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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】磁場発生装置および溶湯駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/115 20060101AFI20230719BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20230719BHJP
   B22D 27/02 20060101ALI20230719BHJP
   F27D 27/00 20100101ALI20230719BHJP
   H05B 6/18 20060101ALI20230719BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B22D11/115 A
B22D11/04 311J
B22D27/02 V
F27D27/00
H05B6/18
H05B6/44
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022015921
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2023-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503332824
【氏名又は名称】株式会社ヂーマグ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙三
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-136147(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103182495(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0071146(KR,A)
【文献】国際公開第2007/032472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/115
B22D 11/04
B22D 27/02
H05B 6/18
H05B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が第1~第6の磁極を有し、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心と、
R相の電流を通電させるための第1および第2のコイルと、
S相の電流を通電させるための第3および第4のコイルと、
T相の電流を通電させるための第5および第6のコイルと、を備え、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第1の磁極は、所定の方向に沿って配列して第1の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第2の磁極は、前記方向に沿って配列して第2の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第3の磁極は、前記方向に沿って配列して第3の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第4の磁極は、前記方向に沿って配列して第4の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第5の磁極は、前記方向に沿って配列して第5の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第6の磁極は、前記方向に沿って配列して第6の磁極群を構成し、
前記第1のコイルは、前記第1の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第2のコイルは、前記第2の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第3のコイルは、前記第3の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第4のコイルは、前記第4の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第5のコイルは、前記第5の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第6のコイルは、前記第6の磁極群を取り巻くように巻回されている、磁場発生装置。
【請求項2】
前記複数の鉄心はリング形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心の内周面から中心に向かって突設されており、
前記第1の磁極と前記第2の磁極が互いに対向し、前記第3の磁極と前記第4の磁極が互いに対向し、且つ前記第5の磁極と前記第6の磁極が互いに対向する、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項3】
前記複数の鉄心はU字形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記U字形鉄心の内面から内側に向かって突設されており、
前記第1~第6の磁極は、前記第1の磁極、前記第3の磁極、前記第5の磁極、前記第2の磁極、前記第4の磁極および前記第6の磁極の順に配置されている、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項4】
前記複数の鉄心はリング形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心の外周面から外側に向かって突設されており、
前記第1の磁極と前記第2の磁極が互いに反対方向に延び、前記第3の磁極と前記第4の磁極が互いに反対方向に延び、且つ前記第5の磁極と前記第6の磁極が互いに反対方向に延びる、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項5】
前記複数の鉄心は直線形鉄心であり、前記鉄心の延在方向と直交する方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記直線形鉄心から同一方向に突設されている、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項6】
前記複数の鉄心は、互いに大きさの異なるリング形鉄心であり、同心状に配置され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心から同じ方向に突設され、
前記第1の磁極群と前記第2の磁極群は、前記各鉄心の中心を挟んで配置され、
前記第3の磁極群と前記第4の磁極群は、前記中心を挟んで配置され、
前記第5の磁極群と前記第6の磁極群は、前記中心を挟んで配置されている、請求項1に記載の磁場発生装置。
【請求項7】
前記各鉄心の同一の磁極群の磁極は互いに接続されている、請求項6に記載の磁場発生装置。
【請求項8】
前記鉄心の厚みに対する前記鉄心間の間隔の比は、0.1以上2以下である、請求項1~7のいずれかに記載の磁場発生装置。
【請求項9】
前記比は1以上である、請求項8に記載の磁場発生装置。
【請求項10】
前記複数の鉄心は、炭素鋼板から構成される、請求項1~9のいずれかに記載の磁場発生装置。
【請求項11】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは直列接続されて第1の直列コイルを構成し、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルは直列接続されて第2の直列コイルを構成し、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルは直列接続されて第3の直列コイルを構成し、前記第1の直列コイル、前記第2の直列コイルおよび前記第3の直列コイルはスター結線されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の磁場発生装置。
【請求項12】
金属溶湯を駆動するための溶湯駆動システムであって、
請求項1~11のいずれかに記載の磁場発生装置と、
前記磁場発生装置を収納するケースと、
前記第1~第6のコイルに交流電流を出力する交流電源と、
を備える溶湯駆動システム。
【請求項13】
前記ケースには、前記ケースの内部に空気を取り入れるための空気取入口と、前記ケース内の空気を外部に排出するための空気排出口が設けられ、
前記空気取入口および前記空気排出口は、前記磁場発生装置を挟むように配設されている、請求項12に記載の溶湯駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場発生装置および溶湯駆動システム、より詳しくは、移動磁界を発生する磁場発生装置、および当該磁場発生装置による移動磁界を用いて金属溶湯を駆動する溶湯駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム、銅などの非鉄金属の溶湯(以下、単に「金属溶湯」または「溶湯」という。)を電磁力により駆動する溶湯駆動システムが知られている。この溶湯駆動システムは、交流電流を供給され、移動磁界を発生する磁場発生装置(交流磁場装置)を備えている。移動磁界が溶湯内を走ることで溶湯に渦電流が生じ、渦電流によって溶湯に電磁力が作用し、溶湯が駆動される。
【0003】
電磁力を利用した溶湯駆動システムとして、たとえば、特許文献1には、環状鉄心に巻回された複数のコイルに三相交流電流を流して移動磁界を発生させ、環状鉄心の内側に存在する溶湯を撹拌するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-182358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁場発生装置に強力な移動磁界を発生させるために、コイルに大きな電流を流すことが考えられる。しかしながら、コイルの発熱量(銅損)が大きくなるため、強力な水冷式の冷却設備が必要となる。水冷式の場合、冷却水の水質管理が難しく、メンテナンスコストも高いことから、装置の普及を妨げる一因となっている。
【0006】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、放熱性に優れ、発熱量が少ないながら、十分な強度の磁場を発生することが可能な磁場発生装置、および当該磁場発生装置を備える溶湯撹拌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る磁場発生装置は、
各々が第1~第6の磁極を有し、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心と、
R相の電流を通電させるための第1および第2のコイルと、
S相の電流を通電させるための第3および第4のコイルと、
T相の電流を通電させるための第5および第6のコイルと、を備え、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第1の磁極は、所定の方向に沿って配列して第1の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第2の磁極は、前記方向に沿って配列して第2の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第3の磁極は、前記方向に沿って配列して第3の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第4の磁極は、前記方向に沿って配列して第4の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第5の磁極は、前記方向に沿って配列して第5の磁極群を構成し、
前記複数の鉄心が有する複数の前記第6の磁極は、前記方向に沿って配列して第6の磁極群を構成し、
前記第1のコイルは、前記第1の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第2のコイルは、前記第2の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第3のコイルは、前記第3の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第4のコイルは、前記第4の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第5のコイルは、前記第5の磁極群を取り巻くように巻回され、
前記第6のコイルは、前記第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。
【0008】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心はリング形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心の内周面から中心に向かって突設されており、
前記第1の磁極と前記第2の磁極が互いに対向し、前記第3の磁極と前記第4の磁極が互いに対向し、且つ前記第5の磁極と前記第6の磁極が互いに対向するようにしてもよい。
【0009】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心はU字形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記U字形鉄心の内面から内側に向かって突設されており、
前記第1~第6の磁極は、前記第1の磁極、前記第3の磁極、前記第5の磁極、前記第2の磁極、前記第4の磁極および前記第6の磁極の順に配置されていてもよい。
【0010】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心はリング形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心の外周面から外側に向かって突設されており、
前記第1の磁極と前記第2の磁極が互いに反対方向に延び、前記第3の磁極と前記第4の磁極が互いに反対方向に延び、且つ前記第5の磁極と前記第6の磁極が互いに反対方向に延びるようにしてもよい。
【0011】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心は直線形鉄心であり、前記鉄心の延在方向と直交する方向に沿って配列され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記直線形鉄心から同一方向に突設されていてもよい。
【0012】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心は、互いに大きさの異なるリング形鉄心であり、同心状に配置され、
前記各鉄心の前記第1~第6の磁極は、前記リング形鉄心から同じ方向に突設され、
前記第1の磁極群と前記第2の磁極群は、前記各鉄心の中心を挟んで配置され、
前記第3の磁極群と前記第4の磁極群は、前記中心を挟んで配置され、
前記第5の磁極群と前記第6の磁極群は、前記中心を挟んで配置されていてもよい。
【0013】
また、前記磁場発生装置において、
前記各鉄心の同一の磁極群の磁極は互いに接続されていてもよい。
【0014】
また、前記磁場発生装置において、
前記鉄心の厚みに対する前記鉄心間の間隔の比は、0.1以上2以下であるようにしてもよい。
【0015】
また、前記磁場発生装置において、
前記比は1以上であってもよい。
【0016】
また、前記磁場発生装置において、
前記複数の鉄心は、炭素鋼板から構成されてもよい。
【0017】
また、前記磁場発生装置において、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは直列接続されて第1の直列コイルを構成し、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルは直列接続されて第2の直列コイルを構成し、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルは直列接続されて第3の直列コイルを構成し、前記第1の直列コイル、前記第2の直列コイルおよび前記第3の直列コイルはスター結線されているようにしてもよい。
【0018】
本発明の実施形態に係る溶湯駆動システムは、
金属溶湯を駆動するための溶湯駆動システムであって、
前記磁場発生装置と、
前記磁場発生装置を収納するケースと、
前記第1~第6のコイルに交流電流を出力する交流電源と、
を備える。
【0019】
また、前記溶湯駆動システムにおいて、
前記ケースには、前記ケースの内部に空気を取り入れるための空気取入口と、前記ケース内の空気を外部に排出するための空気排出口が設けられ、
前記空気取入口および前記空気排出口は、前記磁場発生装置を挟むように配設されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る磁場発生装置の平面図である。
図2】第1の実施形態に係る磁場発生装置の鉄心の中心から見た磁極とコイルを示す図である。
図3】第1の実施形態に係る磁場発生装置で用いられる鉄心の平面図である。
図4】互いに間隔をあけて中心軸方向に配列された複数の鉄心を示す側面図である。
図5】第1の実施形態に係る磁場発生装置が有する複数のコイルの結線図である。
図6】第1の実施形態の変型例に係る鉄心の平面図である。
図7】第1の実施形態に係る磁場発生装置を備える連続鋳造システムの正面図である。
図8】第1の実施形態に係る磁場発生装置を備える連続鋳造システムの一部縦断面図である。
図9】第2の実施形態に係る磁場発生装置の平面図である。
図10】第2の実施形態に係る磁場発生装置を備える溶湯撹拌システムの平面図である。
図11】第3の実施形態に係る磁場発生装置の平面図である。
図12】第3の実施形態に係る磁場発生装置で用いられる鉄心の側面図である。
図13】第3の実施形態に係る磁場発生装置を備える溶湯撹拌システムの一部縦断面図である。
図14】第4の実施形態に係る磁場発生装置の平面図である。
図15】第4の実施形態に係る磁場発生装置で用いられる、同心に配置された複数の鉄心の平面図である。
図16図15に示す円盤形鉄心のI-I線に沿う断面図である。
図17】第4の実施形態の変型例に係る複数の鉄心の平面図である。
図18図17に示す円盤形鉄心のII-II線に沿う断面図である。
図19】第4の実施形態に係る磁場発生装置を備える溶湯撹拌システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図においては、同等の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。
【0022】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る磁場発生装置1について、図1図5を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る磁場発生装置1の平面図を示し、図2は磁場発生装置1の鉄心11の中心から見た磁極11aとコイル21を示している。図3は、磁場発生装置1で用いられる鉄心11の平面図である。図4は、互いに間隔をあけて中心軸方向に配列された複数の鉄心11を示す側面図である。なお、図4ではコイル21~26は省略されている。図5は、磁場発生装置1が有する複数のコイル21~26の結線図である。
【0023】
磁場発生装置1は、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心11と、三相交流電圧が印加される複数のコイル21,22,23,24,25,26と、を備えている。
【0024】
複数の鉄心11は、強磁性体からなるリング形鉄心であり、鉄心11の中心軸方向に沿って配列されている。各鉄心11は、電磁鋼板または炭素鋼板を積層されたものである。
【0025】
各鉄心11は従来の磁場発生装置の鉄心よりも薄いため、コイルの通電時に各鉄心11に発生する渦電流を低減することができる。したがって、鉄心11の材料として、低鉄損であるが比較的高価な薄型珪素鋼板を積層したものでなく、安価で入手し易い炭素鋼板を使用することができる。
【0026】
また、図3に示すように、鉄心11には、ボルト31を挿通させるための貫通孔Hが設けられている。なお、リング形鉄心にギャップが設けられていてもよい(他の実施形態のリング形鉄心についても同様である)。
【0027】
各鉄心11は、図3に示すように、リング形鉄心の内周面から中心に向かって突設された複数の磁極11a,11b,11c,11d,11e,11fを有する。磁極11a(第1の磁極)および磁極11b(第2の磁極)は、R相に対応する。磁極11c(第3の磁極)および磁極11d(第4の磁極)は、S相に対応する。磁極11e(第5の磁極)および磁極11f(第6の磁極)は、T相に対応する。磁極11aと磁極11bが互いに対向し、磁極11cと磁極11dが互いに対向し、且つ磁極11eと磁極11fが互いに対向する。
【0028】
なお、本実施形態では、磁極11a~11fは、鉄心11と一体に設けられているが、これに限られず、鉄心11と別体の部材であってもよい(他の実施形態の鉄心についても同様である)。
【0029】
複数の鉄心11は、各々の中心軸が一致するように配置されている。本実施形態では、図4に示すように、複数の鉄心11はスペーサ33を介して積層されている。ボルト31が各鉄心の貫通孔Hに挿通され、ナット32とともに複数の鉄心11を締結している。スペーサ33は、鉄心11の間隔Gに対応した厚みを有する絶縁部材である。なお、ボルト31の数や配置位置は図1等に示す態様に限られない。また、複数の鉄心11は固定治具などの他の手段により互いに所定の間隔をあけて固定されてもよい(他の実施形態における複数の鉄心についても同様である)。
【0030】
図2に示すように、複数の鉄心11が有する複数の磁極11aは、所定の方向(中心軸方向)に沿って配列して磁極群11G(第1の磁極群)を構成している。図示しないが、磁極11b~11fについても、磁極11aと同様に、それぞれ磁極群(第2~第6の磁極群)を構成している。すなわち、複数の磁極11bは、中心軸方向に沿って配列して第2の磁極群を構成し、複数の磁極11cは、中心軸方向に沿って配列して第3の磁極群を構成し、複数の磁極11dは、中心軸方向に沿って配列して第4の磁極群を構成し、複数の磁極11eは、中心軸方向に沿って配列して第5の磁極群を構成し、複数の磁極11fは、前記方向に沿って配列して第6の磁極群を構成している。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では、鉄心11間の間隔(空隙)Gは鉄心11の厚みTとほぼ同じである。すなわち、鉄心11の厚みTに対する鉄心11間の間隔Gの比(G/T)は約1である。このように鉄心間に空隙が設けられているが、後述のように、磁場発生装置1は従来の中実鉄心を用いた場合と比べて同程度の強度の磁場を発生させることができる。
【0032】
なお、大きな磁場強度と高い放熱性を両立するために、比(G/T)は、0.1以上2以下であることが望ましい(以降の実施形態についても同様である)。比を1以上とすることで、磁場発生装置1の放熱性を大幅に向上させることができるとともに、磁場発生装置1の鉄心の総量を半分以下にすることができる。比を大きくするにつれて磁場強度は減少する傾向にあるが、必要に応じてコイル21~26に流す電流を大きくしたり、コイル21~26の巻数を増やせばよい。
【0033】
次に、コイル21~26について説明する。
【0034】
コイル21(第1のコイル)およびコイル22(第2のコイル)は、R相(第1相)の電流を通電させるためのコイルである。コイル23(第3のコイル)およびコイル24(第4のコイル)は、S相(第2相)の電流を通電させるためのコイルである。コイル25(第5のコイル)およびコイル26(第6のコイル)は、T相(第3相)の電流を通電させるためのコイルである。
【0035】
図2に示すように、コイル21は、第1の磁極群11Gを取り巻くように巻回されている。図示しないが、コイル22~26も同様に第2~第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。すなわち、コイル22は第2の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル23は第3の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル24は第4の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル25は第5の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル26は第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。
【0036】
コイル21~26は、図5に示すように結線されている。すなわち、コイル21およびコイル22は直列接続されて第1の直列コイルを構成し、コイル23およびコイル24は直列接続されて第2の直列コイルを構成し、コイル25およびコイル26は直列接続されて第3の直列コイルを構成する。第1の直列コイル、第2の直列コイルおよび第3の直列コイルはスター結線されている。
【0037】
なお、第1の直列コイル、第2の直列コイルおよび第3の直列コイルはそれぞれ、交流電源(後述の交流電源50)のR相端子、S相端子およびT相端子に電気的に接続される。これにより、磁場発生装置1の動作時において、コイル21および22にR相電流が流れ、コイル23および24にS相電流が流れ、コイル25および26にT相電流が流れる。これにより、磁場発生装置1の中央部分には、鉄心11の中心軸のまわりに回転する磁界(回転磁界)が発生する。
【0038】
上記のように、磁場発生装置1は、三相交流電源により駆動され、その内部に回転磁界を発生するように構成されている。磁場発生装置1を使用する際、複数の鉄心11からなるコアアセンブリの中心部分に駆動対象の溶湯を配置する。たとえば、中央部分に渦室を配置した場合、渦室内の溶湯が回転磁界により回転駆動され、渦を形成する。この渦に切粉等の金属原料が投入されると、金属原料は渦の中に引き込まれ、金属溶湯中に溶解する。その他、後述するように、磁場発生装置1の中央部分に鋳型を配置して連続鋳造システムを構成してもよい。
【0039】
(磁場発生装置1の作用効果)
上記のように磁場発生装置1では、複数の鉄心11が互いに間隔Gをあけて配置され、コイル21~26が、第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻くように設けられている。このように鉄心11間に空隙があるものの、コイル21~26が第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻き、各磁極群が一つの大きな磁極のように機能するため、磁場発生装置1は、従来の鉄心間に空隙がない場合と同程度の強度の磁場を発生することができる。たとえば、比が1の場合、空隙のない中実な鉄心の場合と比べて、約90~95%の強度の磁場を発生させることができる。
【0040】
なお、磁場強度の低下は、磁場発生装置が適用される溶湯駆動システム(具体例は後述する。)において実際上、大きな障害とならない。仮に磁場強度の低下によって所要の溶湯駆動力が得られない場合であっても、コイル21~26に流す電流やコイル21~26の巻数を少し増やすなどの対策をとることにより、磁場強度を大きくすることができる。後述のように磁場発生装置1では放熱性が高く、発熱量も少ないため、このような対応をとることは比較的容易である。
【0041】
磁場発生装置1では磁極間に空隙があるため、各磁極から放射される磁界を合成した磁界の強度分布は、磁極のごく近傍においては鉄心の中心軸方向に沿って波打った形状となる。しかし、磁極から10~20mm程度離れた場所では中心軸方向に沿ってほぼ平坦となる。したがって、磁場発生装置1が適用される溶湯駆動システムでは、溶湯中を走る磁界はほぼ平坦な強度分布を有する。
【0042】
上記のように、各鉄心間に空隙が設けられているため、下記の効果A~Cを得ることができる。
【0043】
効果A:従来のように空隙がない中実の鉄心を用いる磁場発生装置と比べて、鉄心の表面積(複数の鉄心の表面積の和)が大幅に大きくなるため、放熱性を大きく改善することができる。そのため、空冷により磁場発生装置を冷却することができる。すなわち、空冷式で磁場発生装置を連続運転させることが可能である。その結果、メンテナンスコストを大幅に削減することもできる。
【0044】
なお、磁場発生装置の放熱性が改善することにより、コイルに流す電流密度を増やすことが可能となる。このため、必要に応じて、鉄心間に空隙を設けたことによる磁場強度の低下分を、コイルに流す電流を増やすことで補うことも可能である。
【0045】
効果B:従来の磁場発生装置と比べて各鉄心の断面積が小さいため、磁場発生装置の動作時に各鉄心に発生する渦電流が低減し、発熱量が少なくなる。これにより、鉄心の材料として、珪素鋼板よりもコスト的に有利な炭素鋼板を用いることができる。炭素鋼板を使用することで、磁場発生装置のコストを低減することができるとともに、磁場発生装置のさらなる軽量化を図ることができる。
【0046】
効果C:従来の磁場発生装置と比べて磁場発生装置に必要な鉄心の総量が減少するため、軽量で取り扱いが容易な磁場発生装置を提供することができる。たとえば、鉄心間の間隔が鉄心の厚みと同じ場合、鉄心の量は半減し、磁場発生装置の約50%の軽量化を図ることができる。使用する鉄心の量が減少することで磁場発生装置の製造コストも削減できる。
【0047】
(鉄心の変形例)
磁場発生装置1の各鉄心の形状は、リング状の鉄心11に限らず、種々のものを想定することが可能である。図6は、第1の実施形態の変型例に係る鉄心12の平面図を示している。
【0048】
鉄心12はU字形鉄心であり、6つの磁極12a,12b,12c,12d,12e,12fがU字形鉄心の内面から内側に向かって突設されている。
【0049】
鉄心12の磁極12a~12fは、図6に示すように、U字形鉄心のU字に沿って、磁極12a、磁極12c、磁極12e、磁極12b、磁極12dおよび磁極12fの順に配置されている。
【0050】
本変型例に係る鉄心12を複数用いることにより、磁場発生装置1と同様の特徴を有する磁場発生装置を構成することが可能である。そのように構成された磁場発生装置は、リング形鉄心を用いる磁場発生装置とは異なり、側面が開放されている。そのため、磁場発生装置を駆動対象の溶湯が存在する渦室や鋳型等に容易に設置し、あるいは、渦室や鋳型等に設置された磁場発生装置を容易に取り外すことができる。
【0051】
なお、第1の実施形態に係る磁場発生装置に用いられる鉄心の形状は、中心に向かって突設された複数の磁極を有するものであれば、上記の鉄心11,12に限られない。
【0052】
<連続鋳造システム>
次に、図7および図8を参照して、第1の実施形態に係る磁場発生装置1を備える溶湯駆動システム(連続鋳造システム)100について説明する。図7は溶湯駆動システム100の正面図を示し、図8は溶湯駆動システム100の一部縦断面図を示している。なお、図7において鋳型200は省略している。また、図7の符号CLは磁場発生装置1およびケース40の中心軸を示している。
【0053】
溶湯駆動システム100は、以下に説明するように、溶湯Mの供給を受け、この溶湯Mを冷却することにより固相状態の鋳造品Pを取り出すように構成されている。
【0054】
溶湯駆動システム100は、磁場発生装置1と、磁場発生装置1を収納するケース40と、磁場発生装置1に交流電流を出力する交流電源50と、ケース40を支持固定するための取付台60と、ケース40の貫通孔に挿通されるように設けられた筒状の鋳型200とを備えている。
【0055】
磁場発生装置1は、複数の鉄心11の中心軸が鋳型200の中心軸と一致するように配置されている。
【0056】
ケース40は、磁場発生装置1を収納するように構成されている。ケース40の材質は特に限定されないが、たとえば、耐火材、ステンレス等の金属からなる。
【0057】
図7に示すように、ケース40は、空気取入口41および空気排出口42を有する。空気取入口41は、磁場発生装置1を冷却するための空気をケース40の内部に取り入れるために設けられている。空気排出口42は、ケース40内の空気を外部に排出するために設けられている。本実施形態では、空気取入口41は、冷風供給用エアダクトの接続フランジとして構成されている。このため、ブロワー(図示せず)を空気取入口41に接続し、磁場発生装置1を強制空冷することが可能である。
【0058】
また、図7に示すように、空気取入口41および空気排出口42は、複数の鉄心11の中心軸に直交する方向に沿って複数の鉄心11を挟むように配設されている。本実施形態では、空気取入口41および空気排出口42は、ケース40の互いに対向する面にそれぞれ設けられている。これにより、空気取入口41からケース40内に取り込まれた冷却用空気は、複数の鉄心11間の空隙を通った後、空気排出口42から排出される。このようにして冷却用空気は複数の鉄心11を効率的に冷却した後に空気排出口42から排出されるため、磁場発生装置1の冷却効率を大幅に高めることができる。
【0059】
ケース40には、端子箱(ターミナルボックス)43が設けられている。端子箱43には、ターミナルポスト(図示せず)が収納されている。ターミナルポストは、磁場発生装置1のコイル21~26と電気的に接続されている。
【0060】
交流電源50は、三相の交流電源であり、三相(R相、S相、T相)の交流電流を磁場発生装置1のコイル21~26に出力する。より詳しくは、交流電源50は、直列接続されたコイル21およびコイル22にR相の電流を出力し、直列接続されたコイル23およびコイル24にS相の電流を出力し、直列接続されたコイル25およびコイル26にT相の電流を出力する。
【0061】
なお、交流電源50は、溶湯の駆動力を調整するために、インバータ等により出力電流および/または周波数を可変に構成されてもよい。周波数は、たとえば、5Hz~20Hz程度である。
【0062】
鋳型200は、入口側から液相状態の溶湯Mの供給を受け、冷却により固相状態の鋳造品Pを出口側から排出する。本実施形態の鋳型200は円筒状である。この円筒状の鋳型400は、その中心軸が磁場発生装置1(鉄心11)の中心軸と一致するように配置される。なお、鋳造品がスラブの場合は角筒状の鋳型を用いる。
【0063】
鋳型200は、耐火材から構成される。グラファイトから構成される場合、グラファイトは材質的に柔らかいため、表面がより滑らかな鋳造品を得ることができる。また、鋳型200は、鋳型200内に流れ込む溶湯Mを冷却するためのウォータジャケット(図示せず)を有している。ウォータジャケット内で冷却水を循環させ、この冷却水によって鋳型200の外周を冷却する。これにより、溶湯Mは急激に冷却されることになる。なお、ウォータジャケットは、公知の各種の構造のものを採用することが可能である。
【0064】
上記の溶湯駆動システム100では、磁場発生装置1に三相交流電流が供給されることにより、鋳型200内に中心軸CLまわりに回転する磁界が発生する。この回転磁界により鋳型200内の未凝固の溶湯に渦電流が発生し、駆動方向DDが示すように、中心軸CLまわりに溶湯Mが撹拌される。そして、撹拌された溶湯がウォータジャケットにより冷却されることで均一で高品質な鋳造品Pが得られる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る磁場発生装置1Aについて、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る磁場発生装置1Aの平面図を示している。第1の実施形態と第2の実施形態との相違点の一つは、第1の実施形態では鉄心の磁極が内向きに設けられ、鉄心の内部に回転磁界が形成されたのに対し、第2の実施形態では鉄心の磁極が外向きに設けられ、鉄心の外部に回転磁界が形成される点である。
【0066】
以下、上記相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0067】
磁場発生装置1Aは、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心13と、複数のコイル21,22,23,24,25,26と、を備えている。
【0068】
複数の鉄心13は、強磁性体からなるリング形鉄心であり、中心軸方向に沿って配列されている。なお、鉄心13の材料は鉄心11と同様である。
【0069】
各鉄心13は、図9に示すように、リング形鉄心の外周面から外側に向かって突設された複数の磁極13a,13b,13c,13d,13e,13fを有する。これらの磁極は放射状に設けられている。各鉄心13において、磁極13aと磁極13bが互いに反対方向に延び、磁極13cと磁極13dが互いに反対方向に延び、且つ磁極13eと磁極13fが互いに反対方向に延びている。磁極13aおよび磁極13bはR相に対応し、磁極13cおよび磁極13dはS相に対応し、磁極13eおよび磁極13fはT相に対応する。
【0070】
複数の鉄心13は、第1の実施形態の鉄心11の場合と同様に、互いに間隔をあけつつ、各々の中心軸が一致するように配置されている。なお、図示しないが、複数の鉄心13は、スペーサおよびボルト・ナット、あるいは固定治具などにより、所定の間隔をあけて固定されている。
【0071】
複数の鉄心13が有する複数の磁極13aは、所定の方向(中心軸方向)に沿って配列して磁極群(第1の磁極群)を構成している。同様に、磁極13b~13fについても、磁極13aと同様に、それぞれ磁極群(第2~第6の磁極群)を構成している。
【0072】
なお、図示しないが、第1の実施形態と同様に本実施形態でも、鉄心13間の間隔は鉄心13の厚みとほぼ同じか少し大きく、厚みに対する間隔の比は1以上である。これにより、第1の実施形態と同様、磁場発生装置1Aの鉄心の総量を半分以下にすることができる。さらに、鉄心間に間隔が設けられることで、磁場発生装置1Aの放熱性を高めることができる。
【0073】
コイル21は、第1の磁極群を取り巻くように巻回されている。同様に、コイル22は第2の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル23は第3の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル24は第4の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル25は第5の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル26は第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。
【0074】
コイル21~26の結線については第1の実施形態と同じであり、磁場発生装置1Aの動作時において、コイル21および22にR相電流が流れ、コイル23および24にS相電流が流れ、コイル25および26にT相電流が流れる。これにより、磁場発生装置1Aの外部には、鉄心13の中心軸のまわりに回転する磁界(回転磁界)が発生する。
【0075】
上記のように、磁場発生装置1Aは、三相交流電源により駆動され、その外部に回転磁界を発生するように構成されている。磁場発生装置1Aを使用する際は、複数の鉄心13からなるコアアセンブリの外部に駆動対象の溶湯を配置する。磁場発生装置1Aの応用例については、のちほど図10を参照して説明する。
【0076】
(磁場発生装置1Aの作用効果)
上記のように磁場発生装置1Aでは、外向きに突設された複数の磁極13a~13fを有する複数の鉄心13が互いに間隔をあけて配置されている。そして、第1の実施形態と同様に、コイル21~26が、第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻くように設けられている。磁場発生装置1と同様、鉄心13間に空隙があるものの、磁場発生装置1Aは従来の中実鉄心を用いた場合と比べて同程度の強度の磁場を発生させることができる。また、各鉄心13の間に空隙があるため、第1の実施形態で説明した効果A~Cを得ることができる。
【0077】
なお、第2の実施形態においても、鉄心の形状は、リング状に限られず、たとえばU字形であってもよい。
【0078】
<溶湯撹拌システム>
次に、図10を参照して、第2の実施形態に係る磁場発生装置1Aを備える溶湯駆動システム(溶湯撹拌システム)100Aについて説明する。図10は溶湯駆動システム100Aの平面図を示している。
【0079】
溶湯駆動システム100Aは、磁場発生装置1Aと、磁場発生装置1Aを収納するケース40Aと、金属溶湯を貯留するための炉300とを備えている。
【0080】
ケース40Aは、磁場発生装置1Aを収納するように構成されており、本実施形態では、耐火材からなる有底の筒状ケースである。
【0081】
炉300は、たとえば、アルミニウム等の非鉄金属を溶解するための溶解炉、または金属溶湯を保持するための保持炉である。なお、非鉄金属は、たとえば、Al,Cu,Znもしくはこれらのうちの少なくとも2つの合金、またはMg合金であってもよい。
【0082】
図10に示すように、溶湯駆動システム100Aでは、磁場発生装置1Aが収納されたケース40Aが、炉300の溶湯M中に配置されている。本実施形態では、ケース40Aの上側開口部分が湯面から露出するようにケース40Aが配置される。磁場発生装置1Aは、第1の実施形態と同様に、外部の交流電源50に電気的に接続されている。
【0083】
上記の溶湯駆動システム100Aでは、磁場発生装置1Aに三相交流電流が供給されることにより、ケース40Aの外部に鉄心13の中心軸まわりに回転する磁界が発生する。この回転磁界により炉300内の溶湯Mに渦電流が発生し、駆動方向DDが示すように、中心軸まわりに溶湯Mが撹拌される。
【0084】
なお、溶湯撹拌システム100Aでは、ケース40A(磁場発生装置1A)の配置位置は任意である。また、磁場発生装置1Aを収納した複数のケース40Aを炉300の下に配置してもよい。
【0085】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る磁場発生装置1Bについて、図11および図12を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る磁場発生装置1Bの平面図を示し、図12は、磁場発生装置1Bで用いられる鉄心14の側面図を示している。第3の実施形態と、第1および第2の実施形態との相違点の一つは、第1および第2の実施形態では鉄心が環状もしくはU字形であったのに対し、第3の実施形態では鉄心が直線形であり、直線型鉄心の延在方向に沿って移動する磁界が形成される点である。
【0086】
以下、上記相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0087】
磁場発生装置1Bは、図11に示すように、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心14と、複数のコイル21,22,23,24,25,26と、を備えている。なお、図示しないが、複数の鉄心14は、スペーサおよびボルト・ナット、あるいは固定治具などにより、所定の間隔をあけて固定されている。
【0088】
複数の鉄心14は、強磁性体からなる直線形鉄心であり、各鉄心14が延在する方向(延在方向)と直交する方向に沿って配列されている。なお、鉄心14の材料は、鉄心11~13と同様である。
【0089】
各鉄心14は、図12に示すように、直線形鉄心から同一方向に突設された複数の磁極14a,14b,14c,14d,14e,14fを有する。磁極14aおよび磁極14bはR相に対応し、磁極14cおよび磁極14dはS相に対応し、磁極14eおよび磁極14fはT相に対応する。
【0090】
各鉄心14において複数の磁極14a,14b,14c,14d,14e,14fは、図11に示すように、直線型鉄心の延在方向に磁極14a、磁極14c、磁極14e、磁極14b、磁極14d、磁極14fの順に設けられている。なお、6つの磁極14a~14fを一単位として、磁場発生装置1Bが設置される炉の大きさ、溶湯の搬送距離等に応じて所要の数の磁極を配列させてもよい。
【0091】
図11に示すように、複数の鉄心14が有する複数の磁極14aは、所定の方向(鉄心14の厚さ方向)に沿って配列して磁極群14G(第1の磁極群)を構成している。同様に、磁極14b~14fについても、磁極14aと同様に、それぞれ磁極群14G(第2~第6の磁極群)を構成している。
【0092】
なお、図11に示すように、本実施形態では、鉄心14間の間隔Gは鉄心14の厚みTとほぼ同じか少し大きく、厚みTに対する間隔Gの比(G/T)は1以上である。これにより、第1の実施形態と同様、磁場発生装置1Bの鉄心の総量を半分以下にすることができる。さらに、間隔Gが設けられることで、磁場発生装置1Bの放熱性を高めることができる。
【0093】
コイル21は、第1の磁極群を取り巻くように巻回されている。同様に、コイル22は第2の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル23は第3の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル24は第4の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル25は第5の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル26は第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。
【0094】
コイル21~26の結線については第1の実施形態と同じであり、磁場発生装置1Bの動作時において、コイル21および22にR相電流が流れ、コイル23および24にS相電流が流れ、コイル25および26にT相電流が流れる。これにより、磁場発生装置1Bの上部には、鉄心14の延在方向に移動する磁界が発生する。
【0095】
上記のように、磁場発生装置1Bは、三相交流電源により駆動され、その上部に所定の方向に移動する磁界を発生するように構成されている。磁場発生装置1Aを使用する際は、磁場発生装置1Bの上に駆動対象の溶湯を配置する。磁場発生装置1Bの応用例については、のちほど図13を参照して説明する。
【0096】
(磁場発生装置1Bの作用効果)
上記のように磁場発生装置1Bでは、直線型鉄心から同一方向に突設された複数の磁極14a~14fを有する複数の鉄心14が鉄心の幅方向に互いに間隔をあけて配置されている。そして、第1および第2の実施形態と同様に、コイル21~26が、第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻くように設けられている。磁場発生装置1,1Aと同様、鉄心14間に空隙があるものの、磁場発生装置1Bは従来の中実鉄心を用いた場合と比べて同程度の強度の磁場を発生させることができる。各鉄心14間に空隙があるため、第1の実施形態で説明した効果A~Cを得ることができる。
【0097】
なお、鉄心14の形状は、直線状に限られず、溶湯の搬送方向等に応じて、一部が湾曲等していてもよい。
【0098】
<溶湯撹拌システム>
次に、図13を参照して、第3の実施形態に係る磁場発生装置1Bを備える溶湯駆動システム(溶湯撹拌システム)100Bについて説明する。図13は溶湯駆動システム100Bの一部縦断面図を示している。
【0099】
溶湯駆動システム100Bは、磁場発生装置1Bと、磁場発生装置1Bを収納するケース40Bと、ケース40Bの上に設置された炉300とを備えている。
【0100】
ケース40Bは、磁場発生装置1Bを収納するように構成されており、本実施形態では、耐火材からなる略直方体形状のケースである。ケース40Bは、空気取入口41および空気排出口42を有する。空気取入口41および空気排出口42は、複数の鉄心14が延在する方向に沿って複数の鉄心14を挟むように配設されている。本実施形態では、空気取入口41および空気排出口42は、ケース40Bの互いに対向する面にそれぞれ設けられている。これにより、空気取入口41からケース40B内に取り込まれた冷却用空気は複数の鉄心14間の空隙を通った後、空気排出口42から排出されるため、磁場発生装置1Bの冷却効率を大幅に高めることができる。
【0101】
図13に示すように、溶湯駆動システム100Bでは、磁場発生装置1Bが収納されたケース40Bが、炉300の下に配置されている。磁場発生装置1Bは、第1の実施形態と同様に、外部の交流電源50に電気的に接続されている。
【0102】
上記の溶湯撹拌システム100Bでは、磁場発生装置1Bに三相交流電流が供給されることにより、炉300内に鉄心14の延在方向と略平行な方向に沿って移動する磁界が発生する。この移動磁界により炉300内の溶湯Mが駆動方向DDに沿って駆動される。駆動された溶湯Mは炉300の側壁に当たり、側壁に沿って上下左右に広がった後、駆動方向と反対方向に拡散する。その結果、溶湯Mは炉300内で撹拌されることとなる。
【0103】
なお、磁場発生装置1Bに比べて炉300のサイズが大きい場合、炉300の下に複数の磁場発生装置1Bを配置してもよい。たとえば、複数の磁場発生装置1Bが炉300の側壁に沿って配置されてもよい。これにより、炉300内の溶湯Mは炉300の側壁に沿って駆動されるため、炉300内で効率良く撹拌される。
【0104】
また、所望の撹拌方向に沿って磁場発生装置1Bを炉300の角部に配置してもよい。
【0105】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る磁場発生装置1Cについて、図14図16を参照して説明する。図14は本実施形態に係る磁場発生装置1Cの平面図を示し、図15は磁場発生装置1Cで用いられる、同心に配置された複数の鉄心の平面図を示し、図16は、図15に示す円盤形鉄心のI-I線に沿う断面図を示す。
【0106】
第4の実施形態と、第1および第2の実施形態との相違点の一つは、第1および第2の実施形態では複数のリング形鉄心が中心軸方向に沿って配列されていたのに対し、第4の実施形態では互いに大きさの異なる複数のリング形鉄心が同心に配置されている点である。
【0107】
以下、上記相違点を中心に第4の実施形態について説明する。
【0108】
磁場発生装置1Cは、図14に示すように、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心15-1,15-2と、複数のコイル21,22,23,24,25,26と、を備えている。
【0109】
複数の鉄心15-1,15-2は、互いに大きさの異なるリング形鉄心であり、同心状に配置されている。すなわち、鉄心15-1と鉄心15-2は、中心軸が一致し且つ同一平面内に位置するように配列されている。なお、鉄心の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0110】
図15および図16に示すように、鉄心15-1と鉄心15-2のいずれにも、リング形鉄心の上面から同じ方向にフィン状に突設された磁極15a,15b,15c,15d,15e,15fを有する。磁極15aおよび磁極15bはR相に対応し、磁極15cおよび磁極15dはS相に対応し、磁極15eおよび磁極15fはT相に対応する。
【0111】
本実施形態では、各磁極は3つずつ設けられている。たとえば、磁極15aは3つ設けられている。これら3つの磁極は、鉄心の中心軸から放射状に半径方向に延びるように形成されているが、これに限らず、互いに平行に設けられてもよい。また、磁極の数は、3つに限られず、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0112】
図15に示すように、鉄心15-1の磁極と鉄心15-2の磁極とが一直線上に位置するように鉄心15-1と鉄心15-2は位置決めされた上で固定されている。これにより、鉄心15-1と鉄心15-2が有する複数の磁極は、鉄心15-1,15-2の半径方向に沿って配列して磁極群15Gを構成する。これまでの実施形態と同様に、鉄心15-1,15-2には、6つの磁極群15G(第1~第6の磁極群)が構成されている。
【0113】
なお、図示しないが、複数の鉄心15-1,15-2は、スペーサおよびボルト・ナット、あるいは固定治具などにより固定されている。
【0114】
図15に示すように、複数の磁極15aから構成される第1の磁極群と、複数の磁極15bから構成される第2の磁極群は、各鉄心15-1,15-2の中心を挟んで対称に配置されている。同様に、複数の磁極15cから構成される第3の磁極群と、複数の磁極15dから構成される第4の磁極群は、各鉄心15-1,15-2の中心を挟んで対称に配置されている。複数の磁極15eから構成される第5の磁極群と、複数の磁極15fから構成される第6の磁極群は、各鉄心15-1,15-2の中心を挟んで対称に配置されている。
【0115】
図14に示すように、コイル21は、第1の磁極群を取り巻くように巻回されている。同様に、コイル22は第2の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル23は第3の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル24は第4の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル25は第5の磁極群を取り巻くように巻回され、コイル26は第6の磁極群を取り巻くように巻回されている。
【0116】
なお、図14に示すように、本実施形態では、鉄心15-1,15-2間の間隔Gは鉄心15-1,15-2の厚みTとほぼ同じか少し大きく、厚みTに対する間隔Gの比(G/T)は1以上である。これにより、第1の実施形態と同様、磁場発生装置1Cの鉄心の総量を大幅に減らすことができる。さらに、間隔Gが設けられることで、磁場発生装置1Cの放熱性を高めることができる。
【0117】
コイル21~26の結線については第1の実施形態と同じであり、磁場発生装置1Cの動作時において、コイル21および22にR相電流が流れ、コイル23および24にS相電流が流れ、コイル25および26にT相電流が流れる。これにより、磁場発生装置1Cの上部には、鉄心15-1,15-2の中心軸のまわりに回転する磁界が発生する。
【0118】
(磁場発生装置1Cの作用効果)
上記のように、磁場発生装置1Cでは、上向きに突設された複数の磁極15a~15fを有する複数のリング形鉄心が互いに間隔をあけて同心状に配置されている。そして、コイル21~26が、これまでの実施形態と同様に、第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻くように設けられている。磁場発生装置1,1A,1Bと同様、鉄心15-1と鉄心15-2との間に空隙があるものの、磁場発生装置1Cは従来の中実鉄心を用いた場合と比べて同程度の強度の磁場を発生させることができる。また、鉄心15-1と鉄心15-2との間に空隙があるため、第1の実施形態で説明した効果A~Cを得ることができる。
【0119】
(鉄心の変形例)
図17および図18を参照して、第4の実施形態に係る鉄心の変型例を説明する。
【0120】
本変型例では、図17に示すように、鉄心15-1と鉄心15-2が磁極により連結されている。たとえば、図18に示すように、鉄心15-1の磁極15eと鉄心15-2の磁極15eが接続され、一つの磁極15eが構成され、同様に、鉄心15-1の磁極15fと鉄心15-2の磁極15fが接続され、一つの磁極15fが構成されている。換言すれば、各鉄心の同一の磁極群の磁極は互いに接続されている。
【0121】
本変型例によれば、各磁極は鉄心15-1と鉄心15-2を連結する連結材としても機能するため、複数の鉄心15-1、15-2を固定するための締結部材や固定治具を不要とすることができる。
【0122】
<溶湯撹拌システム>
次に、図19を参照して、第4の実施形態に係る磁場発生装置1Cを備える溶湯駆動システム(溶湯撹拌システム)100Cについて説明する。図19は溶湯駆動システム100Cの平面図を示している。
【0123】
溶湯駆動システム100Cは、磁場発生装置1Cと、磁場発生装置1Cを収納するケース40Cと、ケース40Cの上に設置された炉300とを備えている。
【0124】
ケース40Cは、磁場発生装置1Cを収納するように構成されており、たとえば、耐火材からなる。このケース40Cは、第3の実施形態のケース40Bと同様に、空気取入口41および空気排出口42を有してもよい。
【0125】
図13に示すように、溶湯駆動システム100Bでは、磁場発生装置1Bが収納されたケース40Bが、炉300の下に配置されている。磁場発生装置1Bは、第1の実施形態と同様に、外部の交流電源50に電気的に接続されている。
【0126】
上記の溶湯撹拌システム100Cでは、磁場発生装置1Cに三相交流電流が供給されることにより、炉300内に鉄心15-1,15-2の中心軸のまわりに回転する磁界が発生する。この回転磁界により炉300内の溶湯Mが駆動方向DDに沿って駆動され、中心軸まわりに溶湯Mが撹拌される。
【0127】
なお、溶湯撹拌システム100Cでは、ケース40C(磁場発生装置1C)の配置位置は任意である。また、磁場発生装置1Cを収納した複数のケース40Cを炉300の下に配置してもよい。また、炉の下に限らず、炉の側壁に磁場発生装置1Cを配置してもよい。
【0128】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1,1A,1B,1C 磁場発生装置
11,12,13,14,15-1,15-2 鉄心
11a 磁極
11G,14G,15G 磁極群
21~26 コイル
31 (固定用の)ボルト
32 ナット
33 スペーサ
40,40A,40B,40C ケース
41 空気取入口
42 空気排出口
43 端子箱
50 交流電源
60 取付台
100,100A,100B,100C 溶湯駆動システム
200 鋳型
300 炉
CH 中心孔
CL 中心軸
DD 駆動方向
G 間隔
H 貫通孔
M 金属溶湯
P 鋳造品
T 厚み
【要約】
【課題】放熱性に優れ、発熱量が少ないながら、十分な強度の磁場を発生することが可能な磁場発生装置および溶湯撹拌システムを提供する。
【解決手段】実施形態の磁場発生装置1は、互いに間隔をあけて配置された複数の鉄心11と、R相の電流を通電させるためのコイル21,22と、S相の電流を通電させるためのコイル23,24と、T相の電流を通電させるためのコイル25,26とを備える。各鉄心11が有する磁極11a~11fは、所定の方向に沿って配列して、第1~第6の磁極群をそれぞれ構成する。コイル21~26は、第1~第6の磁極群をそれぞれ取り巻くように巻回されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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図14
図15
図16
図17
図18
図19