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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】エレベーターの監視装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023506644
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011206
(87)【国際公開番号】W WO2022195823
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 智史
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122999(WO,A1)
【文献】特開2011-37525(JP,A)
【文献】特開2008-230743(JP,A)
【文献】特開平9-2752(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108275525(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごの音または振動の大きさの値を取得するデータ収集部と、
前記かごに利用者を乗せずに前記かごを運転させる診断運転を実施させ、診断運転中において前記データ収集部が収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合に、前記かごの運転速度を段階的に減速させ、前記データ収集部が音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における運転速度を前記かごの通常の運転速度として設定させる指示部と、
を備えたエレベーターの監視装置。
【請求項2】
前記指示部は、診断運転中に前記かごの運転速度を減速させても前記かごの音または振動の大きさの値が閾値を超えている場合は、前記かごの音または振動の大きさの値が最低値となった運転速度を前記かごの通常の運転速度として設定させる請求項1に記載のエレベーターの監視装置。
【請求項3】
エレベーターのかごの音または振動の大きさの値を取得するデータ収集部と、
前記かごに利用者を乗せずに前記かごを運転させる診断運転を実施させ、診断運転中において前記データ収集部が収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合に、前記かごが停車時から運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を段階的に減少させ、前記データ収集部が音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を、前記かごの通常運転の場合の、前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度として設定させる指示部と、
を備えたエレベーターの監視装置。
【請求項4】
前記指示部は、診断運転中に前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を段階的に減少させても前記かごの音または振動の大きさの値が閾値を超えている場合は、前記かごの音または振動の大きさの値が最低値となった前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を、前記かごの通常運転の場合の、前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度として設定させる請求項3に記載のエレベーターの監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムを開示する。当該エレベーターシステムは、異常が発生した際に、かごの通常の運転パラメータを変更することで運転を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2008-230743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベーターシステムは、通常運転中に異常を検出してかごの通常の運転パラメータを変更する。このため、かごの内部において、利用者が不安を感じることもある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、利用者がかごの内部にいない状態において、かごの通常の運転パラメータを適切に設定することができるエレベーターの監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの監視装置は、エレベーターのかごの音または振動の大きさの値を取得するデータ収集部と、前記かごに利用者を乗せずに前記かごを運転させる診断運転を実施させ、診断運転中において前記データ収集部が収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合に、前記かごの運転速度を段階的に減速させ、前記データ収集部が音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における運転速度を前記かごの通常の運転速度として設定させる指示部と、を備えた。
【0007】
本開示に係るエレベーターの監視装置は、エレベーターのかごの音または振動の大きさの値を取得するデータ収集部と、前記かごに利用者を乗せずに前記かごを運転させる診断運転を実施させ、診断運転中において前記データ収集部が収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合に、前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を段階的に減少させ、前記データ収集部が音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度を、前記かごの通常運転の場合の、前記かごが停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度および前記かごが一定の運転速度から停車するまでの減速度として設定させる指示部と、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、エレベーターの監視装置は、かごに利用者を乗せずにかごを運転させる診断運転を実施させる。診断運転中において収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合、監視装置は、かごの運転速度または加速度および減速度を段階的に減速または減少させ、音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における運転速度または加速度および減速度をかごの通常の運転速度または加速度および減速度として設定させる。このため、利用者がかごの内部にいない状態において、かごの通常の運転パラメータを適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムの構成図である。
図2】実施の形態1におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムのブロック図である。
図3】実施の形態1におけるエレベーターの監視装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
図4】実施の形態1におけるエレベーターの監視装置のハードウェア構成図である。
図5】実施の形態2におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムのかごの加速度および減速度の変化を説明するための図である。
図6】実施の形態2におけるエレベーターの監視装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムの構成図である。
【0012】
図1のエレベーターシステムにおいて、昇降路1は、図示されない建築物の各階を貫く。巻上機2は、昇降路1の上部に設けられる。主ロープ3は、巻上機2に巻き掛けられる。
【0013】
一対のかご側ガイドレール4は、昇降路1の内部に設けられる。一対のかご側ガイドレール4の各々の長手方向は、鉛直方向である。かご5は、昇降路1の内部に設けられる。かご5は、下方から主ロープ3の一側に支持される。かご5は、一対のかご側ガイドレール4に鉛直方向に案内される。
【0014】
一対のおもり側ガイドレール6は、昇降路1の内部に設けられる。一対のおもり側ガイドレール6の各々の長手方向は、鉛直方向である。つり合いおもり7は、昇降路1の内部に設けられる。つり合いおもり7の上部は、主ロープ3の他側に支持される。つり合いおもり7は、一対のおもり側ガイドレール6に鉛直方向に案内される。
【0015】
ガバナ8は、昇降路1の上部に設けられる。張り車9は、昇降路1の下部に設けられる。ガバナロープ10は、無端状に設けられる。ガバナロープ10は、ガバナ8と張り車9とに巻き掛けられる。
【0016】
制御装置11は、昇降路1の上部に設けられる。制御装置11は、巻上機2とかご5の機器とに電気的に接続される。制御装置11は、エレベーターを全体的に制御し得るように設けられる。
【0017】
図1のエレベーターにおいて、制御装置11は、巻上機2を回転させる。主ロープ3は、巻上機2の回転に追従して移動する。かご5とつり合いおもり7とは、主ロープ3の移動に追従して互いに反対方向に昇降する。この際、ガバナロープ10は、かご5の昇降に追従して移動する。ガバナ8は、ガバナロープ10の移動に追従して回転する。制御装置11は、ガバナ8の回転速度に基づいてかご5の鉛直方向の位置を認識する。
【0018】
計測器12は、かご5の上部に設けられる。計測器12は、周囲の状態を計測する。計測器12は、昇降路1の内部の状態を計測することができるように設けられる。計測器12は、かご5の状態を計測することができるように設けられる。例えば、計測器12は、加速度センサである。例えば、計測器12は、マイクである。
【0019】
診断装置13は、かご5の上部に設けられる。診断装置13は、計測器12に電気的に接続される。
【0020】
監視装置14は、制御装置11の近傍に設けられる。監視装置14は、制御装置11および診断装置13にそれぞれ電気的に接続される。監視装置14は、制御装置11からの情報に基づいてエレベーターの状態を監視し得るように設けられる。
【0021】
情報センター装置15は、エレベーターが設けられた建築物から離れた場所に設けられる。例えば、情報センター装置15は、エレベーターの保守会社に設けられる。情報センター装置15は、監視装置14からの情報に基づいてエレベーターの状態を把握し得るように設けられる。
【0022】
次に、図2を用いて、エレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムの診断運転時の動作を説明する。
図2は実施の形態1におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムのブロック図である。
【0023】
図2に示されるように、監視装置14は、指示部14aとデータ収集部14bと比較部14cを備える。監視装置14には、診断運転を実施するスケジュールが予め記憶される。例えば、診断運転は、利用頻度の少ない時間帯に定期的に実施される。例えば、診断運転は、毎日早朝に1回実施される。例えば、診断運転は、情報センター装置15から指示されて行われる遠隔試運転である。
【0024】
制御装置11は、指示部14aからの指示により診断運転を実施する。制御装置11は、図示されないかご5に利用者を乗せずにかご5を運転させる。この際、制御装置11は、利用者からのエレベーターの呼びを拒絶せず、応答する。例えば、制御装置11は、診断運転中であることを利用者に対して報知する。例えば、制御装置11は、図示されない表示装置を介して、診断運転中であることを利用者に対して表示する。この際、診断運転は、一時的に中断する。その後、開始条件が再度満たされると、診断運転は再開される。
【0025】
計測器12は、かご5が走行中の周囲の状態を計測する。具体的には、マイクは、周囲の音を収集する。加速度センサは、かご5の振動を計測する。計測器12で計測された音または振動の大きさの値の情報は、診断装置13に送信される。
【0026】
診断装置13は、音または振動の大きさの値の情報をデータ収集部14bに送信する。
【0027】
データ収集部14bは、取得した音または振動の大きさの値の情報を比較部14cに送信する。
【0028】
比較部14cは、音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。比較部14cは、判定した結果を指示部14aに送信する。
【0029】
指示部14aは、比較部14cが判定した結果に基づき、制御装置11にかご5の運転速度を変更させる。
【0030】
監視装置14は、情報センター装置15に、診断運転の結果の情報を送信する。
【0031】
次に、図3を用いて、監視装置14の動作の概要を説明する。
図3は実施の形態1におけるエレベーターの監視装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0032】
ステップS1では、監視装置14は、制御装置11に対し、診断運転を開始させる。監視装置14は、制御装置11に対し、定格速度でかご5を運転させる。例えば、定格速度は、105m/分である。続いて、監視装置14は、ステップS2の動作を行う。
【0033】
ステップS2では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。ステップS2で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。ステップS2で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS3の動作を行う。
【0034】
ステップS3では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の運転速度を第1の速度に減速させた上で、診断運転を継続させる。例えば、第1の速度は、90m/分である。続いて、監視装置14は、ステップS4の動作を行う。ステップS4では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。
【0035】
ステップS4で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、ステップS5の動作を行う。ステップS5では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の通常の運転速度を、第1の速度に設定させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0036】
ステップS4で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS6の動作を行う。ステップS6では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の運転速度を第2の速度に減速させた上で、診断運転を継続させる。例えば、第2の速度は、75m/分である。続いて、監視装置14は、ステップS7の動作を行う。ステップS7では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。
【0037】
ステップS7で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、ステップS8の動作を行う。ステップS8では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の通常の運転速度を、第2の速度に設定させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0038】
ステップS7で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS9の動作を行う。ステップS9では、監視装置14は、診断結果を情報センター装置15に通知する。監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の通常の運転速度を、計測された音または振動の大きさの値が最低値となった運転速度に設定させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0039】
以上で説明した実施の形態1によれば、監視装置14は、かご5に利用者を乗せずにかご5を運転させる診断運転を実施させる。診断運転中において収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合、監視装置14は、かご5の運転速度を段階的に減速させ、音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における運転速度をかごの通常の運転速度として設定させる。このため、利用者がかごの内部にいない状態において、かごの通常の運転パラメータを適切に設定することができる。その結果、ガイドシューの摩耗またはかご側ガイドレール4の油切れによる異音またはかごの振動により、利用者の不安感を軽減させることができる。
【0040】
また、監視装置14は、診断運転中にかご5の運転速度を減速させてもかご5の音または振動の大きさの値が閾値を超えている場合は、かご5の音または振動の大きさの値が最低値となった運転速度をかご5の通常の運転速度として設定させる。このため、エレベーターを停止させずに運転を継続させることができる。
【0041】
なお、監視装置14は、診断運転中にかご5の運転速度を減速させてもかご5の音または振動の大きさの値が閾値を超えている場合は、エレベーターの運転を停止してもよい。この場合、エレベーターが停止していることを、情報センター装置15に通知することで、エレベーターの点検を早期に行うことができる。
【0042】
なお、計測器12と診断装置13とは、エレベーターに後付けされてもよい。この場合、エレベーターのリニューアル時に診断運転の機能を追加させることができる。
【0043】
なお、計測器12は、計測した情報を診断装置13ではなく、監視装置14に直接送信してもよい。
【0044】
なお、計測器12は、計測した情報を診断装置13ではなく、制御装置11に送信してもよい。
【0045】
なお、音または振動の大きさの値と比較される閾値は、情報センター装置15により動的に設定されてもよい。
【0046】
なお、閾値と比較される値は音の大きさの値のみでもよい。
【0047】
なお、閾値と比較される値は振動の大きさの値のみでもよい。
【0048】
次に、図4を用いて、監視装置14の例を説明する。
図4は実施の形態1におけるエレベーターの監視装置のハードウェア構成図である。
【0049】
監視装置14の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0050】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、監視装置14の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、監視装置14の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0051】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、監視装置14の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、監視装置14の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0052】
監視装置14の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、指示部14aの機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、指示部14aの機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0053】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで監視装置14の各機能を実現する。
【0054】
図示されないが、制御装置11および診断装置13の各機能も、監視装置14の各機能を実現する処理回路と同等の処理回路で実現される。
【0055】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2におけるエレベーターの監視装置が適用されるエレベーターシステムのかごの加速度および減速度の変化を説明するための図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0056】
実施の形態2においては、指示部14aは、比較部14cが判定した結果に基づき、制御装置11に対して、かご5の通常の加速度または減速度を変更させる。
【0057】
図5において、実線は、診断運転により変更される前のかご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度が適用された場合の速度変化を示す。点線は、診断運転により変更された後の加速度および減速度が適用された場合のかご5の運転速度を示す。
【0058】
次に、図6を用いて、エレベーターの監視装置の動作の概要を説明する。
図6は実施の形態2におけるエレベーターの監視装置の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0059】
ステップS11では、監視装置14は、制御装置11に対し、診断運転を開始させる。監視装置14は、制御装置11に対し、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を、定格の加速度および減速度になるようにかご5を運転させる。続いて、監視装置14は、ステップS2の動作を行う。
【0060】
ステップS12では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。ステップS12で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。ステップS12で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS13の動作を行う。
【0061】
ステップS13では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を第1の加速度および減速度に減少させた上で、診断運転を継続させる。なお、第1の加速度および減速度は、定格の加速度および減速度よりも小さい。続いて、監視装置14は、ステップS14の動作を行う。ステップS14では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。
【0062】
ステップS14で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、ステップS15の動作を行う。ステップS15では、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転の場合の、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を第1の加速度および減速度に設定させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0063】
ステップS14で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS16の動作を行う。ステップS16では、監視装置14は、制御装置11に対し、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を第2の加速度および減速度に減少させた上で、診断運転を継続させる。なお、第2の加速度および減速度は、第1の加速度および減速度よりも小さい。続いて、計測器12は、ステップS17の動作を行う。ステップS17では、監視装置14は、計測された音または振動の大きさの値が閾値以上か否かを判定する。
【0064】
ステップS17で音または振動の大きさの値が閾値以上でない場合、監視装置14は、ステップS18の動作を行う。ステップS18では、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転の場合の、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を、第2の加速度および減速度に減少させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0065】
ステップS17で音または振動の大きさの値が閾値以上である場合、監視装置14は、ステップS19の動作を行う。ステップS19では、監視装置14は、診断結果を情報センター装置15に通知する。監視装置14は、制御装置11に対し、かご5の通常運転の場合の、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を、計測された音または振動の大きさの値が最低値となった加速度および減速度に設定させる。その後、監視装置14は、制御装置11に対し、通常運転を開始させる。
【0066】
以上で説明した実施の形態2によれば、監視装置14は、かご5に利用者を乗せずにかご5を運転させる診断運転を実施させる。診断運転中において収集した音または振動の大きさの値が閾値以上となった場合、監視装置14は、かご5が停車時から一定の運転速度に至るまでの加速度およびかご5が一定の運転速度から停車するまでの減速度を段階的に減速させ、音または振動の大きさの値が閾値未満となった場合における運転速度をかごの通常の加速度および減速度として設定させる。このため、利用者がかごの内部にいない状態において、かごの通常の加速度および減速度を設定することができる。その結果、ガイドシューの摩耗またはかご側ガイドレール4の油切れによる異音またはかごの振動により、利用者の不安感を軽減させることができる。
【0067】
なお、監視装置14により減少されるのは、かご5の加速度のみでもよい。
【0068】
なお、監視装置14により減少されるのは、かご5の減速度のみでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本開示のエレベーターの監視装置は、エレベーターシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 昇降路、 2 巻上機、 3 主ロープ、 4 かご側ガイドレール、 5 かご、 6 おもり側ガイドレール、 7 つり合いおもり、 8 ガバナ、 9 張り車、 10 ガバナロープ、 11 制御装置、 12 計測器、 13 診断装置、 14 監視装置、 14a 指示部、 14b データ収集部、 14c 比較部、 15 情報センター装置、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6