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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】疑似餌
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20230719BHJP
   A01K 85/16 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A01K85/00 Z
A01K85/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020203562
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090948
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000138358
【氏名又は名称】株式会社ヤマリア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】河原 也寸志
(72)【発明者】
【氏名】戎 宏章
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-117635(JP,A)
【文献】特開2002-281867(JP,A)
【文献】登録実用新案第3093047(JP,U)
【文献】実開平05-023864(JP,U)
【文献】特表2003-506057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00 - 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似餌であって、
前端部に釣糸が接続され、前後方向に延びる長尺な疑似餌本体と、
当該疑似餌本体の後部の両側面から側方に突出し、前記疑似餌本体と一体に形成された後方突起と、
を備え、
前記後方突起は、側方から見て後方が湾曲するような半円形又は三日月形であり、後方に向かって突出高さが高くなるように形成されている、ことを特徴とする疑似餌。
【請求項2】
前記疑似餌本体の前記後方突起が形成された部分の腹部及び/又は背部には、ひれ状の突起部が形成されている、
請求項1に記載の疑似餌。
【請求項3】
前記疑似餌本体の前方腹部の両側面から突出する一対の前方突起をさらに備える、
請求項1又は2に記載の疑似餌。
【請求項4】
前記前方突起は、前後に延びるような形状である、
請求項に記載の疑似餌。
【請求項5】
前記疑似餌本体の中間部を包囲するように設けられた筒状の布体を更に備え、
当該布体の前縁は背側が腹側よりも前方に進出するように傾斜し、
当該布体の後縁は背側が腹側よりも後方に進出するように傾斜している、
請求項1~の何れか1項に記載の疑似餌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似餌に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばイカ釣りに用いられる疑似餌(エギ)には、疑似餌本体の前部の両側面に羽根を取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような羽根は、意匠性を向上するという目的もあるが、エギに水中でダートと呼ばれる不規則な挙動を取らせるために取り付けられている。ダートとは、繰り返し釣り竿にしゃくり動作を行うと、疑似餌が蛇行しながら進行することである。しゃくり動作を行うと、羽根が抵抗となり、疑似餌が方向転換し、その後、急進行する。このため、しゃくり動作を繰り返すことにより、図6に示すように、疑似餌100が平面視において千鳥状に移動する(すなわち、しゃくり動作を行うごとに、疑似餌が右方向への進路変更及び前進と、左方向への進路変更及び前進とを交互に行う)。このような羽根としては、一般的には鳥の毛が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6656719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような鳥の毛を使用したエギでは、鳥の毛が劣化、変形(変質)したり、脱落したりしてしまうおそれがある。このように、鳥の毛が変質、脱落してしまうと、両側面の鳥の毛に作用する水流のバランスがくずれてしまい、水中における所望の挙動を実現できなくなる。また、両方の羽根を取り除くと、しゃくり動作を行った際のダートの動きが非常に大きくなる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、変質や脱落しにくい、水中挙動を制御するための構造を備えた疑似餌を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、疑似餌であって、前端部に釣糸が接続され、前後方向に延びる長尺な疑似餌本体と、当該疑似餌本体の後部の両側面から突出し、疑似餌本体と一体に形成された後方突起と、を備える、ことを特徴とする。
上記の態様によれば、疑似餌本体の後部の両側面から突出するように、疑似餌本体と一体に後方突起が形成されている。このためしゃくり動作を行うと、後方突起が水の抵抗を受け、水中でのダートの挙動を制御することができる。また、上記の態様によれば、後方突起は疑似餌本体と一体に形成されているため、変質や脱落することがなく、長期にわたって性能を保持することができる。
【0007】
本発明の一態様において、好ましくは、後方突起は、側方から見て後方が湾曲するような半円形又は三日月形であり、後方に向かって突出高さが高くなるように形成されている。
上記の態様によれば、後方突起は、側方から見て後方が湾曲するような三日月形であり、後方に向かって突出高さが高くなるように形成されている。これにより、水の抵抗を効率よく受けることができ、小さい後方突起であっても、十分なダート性能を得ることができる。
【0008】
本発明の一態様において、好ましくは、疑似餌本体の後方突起が形成された部分の腹部及び/又は背部には、ひれ状の突起部が形成されている。
上記の態様によれば、疑似餌本体の後部の両側面に後方突起を形成しても、ダートの急進時に安定して疑似餌が前進する。
【0009】
本発明の一態様において、好ましくは、疑似餌本体の前方腹部の両側面から突出する一対の前方突起をさらに備える。
上記の態様によれば、しゃくり動作を行うと、前方突起が水の抵抗を受け、水中でのダートの挙動を制御することができる。さらに、疑似餌の前方突起が前後に延びるような形状であるため、ダート時における疑似餌の過度の浮き上がりを防止できる。
【0010】
本発明の一態様において、好ましくは、前方突起は、前後に延びるような形状である。
上記の態様によれば、疑似餌の前方突起が前後に延びるような形状であるため、ダート時における疑似餌の過度の浮き上がりを防止できる。
【0011】
本発明の一態様において、好ましくは、疑似餌本体の中間部を包囲するように設けられた筒状の布体を更に備え、布体の前縁は背側が腹側よりも前方に進出するように傾斜し、布体の後縁は背側が腹側よりも後方に進出するように傾斜している。
上記の態様によれば、羽根を取り付けていないため、布体10を必要に応じて交換することができる。さらに、布体の前縁が傾斜しているため、布体が前方突起と干渉することを防止することができる。また、布体の後縁が傾斜しているため、布体が後方突起と干渉することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変質や脱落しにくい、水中挙動を制御するための構造を備えた疑似餌を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施形態による疑似餌の構成を示す側面図である。
図1B図1Aに示す疑似餌の分解側面図である。
図2図1に示す疑似餌の上面図である。
図3図1に示す疑似餌の下面図である。
図4図1に示す疑似餌の正面図である。
図5図1に示す疑似餌のV-V断面図である。
図6】従来の疑似餌におけるダートの挙動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による疑似餌について図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態による疑似餌の構成を示す側面図であり、図1B図1Aに示す疑似餌の分解側面図である。図2は、図1に示す疑似餌の上面図である。図3は、図1に示す疑似餌の下面図である。図4は、図1に示す疑似餌の正面図である。図5は、図1に示す疑似餌のV-V断面図である。なお、図2図5では、布体については省略して示す。
図1図5に示すように、疑似餌1は、疑似餌本体2と、疑似餌本体2の先端部に接続された接続リング4と、疑似餌本体2の前方の腹部に取り付けられた錘体6と、疑似餌本体2の後端部に接続された釣り針部材8と、疑似餌本体2に取り付けられた布体10と、を備える。
【0015】
疑似餌本体2は、魚の形状を模した滑らかに湾曲する流線形の長尺な部材からなる。疑似餌本体2は、幅方向(横方向)中心の面に対して左右対称な形状となっている。疑似餌本体2は、前後方向に垂直な断面が縦長の円形であり、先端から中間部に向かって徐々に幅及び厚みが増加し、中間部から後端に向かって徐々に幅及び厚みが低下している。疑似餌本体2は、前方から後方に向かって、前部2Aと、中間部2Bと、後部2Cとを含む。疑似餌本体2は、例えば、樹脂などからなる。疑似餌本体2には、従来技術のような羽根部材が取り付けられていない。なお、本実施形態でいう前部2Aとは、魚でいうエラや胸びれ、腹びれが設けられる部分に相当する領域をいい、後部2Cとは尻びれが形成される部分に相当する領域をいう。本実施形態の疑似餌本体2では、胸びれに相当する位置に第2の凸部24が形成され、腹びれに相当しる位置に錘体が設けられ、尻びれに相当する位置に後部腹面突起部28が形成されている。
【0016】
前部2Aは、幅及び厚みが増加している部分であり、後述するように両側面から側方に突出する前方突起12が形成されている。中間部2Bは、幅及び厚みが前方から中央に向かって増加し、中央から後方に向かって減少する部分である。後部2Cは、幅及び厚みが減少する部分であり、両側面にそれぞれ前後方向に並ぶ複数の後方突起14が形成されている。
【0017】
前部2Aと中間部2Bとの間には、疑似餌本体2の全周にわたって前方溝2Dが形成されており、中間部2Bと後部2Cとの間には疑似餌本体2の全周にわたって後方溝2Eが形成されている。前方溝2Dは、腹部から背部に向かって(図1の下方から上方に向かって)、前方に傾斜している。また、後方溝2Eは、腹部から背部に向かって後方に傾斜している。
接続リング4は、金属製のリングからなり、後部が疑似餌本体2の先端部に埋め込まれており、これにより、接続リング4は疑似餌本体2と一体になっている。
【0018】
錘体6は、ひれを模した形状の金属部材であり、横方向に対称な平坦な板からなる。錘体6は上端部が疑似餌本体2内に埋め込まれることにより、疑似餌本体2に接続されている。錘体6の縁は前方から中間部にかけて下に突な円弧状であり、後部は前方に突な円弧状である。錘体6は、疑似餌本体2の前後上下に延びる中心面に沿うように、前部2Aの腹部側後部に取り付けられている。
【0019】
疑似餌本体2の前部2Aの両側面には目を模した凹部20が形成されている。凹部20は底面が円形な凹部であり、上下方向中央の高さに設けられている。また、前部2Aの両側の凹部20の後方には、えらを模した第1の凸部22が形成されおてり、さらに、第1の凸部22の後方には、胸ひれを模した第2の凸部24が形成されている。第1の凸部22は、後方に向かって突となる三日月状である。また、第2の凸部24は後方に向かって細くなるような形状となっている。
【0020】
さらに、疑似餌本体2の前部2Aの両側の後方腹部には、前後に延びるような前方突起12が形成されている。前方突起12は、疑似餌本体2の上下方向の中心よりも下側に位置している。前方突起12は、上面視において湾曲形状で両側に向かって突出している。前方突起12は下面が平坦であり、前方から見て上面は側方に向かって下方に傾斜している。前方突起12は、前後方向に錘体6の後端部に当たる位置に設けられている。第1の凸部22、第2の凸部24、及び、前方突起12は、疑似餌本体2と一体に形成されている。なお、ここでいう前方突起12が前後に延びるとは、前後方向の長さが高さよりも大きいことをいう。
【0021】
また、疑似餌本体2の後部2Cの両側には、後方突起14が形成されている。各側面には、複数の(本実施形態では3つの)後方突起14が前後に並ぶように形成されている。各後方突起14は、側方から見て後方が湾曲し、前方が凹になるような三日月状に形成されている。後方突起14は、それぞれ、後方に向かって周縁部の突出高さが高くなるようになっており、後方に向かって側面が幅方向に突出するように形成されている。後方突起14の周縁部で囲まれた中央部は周縁部に対して凹になっている。なお、本実施形態では、後方突起14が、前方が凹になるような三日月状であるが、これに限らず、後方が湾曲するような半円形状等であってもよい。
【0022】
また、疑似餌本体2の後部2Cの後方突起14が形成された箇所の上部(背面側)には、第2背びれを模したひれ状(薄板状)の後部背面突起部26が設けられており、後部2Cの後方突起14が形成された箇所の下部(腹部側)には、尻ひれを模したひれ状(薄板状)の後部腹面突起部28が設けられている。後部背面突起部26は、側面視において三角形の板材であり、後部2Cの上縁から中心面に沿って上方に延びている。また、後部腹面突起部28は、側面視において前方が湾曲形状であり、全体として略三角形の板材であり、後部2Cの下縁から中心面に沿って下方に延びている。後方突起14、後部背面突起部26、及び、後部腹面突起部28は疑似餌本体2と一体に形成されている。なお、ここでいう一体とは、一体成形されていることをいい、別部材を接続したものを含まない。なお、本実施形態では、後部背面突起部26及び後部腹面突起部28の両者を形成したが、これに限らず、一方のみを形成してもよい。
【0023】
布体10は、筒状に形成された布からなる。布体10の先端縁は、腹部から背面に向かって前方に傾斜するように形成されている。また、布体10の後端縁は、腹部から背面に向かって後方に傾斜するように形成されている。布体10を構成する布は伸縮性を有する布からなり、布体10は伸長された状態で疑似餌本体2の中間部2Bを包囲して取り付けられている。布体10を取り付けた状態で、布体10の先端縁が前方溝2Dに沿っており、布体10の後端縁が後方溝2Eに沿っている。
【0024】
このような構成の疑似餌1によれば、疑似餌本体2の後部2Cの両側に後方突起14が形成されているため、しゃくり動作を行うと、前方突起12及び後方突起14が抵抗となるため、疑似餌が方向転換した後、急進行する。特に、本実施形態では、後方突起14が、前方が凹になるような三日月状であり、後方に向かって突出高さが高くなるようになっている。このため、しゃくり動作時における後方突起14に作用する水の抵抗を効率よく受けることができ、ダートの動きが過大にならないように制御することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、疑似餌本体2の後部の両側面から突出するように、疑似餌本体2と一体に後方突起14が形成されている。このためしゃくり動作を行うと、後方突起14が水の抵抗を受け、水中でのダートの挙動を制御することができる。また、本実施形態では、疑似餌本体2には羽根部材は取り付けられておらず、後方突起14は疑似餌本体2と一体に形成されているため、変質や脱落することがなく、長期にわたって性能を保持することができる。
【0026】
また、本実施形態では、後方突起14は、側方から見て後方が湾曲するような三日月形であり、後方に向かって突出高さが高くなるように形成されている。これにより、水の抵抗を効率よく受けることができ、小さい後方突起14であっても、十分なダート性能を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、疑似餌本体2の後方突起14が形成された部分の腹部及び背部に、それぞれひれ状の後部背面突起部及び後部腹面突起部28が形成されている。これにより、疑似餌本体2の後部2Cの両側面に後方突起14を形成しても、ダートの急進時に安定して疑似餌1が前進する。
【0028】
また、本実施形態では、疑似餌1は、さらに、疑似餌本体2の前部2Aの腹部に、両側面から突出する一対の前方突起12を備える。これにより、しゃくり動作を行うと、前方突起12が水の抵抗を受け、水中でのダートの挙動を制御することができる。さらに、疑似餌1の前方突起12が前後に延びるような形状であるため、ダート時における疑似餌1の過度の浮き上がりを防止できる。
【0029】
また、本実施形態では、疑似餌本体2の中間部2Bを包囲するように筒状の布体10が設けられ、布体10の前縁は背側が腹側よりも前方に進出するように傾斜し、布体10の後縁は背側が腹側よりも後方に進出するように傾斜している。本実施形態では、羽根を取り付けていないため、布体10を必要に応じて交換することができる。さらに、布体10の前縁が傾斜しているため、布体10が前方突起12と干渉することを防止することができる。また、布体10の後縁が傾斜しているため、布体10が後方突起14と干渉することを防止できる。
【0030】
なお、本実施形態では、前方突起12及び後方突起14を形成したが、これに限らず、何れか一方のみを形成しても、しゃくり動作によりダート挙動を行う。
【符号の説明】
【0031】
1 :疑似餌
2 :疑似餌本体
2A :前部
2B :中間部
2C :後部
2D :前方溝
2E :後方溝
4 :接続リング
6 :錘体
8 :釣り針部材
10 :布体
12 :前方突起
14 :後方突起
20 :凹部
22 :第1の凸部
24 :第2の凸部
26 :後部背面突起部
28 :後部腹面突起部
100 :疑似餌
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6