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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】照明システムおよび照明方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/16 20200101AFI20230719BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20230719BHJP
   H05B 47/10 20200101ALI20230719BHJP
   A61M 21/00 20060101ALI20230719BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H05B47/16
H05B47/165
H05B47/10
A61M21/00 A
A61M21/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020111414
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010712
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000161828
【氏名又は名称】京阪ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉野 攝津子
(72)【発明者】
【氏名】矢部 周子
(72)【発明者】
【氏名】石川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】熊代 美徳
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛史
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-107258(JP,A)
【文献】特表2016-505311(JP,A)
【文献】特開2015-041612(JP,A)
【文献】実開平05-062260(JP,U)
【文献】国際公開第2010/123031(WO,A1)
【文献】特開2007-147361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
45/00-45/58
47/00-47/29
A61M 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝領域を含む居住空間を形成する建築材に設置されて前記就寝領域の頭部領域を間接的に照明する部分照明装置と、
前記部分照明装置の調光率を制御する制御装置と、を備え、
前記部分照明装置は、
前記就寝領域の上方において前記居住空間の天井を形成する建築材に対して、前記就寝領域の長さ方向における前記頭部領域寄りの位置であって前記就寝領域の長さ方向において前記就寝領域の頭部側端部から790mm±100mm離れているとともに前記就寝領域の幅方向における前記就寝領域の中央位置から前記就寝領域の幅方向において400mm±100mmずれた位置に設置され、2800K±200Kの色温度を有する光で前記頭部領域を間接的に照明するものであり、
前記制御装置は、
利用者によって指定された起床時刻の所定時間前に前記部分照明装置による前記頭部領域の照度上昇を開始し、前記照度上昇の開始からの経過時間に応じて前記頭部領域の照度を高くする起床制御を実行する
照明システム。
【請求項2】
就寝領域を含む居住空間を形成する建築材に設置されて前記就寝領域の頭部領域を間接的に照明する第1部分照明装置と、
前記第1部分照明装置とは異なる位置に設けられ、前記就寝領域の足部領域を照明する第2部分照明装置と、
前記第1部分照明装置の調光率と前記第2部分照明装置の調光率とを制御する制御装置と、を備え、
前記第1部分照明装置は、
前記就寝領域の上方において前記居住空間の天井を形成する建築材に対して、前記就寝領域の長さ方向における前記頭部領域寄りの位置であって前記就寝領域の幅方向における中央からずれた位置に設置され、2800K±200Kの色温度を有する光で前記頭部領域を間接的に照明するものであり、
前記制御装置は、
利用者によって指定された起床時刻の所定時間前に前記第1部分照明装置による前記頭部領域の照度上昇を開始し、前記照度上昇の開始からの経過時間に応じて前記頭部領域の照度を高くする起床制御と、前記第2部分照明装置に基づく前記足部領域の照度を徐々に小さくする入眠制御と、を実行する
照明システム。
【請求項3】
前記第1部分照明装置は、
前記就寝領域の長さ方向において、前記就寝領域の頭部側端部から設置位置までの距離が790mm±100mmに設定され、
前記就寝領域の幅方向において、前記就寝領域の中央位置から設置位置までの距離が400mm±100mmに設定される
請求項2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記入眠制御において、前記第2部分照明装置の照度を半減させてから前記足部領域の照度を徐々に小さくする
請求項2または3に記載の照明システム。
【請求項5】
前記起床制御において、前記制御装置は、一定の上昇速度で前記頭部領域の照度を高める
請求項1~4のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記利用者が前記起床時刻を入力する入力部を備える
請求項1~のいずれか一項に記載の照明システム。
【請求項7】
就寝領域を含む居住空間を形成する建築材に設置されて前記就寝領域の頭部領域を間接的に照明する部分照明装置を用いた照明方法であって、
2800K±200Kの色温度を有する光で前記頭部領域を間接的に照明する前記部分照明装置を、前記就寝領域の上方において前記居住空間の天井を形成する建築材に対して、前記就寝領域の長さ方向における前記頭部領域寄りの位置であって前記就寝領域の長さ方向において前記就寝領域の頭部側端部から790mm±100mm離れているとともに前記就寝領域の幅方向における前記就寝領域の中央位置から前記就寝領域の幅方向において400mm±100mmずれた位置に設置し、
前記部分照明装置の調光率を制御装置に制御させ、利用者によって指定された起床時刻の所定時間前に前記部分照明装置による前記頭部領域の照度上昇を開始し、前記照度上昇の開始からの経過時間に応じて前記頭部領域の照度を高くする
照明方法。
【請求項8】
就寝領域を含む居住空間を形成する建築材に設置されて前記就寝領域の頭部領域を間接的に照明する第1部分照明装置と、前記第1部分照明装置とは異なる位置に設置されて前記就寝領域の足部領域を照明する第2部分照明装置とを用いた照明方法であって、
2800K±200Kの色温度を有する光で前記頭部領域を間接的に照明する前記第1部分照明装置を、前記就寝領域の上方において前記居住空間の天井を形成する建築材に対して、前記就寝領域の長さ方向における前記頭部領域寄りの位置であって前記就寝領域の幅方向における中央からずれた位置に設置し、
前記第1部分照明装置の調光率と前記第2部分照明装置の調光率とを制御装置に制御させ、前記制御装置に、利用者によって指定された起床時刻の所定時間前に前記第1部分照明装置による前記頭部領域の照度上昇を開始し、前記照度上昇の開始からの経過時間に応じて前記頭部領域の照度を高くする起床制御と、前記第2部分照明装置に基づく前記足部領域の照度を徐々に小さくする入眠制御と、を実行させる
照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムおよび照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、ヒトの生体リズムに合わせて居住空間の照明を高色温度光と低色温度光とに使い分ける照明システムが知られている。特許文献1の照明システムは、ヒトの生体リズムの沈静化期においては色温度3000K程度の低色温度光で照明し、活動化期においては色温度6500K程度の高色温度光で照明している。また、特許文献1の照明システムは、活動化期と沈静化期とが利用者によって任意に設定可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-294388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の照明システムは、起床時における覚醒作用を高めることについて考慮がなされていない。利用者が高い覚醒作用のもとで起床できなければ、快適な居住空間を実現できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する照明システムは、就寝領域を含む居住空間を形成する建築材に設置されて前記就寝領域の頭部領域を間接的に照明する部分照明装置と、前記部分照明装置の調光率を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、利用者によって指定された起床時刻の所定時間前に前記部分照明装置による前記頭部領域の照度上昇を開始し、前記照度上昇の開始からの経過時間に応じて前記頭部領域の照度を高くする起床制御を実行する。これにより、起床時刻に向けて頭部領域の照度が徐々に高くなることで起床時における利用者の覚醒作用を高めることができる。
【0006】
上記照明システムにおいて、前記部分照明装置が前記居住空間の天井を形成する建築材に設置されていることが好ましい。これにより、頭部領域における照度を効果的に高めることができる。
【0007】
上記照明システムにおいて、前記部分照明装置が前記就寝領域の上方に設置されていることが好ましい。これにより、頭部領域における照度をさらに効果的に高めることができる。
【0008】
上記照明システムにおいて、前記部分照明装置は、前記就寝領域の長さ方向における前記頭部領域寄りの位置であって前記就寝領域の幅方向における中央からずれた位置に設置されていることが好ましい。これにより、部分照明装置が頭部領域を直接照明することが抑えられる。
【0009】
前記起床制御において、前記制御装置は、一定の上昇速度で前記頭部領域の照度を高めてもよい。このように一定の上昇速度で頭部領域の照度を高くすることができる。
上記照明システムにおいて、前記制御装置は、前記利用者が前記起床時刻を入力する入力部を備えることが好ましい。これにより、利用者自身が起床時刻を自由に設定することができる。
【0010】
上記照明システムにおいて、前記部分照明装置が第1部分照明装置であり、前記第1部分照明装置とは異なる位置に設けられ、前記就寝領域の足部領域を照明する第2部分照明装置をさらに備え、前記制御装置は、前記第2部分照明装置に基づく前記足部領域の照度を徐々に小さくするように前記第2部分照明装置の調光率を制御する入眠制御を実行することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第2部分照明装置の入眠制御によって利用者を睡眠状態へと円滑に導くことができるため、第1部分照明装置の起床制御による利用者の覚醒作用を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】照明システムの一実施形態の概略構成を示す図。
図2】上方からの客室の平面視において第1部分照明装置および第2部分照明装置の設置位置の一例を示す平面図。
図3】照明システムの電気的な構成の一例を示す機能ブロック図。
図4】起床スケジュールの一例を頭部領域の照度変化で示すグラフ。
図5】入眠スケジュールの一例を足部領域の照度変化で示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図5を参照して、照明システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、照明システム10は、例えばホテル等の就寝施設の客室11を照明する照明システムである。客室11は、床12、複数の壁13、天井14によって形成される居住空間15を有している。客室11には、客室11の利用者が就寝する就寝領域を構成するベッド16が設置されている。ベッド16は、一人用のいわゆるシングルベッドである。ベッド16の就寝領域は、上方からの客室11の平面図において、ベッド16の長さ方向に並ぶ3つの領域である頭部領域16H、胴体部領域16B、足部領域16Lに仮想的に分割される。
【0014】
頭部領域16Hは、ベッド16の長さ方向における一端部を含む領域である。頭部領域16Hは、枕17が配置される領域であって就寝時に利用者の頭部が配置される領域である。胴体部領域16Bは、頭部領域16Hに隣接する領域であって、就寝時に利用者の胴体部が配置される領域である。足部領域16Lは、頭部領域16Hおよび胴体部領域16B以外の領域であって、ベッド16の長さ方向における他端部を含む領域である。足部領域16Lは、頭部領域16Hの反対側で胴体部領域16Bに隣接する領域であって、就寝時に利用者の足部が配置される領域である。
【0015】
なお、ベッド16は、約2000mm程度の長さと約1000mm程度の幅とを有する。頭部領域16Hは、例えば、ベッド16の長さ方向において頭部側端部から450mmまでの領域である。胴体部領域16Bは、例えば、ベッド16の長さ方向において1000mmの長さを有する領域である。
【0016】
照明システム10は、メイン照明装置20、第1部分照明装置21、および、第2部分照明装置22を備えている。なお、以下に例示する第1部分照明装置21および第2部分照明装置22に関する各種の数値は、予め行った実験の結果に基づいて設定した値である。この実験では、体内リズムが整っていると考えられる複数の被験者に様々な照明条件のもと客室11で就寝・起床してもらい生理指標および心理指標について評価した。そして、その評価結果に基づいて、起床時に利用者の覚醒作用が高まるように、また、就寝時に利用者の入眠作用が高まるように各種の数値を設定した。
【0017】
メイン照明装置20は、例えば発光ダイオードや白熱球などの光源を有しており、天井14を形成する建築材に対して一体的に取り付けられることにより天井14に埋め込まれている。メイン照明装置20は、居住空間15の全体を直接的に照明する照明装置である。メイン照明装置20は、後述する制御装置30に対する利用者の操作に基づいて点灯・消灯する。
【0018】
第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、例えば発光ダイオードや白熱球などの光源を有しており、天井14を形成する建築材に対して一体的に取り付けられることにより天井14に埋め込まれている。第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、照明方向が真下方向に設定されており、ベッド16の頭部領域16Hを間接的に照明する照明装置である。ここでいう「間接的に照明」とは、光源が発した光が頭部領域16Hを直接照明するのではなく、光源が発した光の拡散光や反射光によってベッド16の頭部領域16Hが照明されることをいう。なお、図1においては天井14に一対の第1部分照明装置21が設置されている。本実施形態では、1つのベッド16が配置されたシングルルームを想定しているが、手前側に設置された第1部分照明装置21は、ベッド16に隣接するようにもう1つのベッド16が設置されるツインルームで使用される照明装置である。
【0019】
第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、メイン照明装置20よりも低い色温度を有する照明装置である。第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、比較的低い色温度、例えば2800K±200Kの色温度を有する照明装置である。第1部分照明装置21および第2部分照明装置22の色温度が2800K±200Kに設定されることにより、第1部分照明装置21および第2部分照明装置22による間接光の瞼透過率を高めることができる。第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、同じ色温度を有する照明装置であってもよいし、異なる色温度を有する照明装置であってもよい。
【0020】
第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、点灯、消灯、および、調光率が後述する制御装置30によって個別に制御可能に構成されている。例えば、第1部分照明装置21は、制御装置30が実行する起床制御によって、利用者が設定した起床時刻よりも所定の開始時間だけ前に自動的に点灯して頭部領域16Hの照度上昇を開始するとともに、起床時刻において第1最大照度E1となるように頭部領域16Hの照度を高くする。また例えば、第2部分照明装置22は、制御装置30が実行する入眠制御によって、利用者による入眠制御の開始操作により頭部領域16Hの照度低下を開始し、所定の消灯時間だけ後に自動的に消灯する。
【0021】
図2に示すように、メイン照明装置20は、居住空間15の中心部分に設置されている。第1部分照明装置21および第2部分照明装置22は、ベッド16の上方に設置されている。
【0022】
第1部分照明装置21は、ベッド16の胴体部領域16Bの上方に設置されている。第1部分照明装置21は、ベッド16の長さ方向において、頭部領域16H寄りの位置に設置される。第1部分照明装置21は、ベッド16の幅方向において、該幅方向における中央を示す中央仮想線24からずれた位置に設置される。第1部分照明装置21は、頭部領域16Hを第1最大照度E1以下の照度(水平面照度)で間接的に照明する。
【0023】
例えば、第1部分照明装置21は、ベッド16の頭部側端部から設置位置までの距離L11が790mm±100mmに設定される。距離L11が690mm以上に設定されることにより、第1部分照明装置21の照明に基づく最大照度領域を頭部領域16Hとは異なる領域に設定することができるとともに、第1部分照明装置21の光源を頭部領域16Hから見えにくくすることができる。距離L11が890mm以下に設定されることにより、第1部分照明装置21による頭部領域16Hの間接的な照明を効果的に行うことができる。
【0024】
例えば、第1部分照明装置21は、胴体部領域16Bの上方に位置する範囲において、中央仮想線24から設置位置までの距離L12が400mm±100mmに設定される。距離L12が300mm以上に設定されることにより、第1部分照明装置21の光源を頭部領域16Hから見えにくくすることができる。距離L12が500mm以下に設定されることにより、第1部分照明装置21による頭部領域16Hの間接的な照明を効果的に行うことができる。
【0025】
例えば、第1最大照度E1は、380ルクス±20ルクスに設定される。第1最大照度E1が360ルクス以上に設定されることにより、起床制御によって頭部領域16Hの照度が高まったことを利用者が感じやすくなる。第1最大照度E1が400ルクス以下に設定されることにより、起床制御の終了時に利用者が程よい眩しさを感じることができる。
【0026】
第2部分照明装置22は、ベッド16の足部領域16Lの上方に設置されている。第2部分照明装置22は、上方からの客室11の平面図において、ベッド16の中央仮想線24に重なる位置に設置されている。第2部分照明装置22は、足部領域16Lを第2最大照度E2以下の照度(水平面照度)で照明することにより、頭部領域16Hを間接的に照明する。第2最大照度E2は、第1最大照度E1よりも小さい値に設定される。
【0027】
例えば、第2部分照明装置22は、ベッド16の頭部側端部からの距離L21が1705mm±100mmに設定される。距離L21が1605mm以上に設定されることにより、第1部分照明装置21の光源を頭部領域16Hから見えにくくすることができる。距離L21が1805mm以下に設定されることにより、第2部分照明装置22による頭部領域16Hの間接的な照明を程よく行うことができる。
【0028】
例えば、第2最大照度E2は、100ルクス±10ルクスに設定される。第2最大照度E2が90ルクス以上に設定されることにより、入眠制御によって頭部領域16Hの照度が低下していることを利用者が感じやすくなる。第2最大照度E2が110ルクス以下に設定されることにより、入眠制御の開始時に利用者が感じる眩しさを抑えることができる。
【0029】
図3に示すように、照明システム10は、メイン照明装置20、第1部分照明装置21、および、第2部分照明装置22の各々の点灯や消灯などを個別に制御可能な制御装置30を備えている。
【0030】
制御装置30は、相互に通信可能な入力部31と制御部35とを有している。入力部31は、利用者が操作可能な操作部32と、利用者に対して各種情報を表示する表示部33とを有している。入力部31は、操作部32の操作に応じた操作信号を制御部35に出力する。表示部33は、制御部35が出力した出力信号に基づく各種情報を表示する。
【0031】
利用者は、メイン照明装置20について、入力部31を通じて点灯操作および消灯操作を行う。利用者は、第1部分照明装置21について、入力部31を通じて点灯操作、消灯操作、および、起床制御の設定を行う。利用者は、第2部分照明装置22について、入力部31を通じて点灯操作、消灯操作、および、入眠制御の設定を行う。
【0032】
制御部35は、入力部31から入力される操作信号を取得し、その取得した操作信号、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。制御部35は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0033】
制御部35は、各種プログラムの実行により機能する機能部として、時計部36、メイン照明制御部37、第1照明制御部38、第2照明制御部39、設定部40、照明スケジュール部41を有している。
【0034】
時計部36は、現在の時刻を把握するとともに、その把握している現在の時刻を入力部31に出力して表示部33に表示する。
メイン照明制御部37は、入力部31からの操作信号に基づいて、メイン照明装置20の点灯および消灯を行う。
【0035】
第1照明制御部38は、入力部31からの操作信号に基づいて、第1部分照明装置21の点灯、消灯、および、調光率を制御する。第1照明制御部38は、時計部36が把握している現在の時刻などに基づいて、第1部分照明装置21による起床制御を実行する。起床制御は、メイン照明装置20および第2部分照明装置22を消灯したまま、利用者によって設定された起床時刻よりも開始時間だけ前に頭部領域16Hの照度上昇を開始し、起床時刻に第1最大照度E1となるように頭部領域16Hの照度を高くする制御である。この際、第1照明制御部38は、第1部分照明装置21の調光率を照明スケジュールに従って上昇させる。
【0036】
第2照明制御部39は、入力部31からの操作信号に基づいて、第2部分照明装置22の点灯、消灯、および、調光率を制御するとともに、第2部分照明装置22による入眠制御を実行する。入眠制御は、利用者による入眠制御の開始操作により、メイン照明装置20および第1部分照明装置21を消灯するとともに頭部領域16Hの照度低下を開始し、消灯時間だけ後に第2部分照明装置22を消灯する制御である。この際、第2照明制御部39は、第2部分照明装置22の調光率を照明スケジュールに従って低下させる。
【0037】
設定部40は、入力部31からの操作信号に基づいて、起床制御の設定画面を表示部33に表示する。設定部40は、起床制御の設定画面における利用者の操作に基づいて、起床制御について実行の要否と起床時刻とを設定する。
【0038】
設定部40は、利用者による操作部32の操作に基づいて、入眠制御の設定画面を表示部33に表示する。設定部40は、入眠制御の設定画面における利用者の操作に基づいて、入眠制御の実行の要否を設定する。
【0039】
照明スケジュール部41は、起床制御の照明スケジュールである起床スケジュールと、入眠制御の照明スケジュールである入眠スケジュールとを保持している。
図4に示すように、起床スケジュール42は、頭部領域16Hの照度が起床時刻「0」において第1最大照度E1(例えば380ルクス)に到達するように、起床時刻に対する開始時間前(15分前)から一定の上昇速度で頭部領域16Hの照度を単調増加させる照明スケジュールである。なお、起床スケジュールは、曝露量の合計が所定値となるように構成されるとよい。
【0040】
図5に示すように、入眠スケジュール44は、入眠制御の開始時に足部領域16Lの照度を第2最大照度E2(例えば100ルクス)から半減させたのち、一定の低下速度で足部領域16Lの照度を低くする。そして、消灯時間だけ後に第2部分照明装置22を自動的に消灯させる照明スケジュールである。
【0041】
(照明システム10の動作)
上述した照明システム10の動作について説明する。
客室11の利用者は、就寝前に制御装置30の入力部31を操作して、入眠制御の実行を設定するとともに、起床制御の実行および起床時刻を設定する。利用者は、就寝時に入力部31を操作して入眠制御を開始する。
【0042】
入眠制御の開始操作により制御装置30は、メイン照明装置20および第1部分照明装置21を消灯するとともに、入眠スケジュールにしたがって第2部分照明装置22の調光率を徐々に低下させ、消灯時間だけ後に第2部分照明装置22を自動的に消灯する。
【0043】
やがて制御装置30は、時計部36が把握する現在の時刻が起床時刻よりも開始時間だけ前になると、メイン照明装置20および第2部分照明装置22を消灯状態に維持したまた第1部分照明装置21を点灯させ、起床スケジュールにしたがって第1部分照明装置21の調光率を上昇させる。
【0044】
(作用)
入眠制御の実行によって足部領域16Lの照度が第2最大照度E2から徐々に低下することから、利用者は、覚醒状態から睡眠状態へとスムーズに移行することができる。また、起床制御の実行によって頭部領域16Hの照度が第1最大照度E1に向かって徐々に高くなることから、利用者は、睡眠状態から覚醒状態へとスムーズに移行する。これにより、起床時における利用者の覚醒作用が高められる。
【0045】
本実施形態の効果について説明する。
(1)照明システム10においては、第1部分照明装置21によって起床制御が実行される。これにより、起床時刻に向けて利用者の周囲が徐々に明るくなるので起床時における利用者の覚醒作用を高めることができる。そして、的確な覚醒作用による起床により、快適な居住空間を実現できる。
【0046】
(2)第1部分照明装置21が天井14に設置されている。これにより、頭部領域16Hの照度を効果的に高めることができる。
(3)第1部分照明装置21が天井14を形成する建築材に対して一体的に取り付けられていることにより天井14に埋め込まれている。これにより、コンパクトな客室11にあっても利用者に与える開放感、客室11のデザイン性や統一性を向上させることができるとともに、スタンドライトや置き式照明のように客室11の清掃時などに邪魔にならないため、客室11のメンタビリティを向上させることができる。
【0047】
(4)第1部分照明装置21がベッド16の上方に設置されている。これにより、頭部領域16Hの照度をより効果的に高めることができる。その結果、起床制御実行時における消費電力を抑えることができる。
【0048】
(5)第1部分照明装置21は、ベッド16の長さ方向における頭部領域16H寄りの位置であってベッド16の幅方向における中央からずれた位置に設置されている。これにより、第1部分照明装置21が頭部領域16Hを直接照明することが抑えられる。
【0049】
(6)制御装置30は、起床制御の実行時に、頭部領域16Hの照度を一定の上昇速度で高めることが可能に構成されている。これにより、起床時における利用者の覚醒作用をより効果的に高めることができる。
【0050】
(7)起床制御は、入力部31の操作によって利用者自身が起床時刻を設定可能に構成されている。これにより、利用者は、自身の生活リズムに最適な起床時刻を自由に設定することができる。
【0051】
(8)照明システム10は、第2部分照明装置22を有するとともに第2部分照明装置22による入眠制御が実行可能に構成されている。これにより、入眠制御によって利用者が入眠しやすくなることから、起床制御による利用者の覚醒作用をさらに効果的に高めることができる。
【0052】
(9)照明システム10は、起床制御を実行する第1部分照明装置21と入眠制御を実行する第2部分照明装置22とを個別に備えている。これにより、起床制御と入眠制御とを1つの部分照明装置で実現する場合と比較して、例えば色温度や調光率の推移など、起床制御に適した条件と入眠制御に適した条件とが異なっていても容易に対応することが可能である。また、起床制御と入眠制御とをシンプルな制御方法のもとで実現できることから、照明システム10のコストを低減しつつロバスト性を高めることができる。
【0053】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第2部分照明装置22は、頭部領域16Hを間接的に照明する照明装置であればよい。そのため、第2部分照明装置22の設置位置は、天井14に設置される場合、ベッド16の上方に限られるものではない。また、第2部分照明装置22は、床12や壁13に設置されていてもよい。
【0054】
・入眠制御は、複数の第2部分照明装置22で行うようにしてもよい。この場合、第2照明制御部39は、足部領域16Lの照度が徐々に低下するように複数の第2部分照明装置22の調光率を制御する。
【0055】
・照明システム10は、第2部分照明装置22を備えていなくともよい。この場合、入眠制御が第1部分照明装置21によって行われてもよいし、入眠制御が行われなくともよい。
【0056】
・起床制御において、制御装置30は、頭部領域16Hの照度が起床時刻において第1最大照度E1となるように第1部分照明装置21の調光率を上昇させればよい。そのため、制御装置30は、頭部領域16Hの照度が一時的に一定値に保持されるように第1部分照明装置21の調光率を制御してもよい。この場合、制御装置30は、例えば、頭部領域16Hの照度が一時的に一定値に保持される起床スケジュールを照明スケジュール部41に保持し、その起床スケジュールに基づいて第1部分照明装置21の調光率を制御してもよい。
【0057】
・起床制御において、制御装置30は、頭部領域16Hの照度の測定値に基づいて第1部分照明装置21の調光率を制御してもよい。この場合、照明システム10は、頭部領域16Hの照度を測定する測定器(図示せず)を有する。制御装置30は、測定器の測定値が第1最大照度E1に向けて単調増加するように第1部分照明装置21の調光率を制御する。
【0058】
・第1部分照明装置21は、頭部領域16Hを間接的に照明する照明装置であればよい。そのため、第1部分照明装置21の設置位置は、天井14に設置される場合にはベッド16の上方に限られるものではない。例えば、図1に示した手前側に位置している第1部分照明装置21で起床制御が行われてもよい。また、第1部分照明装置21は、床12や壁13に設置されていてもよい。また、起床制御は、複数の第1部分照明装置21によって行われてもよい。
【0059】
・制御装置30は、例えば、ホテルの従業員が入力した利用者のチェックイン時刻やチェックアウト予定時刻などに基づいて起床時刻を自動的に設定する構成であってもよい。この場合、制御装置30は、例えば、宿泊管理サーバ(図示せず)からチェックイン時刻やチェックアウト予定時刻を取得し、その取得した時刻に基づいて起床時刻を設定する。
【0060】
・制御装置30は、客室11の施解錠に基づいて利用者の入室時刻を取得し、その取得した入室時刻に基づいて起床時刻を設定する構成であってもよい。
・制御装置30は、起床時刻の時間帯に基づいて、頭部領域16Hの第1最大照度E1を調整可能に構成されていてもよい。例えば、制御装置30は、設定された起床時刻が深夜帯である場合には、第1最大照度E1を高くしてもよい。
【0061】
・照明システム10は、利用者の就寝領域を含んだ居住空間15を有する就寝施設に設置されればよい。そのため、照明システム10は、利用者の自宅や集合住宅、簡易的な宿泊施設に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…照明システム、14…天井、15…居住空間、16…ベッド、16H…頭部領域、16L…足部領域、20…メイン照明装置、21…第1部分照明装置、22…第2部分照明装置、30…制御装置、31…入力部。
図1
図2
図3
図4
図5