(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】きのこ含有レトルト容器入り液状食品
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20230719BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20230719BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20230719BHJP
A23L 5/10 20160101ALN20230719BHJP
【FI】
A23L19/00 101
A23L3/00 101C
B65D81/34 U
A23L5/10 C
(21)【出願番号】P 2016158191
(22)【出願日】2016-08-10
【審査請求日】2019-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】田口 武
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】加藤 友也
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-223225(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146915(WO,A1)
【文献】特開2004-268928(JP,A)
【文献】特開2015-208231(JP,A)
【文献】特開2005-204569(JP,A)
【文献】特開2009-33994(JP,A)
【文献】特開2012-90568(JP,A)
【文献】特開2009-297026(JP,A)
【文献】特開平8-266253(JP,A)
【文献】特開2010-115174(JP,A)
【文献】特開2013-9671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L19/00
A23L3/00
B65D81/34
A23L5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mm×10mm×5mm以下の大きさのマッシュルーム片、5mm×5mm×5mm以下の大きさのエリンギ片、及び笠の径が10mm以下のえのき片、から選ばれた1種以上を、液状食品中8.5~15重量%含有し、20℃における粘度が300~2000cPである
、電子レンジ加熱用きのこ含有レトルト容器入り液状食品。
【請求項2】
10mm×10mm×5mm以下の大きさのマッシュルーム片、5mm×5mm×5mm以下の大きさのエリンギ片、及び笠の径が10mm以下のえのき片、から選ばれた1種以上を、液状食品中8.5~15重量%含有し、20℃における粘度が300~2000cPである、レトルト容器入り液状食品のきのこ具材の
、電子レンジ加熱時破裂抑制方法。
【請求項3】
前記レトルト容器は加熱時に立てた状態で使用される請求項1に記載の
電子レンジ加熱用きのこ含有レトルト容器入り液状食品。
【請求項4】
前記レトルト容器は加熱時に立てた状態で使用される請求項2に記載の
電子レンジ加熱用レトルト容器入り液状食品のきのこ具材の加熱時破裂抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこ含有レトルト容器入り液状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこを含有するスープ等を電子レンジで加熱調理すると、加熱途中において、きのこが破裂することがある。そのため、きのこ入りスープを浅皿に入れた場合には、破裂の威力によって、スープの一部が浅皿から飛び出して電子レンジ内に飛び散ることがある。
また、特許文献1に記載されているように、きのこを破裂させないことを目的にきのこを-10℃以下で凍結処理を行い、そのきのこを含有するレトルト容器を開封することなく電子レンジにて加熱するレトルト容器入りカレーは知られている。カレーのように、明らかにスープよりも高粘度の食品(いわゆるレトルトカレーの粘度は6000cP程度)であれば、たとえ、きのこが破裂しても、その威力はカレーの粘度で吸収されるので、レトルト容器が倒れたり、レトルト容器から内容物が噴出したりすることはない。
なお、このようなレトルト容器は平袋形状であり、電子レンジにて加熱する際には、横に寝かせた状態とするので、加熱中に倒れることがない。
【0003】
さらに、特許文献2に記載されているように、パウチ詰液状食品であって、一旦開封したパウチ内の粘度が0.1~10Pa・sの調味液に、2mm角にダイスカットされた乾燥品を水戻ししたしいたけを投入し、再度密封してパウチを横に寝かせた状態で電子レンジにて加熱することは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4478593号公報
【文献】特許第5136802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のきのこ入りパウチ容器は、きのこが-10℃以下で凍結処理されているので、電子レンジにて加熱を行っても破裂しないとされている。
また、パウチ容器自体を横に倒すので、そもそも加熱時にパウチが倒れることはなく、きのこ入りの食品がカレーのように高粘度であると、電子レンジによる加熱時において、仮にきのこが破裂しても、その衝撃は食品の粘度によって吸収されるので、パウチが大きく振動するほどではない。
また、特許文献2に記載のパウチ詰液状食品は、2mm角のしいたけを単に使用するものであり、破裂することについて検討するものではない。
しかしながら、-10℃以下で凍結処理されたきのこを含有するレトルト容器入り食品であっても、条件によっては破裂する。よって、このような破裂を防止し、きのこの原料段階での処理態様に拘らず電子レンジによる加熱調理時に破裂しにくいきのこを含有したレトルト容器入り液状食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、電子レンジ加熱をした際に破裂しにくいきのこを含有するレトルト容器入り液状食品の提供にある。
そして、同一の粘度でも、きのこのサイズをより適切な範囲とすることで電子レンジ加熱中のきのこの破裂(レトルトパウチが跳ねたり、内容物の飛散やパウチの転倒が生じたりする破裂)を抑制する。
具体的には、以下の通り。
1.10mm×10mm×5mm以下の大きさのマッシュルーム片、5mm×5mm×5mm以下の大きさのエリンギ片、及び笠の径が10mm以下のえのき片、から選ばれた1種以上を含有する、粘度が300~2000cPであるきのこ含有レトルト容器入り液状食品。
2.含有するきのこを、10mm×10mm×5mm以下の大きさのマッシュルーム片、5mm×5mm×5mm以下の大きさのエリンギ片、及び笠の径が10mm以下のえのき片、から選ばれた1種以上とする、レトルト容器入り液状食品のきのこ具材の加熱時破裂抑制方法。
3.前記レトルト容器は加熱時に立てた状態で使用される1又は2に記載のきのこ含有レトルト容器入り液状食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子レンジにて加熱しても、内部のきのこによる大きな破裂がなく、大きな破裂音を生じすることがなく、容器が縦型レトルトパウチであっても、破裂による衝撃の影響によって倒れたり、大きく動いたりすることがない、きのこ含有レトルト容器入り液状食品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】液状食品を含有しない状態のレトルト容器の平面図
【
図2】液状食品を含有する状態のレトルト容器の模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のきのこ含有レトルト容器入り液状食品における食品は、液状の食品であって、スープ、シチュー、パスタソース、スープカレー、たれ等の液状の食品である。
また液状食品が含有するきのこ以外の固形材料は特に限定されず、スープやシチューにて使用される、肉、魚、野菜、貝等の各種の固形材料を任意の大きさや形状に加工したものを使用することができる。
【0010】
その食品の中でも、従来からあるレトルトカレーの程度の高粘度ではなく、かつ調味液のように低粘度でもないものが好ましい。あまりに高粘度の食品や低粘度の食品であると、電子レンジによる加熱中に、液状食品に含有されるきのこ片が破裂する可能性がある。
本発明における食品の粘度は300~2000cPであり、420~1800cPであることが好ましく、より好ましくは700~1780cPである。この粘度の範囲とすることによって、電子レンジによる加熱時において、レトルト容器が倒れることがなく、またレトルト容器がきのこの破裂によって、程度が大きい移動や跳ねや動きをすることがない。
【0011】
(きのこ片)
液状食品に含有させるきのこ片としては、きのこの種類毎にそのきのこ片の大きさが制限され、10mm×10mm×5mm以下の大きさのマッシュルーム片、5mm×5mm×5mm以下の大きさのエリンギ片、及び笠の径が10mm以下のえのき片、から選ばれた1種以上である。但し、笠の径が10mm以下とは、円形の笠が完全な円形として存在する場合には、笠の径が10mmであり、笠が切断されて円形を呈しない場合には、その最大幅を笠の径とする。
各きのこ片の大きさがこれらの大きさを超える場合には、電子レンジによる加熱中にきのこ片が破裂し易くなり、突然破裂音が多く発生したり、ひいては破裂による振動によってレトルト容器が頻繁に移動・振動したり、倒れたりする可能性がある。
【0012】
液状食品中のきのこ片の含有量としては、きのこ含有液状食品として公知の含有量でよく、液状食品中30重量%以下含有される。本発明におけるきのこ片の含有量は8.5~15重量%であることが好ましく、より好ましくは8.5~10重量%である。
きのこ片の製造方法は公知の方法で良く、きのこを任意の手段によって本発明中の大きさに切断し、小片化できる方法であればよい。小片化されるための原料のきのこは、冷凍きのこでも良く、水煮されたきのこでも良く、冷凍も水煮もされてない生のきのこでも良い。
なお、本発明において含有されるきのこ片は、本発明にて規定する大きさを超えるきのこ片が、本発明の効果を毀損しない範囲で、その製造工程上不可避な比率で若干混入することは許容される。
【0013】
(レトルト容器)
本発明のきのこ含有レトルト容器入り液状食品のレトルト容器は、いわゆるスタンディングパウチとして使用される容器である。
その構造としては、特に限定されるものではなく、1人用の大きさ(内部に入れられる食品の容量が100~200ml程度)から3~4人用程度の大きさ(内部に入れられる食品の容量が300~600ml程度)までのものを使用できる。なかでも、1人分から2人分程度の量の液状食品が充填される、自立できる縦型のレトルト容器である。
【0014】
このようなレトルト容器としては、例えば、食品を入れていない状態において、
図1に示す平面図からなる形状のスタンディングパウチ形状のレトルト容器であり、加熱時に蒸気を逃がすための機構を備えるものが好ましい。
図1は、内部に液状食品を有しないレトルト容器の一例を正面から見た図である。この容器は公知の材料から形成され、前後2枚の壁面フィルム(幅a、高さb)の下部の間に、底面フィルムを内側に向けて折り曲げ、底面フィルムの折り曲げ部は壁面フィルムの最下部から高さgにて横方向に形成される。その結果、底面フィルムが図示しないマチ部であるガセット部を形成し、そのガセット部が、
図1において、内側が中央部にかけて、湾曲線状に窪んだ形状となる船底形となるものである。
【0015】
なお、ここで、液状食品150mlを入れるためのレトルト容器の大きさについて述べる。液状食品を150ml以外の量を入れるときには、150mlに対する増減の比率と同じ比率を下記の大きさに乗ずることができる。
空のレトルト容器の大きさについては、
図1に示す数値に限定されず、例えば幅aは200mm以下が好ましく、170mm以下がより好ましく、155mm以下がさらに好ましい。高さbは200mm以下が好ましく、170mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましい。
またヒートシール等によるシール部の幅cは3~10mmが好ましく、レトルト容器が自立するために強度を備えた底部を形成させるためのシール部dの幅は5~12mmが好ましい。
底面フィルムの折り曲げ部の高さgは30~80mmが好ましく、より好ましくは40~60mmである。この高さgからシール部dを引いた値の2倍が、加熱時に拡がるマチ部の幅と近い値になる。
また、高さgからシール部dを引いた値は幅aの40%以下としても良い。
なお、平袋形状のレトルト容器で電子レンジ内にて寝かせておく形状のものは、いわゆるスタンディングパウチの形状ではないので、本発明中のレトルト容器には包含されない。
【0016】
このようなレトルト容器内に液状食品を入れた後には、液状食品の自重によりガゼット部が膨らみ、側面から見ると略三角形の形状を呈することになる。
図2は、本発明の液状食品を含有する状態のレトルト容器の概念図であり、斜線が付けられた部分は例えばヒートシール等の手段によって、封止された部分である。
図2には、加熱時において容器内部に発生する水蒸気を容器外部に逃がすための機構を記載していないが、この機構は、このような電子レンジにて加熱するための容器に必要に応じて設けられる。
さらに、上部の2箇所には切り欠き部2が設けられ、開封する際のきっかけとなる箇所である。底部3はマチが設けられた箇所であり、容器内の食品の重さによって、拡げられた部分である。
【0017】
加熱前においては、
図2に示すように容器内の液状食品の液面4の上にヘッドスペース部分を設けるように液状食品が封入されている。底部のマチは開いてはいるものの、完全に開いているものではない。
内部に食品を有する状態でのレトルト容器は、内部に食品を有しないときの空のレトルト容器に対して、その高さ(
図1におけるbに相当)はほぼ同じであるが、下部側の幅(
図1におけるaに相当)は、食品の重さによりマチ部が拡がることによりくびれが生じ5~15%小さくなる。そして、マチ部の拡がり(
図1の平面に垂直な方向への拡がり)幅は幅aの20~40%となる。
【0018】
加熱が進むにつれて、液状食品から発生した水蒸気が容器内に充満し、容器が水蒸気のために膨らんでくる。
膨らんだ結果、レトルト容器の底部のマチ部分は完全に開いて、例えば、
図1における(g-d)×2で示される幅、あるいは加熱前のマチ部よりも2倍までの幅になるように拡がる。またレトルト容器の垂直方向の中間部分や上方部分も、水蒸気により膨らんで、レトルト容器自体の形状が円柱形に近くなる。
所定の内圧になったところで図示しない水蒸気を容器外部に逃がす機構によって、水蒸気が逃げるので、容器内部の圧力には上限がある。
【0019】
この加熱途中において、一部のきのこ片が破裂を発生させることがある。きのこ片が所定の大きさ以下であると、破裂による勢いでレトルト容器が移動したり、若干跳ねたりするに留まる。しかしながら、きのこ片が所定の大きさよりも大きいと、レトルト容器の移動や跳ねが大きくなり、ひいてはレトルト容器が倒れる可能性がある。
【実施例】
【0020】
下記表1及び2の記載に従って、実施例4の粘度が1200cPの液状食品、及び比較例2の粘度1cPの液状食品を得た。また他の粘度の液状食品は、下記表1中のルー及び澱粉の配合量を調整して得た。なお表1及び2の配合量(%)は重量%である。
粘度測定条件:B型粘度計、No.3ローター、30rpm、3分間、20℃
【0021】
【0022】
【0023】
上記の各実施例及び比較例の液状食品を下記の容器に入れて密封し、下記の電子レンジ及び加熱条件にて加熱した。
レトルト容器 スタンディングパウチ(UTRTST)
高さ145mm×幅140mm×マチ48mm
液状食品内容量150g
(電子レンジ)
機種:Panasonic NE-MS262
(加熱条件〈試験〉)
条件:600W×2分40秒(実際の製品の約2倍程度の過酷条件で実施)
【0024】
上記の実施例によれば、程度が大きいレトルト容器の動きが若干あったものの、加熱時においてレトルト容器が倒れたり、内容物が噴出したりすることがなかった。
これに対し、より大きいきのこ片が配合された比較例の場合には、レトルト容器が倒れたり、内容物が噴出することがあった。またきのこが破裂することにより、程度が大きい動きや、跳ねたりすることがあった。
【0025】
さらに、上記実施例1と実施例9より、原料の状態が冷凍もしくは水煮の何れであっても多少破裂が生じるが、レトルト容器が倒れたり、内容物が噴出したりすることはなく、原料の状態がいずれであっても本発明の効果を有した。
一方、同じ粘度であっても実施例1~5と比較例1より、きのこ片のサイズが小さい方がレトルト容器の倒れや内容物の噴出が生じない。
さらに、実施例8と比較例2より、きのこ片のサイズが同じであってもパウチの倒れや内容物の噴出しに大きく差があることから、粘度が低すぎるとレトルト容器の倒れや内容物の噴出しを抑制できないことが分かった。
以上より、きのこ片のサイズを所定のサイズ(10mm×10mm×5mm)以下であることと、当該きのこ片が含まれる液状食品の粘度を300~2000cPに調整することを合わせることにより、破裂する可能性はあるものの、電子レンジによる加熱中にレトルト容器が転倒したり、内容物が噴出したりすることをより抑制することができる。
【0026】
尚、きのこ片についてはきのこの種類によって破裂が抑制できるサイズが異なる場合があるが、上記所定のサイズの範囲内で適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・液状食品を含有する状態のレトルト容器
2・・・切り欠き部
3・・・底部
4・・・液状食品の液面