(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20230719BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20230719BHJP
B60R 21/239 20060101ALI20230719BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20230719BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/231
B60R21/239
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2020198868
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063019(JP,A)
【文献】特開2020-164143(JP,A)
【文献】特開2020-015424(JP,A)
【文献】特開2020-050107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0282943(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014204080(DE,A1)
【文献】特開2012-136113(JP,A)
【文献】特開2019-214352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2338
B60R 21/231
B60R 21/239
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における着座した乗員の前方側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員を受止可能に、収納位置から後方側に展開膨張するエアバッグ、を備え、
該エアバッグが、
膨張部位として、前記収納位置から上下に分岐するように後方へ延びる上側膨張部、及び、下側膨張部、を備えるとともに、前記上側膨張部と前記下側膨張部との後端相互を連結するように配設されて、後面側を乗員を受け止める拘束面とする後側膨張部、を備えて、
前記上側膨張部、前記下側膨張部、及び、前記後側膨張部に囲まれる中央に、左右方向に沿って貫通する中空部、を配設させる構成とし、さらに、
前記エアバッグにおける前記収納位置から前記拘束面までの突出長さを調整可能な突出長さ調整手段を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグの前記上側膨張部と前記下側膨張部との交差部位付近の内周面側に、膨張用ガスを排気可能な排気口が配設されるとともに、
前記排気口が、前記突出長さ調整手段による前記突出長さを長く調整される場合に、前記突出長さを短く調整される場合より、前記上側膨張部と前記下側膨張部との相互の接近による周縁部材の接近によって、排気量を抑制されるように、配設されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記排気口が、前記突出長さ調整手段による前記突出長さを長く調整される場合に、前記周縁部材の接近によって、閉塞されるように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記排気口が、前記上側膨張部と前記下側膨張部との交差部位の内周面側で、前記上側膨張部と前記下側膨張部とに跨って開口されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記排気口が、前記上側膨張部と前記下側膨張部との交差部位の内周面側で、前記上側膨張部と前記下側膨張部との一方側に開口されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記突出長さ調整手段が、
前記収納位置から延びるストラップと、
該ストラップにおける前記収納位置から先端までの距離を調整可能なアクチュエータと、
を備えて構成されて、
前記ストラップが、前記収納位置から延びる先端を、前記中空部を経て、前記後側膨張部に結合させ、
前記アクチュエータが、非作動時、前記ストラップの元部側の保持状態を維持して、前記ストラップの前記収納位置から先端までの距離を短くし、作動時、前記ストラップの元部側を繰り出して、前記ストラップの前記収納位置から先端までの実質的な距離を長くするように、調整する構成とすることを特徴とする請求項1若しくは請求項4のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記ストラップが、前記突出長さを長くするように、前記ストラップの前記収納位置から先端までの距離を長くするように調整された際、前記ストラップが前記周縁部材を構成して、前記排気口を閉塞する構成としていることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記突出長さ調整手段が、
前記中空部を跨いで、前記上側膨張部と前記下側膨張部とにそれぞれ連結されるとともに、先端相互を連結材を介して連結される上側材及び下側材からなる連結テザーと、
前記収納位置から延びて前記連結材の端部を保持して前記収納位置に配設され、作動時、前記連結材の保持を解除するように作動するアクチュエータと、
を備えて、
前記アクチュエータの作動時、前記連結材の保持解除により、前記連結テザーによる前記上側膨張部と前記下側膨張部との離隔距離を維持して、前記突出長さを長く調整するように、前記エアバッグを膨張させ、
前記アクチュエータの非作動時、前記連結材の保持により、前記連結テザーにおける前記上側材と前記下側材との連結部位から前記連結材を外して前記上側材と前記下側材との連結を解除させ、前記上側膨張部と前記下側膨張部との離隔距離を増加させて、前記突出長さを短く調整するように、前記エアバッグを膨張させる構成としていることを特徴とする請求項1若しくは請求項4のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記収納位置が、車両における着座した乗員の前方側におけるフロントウインドシールド下方のインストルメントパネルの上面側として、
前記エアバッグが、膨張時、前記上側膨張部の上面側を、前記フロントウインドシールドに、接触させ、前記下側膨張部の前部側の下面側を、前記インストルメントパネルの上面側から下方に屈曲する後面側に、接触可能に、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における着座した乗員の前方側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員を受止可能に、収納位置から後方側に展開膨張するエアバッグ、を備えるとともに、膨張完了時のエアバッグにおける収納位置からの後方側への突出長さを調整可能とした乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置として、膨張完了時のエアバッグが、容積の増加を抑えて、収納位置からの突出長さを調整して、着座した乗員を受け止めて保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグは、膨張部位として、収納位置から上下に分岐するように後方へ延びる上側膨張部、及び、下側膨張部、を備えるとともに、上側膨張部と下側膨張部との後端相互を連結するように配設されて、後面側を乗員を受け止める拘束面とする後側膨張部、を備え、さらに、容積を小さくするように、上側膨張部、下側膨張部、及び、後側膨張部に囲まれる中央に、左右方向に沿って貫通する中空部、を配設させて構成されていた。さらに、乗員保護装置は、エアバッグにおける収納位置から拘束面までの突出長さを調整可能な突出長さ調整手段を備えて構成されていた。突出長さ調整手段は、収納位置に配置された電磁ソレノイド等からなるアクチュエータと、膨張完了時の後側膨張部に先端を連結させて、元部側を、アクチュエータの係止ピンに係止させたストラップと、を備え、さらに、乗員の着座位置を検知可能な検知手段としてのカメラと、カメラからの乗員の位置データを基に、アクチュエータを作動させる制御装置と、を備えて構成されていた。ストラップは、先端側を後側膨張部に連結させ、元部側を、中空部を経て、さらに、エアバッグの上側膨張部と下側膨張部との交差部位付近を貫通して、収納位置の前側に配置されたアクチュエータの係止ピンに、係止させていた。そして、突出長さ調整手段は、エアバッグの膨張時、乗員が収納位置に接近していれば、膨張完了時のエアバッグの収納位置からの突出長さを短くするように、アクチュエータを作動させずに、係止ピンにストラップの元部側を係止させた状態を維持し、乗員が収納位置から離れていれば、エアバッグの膨張時、係止ピンを移動させるようにアクチュエータを作動させて、ストラップの係止位置から係止を解除する位置に係止ピンを移動させ、ストラップの係止を解除させて、ストラップにおける収納位置から先端側までの長さを、実質的に長くするように、調整していた。この乗員保護装置では、収納位置に接近して着座している乗員に対しては、エアバッグが、収納位置からの突出長さを短くして膨張することから、収納位置に接近して着座している小柄な乗員を、好適に受け止めることができた。また、この乗員保護装置では、収納位置から離れて着座している乗員に対しては、エアバッグが、収納位置からの突出長さを長くして膨張することから、収納位置から離れて着座している大柄な乗員を、好適に受け止めることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乗員保護装置では、接近している小柄な乗員に対して、収納位置からの突出長さを短くしてエアバッグを膨張させた場合と、離れた大柄な乗員に対して、収納位置からの突出長さを長くしてエアバッグを膨張させた場合とにおいて、エアバッグの内圧自体は、略同等としていた。しかしながら、収納位置に接近している小柄な乗員では、膨張完了時の内圧を抑制した状態のエアバッグで、受け止め、また、収納位置から離れた大柄な乗員では、内圧の低下を抑制したエアバッグで受け止めることが望ましい。この対処として、エアバッグの突出長さを短くしている場合、余剰の膨張用ガスを排気して、膨張完了時のエアバッグの内圧を低減させ、逆に、エアバッグの突出長さを長くしている場合、余剰の膨張用ガスの排気を抑制して、膨張完了時のエアバッグの内圧を高く維持するように、排気量を調整可能に排気口(可変ベント機構)を配設させることが考えられる。しかし、このような排気量を調整可能に構成する場合には、突出長さ調整手段のアクチュエータと別に、可変ベント機構用のアクチュエータを設ける必要が生じて、簡便に、排気量を調整し難かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張時のエアバッグの突出長さの長短に応じて、簡便に、エアバッグの内圧を調整可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、車両における着座した乗員の前方側に折り畳まれて収納され、膨張用ガスの流入時に、乗員を受止可能に、収納位置から後方側に展開膨張するエアバッグ、を備え、
該エアバッグが、
膨張部位として、前記収納位置から上下に分岐するように後方へ延びる上側膨張部、及び、下側膨張部、を備えるとともに、前記上側膨張部と前記下側膨張部との後端相互を連結するように配設されて、後面側を乗員を受け止める拘束面とする後側膨張部、を備えて、
前記上側膨張部、前記下側膨張部、及び、前記後側膨張部に囲まれる中央に、左右方向に沿って貫通する中空部、を配設させる構成とし、さらに、
前記エアバッグにおける前記収納位置から前記拘束面までの突出長さを調整可能な突出長さ調整手段を備えて構成される乗員保護装置であって、
前記エアバッグの前記上側膨張部と前記下側膨張部との交差部位付近の内周面側に、膨張用ガスを排気可能な排気口が配設されるとともに、
前記排気口が、前記突出長さ調整手段による前記突出長さを長く調整される場合に、前記突出長さを短く調整される場合より、前記上側膨張部と前記下側膨張部との相互の接近による周縁部材の接近によって、排気量を抑制されるように、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、エアバッグの膨張時、突出長さ調整手段により、エアバッグの突出長さを長く調整される場合には、排気口からの膨張用ガスの排気量が、抑制されて、エアバッグの内圧を高く維持でき、逆に、突出長さ調整手段により、エアバッグの突出長さを短く調整される場合には、排気口からの膨張用ガスの排気量が、抑制されずに、エアバッグの内圧を低くすることができる。すなわち、エアバッグが突出長さを長くして膨張する場合には、収納位置から離れた大柄な乗員を受け止める場合であり、その際、エアバッグの内圧は、高い状態を維持できて、好適に、膨張したエアバッグは、大柄乗員を受け止めて保護できる。また、エアバッグが突出長さを短くして膨張する場合には、収納位置に接近した小柄な乗員を受け止める場合であり、その際、エアバッグの内圧は、排気量を多くして低い状態とすることができて、好適に、膨張したエアバッグは、小柄乗員を受け止めて保護できる。そして、このような排気口の排気量の調整は、排気口が、上側膨張部と下側膨張部との相互の接近による周縁部材の接近によって、排気量を抑制されるように、エアバッグの上側膨張部と下側膨張部との交差部位付近の内周面側に、配設されている。すなわち、エアバッグの膨張時の突出長さが長い場合には、上側膨張部と下側膨張部との間の角度が、狭くなって、排気口の周縁の周縁部材、例えば、上側膨張部や下側膨張部の周壁自体、あるいは、突出長さ調整手段の部材等が、排気口に接近する配置状態となることから、その排気口からの膨張用ガスの排気は、周縁部材の干渉を受けて、抑制され、逆に、エアバッグの膨張時の突出長さが短い場合には、上側膨張部と下側膨張部との間の角度が、広くなって、排気口の周縁の周縁部材が排気口に接近せずに離れる配置状態となることから、その排気口からの膨張用ガスの排気は、周縁部材の干渉を受けずに、円滑に行なわれ、別途、アクチュエータにより、排気口の開口面積を狭めたり広げたりする可変ベント機構を設けずに、単に、エアバッグの上側膨張部と下側膨張部との交差部位付近の内周面側に、排気口を開口させ、そして、その周縁に接近する周縁部材を、排気口の開口面積を狭めたり広げるように、利用すればよく、簡便に、排気口からの排気量を調整可能となる。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、膨張時のエアバッグの突出長さの長短に応じて、簡便に、エアバッグの内圧を調整することが可能となる。
【0009】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記排気口が、前記突出長さ調整手段による前記突出長さを長く調整される場合に、前記周縁部材の接近によって、閉塞されるように、配設されていてもよい。
【0010】
このような構成では、エアバッグが突出長さを長くして膨張する場合に、排気口が周縁部材によって閉塞されて、エアバッグが、高圧に維持されることから、収納位置から離れて着座する大柄乗員を、的確に、受け止めて保護できる。
【0011】
また、本発明に係る乗員保護装置では、前記排気口が、前記上側膨張部と前記下側膨張部との交差部位の内周面側で、前記上側膨張部と前記下側膨張部とに跨って開口されていたり、あるいは、前記上側膨張部と前記下側膨張部との一方側に開口されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係る乗員保護装置では、前記突出長さ調整手段が、
前記収納位置から延びるストラップと、
該ストラップにおける前記収納位置から先端までの距離を調整可能なアクチュエータと、
を備えて構成されて、
前記ストラップが、前記収納位置から延びる先端を、前記中空部を経て、前記後側膨張部に結合させ、
前記アクチュエータが、非作動時、前記ストラップの元部側の保持状態を維持して、前記ストラップの前記収納位置から先端までの距離を短くし、作動時、前記ストラップの元部側を繰り出して、前記ストラップの前記収納位置から先端までの実質的な距離を長くするように、調整する構成とすることができる。
【0013】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグの後側膨張部が、収納位置から延びるストラップの先端側と連結されており、アクチュエータの動作により、ストラップの収納位置から先端までの長さが調整されて、ストラップ先端の後側膨張部の前後位置が調整され、エアバッグの突出長さを、ストラップの長さ調整によって、直接的に調整できる。
【0014】
この場合、前記ストラップが、前記突出長さを長くするように、前記ストラップの前記収納位置から先端までの距離を長くするように調整された際、前記ストラップが前記周縁部材を構成して、前記排気口を閉塞する構成としてもよい。
【0015】
また、本発明に係る乗員保護装置では、前記突出長さ調整手段が、
前記中空部を跨いで、前記上側膨張部と前記下側膨張部とにそれぞれ連結されるとともに、先端相互を連結材を介して連結される上側材及び下側材からなる連結テザーと、
前記収納位置から延びて前記連結材の端部を保持して前記収納位置に配設され、作動時、前記連結材の保持を解除するように作動するアクチュエータと、
を備えて、
前記アクチュエータの作動時、前記連結材の保持解除により、前記連結テザーによる前記上側膨張部と前記下側膨張部との離隔距離を維持して、前記突出長さを長く調整するように、前記エアバッグを膨張させ、
前記アクチュエータの非作動時、前記連結材の保持により、前記連結テザーにおける前記上側材と前記下側材との連結部位から前記連結材を外して前記上側材と前記下側材との連結を解除させ、前記上側膨張部と前記下側膨張部との離隔距離を増加させて、前記突出長さを短く調整するように、前記エアバッグを膨張させる構成としてもよい。
【0016】
このような構成では、収納位置から離れて着座した大柄乗員に対して、突出長さを長くしてエアバッグが膨張する際には、連結テザーが上側膨張部と下側膨張部との離隔を規制することから、上側膨張部と下側膨張部との角度が狭くなって、エアバッグが突出長さを長くして膨張する。そして、エアバッグは、後側膨張部の後面の拘束面で乗員を受け止めても、上側膨張部と下側膨張部とが離隔し難く、排気口からの排気量も抑制されることも相俟って、十分な反力を確保して、エアバッグは、収納位置から離れて着座した大柄乗員を受け止めて保護できる。勿論、収納位置に接近して着座した小柄乗員に対しては、連結材が外れて、連結テザーが上側材と下側材とに分離され、上側膨張部と下側膨張部とが離隔して、突出長さを短くして、エアバッグが膨張する。そしてその際、エアバッグは、後側膨張部の後面の拘束面で乗員を受け止める際、上側膨張部と下側膨張部とが離隔され、さらに、排気口からの排気も抑制されずに、エアバッグの内圧が低下可能となることから、反力の上昇を抑えて、エアバッグは、収納位置に接近した小柄乗員を受け止めて保護できる。
【0017】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記収納位置が、車両における着座した乗員の前方側におけるフロントウインドシールド下方のインストルメントパネルの上面側として、
前記エアバッグが、膨張時、前記上側膨張部の上面側を、前記フロントウインドシールドに、接触させ、前記下側膨張部の前部側の下面側を、前記インストルメントパネルの上面側から下方に屈曲する後面側に、接触可能に、配設されていることが望ましい。
【0018】
このような構成では、エアバッグの膨張時、上側膨張部は、上面側をフロントウインドシールドに接触させて、支持され、下側膨張部は、前部側の下面側をインストルメントパネルの上面側から後面側にかけて支持されることから、突出長さを長くしても、あるいは、短くしても、共に、上側膨張部は上面側をフロントウインドシールドに支持され、下側膨張部は、少なくとも前部側の下面側をインストルメントパネルに支持されることから、所定の反力を確保できて、上側膨張部と下側膨張部との後端相互を連結して配設される後側膨張部が、後面の拘束面によって、乗員を安定して受け止めて保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、小突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図2】第1実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、大突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図3】第1実施形態のエアバッグにおける小突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図4】第1実施形態のエアバッグにおける大突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図5】第1実施形態のエアバッグの構成材料を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、小突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図7】第2実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、大突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図8】第2実施形態のエアバッグにおける小突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図9】第2実施形態のエアバッグにおける大突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図10】第2実施形態のエアバッグの構成材料を示す平面図である。
【
図11】第3実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、小突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図12】第3実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図であり、エアバッグが、大突出量モードで膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図13】第3実施形態のエアバッグにおける小突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図14】第3実施形態のエアバッグにおける大突出量モードでの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【
図15】第3実施形態の連結テザーを示す拡大図であり、調整材が外れる前後を示す図である。
【
図16】第4実施形態の乗員保護装置の作動状態を示す図である。
【
図17】第4実施形態のエアバッグの膨張時の排気口の周縁とアクチュエータ付近とを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の乗員保護装置10は、
図1,2に示すように、車両1の助手席前方におけるウインドシールド3の下方のインストルメントパネル(インパネ)2の上面2a側に、搭載されている。
【0021】
乗員OPの着座する助手席のシート4は、背もたれ部4aと座部4bとを備えるとともに、乗員OPは、通常、シートベルト装置5のベルト5a,5bを装着して着座しており、バックル5dに組み付けるためのタングプレート5cから延びるショルダーベルト5aが、乗員OPの胸部Bの前方に配置され、タングプレート5cから延びるラップベルト5bが、腰部Wの前方に配設されている。
【0022】
乗員保護装置10は、エアバッグ30、エアバッグ30に膨張用ガスGを供給するインフレーター13、折り畳んだエアバッグ30を収納するケース11、ケース11に収納されたエアバッグ30の収納位置12からの膨張時の後方側への突出長さを調整する突出長さ調整手段20と、を備えて構成されている。
【0023】
突出長さ調整手段20は、電磁ソレノイドからなるアクチュエータ21と、ストラップ27と、乗員OPの着座位置を検知可能な検知手段としてのカメラSOと、カメラSOからの乗員OPの位置データを基に、アクチュエータ21を作動させる制御装置ECUと、を備えて構成されている。
【0024】
なお、乗員保護装置10のインフレーター13とアクチュエータ21との作動は、制御装置ECUにより制御される。制御装置ECUは、車両1の衝突を検知するフロントバンパ等に配設された衝突検知センサからの信号を入力して、衝突したと判定すると、インフレーター13を作動させる。また、インフレーター13を作動させようとする時、制御装置ECUは、着座した乗員OPが、収納位置12(ケース11)に接近しているか否かを検出する乗員検知手段としてのカメラSOにより、乗員OPが、収納位置12から離れて着座していると判定すれば、アクチュエータ21を作動させ、収納位置12に接近して着座していると判定すれば、アクチュエータ21を作動させないように構成されている。
【0025】
アクチュエータ21は、
図3,4に示すように、収納位置12となるケース11の前側に固定されており、係止ピン22の先端(上端)22a側を、ガイド25を貫通してストッパ24に当接させるように、上方へ突設させて配設され、作動時、先端22aを、ストッパ24から離隔させてガイド25の位置で停止させるように、係止ピン22を引き込むように作動され、非作動時には、係止ピン22を引き込ませずに、係止ピン22の先端22aを、ストッパ24に当接させた状態を維持することとなる。
【0026】
ストラップ27は、可撓性を有したポリエステル等の織布から帯状に形成されて、膨張完了時のエアバッグ30における後述する後側膨張部43(詳しくは、後述する後内テザー62の配置されている領域の前面43c)に先端27aを連結させて、元部27b側を、エアバッグ30の挿通孔48,49を貫通させて、アクチュエータ21の係止ピン22に係止させている。ストラップ27は、元部27b側に、係止ピン22を貫通させる係止孔27c、挿通孔27d、及び、取付孔27eを備えて構成されている。取付孔27eは、アクチュエータ21の作動時に、係止ピン22が先端22aをガイド25に配置されるまで引き込まれても、係止ピン22を貫通させた状態とする。そのため、係止ピン22が先端22aをガイド25に配置されるまで引き込まれると、係止ピン22は、係止孔27cと挿通孔27dとから外れることから、ストラップ27は、元部27b側から先端27aまでの実質的な長さを、取付孔27eから先端27aまでの長い長さ寸法SLとすることとなる(
図5参照)。一方、アクチュエータ21が作動されない状態では、係止ピン22が係止孔27cを係止している状態となることから、ストラップ27の元部27b側から先端27aまで長さは、係止孔27cから先端27aまでの短い長さ寸法SSとなる。
【0027】
そして、ストラップ27の実質的な長さ寸法が短い長さ寸法SSの場合には、エアバッグ30の膨張時における収納位置12からのエアバッグ30の突出長さLSが短くなって、小突出量モードSPとなり(
図1参照)、ストラップ27の実質的な長さ寸法が長い長さ寸法SLの場合には、エアバッグ30の膨張時における収納位置12からのエアバッグ30の突出長さLLが長くなって、大突出量モードMPとなる(
図2参照)。
【0028】
また、第1実施形態のストラップ27は、先端27aと元部27b側と間の中間部位付近に、後述するエアバッグ30の排気口50を閉塞可能な幅広とした閉塞部28を配設させている。
【0029】
エアバッグ30は、シート4の前方におけるインパネ2の上面側を収納位置(収納部位)12として、収納位置12に折り畳まれて収納され、
図1,2に示すように、膨張完了状態における収納位置12側からの後方側への突出量を大小2種類とした大突出量モードMPと小突出量モードSPとして、展開膨張する。
【0030】
エアバッグ30は、膨張時、収納位置12から上下に分岐するように後方へ延びる上側膨張部38、及び、下側膨張部40、を備えるとともに、上側膨張部38と下側膨張部40との後端38b,40b相互を連結するように配設されて、後面43d側を乗員OPを受け止める拘束面44とする後側膨張部43、を備えて、上側膨張部38、下側膨張部40、及び、後側膨張部43に囲まれる中央に、左右方向に沿って貫通する中空部46、を配設させる構成としている。
【0031】
膨張完了時のエアバッグ30は、ウインドシールド3とインパネ2との間で展開膨張し、上側膨張部38の上面38c側を、フロントウインドシールド3に圧接させ、下側膨張部40の下面41の前部41a側を、インパネ2の上面2a側から下方に屈曲する後面2b側に、圧接可能に、配設されている。
【0032】
なお、エアバッグ30の後側膨張部43の中空部46側の左右両縁付近には、膨張初期の余剰の膨張用ガスGを排気するためのベントホール35が開口されている。
【0033】
そして、エアバッグ30は、周壁32が、膨張時の外周面側の外周壁33を構成する外側パネル55と、膨張時の内周面側の内周壁34を構成する内側パネル56と、の2枚から構成されている。また、上側膨張部38、下側膨張部40、及び、後側膨張部43は、それぞれ、厚さ寸法を規制するように、上内テザー60、下内テザー61、及び、後内テザー62、を内部に配設させている。各テザー60,61,62は、それぞれ、外側パネル55と内側パネル56とに連結されて、相互に連結される分割布60a,61a,62aから形成されている。各パネル55,56や各分割布60a,61a,62aは、ポリエステル等の織布から形成されている。
【0034】
また、外周壁33における下側膨張部40の前端40a側の下面には、エアバッグ30内に膨張用ガスGを流入させるために開口した流入用開口33aが配設され、流入用開口33aの周縁が、取付座として、ケース11に取り付けられ、そして、ケース11に取り付けられるインフレーター13のガス吐出口を設けた上部側が、流入用開口33aを経て、エアバッグ30内に挿入されている。
【0035】
さらに、エアバッグ30には、突出長さ調整手段20のストラップ27を貫通させる二つの挿通孔48,49を開口させている。挿通孔48は、上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位としての内周壁34に開口され、また、挿通孔49は、アクチュエータ21の係止ピン22近傍の上側膨張部38の前端38aの上面38c側に開口されている。なお、詳しくは、挿通孔48は、内側パネル56の端部56a,56b相互の縫合時に、未縫合部位を形成し、その未縫合部位から形成されている(
図5参照)。
【0036】
さらにまた、エアバッグ30は、上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位としての前端部36付近の内周面37側に、膨張用ガスGを排気可能な排気口50が配設されている。第1実施形態では、排気口50は、前端部36付近の内周面37側における下側膨張部40側の上面42に、略円形に開口されている。
【0037】
そして、この排気口50は、突出長さ調整手段20による突出長さを長く調整される場合に、突出長さを短く調整される場合より、上側膨張部38と下側膨張部40との相互の接近による周縁部材52の接近によって、排気量を抑制されるように、配設されている。具体的には、第1実施形態の場合、ストラップ27が、周縁部材52を構成しており、詳しくは、元部27b側から先端27a側に向かって幅広となる部位の閉塞部28が、周縁部材52を構成している。
【0038】
エアバッグ30を構成する部材は、
図5に示すように、周壁32の外周壁33を構成する外側パネル55、周壁32の内周壁34を構成する内側パネル56、各テザー60,61,62を形成する分割布60a,61a,62a、を備えて構成されている。外側パネル55と内側パネル56とには、エアバッグ30の前端部36側となる両端部55a,55b,56a,56b側に、補強布(図符号省略)が配設される。また、外側パネル55の流入用開口33aの部位にも補強布(図符号省略)が配設される。
【0039】
エアバッグ30の製造時には、ベントホール35や排気口50を設けた内側パネル56と外側パネル55との所定位置に、分割布60a,61a,62aと補強布とを縫合し、さらに、ストラップ27の先端27aを内側パネル56に縫合して、内側パネル56の端部56a,56b相互を縫合するとともに、内側パネル56と外側パネル55とに縫合した分割布60a,61a,62a相互を縫合して、テザー60,61,62を形成しつつ、内側パネル56と外側パネル55との幅方向の縁55c,56c相互と縁55d,56d相互とを縫合し、そして、外側パネル55の端部55a,55b相互を縫合すれば、テザー60,61,62を設けた周壁32、すなわち、エアバッグ30を製造できる。なお、先端27aを内側パネル56に縫合したストラップ27は、元部27b側を、内側パネル56の端部56a,56b相互を縫合する際の未縫合部位の挿通孔48に挿通させ、また、外側パネル55の端部55a,55b相互を縫合する際に、挿通孔49を挿通させて、エアバッグ30外に、引き出しておく。
【0040】
このように製造したエアバッグ30は、ケース11に収納可能に折り畳んで、流入用開口33aの周縁の取付座をケース11に取り付けるとともに、インフレーター13をケース11に取り付け、ストラップ27の元部27b側を、取付孔27e、挿通孔27d、及び、係止孔27cに係止ピン22を挿通させて、アクチュエータ21に連結させ、そして、ケース11を、インパネ2の下方の車両1の図示しない車体側部材に連結固定させれば、乗員保護装置10を車両1に搭載することができる。
【0041】
なお、乗員保護装置10の車両1への搭載時には、所定位置に配設される制御装置ECUから延びる作動信号入力用の図示しないリード線を、インフレーター13とアクチュエータ21とに結線させる。また、インパネ2の後面2b側には、乗員OPの着座位置を検出可能なカメラSOが配設され、制御装置ECUには、カメラSOからの乗員OPの位置検知信号と車両1の衝突信号とが入力されるように構成されることとなる。
【0042】
そして、第1実施形態の乗員保護装置10では、車両1への搭載後、車両1が衝突すると、車両1の衝突を検知した制御装置ECUは、乗員検知手段としてのカメラSOからの信号により、乗員OPが収納位置12から離れた位置に着座していると判定していれば、インフレーター13を作動させて、エアバッグ30を膨張させるとともに、エアバッグ30の突出長さLLを長くさせるように、突出長さ調整手段20のアクチュエータ21を作動させる。すると、突出長さ調整手段20のストラップ27が、収納位置12から長く繰り出されて、
図2,4に示すように、ストラップ27の閉塞部28が、排気口50を閉塞することから、排気口50からの膨張用ガスGの排気量が、抑制されて、エアバッグ30の内圧を高く維持できる。逆に、車両1の衝突を検知した制御装置ECUが、乗員検知手段としてのカメラSOからの信号により、乗員OPが収納位置12に接近した位置に着座していると判定すると、インフレーター13を作動させて、エアバッグ30を膨張させるとともに、エアバッグ30の突出長さLSを短くさせるように、突出長さ調整手段20のアクチュエータ21を作動させない。すると、突出長さ調整手段20のストラップ27は、収納位置12から長く繰り出されずに、閉塞部28に排気口50が閉塞されず、排気口50からの膨張用ガスGの排気量が、抑制されずに、エアバッグ30の内圧を低くすることができる(
図1,3参照)。
【0043】
すなわち、第1実施形態では、エアバッグ30が突出長さLLを長くして膨張する場合には、
図2に示すように、収納位置12から離れた大柄な乗員OPFを受け止める場合であり、その際、エアバッグ30の内圧は、高い状態を維持できて、好適に、膨張したエアバッグ30は、大柄乗員OPFを受け止めて保護できる。また、エアバッグ30が突出長さLSを短くして膨張する場合には、
図1に示すように、収納位置12に接近した小柄な乗員OPSを受け止める場合であり、その際、エアバッグ30の内圧は、排気量を多くして低い状態とすることができて、好適に、膨張したエアバッグ30は、小柄乗員OPSを受け止めて保護できる。そして、このような排気口50の排気量の調整は、排気口50が、上側膨張部38と下側膨張部40との相互の接近による周縁部材52としてのストラップ27の閉塞部28の接近によって、排気量を抑制されるように、エアバッグの上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位36付近の内周面37側に、配設されている。すなわち、エアバッグ30の膨張時の突出長さLLが長い場合には、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、狭くなって(
図2参照)、排気口50の周縁の周縁部材52、第1実施形態では、突出長さ調整手段20のストラップ27が、排気口50に接近する配置状態となることから、その排気口50からの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52の干渉を受けて、抑制され(
図4参照)、逆に、エアバッグ30の膨張時の突出長さLSが短い場合には、
図1,3に示すように、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、広くなって、排気口50の周縁の周縁部材52が排気口50に接近せずに離れる配置状態となることから、その排気口50からの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52の干渉を受けずに、円滑に行なわれ、別途、アクチュエータにより、排気口の開口面積を狭めたり広げたりする可変ベント機構を設けずに、単に、エアバッグ30の上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位36付近の内周面37側に、排気口50を開口させ、そして、その周縁に接近する周縁部材52を、排気口50の開口面積を狭めたり広げるように、利用すればよく、簡便に、排気口50からの排気量を調整可能となる。
【0044】
したがって、第1実施形態の乗員保護装置10では、膨張時のエアバッグ30の突出長さLL,LSの長短に応じて、簡便に、エアバッグ30の内圧を調整することが可能となる。
【0045】
また、第1実施形態の乗員保護装置10では、収納位置12が、車両1における着座した乗員OPの前方側におけるフロントウインドシールド3の下方のインパネ2の上面2a側として、エアバッグ30が、膨張時、上側膨張部38の上面38c側を、フロントウインドシールド3に、接触させ、下側膨張部40の前部側の下面41a側を、インパネ2の上面2a側から下方に屈曲する後面2b側に、接触可能に、配設されている。
【0046】
そのため、第1実施形態では、エアバッグ30の膨張時、上側膨張部38は、上面38c側をフロントウインドシールド3に接触(圧接)させて、支持され、下側膨張部40は、前部側の下面41a側をインパネ2の上面2a側から後面2b側にかけて支持されることから、突出長さLLを長くしても、あるいは、突出長さLSを短くしても、共に、上側膨張部38は上面38c側をフロントウインドシールド3に支持され、下側膨張部40は、少なくとも前部側の下面41a側をインパネ2に支持されることから、所定の反力を確保できて、上側膨張部38と下側膨張部40との後端38b,40b相互を連結して配設される後側膨張部43が、後面43dの拘束面44によって、乗員OPを安定して受け止めて保護できる。換言すれば、上側膨張部38が上面38cをフロントウインドシールド3に支持され、下側膨張部40が前部側下面41aをインパネ2の上面2aや後面2bに支持されることから、側方から見て略三角環状に膨張したエアバッグ30は、上側膨張部38と下側膨張部40とが、収納位置12から上下に分岐しても後方に延びるように膨張しても、広がりすぎることが無い。すなわち、膨張したエアバッグ30は、両者の間に中空部46を設けていても、後端38b,40b相互を連結した後側膨張部43の拘束面44により前進移動してくる乗員OPを受け止める際、上側膨張部38と下側膨張部40とが、各々の軸方向に沿って圧縮変形させるように、乗員OPを受け止めることができて、十分な反力を確保して、乗員OPを受け止めて保護することができる。なお、実施形態の場合、エアバッグ30が短い突出長さLSで膨張する際には、上側膨張部38は、長い突出長さLLの状態と同様に、上面38cをフロントウインドシールド3に圧接させた状態とし、下側膨張部40は、下面41をインパネ2の後面2bに長く接触させるようにしつつ下向きに傾斜させて、上側膨張部38との間の角度θを広くして、膨張している。
【0047】
そして、第1実施形態では、排気口50が、突出長さ調整手段20による突出長さLLを長く調整される場合に、周縁部材52(ストラップ27の閉塞部28)の接近によって、閉塞されるように、配設されている。
【0048】
そのため、第1実施形態では、エアバッグ30が突出長さLLを長くして膨張する場合に、排気口50が周縁部材52の閉塞部28によって閉塞されて、エアバッグ30が、高圧に維持されることから、収納位置12から離れて着座する大柄乗員OPFを、的確に、受け止めて保護できる。
【0049】
なお、第1実施形態では、排気口50が、エアバッグ30の交差部位36付近の下側膨張部40側の内周面37に開口されているが、
図6~10に示す第2実施形態の乗員保護装置10Aのエアバッグ30Aのように、排気口50Aを、上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位36付近の内周面37側で、上側膨張部38と下側膨張部40とに跨って開口させてもよい。さらに、
図11~14に示す第3実施形態の乗員保護装置10Bのエアバッグ30Bのように、排気口50Bを、上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位36付近の上側膨張部38側の内周面37に開口させてもよい。
【0050】
図6~10に示す第2実施形態の乗員保護装置10Aでは、エアバッグ30Aが突出長さLLを長くしている場合には、
図7,9に示すように、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、狭くなって、排気口50Aの周縁の周縁部材52A、第2実施形態では、排気口50Aの周縁の上側膨張部38の下面39や下側膨張部40の上面42における排気口50Aの周縁52AU,52ADが、排気口50に接近する配置状態となることから、その排気口50Aからの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52Aの干渉を受けて、抑制され(
図9参照)、逆に、エアバッグ30Aの膨張時の突出長さLSが短い場合には、
図6,8に示すように、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、広くなって、排気口50Aの周縁の周縁部材52Aが排気口50Aに接近せずに離れる配置状態となることから、その排気口50Aからの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52Aの干渉を受けずに、円滑に行なわれる。
【0051】
したがって、第2実施形態の乗員保護装置10Aでも、膨張時のエアバッグ30Aの突出長さLL,LSの長短に応じて、簡便に、エアバッグ30Aの内圧を調整することが可能となる。
【0052】
なお、この第2実施形態の乗員保護装置10Aの突出長さ調整手段20Aは、第1実施形態と同様なアクチュエータ21とストラップ27Aとを使用しているが、ストラップ27Aが、閉塞部28を備えていない構成としている。そして、第2実施形態でも、制御装置ECUが、乗員検知手段としてのカメラSOからの信号により、乗員OPが収納位置12から離れた位置に着座していると判定すると、インフレーター13を作動させて、エアバッグ30Aを膨張させるとともに、エアバッグ30Aの突出長さLLを長くさせるように、係止ピン21aをストラップ27Aの係止孔27cと挿通孔27dから引き抜くように、突出長さ調整手段20のアクチュエータ21を作動させる。すると、突出長さ調整手段20のストラップ27Aが、収納位置12から長く繰り出され(
図7,9参照)、そして、排気口50Aが周縁部材52Aに閉塞される。また、制御装置ECUが、乗員検知手段としてのカメラSOからの信号により、乗員OPが収納位置12に接近した位置に着座していると判定すると、インフレーター13を作動させて、エアバッグ30Aを膨張させるとともに、エアバッグ30Aの突出長さLSを短くさせるように、突出長さ調整手段20Aのアクチュエータ21を作動させない。そして、アクチュエータ21が作動されなければ、突出長さ調整手段20Aのストラップ27Aは、収納位置12から長く繰り出されずに(
図6,8参照)、排気口50Aが周縁部材52Aに閉塞されない。
【0053】
図11~14に示す第3実施形態の乗員保護装置10Bでは、エアバッグ30Bが突出長さLLを長くしている場合には、
図12,14に示すように、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、狭くなって、排気口50Bの周縁の周縁部材52B、第3実施形態では、排気口50Bの周縁の下側膨張部40の上面42が、排気口50Bに接近する配置状態となることから、その排気口50Bからの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52Bの干渉を受けて、抑制され(
図14参照)、逆に、エアバッグ30Bの膨張時の突出長さLSが短い場合には、
図11,13に示すように、上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、広くなって、排気口50Bの周縁の周縁部材52Bが排気口50Bに接近せずに離れる配置状態となることから、その排気口50Bからの膨張用ガスGの排気は、周縁部材52Bの干渉を受けずに、円滑に行なわれる。
【0054】
したがって、第3実施形態の乗員保護装置10Bでも、膨張時のエアバッグ30Bの突出長さLL,LSの長短に応じて、簡便に、エアバッグ30Aの内圧を調整することが可能となる。
【0055】
なお、この第3実施形態の乗員保護装置10Bの突出長さ調整手段20Bは、中空部46を跨いで、上側膨張部38と下側膨張部40とにそれぞれ連結されるとともに、先端65a,66a相互を連結材67を介して連結される上側材65及び下側材66からなる連結テザー64と、連結材67の元部67bを保持して収納位置12に配設され、作動時、連結材67の保持を解除するように作動するアクチュエータ21Bと、を備えて構成されている。連結材67は、
図13~15に示すように、先端67a側で、上側材65と下側材66との先端65a,66a相互を縫い合わせるように連結テザー64に結合されるとともに、先端65a,66a相互の結合部位から、上側材65と下側材66との先端65a,66a相互を離隔させるように、引き抜き可能に配設されている。連結材67は、元部67b側が、係止孔67cに、電磁ソレノイドからなるアクチュエータ21Cの係止ピン21aを挿通させて、係止ピン21aに係止されており、アクチュエータ21Cが作動されると、係止ピン21aが係止孔67cから引き抜かれて、元部67b側は自由端となる。
【0056】
この突出長さ調整手段20Bを備えた乗員保護装置10Bでは、収納位置12から離れて着座した大柄乗員OPFに対して、突出長さLLを長くしてエアバッグ30Bを膨張させる際には、カメラSOからの信号を入力した制御装置ECUがアクチュエータ21Cを作動させて、連結材67の元部67bを自由端とすることから、連結テザー64から連結材67の先端67aが抜けず、連結テザー64が上側膨張部38と下側膨張部40との離隔を規制することとなり、上側膨張部38と下側膨張部40との角度θが狭くなって、エアバッグ30Bは突出長さLLを長くして膨張する。そして、エアバッグ30Bは、後側膨張部43の後面43dの拘束面44で乗員OPFを受け止めても、上側膨張部38と下側膨張部40とが離隔し難く、排気口50Bからの排気量も抑制されることも相俟って、十分な反力を確保して、エアバッグ30Bは、収納位置12から離れて着座した大柄乗員OPFを受け止めて保護できる。逆に、収納位置12に接近して着座した小柄乗員OPSに対しては、制御装置ECUによってアクチュエータ21Bが作動されないことから、係止ピン22に連結材67の元部67b側が係止されて、連結材67の先端67aが上側材65と下側材66との先端65a,66a相互の結合部位から外れて、連結テザー64が上側材65と下側材66とに分離され、上側膨張部38と下側膨張部40とが離隔して、突出長さLSを短くして、エアバッグ30Bが膨張する。そして、膨張したエアバッグ30Bは、後側膨張部43の後面43dの拘束面44で乗員OPSを受け止める際、上側膨張部38と下側膨張部40とが離隔され、さらに、排気口50Bからの排気も抑制されずに、エアバッグ30Bの内圧が低下可能となることから、反力の上昇を抑えて、エアバッグ30は、収納位置12に接近した小柄乗OPS員を受け止めて保護できる。
【0057】
なお、第1実施形態の乗員保護装置10では、突出長さ調整手段20が、収納位置12から延びるストラップ27と、ストラップ27における収納位置12から先端27aまでの距離を調整可能なアクチュエータ21と、を備えて構成されて、ストラップ27が、収納位置12から延びる先端27aを、中空部46を経て、後側膨張部43自体に結合させている。そして、アクチュエータ21が、非作動時、ストラップ27の元部27b側の保持状態を維持して、ストラップ27の収納位置12から先端27aまでの距離を短くし、作動時、ストラップ27の元部27b側を繰り出して、ストラップ27の収納位置12から先端27aまでの実質的な距離を長くするように、調整する構成としている。
【0058】
この第1実施形態では、膨張完了時のエアバッグ30の後側膨張部43が、収納位置12から延びるストラップ27の先端27a側と連結されており、アクチュエータ21の動作により、すなわち、係止ピン21aをストラップ27の係止孔27cや挿通孔27dから引き抜いて、ストラップ27の先端27a側を係止ピン21aに係止された取付孔27eからの長さ寸法SLを長くするように、ストラップ27の収納位置12から先端27aまでの長さを長く調整したり、あるいは、係止孔27cから係止ピン21aを引き抜かず、ストラップ27の先端27a側を係止ピン21aに係止された係止孔27cからの短い長さ寸法SSとするように調整して、ストラップ27の先端27a側の連結される後側膨張部43の前後位置が調整され、エアバッグ30の突出長さを、ストラップの長さ調整によって、直接的に調整できる。
【0059】
なお、上記の作用は、ストラップ27Aの先端27a側をエアバッグ30Aの後側膨張部43に、直接、連結させている第2実施形態も同様である。
【0060】
また、ストラップの長さを調整する構成として、
図16,17に示す第4実施形態の乗員保護装置10Cの突出長さ調整手段20Cのように構成してもよい。
【0061】
この突出長さ調整手段20Cは、制御装置ECUに作動を制御されるアクチュエータ21Cとしてのステップモータ71と、モータ71の駆動軸72に設けられたウォームギヤ73と、ウォームギヤ73に噛合するピニオンギヤ74と、ピニオンギヤ74と巻き付けローラ76とを固着させて、回動可能に支持される従動軸75と、支持ローラ77と、を備えて構成されている。ストラップ27Cは、元部27b側が、巻き付けローラ76に巻き付けられており、巻き付けローラ76から支持ローラ77を経て延び、挿通孔48,49及び中空部46を経て延びた先端27a側を、エアバッグ30Cの後側膨張部43の前面43c側(詳しくは、後内テザー62の配置領域の前面43c側)に連結させている。ステップモータ71は、駆動軸72の回転角度を検出可能なセンサを内蔵させており、制御装置ECUからの信号により、駆動軸72の回転角度が制御されて、巻き付けローラ76から支持ローラ77側に繰り出されるストラップ27Cの長さ寸法が調整される。
【0062】
そして、乗員検知手段としてのカメラSOからの乗員OPの着座位置の信号に基づき、制御装置ECUは、ステップモータ71の回転角度を調整して、ストラップ27Cの長さ寸法を、長い長さ寸法LLから短い長さ寸法LSまで、適宜、三段階、あるいは、収納位置12からの着座位置の距離に細かく対応させて、ストラップ27Cの長さ寸法の調整によって、エアバッグ30Cの突出長さを調整する。
【0063】
なお、排気口50Cは、第2実施形態の排気口50Aと同様に、上側膨張部38と下側膨張部40との交差部位36付近の内周面37側において、上側膨張部38の下面39と下側膨張部40の上面42とに跨って開口されている。
【0064】
この場合、ストラップ27Cの繰り出される長さ寸法に応じて、エアバッグ30Cの膨張時における上側膨張部38と下側膨張部40との間の角度θが、適宜調整されることから、排気口50Cが、周縁部材52A(U,D)によって、全閉から全開状態の間の半開状態も可能となり、排気口50Cからの膨張用ガスGの排気量も、適宜、調整可能となる。
【0065】
このような突出長さ調整手段20Cは、第1,2実施形態の乗員保護装置10,10Aに使用してもよい。
【0066】
また、各実施形態では、突出長さ調整手段20,20A,20B,20Cのアクチ21,21B,21C等を、ケース11の前面側に配置させたが、エアバッグ30,30A,30B、30Cの突出長さを調整できれば、各アクチュエータ21,21B,21C等を、ストラップ27,27A,27Cの元部27b側や挿通孔48,49を対応させて、ケース11の後面側に配置させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、2…(インストルメントパネル)インパネ、2a…上面、2b…後面、3…ウインドシールド、4…シート、10,10A,10B,10C…乗員保護装置、12…収納位置、20,20A,20B,20C…突出長さ調整手段、21,21B,21C…アクチュエータ、27,27A,27C…ストラップ、27a…先端、27b…元部、28…閉塞部、30,30A,30B,30C…エアバッグ、36…(前交差部位)前端部、37…内周面、38…上側膨張部、38b…後端、40…下側膨張部、40b…後端、43…後側膨張部、44…拘束面、46…中空部、50,50A,50B,50C…排気口、52,52A(U,D),52B…周縁部材、64…連結テザー、65…上側材、65a…先端、66…下側材、66a…先端、67…連結材、67a…先端、67b…元部、LL…(エアバッグの長い)突出長さ、LS…(エアバッグの短い)突出長さ、G…膨張用ガス、OP…乗員。