(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】段ボール製棺
(51)【国際特許分類】
A61G 17/007 20060101AFI20230719BHJP
B65D 6/18 20060101ALI20230719BHJP
A61G 17/013 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61G17/007
B65D6/18 A
A61G17/013
(21)【出願番号】P 2019108057
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519045398
【氏名又は名称】株式会社日本コフィン
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】平山 八広
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3134919(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0042488(US,A1)
【文献】登録実用新案第3176271(JP,U)
【文献】特開2008-272135(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135128(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/007
B65D 6/18
A61G 17/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み式の段ボール製棺であり、
当該段ボール製棺は、棺の長手方向に延びる一対の側壁と、
一対の側壁をつなぐ底板と、
棺の妻部に配される第1板とを有しており、
第1板は、妻部の延在方向に沿って延びており、側壁の延在方向に沿って延びる第2板と第3板とを備えており、
底板と一対の側壁との間には第1の切れ込み部が設けられており、
一対の側壁は、
第1の切れ込み部を回動動作の中心として、底板に対して接近する方向
に回動可能に構成されており、
第1板は、底板に対して接近する方向
に回動可能な状態で底板に支持されており、
第2板及び第3板は、第1板の一方の面又は他方の面に接近する方向に回動可能な状態で第1板に支持されており、
一対の側壁には側壁を貫通しない第2の切れ込み部が設けられており、第2の切れ込み部は底板の長辺に直交する方向に離隔した位置に配置されており、第2の切れ込み部は、前記第1の切れ込み部と平行であり、
第2板及び第3板を、第1板の一方の面又は他方の面に接近する方向に回動させ、第1板を底板に接近する方向に回動させ、かつ
前記第2の切れ込み部を回動動作の中心として側壁を底板に接近する方向に回動させて、側壁と底板との間
に形成された空間に第1板、第2板及び第3板を収納可能に構成した段ボール製棺。
【請求項2】
第1板
と第2板
との間には第3の切れ込み部が設けられ、
第1板と第3板
との間には第4の切れ込み部が設けられ、
第3の切れ込み部及び第4の切れ込み部は、棺を構成する段ボールに設けられ、回動
動作の中心として機能する請求項
1に記載の段ボール製棺。
【請求項3】
妻部に配された第1板の外側には、外装材が固定されており、第1板は補強材として機能する請求項1
又は2に記載の段ボール製棺。
【請求項4】
妻部に配された第1板は、妻部を塞ぐ外装材として機能する請求項1
又は2に記載の段ボール製棺。
【請求項5】
棺を組み立てた状態において、第1板は棺の上方に延在し、第2板及び第3板は棺の長手方向に沿って延在し、
第2板及び側壁と第3板及び側壁とがそれぞれ、接続された構成である請求項1ないし
4のいずれかに記載の段ボール製棺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製の棺に関する。
【背景技術】
【0002】
遺体を収める棺として、特許文献1に示したように、桐等の木材で構成されたものが古くから使用されている。最近では、木材に替えて、特許文献2のように、段ボールで構成した棺が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-285192号公報
【文献】実用新案登録第3135128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の棺は、妻部に差し込まれた板を引き抜き、側壁を棺の内側に折り畳むことにより、棺を保管したり運送したりする際にコンパクトにすることができる。妻部の板は、側壁に設けられたガイドに差し込むことにより、固定する。この構成は棺が木製であることを前提としており、段ボール製の棺において係る構成を採用すると、段ボールと段ボールの接点に隙間が形成されたり、ガイドの周辺にたわみが生じたりする可能性がある。このため、段ボール製の棺においては、このような構成を採用することは適当ではない可能性がある。
【0005】
特許文献2の段ボール製の棺は、棺の妻部にコの字状の部材(符号4を付した部材)を配置するものである。特許文献1においては、コの字状の部材を、棺の外側に向けて展開することが記載されている。棺をこのように展開した状態では、棺を保管したり運搬したりする際に、棺の嵩が大きなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、保管や運搬などの際にはコンパクトに折り畳むことが可能であり、棺を構成する部材を回動させて組み立てたり折り畳んだりすることが可能な段ボール製の棺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
折り畳み式の段ボール製棺であり、当該段ボール製棺は、棺の長手方向に延びる一対の側壁と、一対の側壁をつなぐ底板と、棺の妻部に配される第1板とを有しており、第1板は、妻部の延在方向に沿って延びており、側壁の延在方向に沿って延びる第2板と第3板とを備えており、一対の側壁は、底板に対して接近する方向に回動可能に構成されており、第1板は、底板に対して接近する方向に回動可能な状態で底板に支持されており、第2板及び第3板は、第1板の一方の面又は他方の面に接近する方向に回動可能な状態で第1板に支持されており、第2板及び第3板を、第1板の一方の面又は他方の面に接近する方向に回動させ、第1板を底板に接近する方向に回動させ、かつ側壁を底板に接近する方向に回動させて、側壁と底板との間に第1板、第2板及び第3板を収納可能に構成した段ボール製棺により、上記の課題を解決する。この棺では、第1板、第2板、第3板、及び側壁は、回動により、折り畳むことができるので、保管や運搬の際には、コンパクトに折り畳むことが可能であるし、段ボールと段ボールの継ぎ目が少なくなるので、隙間や歪みが生じにくくなる。
【0008】
側壁における回動動作の中心は、底板から離隔して配置されており、側壁は前記中心から延在しており、底板に対して傾倒した側壁と底板との間に形成された空間に第1板、第2板及び第3板を収納可能に構成することが好ましい。側壁における回動動作の中心を底板から離隔した位置に設けることにより、側壁の途中から側壁を折りたたむことが可能になり、底板と側壁との間に、第1板、第2板、及び第3板を安定した状態で収納することができる。
【0009】
上記の段ボール製棺において、側壁、第1板、第2板、又は第3板が回動する部分においては、棺を構成する段ボールに切れ込み部が設けられた構成とすることが好ましい。切れ込み部で段ボールを回動させる構成によれば、ヒンジなどの部材が不要になり、構成を簡素化できるし、回動部分の外観を隙間のない状態で美しく仕上げることができる。
【0010】
上記の段ボール製棺において、妻部に配された第1板の外側には、外装材が固定されており、第1板は補強材として機能するようにするようにしてもよい。また、第1板が棺の外装に現れるようにして、妻部に配された第1板は、妻部を塞ぐ外装材として機能するようにしてもよい。
【0011】
上記の段ボール製棺において、棺を組み立てた状態において、第1板は棺の上方に延在し、第2板及び第3板は棺の長手方向に沿って延在し、第2板及び側壁と第3板及び側壁とがそれぞれ、接続された構成とすることが好ましい。第2板又は第3板と側壁とを接続することにより、棺の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保管や運搬などの際にはコンパクトに折り畳むことが可能であり、棺を構成する部材を回動させて組み立てたり折り畳んだりすることが可能な段ボール製の棺を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る段ボール製棺の表面を分解した状態で示した展開図である。
【
図2】
図1の段ボール製棺の裏面を分解した状態で示した展開図である。
【
図3】
図1の段ボール製棺を組み立てる過程を示す斜視図である。
【
図4】
図1の段ボール製棺を組み立てる過程を示す斜視図であり、
図3の後の工程を示すものである。
【
図5】
図1の段ボール製棺を組み立てた状態における棺本体を示す斜視図である。
【
図6】
図5の棺本体に蓋体を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図であり、
図8の後の工程を示すものである。
【
図10】第1実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図であり、
図9の後の工程を示すものである。
【
図11】第1実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図であり、
図10の後の工程を示すものである。
【
図13】第2実施形態に係る段ボール製棺の表面を分解した状態で示した展開図である。
【
図14】
図13の段ボール製棺の裏面を分解した状態で示した展開図である。
【
図15】
図13の段ボール製棺を組み立てる過程を示す斜視図である
【
図16】
図13の段ボール製棺を組み立てる過程を示す斜視図であり、
図15の後の工程を示すものである。
【
図17】
図13の段ボール製棺を組み立てる過程を示す斜視図であり、
図16の後の工程を示すものである。
【
図18】
図13の段ボール製棺を組み立てた状態における棺本体を示す斜視図である。
【
図19】
図18の棺本体に蓋体を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図21】組み立てた第1実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図である。
【
図22】第2実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図である。
【
図23】第2実施形態に係る段ボール製棺を折り畳む様子を示す斜視図であり、
図22の後の工程を示す斜視図である。
【
図25】第3実施形態に係る段ボール製棺を分解した状態を示す斜視図である。
【
図26】段ボール製棺を構成する段ボールに設けられた切れ込み部の一例を示す断面図である。
【
図27】段ボール製棺を構成する段ボールに設けられた切れ込み部の他例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の段ボール製棺の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1ないし
図12に、段ボール製棺の第1実施形態を示す。
図13ないし
図24に、段ボール製棺の第2実施形態を示す。
図25に段ボール製棺の第3実施形態を示す。
【0015】
[第1実施形態]
本実施形態の段ボール製棺1a(以下、単に棺ということがある。)は、
図1ないし
図12に示したように、棺1aの長手方向に延びる一対の側壁11と、一対の側壁11をつなぐ底板12と、棺1aの妻部13とを有する。側壁11は、棺1aの長手方向に沿って延在しており、棺1aを組み立てた状態において棺1aの上方に向かって延在する。底板12は、前記一対の側壁11をつなぐ。本実施形態の棺1aでは一対の側壁11と底板12とは、組み立てた状態においては、断面がコの字状の形状となる。そして、妻部13は、四角形状の開口部となる。
【0016】
妻部13に配される開口部には、
図5に示したように、妻部13の延在方向、すなわち棺1aの短手方向に沿って第1板14aが配される。第1板14aは、棺1aを組み立てた状態において、棺の上方に延在する形状である。第1板14aは、
図5に示したように、棺1aを組み立てた状態において、側壁11の延在方向に沿って延びる第2板15と棺1aの長手方向に沿って延びる第3板16とを備えている。
【0017】
本実施形態の棺1aでは、第1板14aの左右の両端部には、第2板15及び第3板16が配されており、第1板14aの下端部には、底板12と第1板14aとを固定するための固定部として、固定板17aが配されている。
底板12と固定板17aとは、例えば、
図7に示したように、連通孔171を
底板12と固定板17aとに設けて、ダボなどの固定具(図示略)を連通孔171に挿入することによって、固定することができる。また、第1板14aと固定板17aとは、例えば、接着剤、若しくは粘着剤などの接合剤、螺子、ダボとダボ穴などの連結具などによって固定したりすることができる。
【0018】
図8及び
図9に示したように、第1板14aは、底板12に対して接近する方向に回動可能な状態で底板12により支持されている。支持するというときは、固定板17aを底板12に対して固定することにより、支持された状態を含むものとし、後述の第2実施形態のように底板と第1板を一体に構成することにより、第1板を底板で支持した状態を含むものとする。なお、
図8においては、説明の便宜のため、第1板14aを底板12から分離した状態を示したが、実際に組み立て又は折り畳む作業を行う際には、第1板14aは底板12に支持された状態で行う(
図3、
図4、
図9、
図25においても同様である。)。
図5に示したように、棺1aを組み立てた状態においては、第1板14aは、棺1aの上方に向かって延在する状態となっている。
図9に示したように、棺1aを折りたたむ際には、棺1aの第1板14aを底板12に接近する方向
に回動させることにより、折り畳むことができようになっている。棺1aでは、第1板14aが底板12に接面するまで回動することができる。
【0019】
図1及び
図4の第2板15の形状の比較と
図1、
図8及び
図9の第2板15の形状の比較とからわかるように、第2板15は、第1板14aの一方の面又は他方の面に接近する方向に回動可能な状態で第1板14aに支持されている。同様に第3板16は、第1板14aの一方の面又は他方の面に接近する方向に回動可能な状態で第1板に支持されている。
図5に示したように、棺1aを組み立てた状態においては、第2板15又は第3板16は、棺1aの長手方向に沿って延在する状態となっている。棺1aを折りたたむ際には、
図8及び
図9に示したように、第1板14aの他方の面に接近する方向に回動させることにより、折り畳むことができる。棺1aでは、第2板15又は第3板16が第1板14aの他方の面に接するまで、回動することができる。
図9の例では、第2板15又は第3板16を第1板の他方の面に接するまで回動させる構成としたが、第2板15又は第3板16を第1板の一方の面に接するまで回動させる構成としてもよい。なお、
図1の例では、第1板14aの一方の面は、第1板の表面に相当し、第
1板の他方の面は、第1板14aの裏面に相当する。表面は、
図1に示したように、棺を展開した状態において、棺の上方を向く面のことをいう。
【0020】
図9ないし
図11における側壁11の形状の違いからわかるように、一対の側壁11も底板12に対して接近する方向
に回動させることができる。このため、第2板15及び第3板16を、第1板14aの一方の面又は他方の面に接近する方向に回動させ、第1板14aを底板12に接近する方向に回動させ、かつ側壁11を底板12に接近する方向に回動させることで、
図11及び
図12に示したように、側壁11と底板12との間に第1板14a、第2板15及び第3板16を収納することができる。これによって、棺1aを保管したり、運搬したりする際に、棺1aをコンパクトに折り畳むことが可能になる。
【0021】
本実施形態の棺1aでは、第1板14aの一方の面が底板12に対して接近する方向に回動し、第2板15及び第3板16が第1板14aの他方の面に接近するように回動する。このため、第2板15や第3板16が底板12などの他の部材に干渉しにくくなるため、折り畳みやすい形状となっている。そして、第2板15及び第3板16を折り畳んだ状態で第1板を平面から見た際には、第1板14aの縁から第2板15及び第3板が突出しない形状になっているため、折りたたむ際に、第2板15及び第3板16が側壁11などの他の部材に干渉しにくくなっている。
【0022】
図1に示したように、第1板14aと第2板15とは、切れ込み部18aによって、区画された形状となっている。同様に、第1板14aと第3板16も、切れ込み部18aによって、区画された形状となっている。
図2に示したように、第1板14aと固定板17aも、切れ込み部18aによって区画された形状となっている。第1板14aと第2板15とを区画する切れ込み部18a、及び第1板14aと第3板16とを区画する切れ込み部18aは、
図1に示したように、第1板の一方の面に設けられる。一方、第1板14aと固定板17aとを区画する切れ込み部18aについては、
図2に示したように他方の面に設けられる。
【0023】
本実施形態の棺1aを構成する段ボール19は、
図26に示したように、第1ライナー191と、第1波状部192と、第2波状部193と、第2ライナー194と、第1波状部192と第2波状部193とを隔てる隔壁層195とを有する。本実施形態の棺1aでは、段ボールを折り曲げて回動させやすくするために、第2ライナー194を残して、第1ライナー191、第1波状部192、隔壁層195、及び第2波状部193が切除されている。これにより、第2ライナー194側に段ボールを折り曲げる際には、第2ライナーと第2ライナーとが接するまで折り曲げることが可能になる。棺を構成する段ボールは、単層でも複層でもよいが、溝を切り入れる側とは反対側のライナーを残すように溝を切ることが好ましい。なお、
図26の例では、第1ライナー191、第2ライナー194、及び隔離層195は、板状の紙から構成される。第1波状
部192及び第2波状
部193は、紙を波状に繰り返し曲げた形状を有する。
【0024】
切れ込み部18aは、
図26に示したように、例えば、棺を構成する段ボールを断面がV字状の溝が線状に構成されるようにして構成してもよい。また、切れ込み部18bは、
図27に示すようにI字状の溝が線状に構成されるように構成してもよい。V字状の溝の場合は、最大で270度程度の回動範囲が得られる。I字状の溝では、最大で180度程度の回動範囲が得られる。第1板14aと第2板15との間、及び第1板14aと第3板16との間にV字状の切れ込み部18aを配置することによって、第2板15及び第3板16が棺1aの長手方向に延在した状態で位置が定まりやすくなる。これによって、棺1aの組み立て作業を効率化することができるし、棺1aの剛性を高めることができる。
【0025】
本実施形態の棺1aでは、側壁の下端部における側壁11と底板12との境界部分に切れ込み部18aが棺の長手方向に沿って設けられている。切れ込み部は、棺1aの内側の面、すなわち一方の面に設けられる。
図1のように側壁11が展開された状態から、側壁11を起こして、側壁11が上方に延在するように折り曲げやすいように構成されている。側壁11と底板12との境界部分にもV字状の切れ込み部を設ければ、側壁11が上方に延在した状態で位置決めを行うことができるので好ましい。
【0026】
本実施形態の棺1aでは、
図12に示したように、側壁11が底板12に対して接近する方向
に回動する動作の中心Cは、底板から離隔して配置されている。
図12の例では、回動動作の中心Cは、底板12と傾倒した側壁11との間に第1板14a、第2板15、第3板16、及び後述する外装材20を収納するに足りる長さHとされている。これにより、無理のない状態で、傾倒した側壁11と底板12との間に、第1板14a、第2板15、及び第3板16を収納することができるようになっている。Hは、例えば、10~300mm又は10~200mmの範囲とすることができる。なお、回動中心Cは、切れ込み部18aを設ける位置により、決定することができる。本実施形態の棺1aでは、棺1aの内側、すなわち側壁の一方の面に、回動動作の中心Cを規定する切れ込み部18aを棺1aの長手方向に沿って設けている。
【0027】
本実施形態の棺1aでは、
図10に示したように、傾倒した側壁11と底板12との間に、後述する外装材20を収納できるように構成されている。すなわち、一方の妻部に配される第1板14aと他方の妻部に配される第1板14aとの間には、妻部から取り外した外装材20を収納する空間部21が設けられている。なお、本実施形態の棺1aでは、蓋体22は、
図10及び
図11に示したように、傾倒させた一対の側壁11の上に重ねた状態で保管又は運送等を行うことができるようになっている。
【0028】
本実施形態の棺1aでは、
図5に示したように、棺1aを組み立てた状態において、第2板15の他方の面及び一方の側壁11の内面と、第3板の他方の面及び他方の側壁11の内面とが接続されている。第2板15又は第3板16は、棺1aを組み立てた状態において、側壁11が内側に倒れ込むことを防止する。第2板15又は第3板16と側壁11との接続は、接着剤、粘着剤、ダボ、螺子、ステープルなどの適宜の手段で接続することができる。
【0029】
本実施形態の棺1aでは、
図4及び
図5に示したように、第1板14aの外側には、外装材20として、突枠201の内側に、段ボール板202を嵌めたものが固定されている。段ボール板202は、棺1aの表側になる部分には、化粧シートを貼着してもよい。化粧シートには、例えば、木目調の模様、任意の色彩などが施されたものを使用することができる。本実施形態の棺1aでは、第1板14aは、妻部周辺の強度を高める補強材として機能する。第1板14aの外側には、上述の外装材20が固定されるため、外装材20によっても、棺1aの剛性を高めることができる構成となっている。突枠201は、枠の縁部分に沿って、棺の長手方向に突出する突条を有する。
【0030】
本実施形態の棺1aでは、
図5に示したように、外装材20の突枠201の高さは、棺1aの側壁11の高さよりも大きく構成されている。このため、突枠201の内縁と側壁11の上端との間には、隙間Tが形成されている。この隙間Tは、棺1aの開口部を閉じる蓋体22の端部を内側に嵌めることができる大きさに設定されている。このため、この隙間Tに蓋体22の端部を嵌めることによって、蓋体22を棺本体に対して安定して固定することができるようになっている。また、この構成によれば、側壁を構成する段ボールと、外装材の枠体と、蓋体の突枠とが重なり合うといったことがない。段ボールの重なり合う部分が少ないため、蓋体と棺本体との間に隙間が形成されにくくなり、棺の外観をすっきりと仕上げることができる。
【0031】
棺1aを作業員が把持して運搬させる際などには、妻部13の周辺に大きな荷重がかかりやすい。本実施形態の棺1aでは、妻部13は、底板12と固定板17aの二重構造とされており、また第1板14aと外装材20との二重構造とされており、側壁11と第2板15又は第3板16との二重構造とされている。これにより、妻部13の周辺における棺の強度が向上するように構成されている。
【0032】
妻部13に設けられた第1板14a、第2板15、第3板16、又は一対の側壁11の端部などは、外装材20によって覆い隠される。このため、段ボールを切断した端部や段ボールと段ボールの隙間などが棺の外観に現れにくい。本実施系の棺は、妻部における強度に優れるだけでなく、妻部における外観においても優れる。
【0033】
本実施形態の棺では、側壁11には、側壁11を回動させるための切れ込み部18aが設けられている。妻部13には、上述の通り、外装材20が嵌められている。外装材20の突枠201によって、側壁11に切れ込み部18aを設けたことによる、棺の形状変化が抑えられるようになっている。また、妻部13には、第1板15及び第2板16が、一対の側壁11の内側に配置されている。これによっても側壁11に切れ込み部18aを設けたことによる、棺の形状変化が抑えられるようになっている。
【0034】
〔第2実施形態〕
図13ないし
図24に段ボール製棺の第2実施形態を示す。以下では、第1実施形態の段ボール製棺1aと比較して異なる部分について説明する。
図13ないし
図24において、第1実施形態の棺1aと同様の構成については、
図1ないし
図12で用いたのと同じ符号を使用する。
【0035】
本実施形態の棺1bでは、第1板14bが底板12bと一体に構成されており、固定板17aを備えていない点で、第1実施形態に係る棺1aとは異なる。第1板14bは、棺1aと同様の構成の第2板15及び第3板16を備えている。
【0036】
本実施形態の棺1bの第1板14bは、
図13及び
図14に示したように、底板12bと連続している。第1板14bと底板12bとは、一枚の段ボールで構成されている。同様に、第1板14b、第2板15、及び第3板16も、連続する一枚の段ボールで構成されている。
【0037】
図13及び
図14に示されているように、第1板14bは、底板12bとの境界部分に切れ込み部18aを設けることにより区画される。切れ込み部18aは、棺1aの場合と同様に第1板14bの他方の面に設けられる。
【0038】
切れ込み部18aは、溝を切り入れる側とは反対側に位置する第2ライナー194を残した状態とされている。このため、第1板14bは、第1板14aと同様に、底板12bに接面するまで回動させることができる。
【0039】
本実施形態の棺1bは、第1板14b、第2板15、及び第3板16、一対の側壁11の回動動作を利用して、
図13から
図24に示したように、第1実施形態の棺1aと同様の要領で棺を組み立てたり、折りたたんだりすることができる。
【0040】
本実施形態の棺1bでは、
図24に示したように、一対の側壁11のうち、一方の側壁における底板12bと側壁の回動中心Cとの距離H1と、他方の側壁における底板12bと側壁の回動中心Cとの距離H2とが相違するように構成されている。具体的には、H1に比して、H2が小さくなるように構成されている。これにより、
図24に示したように、側壁11を底板12bに対して回動させた際に、傾倒させた側壁11が、略水平方向になるように、折りたたむことが可能になっている。保管時等において、側壁を略水平とした状態とすることができるので、折りたたんだ棺を重ねた際に、棺を破損しにくくすることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図25に段ボール製棺の第3実施形態を示す。以下では、第1実施形態の段ボール製棺1aと比較して異なる部分について説明する。
図25において、第1実施形態の棺1aと同様の構成については、
図1ないし
図12で用いたのと同じ符号を使用する。
【0042】
本実施形態の棺1cでは、
図25に示したように、外装材20を有しておらず、第1板14aが妻部に設けられた開口部を塞ぐ外装材として機能する。第1板14aの外装面側には、上述の化粧シートや布などを積層してもよい。
【0043】
本実施形態の棺1cでは、
図25に示したように突枠221を有する蓋体22cを備える。蓋体22cの突枠221の内側に、棺本体の上端部を嵌めることで、蓋体22cを棺本体に対して安定した状態で取り付けることができるようになっている。蓋体は、板状として、裏面に面ファスナーを設ける構成としてもよい。蓋体に設けた面ファスナーに係合する面ファスナーを棺本体に設けることによって、蓋体を棺本体に対して固定することができる。
【0044】
上記の第1実施形態から第3実施形態の棺では、側壁と底面によって、棺の本体の断面が角形に形成される。棺本体の形状はこれに限定されない。例えば、棺の断面が楕円や円形になるようにしてもよいし、棺を上方から見た形状が円形、5角形若しくは6角形などの多角形になるようにしてもよい。
【0045】
上記の第1実施形態から第3実施形態の棺では、第1板は妻部の開口部を塞ぐ方形状とした。第1板の形状はこれに限定されない。例えば、第1板は、円形などでもよいし、開口部の大きさよりも小さい形状であってもよい。同様に第2板、第3板、又は固定板の形状も上記の実施形態のものに限定されず、例えば、楕円形上の板などでもよい。
【0046】
上記の第1実施形態及び第2実施形態の棺では、妻部に配される外装材は、突枠を有するものとした。外装材の形状はこれに限定されない。例えば、外装材は、突枠を有しない段ボール板であってもよいし、布などで構成してもよい。
【0047】
上記の第1実施形態の棺では、固定部は、平面視において、棺の短手方向に長手方向が位置する長方形状とした。固定部の形状は、これに限定されず、第1板を底板に対して固定できるものであればよい。固定部としては、例えば、台形状、楕円形状、又は円弧状などの板状にすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1a 段ボール製棺
11 側壁
13 妻部
14a 第1板
14b 第1板
15 第2板
16 第3板
12 底板
12b 底板
18a 切れ込み部
18b 切れ込み部