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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】予測装置、予測システム、及び予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230719BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230719BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020020088
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021125143
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 平理
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】虎井 総一朗
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201417(JP,A)
【文献】特開2019-128703(JP,A)
【文献】村上紗彩、ほか4名,植物工場運用データの統計的非線形因果構造解析アプローチの一検討,平成30年 電気学会全国大会 講演論文集 [DVD-ROM],日本,一般社団法人電気学会,2018年03月05日,p.155,156
【文献】宇佐見仁英、ほか2名,閉鎖型植物工場での植物栽培における知的問題解決環境,計算工学講演会論文集 [CD-ROM],日本,一般社団法人 日本計算工学会,2013年06月19日,第18巻,p.1-4(C-8-2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物工場における植物の収穫重量及び生理障害に関する情報を含む収穫結果の予測値を算出するための、前記植物工場の環境を示す環境パラメータの変数を説明変数とし、前記収穫結果の変数を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを取得し、
前記環境パラメータの複数の値を、前記予測モデルに入力して、前記収穫結果の複数の予測値を算出し、
前記収穫結果の複数の候補の中から所望の収穫結果の選択をユーザから受け付け、
前記算出した前記収穫結果の複数の予測値のうち、前記ユーザからの選択を受け付けた前記所望の収穫結果に適合する前記予測値を算出するための前記環境パラメータを出力する、
制御部を有する、予測装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記環境パラメータの複数の値と、前記算出した前記収穫結果の複数の予測値とが関連付けられたデータテーブルを生成し、
前記データテーブルを参照することにより、前記ユーザからの選択を受け付けた前記所望の収穫結果に適合する前記環境パラメータの前記値を抽出し、
前記抽出した前記環境パラメータの前記値を出力する、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記環境パラメータの前記値を変化させる毎に、変化させた前記環境パラメータの前記値を前記予測モデルに入力することにより、前記収穫結果の前記予測値を算出し、且つ変化させた前記環境パラメータの前記値と算出した前記収穫結果の前記予測値とを関連付けることにより、前記データテーブルを生成する、請求項2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記植物の栽培開始から所定の時点における前記植物工場の環境を変更することなく、収穫時期まで前記植物を栽培した場合における、前記収穫結果の前記予測値を算出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記植物の栽培開始から所定の時点において、前記植物工場の環境をユーザが指定した環境に変更して、収穫時期まで前記植物を栽培した場合における、前記収穫結果の前記予測値を算出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記環境パラメータの実測値及び前記収穫結果の実測値を用いた機械学習を行うことにより、前記予測モデルを生成し、生成した前記予測モデルを記憶部に格納する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項7】
前記収穫結果は、前記植物の生産コストに関する情報をさらに含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の予測装置と、前記予測装置と通信可能な管理装置と、を備える予測システムであって、前記出力は、前記管理装置を介して行われる、予測システム。
【請求項9】
制御部を備えるコンピュータを用いた予測方法であって、
前記制御部が、
植物工場における植物の収穫重量及び生理障害に関する情報を含む収穫結果の予測値を算出するための、前記植物工場の環境を示す環境パラメータの変数を説明変数とし、前記収穫結果の変数を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを取得するステップと、
前記環境パラメータの複数の値を、前記予測モデルに入力して、前記収穫結果の複数の予測値を算出するステップと、
前記収穫結果の複数の候補の中から所望の収穫結果の選択をユーザから受け付けるステップと、
前記算出した前記収穫結果の複数の予測値のうち、前記ユーザからの選択を受け付けた前記所望の収穫結果に適合する前記予測値を算出するための前記環境パラメータを出力するステップと、
を含む、予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測装置、予測システム、及び予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物工場における植物の収穫結果を予測する技術として、非特許文献1に開示された技術がある。非特許文献1では、植物工場において栽培されるレタスの成長曲線をロジスティクス関数で近似し、様々な目標重量のレタスに対して利益モデルを作成する。この利益モデルを用いて、レタスの育苗段階から成長曲線を予測し、植物工場における利益が最大となる栽培日数を計算する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Shogo MORIYUKI, Hiroaki KANEDA, Yusaku MIYAGI, Nobuhiro SUGIMURA, and Hirokazu FUKUDA, “Profit Models Based on the Growth Dynamics of Lettuce Populations in a Plant Factory”, Environ. Control Biol., 56(4), 143-148, 2018 DOI: 10.2525/ecb.56.143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが期待する収穫重量を所定の期間内に実現するために、例えば光強度を強めて植物を急成長させると、チップバーン等の生理障害が発生してしまう。このように、収穫重量及び生理障害は互いに相反する関係にあるが、非特許文献1に開示された技術では、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができないという点で、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる予測装置、予測システム、及び予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る予測装置は、植物工場における植物の収穫重量及び生理障害に関する情報を含む収穫結果の予測値を算出するための予測モデルと、前記植物工場の環境を示す環境パラメータの値とが格納された記憶部と、前記記憶部から取得した前記環境パラメータの前記値を、前記予測モデルに入力して、前記収穫結果の前記予測値を算出する制御部と、前記制御部が算出した前記収穫結果の前記予測値を出力する通信部と、を有する。
【0007】
これにより、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる。
【0008】
一実施形態において、前記制御部は、前記環境パラメータの前記値と前記収穫結果の前記予測値とが関連付けられたデータテーブルを参照することにより、ユーザが期待する収穫結果に対応する前記環境パラメータの前記値を抽出し、前記通信部は、前記制御部が抽出した前記環境パラメータの前記値を出力してもよい。
【0009】
これにより、ユーザは、期待する収穫結果を実現するために必要とされる環境条件を効率的に把握することができるので、植物工場の歩留まりが向上する。
【0010】
一実施形態において、前記制御部は、前記環境パラメータの前記値を変化させる毎に、変化させた前記環境パラメータの前記値を前記予測モデルに入力することにより、前記収穫結果の前記予測値を算出し、且つ変化させた前記環境パラメータの前記値と算出した前記収穫結果の前記予測値とを関連付けることにより、前記データテーブルを生成してもよい。
【0011】
これにより、ユーザは、期待する収穫結果を実現するために必要とされる環境条件を効率的に把握することができるので、植物工場の歩留まりが向上する。
【0012】
一実施形態において、前記制御部は、前記植物の栽培開始から所定の時点における前記植物工場の環境を変更することなく、収穫時期まで前記植物を栽培した場合における、前記収穫結果の前記予測値を算出してもよい。
【0013】
これにより、ユーザは、相反する収穫重量及び生理障害に関する情報を考慮した予測モデルを用いて植物工場を管理することができるので、ユーザは的確な販売計画を立てることができる。
【0014】
一実施形態において、前記制御部は、前記植物の栽培開始から所定の時点において、前記植物工場の環境をユーザが指定した環境に変更して、収穫時期まで前記植物を栽培した場合における、前記収穫結果の前記予測値を算出してもよい。
【0015】
これにより、ユーザが指定した環境下における収穫結果を予測することができるので、ユーザは、的確な販売計画を立てることができる。特に、省電力等の制約された環境下で植物工場を稼働させる必要がある場合、又は植物工場の環境を試験的に変更する場合に有用である。
【0016】
一実施形態において、前記制御部は、前記環境パラメータの実測値及び前記収穫結果の実測値を用いた機械学習を行うことにより、前記予測モデルを生成し、生成した前記予測モデルを前記記憶部に格納してもよい。
【0017】
これにより、相反する収穫重量及び生理障害に関する情報を考慮した、汎用性の高い予測モデルが得られる。この予測モデルを用いて、植物工場を管理することにより、手間及びコストを低減することができる。
【0018】
一実施形態において、前記植物の生産コストに関する情報をさらに含んでもよい。
【0019】
これにより、収穫重量及び生理障害の他に生産コストも考慮した収穫結果を予測することができる。
【0020】
幾つかの実施形態に係る予測システムは、前記予測装置と、前記予測装置と通信可能な管理装置と、を備え、前記出力は、前記管理装置を介して行われる。
【0021】
これにより、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる。
【0022】
幾つかの実施形態に係る予測方法は、コンピュータを用いた予測方法であって、植物工場の環境パラメータの値を、前記植物工場における植物の収穫重量及び生理障害に関する情報を含む収穫結果の予測値を算出するための予測モデルに入力して、前記収穫結果の前記予測値を算出するステップと、算出した前記収穫結果の前記予測値を出力するステップと、を含む。
【0023】
これにより、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる予測装置、予測システム、及び予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る予測システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2】本実施形態に係る予測システムの第1の動作例を説明するフローチャートである。
図3】第1の動作例における環境パラメータの実測値を説明する図である。
図4】第1の動作例における収穫結果の実測値を説明する図である。
図5】本実施形態に係る予測システムの第2の動作例を説明するフローチャートである。
図6】第2の動作例における環境パラメータの実測値を説明する図である。
図7】第2の動作例における栽培履歴を示すデータを説明する図である。
図8】第2の動作例における収穫結果の予測値を説明する図である。
図9】第2の動作例において、ユーザが期待する収穫結果を選択するための選択画面の出力例である。
図10】第2の動作例において、ユーザが期待する収穫結果を実現可能な環境パラメータの値を示すグラフの出力例である。
図11】本実施形態に係る予測システムの第3の動作例を説明するフローチャートである。
図12】第3の動作例において、ユーザが指定する環境パラメータの値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0027】
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る予測システム1を説明する。
【0028】
予測システム1は、予測装置10、管理装置20、データ収集装置30、環境測定装置40、収穫結果測定装置50、及び環境制御装置60を備える。予測装置10は、インターネット等のネットワーク70を介して、管理装置20及びデータ収集装置30と互いに通信可能である。環境測定装置40は、LAN(local area network)等を介して、データ収集装置30と互いに通信可能である。収穫結果測定装置50は、LAN(local area network)等を介して、データ収集装置30と互いに通信可能である。
【0029】
予測装置10は、クラウドコンピューティングシステム等に属するサーバである。
【0030】
予測装置10は、制御部11、記憶部12、及び通信部13を有する。
【0031】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。制御部11は、予測装置10の各部を制御しながら、予測装置10の動作に関わる処理を行う。
【0032】
記憶部12は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。記憶部12には、予測装置10の動作に用いられる情報、及び予測装置10の動作によって得られる情報が格納される。
【0033】
通信部13は、例えば、インターネット、ゲートウェイ、及びLAN(local area network)等を介して通信することができる、1つ以上の通信インタフェースを含む。通信部13は、予測装置10の動作に用いられる情報を受信し、予測装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0034】
なお、予測装置10の動作は、記憶部12に格納されたプログラムを、制御部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。
【0035】
管理装置20は、PC(personal computer)、携帯電話機、スマートフォン、又はタブレット等である。管理装置20は、植物工場80の外部に設けられるが、これに限定されない。
【0036】
管理装置20は、制御部21、記憶部22、通信部23、入力部24、及び出力部25を有する。
【0037】
制御部21は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。制御部21は、管理装置20の各部を制御しながら、管理装置20の動作に関わる処理を行う。
【0038】
記憶部22は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。記憶部22には、管理装置20の動作に用いられる情報、及び管理装置20の動作によって得られる情報が格納される。
【0039】
通信部23は、例えば、インターネット、ゲートウェイ、及びLAN(local area network)等を介して通信することができる、1つ以上の通信インタフェースを含む。通信部23は、管理装置20の動作に用いられる情報を受信し、管理装置20の動作によって得られる情報を送信する。
【0040】
入力部24は、1つ以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、マイク、又はこれらの組み合わせである。入力部24は、管理装置20の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。
【0041】
出力部25は、1つ以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ、スピーカ、又はこれらの組み合わせである。出力部25は、管理装置20の動作によって得られる情報を出力する。
【0042】
なお、管理装置20の動作は、記憶部22に格納されたプログラムを、制御部21に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。
【0043】
データ収集装置30は、PC(personal computer)等である。データ収集装置30は、植物工場80の内部に設けられるが、これに限定されない。
【0044】
データ収集装置30は、制御部31、記憶部32、通信部33、入力部34、及び出力部35を有する。
【0045】
制御部31は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。制御部31は、データ収集装置30の各部を制御しながら、データ収集装置30の動作に関わる処理を行う。
【0046】
記憶部32は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。記憶部32には、データ収集装置30の動作に用いられる情報、及びデータ収集装置30の動作によって得られる情報が格納される。
【0047】
通信部33は、例えば、インターネット、ゲートウェイ、及びLAN(local area network)等を介して通信することができる、1つ以上の通信インタフェースを含む。通信部33は、データ収集装置30の動作に用いられる情報を受信し、データ収集装置30の動作によって得られる情報を送信する。
【0048】
入力部34は、1つ以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、マイク、又はこれらの組み合わせである。入力部34は、データ収集装置30の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。
【0049】
出力部35は、1つ以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ、スピーカ、又はこれらの組み合わせである。出力部35は、データ収集装置30の動作によって得られる情報を出力する。
【0050】
なお、データ収集装置30の動作は、記憶部32に格納されたプログラムを、制御部31に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。
【0051】
環境測定装置40は、植物工場80に設けられた栽培エリア毎に1つ以上設けられる。環境測定装置40は、植物工場80の環境を示す環境パラメータとしてのCO濃度、光量子、湿度、温度、又はこれらの組み合わせを所定の時間間隔で測定する。環境測定装置40は、CO濃度計、光量子計、湿度計、温度計、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本実施形態において、「栽培エリア」とは、植物の成長段階に応じて植物が移植される植物工場80の内部の所定のエリアを指し、例えば播種エリア、緑化エリア、育苗エリア、及び定植エリア等が挙げられる。また、「所定の時間間隔」は、ユーザによって適宜設定され、例えば数十分~数時間とすることができる。
【0052】
収穫結果測定装置50は、植物工場80の内部に設けられる。収穫結果測定装置50は、植物工場80で栽培される植物の収穫重量及び生理障害に関する情報を含む収穫結果を測定する。本実施形態において、「生理障害に関する情報」は、チップバーン等の生理障害の発生確率又は発生有無を含む。なお、収穫重量は、公知又は任意の重量計を用いて測定されるが、これに限定されない。また、生理障害の発生確率は、公知又は任意の画像認識技術を用いて算出されるが、これに限定されない。また、生理障害の発生有無は、ユーザの目視によって確認されるが、これに限定されない。
【0053】
環境制御装置60は、植物工場80の内部に設けられる。環境制御装置60は、照明装置、空調装置、CO発生機、養液循環装置、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。環境制御装置60は、管理装置20を介して自動で制御されてもよく、ユーザによって手動で制御されてもよい。
【0054】
植物工場80は、植物を計画的に栽培することができる任意の工場である。
【0055】
植物は、野菜、果物、若しくは食用花等の食用植物、薬用植物、観葉植物等の観賞用植物、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。野菜として、例えば、レタス又はイチゴ等が挙げられる。
【0056】
図2を参照して、本開示による予測システム1の第1の動作例を説明する。第1の動作例は、本開示による予測方法の一実施形態に相当する。
【0057】
第1の動作例では、データ収集装置30の記憶部32に、環境測定装置40によって測定された環境パラメータの実測値、及び収穫結果測定装置50によって測定された収穫結果の実測値が格納されている。図3に示すとおり、環境パラメータの実測値は、栽培エリア毎に、栽培開始日から所定の時間間隔で測定されたCO濃度、光量子、湿度、及び温度の実測値を含む。なお、CO濃度の単位はppmであり、光量子の単位はμmol/m2sであり、湿度の単位は%であり、温度の単位は℃である。また、図4に示すとおり、収穫結果の実測値は、ID毎に、収穫重量及び生理障害の発生有無の実測値を含むとともに、播種、緑化、育苗、及び定植が行われた栽培エリアの情報を示す栽培履歴も含む。したがって、図3及び4に示すデータによって、各IDが付された植物が、どの栽培エリアで、どのような環境下で栽培されたのかが特定される。本実施形態において、「ID」は、植物の栽培情報を管理するために用いられる識別情報であり、播種段階、緑化段階、育苗段階、及び定植段階における栽培エリア、並びに栽培開始日が同一である植物に対して、同一のIDが付与される。
【0058】
ステップS101において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、データ収集装置30から環境パラメータの実測値及び収穫結果の実測値を取得する。制御部11は、取得した環境パラメータの実測値及び収穫結果の実測値を記憶部12に格納する。
【0059】
ステップS102において、予測装置10の制御部11は、記憶部12から環境パラメータの実測値及び収穫結果の実測値を取得し、前処理を施す。「前処理」は、外れ値処理、時系列に関する欠損補間、離散化処理、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0060】
ステップS103において、予測装置10の制御部11は、ステップS102で前処理したデータを用いた機械学習を行うにより、収穫結果の予測値を算出するための予測モデルを生成する。この機械学習は、環境パラメータに対応する変数を説明変数とし、収穫結果に対応する変数を目的変数として、公知又は任意のクラスタリング及びベイジアンネットワークの技術を用いることにより実行される。ここで、本実施形態において「クラスタリング」とは、類似する変数同士を同一のクラスタに分類する手法であり、k-means法等のハードクラスタリング又は確率的潜在意味解析等のソフトクラスタリングが挙げられるが、これらに限定されない。また、「ベイジアンネットワーク」とは、変数をノードとする有向非巡回グラフであり、ノード間の条件付き確率表を含むものである。ステップS103では、最初に、予測装置10の制御部11が、ステップS102で前処理したデータに対して教師なし学習を行うことにより、類似する説明変数同士が同一のクラスタに分類される。続いて、制御部11が、クラスタリングの結果を用いた構造学習を行うことにより、予測モデルが生成される。本実施形態において「予測モデル」は、例えば環境パラメータに対応する親ノード、クラスタリングによって次元圧縮された子ノード、及び収穫結果に対応する孫ノードを含む。ただし、親ノードと孫ノードとは、子ノードを介してリンクされている必要はなく、直接リンクされていてもよい。
【0061】
ステップS104において、予測装置10の制御部11は、ステップS103で生成した予測モデルを記憶部12に格納する。
【0062】
第1の動作例によれば、相反する収穫重量及び生理障害に関する情報を考慮した、汎用性の高い予測モデルが得られる。この予測モデルを用いて、次に説明する第2の動作例及び第3の動作例に従って植物工場80を管理することにより、手間及びコストを低減することができる。
【0063】
図5を参照して、本開示による予測システム1の第2の動作例を説明する。第2の動作例は、本開示による予測方法の一実施形態に相当する。
【0064】
第2の動作例では、データ収集装置30の記憶部32に、環境測定装置40によって測定された環境パラメータの実測値が格納されている。また、データ収集装置30の記憶部32に、管理装置20から取得した栽培履歴を示すデータが格納されている。図6に示すとおり、環境パラメータの実測値は、栽培開始から所定の時点まで所定の時間間隔で測定された、栽培エリア毎のCO濃度、光量子、湿度、及び温度の実測値を含む。なお、「所定の時点」は、例えば管理装置20の入力部24を介したユーザの入力に基づいて、任意に設定される。また、図7に示すとおり、栽培履歴を示すデータは、ID毎に、栽培開始から任意の時点までの播種段階、緑化段階、育苗段階、及び定植段階における栽培エリアを示す情報を含む。
【0065】
ステップS201において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、データ収集装置30から環境パラメータの実測値及び栽培履歴を示すデータを取得し、記憶部12に格納する。
【0066】
ステップS202において、予測装置10の制御部11は、記憶部12から環境パラメータの実測値及び栽培履歴を示すデータを取得し、前処理を施す。この前処理は、ステップS102と同様である。
【0067】
ここで、第2の動作例では、予測装置10の制御部11が、栽培開始から所定の時点における植物工場の環境を変更することなく、収穫時期まで植物を栽培した場合における、収穫結果の予測値を算出すると判断する。なお、予測装置10の制御部11は、例えば管理装置20の入力部24を介したユーザの入力に基づいて、この判断を行うことができる。例えば、管理装置20の制御部21は、出力部25を介して、上述した収穫結果の予測値を算出するか否かの質問ダイアログをユーザに向けて出力する。続いて、管理装置20の制御部21は、入力部24を介して、ユーザが回答を入力する操作を受け付ける。続いて、管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、ユーザの回答を示すデータを予測装置10に送信する。このようにして、予測装置10の制御部11は、上述した判断を行うことができる。
【0068】
ステップS203において、予測装置10の制御部11は、記憶部12から第1の動作例で生成した予測モデルを取得する。制御部11は、ステップS202で前処理したデータを取得した予測モデルに入力する。なお、栽培開始後の所定の時点から収穫時期までの環境パラメータの値としては、栽培開始から所定の時点における環境パラメータの値が用いられる。これにより、栽培開始から所定の時点における植物工場80の環境を変更することなく、収穫時期まで植物を栽培した場合における、収穫結果の予測値が算出される。
【0069】
ステップS204において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、ステップS203で算出した収穫結果の予測値を管理装置20に送信する。管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、予測装置10から収穫結果の予測値を受信する。管理装置20の制御部21は、出力部25を介して、受信した収穫結果の予測値をユーザに向けて出力する。図8に示す出力例では、ID毎に、収穫重量及び生理障害の発生確率の予測値が出力される。
【0070】
ステップS205において、予測装置10の制御部11は、環境パラメータの値を変化させる毎に、変化させた環境パラメータの値を予測モデルに入力することにより、収穫結果の予測値を算出する。このようにして、環境パラメータの各値に応じた収穫結果の予測値が網羅的に算出される。また、制御部11は、ステップS205で変化させた環境パラメータの値とステップS205で算出した収穫結果の予測値とを関連付けたデータテーブルを生成する。制御部11は、生成したデータテーブルを記憶部12に格納する。本実施形態において「環境パラメータの値を変化させる」とは、例えばCO濃度、光量子、湿度、温度、又はこれらの組み合わせの値を、所定の範囲において所定の刻み幅で変化させることを意味し、例えば温度を22℃から27℃まで1℃刻みで変化させることを意味する。なお、「所定の範囲」及び「所定の刻み幅」は、例えば管理装置20の入力部24を介したユーザの入力に基づいて、任意に設定される。
【0071】
ステップS206において、管理装置20の制御部21は、出力部25を介して、ユーザが期待する収穫結果を選択するための選択画面を出力する。図9に示す出力例では、ユーザは、「収穫重量:最大」、「生理障害の発生確率:最小」、及び「生産コスト:最小」という複数の収穫結果の候補から、ユーザが期待する収穫結果を選択することができる。なお、選択画面に出力される収穫結果の候補は、例えば管理装置20の入力部24を介したユーザの入力に基づいて、任意に設定される。なお、生産コストは、環境条件から推定される消費電力量、並びに予測モデルの予測結果によって変動する人件費及び輸送コスト等に基づいて算出される。
【0072】
ステップS207において、管理装置20の制御部21は、入力部24を介して、ユーザが期待する収穫結果を選択する操作を受け付ける。図9に示す出力例では、「生理障害の発生確率:22%以下」且つ「収穫重量:最大」という収穫結果が、ユーザが期待する収穫結果として選択される。管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、ユーザによって選択されたユーザが期待する収穫結果を示すデータを予測装置10に送信する。
【0073】
ステップS208において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、管理装置20からユーザが期待する収穫結果を示すデータを受信する。予測装置10の制御部11は、ステップS205で記憶部12に格納されたデータテーブルを参照することにより、ユーザが期待する収穫結果に対応する環境パラメータの値を抽出する。図9に示す出力例では、ユーザは「生理障害の発生確率:22%以下」且つ「収穫重量:最大」という収穫結果を期待している。このため、ステップS208では、「生理障害の発生確率:22%以下」且つ「収穫重量:最大」という収穫結果に対応する環境パラメータの値が抽出される。予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、抽出した環境パラメータの値を管理装置20に送信する。
【0074】
ステップS209において、管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、予測装置10から抽出された環境パラメータの値を受信する。制御部21は、出力部25を介して、受信した環境パラメータの値をユーザに向けて出力する。図10に示す出力例では、栽培開始後の所定の時点から収穫時期までの、植物工場80のCO濃度、光量子、湿度、及び温度の目標値の時間変化がグラフで表示される。これにより、ユーザは、期待する収穫結果を実現するために必要とされる環境条件を把握することができる。
【0075】
ステップS210において、管理装置20の制御部21は、ユーザの入力に基づいて、ステップS206乃至S209の処理を繰り返すか否かの判断を行う。制御部21は、ステップS206乃至S209の処理を繰り返すと判断した場合(ステップS210:YES)、ステップS206に戻る。制御部21は、ステップS206乃至S209の処理を繰り返えさないと判断した場合(ステップS210:NO)、ステップS211に進む。なお、管理装置20の制御部21は、出力部25を介して、ステップS206乃至S209の処理を繰り返すか否かの質問ダイアログをユーザに向けて出力し、入力部24を介して、ユーザが回答を入力する操作を受け付けることにより、この判断を行うことができる。
【0076】
ステップS211において、ユーザは、ステップS209で出力された環境パラメータの値に基づいて、環境制御装置60を制御する。ただし、ステップS211では、これに替えて、環境制御装置60が管理装置20を介して自動的に制御されてもよい。
【0077】
第2の動作例によれば、ユーザは、相反する収穫重量及び生理障害に関する情報を考慮した予測モデルを用いて植物工場80を管理することができるので、的確な販売計画を立てることができる。また、ユーザが期待する収穫結果を実現するために必要とされる環境条件がユーザに提示されるので、植物工場80の歩留まりが向上する。特に、ステップS205にて、収穫結果を網羅的に予測しておくことで、ユーザは、期待する収穫結果を実現するために必要とされる環境条件を効率的に把握することができる。
【0078】
図11を参照して、本開示による予測システム1の第3の動作例を説明する。第3の動作例は、本開示による予測方法の一実施形態に相当する。
【0079】
第3の動作例では、データ収集装置30の記憶部32に、環境測定装置40によって測定された環境パラメータの実測値が格納されている。また、データ収集装置30の記憶部32に、管理装置20から取得した栽培履歴を示すデータが格納されている。第3の動作例における「環境パラメータの実測値」及び「栽培履歴を示すデータ」は、第2の動作例と同様である。
【0080】
ステップS301において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、データ収集装置30から環境パラメータの実測値及び栽培履歴を示すデータを取得し、記憶部12に格納する。
【0081】
ステップS302において、予測装置10の制御部11は、記憶部12から環境パラメータの実測値及び栽培履歴を示すデータを取得し、前処理を施す。この前処理は、ステップS102と同様である。
【0082】
ステップS303において、管理装置20の制御部21は、入力部24を介して、植物の栽培開始後の所定の時点から収穫時期までの環境パラメータの値をユーザが指定する操作を受け付ける。管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、ユーザが指定した環境パラメータの値を予測装置10に送信する。図12に、ユーザが指定した環境パラメータの値を示す。
【0083】
ステップS304において、予測装置10の制御部11は、記憶部12から第1の動作例で生成した予測モデルを取得する。制御部11は、通信部13を介して、ステップS303でユーザが指定した環境パラメータの値を受信する。予測装置10の制御部11は、ステップS302で前処理したデータ及びステップS303でユーザが指定した環境パラメータの値を予測モデルに入力する。これにより、制御部11は、植物の栽培開始から所定の時点において、植物工場80の環境をユーザが指定した環境に変更して、収穫時期まで植物を栽培した場合における、収穫結果の予測値を算出する。
【0084】
ステップS305において、予測装置10の制御部11は、通信部13を介して、ステップS304で算出した収穫結果の予測値を管理装置20に送信する。管理装置20の制御部21は、通信部23を介して、予測装置10から収穫結果の予測値を受信する。管理装置20の制御部21は、出力部25を介して、収穫結果の予測値をユーザに向けて出力する。
【0085】
第3の動作例によれば、省電力等の制約された環境で植物工場80を稼働させる必要がある場合に、この環境下における収穫結果を予測することができるので、ユーザは、的確な販売計画を立てることができる。また、ユーザが植物工場80の環境を試験的に変更することを望む場合に、植物工場80の環境を実際に変化させることなく、収穫結果を予測することができる。
【0086】
以上、本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示によれば、収穫重量及び生理障害を考慮した収穫結果を予測することができる予測装置、予測システム、及び予測方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 予測システム
10 予測装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
20 管理装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
30 データ収集装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 入力部
35 出力部
40 環境測定装置
50 収穫結果測定装置
60 環境制御装置
70 ネットワーク
80 植物工場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12