(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】クリーナ
(51)【国際特許分類】
A47L 9/00 20060101AFI20230719BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A47L9/00 H
F04D29/08 E
(21)【出願番号】P 2021561244
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040879
(87)【国際公開番号】W WO2021106493
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019214789
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】田上 寛之
(72)【発明者】
【氏名】一橋 直人
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-68726(JP,A)
【文献】特開平4-272733(JP,A)
【文献】実公平4-4690(JP,Y2)
【文献】国際公開第2014/162773(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/32
A47L 5/00- 5/38
F04D29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力により、中心軸を中心に回転するファンと、
前記モータに対して固定され、前記ファンを内部に収容するファンカバーと、
前記モータ及び前記ファンカバーを内部に収容するハウジングと、
前記中心軸を中心とする円環状に形成されて、前記ハウジングと前記ファンカバーとの間をシールするシール部材と、を備え、
前記ハウジングは、前記ハウジングの内外を前記中心軸の軸方向に貫通し、前記ファンの駆動時に前記ハウジング外部から内部へ向かう空気の流路となるハウジング吸気口を備え、
前記ファンカバーは、前記ファンカバーの内外を前記軸方向に貫通し、前記ファンの駆動時に前記ハウジング吸気口から進入して前記ファンカバー内部へ向かう空気の流路となるファンカバー吸気口を備え、
前記シール部材は、前記ファンカバー吸気口と前記ハウジング吸気口とを連通するように前記ハウジングと前記ファンカバーとの間をシールし、前記中心軸を中心とする外径が前記ファンカバーの外径よりも小さく、
前記シール部材は、前記ハウジングと係合して相対回転を規制する第1回転規制部と、前記中心軸を中心とする周方向全周にわたって前記ハウジングと接する第1シール部と、前記ファンカバーと係合して相対回転を規制する第2回転規制部と、前記中心軸を中心とする周方向全周にわたって前記ファンカバーと接する第2シール部と、を備え、前記第2回転規制部は、前記中心軸を中心とする径方向における位置が前記第1シール部よりも前記中心軸側に位置する、クリーナ。
【請求項2】
前記軸方向における前記第2回転規制部及び前記第2シール部の配置範囲内に、前記第1シール部が設けられる、請求項1に記載のクリーナ。
【請求項3】
前記第1シール部と前記第2シール部とは、前記軸方向に異なる位置に配置される、請求項1又は2に記載のクリーナ。
【請求項4】
前記第1シール部は、前記軸方向において前記第2シール部の前方側に配置され、
前記第1シール部は、前記軸方向の前方側に臨む面であり、
前記第2シール部は、前記軸方向の後方側に臨む面である、請求項1から3のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項5】
前記第2シール部は、前記軸方向と垂直な面に対して傾斜した面である、請求項4に記載のクリーナ。
【請求項6】
前記第1シール部は、前記径方向において第1回転規制部の外縁よりも内側に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項7】
前記第1シール部は、前記軸方向において第1回転規制部の近傍に位置するように形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項8】
前記第2回転規制部と前記第1シール部は前記軸方向における位置が重なるように配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項9】
前記第2回転規制部は、前記ファンカバー吸気口の開口部に沿って複数形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項10】
前記ファンカバーは、前記ファンカバー吸気口の開口部を横切る格子部を有し、
第2回転規制部は、前記シール部材の内周部に設けられて前記格子部の一部が嵌まる凹部である、請求項1から9のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項11】
前記径方向における前記第1回転規制部と前記第2回転規制部との間に穴部が形成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項12】
前記ファンカバーの外径が前記ファンの外径よりも大きく、前記ファンの外径が前記モータのケースの外径よりも大きい、請求項1から11のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項13】
前記ハウジングは、第1部品と第2部品とからなる左右二つ割り構造であり、
前記ハウジング吸気口は、前記第1部品および前記第2部品に跨って形成され、
前記シール部材は、前記ハウジング吸気口の内縁に当接するように前記第1部品と第2部品とに挟持される、請求項1から12のいずれか一項に記載のクリーナ。
【請求項14】
前記シール部材は、前記第1回転規制部が前記第1部品と前記第2部品とに挟持されることで、前記ハウジングに対する相対回転が規制される、請求項13に記載のクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動されるファンを備えるクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、クリーナを開示する。このクリーナは、ファンを覆うようにファンカバーを備える。ファンカバーはモータに対して固定される。モータは、ファンカバーを介して本体ハウジングに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーナには、吸引力の向上や、モータやファンに生じる振動に対する防振性が求められる。吸引力の向上のために、ファンカバーと本体ハウジングとの間のシール材を設けることが考えられる。また、防振性を向上させるために、ファンカバーと本体ハウジングとの間に防振部材を介在させることが考えられる。一方で、シール材と防振部材との両方を設けることは、構造の複雑化により、製品全体の大型化や重量の増加、製造コストの増加などを招く恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構造で吸引力の向上や防振性の向上が可能なクリーナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、クリーナである。このクリーナは、モータと、前記モータの駆動力により、中心軸を中心に回転するファンと、前記モータに対して固定され、前記ファンを内部に収容するファンカバーと、前記モータ及び前記ファンカバーを内部に収容するハウジングと、前記中心軸を中心とする円環状に形成されて、前記ハウジングと前記ファンカバーとの間をシールするシール部材と、を備え、前記ハウジングは、前記ハウジングの内外を前記中心軸の軸方向に貫通し、前記ファンの駆動時に前記ハウジング外部から内部へ向かう空気の流路となるハウジング吸気口を備え、前記ファンカバーは、前記ファンカバーの内外を前記軸方向に貫通し、前記ファンの駆動時に前記ハウジング吸気口から進入して前記ファンカバー内部へ向かう空気の流路となるファンカバー吸気口を備え、前記シール部材は、前記ファンカバー吸気口と前記ハウジング吸気口とを連通するように前記ハウジングと前記ファンカバーとの間をシールし、前記中心軸を中心とする外径が前記ファンカバーの外径よりも小さく、前記シール部材は、前記ハウジングと係合して相対回転を規制する第1回転規制部と、前記中心軸を中心とする周方向全周にわたって前記ハウジングと接する第1シール部と、前記ファンカバーと係合して相対回転を規制する第2回転規制部と、前記中心軸を中心とする周方向全周にわたって前記ファンカバーと接する第2シール部と、を備え、前記第2回転規制部は、前記中心軸を中心とする径方向における位置が前記第1シール部よりも前記中心軸側に位置する。
【0007】
前記軸方向における前記第2回転規制部及び前記第2シール部の配置範囲内に、前記第1シール部が設けられてもよい。
【0008】
前記第1シール部と前記第2シール部とは、前記軸方向に異なる位置に配置されてもよい。
【0009】
前記第1シール部は、前記軸方向において前記第2シール部の前方側に配置され、前記第1シール部は、前記軸方向の前方側に臨む面であり、前記第2シール部は、前記軸方向の後方側に臨む面であってもよい。
【0010】
前記第2シール部は、前記軸方向と垂直な面に対して傾斜した面であってもよい。
【0011】
前記第1シール部は、前記径方向において第1回転規制部の外縁よりも内側に形成されてもよい。
【0012】
前記第1シール部は、前記軸方向において第1回転規制部の近傍に位置するように形成されてもよい。
【0013】
前記第2回転規制部と前記第1シール部は前記軸方向における位置が重なるように配置されてもよい。
【0014】
前記第2回転規制部は、前記ファンカバー吸気口の開口部に沿って複数形成されてもよい。
【0015】
前記ファンカバーは、前記ファンカバー吸気口の開口部を横切る格子部を有し、第2回転規制部は、前記シール部材の内周部に設けられて前記格子部の一部が嵌まる凹部であってもよい。
【0016】
前記径方向における前記第1回転規制部と前記第2回転規制部との間に穴部が形成されてもよい。
【0017】
前記ファンカバーの外径が前記ファンの外径よりも大きく、前記ファンの外径が前記モータのケースの外径よりも大きくてもよい。
【0018】
前記ハウジングは、第1部品と第2部品とからなる左右二つ割り構造であり、前記ハウジング吸気口は、前記第1部品および前記第2部品に跨って形成され、前記シール部材は、前記ハウジング吸気口の内縁に当接するように前記第1部品と第2部品とに挟持されてもよい。
【0019】
前記シール部材は、前記第1回転規制部が前記第1部品と前記第2部品とに挟持されることで、前記ハウジングに対する相対回転が規制されてもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構造で吸引力の向上や防振性の向上が可能なクリーナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るクリーナ1の側面図。
【
図5】右ハウジング2g及びシール部材30を組み合わせた状態の斜視図。
【
図12】モータ6、ファンガイド10及びファンカバー20を組み合わせたユニットの側面図。
【
図14】本発明の実施の形態2におけるシール部材30Aの正面図。
【
図17】実施の形態2におけるモータ6、ファンガイド10及びファンカバー20Aを組み合わせたユニットの側面図。
【
図19】本発明の実施の形態3におけるシール部材30Bの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
(実施の形態1)
図1~
図13を参照し、本発明の実施の形態1を説明する。本実施の形態は、クリーナ1に関する。クリーナ1は、コードレス型かつ携帯型の非サイクロン式の電気掃除機である。
図1及び
図4により、クリーナ1における互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。前後方向は、モータ6の回転軸6aと平行な方向である。左右方向は、クリーナ1を前方から見た場合を基準に定義する。
【0025】
クリーナ1の外殻は、ハウジング2及びダストケース3によって構成される。ハウジング2及びダストケース3は、共に例えば樹脂成形体である。ダストケース3は、ハウジング2の前方に着脱可能に接続、固定される。ダストケース3の前端部には、吸気口(ダストケース吸気口)3aが設けられる。吸気口3aには、図示しない延長管あるいはフレキシブルホースを取付け可能である。ダストケース3の内部には、フィルタ部材40が着脱可能に装着される。
図4に示すように、ハウジング2は、左右二つ割り構造である。すなわち、ハウジング2は、互いに別部品である左ハウジング(第1部品)2fと右ハウジング(第2部品)2gとをネジ止め等により互いに固定、一体化したものである。
【0026】
ハウジング2は、収容部2aと、ハンドル部2bと、電池パック装着部2cと、を有する。収容部2aは、ハウジング2の前部にあたる部分である。収容部2aは、モータ6、集塵ファン9、ファンガイド10及びファンカバー20を収容する。ハンドル部2bは、収容部2aの上端部から後方に延びる部分である。作業者は、ハンドル部2bを握ってクリーナ1を取り回す。ハンドル部2bの上面には、操作パネル(スイッチ部)5が設けられる。操作パネル5に設けられた各種スイッチにより、クリーナ1の起動、停止やクリーナ1の風量を切替え可能である。電池パック装着部2cは、ハウジング2の後下部にあたる部分である。電池パック装着部2cには、クリーナ1の電源となる電池パック4が着脱可能に装着される。ハウジング2の後端部の左右両側面に、それぞれ排気口2eが設けられる。
【0027】
ハウジング2は、前端部に、内向きに突出するフランジ部2iを有する。フランジ部2iは、前後方向と垂直な板状部である。フランジ部2iは、モータ6の回転軸6aの延長線を一周するように設けられる。以下、回転軸6a及びその延長線を合わせた全体を「中心軸」とも表記する。フランジ部2iの内縁は、吸気口(ハウジング吸気口)2dの開口縁である。吸気口2dは、中心軸を中心とし、回転軸6aの延出方向に貫通する円形の貫通穴である。吸気口2dは、左ハウジング2f及び右ハウジング2gに跨がって形成される。吸気口2dは、吸気口2dは、ダストケース3内の空間と連通する。吸気口2dの前方は、フィルタ部材40に覆われる。
【0028】
モータ6は、周知のブラシ付き電動モータである。モータ6は、モータケースや軸受を含むユニットとして構成される。モータ6は、電池パック4からの供給電力で動作する。モータ6の後端部は、防振用の弾性体7を介してハウジング2に支持される。モータ6の回転軸6aには、集塵ファン9が取り付けられる。集塵ファン9は、回転軸6aを中心に回転軸6aと一体に回転する。回転軸6aは、集塵ファン9の中心軸でもある。集塵ファン9は、遠心ファンである。集塵ファン9は、ファンガイド10及びファンカバー20によって形成される内部空間に収容される。ファンガイド10及びファンカバー20の外径は、集塵ファン9の外径よりも大きい。集塵ファン9の外径は、モータケースの外径よりも大きい。ファンガイド10及びファンカバー20は、共に例えば樹脂成形体である。
【0029】
ファンガイド10は、モータ6の前面にネジ止め等により固定される。ファンカバー20は、ファンガイド10に爪係合等により固定、一体化される。ファンガイド10は、集塵ファン9の後方に位置する。ファンガイド10は、集塵ファン9の発生する気流を通過させる図示しない通気口を有する。ファンカバー20は、回転軸6aを中心とする円筒形状である。ファンカバー20の後端は開放である。ファンカバー20の前端は、吸気口(ファンカバー吸気口)21を除き非開放である。すなわち、ファンカバー20の前面に吸気口21が設けられる。吸気口21は、中心軸を中心とし、回転軸6aの延出方向に貫通する円形の貫通穴である。
図13に示すように、ファンカバー20は、吸気口21を上下及び左右に横切る格子部22を有する。
図12に示すように、格子部22は、吸気口21の開口面から前方に突出している。格子部22は、吸気口21からファンカバー20の内部に指や大きな異物が入ることを防止する機能を有する。ファンカバー20の前面の一部は傾斜面23となっている。傾斜面23は、吸気口21の全周に渡って囲むように設けられる。
【0030】
シール部材30は、ハウジング2とファンカバー20との間をシールする(気密に閉塞する)。具体的には、シール部材30は、ハウジング2における吸気口2dの内側及びファンカバー20における吸気口21の外側と当接することで、吸気口2dと吸気口21の間においてハウジング2及びファンカバー20の内外を空気が通過できないようにシールする。シール部材30は、防振機能も有する。シール部材30は、ゴム等の弾性体である。シール部材30は、中心軸を中心とする円環状に形成されており、シール部材30の中心に設けられる穴を連通路として、吸気口2dと吸気口21が連通する。シール部材30は、吸気口21の周囲に配置される。シール部材30の外径は、ファンカバー20の外径よりも小さい。シール部材30の外径は、弾性体7の外径よりも大きい。シール部材30は、第1回転規制部31と、第2回転規制部32と、第1シール部33と、第2シール部34と、を含む。
【0031】
第1回転規制部31は、シール部材30の外周面から外方に突出する凸部である。第1回転規制部31は、シール部材30の上部及び下部にそれぞれ設けられる。ハウジング2は、第1回転規制部31を左右両側から挟み込む回り止め部2hを有する。左ハウジング2fと右ハウジング2gとを組み合わせる過程で、第1回転規制部31が回り止め部2hにより挟持される。第1回転規制部31と回り止め部2hとの係合により、ハウジング2に対するシール部材30の相対回転が規制される。
【0032】
第2回転規制部32は、シール部材30の内周面(内周部)に形成された、中心軸方向に延びる凹部、例えば溝部である。第2回転規制部32は、中心軸を中心とする周方向に複数設けられる。第2回転規制部32は、前方から見て、吸気口21の開口部に沿って設けられる。
図4に示すように、各々の第2回転規制部32に、格子部22の端部が嵌まる。第2回転規制部32と格子部22との嵌合(係合)により、ファンカバー20に対するシール部材30の相対回転が規制される。
【0033】
第1シール部33は、シール部材30の前方に臨む面である。第1シール部33は、中心軸を中心とする周方向全周に渡ってフランジ部2iの後面と面接触する。シール部材30は、ファンカバー20から、前方への押圧力を受ける。この押圧力により、第1シール部33がフランジ部2iの後面に押しつけられる。これにより、シール部材30とハウジング2との間の気密性が確保される。シール部材30の外周面には、中心軸回りに一周する溝部(くびれ部)35が設けられる。左ハウジング2f及び右ハウジング2gを組み合わせる過程で溝部35にフランジ部2iが嵌まり、シール部材30が左ハウジング2f及び右ハウジング2gに挟持される。この状態で、フランジ部2iの内縁が、溝部35の底面と当接する。第1シール部33は、溝部35を含んでもよい。溝部35とフランジ部2iの嵌合部も、シール部材30とハウジング2との間の気密性の確保に寄与する。
【0034】
第2シール部34は、シール部材30の後方に臨む面である。第2シール部34は、中心軸方向と垂直な面に対して傾斜した傾斜面である。第2シール部34は、第2回転規制部32が形成された内周面の後端から広がりながら後方に延びる。第2シール部34は、中心軸を中心とする周方向全周に渡ってファンカバー20の傾斜面23と面接触する。ファンカバー20からシール部材30に印加される前方への押圧力により、傾斜面23が第2シール部34に押しつけられる。これにより、シール部材30とファンカバー20との間の気密性が確保される。
【0035】
第2回転規制部32は、中心軸を中心とする径方向(以下、単に「径方向」と表記)における位置が、第1シール部33よりも中心軸側に位置する。
図9に示すように、第1シール部33は、中心軸方向における第2回転規制部32の配置範囲内に設けられる。第1シール部33は、中心軸方向における第2回転規制部32の配置範囲外に設けられてもよいが、その場合も中心軸方向における第2シール部34の配置範囲内に設けられるとよい。第1シール部33と第2シール部34は、中心軸方向における位置が互いに異なる。第1シール部33は、中心軸方向において、第2シール部34の前方側に位置する。第1シール部33は、径方向において第1回転規制部31の外縁(径方向と略垂直な外縁)よりも内側に形成される。第1シール部33は、中心軸方向において第1回転規制部31の近傍に位置するように形成される。第2回転規制部32と第1シール部33は、中心軸方向における位置が重なるように配置される。
【0036】
作業者が操作パネル5のスイッチを操作してモータ6が駆動すると、モータ6の駆動力により集塵ファン9が回転する。集塵ファン9の発生する気流は、吸気口3aからダストケース3内に取り込まれる。気流は、フィルタ部材40を通過し、吸気口2d、21からファンカバー20内に取り込まれる。気流は、集塵ファン9の内側に吸い込まれて外側に排出され、ファンカバー20にガイドされてファンガイド10の図示しない通気口から後方に抜ける。気流は、最終的に排気口2eからハウジング2の外部に排気される。吸気口3aから気流と共に進入した塵埃は、フィルタ部材40に捕集され、ダストケース3の内部かつフィルタ部材40の外側に溜まる。シール部材30があることで、ファンカバー20の内側と外側とで気流が循環することが防止される。これにより、吸気口3aからの吸引効率が高められる。
【0037】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0038】
(1) シール部材30は、ファンカバー20よりも小径である。このため、シール部材30は、ファンカバー20の外周面まで覆うような大きなシール部材と比較して、小型かつ軽量にできる。よって、製品全体の大型化や重量の増加、製造コストの増加を抑制できる。
【0039】
(2) シール部材30は、シールにより吸引力を向上させるだけでなく、防振部材としても機能する。このため、シール部材とは別に防振部材を設ける場合と比較して、部品点数を削減でき、簡単な構造で吸引力の向上や防振性の向上が可能となる。また、モータ6、集塵ファン9、ファンガイド10及びファンカバー20からなるファンモータユニットは、ゴム等の弾性体からなる弾性体7及びシール部材30のみによってハウジング2に支持されるため、ファンモータユニットに生じる振動がハウジング2に伝達されることが抑制される。
【0040】
(3) ファンカバー20からシール部材30に印加される前方への押圧力により、第1シール部33がフランジ部2iの後面に押しつけられ、また傾斜面23が第2シール部34に押しつけられる。すなわち、シール部材30はファンカバー20とフランジ部2iとの間に前後方向から挟持される。一方、左ハウジング2f及び右ハウジング2gを組み合わせる過程で溝部35にフランジ部2iが嵌まり、シール部材30が左ハウジング2f及び右ハウジング2gに左右方向から挟持される。このように、シール部材30を前後方向及び左右方向から挟持することで、効果的なシールを実現できる。
【0041】
(4) 第2回転規制部32は、格子部22との係合によりファンカバー20に対するシール部材30の相対回転を規制する。格子部22は、吸気口21からの指や異物の進入を防止するものである。このため、ファンカバー20に対するシール部材30の相対回転を規制するために、ファンカバー20側に回り止め用の構成を別途追加する必要がない。したがって、構成の複雑化を抑制できる。
【0042】
(実施の形態2)
図14~
図18を参照し、本発明の実施の形態2を説明する。本実施の形態も、クリーナに関する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1との共通点については適宜説明を省略する。シール部材30A及びファンカバー20Aは、実施の形態1のシール部材30及びファンカバー20に替わるものである。
【0043】
シール部材30Aは、シール部材30の第2回転規制部32を無くし、替わりに第2回転規制部32Aを設けたものである。第2回転規制部32Aは、シール部材30Aの後面に設けられた穴、好ましくは非貫通穴である。第2回転規制部32Aは、中心軸を中心とする周方向に90°間隔で設けられる。ファンカバー20Aは、吸気口21の周囲に、第2回転規制部32Aと同数の凸部(係止部)24を有する。凸部24は、中心軸を中心とする周方向の位置が、第2回転規制部32Aと一致する。凸部24は、第2回転規制部32Aに嵌まる。凸部24と第2回転規制部32Aとの嵌合(係合)により、ファンカバー20Aに対するシール部材30Aの相対回転が規制される。ファンカバー20Aにおいて、リブ22は吸気口21の開口面から前方に突出していないが、実施の形態1の場合と同様に突出してもよい。本実施の形態では、ファンカバー20側に回り止め用の構成として凸部24を要するものの、その他の点では実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0044】
(実施の形態3)
図19~
図22を参照し、本発明の実施の形態3を説明する。本実施の形態も、クリーナに関する。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1との共通点については適宜説明を省略する。シール部材30Bは、実施の形態1のシール部材30に替わるものである。
【0045】
シール部材30Bは、後面に穴部(空洞)36を有する。穴部36は、好ましくは非貫通穴である。穴部36は、中心軸を中心とする周方向に好ましくは等間隔で多数(図示の例では16個)設けられる。穴部36は、径方向において、第1回転規制部31と第2回転規制部32との間に位置する。穴部36は、シール部材30Bの柔軟性を高める機能、すなわちシール部材30Bの弾性変形を容易にする機能を有する。本実施の形態によれば、シール部材30Bの柔軟性が高められることで、シール部材30Bによる防振効果が高められる。
【0046】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。例えば、本発明のクリーナは、サイクロン式であってもよいし、外部の交流電源からの供給電力で動作するコード付きタイプであってもよい。モータは、ブラシレスモータであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…クリーナ(電気掃除機)、2…ハウジング、2a…収容部、2b…ハンドル部、2c…電池パック装着部、2d…吸気口(ハウジング吸気口)、2e…排気口、2f…左ハウジング(第1部品)、2g…右ハウジング(第2部品)、2h…回り止め部、2i…フランジ部、3…ダストケース、3a…吸気口(ダストケース吸気口)、4…電池パック、5…操作パネル(スイッチ部)、6…モータ、6a…回転軸、7…弾性体、8…照明部、9…集塵ファン、10…ファンガイド、20,20A…ファンカバー、21…吸気口、22…格子部、23…傾斜面、24…凸部(係止部)、30,30A,30B…シール部材、31…第1回転規制部、32,32A…第2回転規制部、33…第1シール部、34…第2シール部、35…溝部(くびれ部)、36…穴部(空洞部)、40…フィルタ部材。