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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20230719BHJP
   H04N 23/13 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230719BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/13
H04N23/45
H04N23/55
H04N23/56
A61B1/00 511
A61B1/00 512
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021139783
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2017057054の分割
【原出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2021192534
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃史
(72)【発明者】
【氏名】天花寺 秀紀
【審査官】▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028136(WO,A1)
【文献】特開2013-059483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60 -23/698
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/10 -23/30
H04N 23/45 -23/56
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に励起光と可視光とを切り替えて照射して、前記励起光を照射することによって励起された蛍光による近赤外画像と可視光画像とを撮像する撮像装置において、
前記被写体に前記励起光と前記可視光とを切り替えて照射する照射部と、
前記被写体からの光を結像させる光学系と、
入射光を近赤外域の所定波長以下の波長の光と近赤外域の前記所定波長より長い波長の光とに分光するビームスプリッタと、
前記近赤外域の所定波長以下の波長の光の光路に配置され、可視光域の赤色以外に前記蛍光の少なくとも一部を透過させる赤色フィルタを有するカラー撮像素子と、
前記近赤外域の前記所定波長より長い波長の光の光路に配置される白黒撮像素子と、
前記カラー撮像素子の前に配置され、前記励起光の帯域をカットするバンドストップフィルタとを含み、
前記所定波長は、前記励起光の波長より長波長であり、
前記被写体に前記励起光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像と前記白黒撮像素子が撮像した画像とを合成した画像を前記近赤外画像として出力し、前記被写体に前記可視光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像を前記可視光画像として出力する撮像装置。
【請求項2】
被写体からの光を撮像素子に結像させる光学系を用いて励起光を照射することによって励起された蛍光による近赤外光映像と可視光映像とを撮像する撮像方法であって、
被写体に前記励起光と可視光とを切り替えて照射するステップと、
ビームスプリッタによって、入射光を近赤外域の所定波長以下の波長の光と近赤外域の前記所定波長より長い波長の光とに分光するステップと、
バンドストップフィルタにより、前記ビームスプリッタによって分光された前記所定波長以下の波長の光から、バンドストップフィルタにより前記励起光の帯域をカットするステップと、
可視光域の赤色以外に前記蛍光の少なくとも一部を透過させる赤色フィルタを有するカラー撮像素子により、前記バンドストップフィルタを透過した光を撮像するステップと、
白黒撮像素子により、前記ビームスプリッタによって分光された前記所定波長より長い波長の光を撮像するステップと
を有し、
前記所定波長は、前記励起光の波長より長波長であり、
前記被写体に前記励起光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像と前記白黒撮像素子が撮像した画像を合成した画像を近赤外画像として出力し、前記被写体に前記可視光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像を可視光画像として出力する撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外光映像の撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において近赤外光映像が用いられることがある。近赤外光は生体を透過しやすいため、生体の深部を観察するのに適している。近赤外光によって励起され近赤外蛍光を発するインドシアニングリーン(ICG)と呼ばれる検査試薬を体内に注入し、ICGによる蛍光を赤外線カメラで撮像することにより、生体内の状態を観察することができる。
【0003】
特許文献1には、撮像した可視光データ及び赤外光データを合成する際に、可視画像と赤外光画像の対応する撮像領域の位置ずれを少なくして、合成した画像データを表示する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-229317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高解像度画像を撮像するため、可視光撮像素子は画素ピッチを小さくして高画素化することが行われている。他方、近赤外光撮像素子は、近赤外光の撮像感度を確保するために、可視光撮像素子に比べて画素ピッチを大きくする必要があり、解像度が低くなり、可視光撮像素子の高画素化とは両立しない。そのため、可視光カメラと近赤外光カメラを独立して設けて、高解像度の可視光カラー映像と低解像度の近赤外光白黒映像とを別々に撮像し、映像を切り替えて表示したり、可視光カラー映像と近赤外光白黒映像を重畳して表示することが行われている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、近赤外光の撮像感度を落とすことなく、近赤外光映像の解像度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の撮像装置は、被写体からの光を結像させる光学系と、入射光を近赤外域の所定波長以下の波長の光と近赤外域の前記所定波長より長い波長の光とに分光するビームスプリッタと、前記近赤外域の所定波長以下の波長の光の光路に配置され、少なくとも赤色フィルタを有するカラー撮像素子と、前記近赤外域の前記所定波長より長い波長の光の光路に配置される白黒撮像素子と、前記カラー撮像素子の前に配置され、前記被写体に照射される励起光の帯域をカットするバンドストップフィルタとを含み、前記所定の波長は、前記励起光の波長より長波長であり、前記被写体に前記励起光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像と前記白黒撮像素子が撮像した画像とを合成した画像を近赤外画像として出力する。
【0008】
本発明の別の態様は、撮像方法である。この方法は、被写体からの光を撮像素子に結像させる光学系を用いて近赤外光映像を撮像する撮像方法であって、ビームスプリッタによって、入射光を近赤外域の所定波長以下の波長の光と近赤外域の前記所定波長より長い波長の光とに分光するステップと、バンドストップフィルタにより、前記ビームスプリッタによって分光された前記所定波長以下の波長の光から、バンドストップフィルタにより前記被写体に照射される励起光の帯域をカットするステップと、少なくとも赤色フィルタを有するカラー撮像素子により、前記バンドストップフィルタを透過した光りを撮像するステップと、白黒撮像素子により、前記ビームスプリッタによって分光された前記所定波長より長い波長の光を撮像するステップとを有し、前記所定の波長は、前記励起光の波長より長波長であり、前記被写体に前記励起光が照射された際に、前記カラー撮像素子が撮像した画像と前記白黒撮像素子が撮像した画像を合成した画像を近赤外画像として出力する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、近赤外光の撮像感度を落とすことなく、近赤外光映像の解像度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】可視光と近赤外光の波長域を説明する図である。
図2】画像センサの前面に配置される色フィルタを説明する図である。
図3】色フィルタの透過特性を説明する図である。
図4】画像センサの画素ピッチと感度の関係を説明する図である。
図5図5(a)および図5(b)は、可視光映像と近赤外光映像を独立して撮像する撮像装置の構成図である。
図6図6(a)および図6(b)は、UV-IRフィルタのフィルタ特性を説明する図である。
図7】ビームスプリッタの反射膜の分光特性を説明する図である。
図8】本実施の形態に係る撮像装置の構成図である。
図9図9(a)、図9(b)および図9(c)は、図8のバンドストップフィルタのフィルタ特性を説明する図である。
図10図10(a)、図10(b)および図10(c)は、カラー撮像素子の近赤外光映像と白黒撮像素子の近赤外光映像を画素ずらし合成する方法を説明する図である。
図11】本実施の形態の撮像装置による、可視光映像と近赤外光映像の撮像手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~7を参照して本発明の実施の形態の前提となる技術について説明する。
【0013】
図1は、可視光と近赤外光の波長域を説明する図である。光の波長域は波長の短い方から、紫外域、可視光域、近赤外域、中赤外域、遠赤外域に分かれている。波長400~660ナノメートル(nm)の間は人間の眼で普通に認識できる可視光域であり、それよりも波長の長い領域は赤外域である。符号200は励起光域を示し、符号210は蛍光発光域を示す。医療分野では生体内部を観察するために、生体を透過しやすい近赤外域の光が用いられる。一例として、近赤外光によって励起され、励起光とは波長の異なる近赤外蛍光を発するインドシアニングリーン(ICG)と呼ばれる検査試薬を体内に注入し、励起光を照射して近赤外光の発光を観察することが行われている。そのためには、眼では見ることのできない蛍光発光のみを励起光を除いて撮像することが必要である。
【0014】
図2は、画像センサの前面に配置される色フィルタ300を説明する図である。色フィルタ300は、一般的にR(赤)、G(緑)、B(青)の色フィルタを同図のようにベイヤ配列で並べたRGBフィルタである。RGBフィルタの後ろには画像センサのフォトダイオードがあり、各色フィルタを透過した光を電荷に変換する。蓄えられた電荷は電気信号に変換され、RGB3色のカラー映像が信号処理によって作り出される。
【0015】
図3は、色フィルタ300の透過特性を説明する図である。横軸は波長、縦軸は光の透過率を示す。符号220は青色フィルタ、符号222は緑色フィルタ、符号224は赤色フィルタの透過特性を示す。参考のため、符号226は近赤外光を透過する近赤外光フィルタの透過特性を示す。
【0016】
画像センサの1画素単位の大きさを画素ピッチと呼ぶ。画像を高解像度にするためには画像センサの画素数を上げる必要があり、近年、画素ピッチは小さくなってきている。他方、一般的に画素ピッチが小さくなると、センサの感度が低くなる。
【0017】
図4は、画像センサの画素ピッチと感度の関係を説明する図である。横軸は波長、縦軸は感度を示す。画素ピッチが小さい場合、光の波長に対する画像センサの感度は、符号230で示すグラフのようになる。それに対して画素ピッチが大きい場合、光の波長に対する画像センサの感度は、符号232で示すグラフのようになる。画素ピッチが大きいほど、センサの感度は高くなる。光の波長が長くなると、画像センサの感度は低くなるが、特に近赤外域での感度の低下は大きい。近赤外域の光を十分な感度で撮像するためには、画素ピッチを大きくする必要がある。これは、可視光域を撮像する画像センサの高画素化の要求とは両立しないため、画素ピッチの小さい(高画素数の)可視光用カラー撮像素子と画素ピッチの大きい(低画素数の)近赤外光用白黒撮像素子を独立して用意して、高解像度の可視光映像と低解像度の近赤外光映像を別々に取得することが通常である。
【0018】
図5(a)および図5(b)は、可視光映像と近赤外光映像を独立して撮像する撮像装置の構成図である。まず、図5(a)の撮像装置の構成を説明する。照明装置10は被写体400に可視光または近赤外域の励起光を照射する。ビームスプリッタ20は、可視光を透過し、赤外光を反射する光学素子である。
【0019】
可視光を照射された被写体400からの反射光はビームスプリッタ20を透過し、レンズ31によりカラー撮像素子50に結像する。レンズ31とカラー撮像素子50の間には、紫外域と赤外域の光をカットするUV-IRフィルタ40が配置される。カラー撮像素子50により可視光映像が撮像される。
【0020】
ここで、図6(a)および図6(b)を参照して、UV-IRフィルタ40のフィルタ特性を説明する。横軸は波長、縦軸は透過率を示す。符号240は可視光域を示す。カラー撮像素子のRGBフィルタの特性によれば、青色フィルタは可視光域の青色以外に紫外域の光の一部を透過させ、赤色フィルタは可視光域の赤色以外に近赤外域の光の一部を透過させる。UV-IRフィルタ40は、可視光域以外の不要光をカットするために設けられるバンドパスフィルタであり、400nm~660nmの可視光を通過させ、400nm未満の紫外光と660nmを超える赤外光をカットする。カットフィルタとして、赤外光だけをカットするIRフィルタを用いてもよい。また、自然光が入らないクローズドな環境では、光源の波長を制限し、赤外域の光をカットするようにしてもよい。
【0021】
図5(a)を再び参照する。励起光を照射された被写体400からの蛍光はビームスプリッタ20の反射膜で反射し、レンズ32により白黒撮像素子60に結像する。白黒撮像素子60により近赤外光映像が撮像される。近赤外光の撮像感度を高めるため、白黒撮像素子60の画素ピッチは、カラー撮像素子50の画素ピッチより大きくする必要がある。したがって、センサのサイズが同一であれば、白黒撮像素子60の画素数はカラー撮像素子50の画素数よりも少なくなり、白黒撮像素子60により撮像された近赤外光映像の解像度は、カラー撮像素子50により撮像された可視光映像の解像度よりも低くなる。
【0022】
ここで、図7を参照して、ビームスプリッタ20の反射膜の分光特性を説明する。横軸は波長、縦軸は透過率を示す。符号250は近赤外光域を示す。近赤外光域に対して、符号252は励起光のスペクトル、符号254は蛍光のスペクトルを示す。ビームスプリッタ20の反射膜は符号260に示すようなショートパスフィルタの特性をもち、可視光は透過させてカラー撮像素子50に導き、近赤外光は反射させて近赤外用の白黒撮像素子60に光を導く。さらに、ビームスプリッタ20の反射膜は、近赤外光の内、励起光252は透過させ、蛍光254は反射させるように透過する波長帯域が調整されている。これにより、白黒撮像素子60は蛍光域の光だけを撮像することができる。
【0023】
図5(a)の撮像装置では、カラー撮像素子50により可視光映像が撮像され、白黒撮像素子60により近赤外光映像が撮像され、可視光映像と近赤外光映像とが切り替えて出力される。
【0024】
図5(b)の撮像装置は、カラー撮像素子50により可視光映像が、白黒撮像素子60により近赤外光映像が独立して撮像される点は図5(a)の撮像装置と同じであるが、共通のレンズ30でカラー撮像素子50と白黒撮像素子60に結像させるため、可視光映像と近赤外光映像とを重畳して出力することもできる点が異なる。それ以外の構成は、図5(a)の撮像装置と同じである。
【0025】
図8は、本実施の形態に係る撮像装置の構成図である。照明装置10は被写体400に可視光または近赤外域の励起光を照射する。ビームスプリッタ25は、可視光および赤外光の一部を透過し、残りの赤外光を反射する光学素子である。
【0026】
可視光を照射された被写体400からの反射光はレンズ30を通ってビームスプリッタ25を透過し、カラー撮像素子50に結像する。ビームスプリッタ25とカラー撮像素子50の間には、特定の帯域をカットするバンドストップフィルタ45が配置される。バンドストップフィルタ45は、可視光および近赤外光の一部を透過するため、可視光照射時はカラー撮像素子50により可視光映像が撮像され、近赤外域の励起光照射時はカラー撮像素子50により近赤外光映像が撮像される。
【0027】
ここで、図9(a)、図9(b)および図9(c)を参照して、バンドストップフィルタ45のフィルタ特性を説明する。横軸は波長、縦軸は透過率を示す。符号270はバンドストップフィルタ45によって透過される光域を示す。図9(a)に示すように、バンドストップフィルタ45は、400nm未満の紫外光をカットし、被写体に照射される励起光252をカットするために660nm~800nmの近赤外光をカットするが、被写体からの蛍光254の一部を撮像するために800nm以上の近赤外光は透過する。
【0028】
その結果、可視光照射時は、図9(b)のようにR、G、Bの可視光が透過して可視光画像が撮像されるが、近赤外域の励起光照射時は、図9(c)のように近赤外域の蛍光の一部が赤色フィルタを透過して近赤外光映像が撮像される。
【0029】
図8を再び参照する。励起光を照射された被写体400からの蛍光はレンズ30を通ってビームスプリッタ25の反射膜で反射し、ビームスプリッタ25の壁で再度反射して白黒撮像素子60に結像する。1回反射では画像が左右反転するため、2回反射させる構成にすることにより、反転しない画像が白黒撮像素子60に結像する。近赤外光の撮像感度を高めるため、白黒撮像素子60の画素ピッチは、カラー撮像素子50の画素ピッチより大きくする必要がある。
【0030】
ビームスプリッタ25の反射膜の分光特性は図7で説明したものと同じである。すなわち、ビームスプリッタ25の反射膜は可視光は透過させ、近赤外光の内、励起光252は透過させ、蛍光254は反射させる。
【0031】
ここで、ビームスプリッタ25の反射膜により分光される波長帯域を調整することで、蛍光254の一部を透過させてカラー撮像素子50に結像させ、残りの蛍光254を反射させて白黒撮像素子60に結像させる。反射膜により分光される半値波長は、蛍光254の波長帯域の略半分となる波長またはそれ以上に設定する。カラー撮像素子50は白黒撮像素子60よりも画素ピッチが小さいため、蛍光254を撮像するときのカラー撮像素子50の感度は白黒撮像素子60の強度よりも低くなる。そのため、反射膜により分光される波長の半値は、カラー撮像素子50の感度を上げる方向に調整し、カラー撮像素子50のSN比を向上させるのが好ましい。すなわち、反射膜により分光される波長の半値は、蛍光254の波長帯域の略半分となる波長よりも大きくして、カラー撮像素子50の方により多くの蛍光254を入射させることが好ましい。
【0032】
このようにビームスプリッタ25の分光特性とバンドストップフィルタ45のフィルタ特性を構成することにより、被写体400に励起光252を照射して、蛍光254を撮像するとき、カラー撮像素子50の赤色撮像素子には蛍光254の一部が結像し、白黒撮像素子60には残りの蛍光254が結像する。
【0033】
図10(a)、図10(b)および図10(c)は、カラー撮像素子50の近赤外光映像と白黒撮像素子60の近赤外光映像を画素ずらし合成する方法を説明する図である。カラー撮像素子50は、R、G、Bの画素が図10(a)に示すように配置されている。他方、白黒撮像素子60は、カラー撮像素子50よりも画素ピッチが大きく、図10(b)のように近赤外光の輝度を示す画素が配置されている。ここでは、白黒撮像素子60の画素ピッチは、カラー撮像素子50の画素ピッチの2倍であるとする。
【0034】
近赤外光の撮像時には、図10(a)のカラー撮像素子50のR画素にも近赤外光が撮像されているため、図10(b)の白黒撮像素子60の画素と合成することで、近赤外光映像を取得することができる。ここで、図10(b)の白黒撮像素子60の解像度は、図10(a)のカラー撮像素子50の解像度の半分であるが、合成の際、図10(b)の白黒撮像素子60の画素を、図10(a)のカラー撮像素子50のR画素に対して半画素(カラー撮像素子50の画素ピッチの半分)ずらして合成することで、近赤外感度を落とすことなく解像度を上げることができる。
【0035】
図10(c)は、白黒撮像素子60の画素をカラー撮像素子50のR画素に対して半画素ずらして合成した画像を示す。このようにカラー撮像素子50のR画素に取得された近赤外光映像を半画素ずらして白黒撮像素子60の画素に合成すれば、白黒撮像素子60の近赤外光映像の解像度は、カラー撮像素子50の可視光映像の解像度と同じになる。ただし、解像度を最も上げるには、白黒撮像素子60の画素をカラー撮像素子50のR画素に対して半画素ずらすことが好ましいが、白黒撮像素子60の画素をカラー撮像素子50のR画素に対して半画素以外のずらし量でも解像度を上げることは可能である。
【0036】
より一般には、白黒撮像素子60の画素ピッチがカラー撮像素子50の画素ピッチのn倍(nは自然数)である場合、白黒撮像素子60の画素をカラー撮像素子50のR画素に対して1/n画素ずらして合成することにより、白黒撮像素子60の近赤外光映像の解像度をカラー撮像素子50の可視光映像の解像度に揃えることができる。
【0037】
もっとも解像度を上げる必要がないなら、画素ずらしをせずに白黒撮像素子60の画素とカラー撮像素子50のR画素を合成することにより、近赤外光映像を生成してもよい。
【0038】
なお、図8の撮像装置において、図5(a)の撮像装置のように、カラー撮像素子50用のレンズ31と、白黒撮像素子60用のレンズ32を別々に設ける構成にしてもよい。また、ビームスプリッタ25は2回反射のプリズムでなく、1回反射のプリズムにしてもよい。その場合、画素をずらして合成する際、白黒撮像素子60により撮像された画像を左右反転させる信号処理を合わせて行えばよい。
【0039】
図11は、図8の本実施の形態の撮像装置による、可視光映像と近赤外光映像の撮像手順を説明するフローチャートである。
【0040】
照明装置10により可視光を被写体400に照射する(S10)。ビームスプリッタ25を透過した可視光がバンドストップフィルタ45により紫外域および近赤外域の不要光をカットされてカラー撮像素子50に結像し、可視光映像が撮像される(S20)。
【0041】
照明装置10により励起光を被写体400に照射する(S30)。ビームスプリッタ25を透過した近赤外光の内、励起光がバンドストップフィルタ45によりカットされ、蛍光がカラー撮像素子50の赤色フィルタをもつ撮像素子に結像し、赤色撮像素子に近赤外光映像Aが撮像される(S40)。
【0042】
ビームスプリッタ25の反射膜は、近赤外光の内、励起光を透過させ、蛍光を反射させ、反射した蛍光が白黒撮像素子60に結像し、白黒撮像素子60に近赤外光映像Bが撮像される(S50)。白黒撮像素子60に撮像された近赤外光映像Bは、カラー撮像素子50に撮像された可視光画像に比べて解像度が低い。
【0043】
カラー撮像素子50の赤色撮像素子に撮像された近赤外光映像Aの画素を、白黒撮像素子60に撮像された近赤外光映像Bの画素に対してずらして二つの映像を合成することにより、可視光画像と同等の解像度をもつ近赤外光映像を生成する(S60)。
【0044】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0045】
上記の実施の形態では、励起光による蛍光を撮像して近赤外光映像を生成したが、本実施の形態の画素ずらしによる画像合成は、励起光を用いない通常の赤外線カメラによって近赤外光映像を撮像する場合にも適用することができる。一般のカメラでは赤外光が入り込まないようにIRフィルタをカラー撮像素子の前に置いているが、IRフィルタを用いないで可視光映像を撮像すると、赤色フィルタをもつ撮像素子には赤外光も取り込まれている。可視光帯域をカットするフィルタを用いればカラー撮像素子によって赤外光映像を撮像することができるので、白黒撮像素子によって撮像された赤外光映像と合成して近赤外感度を落とすことなく解像度を上げることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 照明装置、 20、25 ビームスプリッタ、 30、31、32 レンズ、 40 UV-IRフィルタ、 45 バンドストップフィルタ、 50 カラー撮像素子、 60 白黒撮像素子、 400 被写体。
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