(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】可動透水性杭付き水制とその稼働方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/02 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
E02B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2022523667
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2021078635
(87)【国際公開番号】W WO2022016868
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202010984671.1
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】515313826
【氏名又は名称】河海大学
【氏名又は名称原語表記】Hohai University
【住所又は居所原語表記】No.1 Xikang Road, Gulou, Nanjing, Jiangsu China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】戴 会超
(72)【発明者】
【氏名】毛 勁喬
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ハン▼▲メイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 軼青
(72)【発明者】
【氏名】戴 杰
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109778774(CN,A)
【文献】特開平06-134078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軌道(2)と複数の
移動軌道(3)と複数の可動透水性杭(1)と圧力センサ(11)と流速計(12)と制御プラットフォーム(4)とを備え、各
移動軌道(3)の一端は、前記固定軌道(2)の下流面の片側に摺動接続され、前記固定軌道(2)の伸長方向に沿って相対的に移動され;
前記複数の可動透水性杭(1)は前記固定軌道(2)及び前記複数の
移動軌道(3)に設けられ;
前記圧力センサ(11)と前記流速計(12)は、各可動透水性杭(1)の外側壁の各監視測定点に設けられてそれぞれ各監視測定点の受けた水圧変化及びその周囲の水流速度変化を監視測定するのに用いられ;
前記複数の移動軌道(3)と前記複数の可動透水性杭(1)と各圧力センサ(11)と各流速計(12)は、それぞれ前記制御プラットフォーム(4)に通信接続され、前記制御プラットフォーム(4)は、各監視測定点における水流速度及び水制圧力の両方が対応の流速閾値及び圧力閾値よりも低くなり、水制の透水係数を範囲内に設定するように、各圧力センサ(11)と各流速計(12)からの監視測定データを分析し計算し、各移動軌道(3)と各可動透水性杭(1)の位置を調整する、
ことを特徴とする可動透水性杭付き水制。
【請求項2】
各可動透水性杭(1)は中空円筒を有し、前記中空円筒には、その上流面に孔径が上から下まで順次増大する上流面透水孔(14)が設けられ、その下流面に孔径が上から下まで順次減少する下流面透水孔(15)が設けられ、各上流面透水孔(14)と各下流面透水孔(15)は前記中空円筒の中空部までに貫通しており、前記上流面透水孔(14)と前記下流面透水孔(15)は垂直方向に沿って完全に食い違って分布する、
ことを特徴とする請求項1に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項3】
前記固定軌道(2)及び前記複数の移動軌道(3)の上面にはそれぞれ平行に敷設されている2本以上の杭滑り溝(21)が設けられ、各杭滑り溝(21)の両側には歯形溝(2101)が設けられ;
各可動透水性杭(1)の底部には、2列以上の杭ローラー組が設けられ、各杭ローラー組は、1本の杭滑り溝(21)に対応し、1つ以上の杭ローラーユニットを有し、各杭ローラーユニットは、接続部材と杭ローラー(61)と電磁組(6301)とを有し、前記接続部材の上部は、前記可動透水性杭(1)の内部に埋め込まれ、その中部が中空接続ブロック(6203)であり、その底部の両端が下向きに伸びて接続ピース(6202)を形成し、2つの接続ピース(6202)は、接続棒(6201)で互いに接続され合い、前記接続棒(6201)は、前記杭ローラー(61)の中心を通り、杭固定クランプ(63)が前記接続棒(6201)に巻きつけられ、前記電磁組(6301)は、前記接続部材の前記中空接続ブロック(6203)の内部に設けられ、前記杭ローラー(61)と前記電磁組(6301)のそれぞれは、前記制御プラットフォーム(4)に通信接続されて前記制御プラットフォーム(4)の支配下で転がり、前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行い;
前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行わない場合、前記杭固定クランプ(63)は、重力の作用下で所在の軌道の前記歯形溝(2101)に入り込み、前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行う場合、前記杭固定クランプ(63)は、前記歯形溝(2101)から離れる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項4】
前記杭固定クランプ(63)は2枚のU字型曲げ鉄板(6302)を有し、毎枚のU字型曲げ鉄板(6302)の両端がそれぞれ接続棒(6201)に巻きつけられ、前記接続棒(6201)の周囲を回転でき、前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行わない場合、前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)は重力の作用下で反対方向に沿って所在の軌道の前記歯形溝(2101)に入り込む、
ことを特徴とする請求項3に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項5】
毎枚のU字型曲げ鉄板(6302)の2つの直線端部における側面は扇形である、
ことを特徴とする請求項4に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項6】
前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)は、伸縮式チェーン網(6303)で接続され合い、前記伸縮式チェーン網(6303)は弾性耐摩耗性材料からなり、前記電磁組(6301)が前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)に対して磁気吸着を行う場合、前記伸縮式チェーン網(6303)は収縮状態にあり、前記電磁組(6301)が前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)に対して磁気吸着を行わない場合、前記伸縮式チェーン網(6303)の両端が伸びて広がり、前記杭ローラー(61)を覆う、
ことを特徴とする請求項4に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項7】
前記固定軌道(2)は不規則な曲線形軌道、又は多段直線形のサブ軌道によって接合された折れ線形軌道である、
ことを特徴とする請求項1に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項8】
前記固定軌道(2)の下面には川床に沈められた1又は複数の四面中空角錐体(22)が設けられ、前記四面中空角錐体(22)の四辺形底面は固定軌道(2)の下面に入り込み、その外枠が金属線で形成され、各中空面の辺縁にも複数の金属線が横切って巻き付き、上記複数の四面中空角錐体(22)は、対応の固定軌道の縁及び長端の中心軸線に沿って3本の直線に配置され、隣接する2本の直線に位置する四面中空角錐が交互に食い違って分布する、
ことを特徴とする請求項1に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項9】
前記固定軌道(2)の下流面の片側には溝(2201)が設けられ、前記溝(2201)には可動軌道滑り溝(2202)が設けられ、前記固定軌道(2)に接続された各
移動軌道(3)の一端には移動ブロック(33)が設けられ、前記固定軌道から離れた一端には可動軌道ローラー(31)が設けられ、前記移動ブロック(33)は、前記溝(2201)の内部における前記可動軌道滑り溝(2202)に入り込み、前記可動軌道ローラー(31)は、前記制御プラットフォーム(4)に通信接続され、前記制御プラットフォームの支配下で河床に固定された付帯凸状単軌道(32)に沿って転がることができることにより、前記移動ブロック(33)を移動させるように駆動して移動軌道(3)に対応にする位置を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の可動透水性杭付き水制。
【請求項10】
其々の経年又は毎年の河川のデータ結果に基づいて統計分析を行い、前記可動透水性杭の透水係数範囲を設定し、前記複数の可動透水性杭(1)及び前記複数の移動軌道(3)の初期位置を配置し、前記制御プラットフォーム(4)は、前記初期位置に応じて配置され、前記複数の可動透水性杭と前記複数の
移動軌道
(3)を制御・調整して、初期状態にある可動透水性杭付き水制を形成するというステップS1と;
各流速計(12)は、前記水制の監視測定点において縦方向流速u
x及び横方向流速u
yを含む水流速度を実時間監視測定し、各流速計のサンプル間隔期間をΔt、監視測定期間をT、監視測定期間Tの縦方向平均流速値をU
x、横方向平均流速値をU
yと示し、各流速計(12)は、監視測定データとしてU
xとU
yを前記制御プラットフォームに送信し、各圧力センサ(11)は、静水圧P
1と動的水圧P
2とを含める前記水制の監視測定点の受けた圧力を実時間監視測定し、各圧力センサのサンプル間隔期間もΔt、監視測定期間もTであり、監視測定期間Tの静水圧と動的水圧の合計の平均値をPと示し、各圧力センサ(11)は、監視測定データとしてPを前記制御プラットフォーム(4)に送信するというステップS2と;
前記制御プラットフォーム(4)は、次の[数1]式により各圧力センサ(11)及び各流量計(12)からの実時間監視測定データに基づいて可動透水性杭の実時間透水係数を計算するというステップS3と;
前記制御プラットフォーム(4)は、実時間透水係数と各流速計(12)の実時間監視測定データと各圧力センサ(11)の実時間監視測定データに基づいて、前記複数の可動透水性杭(1)と前記複数の
移動軌道(3)の位置配置を調整するステップであって、
目下の監視測定期間中の各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が既定閾値より小さくなるかどうかを判断することと、
両方は既定閾値より小さくなり、実時間透水係数が透水係数範囲内に入る場合、透水杭間の間隔を維持し、つまり、水制の透水係数は水制の安定性を満たし、水流に対する良好な反応メカニズムを備えることと、
目下の監視測定期間中に1つ以上の監視測定点において水流速度U又は水制圧力Pが既定閾値よりも大きくなって水制の安定性に不利である場合、各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなり、且つ模擬により算出された透水係数が前記透水係数範囲に入るまで、対応の監視測定点における可動透水性杭(1)の間隔を徐々に大きくする模擬を行い、最終的な模擬結果に応じて調整を行い;各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなるが、水制の透水係数が透水係数範囲を超えている場合、前記制御プラットフォーム(4)は、各
移動軌道(3)及びその上の各可動透水性杭(1)の位置を調整することにより、各
移動軌道(3)間の距離を縮め、各
移動軌道(3)上の可動透水性杭(1)を前記固定軌道(2)に向かって移動させて2つの軌道上の透水性杭(1)の間隔を減少させるか、水制内の可動透水性杭(1)の数目を増やすかという方式で、水制全体を密集させるようにして透水係数を減少させることとを、
具体的に含むというステップS4と;
を備える、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の可動透水性杭付き水制の稼働方法。
【数1】
式中、aは水制の透水係数であり、K
aはモデル試験とプロトタイプ観測により決められる必要がある補正誤差関数であり、ΣL
iは透水性杭間の距離合計であり、Uは各流速計に集められたデータから計算された各監視測定期間の各監視測定点の平均水流速度であり、Pは各圧力センサに集められたデータから計算された各監視測定期間の静水圧と動的水圧の合計の平均値であり、D
1は水制の全長であり、θは透水性杭の透水係数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川工事の技術分野に属し、特に、可動透水性杭付き水制とその稼働方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水制は、河川修復に広く用いられている河川工事構造物であり、その一端を堤防に接続し、片端が川の奥深くにあり、「T」字型を示す。自然河川には渇水期の水深不足や危険な水流流況や浅瀬の危険密集等の航行障害が常に存在し、また海岸浸食が頻繁に発生するため、水制などの河川工事構造物は、潅流の直接浸食による河岸の洗掘破損を軽減し、水流を収束し砂を除去し、水路を改善し、河川を修復し、水生態系の多様性を維持するために重要な役割を果たす。
【0003】
時代の発展と水制周辺の流れ場に対する等の研究の進展に伴い、水制を徐々に浸透性水制と伝統的な水制に分けることとなる。伝統的な水制は、主に固定された、連続、不透水の重力式水制であり、堤体周辺の水流構造が複雑であり、堤体の大部分は、単一の縦断斜面であり、河岸への適応性が低く、一度築き上げられると解体しにくくなる。長期間の水流浸食により、堤頭部を洗掘し、基礎を空洞にしやすくなり、堤体が局所的な的に不安定になるため、水制に対する日常の保守サービスは、多くて重くなり、経済的利益及び工学的効果を減少させる。
【0004】
伝統的な水制と比較して、浸透性水制は堤体に対する水流の浸食を低減し、生態学的要因を考慮するため、水生生物と自然のバンク傾斜との分離をある程度まで低減し、より優れた生態学的保護機能を備える。しかし、年内に河川環境が大きく変化する場合、水制は、その長さが一定であり、その透水係数が一定範囲にあるため、その運用に普遍性がなく、自己適応調整能力が不足してその長期使用に不利である。また、実際の工事では、河川修復の効果を有効的に高めるために、単一の水制を水制群に置き換えるが、水制群には水制間の逆流区域が固定されており、その調整能力が単一の水制と同様に制限されている。
【0005】
CN106677121Bなどの既存の特許技術では、海岸浸食を防止するための可動透水性水制構造には、間隔で配置された数列の中空井筒を組み合わせた水制を用い、海岸浸食防止効果を高めることに加えて、工事量を減らすことができるが、沿岸の流量変化に対して迅速な自己適応調整及び反応が適時にできるメカニズムをまだ備えない。CN109853465A(水位に応じて高さを自動的に調整できる自動昇降式水制)は、水位変化に応じて水制高度の自動的な調整を達成し、水制基礎の保護を強めたが、水制は、長期間運転しても、洗掘や浸食によって引き起こされた基礎の空洞化や堤体の不安定性などの問題を回避することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠陥を克服するために、複雑な河川環境で用いられ、制御により形態及び透水係数を変えることができる可動透水性杭付き水制を提供して堤体の安定した配置を強めることである。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、河川の流速変化と水制の受けた圧力変化に応じて、可動透水性杭付き水制を制御して周囲環境変化に適応する形態及び透水係数を形成するように可動透水性杭付き水制の稼働方法を提供することにより、潅流の直接浸食による河岸の洗掘破損を軽減し、可動透水性杭付き水制自体の保護効果と安定性を改善し、河川の航行、洪水制御及び生態学的保護の要件をより適切に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
技術方案:前記目的を実現する為に、本発明は、固定軌道と複数の可動軌道と複数の可動透水性杭と圧力センサと流速計と制御プラットフォームとを備え、各可動軌道の一端は、前記固定軌道の下流面の片側に摺動接続され、前記固定軌道の伸長方向に沿って相対的に移動され;前記複数の可動透水性杭は前記固定軌道及び前記複数の可動軌道に設けられ;前記圧力センサと前記流速計は、各可動透水性杭の外側壁の各監視測定点に設けられてそれぞれ各監視測定点の受けた水圧変化及びその周囲の水流速度変化を監視測定するのに用いられ;前記複数の移動軌道と前記複数の可動透水性杭と各圧力センサと各流速計は、それぞれ前記制御プラットフォームに通信接続され、前記制御プラットフォームは、各監視測定点における水流速度及び水制圧力の両方が対応の流速閾値及び圧力閾値よりも低くなり、水制の透水係数を範囲内に設定するように、各圧力センサと各流速計からの監視測定データを分析し計算し、各移動軌道と各可動透水性杭の位置を調整する可動透水性杭付き水制を提供する。
【0009】
好ましくは、各可動透水性杭は中空円筒を有し、前記中空円筒には、その上流面に孔径が上から下まで順次増大する上流面透水孔が設けられ、その下流面に孔径が上から下まで順次減少する下流面透水孔が設けられ、各上流面透水孔と各下流面透水孔は前記中空円筒の中空部までに貫通しており、前記上流面透水孔と前記下流面透水孔は垂直方向に沿って完全に食い違って分布する。
【0010】
好ましくは、前記固定軌道及び前記複数の移動軌道の上面にはそれぞれ平行に敷設されている2本以上の杭滑り溝が設けられ、各杭滑り溝の両側には歯形溝が設けられ;各可動透水性杭の底部には、2列以上の杭ローラー組が設けられ、各杭ローラー組は、1本の杭滑り溝に対応し、1つ以上の杭ローラーユニットを有し、各杭ローラーユニットは、接続部材と杭ローラーと電磁組とを有し、前記接続部材の上部は、前記可動透水性杭の内部に埋め込まれ、その中部が中空接続ブロックであり、その底部の両端が下向きに伸びて接続ピースを形成し、2つの接続ピースは、接続棒で互いに接続され合い、前記接続棒は、前記杭ローラーの中心を通り、杭固定クランプが前記接続棒に巻きつけられ、前記電磁組は、前記接続部材の前記中空接続ブロックの内部に設けられ、前記杭ローラーと前記電磁組のそれぞれは、前記制御プラットフォームに通信接続されて前記制御プラットフォームの支配下で転がり、前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行い;前記電磁組が前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行わない場合、前記杭固定クランプは、重力の作用下で所在の軌道の前記歯形溝に入り込み、前記電磁組が前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行う場合、前記杭固定クランプは、前記歯形溝から離れる。
【0011】
好ましくは、前記杭固定クランプは2枚のU字型曲げ鉄板を有し、毎枚のU字型曲げ鉄板の両端がそれぞれ接続棒に巻きつけられ、前記接続棒の周囲を回転でき、前記電磁組が前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行わない場合、前記2枚のU字型曲げ鉄板は重力の作用下で反対方向に沿って所在の軌道の前記歯形溝に入り込む。
【0012】
好ましくは、毎枚のU字型曲げ鉄板の2つの直線端部における側面は扇形である。
【0013】
好ましくは、前記2枚のU字型曲げ鉄板は、伸縮式チェーン網で接続され合い、前記伸縮式チェーン網は弾性耐摩耗性材料からなり、前記電磁組が前記2枚のU字型曲げ鉄板に対して磁気吸着を行う場合、前記伸縮式チェーン網は収縮状態にあり、前記電磁組が前記2枚のU字型曲げ鉄板に対して磁気吸着を行わない場合、前記伸縮式チェーン網の両端が伸びて広がり、前記杭ローラーを覆う。
【0014】
好ましくは、前記固定軌道は不規則な曲線形軌道、又は多段直線形のサブ軌道によって接合された折れ線形軌道である。
【0015】
好ましくは、前記固定軌道の下面には川床に沈められた1又は複数の四面中空角錐体が設けられ、前記四面中空角錐体の四辺形底面は固定軌道の下面に入り込み、その外枠が金属線で形成され、各中空面の辺縁にも複数の金属線が横切って巻き付き、上記複数の四面中空角錐体は、対応の固定軌道の縁及び長端の中心軸線に沿って3本の直線に配置され、隣接する2本の直線に位置する四面中空角錐が交互に食い違って分布する。
【0016】
好ましくは、前記固定軌道の下流面の片側には溝が設けられ、前記溝には可動軌道滑り溝が設けられ、前記固定軌道に接続された各可動軌道の一端には移動ブロックが設けられ、前記固定軌道から離れた一端には可動軌道ローラーが設けられ、前記移動ブロックは、前記溝の内部における前記可動軌道滑り溝に入り込み、前記可動軌道ローラーは、前記制御プラットフォームに通信接続され、前記制御プラットフォームの支配下で河床に固定された付帯凸状単軌道に沿って転がることができることにより、前記移動ブロックを移動させるように駆動して移動軌道に対応にする位置を調整する。
【0017】
本発明は更に、其々の経年又は毎年の河川のデータ結果に基づいて統計分析を行い、前記可動透水性杭の透水係数範囲を設定し、前記複数の可動透水性杭及び前記複数の移動軌道の初期位置を配置し、前記制御プラットフォームは、前記初期位置に応じて配置され、前記複数の可動透水性杭と前記複数の可動軌道を制御・調整して、初期状態にある可動透水性杭付き水制を形成するというステップS1と;
各流速計は、前記水制の監視測定点において縦方向流速u
x及び横方向流速u
yを含む水流速度を実時間監視測定し、各流速計のサンプル間隔期間をΔt、監視測定期間をT、監視測定期間Tの縦方向平均流速値をU
x、横方向平均流速値をU
yと示し、各流速計は、監視測定データとしてU
xとU
yを前記制御プラットフォームに送信し、各圧力センサは、静水圧P
1と動的水圧P
2とを含める前記水制の監視測定点の受けた圧力を実時間監視測定し、各圧力センサのサンプル間隔期間もΔt、監視測定期間もTであり、監視測定期間Tの静水圧と動的水圧の合計の平均値をPt示し、各圧力センサは、監視測定データとしてPを前記制御プラットフォームに送信するというステップS2と;
前記制御プラットフォームは、次の[数1]式により各圧力センサ及び各流量計からの実時間監視測定データに基づいて可動透水性杭の実時間透水係数を計算するというステップS3と;
【数1】
式中、aは水制の透水係数であり、K
aはモデル試験とプロトタイプ観測により決められる必要がある補正誤差関数であり、ΣL
iは透水性杭間の距離合計であり、Uは各流速計に集められたデータから計算された各監視測定期間の各監視測定点の平均水流速度であり、Pは各圧力センサに集められたデータから計算された各監視測定期間の静水圧と動的水圧の合計の平均値であり、D
1は水制の全長であり、θは透水性杭の透水係数である;
前記制御プラットフォームは、実時間透水係数と各流速計の実時間監視測定データと各圧力センサの実時間監視測定データに基づいて、前記複数の可動透水性杭と前記複数の可動軌道の位置配置を調整するステップであって、
目下の監視測定期間中の各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が既定閾値より小さくなるかどうかを判断することと、
両方は既定閾値より小さくなり、実時間透水係数が透水係数範囲内に入る場合、透水杭間の間隔を維持し、つまり、水制の透水係数は水制の安定性を満たし、水流に対する良好な反応メカニズムを備えることと、
目下の監視測定期間中に1つ以上の監視測定点において水流速度U又は水制圧力Pが既定閾値よりも大きくなって水制の安定性に不利である場合、各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなり、且つ模擬により算出された透水係数が前記透水係数範囲に入るまで、対応の監視測定点における可動透水性杭の間隔を徐々に大きくする模擬を行い、最終的な模擬結果に応じて調整を行い;各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなるが、水制の透水係数が透水係数範囲を超えている場合、前記制御プラットフォームは、各可動軌道及びその上の各可動透水性杭の位置を調整することにより、各可動軌道間の距離を縮め、各可動軌道上の可動透水性杭を前記固定軌道に向かって移動させて2つの軌道上の透水性杭の間隔を減少させるか、水制内の可動透水性杭の数目を増やすかという方式で、水制全体を密集させるようにして透水係数を減少させることとを、
具体的に含むというステップS4と;
を備える可動透水性杭付き水制の稼働方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は次のとおりである。(1)透水性杭は、中空杭を用い、上流面と下流面に全て孔径の異なる前後に食い違って配列する透水孔を設け、水流が各杭の透水孔を通るのは、水制の堤頭部における迂回水流を減少させ、水制の堤頭部及び堤体付近における水流の3次元流れ場の分布規則に影響を与える。水制の軸線における堤頭部の局所的な最大流速を有効的に低減することにより、水制の堤頭部の水流浸食と堤体基礎の空洞化を軽減させて堤体の安定した配置に有利であり、また、水制の築造による河川生態学的環境への影響も減じて水生生物とバンク傾斜との分離をある程度まで低減する。(2)水制は、様々な可動透水性杭群で構成されており、杭底部はローラーに杭固定クランプが取り付く簡単な構造を備え、即時移動・停止できる。金属材料からなる四面中空角錐体は各装置群の下面に埋め込まれ、装置底部と一緒に河床に沈んで水制底部と河床との接触面が増え、堤体の安定性が強まる。(3)水制の長さは、河川の実情に応じて適当な数目の可動透水性杭群を採用するか、数列の複数の可動透水性杭群が可動透水性杭付き水制群を成すことにより決められ、前後に各可動透水性杭群を食い違って配列して各水制間の水流区域で混合及びエネルギー消散を行う。(4)水制を解体した後、部品は再使用されて建築材料の無駄をはぶき、工事損耗を減らす。(5)圧力センサや水流速度監視測定装置等の技術的手段は用いられて河川の変化情報を得、データ信号を河岸の制御プラットフォームにフィードバックすることにより、制御プラットフォームには稼働方法に従って透水性杭の合理的な移動ができ、可動透水性杭付き水制の自己適応調整能力を活用して水制の透水係数及び堤体を変えて河川の変化に対して有効的な反応メカニズムを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例の概略構造図の上面図である。
【
図2】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例の概略構造図の正面図である。
【
図3】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例の概略構造図の側面図である。
【
図4】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例における透水性杭の異なる側面の概略構造図である。
【
図5】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例における固定軌道と移動軌道の全体概略図の側面図である。
【
図6】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例における固定軌道の概略構造図である。
【
図7】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例における杭固定クランプが吸着されたときの概略構造図である。
【
図8】本発明の可動透水性杭付き水制の一実施例における杭固定クランプが吸着されないときの概略構造図である。
【
図9】水制群の配置に適用された本発明の可動透水性杭付き水制の構造概略図の上面図である。
【
図10】本発明の可動透水性杭付き水制の他の実施例において適用された様々な固定軌道の構造概略図の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、次に添付の図面及び具体的な実施例と併用してさらに詳細に説明されるが、本発明の保護範囲は、列挙された実施例に限定されない。
【0021】
図1~
図6に示されたように、本実施例は、水平に配置された固定軌道2と複数の可動軌道3と複数の可動透水性杭1と圧力センサ11と流速計12と制御プラットフォーム4とを備える可動透水性杭付き水制を提供する。そのうち、固定軌道は、水流の垂直方向に沿って河床に固定される。各可動軌道3の一端は、固定軌道2の下流面の片側に摺動接続され、固定軌道2の伸長方向に沿って相対的に移動することができる。複数の可動透水性杭1は固定軌道2及び複数の可動軌道3に設けられる。圧力センサ11と流速計12は、各可動透水性杭1の外側壁の各監視測定点に設けられてそれぞれ各監視測定点の受けた水圧変化及びその周囲の水流速度変化を監視測定するのに用いられる。各移動軌道3と可動透水性杭1と圧力センサ11と流速計12は、それぞれ制御プラットフォーム4に通信接続される。制御プラットフォーム4は、各監視測定点における水流速度及び水制圧力の両方が対応の流速閾値及び圧力閾値よりも低くなり、水制の透水係数を範囲内に設定するように、各圧力センサ11と各流速計12からの監視測定データを分析し計算し、各移動軌道3と各可動透水性杭1の位置を調整する。また、水制堤体は、河岸のバンク傾斜から河道中心に向かって水流の垂直方向に沿って順次分布し、制御プラットフォーム4は河岸に配置され得る。水制堤体に必要な透水性杭の数目と透水性杭の高さは、河川の潅流に応じて選択できる。河川流量と年間平均水深が大きく、増水期の水流速度又は水制の受けた水圧が大きくなる時、水制の固定軌道及び可動軌道上の透水性杭の数目を増やすか、より大きな直径及び高さを備えた透水性杭を用いて水制の安定性と掲流効果を強めることができる。
【0022】
各可動透水性杭1は、中空円筒、即ち内部に空洞された円筒形のコンクリート杭である。上流面は円弧状で、中心線に3つの透水孔があり、下流面も円弧状で、中心線にも3つの透水孔がある。上流面の透水孔は孔径が上から下まで順次増大し、下流面の透水孔は孔径が上から下まで順次減少し、直径の50cmや20cmや10cmである多孔径を有する透水孔の組み合わせとして設定できる。透水性杭の両側の透水孔は透水性杭を貫通してその中空位置に至り、両側の透水孔は垂直方向に沿って完全に食い違って分布する。これにより、水流が各杭の透水孔を通るのは、水制の堤頭部における迂回水流を減少させ、水制の堤頭部及び堤体付近における水流の3次元流れ場の分布規則に影響を与える。水制の軸線における堤頭部の局所的な最大流速を有効的に低減することにより、水制の堤頭部の水流浸食と堤体基礎の空洞化を軽減させて堤体の安定した配置に有利であり、また、水制の築造による河川生態学的環境への影響も減じて水生生物とバンク傾斜との分離をある程度まで低減する。
【0023】
固定軌道2及び移動軌道3に沿って可動透水性杭1を動かせるようにするために、固定軌道2及び各移動軌道3の上面に杭滑り溝21を設け、杭滑り溝21は、固定軌道2又は移動軌道3の上面にそれぞれ2本の平行な直線状に沿って配置され、その両側に対称な歯形溝2101は設けられてある。各可動透水性杭1の底部には、2列の杭ローラー組を設けてある。各杭ローラー組は、1本の杭滑り溝21に対応し、2つの杭ローラーユニットを備える。各杭ローラーユニットは、接続部材と杭ローラー61と電磁組6301を備える。杭ローラー61には杭固定クランプ63も設けられてある。具体的に、接続部材は、その上部が対応の可動透水性杭1の底部の両側に埋め込まれ、その中部が駆動器及び電磁組6301を設けるための中空接続ブロック6203であり、その底部の両端が下向きに伸びて接続ピース6202を形成し、2つの接続ピース6202は、接続棒6201で互いに接続され合う。接続棒6201は、
図7と
図8に示されるように杭ローラー61の中心を通る。杭ローラー61は、3分の1が各固定軌道及び可動軌道の両側における杭滑り溝に沈み、残りの2/3が杭滑り溝によって拘束されない。杭固定クランプ63は、弾性耐摩耗性材料(例えば、弾力性及び耐摩耗性を備えた金属材料又は塑性部品)からなる伸縮式チェーン網とその両端に接続されたU字型曲げ鉄板6302で形成され、各U字型曲げ鉄板6302は、その両端がそれぞれ接続棒6201に巻きつけられ、接続棒6201の周囲を回転でき、その2つの直線端部における側面が、杭ローラー61の外周に合う扇形であるが、一定の距離で離れてある。電磁組6301は、接続部材の中空接続ブロック6203内に設けられ、制御プラットフォーム4に通信接続されてある。制御プラットフォームからの指令に応じて電磁組の通電状態を制御することにより、杭固定クランプ63の動作状態を制御して透水性杭1は移動したら直ちに停止されることができる。具体的には、指定透水性杭1を正常に移動させるように制御する必要がある場合、電磁組6301内の電磁石に通電し、2枚のU字型曲げ鉄板6302はその夾角が30度になり、杭ローラー61の上部に安定に設けられる。伸縮式チェーン網は直線状態に収縮し、杭ローラー61は制御プラットフォーム4の支配下で軌道に沿って平穏に移動する。指定透水性杭1を停止させるように制御する必要がある場合、駆動器は杭ローラー61を停止させ、電磁組6301は電源オフ状態にあり、2枚のU字型曲げ鉄板6302は、重力の作用下で互いに離れる回転方向に沿って杭滑り溝21の歯形溝2101に落ち入る。伸縮式チェーン網6303は、網状に広がって杭ローラー61の表面を覆い、杭ローラー61の摩擦抵抗を増加させ、杭ローラー61の移動速度を低減する。このとき、杭ローラー6を妨げ、
図8に示されるように可動透水性杭1を対応の固定軌道に停止させる。このようにして、杭ローラー6は、杭固定クランプ63に接続されて透水性杭1の底部に設けられ、透水性杭を固定軌道又は移動軌道に自由に移動させるようにする。好ましくは、電磁組は、2枚のU字型曲げ鉄板6302の上部における接続部材の中空接続ブロック6203の内側に設けられ、簡単な構造や良好な安定効果を備える。さらに、他の実施例では、杭滑り溝の数目が2より大きくなる可能性があり、それに応じて杭ローラー組の数目が増える可能性もあり、各杭ローラー組内の杭ローラーユニットの数目を調整し変更することもできる。
【0024】
好ましくは、固定軌道2は、鉄筋コンクリートを打設することによりその本体が形成され、その半分が河床に沈み、その下面に川床に沈められた複数の四面中空角錐体22が設けられてある。各四面中空角錐体22は、その先端が下向きに置き、四辺形の底面が固定軌道2の下面に埋め込まれて内部の鉄筋コンクリートに接続され、その外枠が金属線で形成され、各中空面の辺縁にも複数の金属線が横切って巻き付いてある。上記複数の四面中空角錐体22は、軌道の縁及び長端の中心軸線に沿って3本の直線に配置され、隣接する2本の直線に位置する四面中空角錐が交互に食い違って分布するため、河床との接触面積を増やして水制堤体の安定性に有利である。
【0025】
固定軌道2は、下流面の高度の半分における内側に向いて水平に切り口がり、垂直辺に可動軌道滑り溝2202を備えた溝2201を形成する。固定軌道2に接続された各可動軌道3の一端には移動ブロック33を設け、固定軌道から離れた一端には可動軌道ローラー31を設け、移動ブロック33は、溝2201の内部における可動軌道滑り溝2202に入り込んで接続し移動することができる。可動軌道ローラー31は、制御プラットフォーム4に通信接続され、制御プラットフォームの支配下で河床に固定された付帯凸状単軌道32に沿って転がることができることにより、移動ブロック33を水流の垂直方向に沿って平穏に移動させるように駆動して移動軌道3に対応にする位置を調整する。凸型単軌道32は、固定軌道を平行にし、可動軌道の移動に用いられる。水流に従って運ばれた堆積物は、可動軌道ローラー31の回転を妨げない。
【0026】
本実施例では、固定軌道2は、一体成型の直線形軌道である。なお、
図10に示されたように、他の実施例で固定軌道2も不規則な折れ線形軌道、曲線形軌道、又は多段直線形のサブ軌道によって接合された直線形軌道、折れ線形軌道又は曲線形軌道であり得る。
【0027】
本実施例では、制御プラットフォーム4は、河岸の近くに設けられ、信号伝達装置、制御システム及び部分的な電気機械装置を備える。信号伝達装置は、圧力センサ及び流速計のデータ信号を受信し、次に、それを制御システムに送信する。制御システムは、受信された河川の変化及び水制の局所的な圧力負荷というデータ信号を分析し処理し、透水性杭付き水制に適切な調整計画を作成し、次に制御プラットフォームは電気機械装置にコマンドを送信する。従って、可動透水性杭付き水制を移動させて適切な調整を行えるようにし、河川及び水制の状況変化に対応するために水制堤体の透水係数と堤体形態を変える。他の実施例では、制御プラットフォーム4も、他の位置に配置されてもよく、それに含まれた部分的な電気機械装置は、防水処置後、水制上の適切な位置、例えば、可動軌道ローラー31又は杭ローラー61の近傍に取り付けられ得る。
【0028】
水制は河川に配置され、水流はそれぞれ堤頭を回り流れ、透水性杭を通り、透水性杭間の自由流区域を経て分流する。水制の透水性杭は、各軌道上に自由に移動できる。
【0029】
河川の渇水期に、水制圧力及び水流値が対応の既定閾値内に入る場合、必要な透水係数は増水期よりも小さいため、透水性杭間の距離Liと水制の透水係数aが減られ、瀬切り効果を強め、高水位を上げ、河川の航行可能な水深を維持するのに役立つ。水制の局所的な水圧が閾値Hを徐々に超える場合を例としては、水制圧力Pが上昇すると、透水性杭の局所的な基礎が著しく浸食されるのは、堤体の安定性に不利である。模擬最適化計算により、水制の透水係数aを大きくする必要があることがわかる。制御プラットフォーム4は、制御システムが水制圧力と水流速度の両方が既定閾値より小さくなるという水制の最適化透水係数の方策を模擬し出す場合、信号伝達装置で局所的な固定軌道杭間の距離を増加させて堤体の流量が増え、水制の局所的な圧力を低減する。同時に、移動軌道の一部の透水性杭と固定軌道との距離が減り、平行移動軌道間の距離が増えるのは、水制全体の耐圧強度を高め、水制の安定性及び有効的な稼働効果を確かにする。
【0030】
河川増水期には、往年の増水期の初期の水文測定データに基づいて、事前に最適化方策を推計して配置を行い、軌道上の透水性杭の数目を事前に増やされる。河川増水期が近づくに伴い、河川流量が増加し、水制圧力又は水流速度が対応の既定閾値を超えると、制御プラットフォームは目下の警告データ信号を受信し、堤体調整のための最適化方策を模擬し予測し、水制の中間部分における杭間の間隔Liを大きくする。可動軌道は、隣接する各杭の間の水平中心線までに全て移動し、食い違って分布し、可動軌道上の杭は固定軌道から離れて、水制堤体の過流流量が増えることにより、堤頭の浸食を緩和し、堤体を安定させ、水制堤体の受けた水圧と水流速度が既定閾値より徐々に小さくなるようにする。
【0031】
したがって、本発明は、更に其々の経年又は毎年の河川のデータ結果に基づいて統計分析を行い、前記可動透水性杭の透水係数範囲を設定し、前記複数の可動透水性杭1及び前記複数の移動軌道3の初期位置を配置し、前記制御プラットフォーム4は、前記初期位置に応じて配置され、前記複数の可動透水性杭と前記複数の可動軌道を制御・調整して、初期状態にある可動透水性杭付き水制を形成するというステップS1と;
各流速計12は、前記水制の監視測定点において縦方向流速u
x及び横方向流速u
yとを含める水流速度を実時間監視測定し、各流速計のサンプル間隔期間をΔt、監視測定期間をT、監視測定期間Tの縦方向平均流速値をU
x、横方向平均流速値をU
yと示し、各流速計12は、監視測定データとしてU
xとU
yを前記制御プラットフォームに送信し、各圧力センサ11は、静水圧P
1と動的水圧P
2とを含める前記水制の監視測定点の受けた圧力を実時間監視測定し、各圧力センサのサンプル間隔期間もΔt、監視測定期間もTであり、監視測定期間Tの静水圧と動的水圧の合計の平均値をPと示し、各圧力センサ11は、監視測定データとしてPを前記制御プラットフォーム4に送信するというステップS2と;
前記制御プラットフォーム4は、次の[数2]式により各圧力センサ11及び各流量計12からの実時間監視測定データに基づいて可動透水性杭の実時間透水係数を計算するというステップS3と;
【数2】
式中、aは水制の透水係数であり、K
aはモデル試験とプロトタイプ観測により決められる必要がある補正誤差関数であり、ΣL
iは透水性杭間の距離合計であり、Uは各流速計に集められたデータから計算された各監視測定期間の各監視測定点の平均水流速度であり、Pは各圧力センサに集められたデータから計算された各監視測定期間の静水圧と動的水圧の合計の平均値であり、D
1は水制の全長であり、θは透水性杭の透水係数である;
前記制御プラットフォーム4は、実時間透水係数と各流速計12の実時間監視測定データと各圧力センサ11の実時間監視測定データに基づいて、前記複数の可動透水性杭1と前記複数の可動軌道3の位置配置を調整するステップであって、
目下の監視測定期間中の各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が既定閾値より小さくなるかどうかを判断することと、
両方は既定閾値より小さくなり、実時間透水係数が透水係数範囲内に入る場合、透水杭間の間隔を維持し、つまり、水制の透水係数は水制の安定性を満たし、水流に対する良好な反応メカニズムを備えることと、
目下の監視測定期間中に1つ以上の監視測定点において水流速度U又は水制圧力Pが既定閾値よりも大きくなって水制の安定性に不利である場合、各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなり、且つ模擬により算出された透水係数が前記透水係数範囲に入るまで、対応の監視測定点における可動透水性杭1の間隔を徐々に大きくする模擬を行い、最終的な模擬結果に応じて調整を行い;各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなるが、水制の透水係数が透水係数範囲を超えている場合、前記制御プラットフォーム4は、各可動軌道3及びその上の各可動透水性杭1の位置を調整することにより、各可動軌道3間の距離を縮め、各可動軌道3上の可動透水性杭1を前記固定軌道2に向かって移動させて2つの軌道上の透水性杭1の間隔を減少させるか、水制内の可動透水性杭1の数目を増やすかという方式で、水制全体を密集させるようにして透水係数を減少させることとを、
具体的に含むというステップS4と;
を備える可動透水性杭付き水制の稼働方法を提供する。
【0032】
上記実施例における可動透水性杭付き水制は、水制群の形成にも適用され、水制群内の各透水性杭の透水係数及び水制形態をそれぞれ調整されることにより、水制群の瀬切り効果を強めるようにし、水制堤体への水流衝撃力を逐次分解し、水流を減速させ、水制群の良い安定性と水制の良好な掲流効果を確かにする。
【0033】
図9に示されたように、可動透水性水制群は、本実施例に記載の可動透水性水制から等長且つ等間隔で逐次配列され取り付けされることにより作り上げられる。先頭の水制の移動調整方法は本実施例と同じである。後続の水制の受けた流速及び水制圧力値は、水流が前の水制を通った後に全て生じ、測定されたデータ値は制御システムにフィードバックして分析及び処理を行う。各級の可動透水性水制の操作方法も、本実施例と同じように、水制群内の各級の水制が前の水制を経た水流によって生じた影響に基づいてデータ値が既定閾値よりも小さくするという堤体の透水性杭の調整方策を作成するまで類推され、水制群が河川で良い実用的な効果をもたらすようにする。
【0034】
上記実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明も上記実施例に限定されない。本発明範囲内において当業者に作り出される変更、修正、追加又は置換も本発明の保護範囲に属する。
【0035】
(付記)
(付記1)
固定軌道(2)と複数の可動軌道(3)と複数の可動透水性杭(1)と圧力センサ(11)と流速計(12)と制御プラットフォーム(4)とを備え、各可動軌道(3)の一端は、前記固定軌道(2)の下流面の片側に摺動接続され、前記固定軌道(2)の伸長方向に沿って相対的に移動され;
前記複数の可動透水性杭(1)は前記固定軌道(2)及び前記複数の可動軌道(3)に設けられ;
前記圧力センサ(11)と前記流速計(12)は、各可動透水性杭(1)の外側壁の各監視測定点に設けられてそれぞれ各監視測定点の受けた水圧変化及びその周囲の水流速度変化を監視測定するのに用いられ;
前記複数の移動軌道(3)と前記複数の可動透水性杭(1)と各圧力センサ(11)と各流速計(12)は、それぞれ前記制御プラットフォーム(4)に通信接続され、前記制御プラットフォーム(4)は、各監視測定点における水流速度及び水制圧力の両方が対応の流速閾値及び圧力閾値よりも低くなり、水制の透水係数を範囲内に設定するように、各圧力センサ(11)と各流速計(12)からの監視測定データを分析し計算し、各移動軌道(3)と各可動透水性杭(1)の位置を調整する、
ことを特徴とする可動透水性杭付き水制。
【0036】
(付記2)
各可動透水性杭(1)は中空円筒を有し、前記中空円筒には、その上流面に孔径が上から下まで順次増大する上流面透水孔(14)が設けられ、その下流面に孔径が上から下まで順次減少する下流面透水孔(15)が設けられ、各上流面透水孔(14)と各下流面透水孔(15)は前記中空円筒の中空部までに貫通しており、前記上流面透水孔(14)と前記下流面透水孔(15)は垂直方向に沿って完全に食い違って分布する、
ことを特徴とする付記1に記載の可動透水性杭付き水制。
【0037】
(付記3)
前記固定軌道(2)及び前記複数の移動軌道(3)の上面にはそれぞれ平行に敷設されている2本以上の杭滑り溝(21)が設けられ、各杭滑り溝(21)の両側には歯形溝(2101)が設けられ;
各可動透水性杭(1)の底部には、2列以上の杭ローラー組が設けられ、各杭ローラー組は、1本の杭滑り溝(21)に対応し、1つ以上の杭ローラーユニットを有し、各杭ローラーユニットは、接続部材と杭ローラー(61)と電磁組(6301)とを有し、前記接続部材の上部は、前記可動透水性杭(1)の内部に埋め込まれ、その中部が中空接続ブロック(6203)であり、その底部の両端が下向きに伸びて接続ピース(6202)を形成し、2つの接続ピース(6202)は、接続棒(6201)で互いに接続され合い、前記接続棒(6201)は、前記杭ローラー(61)の中心を通り、杭固定クランプ(63)が前記接続棒(6201)に巻きつけられ、前記電磁組(6301)は、前記接続部材の前記中空接続ブロック(6203)の内部に設けられ、前記杭ローラー(61)と前記電磁組(6301)のそれぞれは、前記制御プラットフォーム(4)に通信接続されて前記制御プラットフォーム(4)の支配下で転がり、前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行い;
前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行わない場合、前記杭固定クランプ(63)は、重力の作用下で所在の軌道の前記歯形溝(2101)に入り込み、前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプ(63)に対して磁気吸着を行う場合、前記杭固定クランプ(63)は、前記歯形溝(2101)から離れる、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の可動透水性杭付き水制。
【0038】
(付記4)
前記杭固定クランプ(63)は2枚のU字型曲げ鉄板(6302)を有し、毎枚のU字型曲げ鉄板(6302)の両端がそれぞれ接続棒(6201)に巻きつけられ、前記接続棒(6201)の周囲を回転でき、前記電磁組(6301)が前記杭固定クランプに対して磁気吸着を行わない場合、前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)は重力の作用下で反対方向に沿って所在の軌道の前記歯形溝(2101)に入り込む、
ことを特徴とする付記3に記載の可動透水性杭付き水制。
【0039】
(付記5)
毎枚のU字型曲げ鉄板(6302)の2つの直線端部における側面は扇形である、
ことを特徴とする付記4に記載の可動透水性杭付き水制。
【0040】
(付記6)
前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)は、伸縮式チェーン網(6303)で接続され合い、前記伸縮式チェーン網(6303)は弾性耐摩耗性材料からなり、前記電磁組(6301)が前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)に対して磁気吸着を行う場合、前記伸縮式チェーン網(6303)は収縮状態にあり、前記電磁組(6301)が前記2枚のU字型曲げ鉄板(6302)に対して磁気吸着を行わない場合、前記伸縮式チェーン網(6303)の両端が伸びて広がり、前記杭ローラー(61)を覆う、
ことを特徴とする付記4に記載の可動透水性杭付き水制。
【0041】
(付記7)
前記固定軌道(2)は不規則な曲線形軌道、又は多段直線形のサブ軌道によって接合された折れ線形軌道である、
ことを特徴とする付記1に記載の可動透水性杭付き水制。
【0042】
(付記8)
前記固定軌道(2)の下面には川床に沈められた1又は複数の四面中空角錐体(22)が設けられ、前記四面中空角錐体(22)の四辺形底面は固定軌道(2)の下面に入り込み、その外枠が金属線で形成され、各中空面の辺縁にも複数の金属線が横切って巻き付き、上記複数の四面中空角錐体(22)は、対応の固定軌道の縁及び長端の中心軸線に沿って3本の直線に配置され、隣接する2本の直線に位置する四面中空角錐が交互に食い違って分布する、
ことを特徴とする付記1に記載の可動透水性杭付き水制。
【0043】
(付記9)
前記固定軌道(2)の下流面の片側には溝(2201)が設けられ、前記溝(2201)には可動軌道滑り溝(2202)が設けられ、前記固定軌道(2)に接続された各可動軌道(3)の一端には移動ブロック(33)が設けられ、前記固定軌道から離れた一端には可動軌道ローラー(31)が設けられ、前記移動ブロック(33)は、前記溝(2201)の内部における前記可動軌道滑り溝(2202)に入り込み、前記可動軌道ローラー(31)は、前記制御プラットフォーム(4)に通信接続され、前記制御プラットフォームの支配下で河床に固定された付帯凸状単軌道(32)に沿って転がることができることにより、前記移動ブロック(33)を移動させるように駆動して移動軌道(3)に対応にする位置を調整する、
ことを特徴とする付記1に記載の可動透水性杭付き水制。
【0044】
(付記10)
其々の経年又は毎年の河川のデータ結果に基づいて統計分析を行い、前記可動透水性杭の透水係数範囲を設定し、前記複数の可動透水性杭(1)及び前記複数の移動軌道(3)の初期位置を配置し、前記制御プラットフォーム(4)は、前記初期位置に応じて配置され、前記複数の可動透水性杭と前記複数の可動軌道を制御・調整して、初期状態にある可動透水性杭付き水制を形成するというステップS1と;
各流速計(12)は、前記水制の監視測定点において縦方向流速u
x及び横方向流速u
yを含む水流速度を実時間監視測定し、各流速計のサンプル間隔期間をΔt、監視測定期間をT、監視測定期間Tの縦方向平均流速値をU
x、横方向平均流速値をU
yと示し、各流速計(12)は、監視測定データとしてU
xとU
yを前記制御プラットフォームに送信し、各圧力センサ(11)は、静水圧P
1と動的水圧P
2とを含める前記水制の監視測定点の受けた圧力を実時間監視測定し、各圧力センサのサンプル間隔期間もΔt、監視測定期間もTであり、監視測定期間Tの静水圧と動的水圧の合計の平均値をPと示し、各圧力センサ(11)は、監視測定データとしてPを前記制御プラットフォーム(4)に送信するというステップS2と;
前記制御プラットフォーム(4)は、次の[数3]式により各圧力センサ(11)及び各流量計(12)からの実時間監視測定データに基づいて可動透水性杭の実時間透水係数を計算するというステップS3と;
前記制御プラットフォーム(4)は、実時間透水係数と各流速計(12)の実時間監視測定データと各圧力センサ(11)の実時間監視測定データに基づいて、前記複数の可動透水性杭(1)と前記複数の可動軌道(3)の位置配置を調整するステップであって、
目下の監視測定期間中の各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が既定閾値より小さくなるかどうかを判断することと、
両方は既定閾値より小さくなり、実時間透水係数が透水係数範囲内に入る場合、透水杭間の間隔を維持し、つまり、水制の透水係数は水制の安定性を満たし、水流に対する良好な反応メカニズムを備えることと、
目下の監視測定期間中に1つ以上の監視測定点において水流速度U又は水制圧力Pが既定閾値よりも大きくなって水制の安定性に不利である場合、各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなり、且つ模擬により算出された透水係数が前記透水係数範囲に入るまで、対応の監視測定点における可動透水性杭(1)の間隔を徐々に大きくする模擬を行い、最終的な模擬結果に応じて調整を行い;各監視測定点における水流速度Uと水制圧力Pの両方が対応の既定閾値より小さくなるが、水制の透水係数が透水係数範囲を超えている場合、前記制御プラットフォーム(4)は、各可動軌道(3)及びその上の各可動透水性杭(1)の位置を調整することにより、各可動軌道(3)間の距離を縮め、各可動軌道(3)上の可動透水性杭(1)を前記固定軌道(2)に向かって移動させて2つの軌道上の透水性杭(1)の間隔を減少させるか、水制内の可動透水性杭(1)の数目を増やすかという方式で、水制全体を密集させるようにして透水係数を減少させることとを、
具体的に含むというステップS4と;
を備える、
ことを特徴とする付記1~9のいずれかに記載の可動透水性杭付き水制の稼働方法。
【数3】
式中、aは水制の透水係数であり、K
aはモデル試験とプロトタイプ観測により決められる必要がある補正誤差関数であり、ΣL
iは透水性杭間の距離合計であり、Uは各流速計に集められたデータから計算された各監視測定期間の各監視測定点の平均水流速度であり、Pは各圧力センサに集められたデータから計算された各監視測定期間の静水圧と動的水圧の合計の平均値であり、D
1は水制の全長であり、θは透水性杭の透水係数である。