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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】構造物点検システム及び飛行ロボット
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/14 20230101AFI20230719BHJP
   B64C 25/10 20060101ALI20230719BHJP
   B64C 25/36 20060101ALI20230719BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230719BHJP
   B64C 27/20 20230101ALI20230719BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230719BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20230719BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20230719BHJP
   B64U 101/26 20230101ALN20230719BHJP
【FI】
B64U10/14
B64C25/10
B64C25/36
B64C27/08
B64C27/20
B64C39/02
B64D47/08
G01N29/04
G01N29/265
B64U101:26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018213282
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079022
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501165628
【氏名又は名称】株式会社ティ・エス・プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 文宏
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】野島 昭二
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108818(JP,A)
【文献】特開平04-197881(JP,A)
【文献】特開平07-276956(JP,A)
【文献】特開2018-130983(JP,A)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0065740(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0022461(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0051271(KR,A)
【文献】特開2016-166819(JP,A)
【文献】特開2017-150883(JP,A)
【文献】特開2004-044216(JP,A)
【文献】特開2018-095077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
B64C 27/20
B64C 25/10
B64C 25/36
B64D 47/08
G01N 29/04
G01N 29/265
B64U 10/14
B64U 101/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行ロボットと、前記飛行ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置と、を備えた構造物点検システムであって、
前記飛行ロボットは、
機体と、
前記機体からそれぞれ異なる方向に突設された、少なくとも3つの回転翼と、
前記機体に設けられた、構造物を、前記構造物の被点検面から検査する検査装置と、
前記機体から前記回転翼とは異なる方向にそれぞれ突設されて、且つ前記回転翼より外側に設けられ、前記機体を、前記被点検面上において、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪と、
前記全方向移動車輪のそれぞれを、互いに独立して駆動することが可能な少なくとも3つの車輪駆動機構と、
前記全方向移動車輪のそれぞれの位置を、少なくとも前記機体に対して垂直な前記回転翼の回転軸に沿った第1方向に、互いに独立して変位させることが可能で、前記全方向移動車輪の位置を、最も縮んだ状態において前記回転翼よりも前記機体から前記第1方向に離れた位置から多段階に前記第1方向に伸長可能な少なくとも3つの車輪変位機構と、
前記機体に設けられた、前記回転翼、前記検査装置、前記車輪駆動機構、及び前記車輪変位機構のそれぞれを制御する制御装置と、
前記機体に設けられた、前記制御装置と、前記遠隔制御装置とを、有線又は無線通信によって接続させることが可能な通信装置と、
を備え、
前記全方向移動車輪のうちの1つは、前記回転翼のローテーションレンジよりも先に位置し、ローテーションレンジよりも先に位置する前記全方向移動車輪のうちの1つを機体の機首方向として前記制御装置で前記車輪駆動機構を制御して前記被点検面上を走行すること
を特徴とする構造物点検システム。
【請求項2】
前記検査装置は、
打音検査ツールと、
集音ツールと、
を、さらに含むこと
を特徴とする請求項1に記載の構造物点検システム。
【請求項3】
前記検査装置は、
撮像ツールを、さらに含むこと
を特徴とする請求項2に記載の構造物点検システム。
【請求項4】
前記回転翼は、ローター、プロペラ、及びダクトファンの少なくともいずれか1つを含むこと
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の構造物点検システム。
【請求項5】
前記機体に設けられた、少なくとも3つの副回転翼
を、さらに備え、
前記回転翼は、ローター又はプロペラを含み、
前記副回転翼は、ダクトファンを含むこと
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の構造物点検システム。
【請求項6】
機体と、
前記機体から異なる方向にそれぞれ突設された、少なくとも3つの回転翼と、
前記機体に設けられた、構造物を、前記構造物の被点検面から検査する検査装置と、
前記機体から前記回転翼とは異なる方向にそれぞれ突設されて、且つ前記回転翼より外側に設けられ、前記機体を、前記被点検面上において、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪と、
前記全方向移動車輪のそれぞれの位置を、少なくとも前記機体に対して垂直な前記回転翼の回転軸に沿った第1方向に、互いに独立して変位させることが可能な少なくとも3つの車輪変位機構と、
前記全方向移動車輪のそれぞれを、互いに独立して駆動することが可能で、前記全方向移動車輪の位置を、最も縮んだ状態において前記回転翼よりも前記機体から前記第1方向に離れた位置から多段階に前記第1方向に伸長可能な少なくとも3つの車輪駆動機構と、
前記機体に設けられた、前記回転翼、前記車輪駆動機構、及び前記車輪変位機構のそれぞれを制御する制御装置と、
前記機体に設けられた、前記制御装置と、飛行ロボットとは別に設けられて飛行ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置とを、有線又は無線通信によって接続させることが可能な通信装置と、
を備え、
前記全方向移動車輪のうちの1つは、前記回転翼のローテーションレンジよりも先に位置し、ローテーションレンジよりも先に位置する前記全方向移動車輪のうちの1つを機体の機首方向として前記制御装置で前記車輪駆動機構を制御して前記被点検面上を走行すること
を特徴とする飛行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造物点検システム及び飛行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物には、安全性を維持するために定期的な点検が実施される。例えば、コンクリート構造物では、打診棒やハンマー等を使用し、打音検査を実施することによって、コンクリート内部にひび割れや浮きなどの異常部位がないかが調べられる(特許文献1、2)。異常部位が発見された構造物には補修工事が速やかになされる。このような定期的な点検によって、構造物の安全性が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-166819号公報
【文献】特開2017-150883号公報
【文献】特開2004-44216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物には、定期的な点検が必要である。しかし、構造物の下面は、点検するのが困難である。なぜなら、点検用の足場を設置するのが困難で費用もかさむ。しかも、足場を設置する場合は吊足場となり、設置すること自体が危険である。また、点検車輛の作業デッキ上での点検は、高所作業となるから危険である(特許文献3)。このため、吊足場を設置したり、高所作業となる点検車輛を使用したりすることなく、構造物の下面を点検したい、という事情がある。
【0005】
このような事情を解決するためには、構造物の下面の点検に、無人航空機を使用することが考えられる。しかし、構造物の下面、例えば、橋梁の下面には、狭隘な空間があり、段差も多い。通常の無人航空機では、点検が困難である。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、その目的は、足場を設置したり、高所作業となる点検車輛を使用したりすることなく、構造物の下面に位置し、狭隘な空間や段差を有した被点検面であっても点検することが可能な構造物点検システム、及び構造物点検システムに利用可能な飛行ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る構造物点検システムは、飛行ロボットと、前記飛行ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置と、を備えた構造物点検システムであって、前記飛行ロボットは、機体と、前記機体から異なる方向にそれぞれ突設された、少なくとも3つの回転翼と、前記機体に設けられた、構造物を、前記構造物の被点検面から検査する検査装置と、前記機体から前記回転翼とは異なる方向にそれぞれ突設されて、且つ前記回転翼より外側に設けられ、前記機体を、前記被点検面上において、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪と、前記全方向移動車輪のそれぞれを、互いに独立して駆動することが可能な少なくとも3つの車輪駆動機構と、前記全方向移動車輪のそれぞれの位置を、少なくとも前記機体に対して垂直な前記回転翼の回転軸に沿った第1方向に、互いに独立して変位させることが可能で、前記全方向移動車輪の位置を、最も縮んだ状態において前記回転翼よりも前記機体から前記第1方向に離れた位置から多段階に前記第1方向に伸長可能な少なくとも3つの車輪変位機構と、前記機体に設けられた、前記回転翼、前記検査装置、前記車輪駆動機構、及び前記車輪変位機構のそれぞれを制御する制御装置と、前記機体に設けられた、前記制御装置と、前記遠隔制御装置とを、有線又は無線通信によって接続させることが可能な通信装置と、を備え、前記全方向移動車輪のうちの1つは、前記回転翼のローテーションレンジよりも先に位置し、ローテーションレンジよりも先に位置する前記全方向移動車輪のうちの1つを機体の機首方向として前記制御装置で前記車輪駆動機構を制御して前記被点検面上を走行することを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る構造物点検システムは、第1発明に係る構造物点検システムにおいて、前記検査装置は、打音検査ツールと、集音ツールと、を、さらに含むことを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る構造物点検システムは、第2発明に係る構造物点検システムにおいて、前記検査装置は、撮像ツールを、さらに含むことを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る構造物点検システムは、第1発明~第3発明のいずれか1つにおいて、前記回転翼は、ローター、プロペラ、及びダクトファンの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る構造物点検システムは、第1発明~第3発明のいずれか1つにおいて、前記機体に設けられた、少なくとも3つの副回転翼を、さらに備え、前記回転翼は、ローター又はプロペラを含み、前記副回転翼は、ダクトファンを含むことを特徴とする。
【0013】
発明に係る飛行ロボットは、機体と、前記機体から異なる方向にそれぞれ突設された、少なくとも3つの回転翼と、前記機体に設けられた、構造物を、前記構造物の被点検面から検査する検査装置と、前記機体から前記回転翼とは異なる方向にそれぞれ突設されて、且つ前記回転翼より外側に設けられ、前記機体を、前記被点検面上において、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪と、前記全方向移動車輪のそれぞれの位置を、少なくとも前記機体に対して垂直な前記回転翼の回転軸に沿った第1方向に、互いに独立して変位させることが可能な少なくとも3つの車輪変位機構と、前記全方向移動車輪のそれぞれを、互いに独立して駆動することが可能で、前記全方向移動車輪の位置を、最も縮んだ状態において前記回転翼よりも前記機体から前記第1方向に離れた位置から多段階に前記第1方向に伸長可能な少なくとも3つの車輪駆動機構と、前記機体に設けられた、前記回転翼、前記車輪駆動機構、及び前記車輪変位機構のそれぞれを制御する制御装置と、前記機体に設けられた、前記制御装置と、飛行ロボットとは別に設けられて飛行ロボットを遠隔制御する遠隔制御装置とを、有線又は無線通信によって接続させることが可能な通信装置と、を備え、前記全方向移動車輪のうちの1つは、前記回転翼のローテーションレンジよりも先に位置し、ローテーションレンジよりも先に位置する前記全方向移動車輪のうちの1つを機体の機首方向として前記制御装置で前記車輪駆動機構を制御して前記被点検面上を走行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明に係る構造物点検システムによれば、遠隔制御が可能な飛行ロボットを含むので、足場を設置したり、高所作業となる点検車輛を使用したりする必要がない。また、飛行ロボットは、機体を、被点検面上において、全方向に移動させることが可能な全方向移動車輪と、全方向移動車輪のそれぞれを、互いに独立して駆動することが可能な車輪駆動機構と、全方向移動車輪のそれぞれの位置を、互いに独立して変位させることが可能な車輪変位機構を有する。このため、飛行ロボットは、構造物の下面に位置し、狭隘な空間や段差を有した被点検面であっても点検することが可能である。
また、第1発明に係る構造物点検システムによれば、全方向移動車輪のうちの1つは、回転翼のローテーションレンジよりも先に位置する。このため、例えば、全方向移動車輪のうちの1つを機体の機首方向とすれば、被点検面上を走行しているとき、回転翼が、段差等の障害物と接触することを抑制することが可能となる。これにより、飛行ロボットの予期せぬ落下を抑制できる。
【0015】
第2発明に係る構造物点検システムによれば、検査装置が、打音検査ツールと、集音ツールと、を含むので、構造物を被点検面から打音検査できる。
【0016】
第3発明に係る構造物点検システムによれば、検査装置が、撮像ツールを、さらに含むので、被点検面に変色等の異常がないかが調べられる。また、撮像ツールは、前方映像情報を、通信装置を介して遠隔制御装置に送信し、遠隔制御装置のモニターにライブで映すことも可能となる。このため、飛行ロボットが、例えば、点検者の視認困難な箇所に移動したとき、点検者は、モニターに映し出された前方画像を見ながら、飛行ロボットを操作することもできる。
【0017】
第4発明に係る構造物点検システムによれば、回転翼が、ローター、プロペラ、及びダクトファンの少なくともいずれか1つを含む。このため、回転翼の具体的な態様が与えられる。
【0018】
第5発明に係る構造物点検システムによれば、副回転翼を、さらに備え、回転翼は、ローター又はプロペラを含み、副回転翼は、ダクトファンを含む。このため、点検者は、飛行ロボットを、回転翼の特徴を活かしながら、操作することができる。
【0020】
発明に係る飛行ロボットによれば、構造物点検システムに利用可能な飛行ロボットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットを備えた構造物点検システムの一例を示す模式平面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、図1中の2-2線に沿う模式断面図である。
図3図3は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る飛行ロボットの被点検面上での動きの一例を示す模式平面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る飛行ロボットの被点検面上での動きの別の例を示す模式平面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、この発明の第1実施形態に係る行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図9図9は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図10図10(a)~図10(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図11図11(a)~図11(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図12図12は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図13図13は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図15図15(a)及び図15(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
図16図16は、点検対象となる構造物の一例を示す模式斜視図である。
図17図17(a)は、この発明の第2実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。図17(b)は、第2飛行ロボットの模式平面図である。
図18図18は、この発明の第3実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。
図19図19は、この発明の第4実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。
図20図20(a)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式図である。図20(b)は、この発明の第5実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、機体に対して垂直な方向を第1方向yとし、第1方向yと交差、例えば直交する1つの平面方向を第2方向rとし、第1方向y及び第2方向rのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を第3方向pとする。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
(第1実施形態)
<構造物点検システムと飛行ロボット>
図1は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットを備えた構造物点検システムの一例を示す模式平面図である。図2(a)及び図2(b)は、図1中の2-2線に沿う模式断面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0024】
図1図3に示すように、構造物点検システム200は、飛行ロボット100と、遠隔制御装置150と、を含む。構造物300の点検者Aは、遠隔制御装置150を操作し、飛行ロボット100を遠隔制御する。
【0025】
飛行ロボット100は、機体1と、着陸ギア2と、第1回転翼11a~第4回転翼11dと、検査装置20と、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dと、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41dと、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dと、制御装置60と、通信装置70と、を含む。
【0026】
着陸ギア2は、機体1に設けられている。着陸ギア2は、例えば、機体1の下部に取り付けられている。着陸ギア2は、着陸状態における飛行ロボット100を、接地面401、例えば大地の上で支える。
【0027】
第1回転翼11a~第4回転翼11dのそれぞれは、機体1に設けられている。第1回転翼11a~第4回転翼11dのそれぞれは、機体1に浮力を与え、機体1を飛行させる。第1回転翼11a~第4回転翼11dのそれぞれは、例えば、ローター又はプロペラを含む。本例では、第1回転翼11a~第4回転翼11dのそれぞれは、プロペラを含む。
【0028】
検査装置20は、機体1に設けられている。検査装置20は、構造物300を、構造物300の被点検面301から検査する。構造物300の1つの例は、コンクリート構造物である。検査装置20の1つの例は、打音検査装置である。打音検査装置は、例えば、打音検査ツール21、集音ツール22、及び撮像ツール23を含む。
【0029】
打音検査ツール21の1つの例としては、例えば、打診棒式打音検査ツールを挙げることができる。打診棒式打音検査ツールは、シャフト21aと、シャフト21aを、機体1に連結する連結部21bと、シャフト21aの先端に設けられた打診子21cと、シャフト21aを、上下動させる弾性機構21dと、を含む。弾性機構21dは、例えば、ばね材を含む。ばね材を縮めると、シャフト21aは、機体1側へたたまれる(図2(a))。ばね材の縮みを開放すると、シャフト21aが上がる。シャフト21aが上がった状態において、打診子21cの第1方向yの位置y21は、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dの第1方向yの位置y31よりも高い(図2(b))。これにより、打診子21cは、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dによって干渉されることなく、被点検面301と接触可能な状態にできる(図3)。打診子21cは、被点検面301の上を、撫でるように動かすことで“音”を出す。この“音”から、構造物300の内部にひび割れや浮きなどの異常部位ないかが判断される。集音ツール22は、この“音”を拾う。打診子21cの例として、例えば、鋼球を示しているが、打診子21cには、いかなる打診子でも使うことができる。
【0030】
打音検査ツール21の別の例としては、例えば、打撃式打音検査ツールを挙げることができる。打撃式打音検査ツールでは、打診子21cの代わりに、打撃ヘッドが用いられる。打撃ヘッドは、被点検面301を叩くことで“音”を出す。この“音”から、構造物300の内部に異常部位ないかが判断される。また、シャルピー衝撃試験のような試験を行うことも可能であるので、構造物300の強度を調べることもできる。
【0031】
撮像ツール23は、例えば、静止画撮影及び動画撮影のそれぞれが可能なカメラである。例えば、カメラによって、被点検面301に変色等の異常がないかが調べられる。カメラは、例えば、打診子21cの被点検面301との接触点近傍を撮像する。また、カメラの向きを制御することで、飛行ロボット100の、例えば、前方や周囲、さらには後方を撮像することもできる。さらに、カメラは、例えば、前方等の映像情報を、通信装置70を介して遠隔制御装置150に送信し、遠隔制御装置150のモニター151にライブで映すことも可能である。飛行ロボット100が、例えば、点検者Aの視認困難な箇所に移動したとき、点検者Aは、モニターの映像を見ながら、飛行ロボット100を操作することもできる。
【0032】
第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dは、機体1を、被点検面301上において、全方向に移動させることが可能である。第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dは、それぞれ、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41dによって駆動される。第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41dは、それぞれ、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを、互いに独立して駆動することが可能である。
【0033】
第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれは、ベースローラー32と、フリーローラー33と、を含む。ベースローラー32は、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41dによって回転駆動される。
【0034】
例えば、第1方向y、第2方向r、及び第3方向pを、図1に示すように定義したとき、第1全方向移動車輪31aのベースローラー32は、第1車輪駆動機構41aによって、r軸周りに回転駆動される。第2全方向移動車輪31bのベースローラー32は、第2車輪駆動機構41bによって、p軸周りに回転駆動される。第3全方向移動車輪31cのベースローラー32は、第3車輪駆動機構41cによって、r軸周りに回転駆動される。第4全方向移動車輪31dのベースローラー32は、第4車輪駆動機構41dによって、p軸周りに回転駆動される。
【0035】
フリーローラー33は、ベースローラー32に、ベースローラー32の回転軸方向と直交する軸方向に自由回転可能に取り付けられている。第1全方向移動車輪31aのフリーローラー33は、p軸周りに自由回転する。第2全方向移動車輪31bのフリーローラー33は、r軸周りに自由回転する。第3全方向移動車輪31cのフリーローラー33は、p軸周りに自由回転する。第4全方向移動車輪31dのフリーローラー33は、r軸周りに自由回転する。
【0036】
第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dは、機体1に設けられている。第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dは、それぞれ、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれの位置を、少なくとも第1方向yに、互いに独立して変位させることが可能である。例えば、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dのそれぞれは、第1方向yに伸縮し、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dそれぞれの第1方向yおける位置を変位させる(図2(a)及び図2(b)。なお、図2(a)及び図2(b)には、第1、第3車輪変位機構51a及び51cが示されている)。第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dが最も縮んだ状態において、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dの第1方向yの位置y31は、第1回転翼11a~第4回転翼11dの第1方向yの位置y11よりも高い(図2(a))。これにより、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dは、第1回転翼11a~第4回転翼11dによって干渉されることなく、被点検面301に推しつけることが可能な状態にできる(図3)。
【0037】
制御装置60は、機体1に設けられている。制御装置60は、第1回転翼11a~第4回転翼11d、検査装置20、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41d、並びに第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dのそれぞれを制御する。
【0038】
通信装置70は、機体1に設けられている。通信装置70は、制御装置60と、遠隔制御装置150とを、有線又は無線通信によって接続する。なお、図1においては、一例として、制御装置60と、遠隔制御装置150とを、無線通信によって接続する通信装置70が示されている。
【0039】
遠隔制御装置150は、例えば、有線又は無線送受信可能なコンピュータ152と、フライト及びドライブコントローラ153と、を含む。コンピュータ152には、例えば、構造物300の点検レシピが格納されている。構造物300の検査は、例えば、点検レシピに従って実行される。なお、図1においては、一例として、コンピュータ152が、通信装置70制御装置60と、遠隔制御装置150とを、無線通信によって接続する通信装置70が示されている。
【0040】
点検者Aは、飛行ロボット100を、フライト及びドライブコントローラ153を用いて第1回転翼~第4回転翼11a~11dを制御しつつ、接地面401から被点検面301に向けて飛行させる。
【0041】
飛行ロボット100が被点検面301に到着した後、点検者Aは、第1回転翼~第4回転翼11a~11dの推力Tを使って、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれを、被点検面100に推しつける。このとき、打診子21cは、被点検面100と接触する。次に、点検者Aは、飛行ロボット100を、フライト及びドライブコントローラ153を用いて第1全方向移動車輪~第4全方向移動車輪31a~31dを制御しつつ、第1全方向移動車輪~第4全方向移動車輪31a~31dの駆動力Dを使って、被点検面301上で走行させる(図3)。これにより、打診子21cは、被点検面301を撫でるように移動する。
【0042】
飛行ロボット100によれば、打診子21cが被点検面301を移動している間、機体1から被点検面301までの高さ(=打診子21cの高さ)Hを、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dによって一定に保つことができる。このため、例えば、高さHが安定しにくい場合と比較して、検査装置20、例えば、打音検査ツール21による検査を、より精度よく実施することができる。
【0043】
<飛行ロボットの被点検面上での動き>
飛行ロボット100は、4軸の第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを有する。飛行ロボット100は、これらの4軸を用いることで、被点検面301上を、全方向、例えば、前後左右斜めに走行する。飛行ロボット100は、被点検面301上で回転することもできる。以下、第1全方向移動車輪31aを第1軸I、I、第2全方向移動車輪31bを第2軸II、第3全方向移動車輪31cを第3軸III、及び第4全方向移動車輪31dを第4軸IVとして、飛行ロボット100の被点検面301上での動きを説明する。また、第1軸I~第4軸IVを回転させる方向は、機体1の、例えば、中心から見て、時計回りか反時計回りかで説明し、回転させないときはフリーとする。なお、飛行ロボット100の機首は、第1軸I(第1全方向移動車輪31a)とする。
【0044】
図4は、第1実施形態に係る飛行ロボットの被点検面上での動きの一例を示す模式平面図である。図5は、第1実施形態に係る飛行ロボットの被点検面上での動きの別の例を示す模式平面図である。図4及び図5に示す模式平面図は、被点検面301を下から見上げた状態を示す。
【0045】
図4に示すように、飛行ロボット100を前進させるとき、例えば、以下のようにする。
第1軸I : フリー
第2軸II : 反時計回り
第3軸III: フリー
第4軸IV : 時計回り
これにより、飛行ロボット100は、被点検面301上を前進する。後退させるときは、第2軸IIを時計回り、第4軸IVを反時計回りに回転駆動すればよい。
【0046】
飛行ロボット100を横進させるとき、例えば、以下のようにする。
第1軸I : 時計回り
第2軸II : フリー
第3軸III: 反時計回り
第4軸IV : フリー
これにより、飛行ロボット100は、被点検面301上を横進(右進)する。左進させるときは、第1軸Iを反時計回り、第3軸IIIを時計回りに回転駆動すればよい。
【0047】
飛行ロボット100を斜進させるとき、例えば、以下のようにする。
第1軸I : 反時計回り
第2軸II : 時計回り
第3軸III: 時計回り
第4軸IV : 反時計回り
これにより、飛行ロボット100は、斜進(左斜め下方向に進む)する。斜進させるときは、第1軸I~第4軸IVのそれぞれに、時計回りか反時計回りかを組み合わせればよい。
【0048】
飛行ロボット100を回転させるとき、例えば、以下のようにする。
第1軸I : 時計回り
第2軸II : 時計回り
第3軸III: 時計回り
第4軸IV : 時計回り
これにより、飛行ロボット100は、回転(右回転)する。回転させるときは、第1軸I~第4軸IVのそれぞれを、時計回りか反時計回りかで一致させればよい。
【0049】
なお、図5に示すように、機首を第1軸Iとしたときの斜進を、前進(後退)及び横進とみなし、機首を第1軸としたときの前進(後退)を斜進とみなしてもよい。この場合の動きも、上述した通りであるので、説明は省略する。
【0050】
このように、飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを有するので、被点検面301上を前後左右斜めに走行すること、及び被点検面310上で回転することのそれぞれができる。
【0051】
<飛行ロボットの被点検面上での段差越えの動き>
飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれの位置を、第1方向yに沿って、互いに独立して変位させる第1車輪変位機構51a~第1車輪変位機構51dを有する。飛行ロボット100は、これらの車輪変位機構を用いることで、被点検面301上に生じた段差を乗り越えて走行することができる。以下、飛行ロボット100の被点検面301上での段差越えの動きを説明する。
【0052】
図6(a)~図9は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0053】
図6(a)及び図6(b)に示すように、被点検面301の途中には、段差302が生じている。段差302は、被点検面301と、例えば、直交する。飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31aを機首側に向けて、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを回転駆動して、被点検面301上を走行している。第1全方向移動車輪31aが段差302に到達したら、飛行ロボット100を、一旦停止させる。次に、第1車輪変位機構51aを用いて、第1全方向移動車輪31aを、例えば、第1方向yに沿って降下させる。なお、図6(a)~図9の模式側面図では、第4全方向移動車輪31d及び第4車輪変位機構51dは、それぞれ第2全方向移動車輪31b及び第2車輪変位機構51bに隠れるため、示されていない。
【0054】
次に、図7(a)及び図7(b)に示すように、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを回転駆動して、飛行ロボット100を、再発進させる。第2、第4全方向移動車輪31b及び31dのそれぞれが段差302に到達したら、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dのそれぞれに駆動力Dをかけたまま、第2、第4車輪変位機構51b及び51dを用いて、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを、例えば、第1方向yに沿って降下させる。これにより、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dは、段差302を乗り越えることができる。
【0055】
次に、図8(a)及び図8(b)に示すように、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを回転駆動し続け、飛行ロボット100を、段差302の先の被点検面301上を走行させる。第3全方向移動車輪31cが段差302に到達したら、飛行ロボット100を、一旦停止させる。次に、第3車輪変位機構51cを用いて、第3全方向移動車輪31cを、例えば、第1方向yに沿って降下させる。
【0056】
次に、図9に示すように、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを回転駆動して、飛行ロボット100を、再発進させる。
【0057】
図10(a)~図10(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。図10(a)~図10(b)には、段差302を越えた後の別の動きを示している。
【0058】
図9に示したように、段差302を越えた後、飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを降下させた状態で、被点検面301を走行した。図10(a)~図10(b)に示すように、段差302を越えた後、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを用いて、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを再上昇させてから、第2、第4全方向移動車輪31b及び31dを回転駆動して、飛行ロボット100を、再発進させてもよい。
【0059】
このように、飛行ロボット100は、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを有するので、被点検面301上に生じた段差を乗り越えて走行することができる。
【0060】
ところで、飛行ロボット100では、第1全方向移動車輪31aは、第1回転翼11a及び第4回転翼11dのそれぞれのローテーションレンジRR外に位置している。さらに、第2方向rにおいて、第1全方向移動車輪31aは、第1、第4回転翼11a及び11dのそれぞれのローテーションレンジRRの位置よりも、距離Lの分、先に位置する(図1)。飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31aを機首側に向けて、被点検面301上を走行する。これにより、例えば、第2方向r(進行方向)に、段差等の障害物があったとしても、障害物に、先に接触するのは、第1全方向移動車輪31aとなる。第1、第4回転翼11a及び11dのそれぞれは、障害物に接触することはない。このように、進行方向において、第1全方向移動車輪31aの位置は、第1、第4回転翼11a及び11dそれぞれのローテーションレンジRRよりも先とする。そして、飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31aを機首側に向けて、被点検面301上を走行させる。これにより、飛行ロボット100の予期せぬ落下を抑制できる。
【0061】
なお、飛行ロボット100では、第3方向pにおいて、第2全方向移動車輪31bの位置は、第1、第2回転翼11a及び11bそれぞれのローテーションレンジRRよりも先にある。第2方向rにおいて、第3全方向移動車輪31cの位置は、第2、第3回転翼11b及び11cそれぞれのローテーションレンジRRよりも先にある。第3方向pにおいて、第4全方向移動車輪31dの位置は、第3、第4回転翼11c及び11dそれぞれのローテーションレンジRRよりも先にある。
【0062】
<飛行ロボットの、様々な形状を有した被点検面上での動き>
飛行ロボット100は、例えば、
・途中にスロープを有した被点検面301
・起伏がある被点検面301
・アーチ状の被点検面301
のいずれであっても、走行することができる。
【0063】
図11(a)~図12は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0064】
図11(a)に示すように、被点検面301は、その途中から、スロープ303となっている。このような被点検面301であっても、飛行ロボット100は、走行できる。飛行ロボット100は、被点検面301のスロープ303に応じ、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを用いて、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれの位置を第1方向yに沿って変位させる。これにより、平坦な箇所からスロープ303に切り換わる地点において、例えば、停止することなく、連続した走行を行うことが可能である。しかも、飛行ロボット100は、機体1を水平状態に維持したまま、平坦な箇所からスロープ303上へ進入し、さらに、機体1を水平状態に維持したまま、スロープ303上を走行できる。
【0065】
図11(b)に示すように、被点検面301は、起伏304を有する。このような被点検面301であっても、飛行ロボット100は走行できる。飛行ロボット100は、被点検面301の起伏304に応じ、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを用いて、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれの位置を第1方向yに沿って変位させる。これにより、飛行ロボット100は、機体1を水平状態に維持したまま、起伏304がある被点検面301上を走行できる。
【0066】
図12に示すように、被点検面301がアーチ状であっても、飛行ロボット100は走行できる。飛行ロボット100は、被点検面301のアーチ305に応じ、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを用いて、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれの位置を第1方向yに沿って変位させる。これにより、飛行ロボット100は、機体1を水平状態に維持したまま、アーチ状の被点検面301上を走行できる。
【0067】
<飛行ロボットの、障害物を乗り越える動き>
図13は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0068】
図13に示すように、飛行ロボット100は、例えば、紙面に垂直な方向、例えば第2方向rに沿って走行しているとする。走行方向に、例えば、配管などの障害物306があったとしても、飛行ロボット100は、障害物306を乗り越えて走行することができる。走行中に、例えば、第2全方向移動車輪31bが、障害物306に接触したとする。この場合、第2車輪変位機構51bを用いて、第2全方向移動車輪31bの位置を第1方向yに沿って変位させる。これにより、飛行ロボット100は、機体1から被点検面301までの高さ(=打診子21cの高さ)Hを、一定に保ったまま、障害物306を乗り越えることができる。
【0069】
<飛行ロボットの、段差を跨いだ動き>
図14(a)及び図14(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0070】
図14(a)に示すように、被点検面301において、段差302が、第2方向rに沿って続いている、とする。飛行ロボット100は、段差302を跨いだまま、第2方向rに沿って走行することもできる。例えば、段差302が、第2全方向移動車輪31bと、第4全方向移動車輪31dとの間にあったとする。この場合、第2全方向移動車輪31b、及び第4全方向移動車輪31dのいずれか1つの第1方向yの位置を変位させる。例えば、第4車輪変位機構51dを用いて、第4全方向移動車輪31dの位置を第1方向yに沿って変位させる。これにより、飛行ロボット100は、段差302を跨ぐ。飛行ロボット100を、段差302を跨いで、第2方向rに沿って走行させることによって、段差302の近くまで、例えば、打音検査ツール21を用いて、打音検査を実施することが可能となる。
【0071】
また、図14(b)に示すように、2つの段差302によって、被点検面301に、第2方向rに沿って溝307が生じている、とする。飛行ロボット100は、溝302を跨いだまま、第2方向rに沿って走行することもできる。例えば、溝307が、第2全方向移動車輪31bと、第4全方向移動車輪31dとの間にあったとする。この場合、第2全方向移動車輪31b、及び第4全方向移動車輪31dのいずれか1つの第1方向yの位置を変位させ、例えば、打診子21cを、溝307内の被点検面301に接触させる。これにより、飛行ロボット100は、2つの段差302のそれぞれを跨ぐ。飛行ロボット100を、2つの段差302のそれぞれを跨いで、第2方向rに沿って走行させることによって、溝307の中に対して、例えば、打音検査を実施することが可能となる。
【0072】
したがって、飛行ロボット100によれば、構造物300に対して、
・段差302の近くまで検査が可能
・溝307の中の検査が可能
という利点を、さらに得ることができる。したがって、飛行ロボット100によれば、構造物300に対して、繊細な検査を行うができる。
【0073】
<飛行ロボットの、スロープ、アーチを横切る動き>
図15(a)及び図15(b)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの動きを示す模式側面図である。
【0074】
図15(a)に示すように、被点検面301のスロープ303は、第3方向pに沿った断面において、傾きを持つとする。この場合、スロープ303を横切る第2方向rに沿った断面では、被点検面301に傾きはない(図示せず)。飛行ロボット100は、スロープ303上において、スロープ303を横切る方向に走行することもできる。
【0075】
また、図15(b)に示すように、被点検面301のアーチ305は、第3方向pに沿った断面において、曲線を描くとする。この場合、アーチ305を横切る第2方向rに沿った断面では、被点検面301は直線を描く(図示せず)。飛行ロボット100は、アーチ305上において、アーチ305を横切る方向に走行することもできる。
【0076】
このように、飛行ロボット100は、スロープ303、及びアーチ305に沿った走行も可能であるし、スロープ303、及びアーチ305を横切った走行も可能である。したがって、飛行ロボット100によれば、被点検面301の点検に際し、走行方向の制約が少なく、走行方向の選択に関する自由度が高い、という利点を得ることができる。
【0077】
また、被点検面301がアーチ状である場合、飛行ロボット100を、アーチ305に沿って走行させると、連続して角度が変わってしまう、という事情がある。このため、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを、常に変位させなければならなくなる。しかし、飛行ロボット100を、アーチ305を横切って走行させると、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dの変位量を、一度定めてしまえば、そのまま走行できる。飛行ロボット100が折り返す位置に来たら、飛行ロボット100を第3方向pに沿って僅かに走行させ、再度、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dの変位量を調整する。調整を終えたら、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dの変位量は変更しないまま、飛行ロボット100を、第2方向rに沿って走行させればよい。
【0078】
したがって、飛行ロボット100は、機体1から被点検面301までの高さ(=打診子21cの高さ)Hを一定に保ったまま、アーチ状の被点検面301を走行できる、という利点を得ることができる。
【0079】
<点検対象となる構造物の例>
図16は、点検対象となる構造物の一例を示す模式斜視図である。
【0080】
図16に示すように、点検対象となる構造物の一例は、橋梁350である。橋梁350は、例えば、床版橋である。床版橋は、例えば、橋脚351、橋桁352、及び床版353を含む。橋桁352は、橋脚351上に設けられている。床版353は、橋桁352上に設けられている。床版橋では、例えば、床版353の下面に、段差、起伏、スロープ、アーチ等を有した被点検面301があることが多い。橋桁352の下面にも、例えば、スロープを有した被点検面301がある、また、橋脚351と床版353との間には、橋桁352があり、狭隘な空間が生じている。飛行ロボット100は、狭隘な空間にも走行しながら、第1回転翼11a~第4回転翼11dのそれぞれが、構造物に衝突することなく、進入したり、くぐり抜けたりできる。なお、狭隘な空間において、高さが狭い場合には、例えば、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを用いて、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれを下げ、例えば、図9に示したように、機体1と被点検面301との距離を縮めて走行すればよい。
【0081】
このように、飛行ロボット100は、被点検面301に、段差、起伏、スロープ、アーチ等があり、さらに、狭隘な空間があるような構造物、例えば、床版橋であっても、点検することができる。なお、橋梁350は、床版橋に限られることはない。コンクリート桁橋であってもよい。また、被点検面301は、床版352の下や、コンクリート桁の下に限られることはない。構造物の、例えば、天井面であってもよい。
【0082】
このような第1実施形態に係る飛行ロボット100を備えた構造物点検システム200によれば、
・足場を設置したり、高所作業となる点検車輛を使用したりする必要がない
という利点を得ることができる。
【0083】
さらに、飛行ロボット100は、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31d、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41d、並びに第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dを有する。このため、飛行ロボット100は、例えば、構造物300の被点検面301上に生じた段差302を乗り越えて走行でき、狭隘な空間の中にも進入できる。したがって、
・狭隘な空間や段差を有した被点検面301であっても点検できる
という利点を、さらに得ることができる。
【0084】
また、飛行ロボット100は、機体1と、第1回転翼11a~第4回転翼11dと、検査装置20と、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dと、第1車輪駆動機構41a~第4車輪駆動機構41dと、第1車輪変位機構51a~第4車輪変位機構51dと、制御装置60と、通信装置70と、を含む。このような飛行ロボット100は、構造物点検システム200に利用可能である。
【0085】
この発明の第1実施形態によれば、足場を設置したり、高所作業となる点検車輛を使用したりすることなく、構造物の下面に位置し、狭隘な空間や段差を有した被点検面であっても点検することが可能な構造物点検システム、及び構造物点検システムに利用可能な飛行ロボットを提供できる。
【0086】
(第2実施形態)
図17(a)は、この発明の第2実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。図17(b)は、第2飛行ロボットを示す模式平面図である。なお、図17(a)及び図17(b)のそれぞれにおいて、制御装置60及び通信装置70は、省略されている。
【0087】
図17(a)に示すように、第2実施形態に係る飛行ロボット100bは、撮像ツール23を含まないことが、飛行ロボット100と異なる。飛行ロボット100bは、撮像ツール23を持たず、検査装置20として、例えば、打音検査ツール21と、集音ツール22と、を少なくとも有する。
【0088】
飛行ロボット100bを備えた構造物点検システムは、飛行ロボット100bと、第2飛行ロボット100baと、を含む。飛行ロボット100bは、例えば、打音検査可能であり、第2飛行ロボット100baは、撮像可能である。
【0089】
飛行ロボット100bは、撮像ツール23を持たないため、例えば、被点検面301に変色等の異常があるか否かを知ることが困難である。そこで、変色等の異常は、図17(b)に示すように、撮像ツール23を有した第2飛行ロボット100baを用いて調査する。
【0090】
第2実施形態では、例えば、被点検面301の変色等の異常の有無を、第2飛行ロボット100baを用いて事前に調査しておく。この調査結果に基づいて、飛行ロボット100bを、被点検面301の、何らかの異常が認められた箇所へ向かわせて点検させる。構造物300の全ての箇所に異常があることは稀である。正常な箇所が、ほとんどである。
【0091】
このような第2実施形態によれば、例えば、打音検査可能な飛行ロボット100bと、撮像可能な第2飛行ロボット100baと、を分ける。したがって、例えば、飛行ロボット100bの無用な飛行を抑制でき、飛行ロボット100bを、より効率よく運用できる、という利点を得ることができる。
【0092】
(第3実施形態)
図18は、この発明の第3実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。
【0093】
図18に示すように、第3実施形態に係る飛行ロボット100cは、第1回転翼11a~第4回転翼11dが、ダクトファンを含むことが、飛行ロボット100と異なる。ダクトファンは、ファン(回転翼の1つ)の周囲に、円筒状のダクト12が設けられており、例えば、ローターやプロペラよりも、後方気流の指向性が高められている。ダクトファンでは、例えば、単位面積当たりの推力を、ローターやプロペラよりも高められる利点がある。
【0094】
飛行ロボットは、例えば、飛行ロボット100cのように、第1回転翼11a~第4回転翼11dは、ダクトファンを含んでいてもよい。また、特に、図示はしないが、第1回転翼11a~第4回転翼11dには、ローター、プロペラ、及びダクトファンが混在されていてもよい。
【0095】
図19は、この発明の第4実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式平面図である。
【0096】
図19に示すように、第4実施形態に係る飛行ロボット100dは、第1副回転翼16a~第4副回転翼16dを、さらに含むこと、が飛行ロボット100と異なる。第1副回転翼16aは、第1回転翼11aとともに、第1回転翼支持部17aに設けられている。第1副回転翼16aは、例えば、機体1の中心からの放射方向に沿って第1回転翼11aと離れて隣り合う。第2副回転翼16bは、第2回転翼11bとともに、第2回転翼支持部17bに設けられている。第2副回転翼16bは、機体1の中心からの放射方向に沿って第2回転翼11bと離れて隣り合う。第3副回転翼16cは、第3回転翼11cとともに、第3回転翼支持部17cに設けられている。第3副回転翼16cは、機体1の中心からの放射方向に沿って第3回転翼11cと離れて隣り合う。第4副回転翼16dは、第4回転翼11dとともに、第4回転翼支持部17dに設けられている。第4副回転翼16dは、機体1の中心からの放射方向に沿って第4回転翼11dと離れて隣り合う。第1回転翼支持部17a~第4回転翼支持部17dのそれぞれは、機体1に設けられている。
【0097】
飛行ロボットは、例えば、飛行ロボット100dのように、第1回転翼11a~第4回転翼11dに加えて、第1副回転翼16a~第4副回転翼16dを、さらに含んでいてもよい。
【0098】
飛行ロボット100dでは、第1回転翼11a~第4回転翼11dは、例えば、ローター又はプロペラを含む。例えば、第1副回転翼16a~第4副回転翼16dは、ダクトファンを含む。
【0099】
ローター又はプロペラは、ダクトファンと比較して、例えば、操縦性がよい。このため、機体1を、細やかに操縦できる。また、ダクトファンは、ローター又はプロペラは、例えば、推力がつよい。例えば、点検者Aは、ローター又はプロペラを、機体1の浮上、及び機体1の飛行中の操舵に主に使用し、ダクトファンは、機体1の浮上、及び第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dを被点検面301に推しつけるときに、主に使用することも可能である。これにより、接地面401から被点検面301までは、ダクトファンよりも操縦性がよいローター又はプロペラで飛行ロボット100を導くことができる。また、被点検面301においては、ローター又はプロペラよりも推力が強いダクトファンで、第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31dのそれぞれを、被点検面301に推しつけることができる。
【0100】
このような第4実施形態によれば、点検者Aは、飛行ロボット100dを、回転翼の特徴を活かしながら、操作することができる、という利点を得ることができる。
【0101】
(第5実施形態)
図20(a)は、この発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式図である。図20(b)は、この発明の第5実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式図である。
【0102】
図20(a)に示すように、飛行ロボット100では、回転翼支持部が4つ(第1回転翼支持部17a~17d)あり、回転翼の数は4つ(第1回転翼11a~第4回転翼11d)である。また、飛行ロボット100では、全方向移動車輪の軸が4つ(第1軸I~第4軸IV)あり、全方向移動車輪の数は4つ(第1全方向移動車輪31a~第4全方向移動車輪31d)である。しかし、飛行ロボット100では、回転翼の数及び全方向移動車輪の数が、4つに限られることはない。
【0103】
例えば、図20(b)に示すように、第5実施形態に係る飛行ロボット100eのように、回転翼の数及び全方向移動車輪の数は、少なくとも3つあればよい。
【0104】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、これらの実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。また、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1:機体
2:着陸ギア
11a~11d:第1回転翼~第4回転翼
12:ダクト
16a~16d:第1副回転翼~第4副回転翼
17a~17d:第1回転翼支持部~第4回転翼支持部
20:検査装置
21:打音検査ツール
21a:シャフト
21b:連結部
21c:打診子
21d:弾性機構
22:集音ツール
23:撮像ツール
31a~31d:第1全方向移動車輪~第4全方向移動車輪
32:ベースローラー
33:フリーローラー
41a~41d:第1車輪駆動機構~第4車輪駆動機構
51a~51d:第1車輪変位機構~第4車輪変位機構
60:制御装置
70:通信装置
100、100b~100e:飛行ロボット
100ba:第2飛行ロボット
150:遠隔制御装置
151:モニター
152:コンピュータ
153:フライト及びドライブコントローラ
200:構造物点検システム
300:構造物
301:被点検面
302:段差
303:スロープ
304:起伏
305:アーチ
306:障害物
307:溝
350:橋梁
351:橋脚
352:橋桁
353:床版
401:接地面
A:点検者
T:推力
D:駆動力
L:距離
H:高さ
RR:ローテーションレンジ
y11、y21、y31:位置
I:第1軸
II:第2軸
III:第3軸
IV:第4軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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