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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】液体抽出装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 11/16 20060101AFI20230719BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20230719BHJP
   F26B 25/04 20060101ALI20230719BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20230719BHJP
   B02C 18/14 20060101ALI20230719BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
F26B11/16
F26B5/04
F26B25/04
F26B21/00 K
B02C18/14 Z
B02C19/00 101Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019026418
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020133978
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519055515
【氏名又は名称】株式会社野口システム
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】野口 健一
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐輔
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-105447(JP,A)
【文献】特開2012-062374(JP,A)
【文献】特開2005-214599(JP,A)
【文献】特開2007-271222(JP,A)
【文献】特開2006-187735(JP,A)
【文献】特開2006-017315(JP,A)
【文献】特開2002-239361(JP,A)
【文献】特開平08-136129(JP,A)
【文献】特開平08-136130(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166876(JP,U)
【文献】登録実用新案第3111506(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359250(US,A1)
【文献】特開2000-074565(JP,A)
【文献】米国特許第05183540(US,A)
【文献】中国実用新案第207991166(CN,U)
【文献】中国実用新案第206056177(CN,U)
【文献】実開昭57-009307(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 11/16
F26B 5/04
F26B 25/04
F26B 21/00
B02C 18/14
B02C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体水を含む被処理物が投入される投入口が上向きに開口して前記投入口は蓋で塞がれる処理容器と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧手段と、
前記処理容器の内部を温水で加温する加熱手段と、
前記処理容器の内部で発生した蒸気を排出する蒸気排出手段と、
前記処理容器内の内部に配置されて水平姿勢の軸心回りに回転する回転体と、
前記蒸気を冷却して前記生体水を回収する蒸留装置と、
を有している液体抽出装置であって、
前記処理容器は、前記回転体の回転軸心と同心の内周面を有して前記投入口は内径よりも幅狭に形成されており、このため前記処理容器の内周は上端がくびれた状態になっており、
前記回転体は、水平姿勢に配置されて両端部を回転自在に支持された1本の回転軸と、前記回転軸にアームを介して取り付けられて前記処理容器の内部を周回する攪拌部材及び破砕部材とを有しており
前記加熱手段は、前記処理容器を外側から囲う加温空間と、前記加温空間の下端部に連通した状態で下方に広がった補助室と、前記補助室に配置されたヒータとを有して、前記加温空間と補助室とに水が充満しており、
かつ、前記加温空間と補助室とは断熱材で外周外側から覆われている、
液体抽出装置。
【請求項2】
生体水を含む被処理物が投入される投入口が上向きに開口して前記投入口は蓋で塞がれる処理容器と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧手段と、
前記処理容器の内部を温水で加温する加熱手段と、
前記処理容器の内部で発生した蒸気を排出する蒸気排出手段と、
前記処理容器内の内部に配置されて水平姿勢の軸心回りに回転する回転体と、
前記蒸気を冷却して前記生体水を回収する蒸留装置と、
を有している液体抽出装置であって、
前記処理容器は、内周面は前記回転体の回転軸心方向から見て半円部を有するU形に形成されて、外側からは温水が充満する加温空間で覆われており、
前記回転体は、前記処理容器の内部端面から内向きに突出した一対の回転軸と、前記両回転軸に固定された一対の回転ブラケットとを有して、前記両回転ブラケットと前記処理容器の内部端面との間には間隔が空いており、
かつ、前記両回転ブラケットには、前記回転軸の軸心方向から見て重なり合った姿勢のアーム部の対が、周方向に離反して複数対設けられており、各対のアーム部に、前記処理容器の内周面の半円部に近接して周回する破砕部材か、又は、前記処理容器の内周面の半円部から離れて周回する攪拌部材が固定されており、従って、前記一対のアーム部は、前記回転軸の軸心方向に長い前記破砕部材又は攪拌部材によって連結されており、
更に、前記処理容器の一方の内部端面の下部に、被処理物の取り出し口を設けている、
液体抽出装置。
【請求項3】
生体水を含む被処理物が投入される投入口を有して前記投入口は蓋で塞がれると共に外側に加温空間を設けた処理容器と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧手段と、
前記処理容器の内部を加温する加熱手段と、
前記処理容器の内部で発生した蒸気を排出する蒸気排出手段と、
前記処理容器内の内部に配置されて鉛直軸心周りに回転する回転体と、
前記蒸気を冷却して前記生体水を回収する蒸留装置と、
を有する液体抽出装置であって、
前記処理容器は、上窄まりテーパ部と下窄まりテーパ部と両者の間に位置したストレート筒部とを有して、前記上窄まりテーパ部に前記投入口が設けられていると共に、前記上窄まりテーパ部がブラケットを介して支持フレームに固定されており、
前記回転体は、前記処理容器の中心部に鉛直姿勢に配置された回転軸と、前記回転軸から枝分かれ状に延びて前記処理容器のテーパ部の内面に向かう複数本のアームとを有しており、少なくとも1本のアームの先端に、前記処理容器における下窄まりテーパ部の内面に近接して周回する破砕部材を設けて、少なくとも1本のアームに攪拌部材を設けており、
更に、前記処理容器の底部に乾燥した被処理物の取り出し口を設けており、
かつ、前記処理容器の底部は、前記下窄まりテーパ部と連続したストレート筒に形成されており、前記回転軸の下端部に、前記ストレート筒に配置されていて被処理物を上方に掻き上げる下攪拌部材が筒型ボスを介して固定されている、
液体抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、減圧式(真空式)の液体抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減圧すると沸点が低下することを利用して、減圧下で加温することによって被処理物を効率よく乾燥させる(蒸発させる)装置が利用されている。被処理物の性状は様々であるが、処理容器内では細かく破砕・切断された物が堆積した状態になっているため、蒸発を促進するためには被処理物を攪拌しその表面に吸引作用を働かせる必要がある。このため、減圧式乾燥装置は回転式の攪拌装置を備えている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、蒸発(乾燥)を促進するためには、被処理物はできるだけ細かくなっているのが好ましい。そこで、乾燥装置に破砕装置(粉砕装置)を備えることも行われている(例えば特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-106768号公報
【文献】特公昭52-38350号公報
【文献】特開2002-59116号公報
【文献】特許第4209784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、乾燥装置に破砕機能を持たせると乾燥能率を向上できる。特に、植物の葉や根、茎、実、花、或いは海草(海藻)など乾燥させて生体水(組織水、細胞水)を蒸留によって抽出する場合は、できるだけ小片化・小粒化して表面積を大きくすると好適である。また、小片化・小粒化された被処理物を均等に攪拌して、処理容器内の空気に晒すことも重要である。つまり、効率的な乾燥のためには、均等な攪拌と均等な破砕とが重要であると云える。
【0006】
そこで検討するに、特許文献2では、鉛直回転式のスピンナーにカッターを設けただけであるため、処理容器に溜まった被処理物のうち底部のものしか破砕することができない一方、遠心式のスピンナーによる攪拌であるため処理容器の循環が十分とは言い難く、従って、攪拌機能及び破砕機能とも十分でないと思料される。
【0007】
他方、特許文献3,4は、被処理物を大きく掻き回す攪拌羽根にカッター部を設けているため、特許文献2に比べると攪拌機能と破砕機能に優れていると解されるが、カッター自体は攪拌機能を持たないため、攪拌機能及び破砕機能を向上させるにおいて限界があると推測される。また、被処理物がカッター部によって処理容器の内面に過剰に押さえられて、被処理物が処理容器の内面にこびり付く現象の発生も懸念される。
【0008】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、被処理物の攪拌機能と破砕機能とを向上させて、乾燥能率(抽出効率)を高めることを主たる課題とするものである。また、本願は、処理容器の加温構造、乾燥後の被処理物の取り出し構造、乾燥装置のコンパクト化の構造などの多くの分野について従来にない新規な構成を含んでおり、特許文献1~4のような従来技術にない改良された構造を提供することも課題たり得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の液体抽出装置は、請求項1~3で特定している。
【0010】
このうち請求項1の発明は、
生体水を含む被処理物が投入される投入口が上向きに開口して前記投入口は蓋で塞がれる処理容器と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧手段と、
前記処理容器の内部を温水で加温する加熱手段と、
前記処理容器の内部で発生した蒸気を排出する蒸気排出手段と、
前記処理容器内の内部に配置されて水平姿勢の軸心回りに回転する回転体と、
前記蒸気を冷却して前記生体水を回収する蒸留装置と、を有している」
という基本構成なっている。
【0011】
そして、請求項1では、上記基本構成において、
前記処理容器は、前記回転体の回転軸心と同心の内周面を有して前記投入口は内径よりも幅狭に形成されており、このため前記処理容器の内周は上端がくびれた状態になっており、
前記回転体は、前記処理容器の内部端面から内向きに突出した一対の回転軸と、前記両回転軸に固定された一対の回転ブラケットとを有して、前記両回転ブラケットと前記処理容器の内部端面との間には間隔が空いており、
かつ、前記両回転ブラケットには、その回転軸心方向から見て重なり合った姿勢のアーム部の対が、周方向に離反して複数対設けられており、各対のアーム部に、前記処理容器の内周面の半円部に近接して周回する破砕部材か、又は、前記処理容器の内周面の半円部から離れて周回する攪拌部材が固定されており、従って、前記一対のアーム部は、その回転軸心方向に長い前記破砕部材又は攪拌部材によって連結されており、
更に、前記処理容器の一方の内部端面の下部に、被処理物の取り出し口を設けている」
という構成になっている。
【0012】
【0013】
請求項の発明は、請求項1の基本構成に加えて、
「前記処理容器は、内周面は前記回転体の回転軸心方向から見て半円部を有するU形に形成されて、外側からは温水が充満する加温空間で覆われており、
前記回転体は、当該回転軸の軸心方向から見て前後両端のうち一端の側に位置した第1回転ブラケットと他端の側に位置した第2回転ブラケットとを有して、前記両回転ブラケットは、分離した状態で同心に配置された回転軸に個別に固定されており、
かつ、前記両回転ブラケットには、前記回転軸の軸心方向から見て重なり合った姿勢のアーム部の対が、周方向に離反して複数対設けられており、各対のアーム部に、前記処理容器の内周面の半円部に近接して周回する破砕部材か、又は、前記処理容器の内周面の半円部から離れて周回する攪拌部材が固定されており、従って、前記一対のアーム部は、前記回転軸の軸心方向に長い前記破砕部材又は攪拌部材によって連結されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項の発明は、
生体水を含む被処理物が投入される投入口を有して前記投入口は蓋で塞がれると共に外側に加温空間を設けた処理容器と、
前記処理容器の内部を減圧する減圧手段と、
前記処理容器の内部を加温する加熱手段と、
前記処理容器の内部で発生した蒸気を排出する蒸気排出手段と、
前記処理容器内の内部に配置されて鉛直軸心周りに回転する回転体と、
前記蒸気を冷却して前記生体水を回収する蒸留装置と、を有する」
という基本構成において、
前記処理容器は、上窄まりテーパ部と下窄まりテーパ部と両者の間に位置したストレート筒部とを有して、前記上窄まりテーパ部に前記投入口が設けられていると共に、前記上窄まりテーパ部がブラケットを介して支持フレームに固定されており、
前記回転体は、前記処理容器の中心部に鉛直姿勢に配置された回転軸と、前記回転軸から枝分かれ状に延びて前記処理容器のテーパ部の内面に向かう複数本のアームとを有しており、少なくとも1本のアームの先端に、前記処理容器における下窄まりテーパ部の内面に近接して周回する破砕部材を設けて、少なくとも1本のアームに攪拌部材を設けており、
更に、前記処理容器の底部に乾燥した被処理物の取り出し口を設けており、
かつ、前記処理容器の底部は、前記下窄まりテーパ部と連続したストレート筒に形成されており、前記回転軸の下端部に、前記ストレート筒に配置されていて被処理物を上方に掻き上げる下攪拌部材が筒型ボスを介して固定されている」
という構成になっている。
【0015】
【0016】
この場合、アームを周方向に離して配置する態様としては、周方向に180度離れた2か所に設けて、平面視でアームの群が一直線状に並ぶ態様に構成したり、周方向に120度ずつ離れた3か所に設けて、平面視三ツ矢状に並ぶ態様に構成したり、周方向に90度ずつ離れた4か所に設けて、平面視で十字状に並ぶ態様に構成したりすることができる。処理容器の容量や被処理物の粒度などを考慮して、アームの配置態様や本数を選択したらよい。
【0017】
【0018】
【発明の効果】
【0019】
(1).請求項1の効果
本願請求項1では、被処理物は、攪拌部材と破砕部材とのダブル効果で大きく掻き回される。これにより、高い攪拌効果を享受できる。そして、大きく掻き回された被処理物を破砕部材で破砕できるため、被処理物をできるだけ均等に破砕することができる。
【0020】
従って、本願請求項1の発明では、被処理物をできるだけ均等に破砕しつつ、処理容器内で被処理物を大きく掻き回して被処理物に作用する真空作用を増大できるのであり、その結果、乾燥効率(抽出効率)を大きく向上できる。また、破砕部材も攪拌作用を有するが、破砕部材とは別に攪拌に特化した攪拌部材を有するため、被処理物が破砕部材によって処理容器の内面に過剰に押し付けられることを防止できる。その結果、被処理物が処理容器の内面にこびり付くことを防止して、乾燥した被処理物の回収を容易化できる利点もある。
【0021】
また、請求項1の発明は、回転体が水平軸回りに回転する横型に適用したものであり、処理容器に固定刃が設けると、高い破砕機能を有する。攪拌部材にも、固定刃との衝突を防止する切り欠きを形成できるが、この場合は、攪拌部材の先端を処理容器の内面に密接又は摺接させることができるのであり、これにより、攪拌効果を大きく向上できる。
【0022】
上記のとおり、請求項では、攪拌部材の先端を処理容器の内面に摺接させることが可能であるが、この場合は、処理容器の内面にこびり付いた被処理物を掻き取ることができる。従って、乾燥させた被処理物の回収を容易化できる。
加温手段として温水を使用すると、比熱が大きいため、被処理物を速やかに加温して運転の立ち上がり速度を速くできると共に、温度の安定性にも優れている。
【0023】
(3).請求項の効果
請求項の発明も横型に適用しているが、一対の回転軸は繋がっていないため、人が内部を掃除するにおいて、内部に手を差し込みやすい。従って、掃除を容易に行える。
【0024】
また、処理容器の内部において被処理物を攪拌部材で大きく掻き上げできるため、処理容器の内部での被処理物の流動性を大きくできる。すなわち、回転軸が処理容器の一端から他端まで一連に延びていると、回転軸が抵抗になって被処理物の動きが阻害されることがあり得るが、請求項では、回転軸は両端部にしか存在しないため、被処理物の流動性を高めて乾燥効率を向上できる。
【0025】
(4).請求項の効果
請求項の発明では、処理容器に下窄まりテーパ部が形成されているため、被処理物は重力によって下窄まりテーパ部の底に集まろうとするが、攪拌部材と破砕部材とが下窄まりテーパ部内で水平方向に周回するため、集まった被処理物を掻き上げては落下させるという動きにより、被処理物を効率よく攪拌できる。
【0026】
また、上記のとおり被処理物は下窄まりテーパ部の底に向けて集まる傾向を呈するため、被処理物を破砕部材によって下窄まりテーパ部の内面に強く押し付けることができ、その結果、固定刃を設けなくても、被処理物を効率よく破砕することができる(固定刃を設けると、破砕効率を更に向上できる。)。
【0027】
また、請求項の発明では、被処理物は重力によって処理容器の底部に向けて集まるが、処理容器の底に被処理物の取り出し口を設けているため、乾燥した被処理物の取り出しを簡単に行える。
【0028】
請求項では、アーム周方向に離れて複数本配置すると、被処理物の攪拌効率を向上させることができる。また、アーム回転軸の軸心を挟んだ部位に位置させると、アームを介して回転軸に作用する曲げ力を抑制できる。その結果、回転軸のこじれを無くして、スムースに回転させることができる。また、少なくとも1本のアームに攪拌部材と破砕部材とを設けると、少ない本数のアームで攪拌効率及び破砕効率を向上できる利点がある。
【0029】
既述のとおり、縦型の処理容器では、被処理物は重力によって下窄まりテーパ部の底部に向かう傾向を呈するが、請求項3では、重力で沈み込んできた被処理物を下攪拌部材によって掻き上げることができるため、被処理物の攪拌機能を向上できる。
【0030】
本願各発明では、被処理物の乾燥効率を向上できるため、生体水等の回収能率も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態の配置ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る乾燥装置の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る乾燥装置の正面図である。
図4図3の IV-IV視断面図である。
図5】(A)は図4の IVA-IVA視図、(B)は(A)のB-B視断面図、(C)は破砕部材44の別例図、(D)は破砕部材が固定刃の箇所に移行している状態での図4の IVC-IVC視方向から見た図、(E)は(D)のE-E視断面図、(F)は回転軸に対するアームの取り付け姿勢の別例を示す図である。
図6】第2実施形態の正面図である。
図7】第2実施形態の要部の縦断正面図である。
図8】(A)は図7の VIIIA-VIIIA視平断面図、(B)は要部の斜視図、(C)は図7の VIIIC-VIIIC視断面図、(D)は(A)のD-D視図、(E)は(D)のE-E視図、(F)は図7の VIIIF-VIIIF視断面図である。
図9】第3実施形態を示す図で、(A)は外観の斜視図、(B)は大まかな縦断正面図である。
図10】(A)は図9に示した回転体の詳細図、(B)は(A)のB-B視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(1).液体抽出装置の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、液体抽出装置の概要を図1に基づいて説明する。
【0033】
液体抽出装置は、例えば植物の葉や根、花、茎などから生体水(組織水、細胞水)を抽出するものであり、被処理物を乾燥させる乾燥装置(乾燥機)1と、乾燥装置1の内部を減圧する減圧装置2と、乾燥装置1と減圧装置(真空発生源)2とを繋ぐ回収管路3と、回収管路3の中途部に配置されていて蒸気を凝縮液化させる熱交換器(蒸留装置)4と、生成された生体水を溜める製品タンク5とを備えている。回収管路3は、蒸気排出手段の一例である。
【0034】
回収管路3は乾燥装置1と減圧装置2とを繋いでおり、その中途部に熱交換器4と製品タンク5とが、熱交換器4を上流側にした状態で配置されている。熱交換器4は、プレート状やパイプ状の冷却エレメントの内部を冷却水が通過する水冷式であり、冷却水は、ポンプ6を備えた冷却水循環路7により、冷却水タンク8から供給されてチラー等の冷却器(放熱器)9に送られ、冷却器9で降温されてから熱交換器4を経由して、冷却水タンク8に戻る。冷却水タンク8には、吸水管10と排水管(オーバーフロー管)11とが接続されている。
【0035】
減圧装置2として、本実施形態では水エゼクタ方式のものを使用している。すなわち、減圧装置2は、水タンク12と、水タンク12の水を圧送ポンプ13によって循環させる循環管路14とを有しており、循環管路14の中途部にエゼクタ15を挿入して、エゼクタ15の終端部に回収管路3の始端を接続している。本実施形態の減圧装置2は、-98kPa以上の高真空を実現できる。
【0036】
本実施形態では、冷却水循環路7のうち冷却器9よりも下流側の部位が、減圧装置2の水タンク12を経由している。すなわち、冷却水循環路7に、水タンク12の内部において蛇行した熱交換部7aを設けて、水タンク12の水を冷却している。これにより、エゼクタ15に作用する水の昇温を防止して、気泡の発生を防止することにより、減圧効果の向上を図っている。
【0037】
図1において符号16で示すのはドレン管、符号17で示すのは殺菌機能等を供えたフィルタである。なお、減圧装置2は、水エゼクタ方式には限らず、空気エゼクタ、蒸気エゼクタ、真空ポンプなどの様々な構造のものを使用できる。
【0038】
乾燥装置1は請求項1を具体化した横型であり、処理容器18の内部に、攪拌機能と破砕機能とを有する回転体19が、水平軸心回りに回転するように配置されている。以下、図2~5を参照して、乾燥装置1の詳細を説明する。
【0039】
(2).乾燥装置の基本構造
図2に示すように、乾燥装置1は、上面に角形の投入口18dを設けた処理容器18と、処理容器18を支持する左右の支持フレーム20を有している。処理容器18の左右両端面に中心軸21が設けられており、中心軸21が軸受け22を介して支持フレーム20で支持されている。そして、中心軸21に大径スプロケット23が固定されている一方、支持フレーム20の下部に反転用モータ24を配置して、反転用モータ24に設けた小径スプロケット25と大径スプロケット23とにチェーン26を巻き掛けている。
【0040】
従って、反転用モータ24を駆動することにより、処理容器18は、投入口18dを上向きにした姿勢と下向きにした姿勢とに反転させることができ、投入口18dを下向きにすると、乾燥した被処理物を取り出すことができる。なお、反転手段としては、ギア機構等の他の伝動機構も採用できる。
【0041】
投入口18dは、蓋27によって塞がれる。図示していないが、蓋27はヒンジ手段によって処理容器18の上面に回動自在に連結されており、油圧シリンダやエアシリンダ、電磁シリンダなどの駆動手段によって開閉することができる(手動開閉式に構成することも可能である。)。蓋27には、厚い透明板よりなる覗き窓28を設けている。
【0042】
図3に示すように、中心軸21は、筒体29及びフランジ30を介して処理容器18の端面に固定されており、筒体29の内部に、回転体19を構成する回転軸31の端部が配置されている。回転軸31の端部は、処理容器18の端板に軸受けを介して回転自在に保持されており、反転用モータ24に近い側の筒体29に回転用モータ32を固定して、傘歯車機構やウォームギア機構などの伝動機構を介して回転軸31を回転させるようになっている。
【0043】
図4に示すように、処理容器18は、外板34及び内板35、両者の間に位置した中間板36を有しており、内板35の内面は、回転軸31の軸心方向から見て円弧状になっている。従って、処理容器18の内面は、その全体が円弧部になっている(内周面は円弧面になっている。)。また、外板34と中間板36の間は断熱材が配置された断熱層37と成して、内板35と中間板36との間は加温空間38と成している。加温空間38には温水が通される。
【0044】
加温空間38に温水を通す場合は、処理容器18の下部に、加温空間38と連通した補助室39を形成し、補助室39にヒータ40を配置している。加温空間38と補助室39とを連通させるには、中間板36に多数の小穴や連通穴空けたらよい。
【0045】
(3).回転体
図3,4から理解できるように、回転体19を構成する回転軸31のうち左右端部に設けたボス部に、互いに逆方向に向いた一対ずつの第1及び第2アーム42,43が固定されており、一対の第1アーム42に板状の破砕部材44を固定し、一対の第2アーム43に板状の攪拌部材45を固定している。
【0046】
破砕部材44はステンレス板のような金属板からなっていて、処理容器18の内部の全長近くに亙って延びており、第1アーム42に固定されたビーム46にボルト47で固定されている。そして、破砕部材44に、外向きに開口した切り欠き部48を断続的に形成している一方、処理容器18のうち回転軸31よりも下方の部位でかつ破砕部材44が下向き動する部位に、破砕部材44の切り欠き部48が通過する板状の固定刃49を配置している。
【0047】
破砕部材44の先端は角張っているが、図5(C)に示すように、回転方向の後ろ側の面を傾斜させて、先端部を鋭角に形成してもよい。いずれにしても、被処理物Wは、処理容器18と破砕部材44との間の隙間や、切り欠き部48と固定刃49との間の隙間に挟圧されて、細かく破砕されていく。
【0048】
攪拌部材45は例えば硬質樹脂板からなっており、破砕部材44と同様に、ビーム46にボルト47で固定されている。また、攪拌部材45にも、固定刃49から逃がすための切り欠き部50を形成している。但し、攪拌部材45は樹脂製であるため、破砕機能は備えていない。図5(B)(E)の比較から判るように、攪拌部材45の軸方向の長さは破砕部材44よりも短くなっているが、破砕部材44同様の長さに設定してもよい。攪拌部材45の先端を処理容器18の内周面に当接させる(摺接させる)ことにより、処理容器18にこびりついた被処理物を掻き落とすことも可能である。
【0049】
攪拌部材45は、ステンレス板のような金属板で製造することも可能であるし、本体を金属板で形成して、先端部のみを合成樹脂製としたり、全体をステンレス板のような金属板で製造して、処理容器18の内面に当接又は近接する部位に、樹脂等からなる磨耗抑制層を形成することも可能である。攪拌部材45の全体又は先端部を板ばね等の弾性金属板製として、先端を処理容器18の内面に弾性に抗して当てるといったことも可能である。
【0050】
図3,4に示すように、処理容器18の上端部に、処理容器18の内部で発生した蒸気を取り出す蒸気取り出し口51が開口しており、蒸気取り出し口51に回収管路3の終端が接続されている。
【0051】
(4).第1実施形態のまとめ
以上の構成において、被処理物Wを投入口18dから処理容器18に投入してから、減圧装置2によって処理容器18の内部を減圧すると共に適度な温度に加温しつつ、回転体19を駆動して被処理物Wを攪拌しつつ破砕していくことにより、被処理物Wを速やかに乾燥させることができる。処理容器18の内部で発生した蒸気は、既述のとおり、熱交換器4によって凝縮して液体となり、製品タンク5に貯留される。
【0052】
また、被処理物Wは、破砕部材44によって処理容器18の内面に押し付けられて小片化・小粒化していくと共に、固定刃49と破砕部材44とによる挟圧作用によっても小片化・小粒化していく。従って、被処理物Wは、小片化・小粒化して表面積を増大させながら攪拌されていくのであり、これにより、乾燥能率を向上できる。また、本実施形態の減圧装置2は-98kPa以上の高真空を実現できるため、乾燥能率を更に向上できる。
【0053】
また、回転体19に破砕部材44しか存在しない場合は、被処理物Wが破砕部材44によって処理容器18に過剰に押し付けられて、被処理物Wが処理容器18の内面にこびりついてしまうことがあるが、本実施形態のように破砕部材44と攪拌部材45とを周方向に分離して設けると、被処理物Wが処理容器18の内面に過剰に押し付けられることを防止して、こびり付きの現象を防止して攪拌作用を向上できる。
【0054】
図4に一点鎖線で示すように、一対のアーム42,43のうちいずれか一方又は両方に、その基端と先端との間に位置した攪拌部材45を設けることも可能である。また、本実施形態では一対ずつのアーム42,43を互いに逆方向に向くように配置したが、3対のアームを三ツ矢状に配置して、一対又は2対に攪拌部材45を設けたり、4対のアームを十字状に配置して、攪拌部材45と破砕部材44とを90度間隔で配置するといったことも可能である。
【0055】
更に、アーム42,43は回転軸31に一対ずつ設けているが、1本の破砕部材44及び攪拌部材45に対応して1本ずつとしたり、3対以上としたりすることも可能である。また、アーム42,43を丸棒や丸パイプのように棒材やパイプ材で構成することも可能であるし、実施形態のように板材で構成する場合、図5(F)に示すように、軸心に対して捩じった姿勢と成すことも可能である。(F)の場合は、被処理物Wを軸方向に移動させることができるため、被処理物Wの攪拌機能を更に向上できる。
【0056】
処理容器18の温度が高いほど乾燥効率は高くなるが、被処理物Wから生体水を回収する場合は、被処理物Wの耐熱温度を考慮して、被処理物Wの内部温度をできるだけ高く設定したらよい。被処理物Wが例えば花びらやハーブであって生体水の変質温度が低い場合は、40℃以下(30~40℃程度)程度が好ましいが、ウコンや黒生姜のような植物の根、檜の葉や杉の葉や楠の葉のような樹木の葉、植物の茎、植物の実のように生体水の耐熱温度が高い場合は、60℃程度でも運転可能である。
【0057】
針葉樹の葉は硬いので、特に温度は高めであってよいと云える。深層水を濃縮したり蒸留水を得ることに使用する場合も、60℃程度で運転できる。なお、深層水のような液体の蒸留水を得る場合は、回転体19は必ずしも駆動する必要はない。
【0058】
植物としては、他に、甜茶の葉や竹類の葉(笹)、柿の葉、筍、茸などの乾燥や生体水抽出に使用できる。また、被処理物Wは単一種類である必要はないのであり、複数種類を混合して使用することもできる。この場合の混合態様は、例えば、杉の葉と楠の葉とを混合するというように同種品を混合したり、ウコンと深層水とを混合するというように異種品を混合するなど、任意の組み合わせを選択できる。
【0059】
敢えて述べるまでもないが、被処理物Wから液体(生体水、組織水)を抽出する場合、抽出した液体のみが有用物になる場合と、乾燥した被処理物Wも有用別として価値がある場合とがある。ウコンや黒生姜のように被処理物W自体に有効成分が含まれている場合は、乾燥して粉状になった物品も価値がある。
【0060】
破砕部材44は板状の形態であるため、攪拌機能も有している。従って、攪拌部材45と破砕部材44との両方の攪拌による攪拌作用により、被処理物Wをまんべんなく掻き上げできるため、被処理物Wの粒に真空を作用させて効率良く乾燥させることができる(生体水を効率良く抽出できる。)。
【0061】
既述のとおり、加温手段として温水を使用しているが、温水を使用すると、比熱が大きいため、被処理物Wを速やかに加温して運転の立ち上がり速度を速くできると共に、温度の安定性にも優れている。
【0062】
いずれにしても、実施形態のように処理容器18の外層を断熱層37で構成すると、室内への放熱を抑制できるため、熱効率を向上できると共に空調コストも抑制できる。運転によって処理容器18の内部が大きく昇温する場合は、加温空間38に冷却水を通して処理容器18の内部を降温させることも可能である。
【0063】
(5).第2実施形態(図6~8)
次に、図6~8に示す第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、請求項に記載した縦型液体抽出装置の具体例であり、処理容器18は、上窄まりテーパ部18aと下窄まりテーパ部18bと両者の間に位置したストレート筒部18cとを有しており、ソロバン玉状の外観を成している。更に、処理容器18の下端部は、下窄まりテーパ部18bと連続したストレート筒18eになっている。
【0064】
上窄まりテーパ部18aには投入口18dを設けており、投入口18dはハッチ状の蓋27で塞がれている。蓋27は手動式であって略水平方向に回動するが、上下回動式に構成することも可能である。
【0065】
上窄まりテーパ部18aの上端にはヘッダー53が上フランジ板54を介して固定されており、ヘッダー53の上端に回収管路3の始端が接続されている。また、処理容器18は、上窄まりテーパ部18aに固定されたブラケット55を介して左右の支持フレーム20に支持されている。左右の支持フレーム20は、その下部が補強フレーム56で連結されている。
【0066】
図7に示すように、処理容器18は、外板34と内板35とを有していて、両者の間に加温空間38が形成されている。第1実施形態のように、加温空間38の外側に断熱層37を形成することも可能である。
【0067】
図7に示すように、処理容器18の内部には、回転体19の要素として、処理容器18の中心線回りに回転する縦型回転軸57が配置されている。縦型回転軸57の上端部は上フランジ板54に軸受けを介して回転自在に保持されている一方、縦型回転軸57の下端部は、図6に示すように、処理容器18の底板58に軸受け59を介して回転自在に保持されている。回転体19の下端部は軸受け59の下方に突出しており、この下向き突出部に設けたスプロケット60に、図示しないモータで駆動されるチェーンが巻き掛けられている。
【0068】
既述のとおり、処理容器18の底部(下端部)はストレート筒18eになっている。また、底板58のうち縦型回転軸57から外れた対称部位に、乾燥した被処理物Wの取り出し口61aと掃除用穴61bとが形成されており、これらは、下方から嵌脱できる蓋62a,62bで塞がれている。従って、蓋62a,62bを取り外すと、乾燥した被処理物Wを取り出したり、内部の掃除(例えば水洗い)を行うことができる。
【0069】
本実施形態では、回転体19は、既述の縦型回転軸57を基本要素として、縦型回転軸57に、上から順に、第1~第4のアーム63~66が筒型ボス67を介して固定されている。第1アーム63及び第3アーム65と、第2アーム64及び第4アーム66とは互いに逆方向を向いている。
【0070】
各アーム63~66は丸棒材からなっていて、それぞれ、先端に向けて低くなるように傾斜しており、先端は処理容器18の下窄まりテーパ部18bに向かっている。そして、第1~第3アーム63,64,65の先端に、処理容器18の下窄まりテーパ部18bに近接した破砕部材44を固定し、第3アーム65の中途部は第4アーム66の先端とに、板状の攪拌部材45を固定している。破砕部材44の中間部には、切り欠き部48を形成している。処理容器18に、切り欠き部48が通過する固定刃を突設してもよい。切り欠き部48は必ずしも必要はないが、設ける場合は、複数形成してもよい。
【0071】
7や図8(A)では攪拌部材45おおまかにしか表示していないが、攪拌部材45をアーム66の先端に固定する場合、図8(D)(E)に示すように、平坦部68に当て板69を溶接で固定し、当て板69に攪拌部材45をボルト70で固定している。破砕部材44の固定構造も同様である。
【0072】
図8(B)から理解できるように、破砕部材44は、概ね上下方向に長い姿勢でありつつ、回転方向に向かって低くなるように傾斜している。従って、破砕部材44も、被処理物Wを上向きに掻き上げる攪拌機能を備えている。
【0073】
他方、攪拌部材45は、図8(B)(C)から理解できるように、回転方向に向かって低くなるように傾斜していると共に、アーム65,66の軸心方向から見ても、回転方向に向かって低くなるように傾斜している。このため、被処理物Wの掬い上げ機能に優れている。
【0074】
図8(F)のとおり、縦型回転軸57の下端には筒型ボス67が固定されており、筒型ボス67に、処理容器18の底板58に近接するように板状の下攪拌部材71を固定している。下攪拌部材71を、下に行くに従って回転方向前方にずれるように傾斜させることにより、その回転によって被処理物Wが斜め上向きに押し上げられるように設定している。下攪拌部材71は、軸心を挟んだ両側に1枚ずつ配置しているが、3枚の下攪拌部材71を三ツ矢状に配置したり、4枚の下攪拌部材71を十文字状に配置したりすることも可能である。
【0075】
この第2実施形態では、処理容器18の下部はその底部を除いて下窄まりテーパ部18bになっているため、被処理物Wは、処理容器18の底部に向かう傾向で強い。すなわち、被処理物Wは、処理容器18の下に行くに従って密度が高くなる傾向を呈する。このため、攪拌部材45と破砕部材44とによって、被処理物Wを効率よく掻き上げることができる。
【0076】
また、本実施形態では、破砕部材44はその機能からして処理容器18の内面に近接して配置されるが、本実施形態の攪拌部材45は、処理容器18の内面からかなり離れた部位に配置されているため、被処理物Wは、その全体がまんべんなく攪拌される。従って、被処理物Wの全体を減圧環境下に晒して、効率よく乾燥させることができる。
【0077】
つまり、被処理物Wは、処理容器18の内周部においては破砕部材44によって破砕機能を受けつつ攪拌されて、縦型回転軸57に寄った部位では攪拌部材45によって攪拌作用を受けるのであり、このダブル効果により、被処理物Wはまんべくなく攪拌される。更に、下攪拌部材71を設けているため、被処理物Wの一部が処理容器18の底に溜まったままになる現象を防止できる。
【0078】
アーム63,64,65,66の本数は、処理容器18の大きさに等に応じて任意に設定できる。この実施形態でも、アーム63,64,65,66は三ツ矢状や十文字状などに配置することが可能である。また、アーム63,64,65,66を段違い状に配置すると攪拌機能や破砕機能に優れるが、処理容器18の容積が小さい場合は、例えば、逆向き姿勢の2本のアームを同じ高さに配置すると言ったことも可能である。
【0079】
本実施形態では、処理容器18の底に被処理物Wの取り出し口61を設けているため、乾燥した被処理物Wの回収が容易である。被処理物Wをコンベヤで投入口18dから投入し、取り出し口61から落下した被処理物Wをコンベヤで搬出するといったことも可能である。
【0080】
(6).第3実施形態
次に、図9,10に示す第3実施形態の乾燥装置1を説明する。第3実施形態横型で反転しない固定式であり、請求項の具体例である。
【0081】
この乾燥装置1は、第1実施形態と同様に、処理容器18は断熱層37と加温空間38とを備えており、回転体19の回転軸心方向から見てU形になっている。従って、処理容器18は、略下半部が円弧部になっている。本実施形態の乾燥装置1は容量が数十リットルの小型であり、処理容器18は、L形のコーナー支柱73と化粧板74とから成るケーシング75の内部に配置されている。処理容器18とケーシング75とが天板76を共有しており、処理容器18は、天板76に吊支したような状態なっている。図示していないが、処理容器18には、蒸気の排出口が開口している。処理容器18は、蓋27で開閉される上向き開口の投入口18dを有する。
【0082】
第1実施形態では回転軸31は処理容器18を貫通して長く延びていたが、この第3実施形態では、回転軸は、処理容器18の一端部に第1軸受け77を介して回転自在に保持された第1回転軸78、処理容器18の他端部に第2軸受け79を介して回転自在に保持された第2回転軸80とに分離しており、第2回転軸80がモータ32によって駆動されている。モータ32はケーシング75の内部に配置されている。
【0083】
この実施形態では、処理容器18の一端面の下部に、乾燥した被処理物Wを取り出すための取り出し口81を設け、処理容器18の外面には、被処理物Wの取り出しをガイドするシュート82を設けている。取り出し口81は、運転中は蓋83で塞がれている。
【0084】
この実施形態の回転体19は、既述の第1及び第2の回転軸78,80と、これら各回転軸78,80に固定された三ツ矢状の回転ブラケット84とを有している。従って、一対の回転ブラケット84は、それぞれ放射状に延びる3本のアーム部84a,84b,84cを供えており、2対のアーム部84a,84bに板状の破砕部材44を固定して、一対のアーム部84cに板状の攪拌部材45を固定している。
【0085】
この場合、破砕部材44は、処理容器18の内面に向いて先端を尖らせたカッター仕様になっているが、攪拌部材45は、破砕部材44と同じ部材を仕様しつつ、先端の向きを回転方向に向けている。従って、攪拌部材45は、その先端が尖っているが破砕機能は供えておらず、攪拌機能しか供えていない。
【0086】
破砕部材44及び攪拌部材45の両端には一対のブラケット部85が溶接によって固定されており、ブラケット部85がボルト86によってアーム部84a~84cに固定されている。また、破砕部材44及び攪拌部材45はアーム部84a~84cの外側にも位置しているが、外側に位置した短い部分と内側に位置した長い部分とは分離している。従って、一直線に延びる破砕部材44及び攪拌部材45は、それぞれ3つのパーツで構成されている。もとより、破砕部材44及び攪拌部材45とも、全体を1本の部材で構成してもよい。
【0087】
この実施形態では、回転軸78,80は繋がっておらず、回転体19は一種のカゴ型になっている。このため、人が内部を掃除するに当たって手を差し込み易い。従って、掃除を容易に行える。また、処理容器18の内部での被処理物Wの流動性も高くなっている一方、回転体19は、2本の破砕部材44と1本の攪拌部材45とを有しており、攪拌部材45は、被処理物Wを回転軸心の方向に掻き上げる機能を供えているため、被処理物Wは処理容器18の内部がまんべんなく掻き上げられる。
【0088】
また、攪拌部材45は、傾斜面87を有する破砕部材44を共用しているが、攪拌部材45としての使用では、傾斜面87が回転方向に向くように配置している。このため、被処理物Wを回転軸心側に移動させる機能に優れている。
図9(B)に示すように、回転軸78,80は処理容器18の内部に突出しており、その先端に回転ブラケット84を固定している。このため、回転ブラケット84と処理容器18の内部端面との間には間隔が空いている。
【0089】
本実施形態では、3対のアーム部84a~84cを破砕部材用と攪拌部材用とに使い分けたが、各アーム部84a~84cの先端には破砕部材44を固定して、基端と先端との間の中途部に攪拌部材45を固定するといった使い方も可能である。更に、破砕部材44、必ずしも刃物状に形成する必要はないのであり、第1実施形態と同様に、先端を角張らせることも可能である。更に、攪拌部材45を合成樹脂製として、これを処理容器18の内周面に近接又は摺接させることも可能である。
【0090】
回転ブラケット84に関し、三ツ矢状のように複数のアーム部84a~84cが分離した形態を採用すると、回転ブラケット84を挟んだ左右両側への被処理物Wの移動がスムースに行われるため、攪拌機能を向上できる利点がある。第3実施形態においても、第1実施形態と同様の固定刃49を設けることが可能である。この場合は、破砕部材44には切り欠き部48を形成することになる。
【0091】
以上、本願発明の実施形態を幾つか説明したが、本願発明は、他にも様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本願発明は、液体抽出装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 乾燥装置
2 減圧装置
3 回収管路
4 熱交換器(蒸留装置)
15 エゼクタ
18 処理容器
18a 上窄まりテーパ部
18b 下窄まりテーパ部
18d 投入口
18e ストレート筒
19 回転体
20 支持フレーム
21 中心軸
24 反転用モータ
31 回転軸
32 回転用モータ
34 外板
35 内板
36 中間板
37 断熱層
38 加温空間
40 ヒータ
42 第1アーム
43 第2アーム
44 破砕部材
45 攪拌部材
48 切り欠き部
49 固定刃
57 縦型回転軸
61 取り出し口
63~66 アーム
67 筒型ボス
78 第1回転軸
80 第2回転軸
81 取り出し口
84 回転ブラケット
84a~84c アーム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10