞれ入射した赤外線を集光して各受光部にそれぞれ出射するレンズ群と、を有する。或いは、人感知センサ60は、複数の受光部と、各小検知領域61からそれぞれ入射した赤外線を集光して各受光部にそれぞれ出射するレンズ群と、を有し、受光部に入射した赤外線の強度の変化に応じた電圧を出力する。
【0128】
人感知センサ60は、複数の人感知センサ60を個々に識別する第1識別情報と、複数の小検知領域61を個々に識別する第2識別情報と、赤外線を検知したか否かを示す情報と、を含む検知情報を出力する。検知情報が入力された制御プログラム18は、人感知センサ60ごと、及び小検知領域61ごとに、人を検知したか否かを特定する。人感知センサ60が出力する検知情報のうち、第2識別情報で識別される情報であって、赤外線を検知したか否かを示す情報は、個別検知情報の一例である。
【0129】
図9(A)に示されるように、第1センサ群31は、複数の人感知センサ60を有する。第1センサ群31の人感知センサ60は、曲がり階段50を昇降する人が転落したか否かを検知するためのセンサである。第1センサ群31の人感知センサ60は、第2壁57に取り付けられている。詳しく説明すると、複数の人感知センサ60は、曲がり階段50の上方の空間であって、人が昇降する空間を検知領域とする向きで第2壁57にそれぞれ取り付けられている。また、複数の人感知センサ60は、曲がり階段50の上方の空間であって、人が昇降する空間の全てを検知領域とするような間隔で互いに離間して配置されている。当該間隔は、使用する人感知センサ60の検知領域の広さによって設定される。人感知センサ60の検知領域は、複数の小検知領域61を合わせた領域である。なお、図9(A)に示す例では、一の人感知センサ60が有する複数の小検知領域61の一部と、他の一の人感知センサ60の複数の小検知領域61の一部とは、互いに重複している。人感知センサ60が有する各小検知領域61は、個別検知領域の一例である。
【0130】
第2センサ群32の人感知センサ60は、曲がり階段50の登り口41及び降り口42に進入した人を検知し、かつ曲がり階段50に進入する人の身長や歩行姿勢を検知するためのセンサである。すなわち、本変形例の第2センサ群32は、実施形態における第2センサ群32が有する機能と第3センサ群33が有する機能とを併せ持つ。
【0131】
第2センサ群32の人感知センサ60は、第2壁57の一部であって、曲がり階段50の登り口41及び降り口42に隣接する部分にそれぞれ取り付けられている。詳しく説明すると、各人感知センサ60は、人が登り口41を歩行する空間及び人が降り口42を歩行する空間を検知領域とする向きで第2壁57にそれぞれ取り付けられている。また、各人感知センサ60として、人が登り口41を歩行する空間及び人が降り口42を歩行する空間の全てを検知領域とするだけの広さの検知領域を有する人感知センサが用いられている。なお、人感知センサ60の検知領域が狭い場合、登り口41及び降り口42に、それぞれ複数の人感知センサ60が配置されてもよい。
【0132】
制御プログラム18は、図5に示す処理に代えて、図10に示す処理を実行する。詳しく説明すると、まず、制御プログラム18は、第2センサ群32の人感知センサ60にそれぞれ駆動電力を供給し、第2センサ群32の各人感知センサ60がそれぞれ出力する第2検知情報を取得する(S15)。制御プログラム18は、取得した第2検知情報に基づいて、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入したか否かを判断する(S16)。制御プログラム18は、第2センサ群32の人感知センサ60が人を検知するまで、ステップS15の処理を定期的に繰り返し実行する(S16:No、S15)。
【0133】
制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に人が進入したと判断すると(S16:Yes)、実施形態と同様にしてステップS17、S18の処理を実行する。すなわち、制御プログラム18は、ステップS15で取得した第2検知情報を用いて、曲がり階段50の登り口41或いは降り口42に進入した人の身長及び歩行姿勢を特定し、特定した身長及び歩行姿勢に基づいて、メモリ16に記憶された閾値A、Bを補正する。
【0134】
次に、制御プログラム18は、実施形態と同様にしてステップS19、S20、S21、S22の処理を実行する。すなわち、制御プログラム18は、第1センサ群31の各人感知センサ60をそれぞれ駆動して(S19)第1検知情報を取得し(S20)、取得した第1検知情報に基づいて、曲がり階段50に人が進入したか否かを判断する(S21)。
【0135】
制御プログラム18は、曲がり階段50に人が進入したと判断すると(S21:Yes)、実施形態と同様にしてステップS23、S24の処理を実行する。すなわち、制御プログラム18は、ステップS20で取得した第1検知情報に基づいて、鉛直方向において人を検知した小検知領域61の個数aと、水平方向において人を検知した小検知領域の個数bと、をカウントし、カウントした個数a、bと、ステップS18で補正した補正値A、Bと、を用いて、実施形態と同様にして、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S24)。そして、制御プログラム18は、転落しないと判断すると(S24:No)、ステップS20からS24までの処理を繰り返し実行する。制御プログラム18は、転落すると判断すると(S24:Yes)、実施形態と同様にしてステップS25、S26の処理を実行する。
【0136】
[変形例3の作用効果]
本変形例では、人感知センサ60を用いて、人が曲がり階段50から転落するか否かを、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0137】
[変形例4]
上述の実施形態では、レーザセンサ34を用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する例を説明した。本変形例では、カメラを用いて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する例を説明する。また、本変形例では、2つのレーザセンサ34を用いて、曲がり階段50の登り口及び降り口42に人が進入したか否かを検知する例を説明する。なお、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、実施形態で説明した構成及び処理と同じである。
【0138】
階段安全装置10は、センサ群31、32、33に代えて、カメラ62、63(図1)及び一対のレーザセンサ34(図11(A))を備える。カメラ62、63及びレーザセンサ34は、スイッチング素子を介して電源回路14と給電線によって接続され、また、コントローラ12の通信バス17と接続されている。すなわち、制御プログラム18は、カメラ62、63に駆動電力を供給して、カメラ62、63に撮像を行わせ、カメラ62、63が撮像によって生成した画像データを取得することができる。また、制御プログラム18は、レーザセンサ34に駆動電力を供給し、人を検知させることができる。
【0139】
メモリ16は、変形例2で説明した複数の判断画像データを予め記憶する。
【0140】
カメラ62、63は、図11(A)に示されるように、曲がり階段50の曲がり部分53に隣接する第1壁58に取り付けられている。具体的には、カメラ62は、第1直線部分51の第1踏板54と、第1踏板54の上方の空間と、降り口42とを撮像領域とする向きで第1壁58に取り付けられている。カメラ63は、第2直線部分52の第2踏板55と、第2踏板55の上方の空間と、登り口(不図示)とを撮像領域とする向きで第1壁58に取り付けられている。カメラ62は、第1カメラの一例である。カメラ63は、第2カメラの一例である。
【0141】
一対のレーザセンサ34の一方は、曲がり階段50の降り口42に隣接する壁59に取り付けられ、他方は、曲がり階段50の登り口に隣接する壁(不図示)に取り付けられている。一対のレーザセンサ34は、曲がり階段50の登り口及び降り口42に進入する人を検知可能なように、登り口及び降り口42に向けてレーザ光をそれぞれ照射する向きに配置されている。
【0142】
制御プログラム18は、図5に示す処理に代えて、図12に示す処理を実行する。詳しく説明すると、制御プログラム18は、一対のレーザセンサ34に駆動電力を供給し、レーザセンサ34が出力する第4検知情報を取得する(S41)。制御プログラム18は、取得した第4検知情報に基づいて、曲がり階段50の登り口及び降り口42に人が進入したか否かを判断する(S12)。制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口及び降り口42に人が進入したと判断するまで、ステップS41の処理を定期的に実行する(S12:No、S41)。
【0143】
制御プログラム18は、曲がり階段50の登り口及び降り口42に人が進入したと判断すると(S12:Yes)、カメラ62、63に駆動電力を供給し、カメラ62、63に撮像を行わせる(S42)。そして、制御プログラム18は、カメラ62、63が撮像によって生成した画像データを取得する(S43)。制御プログラム18は、取得した画像データに基づいて、撮像した物体の外形画像データを生成する。例えば、制御プログラム18は、取得した画像データに2値化処理を行い、値が変化する部分を、撮像した物体の外形として、外形を示す情報を外形画像データとして取得する(S44)。なお、制御プログラム18は、外形画像データを取得できない場合、曲がり階段50に人がいないと判断する。
【0144】
制御プログラム18は、取得した外形画像データに基づいて、曲がり階段50に人が進入したか否かを判断する(S45)。制御プログラム18は、曲がり階段50に人が進入していないと判断すると(S45:No)、カメラ62、63への駆動電力の供給を停止し(S46)、ステップS41以降の処理を再度実行する。
【0145】
制御プログラム18は、曲がり階段50に人が進入したと判断すると(S45:Yes)、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S47)。詳しく説明すると、制御プログラム18は、ステップS44で取得した外形画像データが示す外形画像と、メモリ16に記憶された判断画像データが示す判断画像における人の外形との一致点或いは相違点の個数或いは割合を、パターンマッチング等を用いて算出する。制御プログラム18は、一致点の個数或いは割合が、メモリ16に予め記憶された閾値以上であることに基づいて、或いは相違点の個数或いは割合がメモリ16に予め記憶された閾値未満であることに基づいて、曲がり階段50を昇降する人が転落すると判断する(S47:Yes)。
【0146】
制御プログラム18は、曲がり階段50を昇降する人が転落しないと判断すると(S47:No)、ステップS43以降の処理を再度実行する。すなわち、制御プログラム18は、画像データを定期的に取得し、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを定期的に判断する。制御プログラム18は、曲がり階段50を昇降する人が転落すると判断すると(S47:Yes)、実施形態と同様にしてステップS25、S26の処理を実行する。なお、制御プログラム18は、ステップS25の駆動処理で実行するステップS51の処理において、人ともに撮像した第1踏板54や第2踏板55を用いて、人の高さ位置を特定する。ステップS51の処理は、位置特定処理の一例である。
【0147】
[変形例4の作用効果]
本変形例では、カメラ62、63を用いて、人が曲がり階段50から転落するか否かを、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0148】
また、本変形例では、2つのレーザセンサ34により、曲がり階段50の登り口及び降り口42に人が進入したか否かを判断することができる。
【0149】
また、本変形例では、曲がり階段50の登り口41や降り口42に人が進入した場合に、カメラ62、63に駆動電力が供給される。したがって、カメラ62、63に常に駆動電力が供給される場合に比べ、階段安全装置10は、曲がり階段50を昇降する人の転落を検知するために必要な消費電力を低減することができる。
【0150】
[変形例5]
上述の変形例4では、カメラ62、63を用いて、曲がり階段50を昇降する人を撮像する例を説明した。本変形例では、3次元レーザセンサ64、65(図1)を用いて、曲がり階段50を昇降する人を撮像する例を説明する。なお、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、変形例4で説明した構成及び処理と同じである。
【0151】
階段安全装置10は、カメラ62、63に代えて、3次元レーザセンサ64、65を備える。3次元レーザセンサ64、65は、検知領域に走査光(レーザ光)を照射し、物体で反射された反射光を受光し、受光した反射光に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを出力するセンサである。3次元レーザセンサ64は、カメラ62と同様にして第1壁58に取り付けられ、第1直線部分51を検知領域とする。3次元レーザセンサ65は、カメラ63と同様にして第1壁58に取り付けられ、第2直線部分52を検知領域とする。
【0152】
制御プログラム18は、図12に示す処理と同様の処理を行って、曲がり階段50を昇降する人の姿勢が転落姿勢であるか否かを判断する(S47)。
【0153】
[変形例5の作用効果]
本変形例では、3次元レーザセンサ64、65を用いて、人が曲がり階段50から転落するか否かを、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0154】
[変形例6]
上述の実施形態では、複数のレーザセンサ34を用いた例を説明した。しかしながら、複数のレーザセンサ34に代えて、複数の音波センサ70が用いられてもよい。なお、以下で説明する構成及び処理以外の構成及び処理は、実施形態で説明した構成及び処理と同じである。
【0155】
階段安全装置10は、実施形態で説明したセンサ群31、32、33に代えて、図1に破線で示された第1センサ群71、第2センサ群72、及び第3センサ群73を備える。第1センサ群71、第2センサ群72、及び第3センサ群73は、それぞれ複数の音波センサ70を有する。
【0156】
音波センサ70は、検知エリアに音波を照射し、物体で反射された反射波を受信するセンサである。音波センサ70は、識別情報と、音波を照射したタイミングと反射波を受信したタイミングとの差を示す情報と、受信した音波の強度に応じた電圧値を示す情報と、を含む検知情報を出力する。なお、複数の音波センサ70は、例えば、照射する音波の周波数を互いに相違させることや、照射する音波の指向性を高めることなどにより、互いに干渉することを防止する。
【0157】
音波センサ70は、実施形態で説明したレーザセンサ34と同様にして設置され、曲がり階段50の登り口41及び降り口42と、曲がり階段50の上方の空間とに向かって音波を照射し、検知情報をコントローラ12に入力する。
【0158】
制御プログラム18は、図5に示す処理と同様の処理を行って、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断する(S24)。
【0159】
[変形例6の作用効果]
本変形例では、音波センサ70を用いて、人が曲がり階段50から転落するか否かを、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0160】
[変形例7]
本実施形態では、階段安全装置10が、第1直線部分51において転落する人が第2直線部分52まで転げ落ちることを防止する2つの衝立装置20(図1)をさらに備える例を説明する。なお、以下で説明する構成や処理以外の構成や処理は、実施形態で説明した構成や処理と同じである。
【0161】
衝立装置20は、図1に示されるように、衝立21と、衝立21をスライドさせるスライド装置22と、スライド装置22を駆動させるドライブ回路23と、を備える。
【0162】
衝立21は、図13に示されるように矩形板状或いは格子状などである。曲がり部分53の複数の第3踏板56には、衝立21が出入りする開口44が設けられている。
【0163】
スライド装置22は、例えば、衝立21を鉛直方向にスライド可能に保持する保持装置と、衝立21の下方に設けれた電動シリンダと、を有する。伸長する電動シリンダは、衝立21を上方に向かって押し、第3踏板56の下方に位置する収容位置から、第3踏板56から上向きに突出する区画位置に向かって衝立21をスライドさせる。
【0164】
一の衝立装置20の衝立21(21A)は、区画位置において、第2壁57が延びる方向に沿って延びており、第2壁57と対向している。衝立21Aは、第1直線部分51の幅と略同じ長さだけ第2壁57から離間している。他の一の衝立装置20の衝立21(21B)は、第1壁58が延びる方向に沿って延びており、第1壁58と対向している。そして、衝立21Bは、曲がり部分53と第2直線部分52との境界となる位置に位置している。区画位置にある衝立21は、第3踏板56の上の空間を区画する。
【0165】
ドライブ回路23は、電源回路14と接続されたスイッチング素子24を有する。スイッチング素子24は、コントローラ12から駆動信号を入力されて、オンオフする。スイッチング素子24がオンになることにより、電源回路14から直流電力がスライド装置22に供給され、スライド装置22が作動する。
【0166】
制御プログラム18は、図6に示される駆動処理において、エアバッグ装置90を作動させるステップS55の処理の実行後、衝立装置20のドライブ回路23のスイッチング素子24に駆動信号を入力し、衝立21を収容位置から区画位置へスライドさせる(S56)。区画位置までスライドした衝立21は、曲がり部分53を転がり降りる人が第2直線部分52にまで転がることを防止する。
【0167】
本変形例の階段安全装置10は、第1直線部分51で転落した人が、曲がり部分53を転がり降りることや、第2直線部分52まで転がり降りることを防止することができる。
【0168】
なお、衝立21は、第2壁57に設けられていてもよい。この場合、第2壁57には、衝立21が出入りする開口が設けられる。衝立21は、スライド装置22によって、第2壁57に収容された収容位置から、折り返し部分39と第2直線部分52とを区画する区画位置にスライドされる。
【0169】
また、衝立21Aと、衝立21Bとの2つの衝立21のうち、一方の衝立21のみが設けられていてもよい。すなわち、階段安全装置10は、1つの衝立装置20のみを備えていてもよい。
【0170】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、一のレーザ光を照射するレーザセンサ34を用いた例を説明した。しかしながら、レーザセンサ34に代えて、複数のレーザ光を照射するレーザセンサが用いられてもよい。当該レーザセンサは、変形例3で説明した人感知センサ60と同様に、複数の小検知領域61を有する。この種のレーザセンサを用いても、人が曲がり階段50から転落するか否かを、人が曲がり階段50に激突する前に検知することができる。
【0171】
上述の実施形態では、曲がり階段50を昇降する人の姿勢が転落姿勢であるか否かによって、人が転落するか否かを判断する例を説明した。しかしながら、曲がり階段50を昇降する人の姿勢に加え、曲がり階段50を昇降する人の移動速度によって、人が転落するか否かを判断してもよい。制御プログラム18は、例えば、定期的に取得する第1検知情報に基づいて、人を検知したレーザセンサ34の識別情報が示す位置情報を定期的に取得し、位置情報が示す位置の単位時間当たりの移動距離により、曲がり階段50を昇降する人の移動速度を算出する。そして、制御プログラム18は、取得した第1検知情報が示す人の姿勢が転落姿勢であり、かつ、算出した人の移動速度が第1閾値以上かつ第2閾値(<第1閾値)未満である場合に、曲がり階段50を昇降する人が転落するおそれがあると判断する。第1検知情報が示す人の姿勢に加え、人の移動速度に基づいて、曲がり階段50を昇降する人が転落するか否かを判断するので、人の転落を、より精度良く検知することができる。
【0172】
上述の実施形態では、曲がり階段50を昇降する人の姿勢が転落姿勢であるか否かによって、人が転落するか否かを判断する例を説明した。しかしながら、曲がり階段50を昇降する人の姿勢の変化量によって、曲がり階段50を昇降する人が転落するおそれがあるか否かを判断してもよい。制御プログラム18は、取得した第1検知情報に基づいて、人の姿勢を定期的に特定し、特定した姿勢の単位時間当たりの変化量を算出する。制御プログラム18は、算出した単位時間当たりの変化量が、メモリ16に予め記憶された閾値以上であるか否かを判断し、単位時間当たりの変化量が閾値以上であることに応じて、曲がり階段50を昇降する人が転落すると判断する。また、人の移動速度に加え、人の加速度にさらに基づいて、人が転落するか否かが判断されてもよい。
【0173】
上述の実施形態では、第3エアバッグ群83は、複数のエアバッグ装置90を備え、膨張した複数のエアバッグ91によって、第1壁58が覆われる例を説明した。しかしながら、膨張した1つのエアバッグ91によって、第1壁58が覆われてもよい。すなわち、第3エアバッグ群83は、1つのエアバッグ装置90のみを備えていてもよい。同様に、第4エアバッグ群84は、1つのエアバッグ装置90のみを備えていてもよく、膨張した1つのエアバッグ91によって第2壁57の端部が覆われる。
【0174】
上述の実施形態では、第4エアバッグ群84のエアバッグ91は、第2壁57の端部のみを覆う例を説明した。しかしながら、第4エアバッグ群84のエアバッグ91は、膨張することによって、第1直線部分51の側方となる部分も覆うように設けられていてもよい。その場合、第1エアバッグ群81のエアバッグ装置90は、第1直線部分51の第1踏板54の下に設けられる。
【0175】
上述の実施形態では、曲がり部分53が複数の第3踏板56を有し、曲がり部分53が段差を有する例を説明した。しかしながら、曲がり部分53は、段差を有さなくてもよい。この場合、曲がり部分53の段差の分だけ、第1直線部分51や第2直線部分52の踏板54、55の数を増やされ、或いは第1直線部分51及び第2直線部分52の段差が大きくされる。
【符号の説明】
【0176】
10・・・階段安全装置
12・・・コントローラ
16・・・メモリ
21・・・衝立(衝立部材)
34・・・レーザセンサ(検知装置)
50・・・曲がり階段(折り返し階段)
51・・・第1直線部分
52・・・第2直線部分
53・・・曲がり部分(折り返し部分)
54・・・第1踏板
55・・・第2踏板
56・・・第3踏板
57・・・第2壁
58・・・第1壁
60・・・人感知センサ
61・・・小検知領域
62、63・・・カメラ
64、65・・・3次元レーザセンサ
90・・・エアバッグ装置
91・・・エアバッグ
92・・・駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13