(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】セリフ分析プログラム、セリフ分析方法、およびセリフ分析システム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/335 20190101AFI20230719BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230719BHJP
G06F 40/279 20200101ALI20230719BHJP
G06F 40/253 20200101ALI20230719BHJP
【FI】
G06F16/335
G06N20/00
G06F40/279
G06F40/253
(21)【出願番号】P 2021064199
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2022-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519174207
【氏名又は名称】モリカトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大里 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】服部 直美
(72)【発明者】
【氏名】宮本 茂則
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/201943(WO,A1)
【文献】特開2020-106910(JP,A)
【文献】特開2004-062769(JP,A)
【文献】特開2018-084868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06F 40/00-40/58
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する手順と、
既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習することで生成された学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析する手順と、
前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力する手順と、
前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する手順と、
を実行させる、セリフ分析プログラム。
【請求項2】
前記ふさわしさを分析する手順では、
前記指定キャラクターの前記新たなセリフの特徴が、前記学習モデルに学習されている前記指定キャラクターのセリフの特徴とどの程度一致するかを示す一致度を算出し、当該一致度を前記ふさわしさとして分析する、
請求項1に記載のセリフ分析プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、
前記一致度が所定値より低い場合に、前記指定キャラクター以外のキャラクターのうち、前記新たなセリフに近い特徴を有するセリフを発するキャラクターを、前記学習モデルに基づいて抽出する手順をさらに実行させる、
請求項2に記載のセリフ分析プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータに、
予め禁止された禁止語句が前記新たなセリフに含まれるか否かを判定する手順をさらに実行させる、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のセリフ分析プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータに、
前記新たなセリフの文字数が所定の文字数以内であるか否かを判定する手順をさらに実行させる、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のセリフ分析プログラム。
【請求項6】
コンピュータが、
少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する手順と、
既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習することで生成された学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析する手順と、
前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力する手順と、
前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する手順と、
を実行する、セリフ分析方法。
【請求項7】
少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する取得部と、
既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習した学習モデルを生成する学習部と、
前記学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析し、前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力
し、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する分析部と、
を備える、セリフ分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セリフがキャラクターにふさわしいか否かを分析するセリフ分析プログラム、セリフ分析方法、およびセリフ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲームやアニメーション等の作品のシナリオでは、様々なキャラクターが登場するものがある。シナリオ制作においては、キャラクターの性格、職業、性別等の特徴を反映するように、各キャラクターのセリフが決定される。
【0003】
作品の規模が大きくなると、コスト低減や製作時間の短縮のため、複数の制作者が分担してシナリオを制作することがある。この場合、例えば最初にキャラクター毎の性格付けや口調、キャラクター同士の呼び方等の制作方針を決めておき、複数の制作者が当該制作方針に基づいて、それぞれの担当する箇所のシナリオを制作する。または、すでに確定されたシナリオに追加する新規シナリオを制作することもある。
【0004】
特許文献1には、既存のゲームプログラムのセリフデータを含む要素データを記憶したデータベースに基づき、学習モデルを用いて新たなゲームプログラムを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の制作者がシナリオ制作に関わったり、後から新規シナリオを追加したりする場合、シナリオ内に存在するセリフが、各キャラクターの特徴に合致していないとゲームのプレイヤーが違和感を覚えてしまう。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術は、単に既存のゲームプログラムのセリフデータの特徴を新たなゲームプログラムに当てはめるだけであり、ゲームのプレイヤーが違和感を覚えないようにするものではなかった。
【0008】
本開示は、セリフがキャラクターにふさわしいか否かを分析するセリフ分析プログラム、セリフ分析方法、およびセリフ分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のセリフ分析プログラムは、コンピュータに、少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する手順と、既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習することで生成された学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析する手順と、前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力する手順と、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する手順と、を実行させる。
【0010】
本開示のセリフ分析方法は、コンピュータが、少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する手順と、既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習することで生成された学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析する手順と、前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力する手順と、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する手順と、を実行する。
【0011】
本開示のセリフ分析システムは、少なくとも1の指定キャラクターの新たなセリフに関する新規セリフデータを取得する取得部と、既に確定したセリフを含む前記指定キャラクターの確定セリフデータを学習用データとして用いて機械学習を行い、前記指定キャラクターのセリフの特徴を学習した学習モデルを生成する学習部と、前記学習モデル、および前記新規セリフデータを用いて、前記新たなセリフの前記指定キャラクターに対するふさわしさを分析し、前記ふさわしさについての分析結果を示す情報を出力し、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの一人称を種類ごとに集計した第1集計結果、及び/または、前記確定したセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方、および、前記新たなセリフに含まれる前記指定キャラクターの他のキャラクターの呼び方を種類ごとに集計した第2集計結果を出力する分析部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、セリフがキャラクターにふさわしいか否かを分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】セリフ分析装置の構成について説明するための図
【
図4】セリフ分析システムの確定セリフ学習処理を説明するためのフローチャート
【
図6】セリフ分析システムの新規セリフ分析処理を説明するためのフローチャート
【
図7A】分析部の分析により生成された分析データの一例を示す図
【
図7B】分析部の分析により生成された分析データの一例を示す図
【
図8A】セリフ分析に関するセリフ分析画面の例を示す図
【
図8B】セリフ分析に関するセリフ分析画面の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。また、以下の説明および参照される図面は、当業者が本開示を理解するために提供されるものであって、本開示の請求の範囲を限定するためのものではない。
【0015】
<構成>
図1は、本開示の実施の形態に係るセリフ分析システム1の構成について説明するための図である。
【0016】
図1に示すように、セリフ分析システム1は、端末装置2と、サーバ装置3と、を備える。
図1に示す例では、複数の端末装置2がネットワークNWを介してサーバ装置3と通信可能に接続されている。なお、
図1には複数の端末装置2と1台のサーバ装置3とが通信可能に接続された例が示されているが、本開示はこれに限定されず、端末装置2は1台であってもよいし、サーバ装置3が複数台であってもよい。ネットワークNWは、例えばインターネットまたは社内ネットワークである。
【0017】
端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)、ワークステーション、タブレット端末等のコンピュータである。
図2は、端末装置2の構成について説明するための図である。
【0018】
図2に示すように、端末装置2は、操作部21と、表示部22と、記憶部23と、通信部24と、制御部25と、を備える。
【0019】
操作部21は、キーボード、マウス等の入力デバイスである。なお、操作部21は、表示部22に設けられたタッチパネルで構成されてもよい。
【0020】
表示部22は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0021】
記憶部23は、各種情報を記憶する記憶デバイスである。記憶部23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等で構成される。
【0022】
通信部24は、有線通信または無線通信により、ネットワークNWを介してサーバ装置3と通信を行う通信デバイスである。
【0023】
制御部25は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成されており、記憶部23に格納された各種プログラムを読み出して実行することで、端末装置2の各種処理の制御を行う。
【0024】
端末装置2は、セリフ分析システム1のユーザが利用するコンピュータであり、ユーザから、ゲームやアニメーション等のシナリオに含まれるセリフに関するデータの入力を受け付ける。
【0025】
図3は、サーバ装置3の構成について説明するための図である。
図3に示すように、サーバ装置3は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、を備える。
【0026】
通信部31は、有線通信または無線通信により、ネットワークNWを介して端末装置2と通信を行う通信デバイスである。
【0027】
記憶部32は、各種情報を記憶する記憶デバイスである。記憶部32は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリ等で構成される。記憶部32は、セリフに関するデータベース(以下、DBと記載する)であるセリフDBを有する。また、記憶部32は、セリフに関する機械学習の学習結果であるセリフ学習モデルを記憶する。
【0028】
制御部33は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成されており、サーバ装置3の各種処理の制御を行う。制御部33は、取得部331と、登録部332と、学習部333と、分析部334と、を備える。
【0029】
取得部331は、端末装置2からセリフに関するデータを取得する。登録部332は、取得したデータをセリフDBに登録する。学習部333は、セリフDBに登録されたデータに基づき、記憶部32に記憶されたセリフ学習モデルを生成または更新する。分析部334は、端末装置2から取得した、新たなセリフに関するデータに基づき、セリフ学習モデルを用いて分析処理を行う。
【0030】
<セリフ分析システム1の全体の動作の流れ>
セリフ分析システム1の全体の動作の流れについて説明する。
【0031】
[確定セリフ学習処理]
図4は、セリフ分析システム1の確定セリフ学習処理を説明するためのフローチャートである。確定セリフ学習処理は、1つの作品、または一連の作品群の確定したシナリオにおけるセリフに基づいて、キャラクター毎のセリフの特徴を学習する処理である。なお、以下の説明において、確定したシナリオに含まれる各キャラクターのセリフを、確定セリフと記載することがある。
【0032】
まず、端末装置2の操作部21は、セリフ分析システム1のユーザの操作に基づいて、確定セリフデータの入力を受け付ける(ステップS1)。確定セリフデータとは、すでに確定したシナリオから抽出された、キャラクター毎のセリフに関するデータである。確定セリフデータは、キャラクター毎にあらかじめセリフが分けられたデータであってもよいし、シナリオ中の全キャラクターのセリフを含むデータであってもよい。確定セリフデータは、少なくとも、キャラクターに関する情報、および、セリフに関する情報を含む。キャラクターに関する情報とは、例えば、キャラクターの名前(名称)、またはキャラクター毎に割り振られた識別番号等である。
【0033】
図5は、確定セリフデータの一例を示す図である。
図5に示す確定セリフデータには、セリフ毎の識別情報である「セリフID」、キャラクター毎の識別情報である「キャラID」、キャラクターの名前である「キャラ名」、セリフの内容を示す「セリフ」が含まれる。
【0034】
なお、確定セリフデータには、さらに他の情報が含まれてもよい。また、他の情報が含まれたデータが確定セリフデータと紐付けられて、以降の処理において用いられてもよい。他の情報の例としては、シナリオに登場する固有名詞等の登録単語、シナリオにおけるNGワード、単語の特殊な読み方(ルビ)等の情報が登録された辞書データが挙げられる。
【0035】
なお、端末装置2に入力されるデータは、あらかじめシナリオから抽出されたセリフに関するデータであってもよいが、シナリオの全テキストを含むシナリオデータであってもよい。後者の場合、例えば端末装置2またはサーバ装置3が、あらかじめ記憶部23に記憶されているセリフ抽出プログラムを動作させ、シナリオデータからキャラクター毎にセリフを抽出し、確定セリフデータを生成すればよい。
【0036】
端末装置2の通信部24は、確定セリフデータを、ネットワークNWを介してサーバ装置3へ送信する(ステップS2)。
【0037】
サーバ装置3の取得部331は、通信部31を介して確定セリフデータを取得する(ステップS3)。
【0038】
サーバ装置3の登録部332は、確定セリフデータに基づき、キャラクター毎のセリフを記憶部32のセリフDBに登録する(ステップS3)。
【0039】
サーバ装置3の学習部333は、セリフDBに登録された確定セリフデータに基づいて、キャラクター毎のセリフの特徴を学習する(ステップS4)。
【0040】
学習部333による、キャラクター毎のセリフの特徴の学習は、キャラクター毎の確定セリフデータを学習用データとして用いた機械学習によって行われる。学習部333が用いる機械学習の手法は特に限定されない。例えば、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)、長・短期記憶(LSTM:long short-term memory)、汎用言語モデルBERT、等、既存のアルゴリズムが適宜採用されればよい。
【0041】
以上のような確定セリフ学習処理により、サーバ装置3の記憶部32に、学習部333による学習の結果としてのセリフ学習モデルが生成または更新される。
【0042】
[新規セリフ分析処理]
図6は、セリフ分析システム1の新規セリフ分析処理を説明するためのフローチャートである。新規セリフ分析処理は、新規に作成されたセリフが、キャラクターの特徴に合っているか否かを、セリフ学習モデルに基づいて分析する処理である。
【0043】
まず、端末装置2の操作部21は、セリフ分析システム1のユーザの操作に基づいて、新規セリフデータの入力を受け付ける(ステップS11)。新規セリフデータとは、すでに確定したセリフ群に対して、新規に追加されるセリフに関するデータである。以下の説明において、新規に追加されるセリフを新規セリフと記載する。
【0044】
新規セリフデータは、少なくとも、新規セリフに関する情報と、当該新規セリフを発すると指定された指定キャラクターを示す情報と、を含む。なお、本明細書では、新規セリフを発すると設定されたキャラクターを、指定キャラクターと記載する。
【0045】
端末装置2の通信部24は、新規セリフデータを、通信部24により、ネットワークNWを介してサーバ装置3へ送信する(ステップS12)。
【0046】
サーバ装置3の分析部334は、セリフ学習モデルを用いて、受信した新規セリフデータの分析を行い、分析結果を示す分析データを出力する(ステップS13)。分析部334による分析の詳細については後述する。
【0047】
その後、サーバ装置3の通信部31は、分析結果を示す分析データを端末装置2に対して送信する(ステップS14)。これにより、セリフ分析システム1のユーザは、端末装置2の表示部22を介して分析結果を参照したり、分析結果に基づいてセリフの修正等を行ったりすることができる。
【0048】
[分析部334による分析の詳細]
以下では、サーバ装置3の分析部334による分析の詳細について説明する。
図7Aおよび
図7Bは、分析部334の分析により生成された分析データの一例を示す図である。
図7Aおよび
図7Bに示すように、分析データは、一致度、似た口調のキャラクター候補、一人称および他のキャラクターの呼び方、登録単語、NGワード、文字数チェック等の項目を含む。
【0049】
(1)一致度の算出
分析部334は、新規セリフデータに含まれる新規セリフ毎に、当該新規セリフにおけるキャラクターの口調が、確定セリフデータにおける当該キャラクターの口調と一致している度合い(一致度)を、学習モデルに基づいて算出し、分析結果を示す分析データとして出力する。言い換えると、一致度は、キャラクターの口調の特徴に対する新規セリフのふさわしさを表すパラメータである。分析部334は、指定キャラクターについてのみ一致度の算出を行ってもよいし、全てのキャラクターについて一致度の算出を行ってもよい。
【0050】
本明細書において、口調とは、キャラクター毎の、ものの言い方、言葉の使い方、語尾等に表れた特徴を意味する。
【0051】
一致度は、例えばパーセンテージで表される。
図7Aに示す例では、キャラ名「ユーシャー」の新規セリフの口調は、確定セリフデータに基づくキャラ名「ユーシャー」の口調との一致度が29.9%であると示されている。一致度を算出することにより、新規セリフが指定キャラクターの口調に合っているか否かを客観的に示す分析結果を得ることができる。
【0052】
(2)似た口調のキャラクター候補の抽出
上記説明した一致度の算出では、全てのキャラクターについて新規セリフに関する一致度が算出される。ある新規セリフにおいて、指定キャラクターの口調との一致度よりも、他のキャラクターの口調との一致度の方が高い場合、分析部334は、より一致度が高い口調のキャラクターを抽出し、抽出したキャラクターを分析データとして出力する。
【0053】
図7Aに示す例では、キャラ名「ユーシャー」の新規セリフの口調が、キャラ名「ブリン・ホブゴ」の口調に54.0%の確率で似ていることが示されている。このパーセンテージは、学習モデルに基づいて算出された、キャラ名「ユーシャー」の新規セリフの特徴量と、キャラ名「ブリン・ホブゴ」の確定セリフの特徴量との類似度に基づいて算出されたものである。
【0054】
これにより、ユーザは、新規セリフを発するべきキャラクターが指定キャラクターではなく、他のキャラクターである可能性を認識することができる。
【0055】
なお、似たキャラクターの抽出結果は、指定キャラクターの新規セリフと確定セリフデータにおける当該キャラクターの口調との一致度よりも、指定キャラクターの新規セリフと確定セリフデータにおける他のキャラクターの口調との一致度の方が高い場合に表示される。一致度が高い他のキャラクターが複数ある場合、一致度が最も高いキャラクターが抽出結果として表示されればよい。
図7Aでは、キャラ名「ユーシャー」の新規セリフと各キャラクターの確定セリフデータとの一致度の中で、キャラ名「ユーシャー」の新規セリフとキャラ名「ブリン・ホブゴ」の確定セリフデータとの一致度(54.0%)が最も高い場合の例が示されている。
【0056】
(3)一人称、他のキャラクターの呼び方の分析
分析部334は、新規セリフ毎に、当該新規セリフに含まれる一人称、および、他のキャラクターを呼ぶときの呼び方が、確定セリフデータにおける指定キャラクターの一人称、および、他のキャラクターを呼ぶときの呼び方とそれぞれ一致するか否かを判定し、分析結果として出力する。
【0057】
これにより、分析結果を参照したユーザは、新規セリフに含まれる一人称または他のキャラクターの呼び方が、指定キャラクターに合っているか否かを客観的に判断することができる。
【0058】
一人称とは、キャラクターが自分自身を呼ぶときの呼び方である。一人称の例としては、例えば「俺」、「オレ」、「僕」、「ボク」、「私」、「わたし」、「ワタシ」、「あたし」、「うち」等が挙げられる。
【0059】
また、他のキャラクターを呼ぶときの呼び方の例としては、「○○さん(○○はキャラクター名)」、「○○君」、「キミ」、「お前」、「貴様」等が挙げられる。
【0060】
分析部334は、確定セリフに含まれる各キャラクターの一人称、および、新規セリフに含まれる各キャラクターの一人称を集計して得られた第1集計結果を分析結果として出力する。
【0061】
図7Aに示す例では、新規セリフにおけるキャラ名「ブリン・ホブゴ」の一人称が「俺」であること、確定セリフデータにおけるキャラ名「ブリン・ホブゴ」の一人称は全て「おれ」であり、「おれ」が40回中の40回である。この場合、分析部334は、
図7Aに示すように、第1集計結果「俺:0/40回」、「おれ:40/40回」を分析結果として出力する。これを参照したユーザは、当該新規セリフにおける一人称「俺」が誤りである可能性が高いことを客観的に判断することができる。
【0062】
ただし、キャラクターの一人称や、他のキャラクターの呼び方は場面によって揺れがあることがある。例えば、ある場面では一人称「オレ」を使用するキャラクターが、他の場面では一人称「僕」を使用する場合がある。このような場合、分析部334は、確定セリフデータにおける指定キャラクターの一人称を、全種類抽出して第1集計結果を分析結果として出力する。例えば、あるキャラクターについて、確定セリフデータにおいて一人称「オレ」が30回、一人称「僕」が20回登場していたとすると、分析部334は、第1集計結果「オレ:30/50」、「僕:20/50」を分析結果として出力する。これにより、ユーザは、指定キャラクターの一人称に揺れがあることを認識することができるとともに、新規セリフにおける一人称を再度確認する必要があることを認識することができる。
【0063】
また、分析部334は、指定キャラクターが他のキャラクターを呼ぶときの呼び方についても、確定セリフに含まれる呼び方と新規セリフに含まれる呼び方を集計して得られた第2集計結果を分析結果として出力する。
【0064】
図7Aに示す例では、キャラ名「ユーシャー」というキャラクターが、新規セリフにおいて、キャラ名「キャッティ」という他のキャラクターを呼ぶときの呼び方は「キャッティさん」である。これに対して、キャラ名「ユーシャー」というキャラクターが、確定セリフにおいてキャラ名「キャッティ」というキャラクターを呼ぶときの呼び方は、64回中63回が「キャッティくん」であり、64回中1回が「キャッティちゃん」である。この場合、分析部334は、
図7Aに示すように、第2集計結果「キャッティさん:0/64回」、「キャッティくん:63/64回」、「キャッティちゃん:1/64回」を分析結果として出力している。これにより、ユーザは、指定キャラクターによる他のキャラクターの呼び方に揺れがあることを認識することができるとともに、新規セリフにおける呼び方を再度確認する必要があることを認識することができる。
【0065】
(4)あらかじめ登録された用語の表記ミスチェック
上述したように、確定セリフデータ、または、確定セリフデータに紐付けられたデータには、表記を間違えやすい単語や固有名詞等が、登録単語として記憶されている。
図7Bに示す例では、キャラ名「ララ・ソーサー」の新規セリフに含まれる単語「アボガド」が、登録単語「アボカド」の表記ミスであるとして抽出されている。このような構成により、あらかじめ表記を間違えやすい単語を登録しておき、それが新規セリフに含まれているか否かを検出することにより、高精度で表記ミスを見つけ出すことができる。
【0066】
また、登録単語には、表記を間違えやすい単語や固有名詞だけでなく、種々のものが含まれる。例えば、シナリオによっては、一般的な用語とは表記が異なる特殊な用語がセリフ中に登場することがある。特殊な用語の例としては、人名や地名等の固有名詞が挙げられる。例えば歴史上実在した人物と同姓同名の架空の人物の名前をカタカナで表記したり、実在の地名と同じ架空の地名を同じ読み方の別の漢字で表記したり、等が考えられる。
【0067】
このような特殊な用語があらかじめユーザによってセリフ分析システム1に登録されている場合、分析部334は、新規セリフに特殊な用語が含まれているか否か、および、含まれている場合にあらかじめ登録された表記と合っているか否か、を判定し、分析結果として出力する。これにより、ユーザは、新規セリフ中に特殊な用語が正しく表記されているか否かを判断することができる。
【0068】
(5)NGワードの有無チェック
分析部334は、あらかじめ登録されたNGワード(本開示の禁止語句の一例)、すなわちセリフ中に登場すべきでない用語が新規セリフに含まれるか否かをチェックし、その有無を分析結果として出力する。NGワードには、例えば放送禁止用語や倫理上好ましくない用語の他、キャラクターの性格上、言わせたくない用語等が含まれる。すなわち、NGワードはキャラクター毎にあらかじめ登録されうる。
【0069】
図7Bに示す例では、キャラ名「キャッティ」の新規セリフに含まれる単語「イカサマ」が、NGワードとして抽出されている。
【0070】
これにより、ユーザは、キャラクターが発するはずがない用語が新規セリフ中に含まれるか否かを容易に判断することができる。
【0071】
(6)文字数チェック
分析部334は、新規セリフの文字数があらかじめ設定された文字数内に収まっているか否かを判定し、分析結果として出力する。例えばゲームの場合、セリフがあらかじめ決められた大きさのウインドウ内に表示されることがある。このような場合には、ウインドウ内に表示できる文字数をユーザがあらかじめ設定し、分析部334は、新規セリフがこの文字数以内であるか否かを判定する。
【0072】
図7Bに示す例では、ウインドウの大きさが3通り(30文字×2行、42文字×3行、および50文字×4行)想定されており、このウインドウ内に収まらないと判断された新規セリフには「×」が表示されている。これにより、ユーザは、新規セリフの文字数がウインドウ内に収まるか否かを判断することができる。
【0073】
[分析結果の表示例]
次に、端末装置2における表示部22の表示例について説明する。
【0074】
図8Aおよび
図8Bは、新規セリフ分析に関するセリフ分析画面100の例を示す図である。
図8Aは、ユーザによる新規セリフ分析処理の開始操作を待ち受ける状態におけるセリフ分析画面100を示しており、
図8Bは、新規セリフ分析処理の結果を表示した状態におけるセリフ分析画面100を示している。
【0075】
図8Aに示すように、新規セリフ分析処理の開始操作を待ち受ける状態では、セリフ分析画面100は、キャラクター名を入力する欄101と、新規セリフを入力する欄102と、開始ボタン103と、を有する。ユーザは、キャラクター名を欄101に入力またはプルダウンメニューから選択し、欄102に新規セリフを入力して、開始ボタン103を操作する。これにより、上述した新規セリフ分析処理が開始される。
【0076】
図8Bに示すように、サーバ装置3における新規セリフ分析処理が完了し、端末装置2が分析データを受信すると、表示部22に表示されるセリフ分析画面100には、分析結果欄104が追加される。分析結果欄104には、新規セリフ分析処理における分析結果が表示される。
【0077】
また、
図9Aおよび
図9Bは、キャラクター毎のセリフ分析結果のうち、キャラクターの口調、すなわち一人称および他のキャラクターの呼び方、語尾等に関する情報を表示させるための口調情報画面200の例を示す図である。
図9Aは、ユーザによる口調情報を表示させる操作を待ち受ける状態における口調情報画面200を示しており、
図9Bは、口調情報を表示した状態における口調情報画面200を示している。
【0078】
図9Aに示すように、口調情報を表示させる操作を待ち受ける状態では、口調情報画面200は、キャラクター名を入力またはプロダウンメニューから選択する欄201を有する。
【0079】
ユーザは、キャラクター名を欄201に入力またはプルダウンメニューから選択すると、
図9Bに示すように口調情報画面200の表示が切り替わる。
図9Bに示すように、口調情報を表示した状態では、口調情報画面200は、分析結果欄202を有する。分析結果欄202には、口調に関する項目の分析結果が表示される。
【0080】
図10は、キャラクター毎の一人称および他のキャラクターの呼び方を示す情報を表示させるための一人称・呼び方表示画面300の例を示す図である。
図10に示すように、一人称・呼び方表示画面300は、一人称、他のキャラクターの呼び方をマトリクスで示す画面である。
【0081】
なお、
図8A,B、
図9A,B、および
図10に例示した端末装置2の表示部に表示される各画面は一例であり、本開示はこれに限定されない。各画面の表示内容は、よりユーザの使い勝手がよいように、表示する分析結果の項目をユーザが適宜設定できるようにしてもよい。また、これらの画面は、ユーザの操作に応じて、端末装置2が生成してもよいし、サーバ装置3が生成して端末装置2に送信してもよい。
【0082】
以上、本発明に係る実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、上述したセリフ分析システム1の端末装置2またはサーバ装置3の各機能は、コンピュータプログラムにより実現され得る。
【0083】
端末装置2またはサーバ装置3の各機能を実現するコンピュータは、キーボードやマウス、タッチパッド等の入力装置、ディスプレイやスピーカ等の出力装置、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体から情報を読み取る読取装置、ネットワークを介して通信を行うネットワークカード等を備え、各部はバスにより接続される。
【0084】
そして、読取装置は、上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒
体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。あるいは、ネットワークカードが、ネットワークに接続されたサーバ装置と通信を行い、サーバ装置からダウンロードした上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記憶装置に記憶させる。
【0085】
そして、CPUが、記憶装置に記憶されたプログラムをRAMにコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、上記各装置の機能が実現される。
【0086】
なお、上述した実施の形態では、
図1に示すように、セリフ分析システム1が互いに独立した装置である端末装置2とサーバ装置3とを有する場合について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、例えばユーザが操作する操作部と、分析結果を表示する表示部と、セリフデータベースおよび学習結果データベースを記憶する記憶部と、取得部、登録部、学習部および分析部を含む制御部と、を1つのセリフ分析装置が備えてもよいし、複数の装置が連携してこれらの各部の機能を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、シナリオに追加するセリフに関する分析を行うセリフ分析システムに有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 セリフ分析システム
2 端末装置
21 操作部
22 表示部
23 記憶部
24 通信部
25 制御部
3 サーバ装置
31 通信部
32 記憶部
33 制御部
331 取得部
332 登録部
333 学習部
334 分析部