IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-樹脂成形体およびスクリーン 図1
  • 特許-樹脂成形体およびスクリーン 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】樹脂成形体およびスクリーン
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20230719BHJP
   G03B 21/62 20140101ALI20230719BHJP
【FI】
G02B5/02 A
G02B5/02
G03B21/62
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020556625
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034688
(87)【国際公開番号】W WO2020100382
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018213464
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恵介
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-249185(JP,A)
【文献】特開2007-156042(JP,A)
【文献】特開2012-214796(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G03B 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含む樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体のCIE標準D65光源、10°視野で測定した際の波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差が0.50~1.80%であり、
前記樹脂成形体のCIE標準D65光源、10°視野で測定した際の全光線透過率が80.0~92.0%である、樹脂成形体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジオール成分が、少なくとも1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む、請求項3に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記無機微粒子のタップ密度が0.60~1.35g/mLである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記無機微粒子がチタンを含む酸化物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記無機微粒子を0.0005~0.5質量部の割合で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
前記樹脂成形体が、フィルム状またはシート状である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項9】
前記樹脂成形体の厚みが、30~3000μmである、請求項8に記載の樹脂成形体。
【請求項10】
前記樹脂成形体が、さらに、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤からなる酸化防止剤の少なくとも1種を含み、前記酸化防止剤の合計量が熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.005~0.4質量部である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項11】
前記樹脂成形体が、さらに、紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.005~3.0質量部の割合で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項12】
前記全光線透過率が89.5%以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂成形体を含むスクリーン。
【請求項14】
前記スクリーンの少なくとも片面に粘着層を有している、請求項13に記載のスクリーン。
【請求項15】
前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、請求項14に記載のスクリーン。
【請求項16】
前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、請求項14または15に記載のスクリーン。
【請求項17】
前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載のスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体およびスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、投影機から投射された映像光を投影機と反対側にいる観察者に映像として視認可能に表示するスクリーンが用いられている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、熱可塑性樹脂と無機微粒子を含む透明スクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-198807号公報
【文献】特開2018-091990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2等に記載のとおり、透明スクリーンは知られているが、投影画像の色再現性に劣ることが分かった。また、当然に、透明スクリーンは、透過光強度が高いことが求められる。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、高い透過光強度を有し、かつ、投影画像の色再現性に優れる樹脂成形体およびこれを用いたスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含む樹脂成形体において、波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差を0.50~1.80%とし、かつ、全光線透過率を80.0~92.0とすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂と無機微粒子とを含む樹脂成形体であって、前記樹脂成形体のCIE標準D65光源、10°視野で測定した際の波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差が0.50~1.80%であり、前記樹脂成形体のCIE標準D65光源、10°視野で測定した際の全光線透過率が80.0~92.0%である、樹脂成形体。
<2>前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である、<1>に記載の樹脂成形体。
<3>前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂である、<1>に記載の樹脂成形体。
<4>前記熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジオール成分が、少なくとも1,4-シクロヘキサンジメタノールを含む、<3>に記載の樹脂成形体。
<5>前記無機微粒子のタップ密度が0.60~1.35g/mLである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<6>前記無機微粒子がチタンを含む酸化物である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<7>前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記無機微粒子を0.0005~0.5質量部の割合で含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<8>前記樹脂成形体が、フィルム状またはシート状である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<9>前記樹脂成形体の厚みが、30~3000μmである、<8>に記載の樹脂成形体。
<10>前記樹脂成形体が、さらに、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤からなる酸化防止剤の少なくとも1種を含み、前記酸化防止剤の合計量が熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.005~0.4質量部である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<11>前記樹脂成形体が、さらに、紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.005~3.0質量部の割合で含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<12>前記全光線透過率が89.5%以下である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
<13><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂成形体を含むスクリーン。
<14>前記スクリーンの少なくとも片面に粘着層を有している、<13>に記載のスクリーン。
<15>前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、<14>に記載のスクリーン。
<16>前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、<14>または<15>に記載のスクリーン。
<17>前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、<14>~<16>のいずれか1つに記載のスクリーン。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、高い透過光強度を有し、かつ、投影画像の色再現性に優れる樹脂成形体およびこれを用いたスクリーンを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】樹脂成形体の10°視野で測定した際の透過光強度(%)を測定するための測定装置の一例を示す正面図である。
図2】樹脂成形体の10°視野で測定した際の透過光強度(%)を測定するための測定装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂と、無機微粒子とを含む樹脂成形体であって、前記樹脂成形体のCIE(国際照明委員会)標準D65光源、10°視野で測定した際の波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差が0.50~1.80%であり、前記樹脂成形体のCIE標準D65光源、10°視野で測定した際の全光線透過率が80.0~92.0%であることを特徴とする。このような構成とすることにより、高い透過光強度を有し、かつ、投影画像の色再現性に優れる樹脂成形体とすることができる。
従来、熱可塑性樹脂と無機微粒子を含む樹脂成形体において、波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差は0%に近いほど、投影画像の色再現性に優れると考えられていた。しかしながら、本発明者が検討した結果、分光透過率の差(|T700-T500|)が0.50~1.80%となるように調整することにより、上記課題を解決できることを見出した。さらに、分光透過率の差(|T700-T500|)の値を0%よりもわずかに大きくすることによって、高い透過光強度も達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
このような分光透過率の差(|T700-T500|)の値および全光線透過率は、樹脂成形体の厚み、無機微粒子の粒子径やアスペクト比、粒子径分布(例えば、変動係数)、粒子濃度、粒子の形状(球状、ブロック状、針状など)等によって、調整することができる。
【0010】
<分光透過率>
本発明の樹脂成形体は、D65光源、10°視野で測定した際の、波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差(|T700-T500|)が0.50~1.80%であり、0.70%以上であることが好ましく、0.90%以上であることがより好ましく、1.00%以上であることがさらに好ましい。また、上記分光透過率の差(|T700-T500|)の上限値は、1.70%以下であることが好ましく、1.60%以下であることがより好ましく、1.50%以下であることがさらに好ましい。|T700-T500|を0.50%以上とすることにより、投影画像の色味の赤色を強調されにくくでき、また、透過光強度が向上する傾向にある。また、1.80%以下とすることにより、投影画像の色味の青色を強調されにくくできる。
【0011】
本発明の樹脂成形体は、D65光源、10°視野で、波長700nmにおける樹脂成形体の分光透過率(T700)(%)が80.0%以上であることが好ましく、82.0%以上であることがより好ましく、84.0%以上であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より透明性に優れた成形体が得られる。また、分光透過率(T700)(%)の上限値は、94.0%以下であることが好ましく、93.0%以下であることがより好ましく、92.0%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より良好な透過光強度を示す成形体が得られる。
本発明の樹脂成形体は、D65光源、10°視野で、波長500nmにおける樹脂成形体の分光透過率(T500)(%)が79.0%以上であることが好ましく、81.0%以上であることがより好ましく、83.0%以上であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、透明性に優れ、より黄色みの少ない成形体が得られる。また、分光透過率(T500)(%)の上限値は、93.0%以下であることが好ましく、92.0%以下であることがより好ましく、91.0%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より良好な透過光強度を示す成形体が得られる。分光透過率は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0012】
<全光線透過率>
本発明の樹脂成形体は、CIE標準D65光源、10°視野で測定した際の全光線透過率が80.0~92.0%であり、82.0%以上であることが好ましく、84.0%以上であることがより好ましく、85.0%以上であることがさらに好ましい。また、上記全光線透過率の上限値は、91.5%以下であることが好ましく、91.0%以下であることがより好ましく、89.5%であってもよい。全光線透過率が80.0%を下回ると、樹脂成形体の透明性が失われ、背景の視認性が悪くなる。
全光線透過率は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0013】
<ヘイズ>
本発明の樹脂成形体のヘイズは、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、9%以下であってもよい。また、本発明の樹脂成形体のヘイズの下限は、理想は0%であるが、例えば、1%以上、3%以上、5%以上であっても、その要求性能を満たすものである。
特に、樹脂成形体の厚みが100μm以上の場合(好ましくは100μm~3mmの場合)、ヘイズは、10%以下であることが好ましい。
また、樹脂成形体の厚みが100μm未満の場合(好ましくは30μm~100μm未満の場合)、ヘイズは、12%以下であることが好ましい。
【0014】
<透過光強度>
透過光強度は、樹脂成形体の平面試料を所定の位置(以下、基準位置)に配置し、基準位置に配置した平面試料に対して垂直な垂線に対し、10°傾いた入射軸に沿って垂線と平面試料との交点に向けて入射光を照射したときに測定される、平面試料を透過した透過光の強度の値である。
より具体的には、上述のように、一定強度の入射光を交点(上記仮想の垂線と、樹脂成形体の平面試料の表面との交点)に入射させたときに、垂線を含む仮想の平面であって、基準位置に配置されている平面試料に対して垂直であり、なおかつ、垂線と入射軸とを含む平面に対しても垂直な仮想の平面(以下、垂直平面)上にあって、交点からの距離が互いに等しい観測点における透過光の強度の値である。
【0015】
より具体的には、図1に示すように、樹脂成形体の受光面(膜面)に対する垂線(図1のX軸)からZ軸方向に10°傾いた方向から、入射光を樹脂成形体の受光面に照射する。図1において、1は透過光分布を測定するための光軸迂回装置であり、2は光源部であり、3は迂回部であり、4は試料台であり、5は受光アームであり、6は受光部である。本発明では、このように、樹脂成形体の受光面に対して垂直(図1のX軸方向)に入射光を入射させず、受光面の垂線に対して、Z軸方向に傾いた方向から入射光を入射させると、入射光の光軸と、複数の観測点を含む仮想の垂直平面とを傾けることとなる。これにより、透過光の強度をある程度のレベルに抑えることが可能となり、透過光の強度の値の測定が容易になる。
【0016】
また、図2は、図1を上方向から見た図である。ここで、受光部6は、回転可能な構成となっている。また、試料台4も回転可能であってもよい。本発明では、上述のように樹脂成形体の受光面(膜面)に対して垂直な線(軸X)および軸Xに垂直な受光面上の線(軸Y)に対する角度が様々な観測点に受光部を移動させることができる。例えば、図2に例示された透過光分布を測定するための光軸迂回装置1においては、受光部がX軸方向からY軸方向に+90°から-90°まで回転可能であるため、受光部6を樹脂成形体の受光面に対する垂線(回転軸から90°傾いた軸)に対して任意の角度の位置に容易に移動させることができ、よって任意の角度における透過光強度の値を測定できる。
なお、入射光の強度、および、交点から観測点までの距離の大きさは、透過光の相対透過光強度の値に変化を与えるものではないため、適宜、設定することができる。
より具体的には、透過光強度は後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明では、受光部を平面試料の垂線に対して0°の位置の透過光強度の値を100%とした際の、45°の位置の透過光強度I45の値を指標としている。なお、45°の回転位置は、+側と-側のいずれの側の回転位置であってもよい。
この透過光強度I45の値は、スクリーン用途に使用する際の投影画像の明度を示しており、より高い値を示すほど、より明度の高い画像がスクリーンに投影されることを示している。
【0017】
本発明の樹脂成形体は、透過光強度I45が5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、9%以上であることがさらに好ましく、10%以上であってもよい。また、本発明の樹脂成形体の透過光強度I45の上限は特に定めるものではないが、例えば、40%以下、35%以下、32%以下、25%以下であっても、その要求性能を満たすものである。
特に、樹脂成形体の厚みが100μm以上の場合(好ましくは100μm~3mmの場合)、透過光強度I45は、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。
また、樹脂成形体の厚みが100μm未満の場合(好ましくは30μm~100μm未満の場合)、透過光強度I45は、10%以上であることが好ましく、13%以上であることがさらに好ましく、25%以上であってもよい。
【0018】
<樹脂成形体の厚み>
本発明の樹脂成形体は、通常は、フィルム状またはシート状であり、その厚みの下限は30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、60μm以上であることが一層好ましく、900μm以上であってもよい。また、上記厚みの上限は、3mm(3000μm)以下であることが好ましく、2mm(2000μm)以下であることがより好ましく、1.5mm(1500μm)以下であることがさらに好ましく、1.2mm(1200μm)以下であることが一層好ましい。
また、樹脂成形体の厚みは均一である必要はなく、用途に応じて異なる厚みを有する成形体であってもよい。
【0019】
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等)、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびポリスチレン樹脂が例示され、ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0020】
ポリカーボネート樹脂としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されるものではない。ただし、耐衝撃性、耐熱性の点から、また芳香族ジヒドロキシ化合物としての安定性、さらにはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点から、芳香族ポリカーボネート樹脂がより好ましいものとして挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂として、例えばビスフェノールA骨格を有するものが挙げられる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。また、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0023】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10,000~35,000であることが好ましく、より好ましくは10,500以上、さらに好ましくは11,000以上、一層好ましくは11,500以上、より一層好ましくは12,000以上である。また、好ましくは32,000以下、より好ましくは29,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明の樹脂成形体の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、樹脂の流動性低下を抑制でき、成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
また、上述の熱可塑性ポリエステル樹脂としては、芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。また、熱可塑性ポリエステル樹脂を構成するジオール成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステル樹脂が好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG(シクロヘキサンジメタノールによりグリコール変性されたポリエチレンテレフタレート、エチレングリコールのモル比率がシクロヘキサンジメタノールより高い)およびPCTG(シクロヘキサンジメタノールによりグリコール変性されたポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールのモル比率がエチレングリコールより高い)等が使用される。シクロヘキサンジメタノールは、1,4-シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。
【0024】
本発明の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を樹脂成形体の90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましく、97質量%以上含むことがさらに好ましい。
また、本発明の樹脂成形体の一実施形態は、ポリカーボネート樹脂を樹脂成形体の90質量%以上含む形態であり、95質量%以上含むことが好ましく、97質量%以上含むことがより好ましい。
また、本発明の樹脂成形体の他の一実施形態は、熱可塑性ポリエステル樹脂(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂)を樹脂成形体の90質量%以上含む形態であり、95質量%以上含むことが好ましく、97質量%以上含むことがより好ましい。
【0025】
本発明の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂成形体に用いる熱可塑性樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された熱可塑性樹脂であってもよい。
ただし、再生された熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生された熱可塑性樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このような熱可塑性樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0027】
<無機微粒子(B)>
本発明の樹脂成形体は、無機微粒子を含む。無機微粒子を含むことにより、所望の光学特性を達成可能になる。特に、本発明の樹脂成形体における、全光線透過率や分光透過率の差(|T700-T500|)の値は、無機微粒子の粒子径やアスペクト比、粒子径分布(例えば、変動係数)、粒子濃度、粒子の形状(球状、ブロック状、針状など)、屈折率等によって、調整することができる。
【0028】
無機微粒子は、数平均粒子径が70nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましく、180nm以上であることが一層好ましい。上記下限値以上とすることにより、プロジェクター投影時に樹脂成形体が青みを呈する現象をより効果的に抑制できる。また、前記無機微粒子の数平均粒子径の上限値は、520nm以下であることが好ましく、450nm以下であることがより好ましく、400nm以下、380nm以下、350nm以下であってもよい。上記上限値以下とすることにより、プロジェクター投影時に樹脂成形体が赤みを呈する現象を効果的に抑制できる。すなわち、無機微粒子による光の散乱において光の波長と粒子径には関連があり、光の波長と粒子径が同程度の場合に最も高い光散乱効率を示す。そのため、粒子径が大きくなるほど、より長波長の光が散乱されやすくなり、光の拡散透過光は赤みを呈しやすくなる。ただし、本発明では、無機微粒子以外の条件を適宜調整して、所望の光学特性を満たすように調整する場合を排除するものではない。数平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
無機微粒子は、また、数平均粒子径の変動係数が、100%以下であることが好ましく90%以下であることがより好ましく、80%以下であってもよい。このように変動係数を小さくすることにより、全光線透過率や分光透過率の差(|T700-T500|)の値を所望の範囲に調整しやすくなる。前記変動係数の下限値は、0%が理想であるが、例えば、20%以上、さらには30%以上であってもよい。変動係数は後述する実施例に記載の方法で測定される。
無機微粒子のアスペクト比は、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、また、2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましい。アスペクト比は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。このようなアスペクト比とすることにより、全光線透過率や分光透過率の差(|T700-T500|)の値を所望の範囲に調整しやすくなる。
無機微粒子のタップ密度は、0.60g/mL以上であることが好ましく、0.70g/mL以上であることがより好ましく、0.80g/mL以上であることがさらに好ましく、0.90g/mL以上であることが一層好ましい。前記タップ密度の上限値は、1.35g/mL以下であることが好ましく、1.30g/mL以下であることがより好ましく、1.25g/mL以下、1.20g/mL以下、1.15g/mL以下であってもよい。このようなタップ密度とすることにより、全光線透過率や分光透過率の差(|T700-T500|)の値を所望の範囲に調整しやすくなる。無機微粒子のタップ密度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0029】
無機微粒子は、Bi、Nd、Si、Al、Zr、Ba、および、Tiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物、複合酸化物、ならびに、これらの2種以上の混合物が好ましい。無機微粒子は、より好ましくは、Bi、Si、Zr、Ba、および、Tiから選択される少なくとも1種を含有し、さらに好ましくは、少なくともTiを含有する。無機微粒子は、チタンを含む酸化物、複合酸化物、ならびに、これらの2種以上の混合物が好ましく、少なくともチタンを含む酸化物がより好ましい。
本発明で用いる無機微粒子の一実施形態は、チタンを含む無機微粒子(好ましくは酸化チタンおよび/またはチタン酸バリウム)が無機微粒子の90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上を占める形態である。このような構成とすることにより、透明性とスクリーン光の投影性能の両立が可能となる。
【0030】
酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、熱可塑性樹脂に添加した際の熱安定性の観点からルチル型が好ましい。
【0031】
本発明で用いる無機微粒子としては、表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、無機材料および/または有機材料が好ましい。具体的には、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール、シリコーン等の有機材料が挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂成形体は、無機微粒子を熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.0005~0.5質量部の割合で含むことが好ましい。前記無機微粒子の含有量の下限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.0008質量部以上であることがより好ましく、0.001質量部以上であることがさらに好ましく、0.003質量部以上であることが一層好ましい。また、前記無機微粒子の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.3質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、全光線透過率や分光透過率の差(|T700-T500|)を所望の範囲に調整しやすくなる。
特に、樹脂成形体の厚みが100μm以上の場合(好ましくは100μm~3mmの場合)、前記無機微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上であることがより好ましく、0.002質量部以上であることがさらに好ましい。また、前記無機微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.008質量部以下であることが好ましい。
また、樹脂成形体の厚みが100μm未満の場合(好ましくは30μm~100μm未満の場合)、前記無機微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましく、0.2質量部以上であることが一層好ましい。また、前記無機微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることがさらに好ましく、0.1質量部以下であることが一層好ましい。
無機微粒子は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
特に、2種以上の粒子径の異なる無機微粒子をブレンドすることによって、所望の光学特性がより容易に得られる。
【0033】
本発明の樹脂成形体は、熱可塑性樹脂と無機微粒子が合計で、60質量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは95質量%以上、さらに一層好ましくは98質量%以上含まれている。
【0034】
<酸化防止剤(C)>
本発明の樹脂成形体は、酸化防止剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられ、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。その中でもリン系酸化防止剤は、樹脂成形体の色相に優れることから特に好ましい。
リン系酸化防止剤としての好ましいホスファイト系安定剤としては、以下の式(1)または(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
【化1】
(式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~30のアルキル基または炭素原子数6~30のアリール基を表す。)
【化2】
(式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6~20のアリール基または炭素原子数1~20のアルキル基を表す。)
【0035】
上記式(1)中、R、Rで表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R、Rがアリール基である場合、以下の一般式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。
【0036】
【化3】
(式(1-a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
【0037】
酸化防止剤の詳細は、特開2017-031313号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.007質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上である。また、酸化防止剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、一層好ましくは0.1質量部以下である。
酸化防止剤の含有量を0.005質量部以上とすることにより、色相、耐熱変色性がより良好な樹脂成形体を得ることができる。また、酸化防止剤の含有量を0.4質量部以下とすることにより、耐熱変色性を悪化させることなく、湿熱安定性が良好な樹脂成形体を得ることができる。
また、酸化防止剤としてリン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤(好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)を組み合わせて使用する場合、その含有割合は熱可塑性樹脂100質量部に対して、リン系酸化防止剤を0.005~0.2質量部、フェノール系酸化防止剤を0.001~0.2質量部の範囲で含有することが好ましい。
酸化防止剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0039】
<紫外線吸収剤(D)>
本発明の樹脂成形体は、紫外線吸収剤を含むことも好ましい。紫外線吸収剤を含むことにより、屋外での使用により適したものとすることができる。
紫外線吸収剤は、無機系紫外線吸収剤および有機系紫外線吸収剤のいずれも好ましく、有機系紫外線吸収剤がより好ましい。
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、オギザニリド系化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が挙げられる。これらの中で、ベンゾトリアゾール系化合物(ベンゾトリアゾール構造を有する化合物)であることがより好ましい。
紫外線吸収剤の具体例としては、特開2017-031313号公報の段落0049~0055の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.007質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上である。また、紫外線吸収剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下、一層好ましくは0.8質量部以下である。
紫外線吸収剤の含有量を0.005質量部以上とすることにより、十分な耐候性により優れた樹脂成形体を得ることができる。また、紫外線吸収剤の含有量を3.0質量部以下とすることにより、成形時におけるアウトガス量が抑制できる。
紫外線吸収剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
<離型剤(E)>
本発明の樹脂成形体は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤を含むことにより、樹脂成形体(フィルム状またはシート状の樹脂成形体)を巻き取る際の巻取性を向上させたり、金型を用いて成形する場合の離型をより容易にすることができる。
離型剤の種類は特に定めるものではないが、離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5000のポリエーテル、およびポリシロキサン系シリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
離型剤の詳細は、WO2015/190162号公報の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上であり、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.007質量部以上である。また、離型剤の含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、一層好ましくは0.05質量部以下である。
離型剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
<その他の成分>
本発明の樹脂成形体は、上記成分の他、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<スクリーン>
本発明のスクリーンは、本発明の樹脂成形体を含む。本発明のスクリーンにおいては、透明性が高い透明スクリーンであることが好ましい。本明細書中に記載の「透明」とは、スクリーンの背景をある程度透過視認できる透明性を有することを意味し、半透明を含む趣旨である。本発明のスクリーンは、可視光の透過率が高いことが好ましい。
【0045】
本発明の樹脂成形体およびスクリーンの形状については、平面および曲面のいずれであってもよく、二次元加工、または、三次元加工されたものでもよい。加工方法については、特に限定されるものではないが、例えば、熱加工法や打ち抜き加工法、冷間曲げ加工法、および絞り加工法等が好ましく挙げられ、熱曲げ加工法、曲面加工法、フリーブロー成形法などがより好ましく、プレス成形法や真空成形法、圧空成形法、および、自然放置法等が特に好ましい。
【0046】
本発明のスクリーンは、本発明の樹脂成形体(特に、フィルム状またはシート状の樹脂成形体)以外の層を有していてもよい。例えば、本発明の樹脂成形体を支持する支持層、本発明の樹脂成形体の表面を保護するための保護層、および、本発明の樹脂成形体に他層を接着させるための接着層や粘着層等が例示される。
【0047】
特に、本発明のスクリーンは、少なくとも片面に粘着層を有していることが好ましい。粘着層を有するスクリーンはガラス(好ましくはガラスウィンドウ)や樹脂シート(好ましくは透明樹脂シート)に貼り合わせることが可能となる。樹脂シートとして好ましくは、ポリカーボネートシート、ポリメチルメタクリレートシート、ポリ(スチレン-メチルメタクリレート)共重合体シートなどが挙げられる。
粘着層の種類は、特に制限はないが、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤およびウレタン粘着剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの粘着剤を用いることにより、より高い粘着性を達成できる。より具体的には、プライマー層に対する適度な密着性を実現できる。
また、粘着層は、再剥離性を有していてもよく、再剥離性を有する粘着層は、一度、貼り付け材から剥離させても再度、粘着させることができる。
【0048】
アクリル粘着剤は、アクリル系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、DIC社製のファインタック(CT-3088、CT-3850、CT-6030、CT-5020、CT-5030)、クイックマスター(SPS-900-IV、クイックマスターSPS-1040NT-25)、および、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
シリコーン粘着剤は、シリコーン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、信越化学工業社製のKR-3704(主剤)とCAT-PL-50T(白金触媒)とにより製造されるポリマー等が挙げられる。
ウレタン粘着剤は、ウレタン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
本明細書では、高分子とは、数平均分子量が1000以上の化合物をいい、好ましくは2000以上の化合物を意味する。
【0049】
粘着層としては、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2017-200975号公報の段落0026~00053に記載の粘着剤層、特開2013-020130号公報の段落0056~0060に記載の粘着層、国際公開第2016/158827号の粘着シート、特開2016-182791号公報の段落の0031~0032の粘着層、特開2015-147837号公報の段落0057~0084のゴム系粘着剤層を採用することもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0050】
粘着層の厚みは、特に制限はないが、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であってもよい。また、粘着層の厚みは、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、より適切な粘着特性および粘着強度が達成される。
【0051】
粘着層の剥離力は、粘着層の組成によって制御が可能となる。例えば、シリコーン系粘着層の場合、構成されるポリオルガノシロキサンの主鎖構造、末端構造、分岐構造および分子量などによって剥離力の調整が可能となる。また、ウレタン系粘着層の場合、構成されるポリオールとポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、およびそれらの比率などによって剥離力の調整が可能となる。また、アクリル系粘着層の場合、構成されるアクリル含有樹脂のモノマー構造や分子量、共重合比率、およびポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、さらにはアクリル含有樹脂とポリイソシアネートの比率などよって剥離力の調整が可能となる。
また、粘着力の異なる粘着剤を組み合わせることによっても、任意の剥離力を有する粘着層を形成させることが可能となる。
【0052】
本発明のスクリーンは、粘着層との中間にプライマー層を有していてもよい。プライマー層は粘着層の塗工時に、粘着剤に含まれる溶剤によって、熱可塑性樹脂の白化・膨張などを抑制することが可能となる。
プライマー層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、より耐熱性に優れた粘着シートが得られる。
【0053】
また、本発明の樹脂成形体は、単層であっても強度および耐久性に優れたものとすることができるため、支持層を有さない自立型スクリーンとしても好適に用いることもできる。また、実質的に本発明の樹脂成形体のみからなるスクリーンについては、製造工程が容易であって、各層の剥離による破損も生じない点で優れている。ここでの実質的とは、スクリーンとして機能する部分が本発明の樹脂成形体のみからなることをいう。すなわち、その他の部分において、本発明の樹脂成形体以外の部品等を有することを妨げるものではない。
本発明のスクリーンのサイズは特に定めるものではないが、例えば、四角形であり、その一方の辺の長さは、5~1000cmであることが好ましく、また、他方の辺の長さは、5~1000cmであることが好ましい。
【0054】
<樹脂成形体およびスクリーンの製造方法>
本発明の樹脂成形体は、以下のように製造される。
具体的には、まず、熱可塑性樹脂に無機微粒子を所定量、添加して溶融混練する。そして、例えば、ストランドカットにより無機微粒子を含む熱可塑性樹脂のペレットを得る。こうして得られたペレットを、例えばフィルム押出機により押出成形することにより、フィルム状またはシート状の樹脂成形体を製造することができる。また、射出成形機により射出成形することにより、任意の形状の樹脂成形体を製造することができる。加えて、溶融混練機能を有するフィルム押出機や射出成形機を使用することにより、熱可塑性樹脂と無機微粒子のブレンド粉末から樹脂成形体を製造することもできる。また、上述の様々な加工法を適宜、選択して採用することにより、スクリーンの形状を調整できる。
【0055】
<映像の投射>
映像の投射において、上述の本発明のスクリーンを用いることができる。映像投射においては、本発明のスクリーンの背面から投射してもよく、前面から投射してもよい。すなわち、本発明のスクリーンは、透過光を観察する透過型スクリーンでもよく、反射光を観察する反射型スクリーンでもよいが、透過型スクリーンが好ましい。
【実施例
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0057】
<原料>
熱可塑性樹脂(A)
(A1)ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンH-4000F、粘度平均分子量:16,000)
(A2)ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンE-2000F、粘度平均分子量:27,000)
(A3)熱可塑性ポリエステル樹脂(PCTG)カルボン酸成分はテレフタル酸であり、ジオール成分はジエチレングリコール(40mol%)および1,4-シクロヘキサンジメタノール(60mol%)である、SKケミカル社製、SKYGREEN J2003)
【0058】
無機微粒子(B)
(B1)酸化チタン(テイカ株式会社製、JR-301、数平均粒子径347nm、変動係数30.0%、アスペクト比1.64、タップ密度1.06g/mL)
(B2)酸化チタン(テイカ株式会社製、JR-600A、数平均粒子径276nm、変動係数61.2%、アスペクト比1.87、タップ密度0.99g/mL)
(B3)チタン酸バリウム(共立マテリアル株式会社製、BT-HP300、数平均粒子径331nm、変動係数32.4%、アスペクト比1.28、タップ密度1.18g/mL)
(B4)酸化チタン(堺化学工業株式会社製、R-38L、数平均粒子径501nm、変動係数41.3%、アスペクト比1.50、タップ密度1.29g/mL)
(B5)酸化チタン(堺化学工業株式会社製、R-39、数平均粒子径231nm、変動係数36.0%、アスペクト比1.45、タップ密度1.04g/mL)
(B6)酸化チタン(テイカ株式会社製、JR-405、数平均粒子径209nm、変動係数36.8%、アスペクト比1.46、タップ密度0.97g/mL)
(B7)酸化チタン(テイカ株式会社製、MT-700HD、数平均粒子径68nm、変動係数35.2%、アスペクト比1.55、タップ密度0.52g/mL)
(B8)酸化チタン(テイカ株式会社製、IP0516、数平均粒子径535nm、変動係数29.0%、アスペクト比1.59、タップ密度1.37g/mL)
【0059】
酸化防止剤(C)
(C1)ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(リン系酸化防止剤 ADEKA株式会社製アデカスタブPEP-36)
(C2)トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤 ADEKA株式会社製アデカスタブ2112)
(C3)ペンタエリスリトールテトラキス[3-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](フェノール系酸化防止剤 BASF株式会社製イルガノックス1010)
【0060】
紫外線吸収剤(D)
(D1)2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール (シプロ化成株式会社製、シーソーブ709)
【0061】
離型剤(E)
(E1) グリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製、リケマールS-100A)
【0062】
<無機微粒子の粒子径、変動係数およびアスペクト比の測定>
無機微粒子(B)の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、無機微粒子(B)のSEM画像から1次粒子径を測定して求めた。具体的には、無機微粒子(B)の長辺と短辺の合計値を2で割った数値を1次粒子径とし、50個の1次粒子径の平均値を数平均粒子径とした。粒子径分布を示す変動係数は以下の式で算出した。

変動係数(%)=50個の一次粒子径の標準偏差/数平均粒子径×100

無機微粒子(B)のアスペクト比は50個の粒子の長辺と短辺の比の平均値とした。
【0063】
<タップ密度の測定方法>
無機微粒子(B)のタップ密度(g/mL)を、JIS-Z-2512に準拠して測定を行った。
【0064】
実施例1~12、比較例1~3
<樹脂成形体の製造>
・1mm厚のシートの成形
上記に記載した各成分を、それぞれ、表1または表2に記載の添加量となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付き二軸可塑化装置を備えた射出成形機(Sodick社製「PE100」)にて、バレル温度およびプランジャー温度280℃(ポリカーボネート樹脂の場合)もしくは260℃(熱可塑性ポリエステル樹脂の場合)、金型温度80℃(ポリカーボネート樹脂の場合)もしくは40℃(熱可塑性ポリエステル樹脂の場合)、サイクル時間60秒にて射出成形を行い、100mm×100mm×1mm厚(1000μm厚)のシート(樹脂成形体)を作製した。
・75μm厚のフィルムの成形
上記に記載した各成分を、それぞれ表1または表2に記載の添加量となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、シリンダー温度280℃(ポリカーボネート樹脂の場合)もしくは240℃(熱可塑性ポリエステル樹脂の場合)で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
得られたペレットを、スクリュー径28mmのTダイリップの付いたベント付き二軸フィルム押出機(東芝機械社製「TEM26DS」)によりシリンダー温度280℃(ポリカーボネート樹脂の場合)もしくは240℃(熱可塑性ポリエステル樹脂の場合)にて溶融させ、押し出すことにより、100mm×100mm×75μm厚のフィルム(樹脂成形体)を作製した。
【0065】
<樹脂成形体の光学特性評価>
実施例および比較例で製造した樹脂成形体の光学特性を下記の通り評価した。
<<分光透過率>>
分光色彩計を用いて、D65光源、10°視野で、波長500nmにおける樹脂成形体の分光透過率(T500)(%)および700nmにおける樹脂成形体の分光透過率(T700)(%)をそれぞれ測定した。さらに、分光透過率の差(|T700-T500|)を算出した。
分光色彩計は、日本電色工業社製、「SD6000」を用いた。
【0066】
<<全光線透過率およびヘイズ>>
得られた樹脂成形体について1mm(1000μm)厚のシートおよび75μm厚のフィルムについて、それぞれ、ヘイズメーターを用いて、JIS-K-7361およびJIS-K-7136に準拠して、D65光源、10°視野で、樹脂成形体の全光線透過率(%)およびヘイズ(%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
【0067】
<<プロジェクター投影画像の色再現性>>
樹脂成形体を、超短焦点プロジェクター(株式会社リコー製、商品名:PJ WX4152)の映像投射レンズから12cm離れた位置に設置した。次に、樹脂成形体のシート面またはフィルム面に対し、45°下方から樹脂成形体に映像を投射し、樹脂成形体の位置に焦点が合うようにプロジェクターの焦点つまみを調整した。樹脂成形体のシート面またはフィルム面に対し、正面前方から観察したときのプロジェクター画像の投影画像色再現性について、下記の基準に基づいて目視で評価した。なお、画像視認性の評価は暗室にて行い、プロジェクターの反対面、すなわち樹脂成形体の透過光を観察することで評価した。評価結果を表1および表2に示す。
<<<画像の色再現性の評価基準>>>
良好:スクリーン映像の色再現性が高かった。
青み:スクリーン映像の青みが強く、色再現性が低かった。
赤み:スクリーン映像の赤みが強く、色再現性が低かった。
【0068】
<<透過光強度I45>>
ハロゲンランプを光源とする変角光度計および光軸迂回装置を用いて、下記の測定条件にて樹脂成形体の透過光強度I45を測定した。
具体的には、図1および図2に示す光軸迂回装置において、以下の通り光源部2と受光部6を移動させて測定した。まず、図1において、X軸方向からZ軸方向に10°移動した方向から光が照射されるように、迂回部3を調整した。さらに、図2において、X軸方向(0°)で受光した透過光の強度と、X軸方向からY軸方向に45°移動した位置で受光するように受光部6を移動させたときの透過光の強度を測定し、0°の位置における透過光強度Iを100%とした際の45°の位置における透過光強度I45を測定した。
変角光度計は、村上色彩技術研究所社製「GP-200」を用いた。
・測定条件:透過
・High Volt Adj:-900
・Sensivity Adj:500
・光束絞り :3.0
・受光絞り :4.0
・入射角度 :0°
・試料あおり角度:0°
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
上記結果から明らかなとおり、全光線透過率を80.0~92.0%とし、かつ、波長700nmの光の分光透過率と波長500nmの光の分光透過率の差(|T700-T500|)の値を0.50~1.80%とすることにより、投影スクリーン映像の赤みおよび青みを抑え、透過光強度I45を高くすることができた(実施例1~12)。
これに対し、|T700-T500|の値が0.50%未満のとき、投影スクリーン映像の赤みが強く、透過光強度I45も低かった(比較例2)。一方、|T700-T500|の値が1.80%超のとき、投影スクリーン映像の青みが強かった(比較例1、3)。
【0072】
[プライマー塗料の調製]
6官能ウレタンアクリレート(根上工業社製、商品名UN-3320HC)90質量部と、2官能アクリレート(日本触媒社製、商品名VEEA)10質量部、および、光重合開始剤Irgacure-184(BASF社製、現在は代替品としてIGM Resins B.V.製よりOmnirad184が販売されている)5質量部を、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルにて、固形分が30質量%となるように調製し、プライマー塗料を得た。
【0073】
[ウレタン粘着剤塗料1の調製]
主剤(トーヨーケム社製、商品名サイアバインSH-101)100質量部に、硬化剤(トーヨーケム社製、商品名T-501B)を4質量部、添加し、十分に混合して、ウレタン粘着剤塗料1を得た。
【0074】
[シリコーン粘着剤塗料1の調製]
シリコーン化合物(信越化学工業社製、商品名KR-3704)100質量部に、硬化のための白金触媒(信越化学工業社製、商品名、CAT-PL-50T)を0.5質量部、添加し、十分に混合して、溶媒トルエンにて固形分が40質量%となるように希釈し、シリコーン粘着剤塗料1を得た。
【0075】
[アクリル粘着剤塗料1の調製]
主剤(DIC社製、商品名ファインタックCT-3088)100質量部に、硬化剤(DIC社製、商品名D-100K)を1.5質量部、添加し、十分に混合して、アクリル粘着剤塗料1を得た。
【0076】
[実施例A~C]
実施例7、8、9のフィルムの一方の表面上に、上記プライマー塗料を、乾燥塗膜が3μmになる様に塗装し、熱風循環乾燥機にて100℃で2分乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて、積算光量200mJ/cmになるように紫外線を照射して、基材の表面にプライマー層が形成された、プライマー処理フィルム7’,8’,9’をそれぞれ得た。
ついで、上記ウレタン粘着剤塗料1を、プライマー処理フィルム7’のプライマー層側の表面上に、乾燥塗膜の厚さが50μmになるように塗装し、熱風循環乾燥機にて120℃で1分乾燥し、粘着層を形成した。
こうして、実施例Aの粘着層付き透明スクリーンフィルムを得た。
【0077】
上記実施例Aにおいて、プライマー処理フィルム7’をプライマー処理フィルム8’に変更し、ウレタン粘着剤塗料1をシリコーン粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例Aと同様にして、実施例Bの粘着層付き透明スクリーンフィルムを得た。
【0078】
上記実施例Aにおいて、プライマー処理フィルム7’をプライマー処理フィルム9’に変更し、ウレタン粘着剤塗料1をアクリル粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例Aと同様にして、実施例Cの粘着層付き透明スクリーンフィルムを得た。
【0079】
得られた実施例A~Cの粘着層付き透明スクリーンフィルムをA4サイズに切り出し、ガラス板への貼り付けを行ったところ、いずれも剥がれや気泡もなく良好な貼付け性を示すことが確認された。また、投影スクリーン映像の画像や色味についても粘着層付与前後で大きな差は見られなかった。
【符号の説明】
【0080】
1 透過光分布を測定するための光軸迂回装置
2 光源部
3 迂回装置
4 試料台(樹脂成形体を設置する箇所)
5 受光アーム
6 受光部
図1
図2