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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】構造物点検システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230719BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230719BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230719BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230719BHJP
   E01D 22/00 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
E04G23/02 A
B64C27/08
B64C39/02
B64D47/08
E01D22/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018213283
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079526
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501165628
【氏名又は名称】株式会社ティ・エス・プランニング
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 文宏
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】野島 昭二
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034428(JP,A)
【文献】特許第6374628(JP,B1)
【文献】特開2017-219314(JP,A)
【文献】特開2018-128278(JP,A)
【文献】特開2018-108818(JP,A)
【文献】特開2017-166241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
上記撮像手段により撮像された構造物の画像が入力される入力手段と、
過去の構造物の画像と、当該過去の構造物の画像に対する構造物の変状状況との3段階以上の連関度が予め記憶されているデータベースと、
上記データベースに記憶された連関度を参照し、上記入力手段を介して入力された上記構造物の画像に基づいて、構造物の変状状況を判別する判別手段と、
上記判別手段により判別した上記構造物の変状状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する特定手段と、
上記特定手段により特定した上記構造物の変状箇所に対して、検査を行う検査手段と、
を備え、
上記特定手段は、上記入力された構造物の画像上でマーキング処理をすることにより、上記構造物の変状箇所を特定し、
少なくとも上記検査手段が設けられた飛行ロボットを更に備え、
上記検査手段は、構造物を打診する打診棒式打音検査ツールと、上記打診棒式打音検査ツールにより発せられた音を集音する集音ツールと、を有し、
上記飛行ロボットは、上記打診棒式打音検査ツールを可動させるための可動部を有し、
上記打診棒式打音検査ツールは、
上記可動部に後端が連結されるシャフトと、
上記シャフトの先端に設けられる打診子と、を有し、
上記打診棒式打音検査ツールは、上記飛行ロボットが所定の位置に留まった状態で上記可動部を基点として上記シャフトを可動させて前記構造物上を撫でるように前記打診子を動かすことにより、構造物を打診するものとなること
を特徴とする構造物点検システム。
【請求項2】
上記入力手段は、更に構造物の付帯情報が入力され、
上記データベースは、過去の構造物の画像と過去の構造物の付帯情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する構造物の変状状況との3段階以上の連関度が予め記憶され、
上記付帯情報は、構造物の設置に関する設置情報、構造物の断面に関する断面情報、及び、構造物の維持管理に関する管理情報、の少なくとも何れかを有すること
を特徴とする請求項1記載の構造物点検システム。
【請求項3】
記打診棒式打音検査ツールは、上記飛行ロボットが移動することにより、構造物を打診するものとなること
を特徴とする請求項1又は2記載の構造物点検システム。
【請求項4】
上記飛行ロボットは、構造物の表面上を、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪と、上記全方向移動車輪を駆動させるための車輪駆動機構と、前記全方向移動車輪の位置を変位させるための車輪変位機構と、を有すること
を特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の構造物点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物には、安全性を維持するために定期的な点検が実施される。例えば、コンクリート構造物では、打診棒やハンマー等を使用し、打音検査を実施することによって、コンクリート内部にひび割れや浮きなどの異常部位がないかが調べられる(特許文献1、2)。異常部位が発見された構造物には補修工事が速やかになされる。このような定期的な点検によって、構造物の安全性が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-166819号公報
【文献】特開2017-150883号公報
【文献】特開2017-227632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、構造物の経年により点検が必要な構造物は多く、点検が必要な構造物の全領域を検査するのは、膨大な時間を要してしまう。
【0005】
構造物等の点検に関する技術として、特許文献3の点検システムが提案されている。特許文献3に開示された点検システムは、点検箇所を指定するための入力をユーザインタフェース装置にて受け付け、ユーザインタフェース装置での入力及びその現在位置に基づいて、移動ロボット装置が自律的に飛行して点検箇所に移動し、移動ロボット装置は打診手段等の点検手段を用いて点検箇所を点検する。しかしながら、特許文献3の点検システムでは、点検箇所の指定がユーザの勘や経験に依存する虞がある。このため、特許文献3の点検システムでは、点検の漏れや無駄が生じてしまい、構造物を効率良く点検することができないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、構造物を効率良く点検することが可能な構造物点検システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る構造物点検システムは、撮像手段と、上記撮像手段により撮像された構造物の画像が入力される入力手段と、過去の構造物の画像と、当該過去の構造物の画像に対する構造物の変状状況との3段階以上の連関度が予め記憶されているデータベースと、上記データベースに記憶された連関度を参照し、上記入力手段を介して入力された上記構造物の画像に基づいて、構造物の変状状況を判別する判別手段と、上記判別手段により判別した上記構造物の変状状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する特定手段と、上記特定手段により特定した上記構造物の変状箇所に対して、検査を行う検査手段と、を備え、上記特定手段は、上記入力された構造物の画像上でマーキング処理をすることにより、上記構造物の変状箇所を特定し、少なくとも上記検査手段が設けられた飛行ロボットを更に備え、上記検査手段は、構造物を打診する打診棒式打音検査ツールと、上記打診棒式打音検査ツールにより発せられた音を集音する集音ツールと、を有し、上記飛行ロボットは、上記打診棒式打音検査ツールを可動させるための可動部を有し、上記打診棒式打音検査ツールは、上記可動部に後端が連結されるシャフトと、上記シャフトの先端に設けられる打診子と、を有し、上記打診棒式打音検査ツールは、上記飛行ロボットが所定の位置に留まった状態で上記可動部を基点として上記シャフトを可動させて前記構造物上を撫でるように前記打診子を動かすことにより、構造物を打診するものとなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述した構成からなる本発明によれば、構造物を効率良く点検することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る構造物点検システムの一例を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの一例を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの一例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る端末装置の一例を示すブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るデータベースの一例を示す模式図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る構造物点検システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図7】(a)は、本発明の第1実施形態に係る飛行ロボットを構造物の下方で飛行させた状態を示す図であり、(b)は、(a)に示す構造物を図中矢印D方向から見た図である。
図8】表示部に表示させた構造物の変状箇所の一例を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る検査装置による検査の一例を示す模式図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る検査装置による検査の一例を示す模式図である。
図11】本発明の第1実施形態に係るデータベースの第1変形例を示す模式図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る飛行ロボットの第1変形例を示す模式図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る構造物点検システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した構造物点検システムついて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る構造物点検システム200の一例を示す模式図である。
【0012】
構造物点検システム200は、飛行ロボット100と、端末装置150と、データベース400と、を備える。構造物300の点検者Aは、端末装置150を操作し、飛行ロボット100を遠隔制御する。また、端末装置150は、データベース400に有線又は無線で接続される。構造物300は、例えば、コンクリート構造物である。構造物300は、例えば、床版橋等の橋梁である。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態に係る飛行ロボット100の一例を示す模式図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る飛行ロボット100の一例を示すブロック図である。
【0014】
飛行ロボット100は、例えば、ドローンが用いられる。飛行ロボット100は、機体1と、着陸ギア2と、回転翼11と、検査装置20と、撮像装置23と、制御装置60と、通信装置70と、が設けられる。
【0015】
着陸ギア2は、機体1に設けられている。着陸ギア2は、例えば、機体1の下部に取り付けられている。着陸ギア2は、着陸状態における飛行ロボット100を、接地面、例えば大地の上で支える。
【0016】
回転翼11は、機体1に設けられている。回転翼11は、機体1に浮力を与え、機体1を飛行させる。回転翼11は、例えば、プロペラ、ローター、ダクトファンが用いられる。
【0017】
検査装置20は、機体1に設けられている。検査装置20は、構造物300の変状箇所を検査する。検査装置20の1つの例は、打音検査装置である。打音検査装置は、例えば、打音検査ツール21、及び打音検査ツール21から発せられる音を集音する集音ツール22を含む。
【0018】
打音検査ツール21の1つの例としては、例えば、打診棒式打音検査ツールを挙げることができる。打診棒式打音検査ツールは、シャフト21aと、シャフト21aを、機体1に連結する可動部21bと、シャフト21aの先端に設けられた打診子21cと、シャフト21aを、上下動させる弾性機構21dと、を含む。可動部21bは、シャフト21aの端部を基点として、シャフト21aを可動させるものとなる。これにより、打診棒式打音検査ツールは、シャフト21aの先端の打診子21cを動かして、構造物を打診することができる。弾性機構21dは、例えば、ばね材を含む。ばね材を縮めると、シャフト21aは、機体1側へたたまれる。ばね材の縮みを開放すると、シャフト21aが上がる。打診子21cは、構造物300上を、撫でるように動かすことで“音”を出す。この“音”から、構造物300の内部にひび割れや浮きなどの異常部位ないかが判断される。集音ツール22は、この“音”を拾う。打診子21cの例として、例えば、鋼球を示しているが、打診子21cには、いかなる打診子でも使うことができる。
【0019】
打音検査ツール21の別の例としては、例えば、打撃式打音検査ツールを挙げることができる。打撃式打音検査ツールでは、打診子21cの代わりに、打撃ヘッドが用いられる。打撃ヘッドは、変状箇所を叩くことで“音”を出す。この“音”から、構造物300の内部に異常部位ないかが判断される。また、シャルピー衝撃試験のような試験を行うことも可能であるので、構造物300の強度を調べることもできる。
【0020】
撮像装置23は、例えば、静止画像及び動画像のそれぞれの撮像が可能なカメラである。カメラは、例えば、打診子21cの構造物の表面との接触点近傍を撮像する。また、カメラの向きを制御することで、飛行ロボット100の、例えば、前方や周囲、さらには後方を撮像することもできる。撮像装置23は、撮像した画像を通信装置70を介して端末装置150に送信できる。さらに、カメラは、例えば、前方等の映像情報を、通信装置70を介して端末装置150に送信し、端末装置150の表示部161にライブで映すことも可能である。飛行ロボット100が、例えば、点検者Aの視認困難な箇所に移動したとき、点検者Aは、モニターの映像を見ながら、飛行ロボット100を操作することもできる。
【0021】
撮像装置23は、更に、位置情報を取得する位置情報取得部23aと、被写体までの距離を測定する距離センサ23bと、を有していてもよい。位置情報取得部23aは、例えば、GPS(Global Positioning system)が用いられる。位置情報取得部23aは、例えば、予め定められた原点を基準としたときの撮像装置23の絶対的な位置を計測するための装置が用いられる。距離センサ23bは、例えば、赤外線センサや、超音波センサ等が用いられる。
【0022】
制御装置60は、機体1に設けられている。制御装置60は、回転翼11、検査装置20、撮像装置23のそれぞれを制御する。
【0023】
通信装置70は、機体1に設けられている。通信装置70は、制御装置60と、端末装置150とを、有線通信又は無線通信によって接続する。通信装置70は、検査装置20及び撮像装置23により取得される情報を端末装置150及びデータベース400に送信できる。
【0024】
端末装置150は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。
【0025】
図4は、本発明の第1実施形態に係る端末装置150の一例を示すブロック図である。端末装置150は、端末装置150全体を制御するための制御部154と、各種制御用の指令を入力するための入力部155と、飛行ロボット100の通信装置70やデータベース400と有線通信又は無線通信を行うための通信部156と、最適な検出アルゴリズム情報を判別する判別部157と、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部158と、判別部157による判別結果から構造物の変状箇所を特定する特定部159と、が内部バス160にそれぞれ接続されている。さらに、この内部バス160には、実際に情報を表示するモニタとしての表示部161が接続されている。
【0026】
制御部154は、内部バス160を介して制御信号を送信することにより、端末装置150内に実装された各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。また、制御部154は、入力部155を介した入力に応じて各種制御用の指令を内部バス160を介して伝達する。
【0027】
入力部155は、プログラムを実行するための実行命令がユーザから入力される。入力部155は、上記実行命令がユーザから入力された場合には、これを制御部154に通知する。この通知を受けた制御部154は、判別部157を始め、各構成要素と協調させて所望の処理動作を実行していくこととなる。入力部155は、キーボードやタッチパネル等に接続され、キーボード等をユーザが操作することにより、各種情報が入力されてもよい。入力部155は、構造物の画像や構造物の付帯情報等の各種情報が入力される。
【0028】
判別部157は、入力部155を介して入力された情報から構造物の変状箇所を判別する。判別部157は、判別動作を実行するに当たり、必要な情報として記憶部158に記憶されている各種情報を読み出す。判別部157は、人工知能により制御されるものであってもよい。この人工知能はいかなる周知の人工知能技術に基づくものであってもよい。
【0029】
記憶部158は、ハードディスクで構成される場合において、制御部154による制御に基づき、各アドレスに対して所定の情報が書き込まれるとともに、必要に応じてこれが読み出される。また、この記憶部158には、本発明を実行するためのプログラムが格納されている。このプログラムは制御部154により読み出されて実行されることになる。
【0030】
特定部159は、判別部157による判別結果から構造物の変状箇所を特定する。
【0031】
表示部161は、制御部154による制御に基づいて表示画像を作り出すグラフィックコントローラにより構成されている。この表示部161は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。
【0032】
データベース400は、提供すべき構造物の変状状況の判別条件に関するデータベースが構築されている。このデータベース400には、公衆通信網を介して送られてきた情報、或いは本システムのユーザによって入力された情報が蓄積される。またデータベース400は、端末装置150からの要求に基づいて、この蓄積した情報を端末装置150へと送信する。なお、データベース400は、飛行ロボット100に設けられてもよいし、端末装置150に設けられてもよい。データベース400は、人工知能により制御されるものであってもよい。この人工知能はいかなる周知の人工知能技術に基づくものであってもよい。
【0033】
図5は、本発明の第1実施形態に係るデータベース400の一例を示す模式図である。データベース400には、図5に示すように、参照用入力パラメータとしての過去の構造物の画像と、過去の構造物の画像に対する出力解としての構造物の変状状況との3段階以上の連関度が予め記憶されている。連関度は、過去の構造物の画像と、構造物の変状状況とが紐づく度合いを示しており、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示される。この連関度は、構造物の画像が、いかなる構造物の変状状況に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、構造物の画像から最適な構造物の変状状況を判別する上での的確性を示すものである。
【0034】
例えば図5では、過去の構造物の画像J1は、構造物の変状状況「ひび割れ」との間における連関度「80%」を示し、構造物の変状状況「変色」との間における連関度「60%」を示す。この場合、「ひび割れ」は「変色」に比べて画像J1との繋がりが強いことを示す。
【0035】
なお連関度は、いわゆる機械学習を通じて更新が可能なモデルで構成されていてもよく、ニューラルネットワークで構成されていてもよい。このとき、連関度は隠れ層及び重み変数で示されてもよい。また連関度は、深層学習がなされることを前提としたネットワークで構成されていてもよい。
【0036】
(構造物点検システム200の動作の一例)
次に、本実施形態における構造物点検システム200の動作の一例について説明する。図6は、本実施形態における構造物点検システム200の動作の一例を示すフローチャートである。図7(a)は、本発明の第1実施形態に係る飛行ロボットを構造物の下方で飛行させた状態を示す図であり、図7(b)は、図7(a)に示す構造物を図中矢印D方向から見た図である。
【0037】
図7に示すように、点検対象となる構造物の一例は、橋梁350である。橋梁350は、例えば、床版橋である。
【0038】
先ず、撮像ステップS11は、構造物300の画像を撮像する。点検者Aは、図7(a)に示すように、端末装置150を制御して、飛行ロボット100を飛行させて橋梁350の下面350aに配置する。飛行ロボット100に設けられた撮像装置23は、図7(b)に示すように、橋梁350の下面350aにおける、撮像領域R、を撮像する。撮像した際に、位置情報取得部23aは、撮像装置23の位置を取得するとともに、距離センサ23bは、橋梁350の下面350aまでの距離を測定してもよい。
【0039】
次に、入力ステップS12は、撮像ステップS11において撮像した画像を入力する。撮像装置23は、撮像した画像を端末装置150に送信する。端末装置150は、撮像装置23により撮像された画像が入力パラメータとして、入力部155に入力される。
【0040】
次に、連関度取得ステップS13は、過去の構造物の画像と、当該過去の構造物の画像に対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度を予め取得する。データベース400には、参照用入力パラメータとしての過去の構造物の画像と、出力解としての構造物の変状状況との3段階以上の連関度が、記憶される。
【0041】
図5の例によれば、過去の構造物の画像J1である場合に、構造物の変状状況「ひび割れ」が連関度80%、構造物の変状状況「変色」が連関度60%で設定されている。また過去の構造物の画像J2である場合に、構造物の変状状況「ひび割れ」が連関度90%、構造物の変状状況「変色」が連関度20%、構造物の変状状況「表面の剥離」が連関度50%で設定されている。
【0042】
これらの連関度は、過去の構造物の画像と、その判別結果としての構造物の変状状況をデータベース400内に予め蓄積しておき、それらに基づいて設定するようにしてもよい。この連関度は、いわゆるニューラルネットワークにより構成されていてもよい。この連関度は、過去の構造物の画像に基づいて、実際の構造物の変状状況を判別する上での的確性を示すものである。例えば過去の構造物の画像J1に対しては、連関度80%の「ひび割れ」が最も的確な判断に近く、連関度60%の「変色」がこれに続く的確な判断ということになる。同様に過去の構造物の画像J2に対しては、連関度90%の「ひび割れ」が最も的確な判断に近く、連関度50%の「表面の剥離」がこれに続き、連関度20%の「変色」がこれに続く的確な判断ということになる。
【0043】
次に、判別ステップS14は、連関度取得ステップS13において取得した連関度を参照し、入力ステップS12において入力した画像に基づいて、構造物の変状状況を判別する。
【0044】
この構造物の変状状況を判別する際には、連関度取得ステップS13において予め取得した図5に示す連関度を参照する。例えば、入力ステップS12において入力した構造物の画像が、過去の構造物の画像J1か、又はこれに近似するものである場合には、上述した連関度を参照し、連関度の最も高い「ひび割れ」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「変色」や「表面の剥離」を最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論である。即ち、構造物の変状状況の選択は、連関度が高いものから順に選択される場合に限定されるものではなく、ケースに応じて連関度が低いものから順に選択されるものであってもよいし、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0045】
また、構造物の画像が、過去の構造物の画像J2にも一部類似しているが、過去の構造物の画像J3にも一部類似し、何れに割り当ててよいか分からない場合については、例えば、画像上の特徴量に基づき、何れの参照用入力パラメータ(過去の構造物の画像)に割り当てるかを判別するようにしてもよい。このとき、ディープラーニングを通じて画像上の特徴量に基づき、何れの参照用入力パラメータに割り当てるかを判別するようにしてもよい。
【0046】
このようにして、入力パラメータとしての構造物の画像を参照用入力パラメータとしての過去の構造物の画像に割り当てた後、当該参照用入力パラメータに設定された連関度に基づいて出力解としての構造物の変状状況を選択することになる。
【0047】
そして、出力解としての構造物の変状状況を、表示部161に表示させる。これによりユーザは、表示部161を視認することにより、構造物の変状状況の判別結果を即座に把握することが可能となる。
【0048】
判別ステップS14において変状状況を判別した結果、構造物に変状があった場合には、特定ステップS15に進む。なお、判別ステップS14において変状状況を判別した結果、構造物に変状がなかった場合には、撮像ステップS11に戻り、撮像領域Rとは異なる他の領域を撮像すればよい。
【0049】
次に、特定ステップS15は、判別ステップS14において判別した構造物の変状状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する。特定した構造物の変状箇所は、端末装置150に記憶される。特定した構造物の変状箇所は、表示部161に表示されてもよい。これによりユーザは、表示部161を視認することにより、構造物の変状箇所を即座に把握することが可能となる。
【0050】
図8は、表示部161に表示させた構造物の変状箇所の一例を示す。例えば、図8(a)に示すように、特定部159は、入力部155により入力された構造物の画像上で構造物の変状が発生している一部の箇所をマーキング等の画像処理をすることにより、構造物の変状箇所Sを特定する。或いは、図8(b)に示すように、特定部159は、入力部155により入力された構造物の画像上の全部の箇所をマーキング等の画像処理をすることにより、構造物の変状箇所Sを特定してもよい。
【0051】
このようにして、特定部159は、判別部157により判別した構造物の劣化状況と、入力部155に入力された構造物の画像と、に基づいて、構造物の変状箇所として特定してもよい。
【0052】
例えば、特定部159は、位置情報取得部23aにより取得された構造物の画像を撮像した撮像装置23の位置と、距離センサ23bにより測定された橋梁350の下面350aまでの距離とから、構造物の変状が発生している位置を演算することにより、構造物の変状箇所を特定してもよい。
【0053】
このようにして、特定部159は、判別部157により判別した構造物の劣化状況と、位置情報取得部23aと、距離センサ23bと、に基づいて、構造物の変状箇所として特定してもよい。
【0054】
次に、検査ステップS16は、特定ステップS15において特定した構造物の変状箇所に対して、検査装置20が検査を行う。
【0055】
点検者Aは、表示部161に表示された構造物の変状箇所を視認しながら、端末装置150を制御して、構造物の変状箇所に対して検査装置20による検査を行う。
【0056】
また、点検者Aが端末装置150を制御することなく、特定ステップS15において特定した構造物の変状箇所に対して、自律的に検査装置20が検査するように、制御装置60を制御してもよい。
【0057】
検査を行う際には、図9に示すように、例えば、図中矢印P方向に向けて、飛行ロボット100を移動させることにより、検査装置20による検査、例えば、打診棒式打音検査ツールによる打音検査、を行ってもよい。これにより、打診子21cは、橋梁350の下面350aを、撫でるように動かすことができる。
【0058】
また、検査を行う際には、図10に示すように、飛行ロボット100を所定の位置に留めた状態で、可動部21bを図中矢印Q方向に可動させることにより、検査装置20による検査、例えば、打診棒式打音検査ツールによる打音検査、を行ってもよい。これにより、打診子21cは、橋梁350の下面350aを、撫でるように動かすことができる。
【0059】
そして、集音ツール22は、打診子22cによる音を集音し、検査が完了する。
【0060】
検査が完了したら、再度、撮像ステップS11に戻り、撮像領域Rとは異なる他の撮像領域を撮像し、上述した手順を繰り返す。
【0061】
なお、上述した手順では、撮像ステップS11において、撮像領域Rを1回撮像してから入力ステップS12を行う態様を説明したが、他の実施態様であってもよい。例えば、撮像ステップS11において、橋梁350の下面350aの全領域を、異なる撮像領域に分けて複数回してから入力ステップS12を行ってもよい。
【0062】
本実施形態によれば、データベース400に記憶された連関度を参照し、入力部155を介して入力された画像に基づいて、構造物の変状状況を判別する判別部157と、判別部157により判別した劣化状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する特定部159と、特定部159により特定した変状箇所に対して、検査を行う検査装置20とを備える。これにより、変状状況を判別した構造物の変状箇所に対して、更に検査を行うことができる。このため、構造物の点検を高精度に行うことが可能となる。
【0063】
また、本実施形態によれば、データベース400に記憶された連関度を参照し、入力部155を介して入力された画像に基づいて、構造物の変状状況を判別する判別部157と、判別部157により判別した劣化状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する特定部159と、特定部159により特定した変状箇所に対して、検査を行う検査装置20とを備える。即ち、変状箇所と特定されなかった箇所については、検査装置20による検査を省略することができる。これにより、構造物を検査する際に、点検の漏れや無駄をなくすことができる。このため、構造物を効率良く点検することが可能となる。
【0064】
特に、本実施形態によれば、構造物の変状状況の把握を、特段の熟練を要することなく容易に行うことが可能となる。更に、上述した連関度を人工知能で構成することにより、これを学習させることでその判別精度を更に向上させることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態によれば、3段階以上に設定されている連関度を介して最適な構造物の変状状況の判別結果の判別を行う点に特徴がある。連関度は、例えば0~100%までの数値で記述することができるが、これに限定されるものではなく3段階以上の数値で記述できるものであればいかなる段階で構成されていてもよい。
【0066】
このような3段階以上の数値で表される連関度に基づいて探索することで、複数の構造物の変状状況の判別結果が選ばれる状況下において、当該連関度の高い順に探索して表示することも可能となる。このように連関度の高い順にユーザに表示できれば、より可能性の高い構造物の変状状況の判別結果を優先的に選択することを促すこともできる。一方、連関度の低い構造物の変状状況の判別結果であってもセカンドオピニオンという意味で表示することができ、ファーストオピニオンで上手く分析ができない場合において有用性を発揮することができる。
【0067】
これに加えて、本実施形態によれば、連関度が1%のような極めて低い構造物の変状状況の判別結果も見逃すことなく判断することができる。連関度が極めて低い構造物の変状状況の判別結果であっても僅かな兆候として繋がっているものであり、何十回、何百回に一度は、構造物の変状状況の判別結果として役に立つ場合もあることをユーザに対して注意喚起することができる。
【0068】
更に本実施形態によれば、このような3段階以上の連関度に基づいて探索を行うことにより、閾値の設定の仕方で、探索方針を決めることができるメリットがある。閾値を低くすれば、上述した連関度が1%のものであっても漏れなく拾うことができる反面、構造物の変状状況の判別結果を好適に検出できる可能性が低く、ノイズを沢山拾ってしまう場合もある。一方、閾値を高くすれば、最適な構造物の変状状況の判別結果を高確率で検出できる可能性が高い反面、通常は連関度は低くてスルーされるものの何十回、何百回に一度は出てくる好適な解を見落としてしまう場合もある。いずれに重きを置くかは、ユーザ側、システム側の考え方に基づいて決めることが可能となるが、このような重点を置くポイントを選ぶ自由度を高くすることが可能となる。
【0069】
更に本実施形態では、上述した連関度を更新させるようにしてもよい。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。公衆通信網から取得可能なサイト情報や書き込み等を通じて、入力パラメータと、出力解(構造物の変状状況の判別結果)との関係性について新たな知見が発見された場合には、当該知見に応じて連関度を上昇させ、或いは下降させる。
【0070】
この連関度の更新は、公衆通信網から取得可能な情報に基づく場合以外に、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0071】
本実施形態によれば、少なくとも打診棒式打音検査ツールが設けられた飛行ロボット100を更に備え、打診棒式打音検査ツールは、飛行ロボット100が移動することにより、構造物300を打診するものとなる。これにより、飛行ロボット100を飛行させながら打診検査ができる。このため、点検時間を短縮することができる。
【0072】
本実施形態によれば、少なくとも打診棒式打音検査ツールが設けられた飛行ロボット100を更に備え、飛行ロボット100は、打診棒式打音検査ツールを可動させるための可動部21bを有し、打診棒式打音検査ツールは、飛行ロボット100が所定の位置に留まった状態で可動部21bを可動させることにより、構造物を打診するものとなる。これにより、飛行ロボット100が安定した状態で、打診検査を行うことができる。このため、検査の精度を向上させることができる。
【0073】
図11は、本発明の第1実施形態に係るデータベースの第1変形例を示す模式図である。図11の例では、過去の構造物の画像と構造物の付帯情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する構造物の劣化状況の判別結果との3段階以上の連関度が設定されている例を示している。
【0074】
構造物の付帯情報は、構造物の設置に関する設置情報と、構造物の断面に関する断面情報と、構造物の維持管理に関する管理情報と、が含まれる。なお、過去の構造物の付帯情報は、これらの過去の情報である。
【0075】
設置情報には、山岳部、港湾部、海上大気部、飛沫帯、干満帯、海水部、海底土中部等の構造物が設置される場所に関する場所情報と、温度、湿度等の環境情報と、構造物を走行する車両や車両の走行頻度等に関する車両情報とが含まれる。
【0076】
断面情報には、構造物の断面寸法、コンクリートのかぶり厚、鉄筋の配設量、構造物表面の湿潤状況等に関する情報が含まれる。
【0077】
管理情報には、構造物の補修履歴、構造物が構築されてからの供用期間等が含まれる。
【0078】
例えば、データベース400には、過去の構造物の画像J1と過去の設置情報との組み合わせがノードN1として表され、ノードN1とノードN1に対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度が記憶されている。同様に、データベース400には、過去の構造物の画像J1と過去の断面情報との組み合わせがノードN2として表され、ノードN2とノードN2に対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度が記憶されている。データベース400には、過去の構造物の画像J2と過去の設置情報と過去の管理情報との組み合わせがノードN3として表され、ノードN3とノードN3に対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度が記憶されている。データベース400には、過去の構造物の画像J3と過去の断面情報との組み合わせがノードN4として表され、ノードN4とノードN4に対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度が記憶されている。
【0079】
ノードN1は、「ひび割れ」の連関度が80%、「変色」の連関度が60%で設定されている。同様に、ノードN2は、「ひび割れ」の連関度が70%、「表面の剥離」の連関度が30%、で設定されている。ノードN3は、「変色」の連関度が50%、「表面の剥離」の連関度が20%、で設定されている。ノードN4は、「変色」の連関度が80%、「表面の剥離」の連関度が40%、で設定されている。
【0080】
このような組み合わせの連関度を予め取得しておく。次に判別部157は、このような連関度を参照し、入力部155を介して新たに入力された構造物の画像と構造物の付帯情報との組み合わせが、連関度の左側に配列された過去の構造物の画像と過去の構造物の付帯情報の組み合わせの何れに該当するかを判別する。仮に入力部155を介して過去の構造物の画像J1と過去の設置情報との組み合わせが新たに入力された場合、ノードN1に該当する。このため、かかるノードN1の連関度が80%である「ひび割れ」や、連関度が60%である「変色」等を選択することとなる。
【0081】
本実施形態によれば、データベース400には、過去の構造物の画像と過去の構造物の付帯情報との組み合わせと、当該組み合わせに対する構造物の劣化状況との3段階以上の連関度が記憶され、付帯情報は、設置情報、断面情報、及び管理情報の少なくとも何れかを有する。これにより、設置情報、断面情報、管理情報を踏まえて、構造物の変状状況を判別することができる。このため、構造物の変状状況を判別する精度をさらに向上させることが可能となる。
【0082】
図12は、本発明の第1実施形態に係る飛行ロボット100の第1変形例を示す。飛行ロボット100は、更に、少なくとも3つの全方向移動車輪31と、全方向移動車輪31に取り付けられる車輪駆動機構41と、車輪駆動機構41に取り付けられる車輪変位機構51とを有する。なお、図12では、3つの全方向移動車輪31のうち、1つの全方向移動車輪31の図示を省略し、2つの全方向移動車輪31のみを図示する。
【0083】
全方向移動車輪31は、機体1を、構造物300の表面上において、全方向に移動させることが可能である。全方向移動車輪31は、車輪駆動機構41によって駆動される。車輪駆動機構41は、全方向移動車輪31を、独立して駆動することが可能である。
【0084】
全方向移動車輪31は、ベースローラー32と、フリーローラー33と、を含む。ベースローラー32は、車輪駆動機構41によって回転駆動される。
【0085】
フリーローラー33は、ベースローラー32に、ベースローラー32の回転軸方向と直交する軸方向に自由回転可能に取り付けられている。
【0086】
車輪変位機構51は、機体1に設けられている。車輪変位機構51は、全方向移動車輪31の位置を、図中矢印y方向に、互いに独立して変位させることが可能である。例えば、車輪変位機構51は、図中矢印y方向に伸縮し、全方向移動車輪31の図中矢印y方向おける位置を変位させる。車輪変位機構51が最も縮んだ状態において、全方向移動車輪31の図中矢印y方向の位置を、回転翼11の図中矢印y方向の位置よりも高くなる。これにより、全方向移動車輪31は、回転翼11によって干渉されることなく、構造物300の表面に押しつけることが可能な状態にできる。
【0087】
制御装置60は、更に、車輪駆動機構41、及び車輪変位機構51のそれぞれを制御するものとなる。
【0088】
このように、飛行ロボット100は、構造物300の表面上を、全方向に移動させることが可能な少なくとも3つの全方向移動車輪31と、全方向移動車輪31を駆動させるための車輪駆動機構41と、全方向移動車輪31の位置を変位させるための車輪変位機構51と、を有する。
【0089】
撮像を行う際、点検者Aは、回転翼11の推力を使って、3つの全方向移動車輪31のそれぞれを、橋梁350の下面350aに押しつける。このとき、飛行ロボット100は、機体1を安定させることができる。このため、撮像装置23による撮像を、高精度に行うことができる。
【0090】
検査を行う際、点検者Aは、回転翼11の推力を使って、3つの全方向移動車輪31のそれぞれを、橋梁350の下面350aに押しつける。このとき、打診子21cは、橋梁350の下面350aと接触する。次に、点検者Aは、飛行ロボット100を、制御装置60を用いて全方向移動車輪31を制御しつつ、全方向移動車輪31の駆動力を使って、橋梁350の下面350a上で走行させる。これにより、打診子21cは、橋梁350の下面350aにおける変状箇所を撫でるように移動する。
【0091】
これにより、打診子21cが変状箇所を移動している間、機体1から変状箇所までの図中矢印y方向の高さ(=打診子21cの高さ)を、車輪変位機構51によって一定に保つことができる。このため、例えば、機体1から変状箇所までの図中矢印y方向の高さが安定しにくい場合と比較して、検査装置20、例えば、打音検査ツール21による検査を、より精度よく実施することができる。
【0092】
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態に係る構造物点検システム600の一例を示す模式図である。第1実施形態と同様の構成については、以下での詳細な説明を省略する。
【0093】
構造物点検システム600は、構造物300としての橋梁350を点検する際に用いられる。構造物点検システム600は、吊下装置700と、端末装置150と、データベース400と、を備える。構造物300の点検者Aは、端末装置150を操作し、吊下装置700を遠隔制御する。
【0094】
吊下装置700は、橋梁350の高欄等の側部から吊り下げられる吊下部材701と、橋梁350の下面350aから下方に離間されて、吊下部材701に設けられる支持部材702と、検査装置20と、撮像装置23と、制御装置60と、通信装置70と、を備える。
【0095】
吊下部材701は、例えば、鋼材、ロープ等が用いられる。吊下部材701の上端部は、橋梁350に固定され、吊下部材701の下端部に、支持部材702が固定される。
【0096】
支持部材702は、例えば、鋼材等が用いられる。支持部材702は、検査装置20と、撮像装置23と、制御装置60と、通信装置70とが設けられる。支持部材702は、棒状に形成され、略水平方向に延びる。支持部材702の両端に、それぞれ吊下部材701が固定される。支持部材702は、撮像装置23が複数設けられてもよい。また、支持部材702は、検査装置20が複数設けられてもよい。
【0097】
本実施形態であっても、データベース400に記憶された連関度を参照し、入力部155を介して入力された画像に基づき、構造物の変状状況を判別する判別部157と、判別部157により判別した劣化状況に基づいて、構造物の変状箇所を特定する特定部159と、特定部159により特定した変状箇所に対して、検査を行う検査装置20とを備える。即ち、変状箇所と特定されなかった箇所については、検査装置20による検査を省略することができる。これにより、構造物を検査する際に、点検の漏れや無駄をなくすことができる。このため、構造物を効率良く点検することが可能となる。
【符号の説明】
【0098】
200 :構造物点検システム
100 :飛行ロボット
1 :機体
2 :着陸ギア
11 :回転翼
20 :検査装置
21 :打音検査ツール
21a :シャフト
21b :可動部
21c :打診子
21d :弾性機構
22 :集音ツール
22c :打診子
23 :撮像装置
23a :位置情報取得部
23b :距離センサ
31 :全方向移動車輪
32 :ベースローラー
33 :フリーローラー
41 :車輪駆動機構
51 :車輪変位機構
60 :制御装置
70 :通信装置
150 :端末装置
154 :制御部
155 :入力部
156 :通信部
157 :判別部
158 :記憶部
159 :特定部
160 :内部バス
161 :表示部
300 :構造物
350 :橋梁
350a :下面
400 :データベース
600 :構造物点検システム
700 :吊下装置
701 :吊下部材
702 :支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13