(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】歯科用ミルブランクアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/77 20170101AFI20230719BHJP
A61C 13/003 20060101ALI20230719BHJP
A61C 13/007 20060101ALI20230719BHJP
A61C 13/08 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
A61C5/77
A61C13/003
A61C13/007
A61C13/08 Z
(21)【出願番号】P 2018202892
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】平松 尚悟
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076272(JP,A)
【文献】特開平01-308853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/77
A61C 13/003
A61C 13/007
A61C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上2000N以下であり、
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であり、
支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であり、
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、前記算術表面粗さRaを満たす凹凸形状が形成されてなり、
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でなく(両方の凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合を除く)、
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面
における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、又は同心円状であり、支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、
又は同心円
状であり、
支持部(B)における凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合、
(i)ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、又は
(ii) ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、ランダム形状、螺旋状、又は同心円状であり、かつ、当該ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における算術表面粗さRaが1.5以上である、
(但し、Z方向とは、該ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向を指し、該切削加工面はミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面であり、該ミルブランク部(A)の上側面又は下側面を指す。)
歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項2】
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の算術表面粗さRaが1.5以上である、請求項1に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項3】
支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが1.0以上である、請求項1又は2に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項4】
支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが2.0以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項5】
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項6】
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でない、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項7】
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項8】
支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でない、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項9】
支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【請求項10】
ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ミルブランク部と支持部とが接着性組成物で接着された歯科用ミルブランクアセンブリに関する。さらに詳しくは、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製に好適に用いられる歯科用ミルブランクアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インレー、クラウン等の歯科用補綴物の製造方法としては、ミリング装置を備えるCAD/CAMシステムによる製造方法が普及している。一般に、CAD/CAMシステムに用いられる被切削材料は、ミルブランク部が角柱状の場合、切削加工に供されるミルブランク部と、ミルブランク部から突出し、ミルブランク部をミリング装置に固定するための支持部とを含むミルブランクアセンブリである。支持部には、アルミニウムや樹脂等が使用される。
【0003】
ミルブランク部の素材としては、審美性の観点から、セラミック材料が一般に用いられてきた。しかしながら、セラミック製ミルブランクから作製された歯科用補綴物は、硬度が高い脆性材料であるため、対合歯に損傷を与えるだけでなく、切削加工又は咬合の衝撃によって欠けが生じるといった課題があった。
【0004】
このような課題を解決するために、最近では、ポリマーと無機充填材を含む複合材料からなるミルブランク部の検討が行なわれている。ミルブランク部は、対合歯を傷つけない適度な硬度を有し、クラウン形状においても耐衝撃性に優れることから歯科用補綴物に加工されて臨床で使われている。
【0005】
前記ミルブランクアセンブリの製造方法として、特許文献1には、ミルブランク部と支持部との一方が突出部を有し、前記ミルブランク部と支持部との他方が前記突出部を受ける凹部を有するミルブランクアセンブリが記載されており、凹凸による機械的かん合力で支持部が外れにくいという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている製造方法においては、ミルブランクアセンブリを製造する工程において、別途ミルブランク部に凸部を、また支持部に凹部を凸部が嵌合できるように高い精度で加工する工程が必要となり、製造工程が複雑になるという課題があった。
【0008】
本発明は、ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さを向上させ、それに付随して耐衝撃性も向上させ、CAD/CAM加工機を用いて切削加工中において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ミルブランク部(A)、あるいは支持部(B)における他方と接する面に対して、表面粗さと面性状を、特定の組み合わせで付与することによって、耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さに優れる歯科用ミルブランクアセンブリを提供する。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上である、歯科用ミルブランクアセンブリ;
[2]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaが0.5以上である、[1]に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[3]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaが1.5以上である、[1]又は[2]に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[4]支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaが1.0以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[5]支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaが2.0以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[6]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。
但し、Z方向とは、該ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向を指し、該切削加工面はミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面であり、該ミルブランク部(A)の上側面又は下側面を指す;
[7]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方において、Z方向に垂直な直線状の溝が存在する、[1]~[6]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[8]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在する、[1]~[7]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[9]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面において、Z方向に垂直な直線状の溝が存在する、[1]~[8]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[10]支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在する、[1]~[9]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[11]支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面において、Z方向に垂直な直線状の溝が存在する、[1]~[10]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[12]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在する、[1]~[11]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
[13]ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、Z方向に垂直な直線状の溝が存在する、[1]~[12]のいずれかに記載の歯科用ミルブランクアセンブリ;
を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さに優れ、CAD/CAM加工機を用いた切削加工中において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供することができる。ミルブランク部(A)と支持部(B)とが切削加工中に外れてしまうと、所望の歯科用補綴物を得ることができない。また、本発明における、ミルブランク部(A)と支持部(B)の表面粗さと面性状は、それぞれの加工プロセスの中で、簡単に付与することができ、該歯科用ミルブランクアセンブリを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の歯科用ミルブランクアセンブリの実施態様の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明における支持部(B)(台座部)の実施態様の一例を示す概略図である。
【
図3】せん断接着試験の実施態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ(JIS K 6852-1994)が1000N以上であることが重要である。該圧縮せん断接着強さが上記の範囲であることにより、CAD/CAM加工機を用いた切削加工中において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが外れるリスクを低減することができる。該圧縮せん断接着強さは1200N以上であることが好ましく、1400N以上であることがより好ましく、1500N以上であることがさらに好ましい。該圧縮せん断接着強さの上限は特に制限されるものではないが、例えば2000N以下とすることができる。なお、該圧縮せん断接着強さの測定方法の詳細は後述の実施例に記載する。
【0014】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、例えば、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面において凹凸あるいは溝を設けることにより、高い耐衝撃性及び高い圧縮せん断接着強さを発現することができる。該接する面としては、ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面であっても、支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面であっても、あるいはその両方であってもよい。該接する面に凹凸あるいは溝を設けることにより、後述する特定の表面粗さを達成することができる。
【0015】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリにおいて、ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaが0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。また、支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さが0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。ミルブランク部(A)、支持部(B)の両者において、表面粗さRaが大きいほど、高い耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さは高くなることから好ましい。表面粗さRaは、JIS B 0601:2013に規定される算術平均粗さを意味する。なお、表面粗さRaの測定方法の詳細は後述の実施例に記載する。
【0016】
ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面の凹凸あるいは溝の形状は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、ランダム形状、直線状、螺旋状、同心円状等を選択することができ、これらを組み合わせた形状としてもよい。該ランダム形状とは、直線や螺旋、円といった一定の長さを有する特定の図形として表現される凹凸あるいは溝でなく、例えばバレル研磨加工によって無作為に付与されるような凹凸あるいは溝の形状を指す。前記凹凸あるいは溝の形状は、ミルブランク部(A)と支持部(B)のいずれにおいても特表2004-507316号公報のように、予め決められた位置に突出部を形成する必要がない。いいかえると、ミルブランク部(A)と支持部(B)は、特表2004-507316号公報のような、ミルブランク部(A)又は支持部(B)の決められた位置に、ミルブランク部(A)と支持部(B)が嵌合するための突出部を有しない。簡便に凹凸あるいは溝の形状は、バレル研磨加工で簡便に付与されるため、特表2004-507316号公報のように、突出部と該突出部が嵌合できるように高い精度で凹部を加工する工程が不要である。前記凹凸あるいは溝の形状は、ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向をZ方向としたとき、Z方向に平行な直線状でないことが好ましく、直線状である場合にはZ方向に垂直であることが最も好ましい。すなわち、ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在することが好ましく、Z方向に垂直な直線状の溝が存在することがより好ましい。なかでも、ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、Z方向に平行な直線状でない溝が存在することが特に好ましく、Z方向に垂直な直線状の溝が存在することが最も好ましい。Z方向とは、該ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向を指す。前記切削加工面とは、
図1に示されるように、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面3であり、該ミルブランク部(A)の切削加工を受ける面(
図1の状態では上側面又は下側面)を指す。切削加工面は、切削加工を受ける面を意味し、ミリング装置によっては、
図1に示される状態において、ミルブランク部(A)の他の側面が切削加工面となり得る。例えば、
図1に示されるように、支持部(B)が軸部を有する実施形態において、軸部が横向きになるように配置し、支持部(B)の軸部を回転軸としてミルブランク部(A)を回転させた場合、切削加工面は、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面であり、回転後のミルブランク部(A)の上側面又は下側面を指す。
【0017】
前記凹凸あるいは溝の形状を設ける方法は、本発明の効果を奏する限り限定されるものでなく、公知の機械、装置を用いることができる。ランダム形状の凹凸あるいは溝は、前述したように例えばバレル研磨によって、また、直線状の凹凸あるいは溝は、平面研磨によって、螺旋状又は同心円状の溝は、旋盤加工等によって、容易に付与することができる。また、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面における凹凸あるいは溝の数及び深さは本発明の効果を奏する限り限定されず、前述の表面粗さRaを満たすように設定されることが好ましい。凹凸あるいは溝の位置は、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面の、少なくとも両者が接着する部分(例えば、
図1の台座部)に有していればよく、当該接着する部分の全面であってもよく、当該接着する部分の1/2以上であってもよい。また、凹凸あるいは溝の位置は、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面において、全面に形成されていてもよい。
【0018】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリの実施態様の一例を、概略図として
図1に示す。本発明の歯科用ミルブランクアセンブリにおけるミルブランク部(A)の形状は、少なくとも支持部(B)と接する面を有する形状であれば特に限定されないが、通常は角柱状であり、例えば、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状などが挙げられる。これらの中でもそれ自体の製造のし易さや、取り扱い性などの観点から、四角柱状であることが好ましく、直方体状であることがより好ましい。また、本発明における支持部(B)は、少なくとも台座部を有する。そのため、ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面は、ミルブランク部(A)と支持部(B)の台座部とが接する面を意味する。支持部(B)の台座部の実施態様の一例を、概略図として
図2に示す。支持部(B)の形状は、少なくともミルブランク部(A)と接する面を有する形状であれば特に限定されず、該面を含む部分が支持部(B)における台座部となる。例えば、
図1の支持部(B)は、ミルブランク部(A)に接する台座部と軸部を備える。なお、該台座部は、通常、歯科用ミルブランクアセンブリをミリング装置に固定するための切欠きを有する。該切欠きは通常直線状であり、該直線が、Z方向と平行となるように、支持部(B)がミルブランク部(A)に接着されていることが好ましい。該切欠きの形状は、直線状であればよく、例えば、
図2(b)に示されるように、一部に曲線を有していてもよい。
【0019】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリにおける支持部(B)の材料は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、強度や耐久性、費用、成形性の観点から、アルミニウム等の金属、真鍮等の合金、樹脂等が用いられ、アルミニウム又は真鍮が好適に使用される。
【0020】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接着性組成物(C)で接着されたものであることが好ましい。
【0021】
接着性組成物(C)としては、シアノアクリレートを主成分とする、一般のシアノアクリレート系瞬間接着剤を使用することができる。また、接着性組成物(C)の使用量は特に限定されないが、少なすぎると接着される面の大きさが不十分となるために強度不足となり、逆に多すぎると、ミルブランク部(A)と支持部(B)が接する部分からはみ出してしまい、審美的に好ましくないことから、例えば、ミルブランク部(A)が14.5×14.5×18.0mm程度のサイズの直方体である場合には、0.1~100mgが好ましく、1~50mgがより好ましく、2~20mgがさらに好ましい。
【0022】
ミルブランク部(A)は、無機充填材(D)を含んでもよく、さらには重合性単量体(E)の重合硬化物を含んでもよい。重合性単量体(E)の重合硬化物は、例えば、重合性単量体(E)と、重合開始剤(F)とを含む重合性単量体含有組成物を硬化させることによって得られる。
【0023】
無機充填材(D)としては、特に限定されず、公知の無機粒子を使用できる。無機粒子としては、例えば、各種ガラス類(二酸化ケイ素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)又はケイ素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有するもの)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。また、無機充填材は、前記無機粒子に重合性単量体を添加し、重合硬化させた後に粉砕することによって得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を含んでもよい。さらに、無機充填材は、1種単独であってもよく、2種以上の無機粒子を含んでもよい。また、無機充填材(D)と重合性単量体(E)との親和性を改善したり、該無機充填材(D)と重合性単量体(E)との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、無機充填材(D)は、予め表面処理剤で表面処理を施しておいてもよい。表面処理の方法については、何ら制限的ではない。また、かかる表面処理剤としては公知のものを使用でき、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。表面処理剤の濃度は、無機充填材(D)に対して通常0.1~30質量%の範囲、好ましくは1~20質量%の範囲で使用される。
【0024】
無機充填材(D)には、色度、又は透明性を調整するために、顔料を含ませてもよい。本発明に用いられる顔料は、歯科用組成物に用いられている公知の顔料がなんら制限なく用いられる。かかる顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよい。
【0025】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黒、酸化鉄黄、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。
【0026】
有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いることができ、歯科用ミルブランクの目的とする色調に応じて適宜選択される。これらの顔料の中でも、耐熱性或いは耐光性等に優れる無機顔料である酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄黒及び酸化鉄黄等が、ミルブランク部(A)には特に好ましい。
【0027】
重合性単量体(E)としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体を用いることができ、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ-N-ビニル誘導体;スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、カルボン酸のエステル、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
【0028】
(i)一官能性の(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体
例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロリド、10-メルカプトデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
(ii)二官能性の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-〔3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称Bis-GMA)、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンチルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
(iii)三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキシヘプタンなどが挙げられる。
【0031】
なお、重合性単量体(E)としては、前記ラジカル重合性単量体の他に、オキシラン化合物、オキセタン化合物等のカチオン重合性単量体を使用することもできる。
【0032】
重合性単量体(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合性単量体(E)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしもなく、固体状の重合性単量体であっても、その他の液体状の重合性単量体と混合溶解させて使用することができる。
【0033】
重合性単量体(E)の粘度(25℃)は、10Pa・s以下が好ましく、5Pa・s以下がより好ましく、2Pa・s以下がさらに好ましい。一方、2種以上の重合性単量体(E)を混合して用いる場合、又は溶剤に希釈して用いる場合は、個々の重合性単量体(E)の粘度が上記範囲内にある必要はなく、使用される状態(混合・希釈された状態)において、その粘度が上記範囲内にあることが好ましい。
【0034】
重合開始剤(F)としては、一般工業界で使用されている重合開始剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合開始剤を好ましく用いることができる。重合開始剤(F)としては、例えば、加熱重合開始剤(F-1)、光重合開始剤(F-2)及び化学重合開始剤(F-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。
【0035】
(加熱重合開始剤(F-1))
加熱重合開始剤(F-1)としては、例えば、有機過酸化物類、アゾ化合物類などが挙げられる。
【0036】
有機過酸化物類としては、例えば、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0037】
ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
【0038】
ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドペルオキシドなどが挙げられる。
【0039】
ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
【0040】
ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンなどが挙げられる。
【0041】
ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレリン酸n-ブチルエステルなどが挙げられる。
【0042】
ペルオキシエステルとしては、例えば、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシマレエートなどが挙げられる。
【0043】
ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0044】
これらの有機過酸化物類の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
【0045】
アゾ化合物類としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(イソブチラート)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリドなどが挙げられる。
【0046】
(光重合開始剤(F-2))
光重合開始剤(F-2)としては、歯科用硬化性組成物に広く使用されているものを好ましく使用することができ、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類、クマリン類などが挙げられる。
【0047】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0048】
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0049】
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩が好ましい。
【0050】
α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、カンファーキノンが好ましい。
【0051】
クマリン類としては、例えば、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-チエニルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-6-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-8-メトキシクマリン、3-ベンゾイルクマリン、7-メトキシ-3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3,5-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、3-ベンゾイル-6-ブロモクマリン、3,3’-カルボニルビスクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3-カルボキシクマリン、3-カルボキシ-7-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-6-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-8-メトキシクマリン、3-アセチルベンゾ[f]クマリン、3-ベンゾイル-6-ニトロクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7-ジメチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノ)クマリン、7-メトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-(4-ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3-(4-エトキシシンナモイル)-7-メトキシクマリン、3-(4-ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3-(4-ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3-[(3-ジメチルベンゾチアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3-[(1-メチルナフト[1,2-d]チアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3,3’-カルボニルビス(6-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-アセトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジメチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-アセチル-7-(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニル-7-ジエチルアミノクマリン-7’-ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10-[3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-オキソ-2-プロペニル]-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11オン、10-(2-ベンゾチアゾイル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オンなどが挙げられる。
【0052】
これらのクマリン化合物の中でも、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)が好ましい。
【0053】
(化学重合開始剤(F-3))
化学重合開始剤としては、例えば、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。当該レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物類-アミン系、有機過酸化物類-アミン-スルフィン酸(又はその塩)系などを好ましく用いることができる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤とを別々に包装しておき、使用する直前に両者を混合するのが好ましい。
【0054】
レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、例えば、有機過酸化物類などが挙げられる。当該有機過酸化物類としては、公知のものを使用することができ、具体的には、加熱重合開始剤(F-1)において例示した有機過酸化物類を使用することができる。当該有機過酸化物類としては、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
【0055】
レドックス系重合開始剤の還元剤としては、通常、芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンが用いられる。芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリンなどが挙げられる。
【0056】
重合開始剤(F)は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。特に重合開始剤(F)として、加熱重合開始剤(F-1)と光重合開始剤(F-2)とを併用することが好ましく、ジアシルペルオキシドと(ビス)アシルホスフィンオキシド類とを併用することがより好ましい。
【0057】
重合開始剤(F)の使用量は特に限定されないが、硬化性等の観点から、重合性単量体(E)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合開始剤(F)の使用量が上記下限値以上であることにより、重合開始剤自体の重合性能が低い場合であっても、重合が十分に進行して得られるミルブランク部ひいてはそれから得られる歯科用補綴物の強度が向上する。一方、重合開始剤(F)の使用量は、重合性単量体(E)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤(F)の使用量が上記上限値以下であることにより、重合開始剤(F)の析出を抑制することができる。
【0058】
重合開始剤(F)を使用するにあたっては、重合促進剤(G)を併用してもよい。当該重合促進剤(G)としては、一般工業界で使用されている重合促進剤を用いることができ、特に歯科用途に用いられる重合促進剤を好ましく用いることができる。重合促進剤(G)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
光重合開始剤(F-2)に好適な重合促進剤(G)としては、例えば、第3級アミン、アルデヒド類、チオール類、スルフィン酸及びその塩などが挙げられる。光重合開始剤(F-2)を使用する際に重合促進剤(G)を併用することで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる。
【0060】
光重合開始剤(F-2)の重合促進剤(G)として用いられる第3級アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-4-エチルアニリン、N,N-ジメチル-4-イソプロピルアニリン、N,N-ジメチル-4-t-ブチルアニリン、N,N-ジメチル-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,4-ジメチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-エチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-イソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-4-t-ブチルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジイソプロピルアニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3,5-ジ-t-ブチルアニリン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸(2-メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N-メチルジエタノールアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0061】
光重合開始剤(F-2)の重合促進剤(G)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。
【0062】
光重合開始剤(F-2)の重合促進剤(G)として用いられるチオール基化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸などが挙げられる。
【0063】
光重合開始剤(F-2)の重合促進剤(G)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、p-トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0064】
また化学重合開始剤(F-3)に好適な重合促進剤(G)としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物などが挙げられる。
【0065】
化学重合開始剤(F-3)の重合促進剤(G)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンに分けられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N-メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-ラウリルジエタノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N-エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましい。
【0066】
前記芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等の第3級芳香族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性を付与できる観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0067】
化学重合開始剤(F-3)の重合促進剤(G)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、上記した光重合開始剤(F-2)の重合促進剤(G)として例示したものなどが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
【0068】
化学重合開始剤(F-3)の重合促進剤(G)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅などが挙げられる。
【0069】
化学重合開始剤(F-3)の重合促進剤(G)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ-n-ブチル錫ジマレエート、ジ-n-オクチル錫ジマレエート、ジ-n-オクチル錫ジラウレート、ジ-n-ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ-n-オクチル錫ジラウレート及びジ-n-ブチル錫ジラウレートである。
【0070】
ミルブランク部(A)の製造方法は、本発明の効果を奏する限り特に限定はなく、無機充填材(D)を圧縮した成形体に対して、重合性単量体(E)と、重合開始剤(F)とを含む重合性単量体含有組成物を接触させた後に、硬化させてもよいし、無機充填材(D)と、重合性単量体(E)と重合開始剤(F)とを含む重合性単量体含有組成物を混練してペースト状にした後に硬化させてもよい。
【0071】
重合硬化の方法に特に制限はなく、重合開始剤(F)の種類などに応じて、加熱重合、光重合、化学重合などの重合方法を適宜採用することができる。加熱重合する場合、加熱温度に特に制限はなく、例えば40~150℃の範囲内とすることができる。また、加熱時間にも特に制限はなく、例えば1~70時間の範囲内とすることができる。一方、光重合する場合、用いられる光に特に制限はなく、可視光であっても、紫外線であっても、その他の光であってもよい。光重合の時間にも特に制限はなく、例えば、1~20分間の範囲内とすることができる。
【実施例】
【0072】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想の範囲内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0073】
なお、以下の実施例及び比較例において採用された、表面粗さ試験、シャルピー衝撃試験及びせん断接着試験の方法を以下に示す。
【0074】
〔表面粗さ試験〕
得られたミルブランク部(A)、支持部(B)それぞれの表面を、カラー3Dレーザー顕微鏡VK-9710(株式会社キーエンス製)にて観察し、得られた画像をVK Analyzer(株式会社キーエンス製)にて解析して面粗さを算出し、表面粗さRaとした。
【0075】
〔シャルピー衝撃試験〕
得られた歯科用ミルブランクアセンブリの耐衝撃性評価をJIS K 7111-1:2012に準じて、シャルピー衝撃試験機(株式会社ナビック製;アーム長105mm、アーム質量300g)を用いて、以下の方法により行った。試験機の成形品用台にミルブランクアセンブリを、ミルブランクアセンブリのZ方向と、アームの衝突方向が平行となるように固定し、SUS製の振り子(先端部100g錘)を振り子の調整角度を30°に設定し、そのまま振り子をミルブランクアセンブリの台座部へ衝突させた。振り子の回転軸中心からミルブランクアセンブリの中心距離までは100mmであった。試験数は各5個とし、全試験数において、衝撃によって支持部が4個以上外れなかったものを合格とし、5個すべて外れなかったものを「○」、外れなかった試験数が4個であるものを「△」、外れなかった試験数が3個以下であるものを「×」とした。
【0076】
〔せん断接着試験〕
得られた歯科用ミルブランクアセンブリのせん断接着試験を精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によって行った。具体的には、
図3に示すように、歯科用ミルブランクアセンブリにおけるミルブランク部(A)をSUS製の固定具5にネジ6を用いて固定し、支持部(B)の台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から約1mm離れた位置に治具7が当たるようにして試験を行い、圧縮せん断接着強さを測定した。
【0077】
〔重合性単量体含有組成物の製造例〕
[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、加熱重合開始剤(F-1)としてベンゾイルパーオキサイド1重量部を溶解させることによって、重合性単量体含有組成物(M-1)を調製した。
【0078】
〔無機粒子(D)の製造例〕
市販の無機超微粒子(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)OX 50、平均粒子径:40nm、BET比表面積:50m2/g)100gを水500mLに分散し、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7gを加えて室温で2時間撹拌した。スプレードライヤー(ビュッヒ社製B290型)を用いて噴霧乾燥後、90℃で3時間乾燥することによって、表面処理された粉末状の無機粒子(D-1)を得た。
【0079】
〔重合硬化物の製造例〕
前記無機粒子(D-1)を、4.5g、14.7mm×18.2mmの長方形のプレス用金型の下パンチ棒の上に、充填し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧:60MPa、時間:1分間)を行った。その後、上パンチ及び下パンチを金型から外し、成形体を取り出した。その後、前記成形体をポリエチレン製の袋体の内部に設置し、前記重合性単量体含有組成物(M-1)を袋体の内部に導入し、袋体内部を減圧することによって、前記成形体に重合性単量体含有組成物(M-1)を含浸させた。これを減圧下、室温で1日間静置した後、熱風乾燥機を用いて55℃で18時間加熱した。その後、これに対して110℃で3時間加熱処理を行い、重合硬化物(P-1)を得た。
【0080】
〔ミルブランク部(A)の製造例〕
ミルブランク部(A-1)
前記重合硬化物(P-1)を、4.0mmの砥石を用いて、10分間、遠心バレル研磨機HS-1-4V(株式会社チップトン製)を用いてバレル研磨を行い、表面にランダムな凹凸形状を有する直方体状のミルブランク部(A-1)を得た。
図1に示されるように、支持部(B)をミルブランク部(A-1)の面に接する場合、ミルブランク部(A-1)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaは0.20だった。
【0081】
ミルブランク部(A-2)
前記重合硬化物(P-1)を、4.0mmの砥石を用いて、30分間、遠心バレル研磨機HS-1-4V(株式会社チップトン製)を用いてバレル研磨を行い、表面にランダムな凹凸形状を有する直方体状のミルブランク部(A-2)を得た。
図1に示されるように、支持部(B)をミルブランク部(A-2)の面に接する場合、ミルブランク部(A-2)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaは1.01だった。
【0082】
ミルブランク部(A-3)
前記重合硬化物(P-1)を、7.0mmの砥石を用いて、60分間、遠心バレル研磨機HS-1-4V(株式会社チップトン製)を用いてバレル研磨を行い、表面にランダムな凹凸形状を有する直方体状のミルブランク部(A-3)を得た。
図1に示されるように、支持部(B)をミルブランク部(A-3)の面に接する場合、ミルブランク部(A-3)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaは2.14だった。
【0083】
ミルブランク部(A-4)
前記重合硬化物(P-1)を、耐水研磨紙(#600)を用いて、
図1の切削加工面3に対して垂直な方向であるZ方向に垂直な方向に直線状の溝が付与されるように研磨して、直方体状のミルブランク部(A-4)を得た。
図1に示されるように、支持部(B)をミルブランク部(A-4)の面に接する場合、ミルブランク部(A-4)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaは1.03だった。
【0084】
ミルブランク部(A-5)
前記重合硬化物(P-1)を、耐水研磨紙(#600)を用いて、
図1の切削加工面3に対して垂直な方向であるZ方向に平行な方向に直線状の溝が付与されるように研磨して、直方体状のミルブランク部(A-5)を得た。1に示されるように、支持部(B)をミルブランク部(A-5)の面に接する場合、ミルブランク部(A-5)における支持部(B)と接する面の表面粗さRaは1.02だった。
【0085】
〔支持部(B)の製造例〕
支持部(B-1)~(B-3)
図2(a)に示すような形状であって、かつ直線状の切欠きを有する台座部を備える支持部(B)(アルミニウム製)を用いて、該支持部(B)におけるミルブランク部(A)との接する面を、CNC精密自動旋盤(株式会社ツガミ製、BO205-III)を用いて自動旋盤用バイトの送り速度を変えて旋盤加工し、台座部のミルブランク部(A)と接する面に螺旋状の溝を有し、表面粗さの異なる3種類の支持部(B-1)~(B-3)を得た。3種類の支持部(B-1)~(B-3)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaは、それぞれ0.81、1.62、2.38だった。
【0086】
支持部(B-4)
図2(a)に示すような形状であって、かつ直線状の切欠きを有する台座部を備える支持部(B)(アルミニウム製)を用いて、該支持部(B)におけるミルブランク部(A)との接する面を、耐水研磨紙(#600)を用いて、該直線状の切欠きに垂直な方向に直線状の溝が付与されるように台座部のミルブランク部(A)と接する面を研磨して、支持部(B-4)を得た。支持部(B-4)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaは0.83だった。
【0087】
支持部(B-5)
図2(a)に示すような形状であって、かつ直線状の切欠きを有する台座部を備える支持部(B)(アルミニウム製)を用いて、該支持部(B)におけるミルブランク部(A)との接する面を、耐水研磨紙(#600)を用いて、該直線状の切欠きに平行な方向に直線状の溝が付与されるように台座部のミルブランク部(A)と接する面を研磨して、支持部(B-5)を得た。支持部(B-5)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaは0.82だった。
【0088】
支持部(B-6)
図2(a)に示すような形状であって、かつ直線状の切欠きを有する台座部を備える支持部(B)(アルミニウム製)を用いて、該支持部(B)におけるミルブランク部(A)との接する面を、耐水研磨紙(#80)を用いて、該直線状の切欠きに平行な方向に直線状の溝が付与されるように台座部のミルブランク部(A)と接する面を研磨して、支持部(B-6)を得た。支持部(B-6)におけるミルブランク部(A)と接する面の表面粗さRaは2.35だった。
【0089】
各ミルブランク部(A)、支持部(B)の形状及び表面粗さを表1に示す。
【0090】
【0091】
[実施例1~4]
支持部(B-1)~(B-4)のそれぞれのミルブランク部(A)と接する部分に、シアノアクリレート系瞬間接着剤(EXTRA4000、東亞合成株式会社製)を10mg塗布し、各支持部(B)における直線状の切欠きがZ方向と平行となるような向きでミルブランク部(A-2)と接着させて1日間放置して、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0092】
[実施例5,6]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-1)、支持部(B-5)のそれぞれに、ミルブランク部(A-3)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0093】
[実施例7~9]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-1)、支持部(B-4)、支持部(B-5)のそれぞれに、ミルブランク部(A-4)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0094】
[実施例10,11]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-1)、支持部(B-4)のそれぞれに、ミルブランク部(A-5)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0095】
[比較例1]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-1)にミルブランク部(A-1)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0096】
[比較例2]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-5)にミルブランク部(A-2)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0097】
[比較例3]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-5)にミルブランク部(A-5)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0098】
[比較例4]
ミルブランク部(A)及び支持部(B)の種類を変更した以外は実施例1~4と同様の方法にて、支持部(B-6)にミルブランク部(A-5)を接着させ、歯科用ミルブランクアセンブリを製造した。
【0099】
各歯科用ミルブランクアセンブリのシャルピー衝撃試験とせん断接着試験の結果を表2に示す。
【0100】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さに優れることから、CAD/CAM加工機を用いた切削加工時にミルブランク部(A)と支持部(B)(特に台座部)が外れるリスクが小さく、歯科用補綴物を得る上で有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 ミルブランク部(A)
2 支持部(B)(台座部)
3 切削加工面
4 切欠き
5 固定具
6 ネジ
7 治具