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特許7315135ビス(アミノ又はニトロフェノキシ)ベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ビス(アミノ又はニトロフェノキシ)ベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C07C 205/38 20060101AFI20230719BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20230719BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20230719BHJP
   C07C 217/90 20060101ALI20230719BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230719BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C07C205/38 CSP
C07C201/12
C07C213/02
C07C217/90
C08G73/10
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018205308
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070255
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515087514
【氏名又は名称】セイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】寺本 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 元則
(72)【発明者】
【氏名】西山 和秀
(72)【発明者】
【氏名】井本 充隆
(72)【発明者】
【氏名】笠松 正裕
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】冨永 保
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-106503(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103044916(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102816327(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102796015(CN,A)
【文献】特開2023-15209(JP,A)
【文献】Synthesis、(1998)、pp.894-898
【文献】Journal of Applied Polymer Science、(2015)、Vol.132、No.17、pp.1-9、DOI:10.1002/APP.41684
【文献】Polymer、(2012)、53、pp.2783-2791
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物
【化1】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’ 及び4’は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキルであり、 、R 、R 及びR は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、、R、R及びRの少なくとも一つは前記アルキル基であり、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つは前記アルキル基であり、且つ、R、R、R及びRのうち1つ又は2つが前記置換基であり、R、R、R及びRのうち残りは水素原子であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基であり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)。
【請求項2】
下記式(1a’)又は(1b’)で表される、請求項1記載の化合物
【化2】
(上記各式において、R、R’及びR’’は、互いに独立に、置換されていない炭素数1~6のアルキルであり、A、及びBは上記の通りである)。
【請求項3】
二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位に結合している、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
AおよびBが共にアミノ基である、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が、1,4-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ―2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼン、1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、及び1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼンから選ばれる、請求項記載の化合物。
【請求項6】
下記式(1-a)で表される化合物の製造方法であって、
【化4】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’ 及び4’は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる置換基であり、 、R 、R 及びR は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、、R、R及びRの少なくとも一つは前記アルキル基であり、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つは前記アルキル基であり、且つ、R、R、R及びRのうち1つ又は2つが前記置換基であり、R、R、R及びRのうち残りは水素原子であり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
下記式(1-b)又は式(1-c)で表される化合物
【化5】
【化6】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRは、上記の通りであり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
のニトロ基を還元して上記式(1-a)で表される化合物を得る工程を含む、前記製造方法。
【請求項7】
前記式(1-a)で表される化合物が、1,4-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ―2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼンから選ばれる、請求項6項記載の製造方法。
【請求項8】
下記式(1-b)で表される化合物の製造方法であって、
【化7】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’ 及び4’は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる置換基であり、 、R 、R 及びR は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、、R、R及びRの少なくとも一つは前記アルキル基あり、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つは前記アルキル基であり、且つ、R、R、R及びRのうち1つ又は2つが前記置換基であり、R、R、R及びRのうち残りは水素原子であり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
下記式(2)で表される化合物の1以上
【化8】
(式中、R、R、R及びRは上記の通りであり、Xはハロゲン原子である)
と下記式(3)で表される化合物の1以上
【化9】
(式中、R、R、R及びRは上記の通りであり、Yは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、二つの酸素原子はベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
とを反応させて上記式(1-b)で表される化合物を得る工程を含む、前記製造方法。
【請求項9】
下記式(1-b)で表される化合物の製造方法であって、
【化10】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’ 及び4’は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる置換基であり、 、R 、R 及びR は、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、R、R、R及びRの少なくとも一つは前記アルキル基であり、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つは前記アルキル基であり、且つ、R、R、R及びRのうち1つ又は2つが前記置換基であり、R、R、R及びRのうち残りは水素原子であり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
下記式(4)で表される化合物の1以上
【化11】
(式中、R、R、R及びRは上記の通りであり、Yは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である)
と下記式(5)で表される化合物の1以上
【化12】
(式中、R、R、R及びRは上記の通りであり、Xはハロゲン原子であり、二つのXはベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)
とを反応させて上記式(1-b)で表される化合物を得る工程を含む、前記製造方法。
【請求項10】
上記式(1-b)で表される化合物が、1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、及び1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼンから選ばれる、請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
請求項4記載のジアミン化合物と酸無水物との反応物である、ポリイミド化合物。
【請求項12】
前記酸無水物が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1である、請求項11記載のポリイミド化合物。
【請求項13】
数平均分子量2,000~200,000を有する、請求項11または12記載のポリイミド化合物。
【請求項14】
請求項4記載のジアミン化合物と、酸無水物と、請求項4記載の化合物以外の任意のジアミン化合物との反応物であるポリイミド化合物であって、請求項4記載の化合物と前記任意的ジアミン化合物の合計モルに対する請求項4記載の化合物の割合が、10モル%~100モル%である、請求項11~13のいずれか1項記載のポリイミド化合物。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項記載のポリイミド化合物からなる成型物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドをはじめとした高機能性高分子および種々の有機化合物のための原料として有用なビス(アミノフェノキシ)ベンゼン及びその誘導体、及びその製造方法に関する。さらに本発明は、該ジアミン化合物の前駆体である(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)ベンゼン、ビス(ニトロフェノキシ)ベンゼン、及びこれらの誘導体、並びにこれら化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信分野において使用されるプリント配線基板等では高速・大容量通信が求められており、そのため従来よりも高周波数帯使用が期待されている。しかし、高周波数化することで伝送損失が増大するという問題がある。伝送損失は抵抗損失と誘電損失の寄与に分けられる。そのうち、抵抗損失は周波数に比例して熱に変わる特徴があり、誘電損失は周波数、誘電正接、比誘電率に比例する特徴がある。
【0003】
高周波数帯での使用に耐えうる材料には、耐熱性に加え、優れた電気特性、特に低誘電率、低誘電正接であることが求められている。優れた高耐熱性材料として,例えばポリイミド樹脂(PI)やポリアミド樹脂が知られている(非特許文献1、2)。しかし、これらの樹脂は分子内に極性の高いイミド基、あるいはアミド基構造を有しており、これらの寄与のため、多くのPIの誘電率(k)は3.0を越えるのが通常である。また、優れた電気特性を有する材料として、例えばポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が知られている(特許文献1,非特許文献1,2)。しかし、熱可塑性であり、溶融時の流動性が悪い、溶剤溶解性が乏しいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-82793号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pathrick R.A.et,al「Journal of Applied Polymer Science」、vol.132、p.41684-41692、2015年.
【文献】Akhter Z.et,al「Polymer Bulletin」vol.74、p.3889-3906、2017年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
優れた高耐熱性と電気特性を有する材料として、PIの低誘電率化が提案されている。PIはそのモノマーであるジアミンの設計の多様性から、低誘電率化の分子設計には魅力的な材料である。PIの低誘電率化の基本的な考えは、高誘電率に寄与するイミド基濃度をどのように希釈(低減)していくかにある。PI中のイミド基濃度を下げるには,芳香族ジアミンとして代表的なオキシジアニリンのような二核体に代え、三核以上の芳香環を有するジアミンを採用するのが有効である。しかし、イミド基濃度を下げる分、PIの耐熱性を損なうことになる。イミド基濃度を下げ、なおかつ耐熱性を損なわないようにするには、芳香環に嵩高い炭化水素を導入し、芳香族アミン部位のエーテル結合や、イミド環と芳香環との単結合の自由回転を規制し、ポリイミド主鎖の一次運動を阻害するのが有効である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、ポリイミド樹脂などの樹脂原料、また、電子材料やこれらの中間体や原料として有用な、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン及びその誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のようなビス(アミノフェノキシ)ベンゼンの問題点を鋭意検討した結果、アミノフェノキシ又はニトロフェノキシを有し三核体である、ビス(アミノ又はニトロフェノキシ)ベンゼン化合物であって、3つの芳香環が夫々少なくとも1のアルキル基又はアルコキシ基を有する新規の化合物を製造し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1)で表される化合物及び該化合物の製造方法を提供する
【化1】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、又は、置換されていない炭素原子数1~6アルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、R、R、R及びRの少なくとも一つは前記置換基であり、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つは前記置換基であり、且つ、R、R、R及びR のうち1つ又は2つが前記置換基であり、 、R 、R 及びR のうち残りは水素原子であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基であり、二つの酸素原子は中央にあるベンゼン環の1位と4位または1位と3位の位置に結合している)。
【発明の効果】
【0010】
本発明のビス(アミノ又はニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、中央に位置するベンゼン環に少なくとも1つのアルキル基を持つことから、誘電率、及び誘電正接が低いポリイミド樹脂を提供し、ポリイミド原料として好適に使用できる。また、本発明のビス(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、ニトロ基を還元することにより前記ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物を容易に提供することができ、ポリイミド原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は実施例1で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図2図2は実施例1で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図3図3は実施例2で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図4図4は実施例2で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図5図5は実施例3で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図6図6は実施例3で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図7図7は実施例4で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図8図8は実施例4で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図9図9は実施例5で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図10図10は実施例5で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図11図11は実施例6で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図12図12は実施例6で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図13図13は実施例7で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図14図14は実施例7で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図15図15は実施例8で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図16図16は実施例8で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のビス(アミノ又はニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、下記式(1)で表される。以下、詳細に説明する。
【化2】
【0013】
上記式(1)において、A及びBは互いに独立にアミノ基又はニトロ基である。A及びBが共にアミノ基であるジアミン化合物(下記(1-a))は、後述する方法により、上記式(1)で表されA及びBの少なくとも1がニトロ基である化合物(下記(1-b)又は(1-c))のニトロ基を還元することにより、容易に得ることができる。
【化3】
【0014】
上記式(1)において、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の置換されていてよいアルキル基及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基である。R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRの結合箇所は特に制限されるものでない。但し、R、R、R及びRのうち3つが前記置換基であり、残る一つが水素原子である化合物においては、R、R、R、およびRのうち少なくとも1つの置換基はAで示される基のオルト位にあり、R1’、R2’、R3’、及びR4’のうち少なくとも1つの置換基はBで示される基のオルト位にあるのがよい。
また、R、R、R、及びRと、R1’、R2’、R3’、及びR4’ は共通していてもよく、その場合は下記式(1’)で表される。
【化4】
【0015】
本発明の化合物は、R、R、R及びRの少なくとも一つと、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つと、R、R、R及びRの少なくとも一つが、互いに独立に、置換されていてよい炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であることを特徴とする。
【0016】
、R、R及びRの少なくとも一つと、R1’、R2’、R3’及びR4’の少なくとも一つと、R、R、R及びRの少なくとも一つとは、各々異なる置換基であってよいし、2以上が同じ置換基であってもよい。より詳細には、R、R、R及びRのうち少なくとも一つ、好ましくは一つ又は二つ、より好ましくはいずれか一つと、R1’、R2’、R3’及びR4’のうち少なくとも一つ、好ましくは一つ又は二つ、より好ましくはいずれか一つが、互いに独立に炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であるのがよい。また、R、R、R及びRのうち1以上、好ましくは1~4つ、更に好ましくは1~3つ、最も好ましくは1つ又は2つが、炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であるのがよい。
【0017】
上記置換されていてよい炭素原子数1~6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、及びイソブチル基等、又は、これらの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1が、本発明の効果を妨げない範囲において、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等に置換されている基である。好ましくは、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基である。炭素原子数1~3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、及びプロポキシ基が挙げられる。より好ましくは、置換されていない、炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0018】
本発明の上記式(1)で表される化合物は下記式(1-d)で表される、1,4-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼンを含まない。
【化5】
【0019】
、R、R及びRのうち1つ又は2つが、置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、R、R、R及びRのうち残りが水素原子である化合物は、下記式(1a)又は(1b)で表される。
【化6】
【化7】
上記各式において、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、及びR4’ は上記の通りであり、Rは、互いに独立に、置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、最も好ましくはメチル基であり、A及びBは上記の通りである。
中でも下記式(1a’)又は(1b’)で表される化合物が好ましい。
【化8】
【化9】
上記各式において、R、A、及びBは上記の通りである。R’及びR’’は、互いに独立に、置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、好ましくは、RがAで示される基に対してオルト位又はメタ位にあり、R’’がBで示される基に対してオルト位又はメタ位にあるのがよい。
【0020】
また、R、R、R及びRのうち3つが、置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、残る一つが水素原子である化合物としては、下記式(1c)、(1d)、(1e)、又は(1f)のいずれかの化合物が挙げられる。
【化10】
上記において、R、R’及びR’’は、互いに独立に、置換されていてよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素原子数1~3のアルコキシ基であり、A及びBは上記の通りであり、各式においてR’の少なくとも1つはAで示される基のオルト位にあり、R’’の少なくとも1つはBで示される基のオルト位にあるのがよい。好ましくは、上記式(1c)で表され、R’がAで示される基のオルト位にあり、R’’がBで示される基のオルト位にある化合物である。
【0021】
より詳細には、上記式(1)で表され、A及びBが共にアミノ基であるジアミン化合物としては、例えば、1,4-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼン、及び1,3-ビス(4-アミノ―2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼン等が挙げられるが、これらの化合物に制限されるものでない。上記式(1)で表され、A及びBが共にニトロ基であるジニトロ化合物としては、例えば、1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼン、1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼン等が挙げられるが、これらの化合物に制限されるものでない。
【0022】
[製造方法]
(1)下記式(1-a)で表されるジアミン化合物の製造方法
【化11】
(式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRは上述した通りである)
該ジアミン化合物の製造方法は何ら制限されるものではなく、いかなる方法で製造してもよい。例えば、下記一般式(1-b)又は(1-c)で表される化合物のニトロ基を還元することにより得ることが出来る。
【化12】
【化13】
(上記式中、式中、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R、R、R及びRは上述した通りである)
【0023】
上記ニトロ基の還元反応は、特に限定されるものではなく、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法を用いることが出来る。例えば、芳香族ジニトロ化合物の還元方法としては、接触還元、ベシャン還元、亜鉛末還元、塩化スズ還元、及びヒドラジン還元等が挙げられる。
【0024】
還元反応に用いられる溶剤は例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-メトキシエタノール、及び2-エトキシエタノールなどのアルコール系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド系溶剤、及び、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤が挙げられるが、芳香族ジニトロ化合物が溶解する溶媒であれば、これらに限定されることはない。溶剤の量は適宜調整されればよい。
【0025】
還元反応に使用される触媒は上記各還元反応の触媒として公知の触媒を使用すればよい。例えば、接触還元またはヒドラジン還元に用いられる触媒としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、アルミナなどに担持させたパラジウム、白金、ロジウムなどの貴金属触媒、ラネーニッケル触媒、及びスポンジニッケル触媒が挙げられる。触媒の量は特に制限されるものでないが、通常0.1~10wt%である。
【0026】
還元反応の反応温度及び時間は適宜選択されればよい。例えば、50~150℃の範囲にある温度、好ましくは60~130℃の範囲にある温度で、1~35時間、好ましくは3~10時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、触媒を除去し、冷却した後、生成した固体を濾過、水洗、乾燥することにより、上記一般式(1-a)で示される化合物を得ることができる。また、更に必要に応じて、再度、晶析濾過、カラム分離等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることが出来る。
【0027】
(2)上記一般式(1-b)又は(1-c)で表される(ジ)ニトロ化合物の製造方法
上記一般式(1-b)又は(1-c)で表される(ジ)ニトロ化合物の製造方法は、何ら制限されるものではなく、いかなる方法で製造してもよい。好ましくは、下記一般式(2)で示される化合物の一以上と下記一般式(3)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表されるジニトロ化合物が得られる。
【化14】
式(2)中、R、R、R及びRは上述した通りである。Xはハロゲン原子であり、例えば塩素原子又はフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【化15】
式(3)中、R、R、R及びRは、上述した通りである。Yは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【0028】
製造方法の別の態様としては、下記一般式(4)で示される化合物の一以上と下記一般式(5)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表されるジニトロ化合物が得られる。
【化16】
式(4)中、R、R、R及びRは上記の通りである。Yは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【化17】
式(5)中、R、R、R及びRは上記の通りであり、Xはハロゲン原子であり、例えばヨウ素又は臭素であり、好ましくは臭素である。
【0029】
例えば、上記一般式(2)で示される化合物として2-クロロ-5-ニトロトルエンと、一般式(3)で示される化合物としてメチルヒドロキノンとを反応させる場合、下記反応式で表される。
【化18】
【0030】
一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物の原料モル比は、通常、一般式(3)で示される化合物1モルに対して一般式(2)で示される化合物を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(3)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0031】
一般式(4)で示される化合物と一般式(5)で示される化合物の原料モル比としては、通常、一般式(4)で示される化合物1モルに対して一般式(5)で示される化合物を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(3)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0032】
上記式(1-a)で表されるビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物はポリイミドの原料として有用である。また、上記式(1-b)で表されるるビス(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物及び式(1-c)で表される(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、上述した通りビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物の前駆体として有用である。上記式(1-a)で表されるビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物は、例えば、酸無水物と反応させることにより、ポリイミド化合物を提供する。
【0033】
酸無水物はポリイミドの原料として用いられている従来公知のものであればよい。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1以上である。
【0034】
上記ジアミン化合物と酸無水物の反応条件や反応比率は特に制限されるものでなく、従来公知の方法に従い、適宜選択されればよい。例えば、反応条件は
25~30℃の範囲にある温度で0.5~24時間反応させればよい。反応比率は1.00とすればよい。得られるポリイミド化合物は、好ましくは数平均分子量2,000~200,000、好ましくは10,000~50,000を有するのがよい。該数平均分子量は例えばGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、THF)により、測定される値である。
【0035】
上記ポリイミド化合物としては、本発明のジアミン化合物以外の任意のジアミン化合物をさらに反応させてもよい。全ジアミン化合物の合計モルに対する本発明のジアミン化合物の割合は10モル%~100モル%であるのが好ましい。本発明のジアミン化合物以外の任意のジアミン化合物としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンからなる群から選択される1以上である。
【0036】
本発明のポリイミド化合物からなる成形物としては、例えば高速・大容量通信用材料が挙げられる。
【実施例
【0037】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものでない。
下記実施例において用いた測定方法及び装置は以下の通りである。
HPLC測定にはSHIMADZU製SPD-10Aを使用し、融点測定にはYAMATO製MP-21を使用した。
H核磁気共鳴スペクトル分析には、JEOL製JNM-ECA600型を用い、共鳴周波数600MHzで測定した。測定溶媒は重クロロホルムを用いた。
13C核磁気共鳴スペクトル分析には、JEOL製JNM-ECA600型を用い、共鳴周波数150MHzで測定した。測定溶媒は重クロロホルムを用いた。
赤外分光測定には日本分光製FT/IR-4100を使用し、KBr錠剤法により測定した。
質量分析には、SHIMADZU製GCMS-QP2010を使用した。
精密質量分析には、SHIMADZU製LCMS-IT-TOFを使用した。
【0038】
[実施例1]
1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼンの合成
100mL三口フラスコにメチルヒドロキノン1.0g(8.1mmol)と2-クロロ-5-ニトロトルエン2.9g(16.9mmol)と炭酸カリウム1.5g(10.6mmol)とDMF20mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度150℃を保ちながら7時間反応を行った。反応終了後、冷却し、蒸留水100mLを加えた。析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して、1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼンの粗生成物を得た。これをアセトニトリルに溶解させ、加熱し、加水、冷却、濾過、洗浄及び乾燥して精製された1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン2.2gを得た。HPLCで測定した純度は99.9%であり、mp.は179-180℃であった。
該実施例1で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図1に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図2に示す。IR及びGC-MSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3435,1590,1509,1483,1344,1241,1196,1180,1094,748.
GC-MS:m/z=394(M
【0039】
[実施例2]
1,4-ビス(4-アミノ―2-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼンの合成
300mLオートクレーブに、実施例1で得た1,4-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン40.0gと2-メトキシエタノール200g、5%Pd/C 0.20gを仕込み、0.8MPaで80℃を保ちながら接触水素化還元を行った。反応終了後、触媒を除去した後に冷却、加水し、濾過、洗浄及び乾燥して1,4-ビス(4-アミノ―2-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン31.9gを得た。HPLCで測定した純度は99.6%であり、mp.は149-150℃であった。
該実施例2で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図3に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図4に示す。IR、GC-MS、及びHRMSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3403,3320,3219,1637,1489,1211,1190.
GC-MS:m/z=334(M
HRMS(ESI):335.1736(M+H)
【0040】
[実施例3]
1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼンの合成
100mL三口フラスコにメチルヒドロキノン1.0g(8.1mmol)と5-フルオロ-2-ニトロトルエン2.7g(17.0mmol)と炭酸カリウム1.5g(10.6mmol)とDMF20mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度150℃を保ちながら5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、蒸留水100mLを加えた。析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン3.0gを得た。HPLCで測定した純度は98.4%であり、mp.は139-141℃であった。
該実施例3で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図5に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図6に示す。IR及びGC-MSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3448,1615,1577,1509,1477,1337,1278,1238,1188,1076,958,753.
GC-MS:m/z=394(M
【0041】
[実施例4]
1,4-ビス(4-アミノ―3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼンの合成
冷却管を取り付けた30mL二口フラスコに実施例3で得た1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2-メチルベンゼン2.0gと2-メトキシエタノール12mL、5%Pd/C 0.30gを仕込み100℃まで昇温した。ヒドラジン水溶液3.3mLを加え13時間保温して反応させた。触媒を除去した後、溶媒を留去し、乾燥して、1,4-ビス(4-アミノ―3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼンの粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解させた後、塩酸を加えて酸析させ、析出した固体を濾別した。この固体を酢酸エチルに加え、さらにアルカリ水溶液を加え、水層を除去した。得られた油層に活性炭を加え脱色し、濾過し、濾液を濃縮し、減圧乾燥して精製された1,4-ビス(4-アミノ―3-メチルフェノキシ)-2-メチルベンゼン0.5gを得た。HPLCで測定した純度は97.9%であった。
該実施例4で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図7に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図8に示す。IR、GC-MS、及びHRMSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3403,3320,3219,1637,1489,1211,1190.
GC-MS:m/z=334(M+)
HRMS(ESI):335.1732(M+H)
【0042】
参考例5]
1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼンの合成
100mL三口フラスコにトリメチルヒドロキノン1.0gと5-フルオロ-2-ニトロトルエン2.2gと炭酸カリウム1.2gとDMF20mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度150℃を保ちながら6時間反応を行った。反応終了後、冷却し、蒸留水100mLを加えた。析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して、1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼン2.5gを得た。HPLCで測定した純度は99.9%であり、mp.は163-169℃であった。
該実施例5で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図9に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図10に示す。IR、及びGC-MSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3448,1614,1574,1476,1342,1280,1239,1216,1086.
GC-MS:m/z=422(M
【0043】
参考例6]
1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼンの合成
冷却管を取り付けた30mL二口フラスコに実施例5で得た1,4-ビス(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼン1.0gと2-メトキシエタノール10mL、5%Pd/C 0.13gを仕込み80℃まで昇温した。ヒドラジン水溶液2.8mLを加え35時間保温して反応させた。触媒を除去した後、溶媒を留去し、乾燥して、1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2,3,5-トリメチルベンゼンの粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解させた後、塩酸を加えて酸析させ、析出した固体を濾別した。この固体を酢酸エチルに加え、さらにアルカリ水溶液を加え、水層を除去した。得られた油層に活性体を加え脱色し、濾過し、濾液を濃縮し、減圧乾燥して精製された1,4-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)-2,3,5-
トリメチルベンゼン0.6gを得た。HPLCで測定した純度は97.0%であった。
該実施例6で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図11に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図12に示す。IR、GC-MS、及びHRMSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3446,3365,3024,2924,1610,1500,1472,1405,1277,1223,1154,1081,858.
GC-MS:m/z=362(M
HRMS(ESI):363.2046(M+H)+
【0044】
[実施例7]
1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼンの合成
200mL三口フラスコに5-メチルレゾルシノール無水物2.0gと2-フルオロ-5-ニトロトルエン5.3gと炭酸カリウム3.0gとDMF40mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度150℃を保ちながら11時間反応を行った。反応終了後、冷却し、蒸留水200mLを加えた。析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥し、これをアセトンに溶解し、溶媒留去して、1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼン6.2gを得た。HPLCで測定した純度は97.5%であり、mp.は104-108℃であった。
該実施例7で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図13に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図14に示す。IR、及びGC-MSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3434,3077,2961,1615,1576,1515,487,1458,1342,1297,1239,1092,969,882,746,647.
GC-MS:m/z=394(M
【0045】
[実施例8]
1,3-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼンの合成
冷却管を取り付けた30mL二口フラスコに実施例7で得た1,3-ビス(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)-5-メチルベンゼン2.0gと2-メトキシエタノール10mL、5%Pd/C 0.22gを仕込み80℃まで昇温した。ヒドラジン水溶液2.5mLを加え4時間保温して反応させた。触媒を除去した後、溶媒を留去し、乾燥して、1,3-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼンの粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解させた後、塩酸を加えて酸析させ、析出した固体を濾別した。この固体を酢酸エチルに加え、さらにアルカリ水溶液を加え、水層を除去した。得られた油層に活性炭を加え脱色し、濾過し、濾液を濃縮し、減圧乾燥して精製された1,3-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)-5-メチルベンゼン1.6gを得た。HPLCで測定した純度は97.7%であった。
該実施例8で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図15に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図16に示す。IR、GC-MS、及びHRMSの結果は以下の通り。
IR(KBr,cm-1):3436,3367,3220,2920,1614,1594,1498,1463,1211,1129,976,822.
GC-MS:m/z=334(M
HRMS(ESI):335.1724(M+H)
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物は、新規なジアミン化合物として好適に使用することができ、該化合物から誘導されるポリイミド分野の可能性を大きく広げ、優れた高耐熱性と電気特性を有する材料としての可能性が期待できる。また、ビス(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物及び(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、上記ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物の前駆体となり、ジアミン化合物と同様にポリイミド分野の可能性を大きく広げることが期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16