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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】締め付け部を有する締め付けリング
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/08 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
F16L5/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020533603
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085411
(87)【国際公開番号】W WO2019121627
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】17020582.7
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510321413
【氏名又は名称】ハウフ テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ヘック,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,ラルフ
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02922212(US,A)
【文献】特開2003-074079(JP,A)
【文献】米国特許第05024404(US,A)
【文献】米国特許第05431459(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02076554(FR,A1)
【文献】特開2006-052843(JP,A)
【文献】実開昭58-130191(JP,U)
【文献】米国特許第02778085(US,A)
【文献】米国特許第02855167(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締め付け部(3)を有する締め付けリング(1)であって、
前記締め付け部(3)が楔部材(6)と案内部(7a)と締め付けねじ(5)とを有し、
前記締め付けねじ(5)を締め付けることによって前記締め付け部(3)の口径と、締め付けリング(1)の円周とが変化できるようにされ、このために前記楔部材(6)は前記案内部(7a)に案内され、この案内中に前記締め付けねじ(5)を締め付けることによって前記案内部(7a)の移動経路(20a)に沿って移動できるようにされ、前記移動経路(20a)は前記締め付け部(3)の口径を決定する部分を有し、
前記楔部材(6)および前記案内部(7a)はアンダーカットで互いに係合するようにし、口径方向(4)に対して形状結合的に保持されるようにされており、
前記楔部材(6)および前記案内部(7a)は、前記締め付け部(3)が狭められたとき、及び前記締め付け部(3)が広げられたときに、形状結合で一緒に保持されるとともに、
前記締め付けリング(1)は、前記締め付けねじ(5)を締め付けることにより、前記締め付けリング(1)がリング軸(2)に対して半径方法外側に向かって広がるように、構成される、
締め付けリング(1)。
【請求項2】
前記締め付け部(3)の前記締め付けねじ(5)が、前記締め付けリング(1)の前記リング軸(2)と平行に整列された回転軸(15)を画定する、請求項1に記載の締め付けリング(1)。
【請求項3】
前記締め付けリング(1)の一部をなす締め付け帯(30)を備え、前記案内部(7a)が前記締め付け帯(30)の突き合せ端(30a)に配置されている請求項1または2に記載の締め付けリング(1)。
【請求項4】
前記締め付け帯(30)が金属製であり、それ自体が前記案内部(7a)を形成し、そのために前記締め付け帯(30)が前記突き合わせ端(30a)で曲げられ、前記楔部材(6)に係合する請求項3に記載の締め付けリング(1)。
【請求項5】
前記案内部(7a)が前記楔部材(6)の凹部に係合する請求項1から4のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項6】
前記案内部(7a)が前記楔部材(6)に係合するL字形状を有し、前記L字形状の脚部が前記楔部材(6)の壁面と同一の広がりを持つ請求項1から5のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項7】
前記移動経路(20a)が前記締め付けリング(1)の端面(51)まで延びており、前記端面(51)に向かって前記楔部材(6)が移動すると前記締め付け部(3)の口径が大きくなり、前記移動経路(20a)が前記端面(51)と案内部側で鋭角となる角度(50)を成す請求項1から6のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項8】
前記案内部(7a)が第1の案内部(7a)であり、前記楔部材(6)が二重楔状に設けられ、すなわち前記口径方向(4)に前記第1の案内部(7a)に対向する前記締め付け部(3)の第2の案内部(7b)でも一部が第2の移動経路(20b)に沿って前記口径方向(4)に移動できる請求項1から7のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項9】
前記二重楔状の楔部材(6)が第1の二重楔部(6a)と第2の二重楔部(6b)を含み、前記第1の二重楔部(6a)が前記第1の案内部(7a)に案内され、前記第2の二重楔部(6b)が第2の案内部(7b)に案内される請求項8に記載の締め付けリング(1)。
【請求項10】
前記締め付けねじ(5)が前記第1及び第2の二重楔部(6a、6b)を貫通するとともに前記口径方向(4)に一緒に保持する請求項9に記載の締め付けリング(1)。
【請求項11】
前記締め付け部(3)が別の案内部(9a)と、この案内部(9a)に案内されこの案内中に前記締め付けねじ(5)を締め付けることにより相対移動可能な楔部材(8)とを有し、しかも前記楔部材(6)に対し前記リング軸(2)に関して軸方向に対向するようにし、これらの楔部材(6,8)は前記締め付けねじ(5)を締め付けることにより、互いに軸方向に移動可能にされる請求項1から10のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項12】
それぞれ楔部材(6)と案内部と締め付けねじ(5)を備えた複数の締め付け部(3a、b、c)を円周上に分布させ、それぞれの前記締め付けねじ(5)を締めることによってその口径を変化できるようにし、それによって前記締め付けリング(1)の円周を変化させる請求項1から11のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項13】
第1(90)及び第2の締め付けリングセグメント(91)を有し、これらの締め付けリングセグメント(90、91)は、前記リング軸(2)を中心とする円周上に順次配置され、アンダーカットにより形状結合的に保持され、前記リング軸(2)に対して前記締め付けリングセグメント(90、91)が、互いに軸方向に変位できないように、又は前記締め付けリングセグメント(90、91)の軸方向の相対的なずれが生じた場合でもそれらの円周方向への合計延長は変わらないようにされる請求項1から12のいずれか1項に記載の締め付けリング(1)。
【請求項14】
締め付けリング(1)の使用方法であって、
(A)請求項1から13のいずれか1項に記載の前記締め付けリング(1)を得るステップと、
(B)前記締め付けリング(1)を前記リング軸(2)に対して半径方向外側に広げて、管部材、通信回線、および/または、通信回線用導管に押し付けるステップと、
を含む使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締め付け部を有する締め付けリングに関する。
【背景技術】
【0002】
ここで対象となる締め付けリングは、例えば壁または床の貫通部において、比較的剛性の高い導管または管部材に軟質の可撓性スリーブを押し付けるために使用することができる。このために、締め付けリングの円周は、締め付けねじを締め付けることによって変更させられ、これにより締め付けリングはリング軸に垂直な方向に押しつけられ、例えば、圧力を増加させてまたはゴムスリーブを管部材に押し付けられる。このような利用は、本発明の対象を例示するものであり、本発明思想の汎用性を制限するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、特に有利な締め付けリングを提供するという技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これは本発明によれば、請求項1に記載の締め付けリングにより達成される。締め付けねじを締め付けることにより締め付けリングの円周を変更するためその口径を変化できる締め付け部には、楔部材と案内部が設けられる。楔部材は案内部に案内されており、締め付けねじを締め付けることにより、この案内部内の移動経路に沿って移動させることができる。この移動経路は、締め付け部の口径が計られる口径方向に関与している。したがって、締め付けねじを締め付けることによって楔部材を移動経路に沿って移動させると、締め付け部の口径、ひいては締め付けリングの円周が変化する。楔部材と案内部は、口径方向に対して形状結合的に互いに保持され、即ち互いにアンダーカットで係合する。
【0005】
好ましい実施形態は、従属請求項及び明細書全体に見出すことができるが、特徴の表示においては必ずしも装置及び方法又は用途の間で個別に異なるものではない。いずれにしても開示は、全ての請求項のカテゴリに関して暗示的に読み取るべきである。
【0006】
楔部材と案内部の形状結合的保持は、それによって狭小化(口径の縮小)も可能となるので締め付けリングの適用性を有利に広げることができる。形状結合は、楔部材と案内部が締め付け部又は締め付けリングが狭められたときばかりでなく、それらが広げられたときにも形状結合的に互いに案内されるようにすると有利である。例示として、本発明思想が一般的に例えば、互いにフッキングしてアンダーカットを形成する2つのL字形状を用いて実現される場合には、2つの部材のうちの1つが逆方向の案内面も提供すると有利である。したがって、対応する締め付けリングは、半径方向外側(リング軸から離れる方向)および半径方向内側(リング軸に向かう方向)の両方に押圧するように利用もしくは設計することができる。アンダーカットまたは形状結合的配置は、設計および製造経費を時に増加させるが、利点の方がこれを上回る。
【0007】
楔部材と案内部との間のアンダーカットは、リング軸に垂直な切断面に見られる。「リング軸」とは、一般に、締め付けリングの円周を取るリング形状の中心軸である。締め付けリングは、例えば、少なくともリング軸を中心に扇形に回転対称とすることができる。口径方向は、リング軸に垂直であり、締め付け部の口径方向に取られた大きさ(「口径」)の変化により、リング軸を中心に取られた円周が相応して変化する。一般に、「軸方向」、「半径方向」及び「円周方向」、並びに対応する方向については、別途明記しない限り、リング軸に関与している。「内側」及び「外側」とは、別途明記しない限り、中心点または線としてのリンク軸を有する半径方向に関与している。
【0008】
楔部材が「案内部の移動経路に沿って移動可能」である限りは、これは当然、「静止」基準システムとしての案内部に関連する。逆に観者が楔部材の基準システムを参照(静止を選択)すれば、案内部はそれに対して動かされることになろう。締め付けリングの残りの部分(締め付け部は除く)に対して、案内部が静止し、楔部材が移動することが好ましい。移動経路も一般に(僅かな)曲がりを有することも考えられ、それゆえ口径方向に(若干の)ずれをもたらすだけでなく、同時に楔部材と案内部の(わずかな)相対的傾斜をもたらすことも考えられるが、直線的な移動経路が好ましい。したがって楔部材と案内部は、好ましくは、一種のリニア軸受けとして、特に好ましくはリニア滑り軸受け(これは、一般に考えられる球もしくは転がり軸受けの構成よりもはるかに安価である)の形で互いに案内されると有利である。
【0009】
一般に楔部材を有する締め付け部の利点は、一方では比較的堅牢な構造とすることができることにあり、これは、例えば、建設現場で有利であるが、一般的にはどこでも有利である。他方では移動経路と口径方向との角度を適応させることで、設計上比較的簡単に所望の「変換比」を調整することもできる。例えば、ずれ(口径方向)は小さな角度では大きくなるが、力の伝達(それに応じて発生し得る押圧力)は小さく、逆に大きな角度では逆である(後述の説明も参照のこと)。
【0010】
好ましい実施形態では、締め付けねじは、その回転軸が実質的にリング軸と平行に位置合わせされ、すなわち、それに対して10°、5°、または2°以下の傾斜をしている(この順序でより有利になる)。ここでは、両軸が互いに取る2つの角度のうち、小さい方が考慮される。リング及び回転軸は、技術的に慣例的な精度の範囲内で互いに平行であること(0°)が特に好ましい。楔部材の移動経路は、口径方向の部分とそれに垂直な、したがって締め付けねじの回転軸と平行な部分とから構成される。
【0011】
一般に、締め付けねじのこの「軸方向」の方向付けは、組立中に一方の端面からねじ止めすることができる限り有利である。発明者らは、他方で例えば、締め付けカラーの場合のように、ドライバを締め付けねじ上に半径方向又は円周方向から配置しなければならない場合には、空間的条件がしばしば制約される、すなわちアクセス性が悪いということを確認している。例示的には、締め付けリングは、例えば、壁(例えば、建造物の壁、又は家屋の壁等)から突出する管部材上に配置することができるが、それによって、締め付けリングを壁面に近接して配置する場合、ねじ締めは困難である。これは、例えば、全体的にコンパクトな構造を達成するために必要な場合があり、例えば、建造物又は地下室の壁の場合、土溝において利用可能な空間は、特に制限され得る。これを少し抽象的に言えば、アクセス可能性は、例えば、管部材及び/又は導管も軸方向に延びることになるので、(地中溝の例が示すように)いずれにしても一定の空間が利用可能でなければならないので、横方向よりも軸方向の方が良好であることがしばしばある。
【0012】
好ましい実施形態では、締め付けリングは締め付け帯を有する。これは、リング軸の周りの回転に基づいて、セクションまたはセグメントを形成し、例えば少なくとも30°、50°、70°、90°、100°または110°の角度にわたって延びることができる。締め付け帯は締め付け部または楔部材とは別に全周的に広げることもできるが、他方多数の締め付け帯又は締め付け部を備えたモジュール構造も考えられ(詳細は後述)、最大170°、150°または130°の上限を有することができる。締め付け帯は、好ましくは、平坦なストリップ形状を有することができ、すなわち、リング軸(「軸方向」)に沿って取り出され、リング軸(「半径方向」)に垂直よりも大きな範囲を有する。軸方向と半径方向の伸長比は、例えば少なくとも2:1、3:1、4:1または5:1とすることができ、可能な上限(これに関係なく)は例えば、最大100:1、80:1、60:1、40:1または20:1であり得る。最終的には、これも材料に依存するので、例えばポリアミド製の(例えば、ガラス繊維強化)プラスチック締め付け帯の場合には、より深い上限は例えば最大10:1、8:1、6:1または5:1であってよく、低い下限、例えば少なくとも1:2または1:1も考えられる(それぞれ軸方向と半径方向の伸長の比で示される)。
【0013】
好ましい実施形態では、案内部は締め付け帯の突き合わせ端に配置される。言い換えれば、締め付け帯は、周囲が締め付け部を越えることはないので、楔部材を半径方向内側に又は外側に覆わないようにできる。一般に締め付け帯と案内部は互いに多分割的に設けることができ、したがってそれぞれ別個に作られた部品として合成することができる。締め付け帯と案内部は次いで、例えば図6に示すようにねじ止め又はリベット止めすることができる。
【0014】
好ましい実施形態では、締め付け帯は、金属製、特に金属条片(「条片形状」は上述を参照)である。締め付け帯自体が案内部を形成し、このため突合せ端部で折り曲げられるようにすると有利である。一般に突合せ端部自体は、残りの締め付け帯の平面又は表面内に設けることも可能であり、例えば、軸方向に延びるビードは、突合せ端部において帯内に曲げられることが可能である。突合わせ端自体は、好ましくは、半径方向内側に曲げられるか、又は半径方向外側に曲げられるかのいずれかに曲げられる。
【0015】
締め付け帯と案内部との一体化は、構成部品の数を減らすのに役立ち、すなわち組立の複雑さを減らすことができ、これは大量生産において特に有利であり得る。対応する突合せ端の曲げは、それ自体も良くコントロールされ、製造で再現することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、案内部は、アンダーカットを形成するために楔部材内の凹部に係合する。すなわち案内部は、雄型を表し、楔部材は雌型の形状結合部材を表す。一般に本例の関連においては、雌型形状結合部材は、雄型部材もしくはその一部を口径方向に関して、また逆方向に関して囲んでおり、形状結合は、締め付け部もしくは締め付けリングが狭められたときにも広がったときにも生じる。雌型の形状結合部材はしたがって締め付けねじを回す方向に関係なく、雄型部材を案内する。
【0017】
雌型形状結合部材は、雄型またはその少なくとも一部を半径方向内側に取り囲み、同時に半径方向外側に取り囲むことが好ましく、これは、例えば組立中または荷重を受けている間に、望ましくない「跳ね上がり」を防止することができる。記載したように、楔部材は、好ましくは案内部が受け入れられる雌型形状結合部材を形成する(口径方向に関して、かつ反対方向に嵌められ、好ましくは半径方向内向きに、同時に半径方向外向きに)。
【0018】
好ましい実施形態において、案内部は、L字の形状を有し、すなわち移動経路に垂直な断面でみた場合にL字型である。この場合L字形状の一方の脚部は、他方の脚部から半径方向内側または外側に延びてアンダーカットを形成する。次いで、L字形状の他方の脚部は、好ましくはずれることなく楔部材に移行し、すなわち少なくとも技術的に可能で通常の嵌合の範囲内で、前記脚部と楔部材の半径方向内側に面する内壁面またはその半径方向外側に面する外壁面との間にずれがない。案内部は、楔部材の円周側の半径方向内側エッジ(内壁面とのずれなし)または半径方向外側エッジ(外壁面とのずれなし)で楔部材に入ることができる。
【0019】
対応する構成は、例えば半径方向内側に押圧されるように設計された締め付けリングが少なくとも大幅に平滑な内壁を持って形成され、又は半径方向外側に押圧されるように設計された締め付けリングが少なくとも大幅に平滑な外壁を持って形成されることができる限り、有利である。いずれの場合も、締め付けリングが押圧されたときに均一な力の伝達が助成され、たとえば局所的な力の増大が回避される。例えば、エラストマまたはゴムスリーブが押圧された場合、エラストマ材料の局所的な過大応力の発生を防止することができる。さらにずれのない形態は、湿気、それに応じて漏れに対する望ましくないクリープ経路を防止するのにも役立つ。
【0020】
好ましい実施形態においては、移動経路は案内部側で締め付けリングの端面と鋭角、すなわち90°未満の角度を取る。この角度は例えば最大で80°又は75°であり、可能な(それとは無関係な)下限では例えば少なくとも10°又は15°である。一般に「端面」とは、軸方向の端面を意味し、具体的には本例では、軸方向に反対側の2つの端面のうち、これに向かって楔部材が拡幅のために移動される端面を意味する。締め付け部を外側から半径方向内側に見ると、この端面と移動経路との間の角度を取ることができる2つの方法がある。本例の場合、移動経路が案内部側で前記端面と取る(これは「案内部側」を意味する)角度であって、楔部材の側に含まれる角度ではない(図5も参照のこと)。
【0021】
簡単に言えば、楔部材が配置されて案内される案内部によって円周方向に区切られた凹部は、軸方向外側に開口する。別の移動経路に沿って別の案内部上で第1の楔部材に軸方向に反対側に案内される別の楔部材を有する締め付け部の場合(詳細は後述)、2つの案内部又は締め付け帯の突合せ端には、半径方向にダブテール形状を有するか又は形成することができる。
【0022】
一般に、開口が端面に向かって狭められたり広げられたりするかにかかわらず、移動経路はリング軸に平行な軸方向に少なくとも15°以上、特に少なくとも25°又は30°の角度を有することが好ましい。有利な上限は、下限とは独立して関心がある場合もあり、開示されるべきであるが、それらが言及される順に、多くても75°、65°または60°であることが好ましい。移動経路と前記方向(それを合計すると180°になる)とが取る2つの角度のうち小さい方の角度が考慮される。
【0023】
案内部側の上述した鋭角の代わりに、移動経路は端面との鈍角を含むこともできる。この場合案内部によって区切られた凹部は、軸方向外側に広がる。この場合、締め付け部の口径又は締め付けリングの円周を小さくするために、楔部材が移動する端面を考慮する。
【0024】
一般に、締め付けねじは、好ましくは、右ねじ、すなわち右に上昇するねじを有することができる。例えば標準物として入手でき、それに応じて安価に入手できる締め付けねじを使用することができる。締め付けリングは、特に半径方向内側又は外側に押圧するように設計されている場合、締め付けねじを時計回りに回すことによって、対応する狭まり(内側に押圧)又は広がり(外側に押圧)を達成することができるようにされることが好ましい。これは、組み立て工にとって直感的に取り扱いやすいことになる。これにより差し当たり、必要に応じて左右のねじ山を持つ締め付けねじを使用することで、移動経路の向きに関係なく達成できるようになった。右ねじ付きの締め付けねじの使用が好ましいので、半径方向内側に押圧されるように設計された締め付けリングは、好ましくは、移動経路と端面(案内部側)との間に鋭角を有するようにされる。締め付ける際、楔部材は軸方向内側に移動し、案内部は楔部材の方に引っ張られ、口径が小さくなる。
【0025】
これに対し、外側に押し付けるように設計された締め付けリングの場合には、鈍角が好ましい。右ねじで締め付けねじを締める(右に回す)と楔部材は軸方向内側に移動し、案内部は楔部材に引っ張られ、口径が増大する。
【0026】
好ましい実施形態では、楔部材は、口径又は円周方向に関する二重楔形状とされる。すなわち二重楔は、一方の円周側で第1の案内部に、反対の円周側では第2の移動経路に沿った第2の案内部に案内される。これは二重楔であるため、この第二の移動経路も軸方向に対して傾いているので、口径方向の移動成分がある。これに対し一般的には、例えば、一方の円周方向側のみで軸方向に斜めに案内され、他方の円周方向では専ら軸方向に案内され、その結果軸方向の移動では口径の変化が生じない楔部材も考えられる。
【0027】
好ましい二重楔形状では、2つのそれぞれ斜めの移動経路は、口径のそれぞれの変化が加算されるように、すなわちそれらが同じ符号を有するように(増加か減少かに無関係に)、互いに相対的に方向付けられる。2つの移動経路は、好ましくは、軸方向と等しい大きさの角度を取り囲み、該移動経路は、好ましくはリング軸を含む鏡面に対して鏡面対称である。いずれにせよ二重楔自体も、好ましくはそれが案内部上を滑動するその案内面に関して、好ましくはリング軸を含む鏡面に対して、鏡面対称で構成される。いずれにせよ案内部は、好ましくは二重楔が案内されるそれらの案内面において、(リング軸を含むミラー面に関して)互いに鏡面対称に構成される。一般に、つまりどのような鏡面対称性であっても、理想的には第2の案内部とアンダーカットを有する二重楔は互いに(口径方向または逆反対に関して)相互に形状結合する。
【0028】
好ましい実施形態では、二重楔はいくつかの部分、すなわち第1および第2の二重楔部分で構成される。したがって二重楔は、特に同じ材料から一体的に形成されたモノリシック部品として形成されるのではなく、少なくとも2つ、好ましくはまさに2つの部品から形成される。第1二重楔部は第1案内部に、第2二重楔部は第2案内部に案内される。多部品構造は、例えばアセンブリを単純化することができるという点で、すなわち特に比較的大きな変換比、すなわち比較的大きく傾いている移動経路の場合に案内部への二重楔の通しを簡単にするので有利である。二重楔部は次いでそれぞれの案内部上に(それらの案内で)個別に配置し、次いで互いに結合することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、締め付けねじは、第1および第2の二重楔部を貫通する。このようにして、締め付けのためにいずれにしても設けられる締め付けねじは、有利には2回使用され、これは個々の部品の数および複雑さを減らすのに役立つ。しかしながら一般に、例えば別個のねじでねじ止め又はリベット止めすることなど、他の何らかの方法で第1及び第2の二重楔部を結合することも考えられる。
【0030】
好ましい実施形態では、締め付け部は、第1の楔部材と軸方向に対向する側に別の楔部材を有する。この楔部材は別の案内部に、同様に口径方向に一部を有する移動経路に沿って案内される。第1の楔部材の移動経路および別の楔部材の移動経路は、好ましくは口径方向に同じ大きさを有し、これにより均一に広がりまたは狭まり、したがって押圧が生じる。締め付けねじを回すことにより、2つの楔部材は互いに軸方向に向き合って、または離れる方向に動かすことができる(右ねじが好ましく、締め付けられると互いに向かって動かされる)。
【0031】
締め付けねじのねじ頭部は、一方の楔部材に当接し(いずれにしても間接的に、例えば間に当て板を入れて)、他方の楔部材には締め付けねじのねじ山が作用する。後者は、例えば楔部材に別個に置かれたナットを介して、間接的に行うことができる。ねじ山は、好ましくは前記楔部材に直接作用し、例えば対応するねじ山を楔部材に設けることができる。しかし後者は必須ではない。例えば、プラスチック製の楔部材にセルフタッピング締め付けねじを使用することができる(この場合楔部材は、時には予め組み立てられた雌ネジを有する開口部を全く有していないか、または少なくとも有していない場合がある)。
【0032】
一般に別の楔部材は、好ましくは、第1の楔部材と同様に、特に二重楔として、特に多分割的に構成される。第1およびもう一つの楔部材は、好ましくはリング軸に垂直で締め付けリングを軸方向に中央で貫通する鏡面に関連して、その移動経路に関して、鏡対称とすると有利である。前記面に関しては、一方の楔部材の案内部も、他方のものと鏡面対称であることが好ましい。第1および第2の楔部材は、いずれにしても締め付けねじ用の開口(これらは一般に機械的な後処理によって施される)を除き、互いに同一であることが好ましい。しかしながら一般に、第2の楔部材は必須ではなく、例えば締め付けねじは、締め付けリングに位置固定されているレール上に支持することもでき、これにより、細長い穴を介して円周方向に楔部材に生じるおそれのある相対的ずれを考慮することができる。
【0033】
一般に、すなわち二重楔として設計されるか、および/または別の楔部材と組み合わせて設けられるかにかかわらず、楔部材の製作は、成形工具が楔部材を(その最終形状において、いずれにしても通常の機械的後加工は別として)リリースする成形法が有利である。楔部材がプラスチック製であれば、例えばポリアミド、特にガラス繊維強化ポリアミドであれば、製作は射出成形により行うことができる。楔部材が金属からなる場合には、金属鋳造又は精密鋳造、さらにはアルミニウムダイカストが可能である。射出成形による製作の場合には、例えば、ナット(締め付けねじ用)をインサートとして成形することもできるであろう。あるいはプラスチックでも最新の製法、すなわちより複雑な幾何学的形状に近づくために重要な3Dプリントによる製法も考えられる。例えば金属については、レーザ焼結が選択できるであろう。
【0034】
好ましい実施形態では、締め付けリングは、円周上に分散された複数の締め付け部を有する。この場合全部で少なくとも2つの締め付け部が設けられるが、例えば少なくとも3つまたは少なくとも4つの締め付け部も可能である。上限としては、例えば最大10、8又は6個の締め付け部とすることができる。特にモジュール構造の場合(以下を参照)、はるかに多くの締め付け部が可能であり、上限としては、例えば最大30、25又は20の締め付け部とすることができる。それらの数にかかわらず、締め付け部は、必ずしも円周の全体に均等に分布する必要はないが、これは、できるだけ均一な押圧力の分布に関して好ましい場合がある。締め付け部の位置は、特にリング軸を中心として互いに回転対称とすることができ、好ましくは締め付け部は、互いに(それらの位置だけでなく)回転対称とすることもできる。
【0035】
多数の締め付け部を使用する場合には、良好な軸方向アクセスの上述の利点は特に効果を発揮し、一方では、全ての締め付け部、具体的には締め付けねじを同じ方向から操作することができる(円周方向/半径方向のアクセスに際してはこの限りではないであろう)。他方では、複数の締め付け部を有するこのような半径方向/円周方向のアクセスの場合には、締め付け部の1つまたは一部が、例えば隣接する壁(コーナー内)または隣接する管材等に不利に近づく確率もそれに応じて高くなる。これは、締め付けリングを回しても、他の締め付け部が好ましくない位置に持ち込まれることになるので、著しくは改善できないであろう。
【0036】
好ましい実施形態では、締め付けリングは複数の締め付けリングセグメントを有する。第1及び第2の締め付けリングセグメントは、回転方向に関して(リング軸を中心に)、すなわちアンダーカットを伴って、一緒に形状結合方式で保持される。楔部材および案内部とは対照的に、第1および第2の締め付けリングセグメントは、口径/円周を変更するために使用されず、むしろ、モジュール構造のために使用される。形状結合は、それに応じて、第1及び第2の締め付けリングセグメントが互いに全く軸方向に変位できないか、又は万一相対的変位が生じても組み立てられたセグメントの円周方向の広がりを変化させないように設けられる。
【0037】
リング軸に垂直な断面で見ると、締め付けリングセグメントは、例えばT字形状のような形で係合することができる。この場合一方の締め付けリングセグメントは、対応する円周側で雄型の形状結合部材に設計され、他方の締め付けリングセグメントは、雌型の形状結合部材として対向円周側に設計される。一般に、各締め付けリングセグメントは接続点箇所において雄型並びに雌型の形状結合部材として提供され、すなわちそれらが互いにペアで相補的であると言うことも考えられる。例えば、各セグメントが軸方向に関連して2つに分割されていれば、互いを軸方向に押すことによるアセンブリはなお可能であろう。セグメントの各々は、好ましくは、個別/モノリシックに設けられ、これは、全体的に単純な構造の観点から重要である。
【0038】
締め付けリングセグメントは、好ましくは、例えばガラス繊維強化ポリアミドのようなガラス繊維強化プラスチックのようなプラスチックで作ることができる。この場合好ましくは、プラスチックからなる楔部材及び/又は案内部を設けることもできる。しかしながら、原理的には、金属部品で作られた対応するモジュール式締め付けリングも考えられ、この締め付けリングは例えばダイカストによって、又は特により複雑な形状に関しては例えばレーザ焼結のような最新の技術によって形成することができる。これにかかわらず、第1及び第2の締め付けリングセグメントは、それぞれ接続点箇所の反対側の円周方向側を「中立」とするか又は楔部材の案内用にするように設計することができる。全体として締め付けリング全体に1つまたは複数の中立締め付けリングセグメントを設けることができ、これらのセグメントは、両円周側に向かって形状結合されるが、口径を調整する役割を果たさない。さらに締め付けリング内に1つまたは複数の締め付けリングセグメントを設けることもでき、これらのリングは、一方の円周側に傾斜した案内部を形成するが、他方の円周側には中立である。特に、モジュール式締め付けリングでは、同様に複数の締め付け部を設けることも可能である。
【0039】
また本発明は、締め付け部に関して構造が互いに同一である複数の締め付けリングのセットに関する。しかしながら、締め付けリングは、それぞれ使用される締め付け帯の円周方向にとられた円周が異なる場合がある。したがって、異なる長さの締め付け帯(上記参照)を使用することにより、構造的に同一の同じ締め付け部で種々の締め付けリングを実現することができる。このモジュール式の原理は、可変性を開き、それによって、締め付けリングの残りの部分よりも通常は複雑に構成された締め付け部は特別に適合させる必要はない。対応するセットの締め付けリングは、上述の締め付けリングセグメントと共にまとめることもでき、締め付けリングには同一の設計の締め付けリングセグメントが見出されるが、数は異なる。より多くの「中立」締め付けリングセグメントを使用して、より大きな口径の締め付けリングを作成することができる。
【0040】
また本発明は、半径方向内側または半径方向外側に押圧するための、本明細書に開示される締め付けリングの用途に関する。本発明による締め付けリングは、両方向に押圧するために設けることができるが、他方では、内側または外側の一方に押圧するために特別に設計することもできる(図示の例も参照)。締め付けリングは、好ましくは管状部材に押し付けられる、すなわちその内壁または外壁面に押し付けられる(それによってリングは、前記表面に当接する必要はないが、いずれにしても、それに接する、すなわちそれに押し付けられる)。この場合リング軸は、好ましくは管状部材の長手方向軸(それを中心にしてたとえば回転対称に)および/または導管の長手方向軸(導管の長さは長手方向軸に沿って取られる)と一致し得る。
【0041】
管状部材は、特に導管が壁又は床部材を通ってもたらされる導入部または貫通部の一部とすることができる。導管は、例えばケーブル又はメディア用管とすることができ、貫通部は壁部ブッシングとすることができ、これが建物壁用に設計されている場合、管部材は、構造的にこの建物壁に一体化することができ、例えばコンクリート固めされる。締め付けリングは、特に管部材より柔らかく、少なくとも断面的にスリーブ形状であるが、全体的に複雑な構造であることもできる本体に押し付けるために使用することができる。この締め付けリングにより(より柔らかい)スリーブは、例えば内壁面または外壁面に対して(より硬い)管部材に押し付けられる。
【0042】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、従属請求項の枠組み内の個々の特徴もまた、異なる組合せでも発明にとって不可欠であり、更に、異なる請求項のカテゴリー間で個々に区別されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の締め付けリングの斜視図である。
図2図1の締め付けリング、特にその締め付け部を半径方向外側から見た図である。
図3図1の締め付けリング、具体的にはその締め付け部を軸方向から見た図である。
図4図1の締め付けリング、具体的にはその締め付け部を、内側から半径方向外側に見た図である。
図5図2のものに類似した図における本発明による別の締め付けリングを示す。
図6図3のものに類似した図における本発明による別の締め付けリングを示す。
図7】再び図3のものに類似した図における本発明による別の締め付けリングを示す。
図8】軸方向の概略図における本発明による別の締め付けリングを示す。
図9a】本発明による別の締め付けリング又はそのセグメントを半径方向から見た図である。
図9b図9aに係る締め付けリングを軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明による締め付けリング1を斜視図で、すなわちリング軸2に対して斜めに見た状態で示す。この締め付けリング1は締め付け部3を有し、その口径方向4に取った口径は締め付けねじ5の締め付けにより変化し得る。このために締め付け部3は、案内部7a、bに沿って移動可能に案内される楔部材6を有する。以下図2も併せて説明する。楔部材6は、それぞれ移動経路20a、bに沿って各案内部7a、bに移動可能に案内される。図2から分かるように、移動経路20a、bはそれぞれ口径方向4の部分も有するので、締め付け部3の口径も楔部材6の軸方向のずれに伴って変化する。
【0045】
なお本例では、締め付けねじ5のねじ部5aを右ねじとして設けているので、締め付けねじ5を締め付ける(ねじ頭部5bで時計回りに回す)と、楔部材6が締め付けリング1の軸中心方向に移動する。この場合案内部7a、bは互いに離れる方向に押圧され、締め付けリング1の円周が大きくなる。このように、ここに示された締め付けリング1は、特に、半径方向外側に押し付けるために使用することができる。例えば締め付けリングは、ゴム又はエラストマスリーブ内に入れて、それと一緒に管部材内に配置することができる。締め付けねじ5を締め付けることによって、締め付けリング1の円周が広げられ、スリーブが管部材の内壁面に押し付けられる。
【0046】
締め付け部3は更に1つの楔部材8を有し、これも案内部9a、bに案内される。対応する移動経路は、この場合もそれぞれ締め付けねじ5のリング軸2または回転軸15に対して斜めであるが、分かりやすくするために図2には示されていない。締め付けねじ5を締め付けると、両楔部材6,8が互いに軸方向に移動し、その結果案内部7a、bおよび8a、bが口径方向4に互いに離れるように押圧され、締め付けリング1の円周が広がる。
【0047】
楔部材6、8は、それぞれいくつかの部分、すなわちそれぞれ第1の二重楔部分6a、8aおよび第2の二重楔部分6b、8bから構成される。締め付け部3を組み立てる際、二重楔部分6a、b、8a、bは、まず、それらのそれぞれの案内部7a、b、9a、b、に通される。図説のために、図3による軸方向図も参照されたい。楔部材6、8の多部分構造は、この通し作業を簡単にする。そして、楔部材6、8がそれぞれ組み立てられ、すなわち二重楔部材6a、bおよび8a、bが円周方向に互いに押し込まれる。次に、締め付けねじ5が挿入され、それが楔部材6、8ごとにそれぞれ両楔部材6a、bおよび8a、bを貫通し、それらを一緒に保持する。
【0048】
以下では、特に図3を参照する。ここでの締め付けリング1は、そのほぼ全円周上に金属製の締め付け帯30を形成する。これは具体的には、リング状に曲げられた鋼板である。締め付け帯30の突合せ端30a、bは、半径方向内側に折り曲げられており、締め付け帯30自体が案内部7a、b(又は、9a及び9bも)を形成している。
【0049】
一般に、すなわち締め付け帯30に多分割化された案内部7a,b(例えば図6も参照)の場合にも、それぞれの案内部7、9とともに楔部材6、8はそれぞれアンダーカットにより(口径方向4に対して)形状係合的に保持される。楔部材6、8は、このように締め付けリングが広げられているか(図2では締め付けリングねじ5を締め付けて、楔部材6、8を互いに向かって動かすことによって)、あるいは狭められているかにかかわらず、案内部7、9に案内される。また、楔部材6、8は、案内部7a及び7b又は9a及び9bを口径方向4に互いに引っ張ることもできる。
【0050】
図4は再度図1図3と同じ締め付けリングを示すが、内側から外側に、すなわちリング軸2から半径方向外側に見ている。ここでは、特に案内部7a、b、9a、bが締め付け帯30を曲げることにより半径方向内側に、つまり観者に向けて成形されている。図4では、締め付け帯30の突合せ端部に視線が当てられている。
【0051】
図5は締め付けリング1を示しているが、これは前述の締め付けリング1と多くの点で共通している。一般に、同一の符号は同一又はほぼ同一の機能を有する部分を示す。要約すると主な違いは、移動経路20a、bの向きにある。図5による変形例の場合には、これらはそれぞれ楔部材6、8の外側において締め付けリング1の端面51と鋭角の角度50を形成する。このように、案内部によって形成される案内は軸方向外方に延びる。図2と比較すると、そこでは角度50は鈍角であり、したがって案内は軸方向外側に広がる。
【0052】
その結果図5による変形では、楔部材6、8を互いに軸方向に上下に移動させると、案内部7aおよびb、または、9aおよびbは、口径方向4に離れて押圧されることなく縮められる。楔部材6、8を互いに向かって動かすと、締め付け部3の口径、ひいては締め付けリング1の円周が減少し、図2による実施例にまさに反対となる。移動経路の方向性に関して締め付けリング1は、右ねじで締め付けねじ5を締める(右に回す)と、広くなる(図2)か、狭くなる(図5)ように形成することができ、これらは右に回すことによって可能になる。
【0053】
図6による変形例では、締め付け帯30はそれ自体が案内部7a、bを形成していない。その代わりに案内部7a、bは、別個の要素として締め付け帯30上に配置される。案内部7a、bは、それぞれリベット60a、bで締め付け帯30に取り付けられているが、これに代えて、例えばねじ止め等も考えられる。図6による変形例における組立体では、例えば案内部7a、bが締め付け帯30に取り付ける前に、締め付け部3を予め組み立てることもできる。この場合楔部材6を2つに分割することなく、単純な装填を行うことも可能である。
【0054】
また図6による変形例は、案内部7a、bのL字形状が半径方向内側ではなく半径方向外側に向いている点で、図3によるものと異なる。従って図6による変形では、楔部材6の半径方向の内壁面は、L字形状のそれぞれの脚部に(外側を向いている脚部にではなく)滑らかに、または変位することなく、合流する。したがって、図6による締め付けリング1は、接触圧力の均一な伝達を可能にするので、内側に押し付けるのに特に適している。比較のために、図3による変形では、L字形状のそれぞれの脚部は、半径方向外側を向いている楔部材6の壁面に滑らかに合流し、このためこの締め付けリングは、半径方向外側を向くように押し付けるのに特に適している。締め付けリングが内側または外側に押されるように特別に設計されていても、逆方向にも形状結合的に一緒に保持されていれば、例えば分解/修理時に有利になることがある。
【0055】
図7による変形例では、締め付け帯30は、金属製ではなく、ガラス繊維強化ポリアミド製の射出成形プラスチックリングである。案内部7a、bは、この場合には雌型の形状結合部材として、その突合せ端部30a、bに設けられている。これに対応して、楔部材6は、断面T字形の雄型の係止要素を形成し、この係止要素は、案内部7a、bのポケットに係合し、かつ、形状結合で保持されている。ポケットは、既に射出成形中に締め付け帯30内に考慮され得る。
【0056】
一般に、楔部材6、8は、金属製とすることができ、またプラスチックから(特にガラス繊維強化ポリアミドから)射出成形することもでき、また金属製の締め付け帯と組み合わせることもできる。機能性に関しては、図7による変形例は、前述の実施例とは異なるものではなく、楔部材6および(図7においてその背面側に配置された楔部材8)は、締め付けねじ5を締め付けることによって互いに向かって動かされ、これは、移動経路(鈍角または鋭角、前述例を参照)の向きに応じて、口径を増減する。
【0057】
図8は、図1による実施例とは異なり1つの締め付け部3を有するだけでなく、合計3つの締め付け部3a、b、cを有する。これらの締め付け部はこの例では円周80に均等に配置され、その結果、接触圧力は均等に分布される。概略表示されている締め付けリングは、半径方向内側に押圧されるように設計されているが、複数の締め付け部(多数の締め付け部)を有する締め付けリング1も、上述の変形例のそれぞれで実現することができる。
【0058】
図9a、bは、モジュール形締め付けリング1またはその一部を示す。図9aは、半径方向内側を見る図を示し、図9bは、軸方向図を示す。先の実施例と同様に、この締め付けリング1も、楔部材6、8、および、対応する案内部7、9を有する締め付け部3を有する。この点に関し、特に図7に関連する説明を参照する。
【0059】
図9a、bによる締め付けリング1もモジュールで構成されており、第1の締め付けリング部90及び第2の締め付けリング部91を有している。またこれらは形状結合的に係合するが、この形状結合は、円周方向に一緒に保持する役割を果たすだけである。本実施形態では、第1の締め付けリング部90及び第2の締め付けリング部91は、互いに対して軸方向に変位させることができるが、これは、円周方向の口径を変化させるものではない。また、第3の形状結合部材92があり、この部材は、1つの円周側において、第1の締め付けリング部90と同様に(可変口径調整のためではなく)「中立」である。ただし対向する円周側では、第2の二重楔部6bは、上記説明と同様に斜めに案内される(口径調整用)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b