IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

特許7315222ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム
<>
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図2
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図4
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図5
  • 特許-ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20230719BHJP
   G06F 11/20 20060101ALI20230719BHJP
   G06F 12/0868 20160101ALI20230719BHJP
【FI】
G06F3/06 301Z
G06F3/06 302A
G06F3/06 304H
G06F11/20 694
G06F12/0868 105
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020079158
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021174357
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2020-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】西佐古 訓史
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】脇岡 剛
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-295045号公報(JP,A)
【文献】特開2007-199953(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198449号(WO,A1)
【文献】特開平10-3396号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/06
G06F 11/20
G06F 12/0868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RAIDの構成を有している複数の記録媒体を備える論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュするキャッシュメモリと、
前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームにおいて障害が発生し、前記論理ボリュームにデータを格納することができない閉塞状態であるか否かを判定する状態判定手段と、
前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える切り替え手段と、
前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除するデータ送信手段と、
を備え、
前記データ送信手段は、
閉塞状態と判定された前記論理ボリュームに格納されているデータを閉塞状態ではない一時格納先論理ボリュームに格納し、前記一時格納先論理ボリュームは前記代替え論理ボリュームと異なり、
前記論理ボリュームが閉塞状態ではない新論理ボリュームに交換された後、前記代替え論理ボリュームに送信されたデータと、前記一時格納先論理ボリュームに格納されたデータとを、前記新論理ボリュームに格納するストレージ装置。
【請求項2】
前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記論理ボリュームのアクセス権を読み出し専用に設定する、アクセス権設定手段をさらに備える、請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記状態判定手段は、前記ストレージ装置の他の論理ボリュームを監視し、前記他の論理ボリュームが閉塞状態であると判定した場合、前記他の論理ボリューム用の新たな代替え論理ボリュームを生成する論理ボリューム生成手段をさらに備える、請求項1または2に記載のストレージ装置。
【請求項4】
RAIDの構成を有している複数の記録媒体を備える論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュメモリにキャッシュし、
前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームにおいて障害が発生し、前記論理ボリュームにデータを格納することができない閉塞状態であるか否かを判定し、
前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替え、
前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除し、
閉塞状態と判定された前記論理ボリュームに格納されているデータを閉塞状態ではない一時格納先論理ボリュームに格納し、前記一時格納先論理ボリュームは前記代替え論理ボリュームと異なり、
前記論理ボリュームが閉塞状態ではない新論理ボリュームに交換された後、前記代替え論理ボリュームに送信されたデータと、前記一時格納先論理ボリュームに格納されたデータとを、前記新論理ボリュームに格納する、
ストレージ装置の処理方法。
【請求項5】
ストレージ装置に、
RAIDの構成を有している複数の記録媒体を備える論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュメモリにキャッシュするキャッシュ手段と、
前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームにおいて障害が発生し、前記論理ボリュームにデータを格納することができない閉塞状態であるか否かを判定する状態判定手段と、
前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える切り替え手段と、
前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除し、閉塞状態と判定された前記論理ボリュームに格納されているデータを閉塞状態ではない一時格納先論理ボリュームに格納し、前記一時格納先論理ボリュームは前記代替え論理ボリュームと異なり、前記論理ボリュームが閉塞状態ではない新論理ボリュームに交換された後、前記代替え論理ボリュームに送信されたデータと、前記一時格納先論理ボリュームに格納されたデータとを、前記新論理ボリュームに格納するデータ送信手段と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コピー元ディスクにデータの書き込みができないことを認識すると、データ補償のために、コピー元のキャッシュデータをコピー先のキャッシュデータに転送をする技術がある。特許文献2では、仮想ボリュームを構成する論理ボリュームに故障が発生した場合に、システムを停止させることなく故障ディスクを交換するために、新論理ボリュームに旧データをコピーし、新論理ボリュームへのアクセス切替えを行う技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-163562号公報
【文献】特開2005-266933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャッシュメモリは、複数の論理ボリュームに格納する予定のデータをキャッシュするために使用される。RAID機能を有する論理ボリュームでは、論理ボリュームに含まれる複数の記録媒体がミラーリング等により、データの安全性を保障したり、処理速度の維持を保障したりする。しかしながら、さらなる障害が発生した場合には、論理ボリュームは閉塞状態となり、キャッシュメモリに格納されたデータを論理ボリュームの記録媒体へ格納することができなくなる。ここで、閉塞状態とは、論理ボリュームにおいて障害が発生し、論理ボリュームにデータを格納することができない状態のことである。このとき、キャッシュメモリから論理ボリュームに対してデータを掃き出すことができなくなり、データがキャッシュメモリ上に滞留することで、キャッシュメモリが滞留データにより占有される。結果的に、キャッシュメモリに新たにデータをキャッシュすることができず、他の正常な論理ボリュームに対して入出力遅延を生じさせ、遅延が大きくなった場合には、入出力エラー等のアクセス障害を発生させるといった問題があった。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決するストレージ装置、ストレージ装置の処理方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ストレージ装置は、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュするキャッシュメモリと、前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定する状態判定手段と、前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える切り替え手段と、前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除するデータ送信手段と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、ストレージ装置の処理方法は、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュメモリにキャッシュし、前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定し、前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替え、前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、ストレージ装置に、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュメモリにキャッシュするキャッシュ手段と、前記論理ボリュームを監視し、前記論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定する状態判定手段と、前記論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、前記データの宛先を、前記論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える切り替え手段と、前記データを前記キャッシュメモリから前記代替え論理ボリュームに送信し、前記キャッシュメモリ内の前記データを削除するデータ送信手段と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、データを格納予定の論理ボリュームが閉塞状態であったとしても、キャッシュメモリから代替え論理ボリュームにデータを掃き出すことができ、データがキャッシュメモリ上に滞留することを回避する。これにより、論理ボリュームが閉塞状態となった場合でも、他の正常な論理ボリュームに対する入出力遅延が生じることを防ぎ、入出力エラー等のアクセス障害の発生を低減する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るストレージ装置の最小構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るストレージシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るストレージ装置のデータ退避方法を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るストレージ装置の復旧方法を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の変形例に係るストレージシステムの構成を示す図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例に係るストレージ装置のデータ退避方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るストレージ装置を説明する。
【0012】
(ストレージ装置の最小構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るストレージ装置の最小構成を示す図である。本実施形態に係るストレージ装置1は、キャッシュメモリ11と、論理ボリューム制御手段12とを備える。論理ボリューム制御手段12は、状態判定手段121と、切り替え手段122と、データ送信手段123とを備える。キャッシュメモリ11は、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュする。状態判定手段121は、論理ボリュームを監視し、論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定する。切り替え手段122は、論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、データの宛先を、論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える。データ送信手段123は、データをキャッシュメモリ11から代替え論理ボリュームに送信し、キャッシュメモリ11内のデータを削除する。
【0013】
なお、図1におけるキャッシュメモリ11及び論理ボリューム制御手段12の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりキャッシュメモリ11及び論理ボリューム制御手段12の動作を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0014】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0015】
(ストレージシステムの構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るストレージシステムの構成を示す図である。ストレージシステムは、ストレージ装置1と、サーバ2とを含む。ストレージ装置1は、キャッシュメモリ11と、論理ボリューム制御手段12と、論理ボリューム1~n(13(1)~(n))と、代替え論理ボリューム1(14(1))と、キャッシュ管理手段15と、ホストIO制御手段16とを備える。論理ボリューム制御手段12は、状態判定手段121と、切り替え手段122と、データ送信手段123と、アクセス権設定手段124と、論理ボリューム生成手段125とを備える。論理ボリューム1~n(13(1)~(n))のそれぞれは、2つの記録媒体を備える。これら2つの記録媒体により、例えばRAID1のミラーリング機能が実装されてもよい。論理ボリューム1~n(13(1)~(n))のそれぞれは、RAID機能を有する論理ボリュームであり、論理ボリューム1~n(13(1)~(n))の記録媒体の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。サーバ2は、ストレージ装置1に対してデータの格納命令を送信する他の装置であってもよい。
【0016】
ホストIO制御手段16は、サーバ2から格納データを受信し、サーバ2に応答を返す。キャッシュメモリ11は、ホストIO制御手段16から受信した、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュする。キャッシュ管理手段15は、キャッシュメモリ11にキャッシュされたデータと、当該データに対する各論理ボリュームへのアクセス先とを管理する。例えば、キャッシュ管理手段15は、キャッシュメモリ11にキャッシュされたデータと、当該データの格納先である論理ボリューム名とを表形式で対応付けて管理してもよい。
【0017】
状態判定手段121は、論理ボリューム1(13(1)~(n))を監視し、論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定する。具体的には、状態判定手段121は、すべての論理ボリューム1(13(1)~(n))の状態情報を定期的に取得することによって論理ボリューム1(13(1)~(n))を監視する。切り替え手段122は、論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、データの宛先を、論理ボリュームから代替え論理ボリューム1(14(1))に切り替える。データ送信手段123は、データをキャッシュメモリ11から代替え論理ボリューム1(14(1))に送信し、キャッシュメモリ11内のデータを削除する。アクセス権設定手段124は、論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、論理ボリュームのアクセス権を読み出し専用に設定する。論理ボリューム生成手段125は、状態判定手段121が論理ボリュームを監視し、論理ボリュームが閉塞状態であると判定した場合、当該論理ボリューム用の代替え論理ボリューム1(14(1))を生成する。
【0018】
論理ボリューム1(13(1)~(n))は、複数の記録媒体を備えており、当該複数の記録媒体でRAIDを構成している。本実施形態では、論理ボリューム1(13(1))は、RAID1の構成を有している。しかしながら、論理ボリューム1(13(1))は、RAIDタイプに依存しない。
【0019】
代替え論理ボリューム1(14(1))は、論理ボリューム1(13(1))が閉塞した後の代わりとなる論理ボリュームであり、サーバ2等の上位からは見ることができない。また、代替え論理ボリューム1(14(1))は、代替え専用の不揮発メモリ等によって構成された論理ボリュームであってもよく、汎用の不揮発メモリによって構成された論理ボリュームであってもよい。
【0020】
(作用、効果)
上述したように、すなわち、本実施形態に係るストレージ装置1は、論理ボリュームが宛先であるデータをキャッシュするキャッシュメモリ11と、論理ボリュームを監視し、論理ボリュームが閉塞状態であるか否かを判定する状態判定手段121と、論理ボリュームが閉塞状態であると判定された場合、データの宛先を、論理ボリュームから代替え論理ボリュームに切り替える切り替え手段122と、データをキャッシュメモリ11から代替え論理ボリュームに送信し、キャッシュメモリ11内のデータを削除するデータ送信手段123と、を備える。
【0021】
これにより、データを格納予定の論理ボリュームが閉塞状態であったとしても、キャッシュメモリから代替え論理ボリュームにデータを掃き出すことができ、データがキャッシュメモリ上に滞留することを回避する。それによる効果として、論理ボリュームが閉塞状態となった場合でも、他の正常な論理ボリュームに対して入出力遅延を生じることを防ぎ、入出力エラー等のアクセス障害の発生を低減することができる。
【0022】
(ストレージシステムの処理フロー)
図3は、本発明の一実施形態に係るストレージ装置のデータ退避方法を示す図である。ストレージ装置1が、論理ボリュームへの格納データを受信してから、当該格納データを代替え論理ボリューム1(14(1))に退避するまでの処理を順番に説明する。
【0023】
サーバ2は、論理ボリューム1(13(1))に格納予定のデータをホストIO制御手段16に送信する。ホストIO制御手段16は、受信したデータをキャッシュメモリ11に送信する。キャッシュメモリ11は、受信したデータをキャッシュする(ステップS301)。キャッシュメモリ11は、論理ボリューム1(13(1))に格納予定のデータをキャッシュしたことを論理ボリューム制御手段12に通知する。
【0024】
論理ボリューム制御手段12は、キャッシュメモリ11からの通知を受信すると、状態判定手段121は、論理ボリューム1(13(1))の状態を監視し、論理ボリューム1(13(1))の状態が閉塞状態であるか否か判定する(ステップS302)。論理ボリューム1(13(1))の状態が閉塞状態であると判定された場合(ステップS302:Yes)、論理ボリューム制御手段12は、代替えフラグがあるか否か判定する(ステップS303)。すなわち、論理ボリューム制御手段12は、論理ボリューム1(13(1))の代わりとなる代替え論理ボリュームが設定されているか否か判定する。論理ボリューム1(13(1))に対する代替え論理ボリュームが設定されているとき、代替えフラグは「1」であり、未設定のとき、代替えフラグは「0」であってもよい。代替えフラグが「0」であるとき、すなわち、代替え論理ボリュームが設定されていない場合(ステップS303:No)、論理ボリューム制御手段12は、論理ボリューム1(13(1))の代わりの論理ボリュームを代替え論理ボリューム1(14(1))に設定する。そして、論理ボリューム制御手段12は、代替えフラグを「1」に設定する(ステップS305)。アクセス権設定手段124は、論理ボリューム1(13(1))のアクセス権を読み出し専用に変更する(ステップS306)。切り替え手段122は、データの格納先を論理ボリューム1(13(1))から代替え論理ボリューム1(14(1))に変更する(ステップS307)。また、ステップS303において、代替えフラグが「1」である場合、すなわち、代替え論理ボリュームが設定されている場合(ステップS303:Yes)、代わりとなる代替え論理ボリュームを確認する(ステップS304)。本実施形態では、確認された代替え論理ボリュームが代替え論理ボリューム1(14(1))であり、切り替え手段122は、データの格納先を論理ボリューム1(13(1))から代替え論理ボリューム1(14(1))に切り替える(ステップS307)。
【0025】
次に、データ送信手段123は、キャッシュメモリ11にキャッシュされているデータを代替え論理ボリューム1(14(1))に格納する(ステップS308)。データ送信手段123は、キャッシュ管理手段15に、データの格納先の情報、すなわち、データの格納先が代替え論理ボリューム1(14(1))であることを示す情報を送信する(ステップS310)。
【0026】
また、ステップS302において、論理ボリューム1(13(1))が閉塞状態ではないと判定された場合(ステップS302:No)、データ送信手段123は、キャッシュされているデータを論理ボリューム1(13(1))に格納する(ステップS309)。データ送信手段123は、キャッシュ管理手段15に、データの格納先が論理ボリューム1(13(1))であることを示す情報を送信する(ステップS310)。
【0027】
次に、論理ボリューム制御手段12は、他に格納予定のデータがキャッシュメモリ11に存在するか否かを判定する(ステップS311)。他に格納予定のデータがキャッシュメモリ11に存在する場合(ステップS311:Yes)、当該データの格納先の論理ボリュームが閉塞状態であるか否かの判定(ステップS302)に戻る。他に格納予定のデータがキャッシュメモリ11に存在しない場合(ステップS311:No)、処理フローは完了する。
【0028】
上述の処理フローでは、キャッシュメモリ11からの通知を受信したときに、状態判定手段121は、論理ボリューム1(13(1))の状態を監視した。ここで、状態判定手段121は、キャッシュメモリ11からの通知の有無に関わらず、常に又は定期的に、論理ボリューム1~n(13(1)~(n))の状態を監視してもよい。
【0029】
(作用、効果)
上述したように、すなわち、本実施形態に係るストレージ装置1の処理方法では、キャッシュメモリ11は、論理ボリューム1(13(1))が宛先であるデータをキャッシュメモリにキャッシュする。状態判定手段121は、論理ボリューム1(13(1))を監視し、論理ボリューム1(13(1))が閉塞状態であるか否かを判定する。切り替え手段122は、論理ボリューム1(13(1))が閉塞状態であると判定された場合、データの宛先を、論理ボリューム1(13(1))から代替え論理ボリューム1(14(1))に切り替える。データ送信手段123は、データをキャッシュメモリ11から代替え論理ボリューム1(14(1))に送信し、キャッシュメモリ11内のデータを削除する。
【0030】
これにより、データを格納予定の論理ボリュームが閉塞状態であったとしても、キャッシュメモリから代替え論理ボリュームにデータを掃き出すことができ、データがキャッシュメモリ上に滞留することを回避する。それによる効果として、論理ボリュームが閉塞状態となった場合でも、他の正常な論理ボリュームに対して入出力遅延を生じることを防ぎ、入出力エラー等のアクセス障害の発生を低減することができる。
【0031】
(本実施形態の第1の変形例)
以上、本実施形態に係るストレージ装置1について詳細に説明したが、ストレージ装置1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
【0032】
例えば、本実施形態の第1の変形例として、図3の処理フローが完了した後(ステップS311:No)、論理ボリューム制御手段12は、閉塞状態の論理ボリュームの復旧を行う。
【0033】
(ストレージ装置の復旧フロー)
図4は、本発明の一実施形態に係るストレージ装置の復旧方法を示す図である。以下に、ストレージ装置1が、図3の処理フローが完了(ステップS311:No)してから、ストレージ装置1の復旧処理が完了するまでの処理を順番に説明する。
【0034】
論理ボリューム制御手段12は、閉塞状態と判定されている論理ボリューム1(13(1))に格納されているデータを読み出す。論理ボリューム制御手段12は、読み出したデータをキャッシュメモリ11に格納する。データ送信手段123は、サーバ2が管理する一時格納先の論理ボリュームn(13(n))に、キャッシュメモリ11に格納されたデータを格納する(ステップS401)。次に、サーバ2の管理者は、閉塞状態である故障した論理ボリューム1(13(1))を、正常に動作する新論理ボリュームに交換する(ステップS402)。
【0035】
新論理ボリュームに交換された後、データ送信手段123は、一時格納先論理ボリュームn(13(n))に格納されたデータを新論理ボリュームに格納する(ステップS403)。また、データ送信手段123は、代替え論理ボリュームに格納されているデータを新論理ボリュームに格納する(ステップS404)。次に、データ送信手段123は、新論理ボリュームに格納されたデータの格納先についての情報をキャッシュ管理手段15に送信し(ステップS405)、復旧フローは完了する。
【0036】
(作用、効果)
上述したように、すなわち、本実施形態に係るストレージ装置1の復旧方法では、データ送信手段123は、閉塞状態と判定された論理ボリューム1(13(1))に格納されているデータを閉塞状態ではない一時格納先論理ボリュームn(13(n))に格納し、論理ボリューム1(13(1))が閉塞状態ではない新論理ボリュームに交換された後、代替え論理ボリューム1(14(1))に送信されたデータと、論理ボリュームn(13(n))に格納されたデータとを、新論理ボリュームに格納する。
【0037】
これにより、ストレージ装置の処理を中断させることなく安全に、閉塞状態等の故障が発生している論理ボリュームを交換することができる。
【0038】
(本実施形態の第2の変形例)
次に、本実施形態の第2の変形例として、状態判定手段121は、ストレージ装置1の他の論理ボリューム2(13(2))を監視する。そして、他の論理ボリューム2(13(2))が閉塞状態であると判定した場合、論理ボリューム制御手段12に備えられた論理ボリューム生成手段125は、他の論理ボリューム用の新たな代替え論理ボリューム2(14(2))を生成する。図5は、本発明の一実施形態の第2の変形例に係るストレージシステムの構成を示す図である。図5は、代替え論理ボリューム2(14(2))が生成された状態を示す。
【0039】
(ストレージ装置の処理フロー)
図6は、本発明の一実施形態の第2の変形例に係るストレージ装置のデータ退避方法を示す図である。図3では、代替えフラグが「1」に設定(ステップS305)された後、論理ボリューム1(13(1))の代わりの論理ボリュームが代替え論理ボリューム1(14(1))に設定(ステップS305)されると説明した。ここで、本実施形態の第2の変形例では、ステップS305とステップS306との間に代替え論理ボリュームの追加処理(ステップS601)がさらに含まれてもよい。
【0040】
例えば、図3において、既に論理ボリューム1(13(1))が閉塞状態であり、代替え論理ボリューム1(14(1))が使用状態であるとする。ここで、さらに論理ボリューム2(13(2))が閉塞状態となり、続いて、論理ボリューム2(13(2))に対するデータの格納命令が発生する。論理ボリューム2(13(2))に対する代替え論理ボリュームが設定されていない場合(図3のステップS303:No)、論理ボリューム制御手段12は、論理ボリューム1(13(1))の代わりの論理ボリュームを未生成の代替え論理ボリューム2(14(2))に設定する。そして、論理ボリューム制御手段12は、代替えフラグを「1」に設定する(ステップS305)。次に、論理ボリューム生成手段125は、論理ボリューム2(13(2))のための代替え論理ボリューム2(14(2))を生成する(ステップS601)。そして、アクセス権設定手段124は、論理ボリューム2(13(2))のアクセス権を読み出し専用に変更する(ステップS306)。ステップS306以降、図3のステップS307からステップS311の処理と同様の処理が実行される。
【0041】
(作用、効果)
上述したように、本実施形態に係るストレージ装置1は、状態判定手段121が、ストレージ装置1の他の論理ボリューム2(13(2))を監視し、当該他の論理ボリュームが閉塞状態であると判定する。このとき、ストレージ装置1の論理ボリューム生成手段125は、当該他の論理ボリューム用の新たな代替え論理ボリューム14(2)を生成する。
【0042】
これにより、複数の論理ボリュームが閉塞状態となった場合であっても、キャッシュメモリから代替え論理ボリュームにデータを掃き出すことができ、データがキャッシュメモリ上に滞留することを回避する。それによる効果として、複数の論理ボリュームが閉塞状態となった場合でも、他の正常な論理ボリュームに対して入出力遅延を生じることを防ぎ、入出力エラー等のアクセス障害の発生を低減することができる。
【0043】
以上のとおり、本実施形態を説明したが、本実施形態及びその変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。本実施形態及びその変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 ストレージ装置
11 キャッシュメモリ
12 論理ボリューム制御手段
121 状態判定手段
122 切り替え手段
123 データ送信手段
124 アクセス権設定手段
125 論理ボリューム生成手段
13 論理ボリューム
14 代替え論理ボリューム
15 キャッシュ管理手段
16 ホストIO制御手段
2 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6