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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】建設機械におけるファン駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230719BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E02F9/22 B
E02F9/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021158303
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048790
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 康輔
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-250342(JP,A)
【文献】特開2012-154051(JP,A)
【文献】特開平10-68142(JP,A)
【文献】特許第4900625(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第111577714(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと冷却ファンを備える建設機械におけるファン駆動制御装置であって、
前記エンジンにより駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプであるメインポンプと、
第1モータポート及び第2モータポートを有する油圧モータであるファンモータと、
前記メインポンプと前記ファンモータとの間に介在し、前記第1モータポートにつながる第1モータライン及び前記第2モータポートにつながる第2モータラインに接続されたモータ制御弁であって、前記メインポンプから吐出された作動油が前記第1モータラインを通じて前記ファンモータに供給されて当該ファンモータから前記第2モータラインに吐出されることを許容して前記冷却ファンを正回転させる正回転位置と前記第1モータライン及び前記第2モータラインのうち前記ファンモータから作動油が吐出される吐出側モータラインにおいて前記ファンモータの回転速度を低下させるような制動圧を発生させながら前記第1モータラインと前記第2モータラインとを連通するモータライン連通路を形成する連通制動位置との間で切り換わることが可能なモータ制御弁と、
前記エンジンを停止させるための指令である停止指令を出力する停止指令出力器と、
前記停止指令が出力された場合に前記モータ制御弁を前記連通制動位置に切り換える弁制御部と、を備えるファン駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン駆動制御装置であって、
前記モータ制御弁は、前記メインポンプから吐出された作動油が前記第2モータラインを通じて前記ファンモータに供給されて当該ファンモータから第1モータラインに吐出されることを許容して前記冷却ファンを逆回転させる逆回転位置をさらに有する、ファン駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のファン駆動制御装置であって、
前記モータライン連通路は、前記吐出側モータラインにおいて前記制動圧を発生させる第1の絞りと第2の絞りとを有し、前記第1の絞り及び前記第2の絞りは直列に並ぶように設けられている、ファン駆動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のファン駆動制御装置であって、
前記モータ制御弁は、前記メインポンプの吐出口につながる吐出ラインに接続されたポートであるプレッシャーポートを有し、
前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記プレッシャーポートは、前記モータライン連通路のうちの前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間の中間部に接続される、ファン駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のファン駆動制御装置であって、
前記モータライン連通路は、前記吐出側モータラインにおいて前記制動圧を発生させる第1の絞りと第2の絞りとを有し、前記第1の絞り及び前記第2の絞りは直列に並ぶように設けられ、
前記モータ制御弁は、前記メインポンプの吐出口につながる吐出ラインに接続されたポートであるプレッシャーポートを有し、
前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記プレッシャーポートは、前記モータライン連通路のうちの前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間の中間部に接続され、
前記ファン駆動制御装置は、
前記吐出ラインから分岐するバイパスラインであって、前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において前記メインポンプから吐出された作動油がタンクに流れることを許容するバイパスラインと、
前記吐出ラインのうち前記バイパスラインが分岐する部分と前記モータ制御弁との間の部位に配置され、作動油が前記モータ制御弁から前記メインポンプに向かうことを阻止するチェック弁と、をさらに備える、ファン駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のファン駆動制御装置であって、
前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記エンジンの回転数が、前記停止指令が出力された時点の回転数よりも小さくならないように、又は予め設定された回転数設定値若しくは回転数範囲内に維持されるように、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部をさらに備えるファン駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載のファン駆動制御装置であって、
前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記エンジンの回転数が、前記停止指令が出力された時点の回転数よりも小さくならないように、又は予め設定された回転数設定値若しくは回転数範囲内に維持されるように、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部と、
前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、をさらに備え、
前記モータ制御弁は、前記パイロットポンプによるパイロット圧が与えられるパイロットポートを有し、前記パイロットポートにパイロット圧が与えられていないときに前記正回転位置に保持され、前記パイロットポートに予め設定された大きさのパイロット圧が与えられたときに前記連通制動位置に切り換わるように構成される、ファン駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項に記載のファン駆動制御装置であって、
前記メインポンプは、可変容量形の油圧ポンプであり、
前記ファン駆動制御装置は、
前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記第1モータライン及び前記第2モータラインのうち、作動油が前記ファンモータに吸入される吸入側モータラインに対して前記メインポンプから吐出される作動油の少なくとも一部が補給されることを許容する少なくとも一つの補給機構と、
前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記メインポンプの容量が、前記停止指令が出力された時点の容量よりも小さくならないように、又は予め設定された容量設定値若しくは容量範囲内に維持されるように、前記メインポンプの容量を制御するポンプ制御部と、をさらに備えるファン駆動制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のファン駆動制御装置であって、
前記モータ制御弁は、前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記メインポンプから吐出された作動油がタンクラインを介してタンクに流れることを許容するように構成され、
前記少なくとも一つの補給機構は、
前記第1モータラインと前記タンクラインとを接続する第1アンチキャビテーションラインに配置され、作動油が前記第1モータラインから前記タンクラインに向かうことを阻止する第1チェック弁であって、前記吸入側モータラインが前記第1モータラインである場合に、前記タンクラインを流れる作動油の少なくとも一部が前記第1アンチキャビテーションラインを介して前記第1モータラインに供給されることを許容するように開弁する第1チェック弁と、
前記第2モータラインと前記タンクラインとを接続する第2アンチキャビテーションラインに配置され、作動油が前記第2モータラインから前記タンクラインに向かうことを阻止する第2チェック弁であって、前記吸入側モータラインが前記第2モータラインである場合に、前記タンクラインを流れる作動油の少なくとも一部が前記第2アンチキャビテーションラインを介して前記第2モータラインに供給されることを許容するように開弁する第2チェック弁と、を含む、ファン駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械において冷却ファンの動作を制御するためのファン駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、冷却ファンを正回転から逆回転に又は逆回転から正回転に切り換える回転切換時においてキャビテーションを防止するために、エンジンを稼働させた状態で切換弁を停止位置にして冷却ファンの回転を停止させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4900625号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの作動中にオペレータがエンジンを停止させるための操作、具体的には例えばエンジンキーのオフ操作を行うと、エンジンの回転数は次第に減少し、その後エンジンは停止する。ファンモータの吸入側ポート、当該吸入側ポートに接続される油路である吸入側モータラインなどのファンモータの吸入側におけるキャビテーションは、エンジンの回転数が次第に減少してエンジンが停止する過程であるエンジン停止過程においても発生することがある。しかし、特許文献1では、エンジン停止過程におけるキャビテーションについては何ら考慮されていない。
【0005】
本開示は、上記のような問題を踏まえてなされたものであり、エンジン停止過程におけるキャビテーションの発生を抑制することができるファン駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供されるのは、エンジンと冷却ファンを備える建設機械におけるファン駆動制御装置であって、前記エンジンにより駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプであるメインポンプと、第1モータポート及び第2モータポートを有する油圧モータであるファンモータと、前記メインポンプと前記ファンモータとの間に介在し、前記第1モータポートにつながる第1モータライン及び前記第2モータポートにつながる第2モータラインに接続されたモータ制御弁であって、前記メインポンプから吐出された作動油が前記第1モータラインを通じて前記ファンモータに供給されて当該ファンモータから前記第2モータラインに吐出されることを許容して前記冷却ファンを正回転させる正回転位置と前記第1モータライン及び前記第2モータラインのうち前記ファンモータから作動油が吐出される吐出側モータラインにおいて前記ファンモータの回転速度を低下させるような制動圧を発生させながら前記第1モータラインと前記第2モータラインとを連通するモータライン連通路を形成する連通制動位置との間で切り換わることが可能なモータ制御弁と、前記エンジンを停止させるための指令である停止指令を出力する停止指令出力器と、前記停止指令が出力された場合に前記モータ制御弁を前記連通制動位置に切り換える弁制御部と、を備える。
【0007】
このファン駆動制御装置では、停止指令出力器から停止指令が出力されてモータ制御弁が例えば正回転位置から連通制動位置に切り換わると、モータライン連通路は、慣性により回転を続けるファンモータから吐出側モータライン(例えば第2モータライン)に吐出された作動油を吸入側モータライン(例えば第1モータライン)に導くことができるので、エンジンを停止させるための停止指令が出力された後においても吸入側モータラインに対する作動油の供給量が確保される。しかも、モータライン連通路は、吐出側モータラインにおいて制動圧を発生させるので、停止指令の出力からファンモータが停止するまでの時間を短くすることができる。すなわち、このファン駆動制御装置は、エンジンを停止させるための停止指令が出力されると、吸入側モータラインに対する作動油の供給量を確保しながらファンモータを比較的短い時間で停止させることができるので、エンジン停止過程においてキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0008】
前記モータ制御弁は、前記メインポンプから吐出された作動油が前記第2モータラインを通じて前記ファンモータに供給されて当該ファンモータから第1モータラインに吐出されることを許容して前記冷却ファンを逆回転させる逆回転位置をさらに有することが好ましい。この構成では、モータ制御弁が逆回転位置に保持された状態で停止指令出力器から停止指令が出力された場合においても、弁制御部は、モータ制御弁を逆回転位置から連通制動位置に切り換える。従って、冷却ファンが正回転している状態及び逆回転している状態の何れの状態からのエンジン停止過程においてもキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0009】
前記モータライン連通路は、前記吐出側モータラインにおいて前記制動圧を発生させる第1の絞りと第2の絞りとを有し、前記第1の絞り及び前記第2の絞りは直列に並ぶように設けられていることが好ましい。この構成のように直列に並ぶ2つの絞りが前記制動圧を発生させる場合と例えば単一の絞りが同じ大きさの制動圧を発生させる場合とを比較すると、2つの絞りのそれぞれの流路では、単一の絞りの流路に比べて、断面積を大きくすることができる。このことは、断面積の小さい単一の絞りを形成する場合に比べて、2つの絞りを形成するときに生じる製造上のばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0010】
前記モータ制御弁は、前記メインポンプの吐出口につながる吐出ラインに接続されたポートであるプレッシャーポートを有し、前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記プレッシャーポートは、前記モータライン連通路のうちの前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間の中間部に接続されることが好ましい。この構成では、メインポンプから吐出された作動油が吐出ライン、プレッシャーポート及びモータライン連通路をこの順に通過して吸入側モータラインに供給される場合、当該作動油は、モータライン連通路における第1の絞り及び第2の絞りの何れか一方を通過して吸入側モータラインに供給される。この構成では、直列に並ぶ第1の絞り及び第2の絞りの両方を作動油が通過して吸入側モータラインに供給される場合に比べて、作動油が吸入側モータラインに供給されるときの抵抗が大きくなることを抑制できる。すなわち、この構成では、モータライン連通路全体としては、直列に並ぶ第1の絞り及び第2の絞りの両方によって吐出側モータラインにおいて十分な大きさの制動圧が確保される。その一方で、モータライン連通路が吸入側モータラインへの補給路の一部として機能するときには、メインポンプから吐出された作動油が第1の絞り及び第2の絞りの何れか一方を通って吸入側モータライン(第1モータライン又は第2モータライン)に補給される。これにより、冷却ファンが正回転している状態及び逆回転している状態の何れの状態からのエンジン停止過程においても、メインポンプから吐出された作動油がモータライン連通路を通じて吸入側モータラインに補給されるときの抵抗を比較的小さくすることが可能になる。
【0011】
前記モータライン連通路は、前記吐出側モータラインにおいて前記制動圧を発生させる第1の絞りと第2の絞りとを有し、前記第1の絞り及び前記第2の絞りは直列に並ぶように設けられ、前記モータ制御弁は、前記メインポンプの吐出口につながる吐出ラインに接続されたポートであるプレッシャーポートを有し、前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記プレッシャーポートは、前記モータライン連通路のうちの前記第1の絞りと前記第2の絞りとの間の中間部に接続され、前記ファン駆動制御装置は、前記吐出ラインから分岐するバイパスラインであって、前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において前記メインポンプから吐出された作動油がタンクに流れることを許容するバイパスラインと、前記吐出ラインのうち前記バイパスラインが分岐する部分と前記モータ制御弁との間の部位に配置され、作動油が前記モータ制御弁から前記メインポンプに向かうことを阻止するチェック弁と、をさらに備えることが好ましい。この構成では、モータ制御弁は、連通制動位置に切り換えられた状態において、メインポンプから吐出された作動油がバイパスラインを通じてタンクに流れることを許容する。この状態において、ファンモータの吸入側における圧力が低くなると、第1モータライン及び第2モータラインのうちの吸入側モータラインに対してメインポンプから吐出される作動油の少なくとも一部がチェック弁及びモータライン連通路を介して補給されるので、キャビテーションの発生がより効果的に抑制される。また、この構成では、停止指令出力器から停止指令が出力されてモータ制御弁が正回転位置又は逆回転位置から連通制動位置に切り換わると、メインポンプから吐出された作動油は吐出ラインから分岐するバイパスラインを通ってタンクに流れるのでバイパスラインにおける圧力は低くなり、その一方で、モータ連通路の中間部における圧力は、吐出側モータラインにおける圧力と吸入側モータラインにおける圧力の間の中間的な圧力になる。チェック弁は、モータ制御弁が連通制動位置に切り換えられた状態において、モータ連通路の中間部における作動油が吐出ラインに逆流するのを防止するとともに、吐出側モータラインにおいて十分な制動圧を発生させることができる。
【0012】
前記ファン駆動制御装置は、前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記エンジンの回転数が、前記停止指令が出力された時点の回転数よりも小さくならないように、又は予め設定された回転数設定値若しくは回転数範囲内に維持されるように、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部をさらに備えることが好ましい。この構成では、エンジンを停止させるための停止指令が出力された後においても、エンジンの回転数がある程度の大きさに維持されるので、吸入側モータラインに補給される作動油の量、具体的には、エンジンにより駆動されるメインポンプから吐出されてチェック弁を介して吸入側モータラインに補給される作動油の量を確保することができる。これにより、キャビテーションの発生がより効果的に抑制される。
【0013】
前記ファン駆動制御装置は、前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記エンジンの回転数が、前記停止指令が出力された時点の回転数よりも小さくならないように、又は予め設定された回転数設定値若しくは回転数範囲内に維持されるように、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部と、前記エンジンにより駆動されるパイロットポンプと、をさらに備え、前記モータ制御弁は、前記パイロットポンプによるパイロット圧が与えられるパイロットポートを有し、前記パイロットポートにパイロット圧が与えられていないときに前記正回転位置に保持され、前記パイロットポートに予め設定された大きさのパイロット圧が与えられたときに前記連通制動位置に切り換わるように構成されることが好ましい。この構成では、エンジンを停止させるための停止指令が出力された後においても、エンジンの回転数がある程度の大きさに維持されるので、モータ制御弁を連通制動位置に保持するためのパイロット圧を確保することができる。
【0014】
前記メインポンプは、可変容量形の油圧ポンプであり、前記ファン駆動制御装置は、前記モータ制御弁が前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記第1モータライン及び前記第2モータラインのうち、作動油が前記ファンモータに吸入される吸入側モータラインに対して前記メインポンプから吐出される作動油の少なくとも一部が補給されることを許容する少なくとも一つの補給機構と、前記停止指令出力器から前記停止指令が出力された場合に、予め設定された条件が満たされるまでの間、前記メインポンプの容量が、前記停止指令が出力された時点の容量よりも小さくならないように、又は予め設定された容量設定値若しくは容量範囲内に維持されるように、前記メインポンプの容量を制御するポンプ制御部と、をさらに備えることが好ましい。この構成では、エンジンを停止させるための停止指令が出力された後においても、メインポンプの容量がある程度の大きさに維持されるので、メインポンプから吐出されて補給機構を介して吸入側モータラインに補給される作動油の量を確保することができる。これにより、キャビテーションの発生がより効果的に抑制される。
【0015】
前記モータ制御弁は、前記連通制動位置に切り換えられた状態において、前記メインポンプから吐出された作動油がタンクラインを介してタンクに流れることを許容するように構成され、前記少なくとも一つの補給機構は、前記第1モータラインと前記タンクラインとを接続する第1アンチキャビテーションラインに配置され、作動油が前記第1モータラインから前記タンクラインに向かうことを阻止する第1チェック弁であって、前記吸入側モータラインが前記第1モータラインである場合に、前記タンクラインを流れる作動油の少なくとも一部が前記第1アンチキャビテーションラインを介して前記第1モータラインに供給されることを許容するように開弁する第1チェック弁と、前記第2モータラインと前記タンクラインとを接続する第2アンチキャビテーションラインに配置され、作動油が前記第2モータラインから前記タンクラインに向かうことを阻止する第2チェック弁であって、前記吸入側モータラインが前記第2モータラインである場合に、前記タンクラインを流れる作動油の少なくとも一部が前記第2アンチキャビテーションラインを介して前記第2モータラインに供給されることを許容するように開弁する第2チェック弁と、を含むことが好ましい。この構成では、エンジンを停止させるための停止指令が出力された後においても、メインポンプの容量がある程度の大きさに維持されるので、タンクラインを流れる作動油の流量を確保することができる。これにより、タンクラインから第1アンチキャビテーションラインを介して第1モータラインに供給される作動油の流量(補給量)及びタンクラインから第2アンチキャビテーションラインを介して第2モータラインに供給される作動油の流量(補給量)を確保することができる。これにより、キャビテーションの発生がより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、エンジン停止過程におけるキャビテーションの発生を抑制することができるファン駆動制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に係るファン駆動制御装置を備える建設機械を示す側面図である。
図2】前記建設機械の油圧回路の一部であり、冷却ファンの動作の制御に関係する部分を示す図である。
図3】前記建設機械の油圧回路の一部であり、冷却ファンの動作の制御に関係する部分を示す図である。
図4】前記ファン駆動制御装置のモータ制御弁の一例を示す図である。
図5】前記ファン駆動制御装置のコントローラの演算制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るファン駆動制御装置を備える油圧ショベル100を示す側面図である。油圧ショベル100は、建設機械の一例である。
【0019】
図1に示すように、油圧ショベル100は、地盤上を走行可能な下部走行体1と、上下方向に向く旋回中心軸Xの回りに旋回可能に下部走行体1に支持された上部旋回体2と、上部旋回体2に支持された作業装置3と、を備える。下部走行体1及び上部旋回体2は機体の一例である。
【0020】
下部走行体1は、一対のクローラ走行装置と、これらの走行装置をつなぐ下部フレームと、を備える。上部旋回体2は、下部フレームに旋回可能に支持された上部フレームと、上部フレームの前部に支持されたキャビンと、上部フレームの後部に支持されたカウンタウエイトと、を備える。上部旋回体2は、例えばキャビンの後方に形成された機械室10を有する。
【0021】
作業装置3は、ブーム4と、アーム5と、バケット6と、を備える。ブーム4は、上部旋回体2の上部フレームに対して起伏可能となるように上部フレームに支持されている。アーム5は、ブーム4に対して回動可能となるようにブーム4に支持されている。バケット6は、アーム5に対して回動可能となるようにアーム5に支持されている。
【0022】
油圧ショベル100は、作業装置3を動作させるための複数の作業アクチュエータをさらに備える。複数の作業アクチュエータは、ブームシリンダ7と、アームシリンダ8と、バケットシリンダ9と、を含む。ブームシリンダ7は、ブーム4を上部旋回体2に対して起伏させるための油圧シリンダである。アームシリンダ8は、アーム5をブーム4に対して回動させるための油圧シリンダである。バケットシリンダ9は、バケット6をアーム5に対して回動させるための油圧シリンダである。
【0023】
油圧ショベル100は、エンジン11と、冷却ファン14と、冷却装置15と、をさらに備え、これらは機械室10内に配置されている。冷却ファン14は、機械室10内に空気を取り込み、当該空気を冷却装置15に送る。冷却装置15は、例えば、エンジン11を冷却するためのラジエータ液を冷却するラジエータと油圧ショベル100を作動させるための作動油を冷却するオイルクーラとの少なくとも一方を含んでいてもよい。冷却装置15は、当該冷却装置15のラジエータを通過する空気とラジエータ液との間で熱交換を行わせることによりラジエータ液を冷却し、冷却装置15のオイルクーラを通過する空気と作動油との間で熱交換を行わせることにより作動油を冷却する。冷却装置15を通過した空気は、機械室10から排出される。
【0024】
油圧ショベル100は、本実施形態に係るファン駆動制御装置101をさらに備える。ファン駆動制御装置101は、冷却ファン14の動作を制御するための装置である。図2は、油圧ショベル100の油圧回路のうち、冷却ファン14の動作の制御に関係する部分を示す図である。
【0025】
ファン駆動制御装置101は、メインポンプ12と、レギュレータ12Aと、ファンモータ13と、モータ制御弁16と、パイロットポンプ21と、第1チェック弁31と、第2チェック弁32と、第3チェック弁33と、リリーフ弁41と、モータ比例弁22と、停止指令出力器23と、コントローラ50と、タンク40と、を備える。タンク40は、作動油を貯留する。
【0026】
メインポンプ12は、作動油を吐出する可変容量形の油圧ポンプである。メインポンプ12は、エンジン11により駆動される。
【0027】
レギュレータ12Aは、コントローラ50からのポンプ容量指令に応じてメインポンプ12の斜板の傾転角を変えるように作動し、これにより、メインポンプ12の容量は、ポンプ容量指令に応じて調節される。
【0028】
パイロットポンプ21は、パイロット油を吐出することによりパイロット圧を発生させるための油圧ポンプである。パイロットポンプ21は、エンジン11により駆動される。
【0029】
ファンモータ13は、第1モータポート13aと、第2モータポート13bと、を有する油圧モータである。ファンモータ13は、作動油が第1モータポート13aに供給されて第2モータポート13bから吐出されることにより正回転方向に回転して冷却ファン14を正回転させる。ファンモータ13は、作動油が第2モータポート13bに供給されて第1モータポート13aから吐出されることにより逆回転方向に回転して冷却ファン14を逆回転させる。
【0030】
モータ制御弁16は、メインポンプ12とファンモータ13との間に介在し、第1モータポート13aにつながる第1モータライン65及び第2モータポート13bにつながる第2モータライン66に接続されている。モータ制御弁16は、図2及び図4に示すように、複数のバルブポートと、一つのパイロットポート16Pと、を有する。モータ制御弁16は、正回転位置16aと、連通制動位置16bと、逆回転位置16cと、を有する3位置型の切換弁である。モータ制御弁16は、パイロットライン73を介してパイロットポンプ21によってパイロットポート16Pに与えられるパイロット圧に応じて、正回転位置16aと、連通制動位置16bと、逆回転位置16cと、の何れかに切り換えられることが可能なように構成される。具体的には、モータ制御弁16は、図略のスプールと、当該スプールが摺動可能なようにスプールを支持するバルブ本体と、を備える。モータ制御弁16のスプールの位置は、前記パイロット圧に応じて、正回転位置16aと、連通制動位置16bと、逆回転位置16cと、の何れかに切り換わることが可能である。
【0031】
具体的には、モータ制御弁16は、パイロット圧がパイロットポート16Pに与えられないときには正回転位置16aに保持される。モータ制御弁16は、連通制動位置16bに切り換わるような大きさのパイロット圧がパイロットライン73を通じてパイロットポート16Pに与えられたときには連通制動位置16bに切り換わる。モータ制御弁16は、逆回転位置16cに切り換わるような大きさのパイロット圧がパイロットライン73を通じてパイロットポート16Pに与えられたときには逆回転位置16cに切り換わる。このような構造のモータ制御弁16が採用されることで、モータ制御弁16を動作させるための制御機構において例えば断線などの不具合が発生した場合であっても、モータ制御弁16は正回転位置16aに保持されるので、引き続き冷却ファン14による冷却が可能である。
【0032】
モータ制御弁16の複数のバルブポートは、プレッシャーポート(Pポート)と、タンクポート(Tポート)と、第1ポート(Aポート)と、第2ポート(Bポート)と、バイパス入口ポートと、バイパス出口ポートと、を含む。
【0033】
Pポートは、メインポンプ12の吐出口に吐出ライン61及び吐出ライン64を含むラインであるポンプ吐出ラインを介して接続されるポートである。Tポートは、タンク40にタンクライン67を介して接続されるポートである。Aポートは、ファンモータ13の第1モータポート13aに第1モータライン65を介して接続されるポートである。Bポートは、ファンモータ13の第2モータポート13bに第2モータライン66を介して接続されるポートである。バイパス入口ポートは、メインポンプ12の吐出口に吐出ライン61及びセンターバイパスライン62の上流側部分を介して接続されるポートである。バイパス出口ポートは、タンクライン67にセンターバイパスライン62の下流側部分を介して接続されるポートである。吐出ライン64とセンターバイパスライン62の上流側部分は、吐出ライン61から分岐するように配置されている。センターバイパスライン62は、バイパスラインの一例である。
【0034】
正回転位置16aは、メインポンプ12から吐出された作動油が第1モータライン65を通じてファンモータ13に供給されて当該ファンモータ13から第2モータライン66に吐出されることを許容して冷却ファン14を正回転させるような位置である。この場合、第1モータライン65は、作動油がファンモータ13に吸入される吸入側モータラインであり、第2モータライン66は、ファンモータ13から作動油が吐出される吐出側モータラインである。図2及び図4に示すように、正回転位置16aでは、PポートとAポートとが連通する連通路PAと、BポートとTポートとが連通する連通路BTと、が形成され、バイパス入口ポートとバイパス出口ポートとの間の油路は遮断される。
【0035】
逆回転位置16cは、メインポンプ12から吐出された作動油が第2モータライン66を通じてファンモータ13に供給されて当該ファンモータ13から第1モータライン65に吐出されることを許容して冷却ファン14を逆回転させるような位置である。この場合、第2モータライン66は、作動油がファンモータ13に吸入される吸入側モータラインであり、第1モータライン65は、ファンモータ13から作動油が吐出される吐出側モータラインである。図4に示すように逆回転位置16cでは、PポートとBポートとが連通する連通路PBと、AポートとTポートとが連通する連通路ATと、が形成され、バイパス入口ポートとバイパス出口ポートとの間の油路は遮断される。
【0036】
連通制動位置16bは、第1モータライン65及び第2モータライン66のうちファンモータ13から作動油が吐出される吐出側モータラインにおいてファンモータ13の回転速度を低下させるような制動圧を発生させながら第1モータライン65と第2モータライン66とを連通するモータライン連通路16Rを形成するような位置である。図3及び図4に示すように、連通制動位置16bでは、PポートとAポートとBポートとが連通し、バイパス入口ポートとバイパス出口ポートとが連通する。具体的には、連通制動位置16bでは、AポートとBポートとが連通する連通路であるモータライン連通路16Rと、このモータライン連通路16RとPポートとが連通する連通路16PRと、が形成される。モータライン連通路16Rは、2つの絞り(第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2)を有する。第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2は、モータライン連通路16Rにおいて直列に並ぶように設けられている。Pポートは、モータライン連通路16Rのうちの第1の絞りTH1と第2の絞りTH2の間の部分である中間部に連通路16PRを介して接続されている。第1の絞りTH1は、モータライン連通路16Rの中間部とAポートとの間に設けられ、第2の絞りTH2は、モータライン連通路16Rの中間部とBポートとの間に設けられている。
【0037】
第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2のそれぞれの流路の断面積は、正回転位置16aにおける連通路PAの流路の断面積及び連通路BTの流路の断面積よりも小さくてもよい。第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2のそれぞれの流路の断面積は、逆回転位置16cにおける連通路PBの流路の断面積及び連通路ATの流路の断面積よりも小さくてもよい。第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2のそれぞれの流路の断面積は、第1モータライン65の流路の断面積及び第2モータライン66の流路の断面積よりも小さくてもよい。
【0038】
停止指令出力器23は、例えばエンジン11を停止するためにオペレータが行う操作である停止指令操作に応じて停止指令をコントローラ50に出力するように構成されている。停止指令操作は、例えばキャビン内に配置された図略の操作入力装置にオペレータによって与えられる操作であってもよい。操作入力装置は、例えばオペレータが停止指令操作を与えることが可能なスイッチであってもよく、この場合、停止指令操作はスイッチ操作である。また、操作入力装置は、例えばオペレータが停止指令操作を与えることが可能なキー操作入力装置であってもよく、この場合、停止指令操作は、キーをオフ位置に切り換える操作であるキーオフ操作である。また、停止指令出力器23は、例えばエンジン11を制御する装置としてのエンジンコントロールユニット(ECU)に含まれていてもよい。
【0039】
コントローラ50は、停止指令出力器23から停止指令を受けると、モータ制御弁16を正回転位置16a又は逆回転位置16cから連通制動位置16bに切り換えることを含む制御であるアンチキャビテーション制御を実行する。アンチキャビテーション制御は、コントローラ50が停止指令の入力を受けてからエンジン11を停止させるまでの間にファンモータ13の吸入側においてキャビテーションが発生することを抑制するための制御である。アンチキャビテーション制御においてモータ制御弁16が連通制動位置16bに切り換えられると、メインポンプ12から吐出された作動油は、センターバイパスライン62を通じてタンク40に流れる。モータ制御弁16が連通制動位置16bに切り換わった後、ファンモータ13は、すぐには停止せずにしばらくの間、慣性により正回転又は逆回転を続ける。
【0040】
具体的には、モータ制御弁16が例えば正回転位置16aから連通制動位置16bに切り換わると、ファンモータ13の第2モータポート13bから吐出された作動油は、第2モータライン66を通じてモータ制御弁16に到達し、モータ制御弁16においてモータライン連通路16Rを通過して第1モータライン65に流入し、第1モータライン65を通じてファンモータ13に戻る。すなわち、ファンモータ13、第2モータライン66、モータ制御弁16のモータライン連通路16R、及び第1モータライン65を含む回路である吸入側戻し回路にある作動油がこの順に流れる。従って、ファンモータ13から吐出側モータラインである第2モータライン66に吐出された作動油は、モータライン連通路16Rを介して、吸入側モータラインである第1モータライン65に導かれる。これにより、ファンモータ13の吸入側ポートである第1モータポート13aへの作動油の供給量が確保されやすくなる。しかも、モータ制御弁16のモータライン連通路16Rの第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2は、ファンモータ13から作動油が吐出される吐出側モータラインである第2モータライン66においてファンモータ13の回転速度を低下させるような圧力である制動圧を発生させる。従って、アンチキャビテーション制御は、コントローラ50が停止指令の入力を受けてからファンモータ13が停止するまでの時間を短くすることができる。
【0041】
同様に、モータ制御弁16が例えば逆回転位置16cから連通制動位置16bに切り換わると、ファンモータ13の第1モータポート13aから吐出された作動油は、第1モータライン65を通じてモータ制御弁16に到達し、モータ制御弁16においてモータライン連通路16Rを通過して第2モータライン66に流入し、第2モータライン66を通じてファンモータ13に戻る。すなわち、ファンモータ13、第1モータライン65、モータ制御弁16のモータライン連通路16R、及び第2モータライン66を含む回路である吸入側戻し回路にある作動油がこの順に流れて吸入側モータラインである第2モータライン66に導かれる。これにより、ファンモータ13の吸入側ポートである第2モータポート13bへの作動油の供給量が確保されやすくなる。しかも、モータ制御弁16のモータライン連通路16Rの第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2は、ファンモータ13から作動油が吐出される吐出側モータラインである第1モータライン65においてファンモータ13の回転速度を低下させるような圧力である制動圧を発生させる。従って、アンチキャビテーション制御は、コントローラ50が停止指令の入力を受けてからファンモータ13が停止するまでの時間を短くすることができる。
【0042】
以上のように、アンチキャビテーション制御では、ファンモータ13の吸入側ポートへの作動油の供給量が確保されやすく、ファンモータ13が停止するまでの時間を短くすることができるので、コントローラ50が停止指令を受けてからエンジン11を停止させるまでの間にファンモータ13においてキャビテーションが発生することを抑制できる。具体的には、従来の建設機械では、エンジンの回転数が次第に減少してエンジンが停止するエンジン停止過程においては、回転数の減少に伴ってメインポンプの作動油の吐出量(流量)が減少するため、キャビテーションの発生を抑制するためにファンモータの吸入側に補給できる油量も減少する。このため、エンジン停止過程においてキャビテーションが発生しやすい。一方、本実施形態に係るファン駆動制御装置を備える油圧ショベル100では、アンチキャビテーション制御が実行されることによりエンジン停止過程においてキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0043】
ところで、モータ制御弁16の内部では、スプールとバルブ本体との間にわずかな隙間があるため、バルブポート間において多少の油漏れ(内部リーク)が生じる。具体的には、モータ制御弁16の内部では、例えば、PポートからAポート又はBポートへの油漏れが生じたり、Aポート又はBポートからTポートへの油漏れが生じたりすることがある。アンチキャビテーション制御では、作動油が前記吸入側戻し回路を循環している間に作動油の循環量が次第に少なくなってファンモータ13の吸入側に接続された吸入側モータラインが負圧になる場合がある。この場合であっても、本実施形態では、第1チェック弁31、第2チェック弁32及び第3チェック弁33のそれぞれは、吸入側モータラインに作動油が補給されることを許容するように作動する。これらのチェック弁31,32,33のそれぞれは、補給機構の一例である。
【0044】
第1チェック弁31は、第1アンチキャビテーションライン69に配置されている。第1アンチキャビテーションライン69は、第1モータライン65とタンクライン67とを接続する。第1チェック弁31は、第1モータライン65からタンクライン67に向かう作動油の流れを阻止する一方で、タンクライン67から第1モータライン65に向かう作動油の流れを許容する。従って、第1チェック弁31は、アンチキャビテーション制御においてファンモータ13が正回転している場合にファンモータ13の吸入側に接続された油路である第1モータライン65に対し、第1アンチキャビテーションライン69を介してタンクライン67から作動油を補給することを可能にする。すなわち、第1チェック弁31は、キャビテーションの発生を抑制するためのアンチキャビテーションチェック弁として機能する。
【0045】
第2チェック弁32は、第2アンチキャビテーションライン70に配置されている。第2アンチキャビテーションライン70は、第2モータライン66とタンクライン67とを接続する。第2チェック弁32は、第2モータライン66からタンクライン67に向かう作動油の流れを阻止する一方で、タンクライン67から第2モータライン66に向かう作動油の流れを許容する。従って、第2チェック弁32は、アンチキャビテーション制御においてファンモータ13が逆回転している場合にファンモータ13の吸入側に接続された油路である第2モータライン66に対し、第2アンチキャビテーションライン70を介してタンクライン67から作動油を補給することを可能にする。すなわち、第2チェック弁32は、キャビテーションの発生を抑制するためのアンチキャビテーションチェック弁として機能する。
【0046】
第3チェック弁33は、吐出ライン64に配置されている。具体的には、第3チェック弁33は、吐出ライン61,64を含むポンプ吐出ラインのうち、センターバイパスライン62が分岐する部分とモータ制御弁16のPポートとの間の部位に配置されている。第3チェック弁33は、作動油がモータ制御弁16のPポートからメインポンプ12に向かうことを阻止する一方で、メインポンプ12からモータ制御弁16のPポートに向かう作動油の流れを許容する。従って、第3チェック弁33は、モータ制御弁16が連通制動位置16bに保持されるアンチキャビテーション制御において、ファンモータ13が正回転している場合に吸入側モータラインである第1モータライン65に対し、メインポンプ12が吐出する作動油を吐出ライン61,64及びモータ制御弁16を介して補給することを可能にする。同様に、第3チェック弁33は、アンチキャビテーション制御において、ファンモータ13が逆回転している場合に吸入側モータラインである第2モータライン66に対し、メインポンプ12が吐出する作動油を吐出ライン61,64及びモータ制御弁16を介して補給することを可能にする。すなわち、第3チェック弁33は、キャビテーションの発生を抑制するためのアンチキャビテーションチェック弁として機能する。
【0047】
本実施形態では、停止指令出力器23から停止指令が出力されてモータ制御弁16が正回転位置16a又は逆回転位置16cから連通制動位置16bに切り換わると、メインポンプ12から吐出された作動油は吐出ライン61から分岐するセンターバイパスライン62を通ってタンク40に流れるのでバイパスライン62における圧力は低くなる。その一方で、モータ連通路16Rの中間部における圧力は、吐出側モータラインにおける圧力と吸入側モータラインにおける圧力の間の中間的な圧力になる。第3チェック弁33は、モータ制御弁16が連通制動位置16bに切り換えられた状態において、モータ連通路16Rの中間部における作動油が吐出ライン64に逆流するのを防止するとともに、吐出側モータラインにおいて十分な制動圧を発生させることができる。
【0048】
また、本実施形態のように第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2が発生させることが可能な吐出側モータラインにおける制動圧と同じ大きさの制動圧を、上記の第1のケース及び第2のケースのように単一の絞りだけで発生させる場合には、当該単一の絞りの流路の断面積を、第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2のそれぞれの流路の断面積よりも小さくする必要がある。流路の断面積を小さくする場合、製造上のばらつきが大きくなりやすい。このようなばらつきに起因して単一の絞りの断面積が想定よりも小さくなった場合、吐出側モータラインに発生する制動圧が想定よりも大きくなることがある。本実施形態では、このような製造上のばらつきが大きくなることを抑制できる。
【0049】
リリーフ弁41は、メインポンプ12とタンク40との間に介在し、メインポンプ12とモータ制御弁16との間の吐出ライン61の圧力が設定圧に上昇するまでは閉弁し、前記設定圧に達したときに開弁することにより吐出ライン61の圧力を前記設定圧以下に制限する。リリーフ弁41は、吐出ライン61とタンクライン67とをつなぐリリーフライン68に配置されている。
【0050】
モータ比例弁22は、電磁比例弁により構成され、コントローラ50からの指令に応じてモータ制御弁16のパイロットポート16Pに与えられるパイロット圧を調整することが可能なように構成される。
【0051】
タンクライン67には、図略の背圧弁が配置されていてもよい。この背圧弁は、タンクライン67に予め設定された圧力(背圧)を発生させるバルブである。背圧弁は、タンクライン67が所定圧以上になると開いてタンクライン67の作動油がタンク40に流入する。
【0052】
コントローラ50は、CPU、メモリなどを含む。コントローラ50は、判定部51と、指令部52と、エンジン制御部53と、ポンプ制御部54と、を備える。判定部51、指令部52、エンジン制御部53及びポンプ制御部54は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0053】
判定部51は、停止指令出力器23からの停止指令がコントローラ50に入力されたか否かを判定する。
【0054】
指令部52は、冷却ファン14の運転モードに応じた指令をモータ比例弁22に出力する。冷却ファン14の運転モードは、冷却ファン14を正回転させる正回転モードと、冷却ファン14を逆回転させる逆回転モードと、を含む。通常運転中には運転モードは正回転モードに設定される。この場合、指令部52は、モータ制御弁16が正回転位置16aに保持されるような指令である正回転指令をモータ比例弁22に出力する。一方、例えばラジエータの目詰まりを解消するための運転などのように通常運転とは異なる運転が行われる場合には、運転モードは逆回転モードに設定される。この場合、指令部52は、モータ制御弁16が逆回転位置16cに保持されるような指令である逆回転指令をモータ比例弁22に出力する。
【0055】
指令部52は、停止指令出力器23から停止指令がコントローラ50に入力されると、モータ制御弁16を正回転位置16a又は逆回転位置16cから連通制動位置16bに切り換えるための指令である停止位置切換指令をモータ比例弁22に出力する。モータ比例弁22及び指令部52は、前記停止指令が出力された場合にモータ制御弁16を連通制動位置16bに切り換えるように構成された弁制御部の一例である。
【0056】
エンジン制御部53は、停止指令出力器23から停止指令がコントローラ50に入力されると、ファンモータ13の吸入側におけるキャビテーションの発生を抑制するために予め設定された条件であるアンチキャビテーション条件(第1のアンチキャビテーション条件)が満たされるまでの間、エンジン11の回転数が、停止指令が出力された時点(停止指令がコントローラ50に入力された時点)の回転数よりも小さくならないように、又は予め設定された回転数設定値若しくは回転数範囲内に維持されるように、エンジン11の動作を制御する。前記回転数設定値は、停止指令が出力された時点のエンジン11の回転数よりも小さい値であってもよく、停止指令が出力された時点のエンジン11の回転数以上の値であってもよい。前記回転数範囲は、下限と当該下限よりも大きい上限とを含む範囲である。回転数範囲の上限は、停止指令が出力された時点のエンジン11の回転数よりも小さい値であってもよく、停止指令が出力された時点のエンジン11の回転数以上の値であってもよい。
【0057】
具体的には、例えば、エンジン制御部53は、停止指令出力器23から停止指令がコントローラ50に入力されると、アンチキャビテーション条件が満たされるまでの間、エンジン11の回転数が、停止指令がコントローラ50に入力された時点のエンジン11の回転数に維持されるように、エンジン11の動作を制御するための指令である回転数指令を出力する。これにより、エンジン11の回転数は、アンチキャビテーション条件が満たされるまで、停止指令がコントローラ50に入力された時点のエンジン11の回転数に維持される。
【0058】
アンチキャビテーション条件は、例えば冷却ファン14又はファンモータ13が停止することであってもよく、冷却ファン14又はファンモータ13の回転数が予め設定された閾値である回転数閾値以下になることであってもよい。回転数閾値は、例えば、ファンモータ13の吸入側においてキャビテーションが発生するリスクが低くなるようなファンモータ13の回転数に設定されてもよい。この場合、油圧ショベル100は、冷却ファン14又はファンモータ13の回転数を検出することが可能なセンサである回転センサ80を備えていてもよい。回転センサ80は、検出結果に対応する検出信号をコントローラ50に入力する。回転センサ80としては、エンコーダを例示できるが、回転センサ80は、エンコーダに限られず、回転数を検出可能な種々の回転センサを採用可能である。
【0059】
アンチキャビテーション条件は、停止指令がコントローラ50に入力された時点からの経過時間が予め設定された閾値である時間閾値に達することであってもよい。この場合、油圧ショベル100は、前記経過時間を計測することが可能なタイマーを備えていてもよい。
【0060】
ポンプ制御部54は、停止指令出力器23から停止指令がコントローラ50に入力されると、ファンモータ13の吸入側におけるキャビテーションの発生を抑制するために予め設定された条件である第2のアンチキャビテーション条件が満たされるまでの間、メインポンプ12の容量が、停止指令が出力された時点(停止指令がコントローラ50に入力された時点)の容量よりも小さくならないように、又は予め設定された容量設定値若しくは容量範囲内に維持されるように、メインポンプ12の容量を制御する。前記容量設定値は、メインポンプ12の最小の容量よりも大きい値である。前記容量設定値は、停止指令が出力された時点の容量よりも小さい値であってもよく、停止指令が出力された時点の容量以上の値であってもよい。前記容量範囲は、メインポンプ12の最小の容量よりも大きい下限と当該下限よりも大きい上限とを含む範囲である。容量範囲の上限は、停止指令が出力された時点の容量よりも小さい値であってもよく、停止指令が出力された時点の容量以上の値であってもよい。
【0061】
具体的には、例えば、ポンプ制御部54は、停止指令出力器23から停止指令がコントローラ50に入力されると、第2のアンチキャビテーション条件が満たされるまでの間、メインポンプ12の容量が、停止指令がコントローラ50に入力された時点のメインポンプ12の容量に維持されるように、メインポンプ12の容量を制御するための指令であるポンプ容量指令をレギュレータ12Aに出力する。これにより、メインポンプ12の容量は、アンチキャビテーション条件が満たされるまで、停止指令がコントローラ50に入力された時点のメインポンプ12の容量に維持される。本実施形態では、第2のアンチキャビテーション条件は、次に説明する図5のフローチャートに示すように第1のアンチキャビテーション条件と同じ内容に設定されているが、第1のアンチキャビテーション条件とは異なる内容に設定されていてもよい。
【0062】
図5は、ファン駆動制御装置101のコントローラ50の演算制御動作を示すフローチャートである。
【0063】
オペレータは、油圧ショベル100を用いて作業現場において掘削作業などの種々の作業を行う場合、エンジン11を始動させるためにキーをオン位置に切り換える操作であるキーオン操作をキー操作入力装置に対して行う。このキーオン操作が行われると、エンジン11が始動し、当該エンジン11によりメインポンプ12及びパイロットポンプ21が駆動され、メインポンプ12は、作動油を吐出する。コントローラ50の指令部52は、図2に示すようにモータ制御弁16を正回転位置16aに保持するための指令である正回転指令をモータ比例弁22に出力する。これにより、ファンモータ13は、第1モータポート13aが作動油の供給を受け、第2モータポート13bから作動油を吐出する。これにより、ファンモータ13は正回転方向に回転して冷却ファン14を正回転させる。冷却ファン14は、冷却装置15に送風し、エンジン11の冷却及び作動油の冷却を行う。
【0064】
コントローラ50の判定部51は、停止指令がコントローラ50に入力されたか否かを判定する(ステップS1)。例えばキャビン内において油圧ショベル100を操縦するオペレータが、エンジン11を停止させるためのキーオフ操作をキー操作入力装置に対して行うと、停止指令出力器23は、エンジン11を停止させるための指令である停止指令を出力し、当該停止指令は、コントローラ50に入力される。この停止指令がコントローラ50に入力されると(ステップS1においてYES)、コントローラ50は、ステップS2~S6に示すようなアンチキャビテーション制御を行う。アンチキャビテーション制御は、コントローラ50が停止指令を受けてからエンジン11を停止させるまでの間にファンモータ13においてキャビテーションが発生することを抑制するための制御である。
【0065】
停止指令がコントローラ50に入力されると(ステップS1においてYES)、コントローラ50の指令部52は、図3に示すようにモータ制御弁16が正回転位置16aから連通制動位置16bに切り換わって当該連通制動位置16bに保持されるように、モータ比例弁22に停止位置切換指令を出力する(ステップS2)。モータ比例弁22は、停止位置切換指令の入力を受けると、モータ制御弁16が連通制動位置16bに保持されるようなパイロット圧がモータ制御弁16のパイロットポート16Pに対して与えられるように作動する。これにより、モータ制御弁16は、正回転位置16aから連通制動位置16bに切り換わって当該連通制動位置16bに保持される。
【0066】
モータ制御弁16が連通制動位置16bに切り換わると、メインポンプ12から吐出された作動油は、センターバイパスライン62を通じてタンク40に流れる。モータ制御弁16が連通制動位置16bに切り換わると、ファンモータ13の第2モータポート13bから吐出された作動油は、第2モータライン66を通じてモータ制御弁16に到達し、モータ制御弁16においてモータライン連通路16Rを通過して第1モータライン65に流入し、第1モータライン65を通じてファンモータ13に戻る。従って、アンチキャビテーション制御において、ファンモータ13の吸入側ポート(図3の場合、第1モータポート13a)への作動油の供給量が確保されやすくなる。これにより、コントローラ50が停止指令を受けてからエンジン11を停止させるまでの間にファンモータ13においてキャビテーションが発生するリスクを低減することができる。
【0067】
モータ制御弁16のモータライン連通路16Rの第1の絞りTH1及び第2の絞りTH2は、ファンモータ13から作動油が吐出されるラインである第2モータライン66に制動圧を発生させる。これにより、アンチキャビテーション制御では、コントローラ50が停止指令の入力を受けてからファンモータ13が停止するまでの時間を短くすることができるので、ファンモータ13においてキャビテーションが発生するリスクをさらに低減することができる。
【0068】
モータ制御弁16の内部では、上述したようにある程度の油漏れ(内部リーク)が避けられないので、前記吸入側戻し回路において作動油が循環する間に作動油の循環量が次第に少なくなる場合がある。作動油の循環量が少なくなって第1モータライン65が負圧になると、第3チェック弁33は、メインポンプ12が吐出する作動油が第1モータライン65に供給されることを許容するように作動する。これにより、メインポンプ12が吐出する作動油の少なくとも一部が吐出ライン64からPポートを通じてモータ制御弁16に流入し、モータライン連通路16Rを通過して第1モータライン65に補給される。このことは、アンチキャビテーション制御において、ファンモータ13においてキャビテーションが発生するリスクをさらに低減することを可能にする。
【0069】
コントローラ50のエンジン制御部53は、前記アンチキャビテーション条件が満たされたか否かを回転センサ80からの検出信号に基づいて判定する(ステップS3)。アンチキャビテーション条件が満たされていない場合、具体的には、例えば冷却ファン14又はファンモータ13の回転数が予め設定された回転数閾値より大きい場合(ステップS3においてNO)、エンジン制御部53は、停止指令がコントローラ50に入力された時点のエンジン回転数にエンジン11の回転数が維持されるように、エンジン11の動作を制御するための指令を出力する(ステップS4)。これにより、エンジン11の回転数は、停止指令がコントローラ50に入力された時点のエンジン回転数に維持される。
【0070】
コントローラ50のポンプ制御部54は、停止指令がコントローラ50に入力された時点のメインポンプ12の容量にメインポンプ12の容量が維持されるように、メインポンプ12の容量を制御するための指令であるポンプ容量指令をレギュレータ12Aに出力する(ステップS5)。これにより、メインポンプ12の容量は、停止指令がコントローラ50に入力された時点の容量に維持される。
【0071】
一方、アンチキャビテーション条件が満たされた場合、具体的には、例えば冷却ファン14又はファンモータ13の回転数が前記回転数閾値以下になった場合(ステップS3においてYES)、エンジン制御部53は、エンジン11が実際に停止するようにエンジン11の動作を制御するための指令である最終停止指令を出力する(ステップS6)。これにより、エンジン11の回転数は次第に減少し、その後エンジン11は停止する。以上説明したように、本実施形態に係るファン駆動制御装置101は、エンジン11の回転数が次第に減少してエンジン11が停止する過程であるエンジン停止過程において、ファンモータ13の吸入側におけるキャビテーションが発生することを効果的に抑制することができる。
【0072】
なお、冷却ファン14が逆回転しているときに停止指令がコントローラ50に入力された場合にも、コントローラ50は、図5のフローチャートに示す演算制御動作と同様の演算制御動作を行う。
【0073】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に係る建設機械について説明したが、本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
【0074】
(A)建設機械について
前記実施形態では、建設機械は、油圧ショベル100であるが、例えばクレーン、ブルドーザなどの他の建設機械であってもよい。
【0075】
(B)モータ制御弁について
前記実施形態では、モータ制御弁は、正回転位置と、連通制動位置と、逆回転位置と、の間で切り換わることが可能な3位置の切換弁であるが、モータ制御弁は、例えば、正回転位置と、連通制動位置と、の間で切り換わることが可能な2位置の切換弁であってもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、モータ制御弁は、一つのパイロットポートのみを有し、当該パイロットポートにパイロット圧が与えられていないときに正回転位置に保持され、前記パイロットポートに予め設定されたパイロット圧が与えられたときに連通制動位置に切り換わるように構成されるが、このような構成に限られない。モータ制御弁は、例えば、2つのパイロットポートを有し、何れのパイロットポートにもパイロット圧が与えられていないときに連通制動位置に保持され、一方のパイロットポートに予め設定されたパイロット圧が与えられたときに正回転位置に切り換わり、他方のパイロットポートに予め設定されたパイロット圧が与えられたときに逆回転位置に切り換わるように構成されていてもよい。
【0077】
(C)モータライン連通路について
前記実施形態では、モータ制御弁におけるモータライン連通路は、2つの絞りを有するが、一つの絞りのみを有していてもよい。モータライン連通路が1つの絞りのみを有する変形例として、次の第1の変形例と第2の変形例を挙げることができる。
【0078】
第1の変形例では、図3及び図4に示すモータ制御弁16において、モータライン連通路16Rが第1の絞りTH1を有し、第2の絞りTH2を有しておらず、かつ、Bポートと第1の絞りTH1との間の部分にPポートが連通路16PRを介して接続されている。
【0079】
第2の変形例では、図3及び図4に示すモータ制御弁16において、モータライン連通路16Rが第2の絞りTH2を有し、第1の絞りTH1を有しておらず、かつ、第2の絞りTH2とAポートとの間の部分にPポートが連通路16PRを介して接続されている。
【0080】
(D)チェック弁について
第1チェック弁、第2チェック弁及び第3のチェック弁の少なくとも一つは省略可能である。
【0081】
(E)コントローラについて
エンジン制御部及びポンプ制御部の少なくとも一方は省略可能である。
【0082】
(F)バイパスラインについて
図3に示す前記実施形態では、油圧回路がバイパスライン62を備えているが、バイパスライン62は省略可能である。バイパスライン62が省略される場合の具体的な形態として、例えば次のような変形例を挙げることができる。すなわち、この変形例では、第1モータライン65及び第2モータライン66のそれぞれには、図略のリリーフ弁(モータラインリリーフ弁)が配置される。これらのモータラインリリーフ弁のそれぞれの設定圧は、リリーフ弁41の設定圧よりも小さい。この変形例では、停止指令出力器23から停止指令が出力されてモータ制御弁16が正回転位置16a又は逆回転位置16cから連通制動位置16bに切り換わると、モータライン連通路Rは、慣性により回転を続けるファンモータ13から吐出側モータラインに吐出された作動油を吸入側モータラインに導くことができるので、エンジン11を停止させるための停止指令が出力された後においても吸入側モータラインに対する作動油の供給量が確保される。また、モータラインリリーフ弁の設定圧がリリーフ弁41の設定圧よりも小さいので、モータ制御弁16が連通制動位置16bに保持されるアンチキャビテーション制御において、吐出ライン64における圧力は、モータ連通路Rの中間部における圧力よりも高くなりやすい。従って、アンチキャビテーション制御において、メインポンプ12からの作動油がチェック弁33及びモータ連通路Rを介して吸入側モータラインに補給される。
【符号の説明】
【0083】
11 :エンジン
12 :メインポンプ
13 :ファンモータ
13a :第1モータポート
13b :第2モータポート
14 :冷却ファン
16 :モータ制御弁
16P :パイロットポート
16R :モータライン連通路
16a :正回転位置
16b :連通制動位置
16c :逆回転位置
21 :パイロットポンプ
22 :モータ比例弁
23 :停止指令出力器
31 :第1チェック弁(補給機構)
32 :第2チェック弁(補給機構)
33 :第3チェック弁(補給機構)
50 :コントローラ
51 :判定部
52 :指令部
53 :エンジン制御部
54 :ポンプ制御部
61,64 :吐出ライン
62 :センターバイパスライン(バイパスライン)
65 :第1モータライン
66 :第2モータライン
67 :タンクライン
69 :第1アンチキャビテーションライン
70 :第2アンチキャビテーションライン
100 :油圧ショベル(建設機械)
101 :ファン駆動制御装置
P :プレッシャーポート(Pポート)
TH1 :第1の絞り
TH2 :第2の絞り
図1
図2
図3
図4
図5