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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】融着接続装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020559329
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048803
(87)【国際公開番号】W WO2020122206
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018233550
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】大木 一芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴弘
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108594365(CN,A)
【文献】国際公開第2014/118869(WO,A1)
【文献】特開2017-224076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によって光ファイバの融着接続を行う融着接続部と、
現在の日時を出力するクロック部と、
前記融着接続部の動作を制御するとともに、前記クロック部から出力される現在の日時と、外部から予め入力された使用可能期間とに基づいて知得される使用残期間が0以下になった場合に前記融着接続部の動作を停止する融着制御部と、
を備え、
前記融着制御部は、前記クロック部が正常であるときに単位期間あたりの放電回数に関する情報を記録しておき、前記クロック部の異常を検知した場合、放電回数が前記単位期間あたりの放電回数に達した際に前記単位期間が経過したものとして前記使用残期間を判断する、融着接続装置。
【請求項2】
前記単位期間はN日間(Nは1以上の整数)である、請求項1に記載の融着接続装置。
【請求項3】
前記融着制御部は、日時に関する信号が前記クロック部から出力されない場合に前記クロック部を異常と判定する、請求項1または請求項2に記載の融着接続装置。
【請求項4】
前記融着制御部は、前記クロック部から出力される日時が予め記憶した日時よりも前である場合に前記クロック部を異常と判定する、請求項1または請求項2に記載の融着接続装置。
【請求項5】
前記融着制御部は、前記クロック部の異常を検知した場合、放電回数が、前記クロック部が正常であるときに記録された前記単位期間あたりの放電回数の移動平均値に達した際に、前記単位期間が経過したものとして前記使用残期間を判断する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の融着接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融着接続装置に関する。
本出願は、2018年12月13日出願の日本出願第2018-233550号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、放電によって光ファイバの融着接続を行う融着接続装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-141357号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、融着接続装置を提供する。この融着接続装置は、放電によって光ファイバの融着接続を行う融着接続部と、現在の日時を出力するクロック部と、融着接続部の動作を制御するとともに、クロック部から出力される現在の日時と、外部から予め入力された使用可能期間とに基づいて知得される使用残期間が0以下になった場合に融着接続部の動作を停止する融着制御部と、を備える。融着制御部は、クロック部が正常であるときに単位期間あたりの放電回数を記録しておき、クロック部の異常を検知した場合、放電回数が単位期間あたりの放電回数に達した際に単位期間が経過したものとして使用残期間を判断する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、一実施形態に係る融着接続装置の外観を示す斜視図であって、風防カバーが閉じている状態の外観を示す。
図2図2は、一実施形態に係る融着接続装置の外観を示す斜視図であって、風防カバーが開けられて融着接続装置の内部構造が見える状態の外観を示す。
図3図3は、融着接続装置が備える内部システムの構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、融着制御部のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図5図5は、融着制御部の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、融着制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
光ファイバの融着接続を行う融着接続装置は、工事現場等での使用を簡便にするために、持ち運びが容易なように小型に構成されている。また、構造が複雑且つ高精度であるため、一般的に高価である。それ故に、工事現場からの盗難、或いは貸与後にそのまま返却されず持ち去られるといった問題が発生している。そこで、使用開始時(或いは貸与開始時)に使用可能期間を設定しておき、該使用可能期間が経過した際に融着接続を行えなくする(ロックする)といった機能を、融着接続装置が備えることが望まれる。その場合、融着接続装置は、使用可能期間が経過したか否かを正確に判定するため、融着接続装置の電源のオン/オフにかかわらず日時をカウントし続けるリアルタイムクロック(RTC)を備える必要がある。
【0007】
しかしながら、このRTCに何らかの異常が発生して正確な日時を出力できなくなると、使用可能期間が経過したか否かを判定することが不可能となり、融着接続機能をロックすることが困難となる。また、そのことを利用して、盗難等した融着接続装置のRTCを故意に故障させて融着接続機能のロックを不能とすることも考えられる。なお、RTCの異常が検知された時点で融着接続機能をロックすることも考えられるが、それが単なるRTCの故障に起因する場合、工期内に融着接続作業ができなくなり、使用者が大きな損害を被るおそれがある。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、RTCに何らかの異常が発生した場合であっても、使用可能期間に近い期間後に融着接続機能をロックすることができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る融着接続装置は、放電によって光ファイバの融着接続を行う融着接続部と、現在の日時を出力するクロック部と、融着接続部の動作を制御するとともに、クロック部から出力される現在の日時と、外部から予め入力された使用可能期間とに基づいて知得される使用残期間が0以下になった場合に融着接続部の動作を停止する融着制御部と、を備える。融着制御部は、クロック部が正常であるときに単位期間あたりの放電回数に関する情報を記録しておき、クロック部の異常を検知した場合、放電回数が単位期間あたりの放電回数に達した際に単位期間が経過したものとして使用残期間を判断する。
【0010】
この融着接続装置では、現在の日時及び使用可能期間から知得される使用残期間が0以下になった場合に、融着制御部が融着接続部の動作を停止する。これにより、例えば使用開始時(或いは貸与開始時)に使用可能期間を設定しておき、該使用可能期間が経過した際に融着接続を行えなくする(ロックする)といった機能を実現することができる。更に、融着制御部は、クロック部が正常であるときに単位期間あたりの放電回数に関する情報を記録する。そして、クロック部の異常を検知した場合、融着制御部は、放電回数が単位期間あたりの放電回数に達した際に、単位期間が経過したものとして使用残期間を判断する。これにより、クロック部に何らかの異常が発生した場合であっても、使用可能期間に近い期間後に融着接続機能をロックすることができる。
【0011】
上記の融着接続装置において、単位期間はN日間(Nは1以上の整数)であってもよい。光ファイバの融着接続を含む工事を施工する際、昼間に作業を行って夜間に休む(或いはその逆)といったように、1日周期で作業を進めることが多い。従って、上記の単位期間をN日間といった日単位で設定することにより、単位期間あたりの放電回数が安定し、使用残期間をより正確に判断することができる。
【0012】
上記の融着接続装置において、融着制御部は、日時に関する信号がクロック部から出力されない場合にクロック部を異常と判定してもよい。これにより、クロック部の異常を適切に判定することができる。
【0013】
上記の融着接続装置において、融着制御部は、クロック部から出力される現在の日時が予め記憶した日時よりも前である場合にクロック部を異常と判定してもよい。これにより、クロック部の異常を適切に判定することができる。
【0014】
上記の融着接続装置において、融着制御部は、クロック部の異常を検知した場合、放電回数が、クロック部が正常であるときに記録された単位期間あたりの放電回数の移動平均値に達した際に、単位期間が経過したものとして使用残期間を判断してもよい。これにより、単位期間あたりの放電回数が単位期間毎に変動する場合であっても、使用残期間をより正確に判断することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る融着接続装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1及び図2は、本実施形態に係る融着接続装置10の外観を示す斜視図である。図1は風防カバーが閉じている状態の外観を示し、図2は風防カバーが開けられて融着接続装置10の内部構造が見える状態の外観を示す。融着接続装置10は、放電によって光ファイバ同士を融着接続するための装置であり、図1及び図2に示すように、箱状の筐体2を備えている。筐体2の上部には、光ファイバ同士を融着するための融着接続部3と、加熱器4とが設けられている。加熱器4は、光ファイバの融着箇所に被せられるファイバ補強スリーブを加熱して収縮させる。融着接続装置10は、モニタ5、風防カバー6、電源スイッチ7、及び接続開始スイッチ8を更に備えている。モニタ5は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示せず)によって撮像された光ファイバ同士の融着接続状況を表示する。風防カバー6は、融着接続部3への風の進入を防ぐ。電源スイッチ7は、使用者の操作に応じて融着接続装置10の電源のオン/オフを切り替える為のプッシュボタンである。接続開始スイッチ8は、使用者の操作に応じて光ファイバ同士を融着するための動作を開始させるためのプッシュボタンである。
【0017】
図2に示すように、融着接続部3は、一対のファイバ位置決め部3aと、一対の放電電極3bと、一対の光ファイバホルダ3cを載置可能なホルダ載置部と、を有している。融着対象の光ファイバそれぞれは光ファイバホルダ3cに保持固定され、当該光ファイバホルダはそれぞれホルダ載置部に載置固定される。ファイバ位置決め部3aは、光ファイバホルダ3c同士の間に配置され、光ファイバホルダ3cのそれぞれに保持された光ファイバの先端部を位置決めする。放電電極3bは、ファイバ位置決め部3a同士の間に配置され、アーク放電によって光ファイバの先端同士を融着する。融着接続装置10では、ファイバ位置決め部3aによるファイバの位置決め処理や、放電電極3bによるアーク放電の各種条件等が、融着接続装置10のメモリ等に格納されている動作ソフトウェアによって制御される。
【0018】
図3は、融着接続装置10が備える内部システムの構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、融着接続装置10は、前述した融着接続部3に加えて、クロック部11及び融着制御部12を備えている。クロック部11は、現在の日時を出力するリアルタイムクロック(RTC、ハードウェアクロックとも呼ばれる)であって、融着接続装置10の電源状態(オン/オフ)にかかわらず、電池からの電力のバックアップを受け、常に現在の日時をカウントし続ける。クロック部11は、例えば集積回路(IC)によって構成され、回路基板上に実装された独立した半導体チップとして設けられている。典型的には、クロック部11は「年」、「月」、「日」、「時」、「分」、及び「秒」の情報を電気信号として出力する。
【0019】
融着制御部12は、基本制御部13、クロック異常検知部14、使用残期間算出部15、及び使用残期間推定部16を含んで構成されている。基本制御部13は、融着接続部3の動作を制御する。すなわち、基本制御部13は、使用者による接続開始スイッチ8の操作を受けて、融着接続部3における光ファイバの先端同士の当接動作およびアーク放電を制御する。アーク放電の制御には、放電電圧の制御および放電タイミングの制御が含まれる。クロック異常検知部14は、クロック部11からの信号を入力し、クロック部11の異常を検知する。正常なクロック部11からは、現在の日時に関する信号が動作中、常に出力される。クロック異常検知部14は、日時に関する信号がクロック部11から出力されない場合に、クロック部11を異常と判定する。或いは、日時に関する信号がクロック部11から出力されるが、その日時が明らかに誤りである場合もある。クロック異常検知部14は、クロック部11から出力される日時が、予め記憶した日時(例えば製品出荷の際に設定された日時、或いは前回に電源がオフとされた日時)よりも前である場合に、クロック部11を異常と判定してもよい。なお、これらのクロック部11の異常判定方式は一例であって、クロック部11の異常を検知し得る他の様々な方式を適用できる。
【0020】
使用残期間算出部15は、クロック部11から出力される現在の日時と、外部から予め入力された使用可能期間とに基づいて、使用残期間を算出する。使用可能期間とは、使用者或いは貸与者等により予め設定される期間であって、使用可能期間を過ぎると基本制御部13が融着接続部3の制御を停止し、融着接続部3が動作不能(ロック状態)とされる。この場合、使用者が接続開始スイッチ8を操作しても、光ファイバ同士の融着は行われない。このような機能は、盗難や持ち去り後の融着接続装置10の本来的な機能を極度に制限するので、盗難や持ち去り自体を防ぐ効果が期待される。使用残期間が0以下になると、使用残期間算出部15は、融着接続部3の動作を停止するための信号を基本制御部13に出力する。或いは、使用残期間算出部15から使用残期間に関する情報が基本制御部13に提供され、その使用残期間が0以下である場合に、基本制御部13が融着接続部3の動作を停止してもよい。使用残期間は、例えば日単位で設定される。使用残期間算出部15は、算出した使用残期間を不揮発性の記憶手段(ROM等)に記録する。なお、使用残期間が0以下であるか否かの判定は、電源スイッチ7が操作されて融着接続装置10の電源がオン状態になる毎に、少なくとも1回行われる。
【0021】
使用残期間推定部16は、アーク放電により融着接続が行われた回数(放電回数)を取得する。放電回数は、使用者による接続開始スイッチ8の入力若しくは基本制御部13からの信号に基づいて、使用残期間推定部16によりカウントされる。使用残期間推定部16は、更にクロック異常検知部14からの出力信号を受け、クロック部11が正常であるときには、単位期間あたりの放電回数に関する情報(例えば単位期間あたりの放電回数そのもの、或いはその移動平均値)を不揮発性の記憶手段(ROM等)に記録する。単位期間は、例えばN日(Nは1以上の整数)であり、典型的には1日である。移動平均値は、直近の複数の単位期間にわたる移動平均値であって、単位期間が1日である場合、直近のM日(Mは2以上の整数)の移動平均値である。Mの値は例えば30である。なお、製品出荷時には、単位期間あたりの放電回数の初期値が予め記録されている。
【0022】
クロック異常検知部14がクロック部11の異常を検知した場合、使用残期間算出部15は使用残期間を算出することができなくなる。そこで、使用残期間推定部16は、次のようにして使用残期間を推定する。すなわち、クロック異常検知部14がクロック部11の異常を検知すると、使用残期間推定部16は、放電回数を取得しつつ、記憶手段に記録された、単位期間あたりの放電回数に関する情報を参照する。そして、使用残期間推定部16は、放電回数が、記録された単位期間あたりの放電回数(またはその移動平均値)に達した際に、単位期間が経過したものとして使用残期間を算出する。使用残期間が0以下になると、使用残期間推定部16は、融着接続部3の動作を停止するための信号を基本制御部13に出力する。或いは、使用残期間推定部16から使用残期間に関する情報が基本制御部13に提供され、その使用残期間が0以下である場合に、基本制御部13が融着接続部3の動作を停止してもよい。なお、使用残期間が0以下であるか否かの判定は、電源スイッチ7が操作されて融着接続装置10の電源がオン状態になる毎に、少なくとも1回行われる。
【0023】
図4は、融着制御部12のハードウェア構成の例を示すブロック図である。図4に示すように、融着制御部12は、CPU12a、RAM12b、ROM12cを含むコンピュータとして構成されてもよい。融着制御部12は、ROM12cに予め記憶されたプログラムを読み込み実行しつつ、CPU12aの制御のもとでRAM12b及びROM12cに対するデータの読み出し及び書き込みを行うことによって、融着制御部12の各機能を実現することができる。融着制御部12の動作状況は、融着接続装置10の動作中、常にモニタ5に表示される。また、融着制御部12は、接続開始スイッチ8と電気的に接続されており、接続開始スイッチ8からの電気信号を受ける。融着制御部12は、使用可能期間を外部から入力するための入力装置12dを更に有する。入力装置12dは、例えばUSB(Universal Serial Bus)といった有線の通信ポート、或いはIEEE802.11といった無線規格に対応する無線通信回路によって構成され得る。
【0024】
図5及び図6は、融着制御部12の動作を示すフローチャートである。電源スイッチ7が操作されて融着接続装置10の電源がオン状態になると、まず、融着制御部12は、クロック異常検知部14においてクロック部11に異常が生じているか否かを判断する(ステップS1)。ここで、クロック部11が正常である場合(ステップS1:NO)、使用残期間算出部15は、設定された使用可能期間をROM等の記憶手段から読み出すとともに、クロック部11から現在の日時を入力する。そして、使用残期間算出部15は、使用可能期間と現在の日時から使用残期間を算出し、使用残期間が0以下であるか否かを判断する(ステップS2)。使用残期間が0以下である場合(ステップS2:YES)、基本制御部13は融着接続部3の動作を停止する(ステップS3)。使用残期間が0より大きい場合(ステップS2:NO)、基本制御部13は融着接続部3の動作を容認する。そして、使用残期間がROM等の記憶手段に記録される(ステップS4)。
【0025】
続いて、使用残期間推定部16は、ROM等の記憶手段に記録された初回日時(前の単位期間経過後、最初に融着処理が行われた日時)から単位期間が経過したか否かを判断する(ステップS5)。初回日時から単位期間が経過した場合(ステップS5:YES)、使用残期間推定部16は、その時点での当該単位期間内の累積放電回数に基づいて、記憶手段に記録された単位期間あたりの放電回数に関する情報を更新する(ステップS6)。例えば、単位期間あたりの放電回数に関する情報が移動平均値である場合には、当該累積放電回数を最新の単位期間あたりの放電回数として算入し、移動平均値を更新する。その後、累積放電回数を初期化する(ステップS7)。なお、初回日時から単位期間が経過していない場合(ステップS5:NO)、上記のステップS6,S7は行わず、次のステップに進む。
【0026】
使用者が接続開始スイッチ8を操作してアーク放電による融着処理が行われると(ステップS8)、使用残期間推定部16は、単位期間内の累積放電回数を確認する(ステップS9)。単位期間内の累積放電回数が0である場合(ステップS9:YES)、使用残期間推定部16は、そのときの日時を初回日時としてROM等の記憶手段に記録する(ステップS10)。ステップS9ののち、或いは単位期間内の累積放電回数が1以上である場合(ステップS9:NO)、使用残期間推定部16は単位期間内の累積放電回数に1を加える(ステップS11)。その後、再びステップS8に戻る。このようなステップS8~S11は、電源スイッチ7が操作されて融着接続装置10の電源がオフ状態になるまで繰り返し行われる。
【0027】
一方、ステップS1においてクロック部11が異常である場合(ステップS1:YES)、ROM等の記憶手段から使用残期間推定部16により使用残期間が読み出され、その使用残期間が0以下であるか否かが判断される(ステップS12)。その使用残期間が0以下である場合(ステップS12:YES)、基本制御部13は融着接続部3の動作を停止する(ステップS13)。使用残期間が0より大きい場合(ステップS12:NO)、基本制御部13は融着接続部3の動作を容認する。
【0028】
使用者が接続開始スイッチ8を操作してアーク放電による融着処理が行われると(ステップS14)、使用残期間推定部16は、単位期間内の累積放電回数を確認する(ステップS15)。単位期間内の累積放電回数が、ROM等の記憶手段に記録された単位期間あたりの放電回数(またはその移動平均値)に達した場合(ステップS15:YES)、使用残期間推定部16は、使用残期間から1を差し引いた新たな使用残期間をROM等の記憶手段に記録する(ステップS16)とともに、単位期間内の累積放電回数を初期化する(ステップS17)。単位期間内の累積放電回数が、ROM等の記憶手段に記録された単位期間あたりの放電回数(またはその移動平均値)に達していない場合(ステップS15:NO)、上記のステップS16,S17は行われない。その後、再びステップS14に戻る。このようなステップS14~S17は、電源スイッチ7が操作されて融着接続装置10の電源がオフ状態になるまで繰り返し行われる。
【0029】
以上に説明した、本実施形態に係る融着接続装置10によって得られる効果について説明する。この融着接続装置10では、現在の日時及び使用可能期間から知得される使用残期間が0以下になった場合に、融着制御部12が融着接続部3の動作を停止する。これにより、例えば使用開始時(或いは貸与開始時)に使用可能期間を設定しておき、該使用可能期間が経過した際に融着接続を行えなくする(ロックする)といった機能を実現することができる。更に、融着制御部12は、クロック部11が正常であるときに単位期間あたりの放電回数に関する情報を記録する。そして、クロック部11の異常を検知した場合、融着制御部12は、放電回数が単位期間あたりの放電回数に達した際に、単位期間が経過したものとして使用残期間を判断する。これにより、クロック部11に何らかの異常が発生した場合であっても、使用可能期間に近い期間後に融着接続機能をロックすることができる。
【0030】
なお、本実施形態の方式では、使用可能期間に正確に対応するロック処理は難しいが、使用可能期間とそれほど違わない大凡の期間(例えば単位期間が1日である場合、数日程度の誤差)でもってロック処理を行うことができる。盗難や持ち去りを防ぐためには、この程度の大まかな期間設定でも充分な効果が得られる。この融着接続装置10を不法に取得しても近い将来に使用できなくなると一般に認識されていれば、盗難や持ち去りに価値を見いだせないからである。一方、クロック部11が単なる故障によって異常となった場合、設定された使用可能期間が経過する前に融着接続機能をロックすると、使用者の工期に影響するおそれがある。従って、放電回数から推定される使用残期間が0以下になってから融着接続部3の動作を停止するまでの間に猶予期間(例えば単位期間が1日である場合、数日の猶予期間)を設けてもよい。
【0031】
本実施形態のように、単位期間はN日間(Nは1以上の整数)であってもよい。光ファイバの融着接続を含む工事を施工する際、昼間に作業を行って夜間に休む(或いはその逆)といったように、1日周期で作業を進めることが多い。従って、上記の単位期間をN日間といった日単位で設定することにより、単位期間あたりの放電回数が安定し、使用残期間をより正確に判断することができる。
【0032】
本実施形態のように、融着制御部12は、日時に関する信号がクロック部11から出力されない場合にクロック部11を異常と判定してもよい。或いは、融着制御部12は、クロック部11から出力される現在の日時が予め記憶した日時よりも前である場合にクロック部11を異常と判定してもよい。これらの一方又は双方によれば、クロック部11の異常を適切に判定することができる。
【0033】
本実施形態のように、融着制御部12は、クロック部11の異常を検知した場合、放電回数が、クロック部11が正常であるときに記録された単位期間あたりの放電回数の移動平均値に達した際に、単位期間が経過したものとして使用残期間を判断してもよい。これにより、単位期間あたりの放電回数が単位期間毎に変動する場合であっても、使用残期間をより正確に判断することができる。
【0034】
以上、本実施形態に係る融着接続装置について説明したが、本発明に係る融着接続装置は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
2…筐体、3…融着接続部、3a…ファイバ位置決め部、3b…放電電極、3c…光ファイバホルダ、4…加熱器、5…モニタ、6…風防カバー、7…電源スイッチ、8…接続開始スイッチ、10…融着接続装置、11…クロック部、12…融着制御部、12a…CPU、12b…RAM、12c…ROM、12d…入力装置、13…基本制御部、14…クロック異常検知部、15…使用残期間算出部、16…使用残期間推定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6