(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20230719BHJP
G03G 15/095 20060101ALI20230719BHJP
G03G 13/095 20060101ALI20230719BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G03G15/08 226
G03G15/095
G03G13/095
G03G9/08
(21)【出願番号】P 2021575711
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002018
(87)【国際公開番号】W WO2021157372
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020018658
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020136128
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】中植 隆久
(72)【発明者】
【氏名】川口 弘達
(72)【発明者】
【氏名】石野 正人
(72)【発明者】
【氏名】太田 有香里
(72)【発明者】
【氏名】玉木 友浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 実
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124813(JP,A)
【文献】特開2012-215647(JP,A)
【文献】特開2009-145473(JP,A)
【文献】特開2013-228636(JP,A)
【文献】特開2001-092248(JP,A)
【文献】特開2005-173065(JP,A)
【文献】特開平09-068823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 13/095
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性一成分の現像剤を用いて現像を行う画像形成装置であって、
軸周りに回転し、静電潜像が形成されるドラム周面を有する感光体ドラムと、
前記感光体ドラムに前記現像剤を供給して前記静電潜像を現像剤像に顕在化する現像装
置と、を備え、
前記現像装置は、
前記現像剤を収容する現像ハウジングと、
軸周りに回転可能なように前記現像ハウジングに支持され、前記ドラム周面と対向し前記現像剤を担持する第一周面を有し、担持した前記現像剤を前記ドラム周面に供給する現像ローラーと、
前記第一周面と接触し、前記第一周面に担持させる前記現像剤の量を規制する規制ブレードと、を備え、
前記現像ローラーは、前記第一周面における、前記規制ブレードとのみかけの接触面積に対する真の接触面積を表す実接触面積率
が、接触線圧1N/mの条件で算出した場合において4.5%以上10%以下の値を示
すように構成され、
前記現像ローラーの前記第一周面が、前記規制ブレードの先端の曲げ部にも接触するものとされ、
前記規制ブレードは、
その材質がSUS304で、その表面粗さRaが0.05以上0.3μm以下の範囲とされ、10N/m以上60N/m以下の接触線圧で前記第一周面に対して接触するように配置されている、画像形成装置。
【請求項2】
前記規制ブレードは、前記第一周面に対する前記接触線圧が10N/m以上60N/m以下の範囲となるように前記現像ハウジングに支持されている、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記規制ブレードは、前記現像ハウジングに固定される固定端部と当該固定端部とは反対側に配置され前記現像ローラーの前記第一周面に接触する自由端部とを有し、
前記自由端部は、前記現像ローラーから離れるような曲げ形状を有する曲げ部を含み、前記曲げ部の曲率半径は0.1mm以上である、請求項2に記載の画像形成装置
。
【請求項4】
前記現像剤は、粉砕法または重合法によって製造され、円形度が0.93以上0.97以下、あるいは中心粒径が6.0μm以上8.0μm以下の現像剤である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像剤の90℃における溶融粘度は、10000Pa・S以上200000Pa・S以下の範囲に含まれている、請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性一成分現像方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非磁性一成分の現像剤を用いて現像を行う非磁性一成分現像方式の画像形成装置が知られている。非磁性一成分現像方式の画像形成装置では、現像ローラーの周面に設けられた微細な凹凸によってトナーが搬送され、規制ブレードによって余分なトナーが擦り切られる(例えば特許文献1)。このようにして、現像ローラーの周面にトナー薄層が形成される。また、当該トナー薄層を形成するトナーは、規制ブレードの下を通過するときに、規制ブレードとの摩擦によって帯電される。その後、現像ローラーと感光体との間に形成された電界によって、現像ローラーの周面にあるトナーが感光体に移動することで、感光体に形成された静電潜像が現像される。
【0003】
トナーおよびキャリアを含む二成分の現像剤を用いて現像を行う場合、マグネットや金属スリーブ、キャリア等のデバイスが必要となる。しかし、非磁性一成分の現像剤を用いて現像を行う場合には、これらのデバイスは不要であり、直流成分のバイアスを現像ローラーに印加するだけで十分に現像を行うことができる。このように、非磁性一成分現像方式の画像形成装置は、簡素且つ低コストに構成できるため、主に、低速のコンパクト機に積極的に採用されている。
【0004】
しかし、非磁性一成分現像方式の画像形成装置では、
図11に示すように、規制ブレード334によって現像ローラー331の周面に形成するトナー層の厚さを規制する際に、トナーに強いストレスが加わり、規制ブレード334の一部にトナーの固着物99(融着物)が発生する虞がある。
【0005】
規制ブレードにトナーが固着すると、現像ローラーの周面に均一な厚さのトナー層を形成することができなくなり、現像ローラーの周面において局所的にトナー層が薄くなる、薄層スジという現象が発生する。薄層スジが発生すると、感光体に形成された静電潜像が適切に現像されず、シートに形成される画像に白い筋が見られる虞がある。省エネ化のため、低温でシートに定着可能な所謂柔らかいトナーを用いると、規制ブレードにトナーが固着し易くなり、薄層スジがより顕著に発生する。
【0006】
そこで、従来から、規制ブレードによってトナーに加わるストレスを軽減する技術が提案されている。例えば、規制ブレードに弾性部材を貼り付けることが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:特許第6376688号公報
特許文献2:特願平10-332714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の技術では、トナーに加わるストレスが軽減されるものの、現像ローラーの周面と弾性部材とが互いに接触する領域について考慮されていない。このため、前記接触する領域が小さすぎると、トナーに加わるストレスが軽減され過ぎ、現像ローラーの周面に形成されるトナー層が厚くなり過ぎるとともに、当該トナー層を形成するトナーの帯電量が低下し過ぎる虞がある。一方、前記接触する領域が大きすぎると、弾性部材によって強いストレスが加えられたトナーが非接触の領域に流動できず、当該トナーが弾性部材に付着し過ぎる虞がある。これらの場合、感光体の周面に形成された静電潜像が適切に現像されず、最終的にシートに形成される画像に問題が生じる虞がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、規制ブレードへの現像剤の固着を低減し、且つ、静電潜像を適切に現像することができる非磁性一成分現像方式の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、非磁性一成分の現像剤を用いて現像を行う画像形成装置であって、軸周りに回転し、静電潜像が形成されるドラム周面を有する感光体ドラムと、前記感光体ドラムに前記現像剤を供給して前記静電潜像を現像剤像に顕在化する現像装置と、を備え、前記現像装置は、前記現像剤を収容する現像ハウジングと、軸周りに回転可能なように前記現像ハウジングに支持され、前記ドラム周面と対向し前記現像剤を担持する第一周面を有し、担持した前記現像剤を前記ドラム周面に供給する現像ローラーと、前記第一周面と接触し、前記第一周面に担持させる前記現像剤の量を規制する規制ブレードと、を備え、前記第一周面の実接触面積率は、4.5%以上10%以下である。また、前記規制ブレードは、前記現像ハウジングに固定される固定端部と当該固定端部とは反対側に配置され前記現像ローラーの前記第一周面に接触する自由端部とを有し、前記自由端部は前記現像ローラーから離れるような曲げ形状を有する曲げ部を含み、前記曲げ部は前記現像ローラーの軸方向から見て0.1mm以上の曲率半径を有し、前記規制ブレードのうち少なくとも前記曲げ部の一部を含む領域で前記現像ローラーに接触し、前記領域の表面粗さRaが0.05μm以上0.3μm以下の範囲に含まれる。
【0011】
本構成では、規制ブレードのうち少なくとも曲げ部の一部を含み現像ローラーに接触する領域の表面粗さRaが0.05μm以上0.3μm以下の範囲に含まれている。そして、第一周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下の範囲に含まれ、第一周面の実接触面積率が10%より大きい場合よりも、第一周面と規制ブレードとの非接触部の面積が大きい。このため、本構成は、規制ブレードによって第一周面に担持させる現像剤の量を規制する際に、規制ブレードによって強いストレスが加えられた現像剤を、第一周面の実接触面積率が10%より大きい場合よりも容易に前記非接触部に移動させることができる。これにより、本構成は、第一周面の実接触面積率が10%より大きい場合よりも、規制ブレードに現像剤が付着する虞を低減できる。
【0012】
一方、本構成では、第一周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下の範囲に含まれ、第一周面の実接触面積率が4.5%未満である場合よりも、第一周面と規制ブレードとの非接触部の面積が小さい。このため、本構成は、規制ブレードによって第一周面に担持させる現像剤の量を規制する際に、第一周面の実接触面積率が4.5%未満である場合よりも、現像剤が近傍の非接触部間で移動することで、現像剤の層の厚さにムラが生じることを抑制できる。これにより、本構成は、第一周面の実接触面積率が4.5%未満である場合よりも、均一な厚さの現像剤の層を第一周面に形成し、静電潜像を適切に現像できる。
【0013】
このように、本構成によれば、従来のように、規制ブレードに弾性部材を取り付けなくても、規制ブレードに現像剤が付着する虞を低減できるとともに、静電潜像を適切に現像できる。
【0014】
上記の構成において、前記規制ブレードは、前記第一周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下の範囲に含まれるように前記現像ハウジングに支持されていてもよい。
【0015】
本構成では、規制ブレードは、第一周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下となるように配置されている。このため、本構成は、規制ブレードによって第一周面に担持させる現像剤の量が規制される際に、規制ブレードの第一周面に対する接触線圧が10N/m未満又は60N/mより大きい場合よりも適切なストレスを現像剤に加えることができる。これにより、本構成は、規制ブレードの第一周面に対する接触線圧が10N/m未満又は60N/mより大きい場合よりも、規制ブレードに現像剤が付着する虞を低減できるとともに、均一な厚さの現像剤の層を第一周面に形成し、静電潜像を適切に現像できる。
【0016】
上記の構成において、前記現像剤は、粉砕法によって製造されたものであってもよい。
【0017】
粉砕法によって製造された現像剤の粒子は、重合法で製造された現像剤の粒子よりも製造コストは低いが、円形度は低い。したがって、粉砕法によって製造された現像剤の粒子は、規制ブレードによって強いストレスが加えられた際に、重合法で製造された現像剤の粒子よりも、規制ブレードに引っ掛かり易く、また、隣り合う粒子の凹部と凸部が嵌合することで密着し易い。このため、粉砕法によって製造された現像剤は、重合法で製造された現像剤よりも、規制ブレードに付着し易く、また、第一周面に形成される現像剤の層の厚さにムラが生じ易い。
【0018】
しかし、本構成によれば、現像剤が粉砕法によって製造されたものであっても、上述のように、第一周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であるので、規制ブレードによって第一周面に担持させる現像剤の量が規制される際に、規制ブレードに現像剤が付着する虞を低減できるとともに、現像剤の層の厚さにムラが生じることを抑制できる。このため、重合法で製造された現像剤よりも安価な粉砕法によって製造された現像剤を、画像形成装置に適用することで、最終的に形成される画像の画質を維持しつつ、画像形成装置の利用コストを低減することができる。
【0019】
上記の構成において、前記現像剤の90℃における溶融粘度は、10000Pa・S以上200000Pa・S以下の範囲に含まれていてもよい。
【0020】
90℃における溶融粘度が200000Pa・S以下の現像剤は、90℃における溶融粘度が200000Pa・Sより大きい現像剤よりも流動性が高い。本構成では、現像剤の90℃における溶融粘度が200000Pa・S以下であるので、規制ブレードによって強いストレスが加えられた現像剤を、現像剤の90℃における溶融粘度が200000Pa・Sより大きい場合よりも容易に前記非接触部に流動させることができる。これにより、本構成は、現像剤の90℃における溶融粘度が200000Pa・Sより大きい場合よりも、現像剤が規制ブレードに付着する虞を低減できる。
【0021】
一方、90℃における溶融粘度が10000Pa・S以上の現像剤は、90℃における溶融粘度が10000Pa・S未満の現像剤よりも流動性が低い。本構成では、現像剤の90℃における溶融粘度が10000Pa・S以上であるので、規制ブレードによって強いストレスが現像剤に加えられた際に、現像剤の90℃における溶融粘度が10000Pa・S未満である場合よりも、現像剤が近傍の非接触部間で移動することで、現像剤の層の厚さにムラが生じることを抑制できる。これにより、本構成は、現像剤の90℃における溶融粘度が10000Pa・S未満である場合よりも、均一な厚さの現像剤の層を第一周面に形成し、静電潜像を適切に現像できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、規制ブレードへの現像剤の付着を低減でき、且つ、静電潜像を適切に現像できる非磁性一成分現像方式の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の画像形成部の断面図である。
【
図3】画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】実接触面積率の算出方法の一例を示す図である。
【
図5A】実接触面積率が12.4%の現像ローラーの周面の撮影画像の一例を示す図である。
【
図5B】実接触面積率が9.4%の現像ローラーの周面の撮影画像の一例を示す図である。
【
図5C】実接触面積率が4.5%の現像ローラーの周面の撮影画像の一例を示す図である。
【
図6A】90℃における溶融粘度が1000000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
【
図6B】90℃における溶融粘度が200000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
【
図6C】90℃における溶融粘度が10000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る現像装置の規制ブレードの先端の形状および現像ローラーへの接触領域を示す図である。
【
図9】規制ブレードの表面粗さを測定する様子を示す図である。
【
図11】規制ブレードによって現像ローラーの周面に担持させる現像剤の量を規制する動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。
図2は、画像形成部30の断面図である。本実施形態では、画像形成装置1は、モノクロプリンターであるものとする。しかし、画像形成装置1は、これに限らず、複写機、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよく、また、カラー画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【0025】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10、本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30及び定着部40を含む。本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。画像形成部30及び定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から出し入れ可能となる。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。
【0026】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面から更に前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、シートの束が収容される用紙収容空間、シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には用紙繰出部21Aが設けられている。この用紙繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0027】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー像(現像剤像)を形成する画像形成動作を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電部32、露光部35、現像部33及び転写ローラー34を含む。
【0028】
感光体ドラム31は、回転軸と、回転軸回りに回転する周面(ドラム周面)と、を備える。感光体ドラム31の周面には、静電潜像が形成されるとともに、当該静電潜像を顕在化したトナー像が担持される。感光体ドラム31は、例えば公知の有機(OPC)感光体で構成され、周面に電荷発生層、電荷輸送層等の機能層が形成される。
【0029】
帯電部32は、感光体ドラム31の周面に対して所定の間隔を置いて配置され、感光体ドラム31の周面を非接触の状態で均一に帯電させる。具体的には、帯電部32は、チャージワイヤー321(
図2)及びグリッド電極322(
図2)を有する。チャージワイヤー321は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる線状の電極であり、感光体ドラム31との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極322は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー321と感光体ドラム31との間に配設される。帯電部32は、チャージワイヤー321に所定の電流値の電流を流すことでコロナ放電を発生させ、且つ、グリッド電極322に所定電圧を印加することで、グリッド電極322に対向する感光体ドラム31の周面を、所定のエージング電位に一様に帯電させる。
【0030】
露光部35は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づき変調された光を照射する。これにより、露光部35は、感光体ドラム31の周面に、前記画像データが示す画像に対応する静電潜像を形成する。
【0031】
現像部33(現像装置)は、本体ハウジング10に着脱自在であり、感光体ドラム31の周面に非磁性一成分のトナー(現像剤)を供給することにより、感光体ドラム31の周面に形成された静電潜像を現像(顕在化)する。静電潜像を現像するとは、静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成することを示す。具体的には、現像部33は、現像ハウジング330と、現像ローラー331と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334と、を有する。
【0032】
現像ハウジング330は、非磁性一成分のトナー(現像剤)を収容する。具体的には、本発明者が検討した結果に基づき、当該トナーには、粉砕法によって製造された90℃における溶融粘度が10000Pa・S以上200000Pa・S以下のものが適用される。本発明者が行った検討の内容については後述する。
【0033】
現像ローラー331は、軸周りに回転可能なように現像ハウジング330に支持され、感光体ドラム31の周面と対向する周面(第一周面)を有する。現像ローラー331は、例えばシリコーンゴム等の円筒状の部材で構成される。また、現像ローラー331の周面は、ウレタン等の凹凸のあるコーティング部材によってコーティングされている。現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置において、感光体ドラム31の回転方向(
図2では時計回り)における上流側から下流側に向かう方向(
図2では反時計回り)に回転する。つまり、現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置では、感光体ドラム31と同じ方向に回転する。
【0034】
供給ローラー332は、現像ハウジング330内において軸周りに回転し、現像ローラー331の周面と対向する周面を有する。供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置において、現像ローラー331の回転方向(
図2では反時計回り)における下流側から上流側に向かう方向(
図2では反時計回り)に回転する。つまり、供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置では、現像ローラー331とは逆の方向に回転する。
【0035】
攪拌パドル333は、軸周り(
図2では時計回り)に回転し、現像ハウジング330の内部でトナーを攪拌する。これにより、現像ハウジング330内に配置された供給ローラー332の周面に、現像ハウジング330内のトナーが供給される。
【0036】
規制ブレード334は、感光体ドラム31と現像ローラー331とが対向する位置よりも現像ローラー331の回転方向における上流側の位置で現像ローラー331の周面に接触する。これにより、規制ブレード334は、現像ローラー331の周面に担持されたトナーの量を規制する。また、規制ブレード334は、現像ローラー331の周面に担持されたトナーを摩擦することで、トナーを帯電させる。このような規制ブレード334は、現像ハウジング330に固定される固定端部と、当該固定端部とは反対側に配置され現像ローラー331の周面(第一周面)に接触する自由端部とを有する。
【0037】
つまり、現像部33は、現像ローラー331、供給ローラー332、及び攪拌パドル333を軸周りに回転させる。現像部33は、現像ハウジング330内で攪拌パドル333によって攪拌されたトナーを供給ローラー332の周面に供給し、担持させる。現像部33は、供給ローラー332の周面に担持されたトナーを現像ローラー331の周面に供給し、担持させる。そして、現像部33は、現像ローラー331の周面に担持され、規制ブレード334によって帯電され、量が規制されたトナーを、感光体ドラム31の周面に供給する。
【0038】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。具体的には、転写ローラー34は、軸周りに回転し、感光体ドラム31の回転方向における現像ローラー331よりも下流側の位置で、感光体ドラム31の周面と対向する周面を有する。
【0039】
転写ローラー34は、自身の周面と感光体ドラム31の周面との間のニップ部を通過するシートに、感光体ドラム31の周面に担持されているトナー像を転写する。当該転写の際、転写ローラー34には、トナーと逆極性の転写バイアスが印加される。
【0040】
定着部40は、シートに転写されたトナー像を、シート上に定着させる定着処理を行う。定着部40は、定着ローラー41と加圧ローラー42とを有する。定着ローラー41は、加熱源を内部に備え、シートに転写されたトナーを所定温度で加熱する。加圧ローラー42は、定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱及び加圧ローラー42による押圧により、シート上に定着される。
【0041】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するために、主搬送路22F及び反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20の用紙繰出部21Aから画像形成部30及び定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0042】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31及び転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、前記転写ニップ部に送り出される。主搬送路22F及び反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されている。排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0043】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。尚、反転ユニット25の内側面には、転写ローラー34及びレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12及び反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてジャム(紙詰まり)が発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像部33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0044】
図3は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置1は、上述した給紙部20、画像形成部30及び定着部40に加え、制御部90、操作部50、通信部60及び記憶部70を備える。
【0045】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部90には、上述した給紙部20、画像形成部30及び定着部40に加え、操作部50、通信部60及び記憶部70等が電気的に接続されている。
【0046】
操作部50は、ユーザーに画像形成装置1の各種操作を行わせるためのユーザーインターフェイスである。具体的には、操作部50は、画像形成装置1の動作状態(例えば、印刷中)等、画像形成装置1に関する情報を表示する液晶ディスプレイ、印刷条件等、画像形成装置1の動作に関する情報を入力させるためのタッチパネル、及び各種の操作キーを備えている。
【0047】
通信部60は、外部機器とのデータ通信を実現させるためのインターフェイス回路である。例えば、外部のパーソナルコンピューターから送信された印刷指示及び印刷用の画像データは、通信部60を介して制御部90に与えられる。
【0048】
記憶部70は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部70には、制御部90による制御の下、例えばパーソナルコンピューター等の外部機器から送信され、通信部60を介して制御部90に与えられた印刷用の画像データや、各部の制御に用いるデータ等のデータが記憶される。
【0049】
制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することで、ユーザーが操作部50を用いて入力した印刷指示又は通信部60が外部機器から受信した印刷指示を取得する。制御部90は、当該取得した印刷指示に従って、画像形成部30及び定着部40を制御して、シートに画像を形成する印刷処理を行う。
【0050】
以下、本発明者が、規制ブレード334へのトナーの固着を低減でき、且つ、静電潜像を適切に現像できるようにするために行った検討の内容について詳述する。
【0051】
上記構成において、規制ブレード334によって現像ローラー331の周面に形成するトナー層の厚さを規制する際にトナーに強いストレスが加わると、規制ブレード334にトナーが付着(融着)する虞がある。規制ブレード334にトナーが付着すると、現像ローラー331の周面に均一な厚さのトナー層を形成できなくなり、現像ローラー331の周面において局所的にトナー層が薄くなる薄層スジという現象が発生する。薄層スジが発生すると、感光体ドラム31の周面に形成された静電潜像が適切に現像されず、シートに形成される画像に白い筋が見られる虞がある。
【0052】
そこで、従来技術と同様、規制ブレード334に弾性部材を貼り付けることによって、規制ブレード334がトナーに加えるストレスを軽減するとする。しかし、この場合、規制ブレード334を構成するのに要するコストが高くなる。また、従来技術では、現像ローラー331の周面と弾性部材とが実際に接触する領域について考慮されていない。このため、現像ローラー331の周面と弾性部材とが実際に接触する領域が小さすぎると、トナーに加わるストレスが軽減され過ぎ、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層が厚くなり過ぎるとともに、当該トナー層を形成するトナーの帯電量が低下し過ぎる虞がある。一方、前記接触する領域が大きすぎると、弾性部材によって強いストレスが加えられたトナーが非接触の領域に流動できず、当該トナーが弾性部材に付着し過ぎる虞がある。これらの場合、感光体ドラム31の周面に形成された静電潜像が適切に現像されず、最終的にシートに形成される画像に問題が生じる虞がある。
【0053】
そこで、本発明者は、規制ブレード334に弾性部材を貼り付けることなく、現像ローラー331の周面の実接触面積率及び規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧を調整することにより、規制ブレード334へのトナーの付着を低減し、且つ、静電潜像を適切に現像することについて鋭意検討を行った。
【0054】
表1は、実験条件の一例を示す図である。
【0055】
【0056】
具体的には、本発明者は、90℃における溶融粘度が異なる三種類のトナーをそれぞれ現像ハウジング330に収容した場合において、表1に示す実験条件を満たす現像ローラー331、規制ブレード334及びトナーを使用し、更に、現像ローラー331の周面の実接触面積率及び規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧をそれぞれ異ならせて印刷処理を200分間繰り返した後、更に、同環境下で印刷処理を行うという実験を行った。
【0057】
尚、規制ブレード334によって規制されるトナーの量は、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧と、現像ローラー331の周面の実接触面積率と、によって調整される。規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧とは、規制ブレード334と現像ローラー331の周面との接触位置における規制ブレード334の単位長さ当たりの接触圧である。現像ローラー331の周面の実接触面積率とは、現像ローラー331の周面の面積に対する当該周面における凹部を除いた領域の面積の占める割合である。つまり、現像ローラー331の周面の実接触面積率は、現像ローラー331の周面と規制ブレード334とのみかけの接触面積に対する、真の接触面積を表すものである。
【0058】
なお、現像ローラー331の周面の実接触面積率は、以下のように算出すればよい。
図4は、実接触面積率の算出方法の一例を示す図である。
図4に示すように、互いに直交する外面801、802と、外面801及び外面802とそれぞれ45°で交差する外面803とを有する三角柱形状のガラス製のプリズム80を用意すればよい。つまり、プリズム80の断面は、直角二等辺三角形となっている。そして、現像ローラー331は、プリズム80の外面803に対して、現像ローラー331の周面が接触線圧1N/mで接触するように配置すればよい。そして、プリズム80の外面801を介して現像ローラー331の周面と外面803との接触部に白色光を照射することで、プリズム80の外面802に投影される現像ローラー331の周面と外面803との接触部の画像を、顕微鏡によって撮影すればよい。例えば、白色光を照射する光源には、株式会社レイマック製の白色LED光源「IHM-25」を使用すればよい。また、顕微鏡には、HiROX社製の「KH-8700」を使用すればよい。
【0059】
上述のようにして、周面の実接触面積率が12.4%、9.4%、4.5%の現像ローラー331の周面と外面803との接触部を撮影した画像を、
図5A、
図5B、
図5Cに示す。
図5A、
図5B、
図5Cに示すように、当該撮影した画像における黒色の領域は、現像ローラー331の周面とプリズム80の外面803とが実際に接触しているために、プリズム80の外面801を介して照射された白色光が吸収された領域である。つまり、当該黒色の領域は、現像ローラー331の周面における凹部を除いた領域であると考えられる。換言すれば、当該撮影された画像において黒色ではない領域は、現像ローラー331の周面とプリズム80の外面803とが接触していない領域であり、現像ローラー331の周面における凹部の領域と考えられる。このため、上記の撮影した画像を二値化処理し、当該二値化処理後の画像の面積に対する前記黒色の領域の面積の比率(=黒色の領域の面積/二値化処理後の画像の面積)を、現像ローラー331の周面の実接触面積率として算出すればよい。
【0060】
本実施形態では、規制ブレード334は、現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下となるように配置されている。また、現像ローラー331には、周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下のものが適用されている。当該接触線圧及び実接触面積率の値は、規制ブレード334へのトナーの付着を低減でき、且つ、静電潜像を適切に現像できるようにするために、本発明者が検討した結果に基づき定められている。
【0061】
本発明者は、上記実験に用いる画像形成装置1として、京セラドキュメントソリューションズ社製の「ECOSYS FS・140」を採用し、当該画像形成装置1の現像ローラー331を実験内容に応じて交換し、規制ブレード334の配置を実験内容に応じて調整した。本発明者は、90℃における溶融粘度が、1000000Pa・s、200000Pa・s、10000Pa・sの三種類のトナーをそれぞれ現像ハウジング330に収容した場合について上記実験を行った。本発明者は、周面の実接触面積率が、3.3%、4.5%、6%、9.4%、10.5%、12.4%、14%である現像ローラー331をそれぞれ取り付けた場合に、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が、5N/m、10N/m、15N/m、20N/m、30N/m、40N/m、50N/m、60N/m、70N/mのそれぞれとなるように規制ブレード334を配置して上記実験を行った。つまり、本発明者は、168(=3(トナーの種類の数)×7(実接触面積率の値の数)×8(接触線圧の値の数))個の環境下で、それぞれ、200分間印刷処理を繰り返す実験を行った。
【0062】
尚、表1に示すように、上記実験では、NOK株式会社製の現像ローラー331を採用した。表1に示す現像ローラー331の材質は、現像ローラー331の円筒状の本体の材質がシリコーンゴムであり、本体の周面のコーティング部材の材質がウレタンであることを示す。つまり、本発明者は、現像ローラー331の周面のコーティング部材として用いるウレタンの粒子数を異ならせることで、現像ローラー331の周面の実接触面積率を調整した。表1に示す現像ローラー331の硬度は、高分子計器株式会社製の「MD-1capa」によって測定した硬度を示す。表1に示す現像ローラー331の抵抗値は、現像ローラー331の周面を、一端が接地された金属ローラーに接触させて配置し、現像ローラー331を回転させながら現像ローラー331に+100Vの電圧を印加したときに、現像ローラー331に流れる電流値から算出した抵抗値である。表1に示す規制ブレード334の材質は、SUS304であり、18Cr-8Niや18クロムステンレスとも呼ばれるものである。
【0063】
そして、本発明者は、初回の印刷処理及び200分間の印刷処理後に行った印刷処理のそれぞれにおいて、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層の厚さ及びシートに形成された画像の画質を目視により確認した。そして、本発明者は、その確認結果を、横軸を現像ローラー331の周面の実接触面積率とし、縦軸を規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧とする二次元座標にプロットしたグラフを作成した。
【0064】
図6Aは、90℃における溶融粘度が1000000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
図6Bは、90℃における溶融粘度が200000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
図6Cは、90℃における溶融粘度が10000Pa・sのトナーを用いて上記実験を行った場合の確認結果を示すグラフである。
【0065】
図6A~
図6Cにおいて、〇、△及び×は、本発明者が、初回の印刷処理及び200分間の印刷処理後に行った印刷処理のそれぞれにおいて、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層の厚さ及びシートに形成された画像の画質を目視により確認した結果を示している。具体的には、〇は、上記の二つの印刷処理の何れにおいても、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層が均一であり、シートに形成された画像の画質は何ら問題がない正常状態であったことを示す。△は、上記の二つの印刷処理のうちの少なくとも一方において、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層に軽微な薄層スジが生じた、又は、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層の厚さにムラが生じたが、上記の二つの印刷処理の何れにおいても、シートに形成された画像の画質は実用上問題ない状態であったことを示す。×は、上記の二つの印刷処理の何れにおいても、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層に軽微な薄層スジが生じ、又は、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層の厚さにムラが生じ、シートに形成された画像にも白い筋や濃度ムラ等の異常が見られ、実用上問題がある状態であったことを示す。
【0066】
本発明者は、
図6Aに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が1000000Pa・sのトナーを用いる場合、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上であり、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上であれば、実用上問題のない画質でシートに画像を形成できることを知見した。しかし、本発明者は、本実験においてシートに形成された画像を確認した際に、シートに汚れが見られた。このことから、本実験に用いた画像形成装置1の定着部40では、90℃における溶融粘度が1000000Pa・sのトナーを適切にシートに定着させることができず、実用上、当該トナーの定着性に問題があると評価した。
【0067】
本発明者は、
図6Bに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が200000Pa・sのトナーを用いる場合、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上12.4%以下であり、且つ、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上50N/m以下であれば、実用上問題のない画質でシートに画像を形成できることを知見した。また、本発明者は、
図6Bに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が200000Pa・sのトナーを用いる場合、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であれば、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が50N/m以上60N/m以下であっても、実用上問題のない画質でシートに画像を形成できることを知見した。尚、本発明者は、本実験においてシートに形成された画像を確認した際には、シートに汚れが見られなかった。このことから、本実験に用いた画像形成装置1の定着部40では、90℃における溶融粘度が200000Pa・sのトナーを適切にシートに定着させることができ、実用上、当該トナーの定着性に問題がないと評価した。
【0068】
本発明者は、
図6Cに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が200000Pa・sよりも低い10000Pa・sのトナーを用いる場合、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であり、且つ、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下であれば、実用上問題のない画質でシートに画像を形成できることを知見した。尚、本発明者は、本実験においてシートに形成された画像を確認した際には、シートに汚れが見られなかった。このことから、本実験に用いた画像形成装置1の定着部40では、90℃における溶融粘度が10000Pa・sのトナーを適切にシートに定着させることができ、実用上、当該トナーの定着性に問題がないと評価した。
【0069】
また、本発明者は、
図6B及び
図6Cに示した確認結果を比較した結果、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用いる場合、トナーの溶融粘度が低く、つまり、トナーの流動性が高くなるほど、実用上問題のない画質でシートに画像を形成可能にするための、現像ローラー331の周面の実接触面積率及び規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧の範囲は狭くなることを知見した。また、本発明者は、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であり、且つ、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下であれば、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下の何れのトナーを用いても、実用上問題のない画質でシートに画像を形成でき、トナーの定着性にも問題が生じないことを知見した。
【0070】
図7は、第1の評価結果を示す図である。上述したように、本発明者は、
図6A~
図6Cに示した確認結果から、定着性に問題がない90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用いる場合、
図7に示すように、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であり、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下であれば、規制ブレード334にトナーが付着する虞を低減できるとともに、静電潜像を適切に現像でき、シートに形成された画像に問題が生じないことを知見した。
【0071】
また、本発明者は、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用いる場合、
図7に示すように、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が60N/m以下であっても、現像ローラー331の周面の実接触面積率が10%より大きいときは、現像ローラー331の周面のトナー層に薄層スジが生じることを知見した。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0072】
規制ブレード334によって現像ローラー331の周面のトナー層を規制する際、規制ブレード334下のトナーは、現像ローラー331の周面の凹部に移動されて担持される。このため、現像ローラー331の周面の実接触面積率が大きいほど、規制ブレード334下のトナーの移動先となる凹部が少なくなり、当該トナーに加わるストレスが大きくなる。これにより、現像ローラー331の周面の実接触面積率が大きいほど、規制ブレード334に付着するトナーの量が多くなり、現像ローラー331の周面のトナー層に薄層スジが生じ易くなると考えられる。
【0073】
一方、本発明者は、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用いる場合、
図7に示すように、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が60N/m以下であっても、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%未満になると、現像ローラー331の周面のトナー層の厚さにムラが生じることを知見した。また、本発明者は、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用いる場合、
図7に示すように、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以下になると、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であっても、現像ローラー331の周面のトナー層の厚さにムラが生じることを知見した。これらは、以下の理由によるものと考えられる。
【0074】
現像ローラー331の周面の実接触面積率が小さいほど、現像ローラー331の周面の凹部が多くなり、規制ブレード334によってストレスが加えられたトナーが各凹部間で流動し易くなる。これにより、現像ローラー331の周面の実接触面積率が小さいほど、現像ローラー331の周面のトナー層の厚さにムラが生じ易くなると考えられる。また、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以下の場合、規制ブレード334によってトナーに加えられるストレスが小さすぎるため、現像ローラー331の周面の実接触面積率が小さいほど、現像ローラー331の周面の各凹部間でトナーが流動し易くなり、現像ローラー331の周面のトナー層の厚さにムラが生じ易くなると考えられる。
【0075】
また、本発明者は、
図6B及び
図6Cに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用い、また、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧を10N/m以上60N/m以下にする場合、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層を均一にし、シートに形成される画像の画質に何ら問題を生じさせないためには、現像ローラー331の周面の実接触面積率を6%以上9%未満にすることがより好ましいことを知見した。
【0076】
また、本発明者は、
図6B及び
図6Cに示した確認結果から、90℃における溶融粘度が10000Pa・s以上200000Pa・s以下のトナーを用い、また、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下の場合、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層を均一にし、シートに形成される画像の画質に何ら問題を生じさせないためには、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧を30N/m以上50N/m以下にすることがより好ましいことを知見した。
【0077】
更に、本発明者は、更なる検討の結果、規制ブレード334が現像ローラー331に接触する部分の表面粗さが薄層スジの発生有無に関連することを新たに知見した。
図8は、本実施形態に係る現像部33の規制ブレード334の先端(自由端部)の形状および現像ローラー331への接触領域を示す図である。
図9は、規制ブレード334の表面粗さを測定する様子を示す図である。
図10は、第2の評価結果を示す図である。
【0078】
図8を参照して、本実施形態に係る規制ブレード334は、その固定端部が
図2に示すように現像ハウジング330に支持される一方、その自由端部(先端部)は現像ローラー331の軸方向から見て0.3mmの曲率半径を有し現像ローラー331から離れるような曲げ形状を有する曲げ部(曲面)からなる。当該曲げ部は、直線形状を有する規制ブレード334の基材の先端部に曲げ加工(R曲げ加工)を施すことで形成される。また、現像部33において、このような規制ブレード334の現像ローラー331に対する接触状態を非線形解析で解析した結果、
図8の領域CP(接触領域)で示すように、現像ローラー331の周面が規制ブレード334の先端の曲げ部にも接触することが確認された。なお、規制ブレード334においては、先端の曲げ加工を施した部分と基端側の曲げ加工を施していない部分とでは、先端の曲げ加工を施した部分の方が加工ひずみによりその表面粗さが粗くなる。そこで、実験上、このような先端の曲げ部分を含めて、規制ブレード334の表面粗さを細かくするためには、先端の曲げ部分も含めて研磨処理することが必要となる。そこで、本実施形態では、規制ブレード334に対する研磨処理の一例としてバフ研磨が採用された。
【0079】
当該バフ研磨によって規制ブレード334の表面を研磨するとともに、その表面粗さを測定することで、互いに表面粗さの異なるサンプルを作成した。ここで、
図9に示すように、規制ブレード334の表面粗さは、現像ローラー331と接触する先端の曲げ部分の表面粗さを測定針85によって測定できるように規制ブレード334を水平面に対して45度傾けて固定可能な不図示の治具を準備した。その上で、規制ブレード334の表面粗さの測定には、ミツトヨ製S-3100を測定器として使用した。この際の測定条件は、JIS規格2001年、測定長さ4.8mm、カットオフ0.8mm、測定速度0.5mm/secで行った。
【0080】
以上の事前検討の上、規制ブレード334の先端部(特に、前記曲げ部を含み現像ローラー331の周面に接触する領域)の表面粗さを変化させたサンプルを準備して、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下の範囲に設定した上で、先の第1の評価結果と同様の評価を行った結果、
図11に示すように、規制ブレード334が現像ローラー331に当接する当接領域CPの表面粗さ(Ra)が、薄層スジの発生有無に影響することを確認することができた。
【0081】
図11に示すように、規制ブレード334の先端部の表面粗さRaが0.05以上0.3μm以下の範囲において薄層スジおよびトナー層厚ムラの観点での問題が発生しない。上記の表面粗さRaが0.3μmを超える場合には薄層スジが発生し、0.05μm未満の範囲ではトナー薄層にムラ(トナー層厚ムラ)が発生することが知見された。なお、規制ブレード334の先端部の曲げ部分の曲率半径が0.1mm以上の範囲において上記と同様の効果が得られた。
【0082】
尚、本発明者は、現像ローラー331の周面を本体とは別の部材でコーティングせずに、現像ローラー331の周面を研磨する度合いによって現像ローラー331の周面の実接触面積率を調整した場合でも、上記と同じ知見が得られることを確認した。
【0083】
また、表1に示す実験条件では、トナーの中心粒径を6.8μmとしていたが、本発明者は、トナーの中心粒径が6.0μm以上8.0μm以下である場合にも、上記と同様の実験を行い、上記と同様の知見が得られることを確認した。尚、トナーの中心粒径が6.0μm未満になると、当該トナーの製造コストは高くなり、トナーの中心粒径が8.0μmより大きくなると、当該トナーの消費量が増え、シートへの定着性が悪化する。このため、本発明者は、トナーの中心粒径が6.0μm以上8.0μm以下である場合についてのみ実験を行った。
【0084】
また、表1に示す実験条件では、トナーの円形度を0.96としていたが、本発明者は、トナーの円形度が0.93以上0.97以下である場合にも、上記と同様の実験を行い、上記と同様の知見が得られることを確認した。尚、トナーの円形度が0.93未満になると、シートに形成される画像の画質が低下し、トナーの円形度が0.97より大きくなると、当該トナーの製造コストは大幅に高くなる。このため、本発明者は、トナーの円形度が0.93以上0.97以下である場合についてのみ実験を行った。
【0085】
また、表1に示す実験条件では、現像ローラー331の硬度を高分子計器株式会社製の「MD-1capa」によって測定し、45°としていた。しかし、本発明者は、現像ローラー331の硬度を同様の方法で測定し、当該測定した現像ローラー331の硬度が40°以上60°以下である場合にも、上記と同様の実験を行い、上記と同様の知見が得られることを確認した。尚、現像ローラー331の硬度が40°未満になると、感光体ドラム31の周面や規制ブレード334に、永久変形による圧接痕が残り、シートに形成される画像の画質に問題が生じる。一方、現像ローラー331の硬度が60°よりも大きくなると、トナーに加わるストレスが急増し、現像ローラー331の周面に薄層スジが発生する確率が急増する。このため、本発明者は、現像ローラー331の硬度が40°以上60°以下である場合についてのみ実験を行った。
【0086】
また、本発明者は、現像ハウジング330に収容するトナーの90℃における溶融粘度が200000Pa・sよりも大きく250000Pa・s以下である場合にも、上記と同様の実験を行い、上記と同様の知見が得られることを確認した。尚、90℃における溶融粘度が250000Pa・sよりも大きいトナーを用いて上記実験を行った結果、上述した90℃における溶融粘度が1000000Pa・sのトナーを用いた実験と同様、シートに汚れが生じ、当該トナーのシートへの定着性が悪かった。このため、本発明者は、90℃における溶融粘度が250000Pa・sよりも大きいトナーについては、実用上問題が生じるものと評価した。
【0087】
また、本発明者は、粉砕法によって製造されたトナーを採用することについて、以下のように評価した。粉砕法によって製造されたトナーの粒子は、重合法で製造されたトナーの粒子よりも製造コストは低いが、円形度は低い。したがって、粉砕法によって製造されたトナーの粒子は、規制ブレード334によって強いストレスが加えられた際に、重合法で製造されたトナーの粒子よりも、規制ブレード334に引っ掛かり易く、また、隣り合う粒子の凹部と凸部が嵌合することで密着し易い。このため、粉砕法によって製造されたトナーは、重合法で製造されたトナーよりも、規制ブレード334に付着し易く、また、現像ローラー331の周面に形成されるトナーの層の厚さにムラが生じ易い。
【0088】
しかし、上述のように、粉砕法によって製造されたトナーを採用した場合であっても、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下であり、規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧が10N/m以上60N/m以下であれば、規制ブレード334によって現像ローラー331の周面に担持させるトナーの量が規制される際に、規制ブレード334にトナーが付着する虞を低減できるとともに、トナーの層の厚さにムラが生じることを抑制できる。このため、重合法で製造されたトナーよりも安価な粉砕法によって製造されたトナーを、画像形成装置1に適用することで、最終的に形成される画像の画質を維持しつつ、画像形成装置1の利用コストを低減することができる。
【0089】
尚、上記実施形態では、粉砕法によって製造されたトナーを採用する例について説明したが、重合法によって製造されたトナーを採用してもよい。また、画像形成装置が、例えば溶融粘度の高いトナーを高温で溶融可能な定着ローラー41を備える等、溶融粘度の高いトナーのシートへの定着性の悪さを解消可能に構成されているとする。この画像形成装置では、トナーの90℃における溶融粘度及び規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧は任意とし、周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下の現像ローラー331を採用するようにしてもよい。
【0090】
本発明者は、これらの画像形成装置においても上記と同様の実験を行い、上記と同様の確認を行った結果、
図7Aに示す確認結果と略同様の確認結果を得た。つまり、本発明者は、トナーの90℃における溶融粘度及び規制ブレード334の現像ローラー331の周面に対する接触線圧によらず、現像ローラー331の周面の実接触面積率が4.5%以上10%以下である場合に、現像ローラー331の周面に形成されるトナー層が均一であり、シートに形成される画像の画質に何ら問題を生じないことを確認した。
【符号の説明】
【0091】
1 :画像形成装置
31 :感光体ドラム
33 :現像部
331 :現像ローラー
334 :規制ブレード