(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】光検出装置、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
G01J1/02 D
G01J1/02 B
(21)【出願番号】P 2019175013
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】511140194
【氏名又は名称】株式会社フォブ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】大出 孝博
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-311307(JP,A)
【文献】特表2002-512380(JP,A)
【文献】特開2007-104573(JP,A)
【文献】特開2011-192860(JP,A)
【文献】特開昭61-15353(JP,A)
【文献】特開2014-222264(JP,A)
【文献】特開2003-22542(JP,A)
【文献】特開2004-179197(JP,A)
【文献】特開昭62-180930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
G02B 6/26-G02B 6/27
G02B 6/30-G02B 6/34
G02B 6/42-G02B 6/43
H01L 23/34-H01L 23/473
H10K 30/60-H10K 30/65
H10K 39/30
H01S 5/00-H01S 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸中心線と直交する断面において円形であり、軸中心線に対して一定の傾斜角度で傾斜したテーパ状の内周面を有する外周器と、
前記外周器の内部に配置され、
軸中心線と直交する断面において円形であり、軸中心線に対して一定の傾斜角度で傾斜したテーパ状の外周面を有する内周器と、
前記内周器の内部に配置された受光素子と、
前記内周器と前記外周器との間に
複数配置された一定の厚さを有する板状の放熱素子であって、それぞれが前記軸中心線に対して傾斜して配置された放熱素子と、
前記外周器と前記放熱素子との間、又は前記内周器と前記放熱素子との間に設けられたグリースと、を備え、
前記複数の前記放熱素子が、前記軸中心線と直交する断面において、前記円形の周方向に沿って等間隔に並んで配置されている光検出装置。
【請求項2】
前記放熱素子と前記内周器との間、及び前記放熱素子と前記外周器との間にグリースが設けられている請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記放熱素子が接着剤により前記内周器又は前記外周器に固定されている請求項1、又は2に記載の光検出装置。
【請求項4】
軸中心線と直交する断面において円形であり、軸中心線に対して一定の傾斜角度で傾斜したテーパ状の内周面を有する外周器と、
前記外周器の内部に配置され、
軸中心線と直交する断面において円形であり、軸中心線に対して一定の傾斜角度で傾斜したテーパ状の外周面を有する内周器と、
前記内周器の内部に配置された受光素子と、
前記内周器と前記外周器との間に
複数配置された一定の厚さを有する板状の放熱素子であって、それぞれが前記軸中心線に対して傾斜して配置された放熱素子と、
前記外周器と前記放熱素子との間、又は前記内周器と前記放熱素子との間に設けられたグリースと、を備え、
前記複数の放熱素子が、前記軸中心線と直交する断面において、前記円形の周方向に沿って等間隔に並んで配置されており、
前記外周器内に前記内周器を挿入するステップと、
前記内周器を挿入した後に、前記外周器の一端にフロントプレートを取り付けるステップと、を備えた光検出装置の製造方法。
【請求項5】
前記フロントプレートが取り付けられた内周器の内部空間をパージ又は排気するステップをさらに備えた請求項4に記載の光検出装置の製造方法。
【請求項6】
前記外周器と前記放熱素子との間に前記グリースが設けられており、
前記放熱素子が固定された前記内周器が、前記外周器に挿入される請求項4、又は5に記載の光検出装置の製造方法。
【請求項7】
前記内周器と前記放熱素子との間に前記グリースが設けられており、
前記放熱素子が固定された前記外周器に、前記内周器が挿入される請求項4、又は5に記載の光検出装置の製造方法。
【請求項8】
前記放熱素子と前記内周器との間、及び前記放熱素子と前記外周器との間にグリースが設けられている請求項4~7のいずれか1項に記載の光検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管、フォトダイオードなどの受光素子を用いた光検出装置では、受光素子を冷却する需要がある。従来は受光素子全体を冷却していたが、最近では光電面を集中的に冷却しているものもある.この場合よく使われるのは穴あき電子冷却素子(ペルチェ素子)である。
【0003】
しかしながら、光電面の大きな受光素子では、光電面からの熱の流入が大きくなる。このため、ペルチェ素子は光電面の小さな受光素子の場合と比べ、より多くの熱量を移動させなければ同程度の冷却ができなくなってしまう。このためペルチェ素子の発熱量が増える。一般にペルチェ素子は吸熱量の3倍程度発熱することが知られている。
【0004】
また光検出器の胴(外径)が太くなるので外周ケースから受光素子への熱帰還量も増加してしまい、冷却を効率良く行うことが困難である。そこで光電面の大きな受光素子では、光電面冷却のみならず素子全体を冷却する必要がある。
【0005】
特許文献1には、光電陰極を有する装置が開示されている。特許文献1の
図6では、イメージ増倍管の側面と冷却箱との間にペルチェ素子が配置されている。複数のペルチェ素子がイメージ増倍管の側面に当たるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受光素子全体を冷却するために、ペルチェ素子を効率的に配置することが望まれる。特許文献1の
図6では、受光素子とペルチェ素子と冷却箱(放熱器)とが同一方向にアライメントされている。したがって、受光素子の外形公差、ペルチェ素子の厚み公差、放熱器の内径公差等を考慮すると、各素子間に間隔(隙間)が必要となる。
【0008】
また熱媒体(放熱グリース等)は「ちょう度」が高いため、間隔を広げなければ組立時に受光素子を滑り込ませることが難しくなる。上記から、放熱グリースの厚みを許容せざるを得なくなる。放熱グリースの厚みが大きくなるほど、大きな熱抵抗となってしまう
【0009】
非特許文献1は一般市販の放熱グリースの資料である.これによると、放熱グリースの熱伝導度は0.8W/mKと、放熱器などに良く使用される銅(401W/mK)やアルミ(250W/mK)と比べ、かなり低い。また一般的に熱伝導度の高い放熱グリースはちょう度も高い。組み立てが容易で、かつ熱伝導度の高い放熱グリースを用意することは困難である。
【0010】
本開示は、このような事情を背景としてなされたものであり、冷却性能が高く、かつ組み立てが容易な光検出装置、及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の一態様にかかる光検出装置は、軸中心線に対して傾斜したテーパ状の内周面を有する外周器と、前記外周器の内部に配置され、軸中心線に対して傾斜したテーパ状の外周面を有する内周器と、前記内周器の内部に配置された受光素子と、前記内周器と前記外周器との間に配置され、前記軸中心線に対して傾斜して配置された放熱素子と、を備えている。
【0012】
上記の光検出装置において、前記外周器と前記放熱素子との間にグリースが設けられていてもよい。
【0013】
上記の光検出装置において、前記内周器と前記放熱素子との間にグリースが設けられていてもよい。
【0014】
上記の光検出装置において、前記放熱素子が接着剤により前記内周器又は前記外周器に固定されていてもよい。
【0015】
本実施形態の一態様にかかる光検出装置の製造方法は、軸中心線に対して傾斜したテーパ状の内周面を有する外周器と、前記外周器の内部に配置され、軸中心線に対して傾斜したテーパ状の外周面を有する内周器と、前記内周器の内部に配置された受光素子と、前記内周器と前記外周器との間に配置され、前記軸中心線に対して傾斜して配置された放熱素子と、を備え、前記外周器内に前記内周器を挿入するステップと、前記内周器を挿入した後に、前記外周器の一端にフロントプレートを取り付けるステップと、前記フロントプレートが取り付けられた内周器の内部空間をパージ又は排気するステップと、を備えている。
【0016】
上記の製造方法において、前記内周器と前記放熱素子との間にグリースが設けられている請求項5に記載の光検出装置の製造方法。
【0017】
上記の製造方法において、前記外周器と前記放熱素子との間にグリースが設けられていてもよい。
【0018】
上記の製造方法において、前記放熱素子が固定された前記内周器が、前記外周器に挿入されていてもよい。あるいは、前記放熱素子が固定された前記外周器に、前記内周器が挿入されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、冷却性能が高く、かつ組み立てが容易な光検出装置、及びその製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】組立て時の光検出装置の主要部分を模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
【0022】
本実施の形態にかかる光検出装置100の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、光検出装置の構成を示す側面断面図である。
図2は、光検出装置の構成を示すXY断面図である。
図3は、光検出装置100の構成を示す正面図である。
図2は、光検出装置100の光が入射する入射面側の構成を、3のフロントプレートを外した状態で入射光方向から観察した図であり、受光側の構成を示している。
図3は、3のフロントプレートを示している。
【0023】
図では、説明の明確化のため、XYZ3次元直交座標系を示している。光検出装置100は、円筒形状を有しており、その軸方向をZ方向とする。軸方向と直交する平面がXY平面となる。光検出装置100の受光面は、XY平面と平行になっている。また、-Z側が光検出装置100の受光側となる。光検出装置100の-Z側が前面側となり、+Z側が背面側となる。
【0024】
また、光検出装置100の機械中心線を軸中心線OXとする。軸中心線OXは、Z方向と平行な直線である。軸中心線OXは、後述する受光素子14の受光面の中心を通っている。光検出装置100の基本的な構成は軸対象になっている。したがって、以下の説明では、XY平面において、軸中心線OXの位置を原点とする円の円周方向を周方向とし、当該円の半径方向を径方向とする。
【0025】
光検出装置100は、アウタースリーブ1、インナースリーブ2、フロントプレート3、リアプレート4、ペルチェ素子13、受光素子14等を有している。アウタースリーブ1は、光検出装置100の最も外周側に位置する外周器であり、その内部に受光素子14等が配置される。具体的にはアウタースリーブ1の中空部分にインナースリーブ2、ペルチェ素子13、受光素子14が配置される。アウタースリーブ1は、放熱器となる円筒であり、各素子を収容するためのケースとなる。アウタースリーブ1は、金属製の円筒である。アウタースリーブ1は、例えば、銅により形成されている。アウタースリーブ1の表面にはクロムメッキなどが施されていてもよい。
【0026】
アウタースリーブ1の+Z側の底面には、リアプレート4が設けられており、-Z側の底面にはフロントプレート3が設けられている。つまり、円筒状のアウタースリーブ1の両端面がフロントプレート3、リアプレート4で覆われている。フロントプレート3、及びリアプレート4は、ボルトなどで、アウタースリーブ1に固定されている。また、フロントプレート3とアウタースリーブ1との間には、Oリング11が配置されている。フロントプレート3の背面側、及びリアプレート4の前側には、熱の回り込みを抑制するための断熱フェルト12、21が設けられている。断熱フェルト12、21は厚さ3mmのウールで形成されている。なお、断熱フェルト12、21の代わりにアクリル等を用いてもよい。
【0027】
フロントプレート3には、アウターウィンドウ5が設けられている。アウターウィンドウ5は検出光を透過するよう透明な材料で形成されている。アウターウィンドウ5は、例えば、PMMA(Polymethyl methacrylate)に形成されている。また、アウターウィンドウ5の表面には反射防止コーティングなどが施されていてもよい。
【0028】
フロントプレート3、リアプレート4は、例えば、銅により形成されている。フロントプレート3、リアプレート4の表面にはクロムメッキなどが施されていてもよい。アウタースリーブ1、フロントプレート3、リアプレート4、アウターウィンドウ5等で囲まれた空間は、パージ空間となる.パージ空間は、Krガス、Arガス、又はXeガスなどのパージガスでパージされている。パージガスを用いて、パージ空間をガス置換することで、外周器から内周器への伝熱を低化させるとともに放電を防ぐことができる。パージ空間に、ペルチェ素子13、受光素子14、インナースリーブ2等が配置されている。
【0029】
インナースリーブ2はアウタースリーブ1よりも小さい内周器となる。インナースリーブ2は、金属製の円筒である。インナースリーブ2は鉄又は銅などで形成されていてもよい。インナースリーブ2の材料を鉄とすることで、磁気シールド作用を持たせることができる。例えば、インナースリーブ2として、電磁軟鉄を用いることができる。軟鉄の熱伝導率は73W/mKである。インナースリーブ2の表面にはクロムメッキなどが施されていてもよい。
【0030】
インナースリーブ2は、受光素子14を保持する。つまり、インナースリーブ2の中空部分に受光素子14が配置されている。受光素子14は、光電子増倍管であるが、フォトダイオードやイメージインテンシファイアであってもよい。インナースリーブ2と受光素子14との間に放熱グリースを塗布してもよい。これにより、受光素子14をインナースリーブ2の内部に滑り込ませることができる
【0031】
より詳細には、インナースリーブ2の内周面には、凸部2aが設けられている。凸部2aは、インナースリーブ2の内周面において軸中心側に突出した突起である。受光素子14が背面側から凸部2aに当接することで受光素子14が固定される。受光素子14はインナースリーブ2内に挿入されている。なお、受光素子14は少なくともその一部がインナースリーブ2内に配置されていればよい。
【0032】
受光素子14は、例えば、円筒状の光電子増倍管である。受光素子14は受光量に応じた検出信号を出力する。受光素子14の受光面がインナーウィンドウ6側に配置されている。受光素子14の受光面は、直径数mm~数十mm程度の円形となっている。XY平面における受光素子14の外形は円形であってもよく、角形となっていてもよい。つまり、受光素子14の形状は円筒形に限らず、直方体形状となっていてもよい。受光素子14を収容するように、インナースリーブ2の内周面が加工されていればよい。受光素子14には受光面側の温度を検出するためのサーミスタ22が取り付けられている。サーミスタ22で検出した温度に応じて、ペルチェ素子13の放熱を制御してもよい。
【0033】
インナースリーブ2の前面側には、インナーウィンドウ6が取り付けられている。インナーウィンドウ6は、隙間を隔てて、受光素子14の前面に配置される。インナーウィンドウ6は検出光を透過するよう透明な材料で形成されている。インナーウィンドウ6は、例えば、PMMAに形成されている。また、インナーウィンドウ6の表面には反射防止コーティングなどが施されていてもよい。
【0034】
インナースリーブ2と、アウタースリーブ1との間には、ペルチェ素子13が配置されている。
図2に示すように、周方向に沿って、複数のペルチェ素子13が並んでいる。ここでは、8個のペルチェ素子13が同じ大きさとなっている。ペルチェ素子13が、長方形の薄板状になっている。例えば、ペルチェ素子13のサイズは、22mm×11mm×3.27mmである。また、厚さの
公差は3.27mm±0.01mmとなっている。
【0035】
図2に示すように、8個のペルチェ素子13が周方向に等間隔に配置されている。周方向において、8個のペルチェ素子13が一定の角度で配置されている。XY平面において、8個のペルチェ素子13が同心円上に配置される。なお、ペルチェ素子13は、接着剤などによりインナースリーブ2の外周面に固定されていてもよい。なお、隣接するペルチェ素子13同士をワイヤなどで固定していてもよい。
【0036】
ペルチェ素子13は、放熱素子であり、一方の面で吸熱した熱を反対側の面に移動させる。ペルチェ素子13の吸熱面は、インナースリーブ2に対向する面となっており、放熱面はアウタースリーブ1側の面となっており。つまり、ペルチェ素子13は、インナースリーブ2の熱をアウタースリーブ1に放熱する。これにより、受光素子14の持つ熱を外部に放熱し、受光素子14の温度を下げることができる。
【0037】
リアプレート4には、ポート16が設けられている。ポート16には、信号を取り出すためのコネクタが接続される。さらに、リアプレート4には、ガス蓋19が取り付けられている。ガス蓋19は、パージ空間をパージするためのガス穴(不図示)を塞ぐ。つまり、パージ空間をパージした後に、ガス蓋19がリアプレート4に取り付けられる。なお、ガス蓋19とリアプレートとの間にはOリング20が設けられている。
【0038】
受光素子14の背面側には、プリント基板15が設けられている。プリント基板15の厚さは、1.6mmとなっており、その両面に配線が形成されている。プリント基板15には、信号線や電源線等の配線が形成されている。受光素子14の背面側に突出したピン14aが、プリント基板15に挿入されている。これにより、受光素子14とプリント基板15との配線が電気的に接続される。さらに、プリント基板15には、ペルチェ素子13やサーミスタ22に接続される配線が形成されている。同様に、プリント基板15の配線がピンなどを介して、ペルチェ素子13、サーミスタ22と接続される。
【0039】
また、プリント基板15とインナースリーブ2との間には、スペーサリング7が介在している。よって、スペーサリング7の厚みに応じた隙間が、受光素子14とプリント基板15との間に設けられる。
【0040】
プリント基板15の背面側には、ギャップリング8、ヒートシールド9、ギャップリング10が設けられている。ヒートシールド9はXY平面に沿った板状の部材である。ギャップリング8、ギャップリング10は、中空部分を有するリング状の部材である。ギャップリング8、ヒートシールド9、及びギャップリング10は、例えば、PMMAで形成されている。
さらに、ギャップリング10の背面側には、断熱フェルト21が配置されている。なお、図示を省略するが、断熱フェルト21には、ケーブル又はコネクタを通すための貫通穴が設けられていてもよい。
【0041】
ヒートシールド9は、背面側からの熱の回り込みを防ぐために設けられている。ギャップリング8、ギャップリング10は、ギャップを形成するために設けられている。ギャップリング8の厚みに応じたギャップが、ヒートシールド9とプリント基板15と間に形成されている。ギャップリング10の厚みに応じたギャップが、ヒートシールド9と断熱フェルト12と間に形成されている。
【0042】
また、プリント基板15の背面側には、コネクタ25が取り付けられている。コネクタ25は、プリント基板15上に設けられた配線に接続されている。また、コネクタ25からポート16までケーブル(不図示)が引き出されている。ポート16を介して、受光素子14からの検出信号を光検出装置100の外部に取り出すことができる。また、コネクタ25を介して、外部の電源を受光素子14に供給することができる。なお、
図1では1つのコネクタ25のみが図示されているが、サーミスタ22やペルチェ素子13と接続するためのコネクタを別途設けてもよい。コネクタとしては、SHVコネクタやSMAコネクタを用いることができる。
【0043】
なお、
図1に示すパージ空間内の構成、及び素子は、光検出装置100の一例を示すものであり、図に示す構成に限定されるものではない。
【0044】
以下、
図4を参照して、光検出装置100の主要部の構成について説明する。
図4は、組立て時における光検出装置100の主要部の構成を模式的に示している。ここでは、主要部として、ペルチェ素子13、受光素子14、インナースリーブ2、アウタースリーブ1、インナーウィンドウ6等を示しており、その他の構成については適宜省略している。
【0045】
図4において、アウタースリーブ1のペルチェ素子13に対向する側面を内周面1iとする。また、インナースリーブ2のペルチェ素子13に対向する側面を外周面2oとする。内周面1iと外周面2oが軸中心線に対して傾いている。内周面1iがテーパ状になっているため、-Z方向に向かうにつれて円筒状のアウタースリーブ1の内径が徐々に小さくなっていく。よって、アウタースリーブ1の+Z側の端面において、アウタースリーブ1の外径が最も大きくなっている。同様に外周面2oがテーパ状になっているため、-Z方向に向かうにつれて円筒状のインナースリーブ2の外径が徐々に小さくなっていく。
【0046】
軸中心線OXに対する内周面1iの傾斜角度θは、例えば、5°となっている。同様に、軸中心線OXに対する外周面2oの傾斜角度は、5°となっている。つまり、内周面1iと外周面2oは平行になっている。内周面1iと外周面2oとが同じ傾斜角度になっている。このため、インナースリーブ2をアウタースリーブ1内に挿入すると、内周面1iと外周面2oとを互いに平行な状態で対向する。厚さが一定のペルチェ素子13をアウタースリーブ1とインナースリーブ2との間に介在させることができる。
【0047】
さらに、アウタースリーブ1の内周面1iには、放熱グリース31が塗布されている。放熱グリース31は、例えば、シリコーン樹脂である。例えば、放熱グリース31として、サンハヤト株式会社製SCH-20を用いることができる。この場合、放熱グリース31の熱伝導率0.84W/m・Kであり、ちょう度は290となる。なお、アウタースリーブ1の内周面1iではなく、ペルチェ素子13に放熱グリース31を塗布してもよい。
【0048】
上記のように、インナースリーブ2の外周面2oには、接着剤などにより、ペルチェ素子13が固定されている。また、インナースリーブ2の内部には、受光素子14が取り付けられている。インナースリーブ2に受光素子14とペルチェ素子13が取り付けられた構成を挿入ユニット30とする。なお、
図4では挿入ユニット30には、インナーウィンドウ6、スペーサリング7、プリント基板15、及びコネクタ25が設けられているが、これらは、挿入後に取り付けられていてもよい。
【0049】
光検出装置100の組立て時には、挿入ユニット30をアウタースリーブ1の内部に挿入する。つまりアウタースリーブ1の+Z側の端面を挿入口として、アウタースリーブ1の内部に挿入ユニット30を-Z方向に押し込んでいく。内周面1iには、放熱グリース31が塗布されているため、挿入ユニット30を内周面1iに沿って滑り込ませていくことができる。そして、挿入ユニット30が動かなくなる位置まで-Z方向に挿入ユニット30を押し込んでいく。つまり、内周面1iの径が小さっていく方向に、挿入ユニット30が移動していくため、挿入ユニット30がアウタースリーブ1に内部に嵌め込まれる。
【0050】
上記のように、内周面1i、及び外周面2oがテーパ面となっているため、アウタースリーブ1の外径公差、インナースリーブ2の内径公差、ペルチェ素子13の厚さ公差がある場合でも組立てを容易に行うことができる。さらに、放熱グリース31の厚さを薄くすることができるため、放熱特性を向上することができる。
【0051】
内周面1i、及び外周面2oが平行なテーパ面となっているため、厚さが一定のペルチェ素子13を用いることができる。つまり、厚さが一定のペルチェ素子13が軸中心線OXから傾いて配置される。厚さが一定のペルチェ素子13は、安価で入手が容易であるため、部品コストを低減することができる。よって、製造コストを低減することができる。なお、内周面1iと外周面2oとは平行となっていなくてもよい。
【0052】
また、放熱器となるアウタースリーブ1がペルチェ素子13、及びインナースリーブ2等を含む挿入ユニット30から分離されている。つまり、挿入ユニット30を軸中心線OXに沿って挿入することで、光検出装置100を組立てることができる。よって、組立を容易に行うことができる。さらに、アウタースリーブ1が分離されているため、容易にガス置換することができる。
【0053】
インナースリーブ2と受光素子14との間には放熱グリースを塗布してもよい。つまり、受光素子14をインナースリーブ2に挿入する際に、受光素子14を横滑りさせるようにしてもよい。なお、インナースリーブ2と受光素子14との間では熱の移動量が少ないので、挿入しやすいように隙間を広めに設定しても問題無い。同様の理由で、インナースリーブ2には熱伝導率の低い電磁軟鉄を使用できるので、磁気シールド作用を持たせることも可能である。
【0054】
なお、上記の説明では、アウタースリーブ1とペルチェ素子13との間に放熱グリース31を設けていたが、インナースリーブ2とペルチェ素子13との間に放熱グリース31を設けてもよい。この場合、接着剤などを用いて、アウタースリーブ1の内周面1iにペルチェ素子13を固定した状態として、インナースリーブ2を横滑りさせてもよい。この場合、挿入ユニット30がペルチェ素子13を含んでいない構成となる。つまり、インナースリーブ2を含む挿入ユニット30を、ペルチェ素子13が取り付けられたアウタースリーブ1に挿入すればよい。
【0055】
あるいは、ペルチェ素子13の放熱面と吸熱面の両面に放熱グリース31が設けられていてもよい。つまりアウタースリーブ1とペルチェ素子13との間、及びペルチェ素子13とアウタースリーブ1との間に、放熱グリース31を配置してもよい。例えば、複数のペルチェ素子13を一体化して、アウタースリーブ1に挿入する。そして、複数のペルチェ素子13に内部に、インナースリーブ2を挿入する。
【0056】
また、放熱素子として、ペルチェ素子13の代わりに、フレキシブルな熱電変換モジュールを用いることも可能である。これにより、外周面2oに沿って放熱素子を配置することができる。
【0057】
本実施の形態にかかる光検出装置100の製造方法では、アウタースリーブ1内にインナースリーブ2を挿入する。例えば、
図4に示すように、インナースリーブ2を含む挿入ユニット30を、アウタースリーブ1内に挿入する。そして、インナースリーブ2(挿入ユニット30)の挿入後に、ギャップリング8、ヒートシールド9、ギャップリング10、断熱フェルト21をアウタースリーブ1に順次挿入する。その後アウタースリーブ1の一端にリアプレート4を取り付ける。そして、リアプレート4を取り付けた後に、アウタースリーブ1の内部空間をパージ又は排気する。これにより、放熱特性の高い光検出装置100を容易に組立てることができる。
【0058】
また、アウタースリーブ1内にインナースリーブ2を挿入する場合、接着剤でペルチェ素子13が固定されたインナースリーブ2をアウタースリーブ1に挿入するようにしてもよい。つまり、ペルチェ素子13とインナースリーブ2とが一体化した挿入ユニット30を軸中心線OXに沿ってアウタースリーブ1内に挿入すればよい。
【0059】
内周面1i、及び外周面2oは、その全体がテーパ形状となっていなくてもよい。つまり、内周面1i、及び外周面2oの少なくとも一部がテーパ形状となっていればよい。換言すると、内周面1i、及び外周面2oは、軸中心線OXと平行な部分を有していてもよい。内周面1iのテーパ部分と、外周面2oのテーパ部分とが対向配置されていればよい。
【0060】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0061】
100 光検出装置
1 アウタースリーブ
2 インナースリーブ
3 フロントプレート
4 リアプレート
5 アウターウィンドウ
6 インナーウィンドウ
7 スペーサリング
8 ギャップリング
9 ヒートシールド
10 ギャップリング
11 Oリング
12 断熱フェルト
13 ペルチェ素子
14 受光素子
15 プリント基板
16 ポート
19 ガス蓋
20 Oリング
21 断熱フェルト
22 サーミスタ
25 コネクタ
30 挿入ユニット
31 放熱グリース