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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 25/304 20060101AFI20230719BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B41J25/304 U
B41J2/325 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019210653
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021079661
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390034223
【氏名又は名称】イーデーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】奈良 亘
(72)【発明者】
【氏名】神之田 時男
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0135003(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0215210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 23/00 - 25/34
B41J 2/315 - 2/345
B41J 2/42 - 2/425
B41J 2/475 - 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に印刷部を印刷するサーマルプリンタであって、
プリントヘッドと、
前記プリントヘッドとの間に被印刷物を配置した状態で被印刷物に対向して配置される印字受け部と、
直線方向に移動する駆動ベルトと、前記駆動ベルトの移動方向である直線方向を前記プリントヘッドが回動する回動方向に変換するリンク機構と、を有し、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度が所定角度となるように前記プリントヘッドを前記印字受け部側に押圧する押圧位置と、前記プリントヘッドが前記印字受け部から離間する離間位置と、に前記プリントヘッドを回動させるように前記駆動ベルトを駆動するヘッド押圧部と、
前記リンク機構に接続され、前記プリントヘッド及び前記駆動ベルトを、前記駆動ベルトが移動する前記直線方向と同一の直線方向に移動させる直線移動部と、
前記駆動ベルトの移動量に基づいて、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度に関する情報である角度情報を検出する角度検出部と、
前記プリントヘッドを前記直線方向に移動させるように前記直線移動部を制御すると共に、前記角度検出部により検出された前記角度情報に基づいて、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度を保持するように前記ヘッド押圧部を制御する制御部と、を備えるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記リンク機構は、
前記直線方向に直交する幅方向に所定長さ延びる支持部と、
前記駆動ベルトの直線方向への移動に連動して移動する駆動ベルト側直線移動部材と、
前記プリントヘッドを前記支持部に対して回動させることが可能なヘッド側回動部材と、
前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とをリンクさせた状態で、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とを接続するリンク部材と、を有し、
前記駆動ベルト側直線移動部材は、前記支持部の幅方向の所定位置において前記駆動ベルトが接続され、
前記ヘッド側回動部材は、前記支持部の幅方向の所定位置から前記幅方向にずれた位置において前記プリントヘッドを支持し、
前記ヘッド押圧部は、前記駆動ベルトを直線方向に移動させることで、前記駆動ベルト側直線移動部材を前記直線方向にスライドさせて、前記リンク部材を介して、前記プリントヘッドを支持しながら前記ヘッド側回動部材を回動させることで、前記プリントヘッドが前記印字受け部側に押圧するように前記ヘッド側回動部材を回動させる、請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記リンク機構は、
前記直線方向に直交する幅方向に所定長さ延びる支持部と、
前記駆動ベルトの直線方向への移動に連動して移動する駆動ベルト側直線移動部材と、
前記プリントヘッドを前記支持部に対して回動させることが可能なヘッド側回動部材と、
前記支持部の幅方向の両端部側において、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とをリンクさせた状態で、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とを接続する一対のリンク部材と、を有し、
前記駆動ベルト側直線移動部材は、前記支持部の幅方向の一端部側において前記駆動ベルトが接続されると共に、前記支持部の幅方向の中央寄りにおいて前記直線方向にスライド可能に前記支持部に支持され、
前記ヘッド側回動部材は、前記支持部の幅方向の中央寄りの部分において前記プリントヘッドを支持し、
前記ヘッド押圧部は、前記駆動ベルトを直線方向に移動させることで、前記駆動ベルト側直線移動部材を前記直線方向にスライドさせて、前記一対のリンク部材を介して、前記幅方向の両端部側において前記プリントヘッドを支持しながら前記ヘッド側回動部材を回動させることで、前記プリントヘッドの幅方向の中央寄りの部分を中心として、前記プリントヘッドが前記印字受け部側に押圧するように前記ヘッド側回動部材を回動させる、請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドと、サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧位置と離間位置とに移動させる押圧部と、印刷時にサーマルヘッドを印字受け部側に押圧した状態でサーマルヘッドを印刷方向に移動させる移動部と、を備えるサーマルプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の押圧部は、サーマルヘッドの上方側に配置されるヘッド上下カムを備え、サーマルヘッドは、ヘッド上下カムにより昇降される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-105951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧部を備えるサーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドの上方側にヘッド上下カムが配置される場合には、配置スペースの関係で、サーマルヘッドの上下方向への移動のストロークを確保できないことがあった。
また、サーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧部と、印刷方向にサーマルヘッドを移動させる移動部と、を備え、押圧部が、更に、印字受け部に対するサーマルヘッドの角度を所定の範囲に保持する機構を有する場合には、複雑な構成になりやすく、装置が大きくなりやすい。
そのため、サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧部と、印刷時にサーマルヘッドを印字受け部側に押圧した状態でサーマルヘッドを印刷方向に移動させる移動部と、を備え、簡易且つコンパクトに構成されるサーマルプリンタが望まれる。
【0005】
本発明は、サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧部と、印刷時にサーマルヘッドを印刷方向に移動させる移動部と、を備え、簡易且つコンパクトに構成されたサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被印刷物に印刷部を印刷するサーマルプリンタであって、プリントヘッドと、前記プリントヘッドとの間に被印刷物を配置した状態で被印刷物に対向して配置される印字受け部と、直線方向に移動する駆動ベルトと、前記駆動ベルトの移動方向である直線方向を前記プリントヘッドが回動する回動方向に変換するリンク機構と、を有し、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度が所定角度となるように前記プリントヘッドを前記印字受け部側に押圧する押圧位置と、前記プリントヘッドが前記印字受け部から離間する離間位置と、に前記プリントヘッドを回動させるように前記駆動ベルトを駆動するヘッド押圧部と、前記リンク機構に接続され、前記プリントヘッド及び前記駆動ベルトを、前記駆動ベルトが移動する前記直線方向と同一の直線方向に移動させる直線移動部と、前記駆動ベルトの移動量に基づいて、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度に関する情報である角度情報を検出する角度検出部と、前記プリントヘッドを前記直線方向に移動させるように前記直線移動部を制御すると共に、前記角度検出部により検出された前記角度情報に基づいて、前記印字受け部に対する前記プリントヘッドの角度を保持するように前記ヘッド押圧部を制御する制御部と、を備えるサーマルプリンタに関する。
【0007】
また、前記リンク機構は、前記直線方向に直交する幅方向に所定長さ延びる支持部と、前記駆動ベルトの直線方向への移動に連動して移動する駆動ベルト側直線移動部材と、前記プリントヘッドを前記支持部に対して回動させることが可能なヘッド側回動部材と、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とをリンクさせた状態で、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とを接続するリンク部材と、を有し、前記駆動ベルト側直線移動部材は、前記支持部の幅方向の所定位置において前記駆動ベルトが接続され、前記ヘッド側回動部材は、前記支持部の幅方向の所定位置から前記幅方向にずれた位置において前記プリントヘッドを支持し、前記ヘッド押圧部は、前記駆動ベルトを直線方向に移動させることで、前記駆動ベルト側直線移動部材を前記直線方向にスライドさせて、前記リンク部材を介して、前記プリントヘッドを支持しながら前記ヘッド側回動部材を回動させることで、前記プリントヘッドが前記印字受け部側に押圧するように前記ヘッド側回動部材を回動させることが好ましい。
【0008】
また、前記リンク機構は、前記直線方向に直交する幅方向に所定長さ延びる支持部と、前記駆動ベルトの直線方向への移動に連動して移動する駆動ベルト側直線移動部材と、前記プリントヘッドを前記支持部に対して回動させることが可能なヘッド側回動部材と、前記支持部の幅方向の両端部側において、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とをリンクさせた状態で、前記ヘッド側回動部材と前記駆動ベルト側直線移動部材とを接続する一対のリンク部材と、を有し、前記駆動ベルト側直線移動部材は、前記支持部の幅方向の一端部側において前記駆動ベルトが接続されると共に、前記支持部の幅方向の中央寄りにおいて前記直線方向にスライド可能に前記支持部に支持され、前記ヘッド側回動部材は、前記支持部の幅方向の中央寄りの部分において前記プリントヘッドを支持し、前記ヘッド押圧部は、前記駆動ベルトを直線方向に移動させることで、前記駆動ベルト側直線移動部材を前記直線方向にスライドさせて、前記一対のリンク部材を介して、前記幅方向の両端部側において前記プリントヘッドを支持しながら前記ヘッド側回動部材を回動させることで、前記プリントヘッドの幅方向の中央寄りの部分を中心として、前記プリントヘッドが前記印字受け部側に押圧するように前記ヘッド側回動部材を回動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サーマルヘッドを印字受け部側に押圧する押圧部と、印刷時にサーマルヘッドを印刷方向に移動させる移動部と、を備え、簡易且つコンパクトに構成されたサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタの全体構成を説明する図である。
図2】ヘッドユニットをY方向のY1側の斜め上方側から視た斜視図である。
図3A】サーマルプリンタの移動状態を示す図であって、サーマルヘッドが離間位置に位置する場合を示す図である。
図3B】サーマルプリンタの移動状態を示す図であって、サーマルヘッドが押圧位置に位置しており、かつ、印刷開始位置に位置している場合を示す図である。
図3C】サーマルヘッドの移動状態を示す図であって、サーマルヘッドが印刷終了位置に位置する場合を示す図である。
図4A】サーマルヘッドが離間位置に位置する場合を示す斜視図である。
図4B】サーマルヘッドが押圧位置に位置する場合を示す斜視図である。
図5】ヘッドユニットをY方向のY2側の斜め下方側から視た場合の斜視図である。
図6A】サーマルプリンタの初期設定動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
図6B】サーマルプリンタの初期設定動作終了から運転待機時までの動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
図6C】サーマルプリンタの印刷動作時のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1図5を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタ1の全体構成を説明する図である。図2は、ヘッドユニット2をY方向のY1側の斜め上方側から視た斜視図である。図3Aは、サーマルプリンタ1の移動状態を示す図であって、サーマルヘッド21が離間位置に位置する場合を示す図である。図3Bは、サーマルプリンタ1の移動状態を示す図であって、サーマルヘッド21が押圧位置に位置しており、かつ、印刷開始位置に位置している場合を示す図である。図3Cは、サーマルヘッド21の移動状態を示す図であって、サーマルヘッド21が印刷終了位置に位置する場合を示す図である。図4Aは、サーマルヘッド21が離間位置に位置する場合を示す斜視図である。図4Bは、サーマルヘッド21が押圧位置に位置する場合を示す斜視図である。図5は、ヘッドユニット2をY方向のY2側の斜め下方側から視た場合の斜視図である。
【0012】
なお、本実施形態においては、以下の説明及び図面において、長尺フィルムFの移送方向Pは、例えば、図1の左側から右側に向かう方向である。また、モータ等の各軸部材が延びる方向をX方向(図1の紙面を貫く方向)ともいう。X方向における一方側(図2における右斜め上側)をX1側ともいい、X方向における他方側(図2における左斜め下側)をX2側ともいう。長尺フィルムFの移送方向Pに平行な方向であってヘッドユニット2が移動する直線方向をY方向(図1の左右方向)ともいう。Y方向における一方側(図1における右側)をY1側ともいい、Y方向における他方側(図1における左側)をY2側ともいう。サーマルプリンタ1における上下方向をZ方向ともいう。X方向、Y方向及びZ方向は、それぞれに対して直交する。
【0013】
本実施形態のサーマルプリンタ1は、例えば、移送と停止とを繰り返して間欠的に移送される長尺フィルムFの停止時に印刷動作を実行する間欠式のプリンタである。なお、サーマルプリンタ1は、間欠式のプリンタに限定されず、長尺フィルムF(被印刷物)の移動中に印字付け部材側に押圧することで印刷を行う連続式のプリンタでもよい。
本実施形態のサーマルプリンタ1は、例えば、長尺フィルムF(被印刷物)を移送して被包装物を包装する包装機などの印刷工程に使用され、包装機(不図示)における長尺フィルムFの移送経路の途中に配置される。なお、本実施形態のサーマルプリンタ1が用いられる機器は、包装機に限定されない。
【0014】
サーマルプリンタ1は、長尺フィルムFに印刷パターン(印刷部)を印刷する。長尺フィルムFは、X方向に幅を有して、移送方向P(Y方向)に長い長尺状に形成され、図1に示すように、サーマルヘッド21とプラテンプレート6との間を移送方向Pに搬送される。長尺フィルムFの移送方向Pは、例えば、Y方向のY2側(図1の左側)からY1側(図1の右側)に向かう方向である。
【0015】
サーマルプリンタ1は、図1に示すように、ヘッドユニット2と、ヘッド押圧機構3(ヘッド押圧部)と、ヘッド直線移動機構5(直線移動部)と、プラテンプレート6(印字受け部)と、リボン搬送機構7と、Y方向移動原点スイッチ82と、制御部10と、を備える。
【0016】
ヘッドユニット2は、プラテンプレート6の上面を移送される長尺フィルムFの上方側に配置されている。ヘッドユニット2は、図2に示すように、サーマルプリンタ1のX方向の中央よりもX2側に配置される。
【0017】
ヘッドユニット2は、図2に示すように、サーマルヘッド21(プリントヘッド)と、上側支持板22と、上下方向延在支持板23と、ヘッド押圧機構3(後述)のリンク機構32と、サーマルヘッド21に対してインクリボンRの下流側に配置されるガイドローラ24と、を備える。ヘッドユニット2において、サーマルヘッド21と、上側支持板22と、上下方向延在支持板23と、ガイドローラ24と、リンク機構32とは、ユニット化されている。ガイドローラ24は、サーマルヘッド21の下流側において、インクリボンRをガイドする。ヘッドユニット2は、X方向のX1側が筐体等に支持される片支持構造で構成される。
【0018】
サーマルヘッド21は、ヘッドユニット2における下方側に配置される。
サーマルヘッド21は、ヘッド押圧機構3(後述)により、サーマルヘッド21の後方側に配置される回動軸Jを中心に回動可能に構成され、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなるようにサーマルヘッド21をプラテンプレート6側に押圧する押圧位置(図3B参照)と、サーマルヘッド21がプラテンプレート6から離間する離間位置(図3A参照)と、に回動される。
また、サーマルヘッド21は、ヘッド直線移動機構5(後述)により、直線方向であるY方向に移動可能に構成され、Y方向において、印刷開始位置(図3B参照)と印刷終了位置(図3C)との間を移動する。
ヘッド押圧機構3及びヘッド直線移動機構5の詳細については後述する。
【0019】
サーマルヘッド21は、移送方向Pに移送される長尺フィルムFに、印刷パターン(印刷部)(不図示)を印刷する。サーマルヘッド21は、図1に示すように、リボン搬送機構7のインクリボンR及び長尺フィルムFを挟んで、プラテンプレート6に対向して配置される。
【0020】
サーマルヘッド21は、図2に示すように、X方向(幅方向)に幅を有して形成される。サーマルヘッド21は、先端21a側が下方側に突出するように配置される。サーマルヘッド21は、その先端21aに複数の発熱素子を備える。サーマルヘッド21に通電させることにより、所望の発熱素子が発熱する。
【0021】
プラテンプレート6は、図1に示すように、板状に形成され、長尺フィルムFを挟んでヘッドユニット2の下方側に配置されている。プラテンプレート6は、上面がX方向及びY方向に延びる平面状に形成される。プラテンプレート6は、サーマルヘッド21との間に長尺フィルムFを配置した状態で長尺フィルムFに対向して配置される。
【0022】
上下方向延在支持板23は、図2に示すように、サーマルプリンタ1のX方向の中央寄りにおいて、Z方向及びY方向に延びる板状に形成される。上下方向延在支持板23は、ヘッドユニット2におけるX方向のX1側に配置される。
【0023】
上側支持板22は、ヘッドユニット2における上方側に配置される。上側支持板22は、断面形状が略コ字状に形成され、上面板221と、一対の側面板223と、を有する。
【0024】
上面板221は、図2に示すように、X方向(幅方向)及びY方向に所定長さ延びる。本実施形態においては、上面板221の幅方向は、X方向と一致する。
一対の側面板223は、上面板221のX方向の両端部からZ方向の下方側に延びる。X方向のX1側の側面板223は、上下方向延在支持板23の側部に固定されている。これにより、ヘッドユニット2は、X方向のX1側の側面板223が、上下方向延在支持板23に固定されており、X方向の片側で支持される片支持構造で構成される。一対の側面板223は、それぞれ、Y方向のY2側において下方に突出する突出板223aを有する。
【0025】
側面板223の突出板223aには、角度調整用長穴223bが形成される。角度調整用長穴223bは、サーマルヘッド21の回動軸Jを中心とした半径の円に沿った円弧状に延びる。角度調整用長穴223bには、サーマルヘッド21を支持するヘッド側回動部材322(後述)の角度を調整して固定するために、角度調整用長穴223bにおける固定位置を調整可能なネジ223cが挿入される。
【0026】
ここで、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の先端21aの角度の所定角度α(図3B参照)に関して、サーマルヘッド21の製造メーカが推奨するメーカ推奨角度がある。メーカ推奨角度は、サーマルヘッド21の接触角度において良好な印刷品質を得られることをメーカが推奨する接触角度である。しかし、サーマルヘッド21の製造バラツキにより、製造後のサーマルヘッド21において、最適な接触角度は、メーカが推奨するメーカ推奨角度とは異なる場合もある。メーカ推奨角度は、例えば、20~30°の範囲の所定の角度である。
【0027】
本実施形態においては、サーマルプリンタ1のセッティング時において、サーマルヘッド21の製造バラツキを吸収するように、円弧状に延びる角度調整用長穴223bに挿入されるネジ223cの固定位置を調整することで、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の先端21aの角度の所定角度αを調整可能である。角度調整用長穴223bにおいて調整されるサーマルヘッド21の角度は、サーマルプリンタ1の動作が停止されているセッティング時やメンテナンス時に調整されるものであって、サーマルプリンタ1の動作時においては、回動軸Jを中心にサーマルヘッド21が回動可能な状態で、上側支持板22に対するサーマルヘッド21の角度は固定されている。
【0028】
ヘッド押圧機構3は、図3A及び図3Bに示すように、サーマルヘッド21がプラテンプレート6から離間する離間位置(図3A図4A参照)と、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなるようにサーマルヘッド21をプラテンプレート6側に押圧する押圧位置(図3B図4B参照)と、にサーマルヘッド21を回動させることが可能である。
【0029】
ヘッド押圧機構3は、図2に示すように、ヘッド押圧側駆動ベルト31(駆動ベルト)と、ヘッドユニット2の一部を構成するリンク機構32と、ヘッド押圧駆動モータ33と、エンコーダ部4(角度検出部)と、を有する。
【0030】
ヘッド押圧駆動モータ33は、図2に示すように、サーマルプリンタ1のX方向のX1側において、Y方向のY2側に配置される。ヘッド押圧駆動モータ33の出力軸を構成する駆動軸部材331には、ヘッド押圧側駆動ベルト31が掛けられている。ヘッド押圧駆動モータ33は、駆動軸部材331を回転駆動することで、ヘッド押圧側駆動ベルト31を移動させる。ヘッド押圧駆動モータ33のX方向のX1側の端部には、エンコーダ部4が設けられている。
【0031】
エンコーダ部4は、ヘッド押圧側駆動ベルト31を回転駆動するヘッド押圧駆動モータ33のX方向のX1側の端部に設けられ、ヘッド押圧側駆動ベルト31の移動量に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度に関する情報である角度情報を検出する。本実施形態においては、エンコーダ部4は、ヘッド押圧側駆動ベルト31が移動することで回動する駆動軸部材331の回動量に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度に関する情報である角度情報を検出する。エンコーダ部4により検出されたプラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度情報は、後述する制御部10に送信される。
【0032】
ヘッド押圧側駆動ベルト31は、図2に示すように、無端ベルト状に形成され、周方向に回転可能に、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動軸部材331と回転軸部材332とに掛け渡されている。ヘッド押圧側駆動ベルト31は、X方向に視た場合に、Y方向に延びる細長い環状となるように配置されている。回転軸部材332は、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動軸部材331から、Y方向のY1側に離間して配置されている。
【0033】
ヘッド押圧側駆動ベルト31は、下方側直線状ベルト部分311を有する。下方側直線状ベルト部分311は、周方向に回転するヘッド押圧側駆動ベルト31の下部において、Y方向の水平方向に延びる部分である。下方側直線状ベルト部分311は、Y方向(直線方向)に移動可能な状態で、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動軸部材331の下端部と回転軸部材332の下端部とに亘って配置される。下方側直線状ベルト部分311は、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動軸部材331が駆動されることで、Y方向に移動される。下方側直線状ベルト部分311は、図4A及び図4Bに示すように、リンク機構32の駆動ベルト側直線移動部材321(後述)に接続される。
【0034】
リンク機構32は、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなるように、ヘッド押圧側駆動ベルト31の移動方向であるY方向を、サーマルヘッド21が回動する回動方向に変換する。
リンク機構32は、図2に示すように、上側支持板22(支持部)と、駆動ベルト側直線移動部材321と、ヘッド側回動部材322と、一対のリンク部材323,323と、を有する。
【0035】
駆動ベルト側直線移動部材321は、上側支持板22の上面板221の下面に、Y方向にスライド可能に配置される。駆動ベルト側直線移動部材321は、Y方向に直交するX方向に所定長さ延びる。
【0036】
駆動ベルト側直線移動部材321には、図4A及び図4Bに示すように、ヘッドユニット2の上側支持板22のX方向のX1側の一端部側(所定位置)において、ヘッド押圧側駆動ベルト31が接続される。具体的には、ヘッド押圧側駆動ベルト31は、上側支持板22のX方向のX1側の端部側において、ベルト固定部材321cに挟み込まれることで、駆動ベルト側直線移動部材321に固定される。
【0037】
また、駆動ベルト側直線移動部材321の上面には、上側支持板22のX方向の中央寄りにおいて、移動側スライド部321aが固定される。移動側スライド部321aの上面には、スライド溝321bが形成される。
【0038】
移動側スライド部321aは、上側支持板22のスライド部221aがスライド溝321bにスライド可能に配置されることで、上側支持板22に対してY方向にスライド可能に支持される。スライド部221aは、上側支持板22の上面板221の下面に設けられる。これにより、駆動ベルト側直線移動部材321は、上側支持板22のX方向のX1側の中央寄りにおいてY方向にスライド可能に、上側支持板22に支持されるため、ヘッド押圧側駆動ベルト31のY方向への移動に連動して、上側支持板22に対してY方向に移動可能である。
【0039】
ヘッド側回動部材322は、駆動ベルト側直線移動部材321の下方に配置される。ヘッド側回動部材322は、X方向に所定長さ延びる。ヘッド側回動部材322は、上側支持板22のX方向のX1側の一端部側(所定位置)からX方向にずれた位置において、サーマルヘッド21を支持する。本実施形態においては、上側支持板22のX方向の中央寄りの部分においてサーマルヘッド21を支持する。ヘッド側回動部材322の下部には、サーマルヘッド21が固定されており、ヘッド側回動部材322は、サーマルヘッド21を支持すると共に、回動軸Jを中心に、サーマルヘッド21を上側支持板22に対して回動させることが可能である。
【0040】
一対のリンク部材323,323は、それぞれ、棒状に延びて形成され、上側支持板22のX方向の両端部側において、ヘッド側回動部材322と駆動ベルト側直線移動部材321とをリンクさせた状態で、ヘッド側回動部材322と駆動ベルト側直線移動部材321とを接続する。
【0041】
リンク部材323は、長手方向の一端部側が、駆動ベルト側直線移動部材321に回動可能に接続されており、長手方向の他端部側が、ヘッド側回動部材322に回動可能に接続されている。一対のリンク部材323,323は、長手方向の一端部側において、X方向に延びる回転軸部材324のX方向の両端部に接続されており、互いが同期して回転可能である。回転軸部材324は、駆動ベルト側直線移動部材321をX方向に貫通して配置される。
【0042】
以上のように構成されるヘッド押圧機構3は、図4A及び図4Bに示すように、ヘッド押圧駆動モータ33を駆動することにより、ヘッド押圧側駆動ベルト31の下方側直線状ベルト部分311をY方向に移動させることで、駆動ベルト側直線移動部材321をY方向にスライドさせて、一対のリンク部材323,323を介して、X方向の両端部側においてサーマルヘッド21を支持しながら回動軸Jを中心にヘッド側回動部材322を回動させる。これにより、サーマルヘッド21のX方向の中央寄りの部分を中心としてサーマルヘッド21がプラテンプレート6側に押圧するように、ヘッド側回動部材322を回動させることができる。ヘッド押圧機構3は、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなるようにサーマルヘッド21をプラテンプレート6側に押圧する押圧位置(図4B参照)と、サーマルヘッド21がプラテンプレート6から離間する離間位置(図4A参照)と、にサーマルヘッド21を回動させるようにヘッド押圧側駆動ベルト31を駆動する。ヘッド押圧駆動モータ33の駆動は、制御部10により制御される。
【0043】
ここで、本実施形態において、リンク機構32においては、駆動ベルト側直線移動部材321は、上側支持板22のX方向のX1側の一端部側においてヘッド押圧側駆動ベルト31が接続されると共に、上側支持板22のX方向の中央寄りにおいてY方向にスライド可能に上側支持板22に支持される。また、ヘッド側回動部材322は、上側支持板22のX方向の中央寄りの部分においてサーマルヘッド21を支持する。そのため、ヘッド押圧側駆動ベルト31が、X方向のX1側の端部側において駆動ベルト側直線移動部材321に接続された状態で、リンク機構32が駆動されても、サーマルヘッド21のX方向の中央において均等に押圧することができ、例えば、本実施形態のようにヘッドユニット2が片支持構造であっても、サーマルヘッド21のX方向の中央寄りの部分においてサーマルヘッド21を均等に押圧することができる。
【0044】
また、サーマルヘッド21のY方向のY2側の端部側には、図5に示すように、ハーネス25が接続されている。ハーネス25は、一端部側が、サーマルヘッド21に接続されると共に、他端部側が、サーマルプリンタ1の筐体等に直接的に又は間接的に固定される基板26に接続されている。ハーネス25は、サーマルヘッド21のY方向のY2側の端部側の部分から、Y2側に延び、Y2側の所定位置において、Y2側が凸となるように上方側に湾曲して、上方側において、Y2側からY1側に延びて、Y1側の端部において、基板26に接続されている。
【0045】
ここで、本実施形態においては、ヘッド押圧側駆動ベルト31は、上側支持板22のX方向のX1側の端部側において、ベルト固定部材321cに挟み込まれることで、駆動ベルト側直線移動部材321に固定される。一方、ヘッド側回動部材322は、上側支持板22のX方向のX1側の端部側からX2側にずれた中央寄りの位置において、サーマルヘッド21を支持する。そのため、ヘッド押圧側駆動ベルト31は、X方向において、サーマルヘッド21が配置される部分からずれて配置される。これにより、サーマルヘッド21に接続されるハーネス25を配置するスペースが確保され、部材を配置する配置スペースの自由度を向上できる。
【0046】
また、サーマルヘッド21は、図3B及び図3Cに示すように、ヘッド直線移動機構5により、ヘッドユニット2をY方向に移動することで、Y方向に移動する。Y方向は、長尺フィルムFの面方向であって、長尺フィルムFの移送時の移送方向Pに平行な方向である。
【0047】
ヘッド直線移動機構5は、図4A及び図4Bに示すように、ヘッドユニット2に配置されるヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続される。そのため、ヘッド直線移動機構5を駆動させることで、ヘッドユニット2がY方向に移動され、リンク機構32もY方向に移動される。これにより、ヘッド直線移動機構5は、サーマルヘッド21を有するヘッドユニット2をヘッド押圧側駆動ベルト31が移動するY方向と同一の直線方向に移動させると共に、ヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続されるヘッド押圧側駆動ベルト31を、Y方向に移動させる。本実施形態においては、ヘッド押圧側駆動ベルト31が移動するY方向及びヘッド直線移動機構5がサーマルヘッド21を移動させるY方向は、長尺フィルムFの移送方向Pに平行な方向である。
【0048】
ヘッド直線移動機構5は、図2に示すように、ヘッド直線移動駆動モータ51と、ガイド機構52と、ヘッド直線移動側駆動ベルト53と、を有する。
【0049】
ヘッド直線移動駆動モータ51は、サーマルプリンタ1のX方向のX1側において、Y方向のY1側に配置される。ヘッド直線移動駆動モータ51の出力軸を構成する駆動軸部材511には、ヘッド直線移動側駆動ベルト53が掛けられている。ヘッド直線移動駆動モータ51は、駆動軸部材511を回転駆動することで、ヘッド直線移動側駆動ベルト53を移動させる。
ガイド機構52は、Y方向の水平方向に離間して配置される一対のプーリ521,521と、連結部522と、を有する。
【0050】
ヘッド直線移動側駆動ベルト53は、無端ベルト状に形成され、周方向に回転可能に、ヘッド直線移動駆動モータ51の駆動軸部材511と一対のプーリ521,521とに掛け渡されている。ヘッド直線移動側駆動ベルト53は、X方向に視た場合に、略三角形状の環状となるように配置されている。
【0051】
ヘッド直線移動側駆動ベルト53は、下側移動部分531を有する。下側移動部分531は、周方向に回転するヘッド直線移動側駆動ベルト53の下部において、Y方向に水平方向に延びる部分である。下側移動部分531は、Y方向(直線方向)に移動可能な状態で、一対のプーリ521,521の下端部の間に亘って配置される。
【0052】
連結部522は、図4A及び図4Bに示すように、ヘッドユニット2の上下方向延在支持板23と、ヘッド直線移動側駆動ベルト53の下側移動部分531と、を連結する。連結部522のX方向のX2側の端部は、上下方向延在支持板23のX1側の側面に固定される。連結部522のX方向のX1側の端部には、ベルト固定部材522aに挟み込まれることにより、ヘッド直線移動側駆動ベルト53の下側移動部分531が固定される。
【0053】
連結部522は、ヘッド直線移動駆動モータ51が回転されることで、ヘッド直線移動側駆動ベルト53の下側移動部分531がY方向に移動した場合に、ヘッド直線移動側駆動ベルト53の下側移動部分531の移動に伴ってY方向に移動する。これにより、連結部522に接続されたヘッドユニット2は、Y方向に移動する。
【0054】
Y方向移動原点スイッチ82は、図3Aに示すように、スイッチ本体82aを有する。スイッチ本体82aには、ヘッドユニット2が、印刷開始位置に位置した場合に、ヘッドユニット2が当接する。これにより、Y方向移動原点スイッチ82は、サーマルヘッド21が、Y方向への移動動作における原点位置である印刷開始位置に位置したことを検知する。Y方向移動原点スイッチ82により検知された検知信号は、後述する制御部10に送信される。
【0055】
以上のように構成されるヘッド直線移動機構5は、ヘッド直線移動駆動モータ51を駆動することで、ヘッドユニット2を、Y方向に直線的に移動させることが可能である。ヘッド直線移動駆動モータ51の駆動は、後述する制御部10により制御される。
ここで、前述の通り、ヘッドユニット2がヘッド直線移動機構5によりY方向に移動される場合には、ヘッド直線移動機構5は、ヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続されるヘッド押圧側駆動ベルト31を、Y方向に移動させる。ヘッド直線移動機構5は、図4A及び図4Bに示すように、ヘッドユニット2に配置されるヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続されるため、ヘッド直線移動機構5を駆動した場合に、ヘッド押圧機構3は連動して駆動されてしまう。その結果、ヘッド直線移動機構5は、サーマルヘッド21を有するヘッドユニット2をY方向に移動させた場合に、ヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続されるヘッド押圧側駆動ベルト31をY方向に移動させてしまう。
【0056】
リボン搬送機構7は、図1に示すように、巻回された未使用のインクリボンRを保持する原反側リボンホルダ71と、インクリボンRを巻き取る巻取側リボンホルダ72と、ガイドローラ73、74と、を備える。リボン搬送機構7は、原反側リボンホルダ71に巻回された未使用のインクリボンRをサーマルヘッド21へ向けて搬送すると共に、サーマルヘッド21に使用されたインクリボンRを巻取側リボンホルダ72へ向けて搬送する。ガイドローラ73、74は、原反側リボンホルダ71から巻取側リボンホルダ72に向かって搬送されるインクリボンRをガイドするローラである。
【0057】
制御部10は、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなるようにサーマルヘッド21をプラテンプレート6側に押圧する押圧位置(図3B参照)と、サーマルヘッド21がプラテンプレート6から離間する離間位置(図3A参照)と、に回動軸Jを中心に回動するように、ヘッド押圧機構3を制御する。所定角度αは、例えば、サーマルプリンタ1のセッティング時において、サーマルヘッド21の製造バラツキを吸収するように、サーマルプリンタ1として所望の性能が得られる角度が設定される。例えば、所定角度αは、20~30°の範囲の所定の角度に設定される。
【0058】
また、制御部10は、サーマルヘッド21をY方向に移動させるようにヘッド直線移動機構5を制御すると共に、エンコーダ部4により検出された角度情報に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を所定角度αで保持するようにヘッド押圧機構3を制御する。
【0059】
これにより、ヘッド直線移動機構5を駆動した場合にヘッド押圧機構3が連動して駆動される本発明の構成において、制御部10は、インクリボンRを、長尺フィルムF及びプラテンプレート6側に押圧した状態で、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を所定角度αで保持しながら、ヘッド直線移動機構5により、ヘッドユニット2をY方向に移動させることができる。
【0060】
次に、本実施形態のサーマルプリンタ1の動作について説明する。図6Aは、サーマルプリンタ1の初期設定動作のタイミングを示すタイミングチャートである。図6Bは、サーマルプリンタ1の初期設定動作終了から運転待機時までの動作のタイミングを示すタイミングチャートである。図6Cは、サーマルプリンタ1の印刷動作時のタイミングを示すタイミングチャートである。
ここでは、サーマルプリンタ1の初期設定動作、サーマルプリンタ1の初期設定動作終了から運転待機時までの動作、及び、サーマルプリンタ1の印刷動作について説明する。
【0061】
まず、サーマルプリンタ1の初期設定動作について説明する。
電源投入後に、図6Aに示すタイミングt101において、サーマルプリンタ1は、ヘッド押圧駆動モータ33を駆動することで、リンク機構32を介して、サーマルヘッド21を上昇させる。
【0062】
そして、タイミングt102において、エンコーダ部4がサーマルヘッド21の最上点位置(上死点)を検知した場合に、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動を停止して待機する。本実施形態においては、サーマルヘッド21の最上点位置(上死点位置)は、上側の機械的なリミット位置であり、例えば、本実施形態においては、図4Aに示すように、ヘッド側回動部材322が駆動ベルト側直線移動部材321に接触した位置である。エンコーダ部4により検知されたサーマルヘッド21の最上点位置(上死点位置)は、制御部10のメモリに記憶される。
【0063】
次に、タイミングt103において、ヘッド直線移動駆動モータ51を駆動して、ヘッドユニット2(サーマルヘッド21)を、Y方向のY1側に移動させる。
タイミングt104において、ヘッドユニット2(サーマルヘッド21)のY方向のY1側への移動動作により、Y方向移動原点スイッチ82のONを検知した場合に、ヘッド直線移動駆動モータ51の駆動を停止させる。
【0064】
タイミングt105において、Y方向移動原点スイッチ82の常時ONを避けるため、Y方向移動原点スイッチ82がOFFに切り替わる位置までヘッドユニット2をY方向のY2側に僅かに移動させるように、ヘッド直線移動駆動モータ51を駆動して、タイミングt106において、ヘッド直線移動駆動モータ51の駆動を停止する。Y方向移動原点スイッチ82がONとなる位置から、Y方向のY2側に僅かに移動して、Y方向移動原点スイッチ82がOFFに切り替わってヘッドユニット2を停止させた位置は、ヘッドユニット2におけるY方向のホームポジションとして、制御部10に記憶される。これにより、タイミングt107において、ヘッドユニット2は、Y方向において、ホームポジションに位置する。
【0065】
次に、タイミングt107において、サーマルプリンタ1は、サーマルヘッド21の最下点位置(下死点)を検知するため、ヘッド押圧駆動モータ33を駆動することで、リンク機構32を介して、サーマルヘッド21を下降させる。
【0066】
タイミングt108において、エンコーダ部4がサーマルヘッド21の最下点位置(下死点位置)を検知した場合に、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動を停止する。サーマルヘッド21の最下点位置(下死点)は、サーマルヘッド21がプラテンプレート6に対して最大の押圧力を加えることができる位置である。なお、サーマルヘッド21がプラテンプレート6に対して最大の押圧力を加えることができるサーマルヘッド21の最下点位置(下死点位置)は、下側の機械的なリミット位置であり、本実施形態においては、図4Bに示すように、ヘッド側回動部材322が駆動ベルト側直線移動部材321から最も下方に離れた位置である。エンコーダ部4により検知されたサーマルヘッド21の最下点位置(下死点位置)は、制御部10のメモリに記憶される。また、印刷時においては、サーマルヘッド21のZ方向の押圧位置は、最下点位置(下死点位置)よりも僅かに上方側の位置であって、サーマルヘッド21を下降させる場合に、サーマルヘッド21がプラテンプレート6に接触してから最下点位置(下死点位置)までの間の途中における最適に印刷が行われる位置に調整される。
【0067】
その後、タイミングt109において、サーマルプリンタ1は、ヘッド押圧駆動モータ33を駆動することで、リンク機構32を介して、サーマルヘッド21を上昇させる。
タイミングt110において、サーマルヘッド21の最上点位置(上死点位置)において、ヘッド押圧駆動モータ33の駆動を停止した状態で待機する。これにより、サーマルプリンタ1の初期設定動作は終了する。
【0068】
次に、サーマルプリンタ1の初期設定動作終了から運転待機時までの動作について説明する。
図6Bに示すタイミングt201おいて、運転待機信号が入力されることで、サーマルプリンタ1は、ヘッド押圧駆動モータ33を駆動することで、サーマルヘッド21の最上点位置(上死点位置)から、計算された運転待機位置まで、サーマルヘッド21を下降させる。本実施形態においては、例えば、Z方向の運転待機位置は、印刷動作のサイクルタイムを短くするために、サーマルヘッド21の最上点位置(上死点位置)と最下点位置(下死点位置)との間の位置であって、サーマルヘッド21を最上点位置(上死点位置)から下降させて、サーマルヘッド21がプラテンプレート6に接触する手前の位置である。詳細には、運転待機位置は、例えば、サーマルヘッド21のヒータ部が、プラテンプレート6から2~3mm程度離れた位置である。
【0069】
そして、タイミングt202において、所定の運転待機位置おいて、サーマルヘッド21の下降を停止させた状態で、印刷命令の入力待ちとなる。
【0070】
次に、サーマルプリンタ1の印刷動作について説明する。
サーマルプリンタ1は、Z方向の運転待機位置において、印刷命令の入力待ちの状態で待機している。この状態において、まず、サーマルプリンタ1は、図6Cに示すタイミングt301において、印刷信号が入力されることで、印刷動作を開始する。具体的には、制御部10は、タイミングt301において、印刷信号が入力されると同時期に、図3Aに示すヘッド押圧側駆動ベルト31の下方側直線状ベルト部分311がY方向のY2側に移動するように、ヘッド押圧駆動モータ33を正転方向に駆動する。
【0071】
これにより、図3A及び図3Bに示すように、ヘッド押圧駆動モータ33が駆動されることにより、ヘッド押圧側駆動ベルト31における下方側の下方側直線状ベルト部分311は、Y方向のY2側に移動する。そして、サーマルヘッド21は、リンク機構32を介して、回動軸Jを中心に回動することで、図3Aに示すZ方向の運転待機位置から、タイミングt302において、図3Bに示すように、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が所定角度αとなる押圧位置に回動する。よって、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度は所定角度αとなる。サーマルプリンタ1において、図3Bにおけるサーマルヘッド21の押圧位置は、Y方向においては、印刷開始位置でもある。
【0072】
次に、図6Cに示すタイミングt302において、図3Bに示す印刷開始位置からY2側への移動が開始される。
【0073】
ここで、本実施形態においては、ヘッド直線移動機構5は、図4A及び図4Bに示すように、ヘッドユニット2に配置されるヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続される。これにより、ヘッド直線移動機構5は、サーマルヘッド21を有するヘッドユニット2をヘッド押圧側駆動ベルト31が移動するY方向と同一の直線方向に移動させると共に、ヘッド押圧機構3のリンク機構32に接続されるヘッド押圧側駆動ベルト31を、Y方向に移動させる。つまり、本発明の構成においては、ヘッド直線移動機構5を駆動した場合に、ヘッド押圧機構3のヘッド押圧側駆動ベルト31が連動してY方向に移動される。
【0074】
そのため、ヘッド直線移動機構5を駆動した場合にヘッド押圧機構3のヘッド押圧側駆動ベルト31が連動してY方向に移動される本発明の構成においては、仮に制御部10によりエンコーダ部4により検出された角度情報に基づいてヘッド押圧機構3を制御しない場合には、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度は所定角度αで保持されない。
【0075】
これに対して、本発明においては、図6Cに示すタイミングt301~t303の間において、制御部10は、サーマルヘッド21をY方向のY2側に移動させるようにヘッド直線移動機構5のヘッド直線移動駆動モータ51を制御すると共に、エンコーダ部4により検出された角度情報に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を所定角度αで保持するようにヘッド押圧機構3のヘッド押圧駆動モータ33を制御する。この場合、ヘッド直線移動駆動モータ51は、ヘッド直線移動側駆動ベルト53の下側移動部分531がY方向のY2側に移動する方向(正転方向)に駆動するように制御される。また、ヘッド押圧駆動モータ33は、ヘッド押圧側駆動ベルト31がY方向のY2側に移動する方向(正転方向)に駆動するように制御される。
【0076】
これにより、サーマルプリンタ1の印刷動作が実行され、サーマルプリンタ1の印刷動作において、図3B及び図3Cに示すように、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を所定角度αで保持しながら、ヘッド直線移動機構5によりヘッドユニット2をY方向に移動させることができる。よって、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度が良好に保たれ、印刷品質が良好に保たれる。
【0077】
続けて、図6Cに示すタイミングt303において、制御部10は、ヘッド押圧機構3のヘッド押圧駆動モータ33及びヘッド直線移動機構5のヘッド直線移動駆動モータ51を停止させる動作を実行する。そして、タイミングt304において、ヘッド押圧機構3のヘッド押圧駆動モータ33及びヘッド直線移動機構5のヘッド直線移動駆動モータ51が停止する。これにより、タイミングt304において、図3Cに示すように、サーマルヘッド21における印刷動作が終了する。
【0078】
次に、サーマルヘッド21をZ方向において運転待機位置に移動させると共にY方向においてホームポジションに移動させる帰還動作について説明する。
【0079】
図6Cに示すタイミングt304において、制御部10は、サーマルヘッド21がZ方向の押圧位置から運転待機位置に移動するように、ヘッド押圧機構3のヘッド押圧駆動モータ33の逆転方向への駆動を開始するように制御する。これにより、ヘッドユニット2が印刷終了位置から運転待機位置側に移動する動作が開始される。
【0080】
また、タイミングt305において、制御部10は、サーマルヘッド21がY方向においてホームポジションに移動するように、ヘッド直線移動機構5のヘッド直線移動駆動モータ51の逆転方向への駆動を開始するように制御する。これにより、ヘッドユニット2がホームポジション側に移動する動作が開始される。
【0081】
次に、タイミングt306において、制御部10は、ヘッド押圧機構3のヘッド押圧駆動モータ33及びヘッド直線移動駆動モータ51の駆動を停止するように制御する。これにより、サーマルヘッド21は、タイミングt307において停止し、帰還動作が終了する。
以上のタイミングt301~t307における動作により、1回の印刷動作が終了する。
【0082】
本実施形態のサーマルプリンタ1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本実施形態のサーマルプリンタ1は、サーマルヘッド21と、プラテンプレート6と、ヘッド押圧側駆動ベルト31と、ヘッド押圧側駆動ベルト31の移動方向であるY方向をサーマルヘッド21が回動する回動方向に変換するリンク機構32と、を有し、押圧位置と離間位置とにサーマルヘッド21を回動させるようにヘッド押圧側駆動ベルト31を駆動するヘッド押圧機構3と、リンク機構32に接続され、サーマルヘッド21及びヘッド押圧側駆動ベルト31を、ヘッド押圧側駆動ベルト31が移動するY方向と同一のY方向に移動させるヘッド直線移動機構5と、ヘッド押圧側駆動ベルト31の移動量に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度に関する情報である角度情報を検出するエンコーダ部4と、サーマルヘッド21をY方向に移動させるようにヘッド直線移動機構5を制御すると共に、エンコーダ部4により検出された角度情報に基づいて、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を保持するようにヘッド押圧機構3を制御する制御部10と、を備える。
【0083】
そのため、サーマルヘッド21をY方向に移動させる場合に、リンク機構32を介して、プラテンプレート6に対するサーマルヘッド21の角度を保持しながら、サーマルヘッド21をY方向に移動させることができるため、簡易且つコンパクトな構成で、サーマルヘッド21に対するプラテンプレート6の角度を所定の範囲に保持する機構と、サーマルヘッド21をプラテンプレート6に押圧するヘッド押圧機構3と、印刷時にサーマルヘッド21を印刷方向に移動させるヘッド直線移動機構5と、を備えることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、リンク機構32においては、駆動ベルト側直線移動部材321は、上側支持板22のX方向のX1側の一端部(所定位置)側において、ヘッド押圧側駆動ベルト31が接続され、ヘッド側回動部材322は、上側支持板22のX方向のX1側の端部(所定位置)側からX方向にずれたX方向の中央寄りの位置においてサーマルヘッド21を支持する。
そのため、ヘッド押圧側駆動ベルト31は、X方向において、サーマルヘッド21が配置される部分からずれて配置される。これにより、サーマルヘッド21に接続されるハーネス25を配置するスペースが確保され、部材を配置する配置スペースの自由度を向上できる。
【0085】
また、本実施形態においては、リンク機構32においては、駆動ベルト側直線移動部材321は、上側支持板22のX方向のX1側の一端部(所定位置)側において、ヘッド押圧側駆動ベルト31が接続されると共に、上側支持板22のX方向の中央寄りにおいてY方向にスライド可能に上側支持板22に支持され、ヘッド側回動部材322は、上側支持板22のX方向の中央寄りの部分においてサーマルヘッド21を支持する。
そのため、ヘッド押圧側駆動ベルト31が、X方向のX1側の端部側において駆動ベルト側直線移動部材321に接続された状態で、リンク機構32が駆動されても、サーマルヘッド21のX方向の中央において均等に押圧することができる。例えば、本実施形態のようにヘッドユニット2が片支持構造であっても、サーマルヘッド21のX方向の中央寄りにおいて、サーマルヘッド21を均等に押圧することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、ヘッド押圧側駆動ベルト31が移動するY方向及びヘッド直線移動機構5がサーマルヘッド21を移動させるY方向は、サーマルヘッド21に供給される長尺フィルムFの移送方向Pに平行な方向である。これにより、ヘッド押圧側駆動ベルト31及びヘッド直線移動機構5を、長尺フィルムFの移送方向Pに平行なY方向に移動させることができるため、移動方向を同じ方向にすることで、各部材を移動させる各移動手段に移動方向を変換する別の部材を必要とすることなく、各移動手段を配置できる。よって、移動方向を変換する別の部材を設けなくてよいため、移動方向を変換する別の部材に要する製造コストを低減できる。
【0087】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、サーマルヘッド21を直線方向に移動させるヘッド直線移動機構5を備えて構成したが、これに限定されず、ボールねじ駆動機構を備えることにより、ボールねじ駆動機構により、サーマルヘッド21(プリントヘッド)を直線方向に移動させるように構成してもよい。
【0088】
また、前記実施形態においては、印字受け部を板状のプラテンプレート6により構成したが、これに限定されず、印字受け部をロール状のプラテンロールにより構成してもよい。この場合においては、サーマルヘッド21を直線方向に移動させるヘッド直線移動機構5を停止させ、ヘッド押圧機構3(ヘッド押圧部)のみを動作させることで、サーマルヘッド21をプラテンロールの頂部に押圧する。
【符号の説明】
【0089】
1 サーマルプリンタ
3 ヘッド押圧機構(ヘッド押圧部)
4 エンコーダ部(角度検出部)
5 ヘッド直線移動機構(直線移動部)
6 プラテンプレート(印字受け部)
10 制御部
21 サーマルヘッド(プリントヘッド)
22 上側支持プレート(支持部)
31 ヘッド押圧側駆動ベルト(駆動ベルト)
32 リンク機構
321 駆動ベルト側直線移動部材
322 ヘッド側回動部材
323 リンク部材
F 長尺フィルム(被印刷物)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C