(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230719BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230719BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230719BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230719BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230719BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/06 301D
H01L29/44 Y
H01L21/28 301B
(21)【出願番号】P 2020513131
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2019010663
(87)【国際公開番号】W WO2019198416
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018077461
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 健良
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022851(JP,A)
【文献】特開2015-076592(JP,A)
【文献】特開2017-152732(JP,A)
【文献】特開2013-051434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/41
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子が形成される素子領域を含む第1導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状の第2導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層内に前記第2の半導体層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記第2の半導体層との間で前記第1の半導体層の一部を挟む第2導電型の第3の半導体層と、
前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層を互いに電気的に接続する第2導電型の第4の半導体層と、
平面視で前記第2の半導体層の内側で前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
を有し、
前記第2の半導体層からみて前記第3の半導体層が位置する方向を下方としたとき、前記第4の半導体層の下に形成された第2導電型の第5の半導体層を有し、
平面視で、前記第5の半導体層の外縁は、前記第4の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、
前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第1の半導体層に含まれる第1導電型の不純物の実効濃度より高く、
前記第3の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度よりも高い半導体装置。
【請求項2】
前記第2の半導体層は、
前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の環状層と、
前記第1の環状層から離間して形成され、平面視で前記第1の環状層を包囲する第2の環状層と、
を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視で、前記第3の半導体層の外縁は、前記第2の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置する請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の半導体層を覆う絶縁膜を有し、
前記第1の電極は、前記絶縁膜の上から前記第2の半導体層の一部を覆うフィールドプレート部を含む請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の半導体層からみて前記第3の半導体層が位置する方向を下方としたとき、
前記第2の半導体層は、
前記フィールドプレート部の端部の下方に位置し、第1の実効濃度で第2導電型の不純物を含有する第1の領域と、
前記第1の領域より当該第2の半導体層の端部側に位置し、前記第1の実効濃度より低い第2の実効濃度で第2導電型の不純物を含有する第2の領域と、
を有する請求項
4に記載の半導体装置。
【請求項6】
複数の半導体素子が形成される素子領域を含む第1導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状の第2導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層内に前記第2の半導体層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記第2の半導体層との間で前記第1の半導体層の一部を挟む第2導電型の第3の半導体層と、
前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層を互いに電気的に接続する第2導電型の第4の半導体層と、
平面視で前記第2の半導体層の内側で前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
前記第1の半導体層内に形成され、前記第1の半導体層とスーパージャンクション構造を構成する複数の第2導電型の柱状半導体層と、
を有し、
前記第2の半導体層からみて前記第3の半導体層が位置する方向を下方としたとき、前記第4の半導体層の下に形成された第2導電型の第5の半導体層を有し、
平面視で、前記第5の半導体層の外縁は、前記第4の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、
平面視で、前記第3の半導体層の外縁は、前記第2の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、
前記複数の柱状半導体層の少なくとも一部は前記第3の半導体層に電気的に接続され、
前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第1の半導体層に含まれる第1導電型の不純物の実効濃度より高く、
前記第3の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度よりも高い半導体装置。
【請求項7】
前記複数の柱状半導体層の一部は、平面視で前記第3の半導体層の外縁の外側に位置し、前記第3の半導体層から電気的に独立している請求項
6に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有するSiC基板と、
前記第2の主面上に形成された第2の電極と、
を有し、
前記第1の主面上に前記第1の半導体層が形成されている請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
複数の半導体素子が形成される素子領域を含むn型のドリフト層と、
前記ドリフト層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状のp型の接合終端拡張層と、
前記ドリフト層の前記第1の面を含むように前記接合終端拡張層から離間して形成され、平面視で前記接合終端拡張層を包囲するp型のガードリング層と、
前記ドリフト層内に前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層との間で前記ドリフト層の一部を挟むp型の埋め込み接合終端拡張層と、
前記接合終端拡張層及び前記埋め込み接合終端拡張層を互いに電気的に接続するp型のコンタクト層と、
平面視で前記接合終端拡張層の内側で前記コンタクト層に電気的に接続された第1の電極と、
第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有するSiC基板と、
前記第2の主面上に形成された第2の電極と、
を有し、
前記第1の主面上に前記ドリフト層が形成され、
前記接合終端拡張層からみて前記埋め込み接合終端拡張層が位置する方向を下方としたとき、前記コンタクト層の下に形成された第2導電型のシールド領域を有し、
平面視で、前記シールド領域の外縁は、前記コンタクト層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、
平面視で、前記埋め込み接合終端拡張層の外縁は、前記ガードリング層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、
前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度は、前記ドリフト層に含まれるドナー不純物の実効濃度より高く、
前記埋め込み接合終端拡張層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度は、前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度よりも高い半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【0002】
本出願は、2018年4月13日出願の日本出願第2018-077461号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
PN接合ダイオード、ショットキーバリアダイオード、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(insulated gate bipolar transistor)等の高耐圧用途に適した半導体装置には終端構造が用いられることがある。終端構造として、リサーフ(reduced surface field:RESURF)構造及びガードリング構造等が知られている(例えば、特許文献1)。適切な終端構造を用いることで終端部における電界集中を緩和し、耐圧の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本実施形態の一観点によれば、半導体装置は、複数の半導体素子が形成される素子領域を含む第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状の第2導電型の第2の半導体層と、前記第1の半導体層内に前記第2の半導体層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記第2の半導体層との間で前記第1の半導体層の一部を挟む第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層を互いに電気的に接続する第2導電型の第4の半導体層と、平面視で前記第2の半導体層の内側で前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の電極と、を有する。前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第1の半導体層に含まれる第1導電型の不純物の実効濃度より高く、前記第3の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる層のレイアウトを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる素子領域の構成を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図3C】
図3Cは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図3D】
図3Dは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図3E】
図3Eは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図3F】
図3Fは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図3G】
図3Gは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図3H】
図3Hは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図3I】
図3Iは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図3J】
図3Jは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図3K】
図3Kは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図3L】
図3Lは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図3M】
図3Mは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図3N】
図3Nは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図3O】
図3Oは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その15)である。
【
図3P】
図3Pは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その16)である。
【
図3Q】
図3Qは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その17)である。
【
図3R】
図3Rは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その18)である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる層のレイアウトを示す図である。
【
図6A】
図6Aは、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる素子領域の構成を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図7B】
図7Bは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図7C】
図7Cは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図7D】
図7Dは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7E】
図7Eは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図7F】
図7Fは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の変形例に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
電流経路の低抵抗化のために不純物濃度が高い半導体層を用いると、終端構造における空乏化が阻害されやすくなる。つまり、従来、電流経路の低抵抗化と終端構造による耐圧の向上とがトレードオフの関係にあり、これらを両立することが困難である。
【0008】
そこで、本開示は、電流経路の低抵抗化及び終端構造による耐圧の向上を両立することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
本開示によれば、電流経路の低抵抗化及び終端構造による耐圧の向上を両立することができる。
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、複数の半導体素子が形成される素子領域を含む第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状の第2導電型の第2の半導体層と、前記第1の半導体層内に前記第2の半導体層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記第2の半導体層との間で前記第1の半導体層の一部を挟む第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層を互いに電気的に接続する第2導電型の第4の半導体層と、平面視で前記第2の半導体層の内側で前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の電極と、を有し、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第1の半導体層に含まれる第1導電型の不純物の実効濃度より高く、前記第3の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度よりも高い。
【0013】
第1の半導体層の不純物濃度が高い場合、素子領域における抵抗を低減することができるが、第1の電極と第2の電極との間に逆バイアスが印加されると、第3の半導体層が含まれていないときには、第2の半導体層の端部に電界が集中することがある。これに対し、第3の半導体層が含まれていれば、逆バイアスが印加されても、第1の半導体層の第2の半導体層及び第3の半導体層に挟まれた部分において、第2の半導体層との界面及び第3の半導体層との界面に空乏層が生じ、第1の半導体層の空乏化が促進される。従って、第1の半導体層の不純物濃度が高い場合であっても、第2の半導体層の端部における電界集中を抑制し、優れた耐圧を得ることができる。
【0014】
〔2〕 前記第2の半導体層は、前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の環状層と、前記第1の環状層から離間して形成され、平面視で前記第1の環状層を包囲する第2の環状層と、を有する。第2の半導体層の不純物濃度が高い場合でも、キャリアの流れ込みによるリーク電流を抑制することができる。
【0015】
〔3〕 平面視で、前記第3の半導体層の外縁は、前記第2の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置する。第2の半導体層により第3の半導体層の端部における電界集中を抑制することができ、耐圧が向上する。
【0016】
〔4〕 前記第2の半導体層からみて前記第3の半導体層が位置する方向を下方としたとき、前記第4の半導体層の下に形成された第2導電型の第5の半導体層を有し、平面視で、前記第5の半導体層の外縁は、前記第4の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置する。第1の半導体層側に空乏層が広がりやすくなり、第5の半導体層の端部における電界集中を抑制することができ、耐圧が向上する。
【0017】
〔5〕 前記第1の半導体層を覆う絶縁膜を有し、前記第1の電極は、前記絶縁膜の上から前記第2の半導体層の一部を覆うフィールドプレート部を含む。フィールドプレート部により第2の半導体層の端部における電界集中を抑制することができ、耐圧が向上する。
【0018】
〔6〕 前記第2の半導体層からみて前記第3の半導体層が位置する方向を下方としたとき、前記第2の半導体層は、前記フィールドプレート部の端部の下方に位置し、第1の実効濃度で第2導電型の不純物を含有する第1の領域と、前記第1の領域より当該第2の半導体層の端部側に位置し、前記第1の実効濃度より低い第2の実効濃度で第2導電型の不純物を含有する第2の領域と、を有する。逆バイアス印加時において第1の領域の空乏化を抑制し、フィールドプレート部の端部に接する絶縁膜への電界集中を抑制することができる。
【0019】
〔7〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、複数の半導体素子が形成される素子領域を含む第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状の第2導電型の第2の半導体層と、前記第1の半導体層内に前記第2の半導体層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記第2の半導体層との間で前記第1の半導体層の一部を挟む第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層を互いに電気的に接続する第2導電型の第4の半導体層と、平面視で前記第2の半導体層の内側で前記第4の半導体層に電気的に接続された第1の電極と、前記第1の半導体層内に形成され、前記第1の半導体層とスーパージャンクション構造を構成する複数の第2導電型の柱状半導体層と、を有し、平面視で、前記第3の半導体層の外縁は、前記第2の半導体層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、前記複数の柱状半導体層の少なくとも一部は前記第3の半導体層に電気的に接続され、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第1の半導体層に含まれる第1導電型の不純物の実効濃度より高く、前記第3の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度は、前記第2の半導体層に含まれる第2導電型の不純物の実効濃度よりも高い。スーパージャンクション構造を備えているため、電流経路の抵抗をより低減することができる。
【0020】
〔8〕 前記複数の柱状半導体層の一部は、平面視で前記第3の半導体層の外縁の外側に位置し、前記第3の半導体層から電気的に独立している。第3の半導体層の端部での電界集中を抑制することができ、耐圧が向上する。
【0021】
〔9〕 第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有するSiC基板と、前記第2の主面上に形成された第2の電極と、を有し、前記第1の主面上に前記第1の半導体層が形成されている。いわゆる縦型半導体装置として動作させることができる。
【0022】
〔10〕 本開示の更に他の一態様に係る半導体装置は、複数の半導体素子が形成される素子領域を含むn型のドリフト層と、前記ドリフト層の第1の面を含むように形成され、平面視で前記素子領域を包囲する環状のp型の接合終端拡張層と、前記ドリフト層の前記第1の面を含むように前記接合終端拡張層から離間して形成され、平面視で前記接合終端拡張層を包囲するp型のガードリング層と、前記ドリフト層内に前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層よりも前記第1の面から離れて形成され、前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層との間で前記ドリフト層の一部を挟むp型の埋め込み接合終端拡張層と、前記接合終端拡張層及び前記埋め込み接合終端拡張層を互いに電気的に接続するp型のコンタクト層と、平面視で前記接合終端拡張層の内側で前記コンタクト層に電気的に接続された第1の電極と、第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有するSiC基板と、前記第2の主面上に形成された第2の電極と、を有し、前記第1の主面上に前記ドリフト層が形成され、平面視で、前記埋め込み接合終端拡張層の外縁は、前記ガードリング層の外縁よりも前記素子領域側に位置し、前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度は、前記ドリフト層に含まれるドナー不純物の実効濃度より高く、前記埋め込み接合終端拡張層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度は、前記接合終端拡張層及び前記ガードリング層に含まれるアクセプタ不純物の実効濃度よりも高い。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0024】
〔第1の実施形態〕
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、複数のトレンチSiC-MOSFETを備えた、耐圧が1.2kV程度の半導体装置に関する。
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる層のレイアウトを示す図である。
図2Aは、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる素子領域の構成を示す断面図である。
図2Bは、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
図2Bは、
図1中のI-I線に沿った断面図に相当する。なお、図の縮尺は、各部を認識しやすいように適宜調整してあり、特に素子領域と終端領域との間で横方向の縮尺は統一されたものではない。また、層等の端部とは、特に限定しない限り、当該層等の素子領域から離間する側の端部をいう。
【0025】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、SiC基板101の上方にソースパッド電極129を有し、下方にドレイン用のオーミック電極128を有しており、いわゆる縦型半導体装置である。そして、半導体装置100は、オーミック電極128とソースパッド電極129との間に印加された電圧により電流が流れる複数の半導体素子を備えた素子領域191と、その周囲に設けられた終端領域192とを有する。
【0026】
図1、
図2A及び
図2Bに示すように、SiC基板101上にn
-ドリフト層102が形成されている。n
-ドリフト層102は、例えば厚さが7μm~15μmのSiC層であり、ドナー不純物として窒素(N)を含有し、その実効ドナー濃度は3×10
15cm
-3~2×10
16cm
-3である。
【0027】
図2Aに示すように、素子領域191内では、半導体素子ごとに、n
-ドリフト層102の表面にn型の電流拡散層(current spreading layer:CSL)105が形成され、その内側にはp型のシールド領域103が、外側にはp型のシールド領域104が設けられている。電流拡散層105はドナー不純物としてリン(P)を含有し、その実効ドナー濃度は1×10
16cm
-3~1×10
18cm
-3である。シールド領域103及び104はアクセプタ不純物としてアルミニウム(Al)を含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。
【0028】
本開示において、実効ドナー濃度とは、ドナーとなる元素の不純物濃度とアクセプタとなる元素の不純物濃度の差分であり、実効アクセプタ濃度とは、アクセプタとなる元素の不純物濃度とドナーとなる元素の不純物濃度の差分である。実効ドナー濃度及び実効アクセプタ濃度は、例えば以下の手順1~手順4で測定することができる。
【0029】
(手順1) 半導体装置の表面を観察することにより素子領域を特定する。
【0030】
(手順2)
図2Aに示す半導領域の断面が現れるように半導体装置を加工する。例えば、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置を用いて半導体装置の断面加工を行う。
【0031】
(手順3) 走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、不純物が注入された領域の導電型がp型かn型かの判定を行う。例えば加速電圧が3kV、倍率が10000倍の条件でSEM観察を行った場合、明るい領域がp型領域であり、暗い領域がn型領域である。
【0032】
(手順4)上記の断面におけるp型領域及びn型領域について走査型拡がり抵抗顕微鏡(Scanning Spreading Resistance Microscopy:SSRM)を用いて不純物濃度を測定する。p型領域の濃度が実効アクセプタ濃度であり、n型領域の濃度が実効ドナー濃度である。
【0033】
図2Bに示すように、シールド領域104は終端領域192まで延びるように形成されている。終端領域192において、n
-ドリフト層102の表面に、シールド領域104と電気的に接続されるようにp型の埋め込み接合終端拡張(junction termination extension:JTE)層151が形成されている。埋め込みJTE層151はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。埋め込みJTE層151は第3の半導体層の一例であり、シールド領域104は第5の半導体層の一例である。
【0034】
図2A及び
図2Bに示すように、素子領域191及び終端領域192において、n
-ドリフト層102上にn
+ドリフト層111が形成されている。n
+ドリフト層111は、例えば厚さが1μm~3μmのSiC層であり、ドナー不純物としてNを含有し、その実効ドナー濃度は1×10
16cm
-3~1×10
17cm
-3である。n
-ドリフト層102及びn
+ドリフト層111がn型の第1の半導体層110に含まれる。
【0035】
図2Aに示すように、素子領域191において、n
+ドリフト層111の表面、すなわち第1の半導体層110の第1の面110Aにp型のボディ層112が形成され、ボディ層112の表面にn
+ソースコンタクト層113が形成されている。また、半導体素子ごとに、シールド領域104上において、n
+ドリフト層111、ボディ層112及びn
+ソースコンタクト層113にp
+ソースコンタクト層114が形成されている。ボディ層112はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。n
+ソースコンタクト層113はドナー不純物としてPを含有し、その実効ドナー濃度は1×10
18cm
-3~1×10
19cm
-3である。p
+ソースコンタクト層114はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
19cm
-3~5×10
20cm
-3である。
【0036】
図2Bに示すように、p
+ソースコンタクト層114は終端領域192まで延びるように形成されている。p
+ソースコンタクト層114の端部はシールド領域104の端部より外側に位置する。終端領域192において、n
+ドリフト層111の表面に、p
+ソースコンタクト層114と電気的に接続されるようにp型の接合終端拡張(JTE)層152が形成され、更に、JTE層152の周囲にp型のガードリング層153が形成されている。ガードリング層153の端部は埋め込みJTE層151の端部より外側に位置する。JTE層152はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。ガードリング層153はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。JTE層152とガードリング層153との間で実効アクセプタ濃度が一致していても、相違していてもよいが、相違している場合は、ガードリング層153の実効アクセプタ濃度がJTE層152の実効アクセプタ濃度より低いことが好ましい。低い電圧でも空乏化が促進されるからである。JTE層152及びガードリング層153がp型の第2の半導体層155に含まれる。p
+ソースコンタクト層114は第4の半導体層の一例であり、JTE層152は第1の環状層の一例であり、ガードリング層153は第2の環状層の一例である。
【0037】
図2Aに示すように、素子領域191において、n
+ソースコンタクト層113、ボディ層112及びn
+ドリフト層111にゲート用のトレンチ121が形成されている。そして、n
+ドリフト層111の上面並びにトレンチ121の側面及び底面上にゲート絶縁膜122が形成され、トレンチ121内でゲート絶縁膜122上にゲート電極123が形成されている。例えば、ゲート絶縁膜122はシリコン酸化物を含み、ゲート電極123は不純物を含む多結晶シリコン(ポリシリコン)等の導電材料からなる。
【0038】
図2A及び
図2Bに示すように、素子領域191及び終端領域192において、ゲート絶縁膜122及びゲート電極123上に層間絶縁膜124が形成され、n
+ソースコンタクト層113及びp
+ソースコンタクト層114を露出させる開口部125が層間絶縁膜124に形成されている。開口部125は終端領域192まで延びるように形成されている。ゲート電極123を露出する不図示の開口部も層間絶縁膜124に形成されている。例えば、層間絶縁膜124はシリコン酸化物を含む。
【0039】
層間絶縁膜124の上面及び側面を覆うバリアメタル膜126が形成されている。n+ソースコンタクト層113及びp+ソースコンタクト層114の開口部125から露出している部分上にオーミック電極127が形成され、SiC基板101の裏面上にドレイン用のオーミック電極128が形成されている。つまり、第1の半導体層110の第1の面110Aとは反対側の第2の面110Bの下方にオーミック電極128が形成されている。バリアメタル膜126及びオーミック電極127上にソースパッド電極129が形成され、ソースパッド電極129を覆うように層間絶縁膜124上にパッシベーション膜130が形成されている。例えば、バリアメタル膜126はチタン窒化物からなり、オーミック電極128はニッケルからなり、ソースパッド電極129はアルミニウムからなり、パッシベーション膜130はシリコン窒化物又はポリイミドを含む。
【0040】
このように、第1の実施形態に係る半導体装置100においては、n型の第1の半導体層110の第1の面110Aに、平面視で素子領域191を包囲する環状のp型の第2の半導体層155が形成されている。第1の半導体層110がn-ドリフト層102及びn+ドリフト層111を含み、第2の半導体層155がJTE層152及びガードリング層153を含む。また、n-ドリフト層102の表面にp型の埋め込みJTE層151が形成されている。そして、p+ソースコンタクト層114によりp型の埋め込みJTE層151とJTE層152とが互いに電気的に接続されている。p+ソースコンタクト層114はn+ドリフト層111に形成されており、n+ドリフト層111が第2の半導体層155(JTE層152及びガードリング層153)と埋め込みJTE層151との間で深さ方向に挟まれている。
【0041】
また、不純物濃度に着目すると、n+ドリフト層111の実効ドナー濃度がn-ドリフト層102の実効ドナー濃度よりも高く、n+ドリフト層111及びn-ドリフト層102の実効ドナー濃度はいずれもp+ソースコンタクト層114の実効アクセプタ濃度より低い。JTE層152及びガードリング層153の実効アクセプタ濃度はいずれも埋め込みJTE層151の実効アクセプタ濃度より低く、埋め込みJTE層151の実効アクセプタ濃度はp+ソースコンタクト層114の実効アクセプタ濃度より低い。
【0042】
このように構成された半導体装置100では、ソースパッド電極129とオーミック電極128との間に逆バイアスが印加された時に、JTE層152及びガードリング層153だけでなく、埋め込みJTE層151によってもn+ドリフト層111の空乏化が促される。このため、JTE層152及びガードリング層153の端部における電界集中を抑制し、耐圧を向上することができる。
【0043】
また、埋め込みJTE層151の端部がガードリング層153の端部の内側にあり、平面視で、埋め込みJTE層151の外縁は、第2の半導体層155の外縁よりも素子領域191側に位置する。このため、埋め込みJTE層151の端部における電界集中も抑制することができる。
【0044】
更に、第2の半導体層155が単一の層から構成されるのではなく、p+ソースコンタクト層114に電気的に接続された環状のJTE層152と、JTE層152から離間して形成され、平面視でJTE層152を包囲する環状のガードリング層153と、を有する。このため、第2の半導体層155の不純物濃度が高い場合でも、キャリアの流れ込みによるリーク電流を抑制することができる。
【0045】
また、p+ソースコンタクト層114の下のシールド領域104の端部がp+ソースコンタクト層114の端部より内側にあり、平面視で、シールド領域104の外縁はp+ソースコンタクト層114の外縁よりも素子領域191側に位置する。このため、空乏層が第1の半導体層110側に広がりやすく、シールド領域104の端部の電界集中を緩和することができる。また、埋め込みJTE層151が、p+ソースコンタクト層114の端部及びシールド領域104の端部に対してフィールドプレートとして機能する。このため、埋め込みJTE層151によってp+ソースコンタクト層114の端部及びシールド領域104の端部の電界集中を緩和することもできる。
【0046】
更に、ソースパッド電極129の一部が層間絶縁膜124上でJTE層152の一部を覆っており、この部分がフィールドプレート部129Aとして機能する。このため、ソースパッド電極129によってp+ソースコンタクト層114の端部及びシールド領域104の端部の電界集中を緩和することもできる。
【0047】
例えば、埋め込みJTE層151のシールド領域104との界面からガードリング層153の端部までの距離W11は、第1の半導体層110の厚さの4倍~5倍程度である。距離W11が大きすぎると、耐圧向上の効果が飽和する一方で、半導体装置100の全体に対する素子領域191の割合が小さくなりすぎ、電流経路の抵抗が大きくなることがある。距離W11が小さすぎると、優れた耐圧が得られないことがある。また、例えば、埋め込みJTE層151のシールド領域104との界面から埋め込みJTE層151の端部までの距離W12は距離W11の2/3程度であり、埋め込みJTE層151のシールド領域104との界面からガードリング層153の素子領域191側の縁までの距離W13は距離W11の1/3程度である。
【0048】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。
図3A~
図3Rは、第1の実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
【0049】
先ず、
図3Aに示すように、SiC基板101を準備する。次いで、
図3Bに示すように、SiC基板101上にn
-ドリフト層102を形成する。例えば、n
-ドリフト層102はNを添加したエピタキシャル成長により形成することができる。
【0050】
その後、
図3Cに示すように、素子領域191において、n
-ドリフト層102の表面にp型のシールド領域103及び104並びにn型の電流拡散層105を形成する。シールド領域104は終端領域192まで延びるように形成する。例えば、シールド領域103及び104はAlのイオン注入により形成することができ、電流拡散層105はPのイオン注入により形成することができる。
【0051】
続いて、
図3Dに示すように、終端領域192において、n
-ドリフト層102の表面にp型の埋め込みJTE層151を形成する。例えば、埋め込みJTE層151はAlのイオン注入により形成することができる。埋め込みJTE層151は、シールド領域104と電気的に接触するように形成する。
【0052】
次いで、
図3Eに示すように、素子領域191及び終端領域192において、n
-ドリフト層102上にn
+ドリフト層111を形成する。例えば、n
+ドリフト層111はNを添加したエピタキシャル成長により形成することができる。
【0053】
その後、
図3Fに示すように、素子領域191において、n
+ドリフト層111の表面にp型のボディ層112を形成する。例えば、ボディ層112はAlのイオン注入により形成することができる。
【0054】
続いて、
図3Gに示すように、素子領域191において、ボディ層112の表面にn
+ソースコンタクト層113を形成する。例えば、n
+ソースコンタクト層113はPのイオン注入により形成することができる。
【0055】
次いで、
図3Hに示すように、素子領域191において、n
+ソースコンタクト層113、ボディ層112及びn
+ドリフト層111にp
+ソースコンタクト層114を形成する。p
+ソースコンタクト層114は終端領域192まで延びるように形成する。例えば、p
+ソースコンタクト層114はAlのイオン注入により形成することができる。
【0056】
その後、
図3Iに示すように、終端領域192において、n
+ドリフト層111の表面、すなわち第1の半導体層110の第1の面110Aに、p型のJTE層152及びp型のガードリング層153を含む第2の半導体層155を形成する。JTE層152は、p
+ソースコンタクト層114と電気的に接触するように形成する。例えば、JTE層152及びガードリング層153はAlのイオン注入により形成することができる。
【0057】
続いて、
図3Jに示すように、素子領域191において、n
+ソースコンタクト層113、ボディ層112及びn
+ドリフト層111にゲート用のトレンチ121を形成する。例えば、トレンチ121は反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)により形成することができる。
【0058】
次いで、
図3Kに示すように、素子領域191及び終端領域192において、n
+ドリフト層111の上面並びにトレンチ121の側面及び底面上にゲート絶縁膜122を形成する。
【0059】
その後、
図3Lに示すように、素子領域191において、トレンチ121内でゲート絶縁膜122上にゲート電極123を形成する。
【0060】
続いて、
図3Mに示すように、素子領域191及び終端領域192において、ゲート絶縁膜122及びゲート電極123上に層間絶縁膜124を形成する。
【0061】
次いで、
図3Nに示すように、素子領域191において、n
+ソースコンタクト層113及びp
+ソースコンタクト層114を露出させる開口部125を層間絶縁膜124に形成する。開口部125は終端領域192まで延びるように形成する。
図3Nに図示しないが、ゲート電極123を露出する開口部も層間絶縁膜124に形成する。
【0062】
その後、
図3Oに示すように、素子領域191及び終端領域192において、層間絶縁膜124の上面及び側面を覆うバリアメタル膜126を形成する。バリアメタル膜126は、少なくともソースパッド電極129を形成する予定の領域に形成する。
【0063】
続いて、
図3Pに示すように、n
+ソースコンタクト層113及びp
+ソースコンタクト層114の開口部125から露出している部分上にオーミック電極127を形成する。また、SiC基板101の裏面上にドレイン用のオーミック電極128を形成する。つまり、第1の半導体層110の第1の面110Aとは反対側の第2の面110Bの下方にオーミック電極128を形成する。
【0064】
次いで、
図3Qに示すように、バリアメタル膜126及びオーミック電極127上にソースパッド電極129を形成する。
【0065】
その後、
図3Rに示すように、ソースパッド電極129を覆うように層間絶縁膜124上にパッシベーション膜130を形成する。
【0066】
このようにして、第1の実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0067】
〔第1の実施形態の変形例〕
図4に示すように、JTE層152は、ソースパッド電極129のフィールドプレート部129Aの端部の下方に位置し、アクセプタ不純物を第1の実効濃度で含有する第1のJTE層152Aと、第1のJTE層152Aより第2の半導体層155の端部側に位置し、第1の実効濃度より低い第2の実効濃度でアクセプタ不純物を含有する第2のJTE層152Bと、を有することが好ましい。逆バイアス印加時において第1のJTE層152Aの空乏化を抑制し、フィールドプレート部129Aの端部に接する層間絶縁膜124への電界集中を抑制することができる。例えば、第1のJTE層152Aはアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は2×10
17cm
-3~1×10
19cm
-3であり、第2のJTE層152Bはアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。この変形例では、埋め込みJTE層151の実効アクセプタ濃度が第2のJTE層152B及びガードリング層153の実効アクセプタ濃度より高く、第1のJTE層152Aの実効アクセプタ濃度が埋め込みJTE層151の実効アクセプタ濃度より高い。第1のJTE層152Aは第1の領域の一例であり、第2のJTE層152Bは第2の領域の一例である。
【0068】
〔第2の実施形態〕
まず、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、複数のトレンチSiC-MOSFETを備えた、耐圧が1.2kV程度の半導体装置に関する。
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる層のレイアウトを示す図である。
図6Aは、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる素子領域の構成を示す断面図である。
図6Bは、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる終端領域の構成を示す断面図である。
図6Bは、
図5中のI-I線に沿った断面図に相当する。なお、図の縮尺は、各部を認識しやすいように適宜調整してあり、特に素子領域と終端領域との間で横方向の縮尺は統一されたものではない。また、層等の端部とは、特に限定しない限り、当該層等の素子領域から離間する側の端部をいう。
【0069】
第2の実施形態に係る半導体装置200は、SiC基板201の上方にソースパッド電極129を有し、下方にドレイン用のオーミック電極128を有しており、いわゆる縦型半導体装置である。そして、半導体装置200は、オーミック電極128とソースパッド電極129との間に印加された電圧により電流が流れる複数の半導体素子を備えた素子領域291と、その周囲に設けられた終端領域292とを有する。
【0070】
図5、
図6A及び
図6Bに示すように、SiC基板201上にn
-バッファ層206が形成され、その上にn
+ドリフト層207が形成されている。n
+ドリフト層207には、周期的にpピラー208が形成されており、pピラー208とそれらの間のn
+ドリフト層207とによりスーパージャンクション(SJ)構造260が形成されている。n
-バッファ層206は、例えば厚さが1μm~5μmのSiC層であり、ドナー不純物としてNを含有し、その実効ドナー濃度は1×10
16cm
-3~1×10
17cm
-3である。n
+ドリフト層207は、例えば厚さが3μm~7μmのSiC層であり、ドナー不純物としてNを含有し、その実効ドナー濃度は5×10
16cm
-3~5×10
17cm
-3である。pピラー208はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は5×10
16cm
-3~5×10
17cm
-3である。pピラー208は柱状半導体層の一例である。
【0071】
図6Aに示すように、素子領域291内では、半導体素子ごとに、n
+ドリフト層207の表面にn型の電流拡散層205が形成され、その内側にはp型のシールド領域203が、外側にはp型のシールド領域204が設けられている。シールド領域203及び204はそれぞれpピラー208に電気的に接続されており、電流拡散層205はn
+ドリフト層207に電気的に接続されている。電流拡散層205はドナー不純物としてPを含有し、その実効ドナー濃度は1×10
16cm
-3~1×10
18cm
-3である。シールド領域203及び204はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。
【0072】
図6Bに示すように、シールド領域204は終端領域292まで延びるように形成されている。終端領域292において、n
+ドリフト層207の表面に、シールド領域204と電気的に接続されるようにp型の埋め込みJTE層251が形成されている。埋め込みJTE層251はpピラー208の一部に電気的に接続され、pピラー208の一部は、埋め込みJTE層251から電気的に独立してフローティングの状態にあり、その上にp型半導体層256が形成されている。埋め込みJTE層251及びp型半導体層256はアクセプタ不純物としてAlを含有し、その実効アクセプタ濃度は1×10
17cm
-3~5×10
18cm
-3である。埋め込みJTE層251は第3の半導体層の一例である。
【0073】
図6A及び
図6Bに示すように、素子領域291及び終端領域292において、n
+ドリフト層207上にn
+ドリフト層111が形成されている。n
+ドリフト層207及びn
+ドリフト層111がn型の第1の半導体層210に含まれる。
【0074】
図6Aに示すように、素子領域291において、n
+ドリフト層111の表面、すなわち第1の半導体層210の第1の面210Aにp型のボディ層112が形成され、ボディ層112の表面にn
+ソースコンタクト層113が形成されている。また、半導体素子ごとに、シールド領域204上において、n
+ドリフト層111、ボディ層112及びn
+ソースコンタクト層113にp
+ソースコンタクト層114が形成されている。
【0075】
図6Bに示すように、p
+ソースコンタクト層114は終端領域292まで延びるように形成されている。終端領域292において、n
+ドリフト層111の表面に、p
+ソースコンタクト層114と電気的に接続されるようにp型のJTE層152が形成され、更に、JTE層152の周囲にp型のガードリング層153が形成されている。JTE層152及びガードリング層153がp型の第2の半導体層155に含まれる。p
+ソースコンタクト層114は第4の半導体層の一例である。
【0076】
図6Aに示すように、素子領域291において、n
+ソースコンタクト層113、ボディ層112及びn
+ドリフト層111にゲート用のトレンチ121が形成されている。そして、n
+ドリフト層111の上面並びにトレンチ121の側面及び底面上にゲート絶縁膜122が形成され、トレンチ121内でゲート絶縁膜122上にゲート電極123が形成されている。
【0077】
図6A及び
図6Bに示すように、素子領域291及び終端領域292において、ゲート絶縁膜122及びゲート電極123上に層間絶縁膜124が形成され、n
+ソースコンタクト層113及びp
+ソースコンタクト層114を露出させる開口部125が層間絶縁膜124に形成されている。開口部125は終端領域192まで延びるように形成されている。ゲート電極123を露出する不図示の開口部も層間絶縁膜124に形成されている。
【0078】
層間絶縁膜124の上面及び側面を覆うバリアメタル膜126が形成されている。n+ソースコンタクト層113及びp+ソースコンタクト層114の開口部125から露出している部分上にオーミック電極127が形成され、SiC基板101の裏面上にドレイン用のオーミック電極128が形成されている。つまり、第1の半導体層210の第1の面210Aとは反対側の第2の面210Bの下方にオーミック電極128が形成されている。バリアメタル膜126及びオーミック電極127上にソースパッド電極129が形成され、ソースパッド電極129を覆うように層間絶縁膜124上にパッシベーション膜130が形成されている。
【0079】
このように構成された第2の実施形態に係る半導体装置200によっても第1の実施形態に係る半導体装置100と同様の効果を得ることができる。更に、SJ構造260を備えているため、電流経路の抵抗をより低減することができる。
【0080】
なお、半導体装置200では、埋め込みJTE層251にpピラー208が電気的に接続されており、pピラー208の高さの分だけ埋め込みJTE層251の端部に埋め込みJTE層151の端部よりも電界が集中しやすい。ただし、本実施形態では、埋め込みJTE層251の端部の外側に、埋め込みJTE層251から電気的に独立したpピラー208が設けられているため、このような埋め込みJTE層251の端部における電界集中を緩和することができる。
【0081】
例えば、埋め込みJTE層251のシールド領域204との界面からガードリング層153の端部までの距離W21は、第1の半導体層210の厚さの4倍~5倍程度である。距離W21が大きすぎると、耐圧向上の効果が飽和する一方で、半導体装置200の全体に対する素子領域291の割合が小さくなりすぎ、電流経路の抵抗が大きくなることがある。距離W21が小さすぎると、優れた耐圧が得られないことがある。また、例えば、埋め込みJTE層251のシールド領域104との界面から埋め込みJTE層251の端部までの距離W22は距離W21の2/3程度であり、埋め込みJTE層251のシールド領域204との界面からガードリング層153の素子領域291側の縁までの距離W23は距離W21の1/3程度である。
【0082】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置200の製造方法について説明する。
図7A~
図7Fは、第2の実施形態に係る半導体装置200の製造方法を示す断面図である。
【0083】
先ず、
図7Aに示すように、SiC基板201上にn
-バッファ層206を形成する。例えば、n
-バッファ層206はNを添加したエピタキシャル成長により形成することができる。
【0084】
次いで、
図7Bに示すように、n
-バッファ層206上に、pピラー208を含み、SJ構造260を備えたn
+ドリフト層207を形成する。このようなn
+ドリフト層207は、Nを添加したエピタキシャル成長によるn型半導体層の形成と、このn型半導体層へのAlのイオン注入との繰り返しにより形成することができる。
【0085】
その後、
図7Cに示すように、第1の実施形態と同様にして、素子領域291において、n
+ドリフト層207の表面にp型のシールド領域203及び204並びにn型の電流拡散層205を形成する。
【0086】
続いて、
図7Dに示すように、終端領域292において、n
+ドリフト層207の表面にp型の埋め込みJTE層251及びp型半導体層256を形成する。例えば、埋め込みJTE層251及びp型半導体層256はAlのイオン注入により形成することができる。埋め込みJTE層251は、シールド領域204と電気的に接触し、かつpピラー208の一部と電気的に接触するように形成し、p型半導体層256は、埋め込みJTE層251の端部の外側にあるpピラー208と電気的に接触するように形成する。
【0087】
次いで、
図7Eに示すように、第1の実施形態と同様にして、素子領域291及び終端領域292において、n
+ドリフト層207上にn
+ドリフト層111を形成する。
【0088】
その後、
図7Fに示すように、第1の実施形態と同様にして、p型のボディ層112の形成からにパッシベーション膜130の形成までの処理を行う。
【0089】
このようにして、第2の実施形態に係る半導体装置100を製造することができる。
【0090】
〔第2の実施形態の変形例〕
図8に示すように、第1の実施形態と同様に、JTE層152は、第1のJTE層152A及び第2のJTE層152Bを有することが好ましい。逆バイアス印加時において第1のJTE層152Aの空乏化を抑制し、フィールドプレート部129Aの端部に接する層間絶縁膜124への電界集中を抑制することができる。
【0091】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、半導体層の厚さ及び実効不純物濃度等が1.2kV程度の耐圧に適したものとなっているが、半導体装置の耐圧も半導体層の厚さ及び不純物濃度等もこれらに限定されない。例えば、半導体層の厚さ及び実効不純物濃度等が3.3kV程度の耐圧又は600V程度の耐圧に適したものとなっていてもよい。例えば、半導体層の厚さを増加させたり、実効不純物濃度を下げたりすることで、耐圧を高めることができる。その一方で、半導体層の厚さの増加及び実効不純物濃度の低下は電流経路の高抵抗化につながる。従って、半導体層の厚さ及び実効不純物濃度は、耐圧と電流経路の抵抗値とのバランスを考慮して調整されていることが好ましい。また、第1の実施形態及び第2の実施形態では半導体層にSiCを用いているが、Siを用いても同様の効果を得ることができる。
【0092】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100:半導体装置
101:SiC基板
102:n-ドリフト層
103、104:シールド領域
105:電流拡散層
110:第1の半導体層
110A:第1の面
110B:第2の面
111:n+ドリフト層
112:ボディ層
113:n+ソースコンタクト層
114:p+ソースコンタクト層
121:トレンチ
122:ゲート絶縁膜
123:ゲート電極
124:層間絶縁膜
125:開口部
126:バリアメタル膜
127、128:オーミック電極
129:ソースパッド電極
129A:フィールドプレート部
130:パッシベーション膜
151:埋め込みJTE層
152:JTE層
152A:第1のJTE層
152B:第2のJTE層
153:ガードリング層
155:第2の半導体層
191:素子領域
192:終端領域
200:半導体装置
201:SiC基板
203、204:シールド領域
205:電流拡散層
206:n-バッファ層
207:n+ドリフト層
208:pピラー
210:第1の半導体層
210A:第1の面
210B:第2の面
251:埋め込みJTE層
256:p型半導体層
260:スーパージャンクション構造
291:素子領域
292:終端領域