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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】架構式構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/32 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
E04C3/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018231130
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020056285
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018185896
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本建築学会大会学術講演梗概集(東北)2018年9月第831頁~第840頁、一般社団法人日本建築学会 発行日 平成30年7月20日 2018年度日本建築学会大会(東北) 東北大学 川内北キャンパス(宮城県仙台市青葉区川内41) 開催日 平成30年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永雄 健一
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】桐山 尚大
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/069752(WO,A1)
【文献】特開2002-174049(JP,A)
【文献】特開2003-239380(JP,A)
【文献】特開2016-069839(JP,A)
【文献】特開2017-053168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04H 9/02
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼である第1柱と、
H形鋼であり前記第1柱の隣りに配置される第2柱と、
前記第1柱と前記第2柱とを連結し、且つ前記第1柱の長手方向と同じ方向に延びる第3柱と、
を備え、
前記第1柱のフランジ及び前記第2柱のフランジの厚さ方向は、前記第1柱及び前記第2柱が並ぶ方向と平行であり、
前記第1柱及び前記第2柱が並ぶ方向と平行な軸に関する前記第3柱の断面二次モーメントは、前記軸に関する前記第1柱及び前記第2柱の断面二次モーメントよりも大きく、
前記第3柱は、H形鋼であり、
前記第3柱のフランジの厚さ方向は、前記第1柱のフランジの厚さ方向に対して直交し、
前記第3柱は、前記第1柱と前記第2柱との間に配置され、H型鋼のフランジの端部が前記第1柱のフランジ及び前記第2柱のフランジに直接連結される
架構式構造。
【請求項2】
前記第1柱のウェブの厚さ方向と平行な奥行方向における前記第3柱の長さは、前記奥行方向における前記第1柱のフランジの長さ、及び前記奥行方向における前記第2柱のフランジの長さ以下である
請求項1に記載の架構式構造。
【請求項3】
前記第1柱の長手方向において、前記第3柱の長さは、前記第1柱及び前記第2柱の長さ以下である
請求項1または請求項2に記載の架構式構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架構式構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において、剛性を高めるために、大きい柱が用いられることがある。しかしこの
場合、柱のうち壁面から張り出す部分が大きくなるので、室内空間の利用に制約が生じる
可能性がある。例えば、柱の壁面からの張り出しを抑制するための技術として特許文献1
が挙げられる。特許文献1には、連結された一対のH形鋼を備える連結柱が記載されてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-69839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、H形鋼の弱軸周りの細長比が大きくなりやすいため、連結された2つの柱の軸
耐力(座屈耐力)を向上させることが難しい。また、H形鋼の弱軸周りの断面二次モーメ
ントが小さくなりやすいため、連結された2つの柱の曲げ耐力と曲げ剛性を向上させるこ
とが難しい。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、連結されたH形鋼である2つの
柱を含む架構全体の軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性を向上させることができる架構式構
造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の架構式構造は、H形鋼である第1柱と、
H形鋼であり前記第1柱の隣りに配置される第2柱と、前記第1柱と前記第2柱とを連結
し、且つ前記第1柱の長手方向と同じ方向に延びる第3柱と、を備え、前記第1柱のフラ
ンジ及び前記第2柱のフランジの厚さ方向は、前記第1柱及び前記第2柱が並ぶ方向と平
行であり、前記第1柱及び前記第2柱が並ぶ方向と平行な軸に関する前記第3柱の断面二
次モーメントは、前記軸に関する前記第1柱及び前記第2柱の断面二次モーメントよりも
大きい。
【0007】
上記の架構式構造の望ましい態様として、前記第3柱は、コンクリートである柱本体を
備える。
【0008】
上記の架構式構造の望ましい態様として、前記柱本体は、前記第1柱の一対のフランジ
及びウェブ、並びに前記第2柱の一対のフランジ及びウェブを被覆する。
【0009】
上記の架構式構造の望ましい態様として、前記第3柱は、H形鋼であり、前記第3柱の
フランジの厚さ方向は、前記第1柱のフランジの厚さ方向に対して直交する。
【0010】
上記の架構式構造の望ましい態様として、前記第1柱のウェブの厚さ方向と平行な奥行
方向における前記第3柱の長さは、前記奥行方向における前記第1柱のフランジの長さ、
及び前記奥行方向における前記第2柱のフランジの長さ以下である。
【0011】
上記の架構式構造の望ましい態様として、前記第1柱の長手方向において、前記第3柱
の長さは、前記第1柱及び前記第2柱の長さ以下である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の架構式構造によれば、連結されたH形鋼である2つの柱を含む架構全体の軸耐
力、曲げ耐力、及び曲げ剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の架構式構造の正面図である。
図2図2は、図1におけるA-A断面図である。
図3図3は、図2におけるB-B断面図である。
図4図4は、第1変形例の架構式構造の正面図である。
図5図5は、図4におけるC-C断面図である。
図6図6は、第2変形例の架構式構造の正面図である。
図7図7は、第3変形例の架構式構造の正面図である。
図8図8は、図7におけるD-D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための
形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施
形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわ
ゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み
合わせることが可能である。
【0015】
(実施形態)
図1は、実施形態の架構式構造の正面図である。図2は、図1におけるA-A断面図で
ある。図3は、図2におけるB-B断面図である。本実施形態の架構式構造100は、建
築物の構造として用いられる。架構式構造100は、柱及び梁によって床等を支持する構
造である。
【0016】
図1及び図2に示すように、架構式構造100は、第1柱10と、第2柱20と、梁4
0と、リブ15と、リブ25と、スタッド19と、スタッド29と、第3柱30と、を備
える。第1柱10及び第2柱20の長手方向は、鉛直方向と平行である。第1柱10及び
第2柱20は、水平方向に並んで配置される。梁40は、第1柱10及び第2柱20が並
ぶ方向に沿って延びる。架構式構造100は、連結された第1柱10及び第2柱20を備
える複数の柱と、柱同士を連結する複数の梁40と、を備える構造である。
【0017】
以下の説明においては、XYZ直交座標軸が用いられる。X軸は、第1柱10及び第2
柱20が並ぶ方向と平行な軸である。Z軸は、第1柱10及び第2柱20の長手方向と平
行な軸である。Y軸は、X軸及びZ軸に対して直交する軸である。X軸と平行な方向は、
X方向と記載される。Y軸と平行な方向は、Y方向と記載される。Z軸と平行な方向は、
Z方向と記載される。X方向のうち、第1柱10から第2柱20に向かう方向を+X方向
とする。+X方向を向いた場合の右方向を+Y方向とする。Z方向のうち上方向を+Z方
向とする。
【0018】
図1に示すように、第1柱10は、Z方向に沿って延びる。第1柱10の長手方向は、
Z方向と平行である。図2に示すように、第1柱10は、H形鋼である。第1柱10の水
平断面は、H字状である。第1柱10は、フランジ11と、フランジ12と、ウェブ13
と、を備える。フランジ11の厚さ方向(板厚方向)は、X方向と平行である。厚さ方向
は、板状部材において最も面積の大きい面に対する直交方向を意味し、以下の説明におい
ても同様の意味で用いられる。フランジ12の厚さ方向は、X方向と平行である。フラン
ジ12は、フランジ11と平行である。ウェブ13の厚さ方向は、Y方向と平行である。
ウェブ13は、フランジ11及びフランジ12に対して直交する。
【0019】
図1に示すように、第2柱20は、Z方向に沿って延びる。第2柱20の長手方向は、
Z方向と平行である。第2柱20は、H形鋼である。第2柱20の水平断面は、H字状で
ある。第2柱20は、X方向において第1柱10の隣りに配置される。第2柱20は、フ
ランジ21と、フランジ22と、ウェブ23と、を備える。フランジ21の厚さ方向は、
X方向と平行である。フランジ21は、第1柱10のフランジ12に面する。フランジ2
2の厚さ方向は、X方向と平行である。フランジ22は、フランジ21と平行である。ウ
ェブ23の厚さ方向は、Y方向と平行である。ウェブ23は、フランジ21及びフランジ
22に対して直交する。
【0020】
第1柱10及び第2柱20において、Y軸周りの曲げモーメントに対する剛性は、X軸
周りの曲げモーメントに対する剛性よりも高い。第1柱10及び第2柱20において、Y
軸周りの曲げモーメントは、強軸周りの曲げモーメントと呼ばれる。第1柱10及び第2
柱20において、X軸周りの曲げモーメントは、弱軸周りの曲げモーメントと呼ばれる。
【0021】
図1に示すように、梁40は、X方向に沿って延びる。梁40の長手方向は、X方向と
平行である。梁40は、H形鋼である。梁40の鉛直断面は、H字状である。梁40は、
フランジ41と、フランジ42と、ウェブ43と、を備える。フランジ41の厚さ方向は
、Z方向と平行である。フランジ42の厚さ方向は、Z方向と平行である。フランジ42
は、フランジ41と平行である。ウェブ43の厚さ方向は、Y方向と平行である。ウェブ
43は、フランジ41及びフランジ42に対して直交する。梁40は、第1柱10及び第
2柱20と接合される。梁40は、例えば溶接によって第1柱10及び第2柱20と接合
される。梁40の一端が第1柱10と接合される。梁40の他端が第2柱20と接合され
る。
【0022】
架構式構造100が適用される建築物において、壁は、第1柱10、第2柱20及び梁
40によって形成される平面に沿うように設けられる。すなわち、建築物の壁は、XZ平
面と平行である。建築物の壁の厚さ方向は、Y方向と平行である。
【0023】
図1に示すように、リブ15は、平板状の部材である。リブ15の厚さ方向は、Z方向
と平行である。リブ15は、フランジ11、フランジ12及びウェブ13のそれぞれに対
して直交する。リブ15は、例えば溶接によって、フランジ11、フランジ12及びウェ
ブ13と接合される。
【0024】
図1に示すように、複数のリブ15のうちの1つのZ方向の位置は、梁40のフランジ
41のZ方向の位置と同じである。複数のリブ15のうちの1つのZ方向の位置は、梁4
0のフランジ42のZ方向の位置と同じである。すなわち、複数のリブ15のうちの1つ
は、YZ平面視で、フランジ41又はフランジ42と重なる。
【0025】
図1に示すように、リブ25は、平板状の部材である。リブ25の厚さ方向は、Z方向
と平行である。リブ25は、フランジ21、フランジ22及びウェブ23のそれぞれに対
して直交する。リブ25は、例えば溶接によって、フランジ21、フランジ22及びウェ
ブ23と接合される。
【0026】
図1に示すように、複数のリブ25のうちの1つのZ方向の位置は、梁40のフランジ
41のZ方向の位置と同じである。複数のリブ25のうちの1つのZ方向の位置は、梁4
0のフランジ42のZ方向の位置と同じである。すなわち、複数のリブ25のうちの1つ
は、YZ平面視で、フランジ41又はフランジ42と重なる。
【0027】
図2に示すように、スタッド19は、第1柱10に設けられる。スタッド19は、フラ
ンジ12から+X方向に突出する。スタッド19は、例えば溶接によってフランジ12と
接合される。図2及び図3に示すように、複数のスタッド19は、Y方向及びZ方向に配
置される。
【0028】
図2に示すように、スタッド29は、第2柱20に設けられる。スタッド29は、フラ
ンジ21から-X方向に突出する。スタッド29は、例えば溶接によってフランジ21と
接合される。図2及び図3に示すように、複数のスタッド29は、Y方向及びZ方向に配
置される。
【0029】
図1に示すように、第3柱30は、Z方向に沿って延びる。第3柱30の長手方向は、
Z方向と平行である。図2に示すように、Y方向における第3柱30の長さL3は、Y方
向におけるフランジ11(フランジ12)の長さL1、及びY方向におけるフランジ21
(フランジ22)の長さL2以下であることが望ましい。本実施形態においては、長さL
3は、長さL1及び長さL2と等しい。X軸に関する第3柱30の断面二次モーメントは
、X軸に関する第1柱10及び第2柱20の断面二次モーメントよりも大きい。
【0030】
第3柱30は、鉄筋コンクリート(RC(Reinforced Concrete)構造の柱である。第
3柱30は、柱本体31と、主筋32と、帯筋33と、を備える。柱本体31は、コンク
リートである。柱本体31を長手方向に対して直交する平面で切った断面(柱本体31の
水平断面)の形状は、矩形である。主筋32及び帯筋33は、柱本体31に埋め込まれる
。主筋32は、例えば異形棒鋼である。主筋32は、Z方向に沿って延びる。主筋32の
長手方向は、Z方向と平行である。帯筋33は、複数の主筋32を囲むように配置される
。帯筋33は、例えば異形棒鋼である。帯筋33は、フープとも呼ばれる。
【0031】
図2及び図3に示すように、スタッド19及びスタッド29は、柱本体31に埋め込ま
れる。スタッド19によって、第3柱30と第1柱10との間の接合強度が向上する。ス
タッド29によって、第3柱30と第2柱20との間の接合強度が向上する。
【0032】
上述したように、架構式構造100は、連結された第1柱10及び第2柱20を備える
。架構式構造100は、大きな1本の柱を用いる場合と比較して、柱(第1柱10及び第
2柱20)の壁面からの張り出しを抑制できる。このため、架構式構造100によれば、
室内空間をより自由に利用することが可能である。
【0033】
架構式構造100においては、リブ15及びリブ25が、YZ平面視で梁40と重なる
。これにより、梁40から第1柱10及び第2柱20にX方向の荷重が作用した場合のフ
ランジ11、フランジ12、フランジ21及びフランジ22の変形が抑制される。このた
め、第1柱10及び第2柱20のY軸周り(強軸周り)の曲げ剛性が向上する。また、Y
Z平面視で第1柱10のウェブ13、第2柱20のウェブ23、及び梁40のウェブ43
が重なる。これにより、第1柱10及び第2柱20のY軸周り(強軸周り)の曲げ剛性が
より向上する。さらに、架構式構造100においては、第1柱10及び第2柱20は、Z
方向で分断されずに連続する。
【0034】
架構式構造100は、上述した構造を有することによって、地震によって建築物に水平
力が作用した場合の第1柱10及び第2柱20の変形を抑制できる。架構式構造100は
、層間変位(下階に対する上階の相対的な水平方向の変位)を低減できる。架構式構造1
00は、耐震性を向上させることができる。
【0035】
第3柱30は、必ずしもRC構造の柱でなくてもよい。例えば、第3柱30は、鋼材で
あってもよい。第3柱30は、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC(Steel Reinforced Con
crete)構造の柱であってもよい。また、Z方向において、第3柱30は、第1柱10及
び第2柱20よりも短くてもよい。第3柱30の上端部が、Z方向に並ぶ2つの梁40の
間に配置されてもよい。
【0036】
以上で説明したように、本実施形態の架構式構造100は、第1柱10と、第2柱20
と、第3柱30と、梁40と、を備える。第1柱10は、H形鋼である。第2柱20は、
H形鋼であり第1柱10の隣りに配置される。第3柱30は、第1柱10と第2柱20と
を連結し、且つ第1柱10の長手方向と同じ方向に沿って延びる。第1柱10のフランジ
11(フランジ12)及び第2柱20のフランジ21(フランジ22)の厚さ方向は、第
1柱10及び第2柱20が並ぶ方向と平行である。第1柱10及び第2柱20が並ぶ方向
と平行な軸(X軸)に関する第3柱30の断面二次モーメントは、X軸に関する第1柱1
0及び第2柱20の断面二次モーメントよりも大きい。
【0037】
これにより、第3柱30によって、第1柱10及び第2柱20が並ぶ方向と平行な軸周
り(X軸周り)の第1柱10及び第2柱20の変形が抑制される。このため、架構全体の
軸耐力(座屈耐力)が向上する。また、第3柱30が曲げモーメントを負担する。このた
め、架構全体の曲げ耐力、及び曲げ剛性が向上する。架構式構造100は、連結されたH
形鋼である2つの柱を含む架構全体の軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性を向上させること
ができる。
【0038】
架構式構造100においては、第3柱30は、コンクリートである柱本体31を備える
【0039】
これにより、架構式構造100は、連結されたH形鋼である2つの柱を含む架構全体の
軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性をより向上させることができる。
【0040】
架構式構造100においては、第1柱10のウェブ13の厚さ方向と平行な奥行方向(
Y方向)における第3柱30の長さL3は、奥行方向における第1柱10のフランジ11
(フランジ12)の長さL1、及び奥行方向における第2柱20のフランジ21(フラン
ジ22)の長さL2以下である方が望ましい。
【0041】
これにより、架構式構造100が適用される建築物において、第3柱30の壁面からの
張り出しを抑制できる。架構式構造100は、室内空間をより自由に利用することを可能
にする。
【0042】
なお、図2に示す長さL3は、必ずしも長さL1及び長さL2と等しくなくてもよい。
長さL3は、長さL1及び長さL2よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。少なくと
も、X軸に関する第3柱30の断面二次モーメントが、X軸に関する第1柱10及び第2
柱20の断面二次モーメントよりも大きければよい。
【0043】
(第1変形例)
図4は、第1変形例の架構式構造の正面図である。図5は、図4におけるC-C断面図
である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して
重複する説明は省略する。
【0044】
図4及び図5に示すように、第1変形例の架構式構造100Aは、連結材50と、第3
柱30Aを備える。図4に示すように、連結材50は、H形鋼である。連結材50の鉛直
断面は、H字状である。連結材50は、フランジ51と、フランジ52と、ウェブ53と
、を備える。フランジ51の厚さ方向は、Z方向と平行である。フランジ52の厚さ方向
は、Z方向と平行である。フランジ52は、フランジ51と平行である。フランジ52は
、XY平面視でフランジ51と重なる。ウェブ53の厚さ方向は、Y方向と平行である。
ウェブ53は、フランジ51及びフランジ52に対して直交する。ウェブ53のY方向の
位置は、ウェブ13、ウェブ23及びウェブ43のY方向の位置と同じである。ウェブ5
3は、YZ平面視でウェブ13、ウェブ23及びウェブ43と重なる。
【0045】
図4に示すように、連結材50は、第1柱10と第2柱20との間に配置される。連結
材50のZ方向の位置は、梁40のZ方向の位置と同じである。連結材50は、YZ平面
視で梁40と重なる。連結材50は、例えば溶接によって第1柱10及び第2柱20と接
合される。
【0046】
図4に示すように、第3柱30Aは、Z方向に沿って延びる。第3柱30Aの長手方向
は、Z方向と平行である。X軸に関する第3柱30Aの断面二次モーメントは、X軸に関
する第1柱10及び第2柱20の断面二次モーメントよりも大きい。
【0047】
第3柱30Aは、鉄筋コンクリート(RC(Reinforced Concrete)構造の柱である。
第3柱30Aは、柱本体31Aと、主筋32Aと、帯筋33Aと、を備える。柱本体31
Aは、コンクリートである。柱本体31Aを長手方向に対して直交する平面で切った断面
(柱本体31Aの水平断面)の形状は、矩形である。柱本体31Aは、第1柱10のフラ
ンジ11、フランジ12及びウェブ13、並びに第2柱20のフランジ21、フランジ2
2及びウェブ23を被覆する。第1変形例においては、柱本体31Aは、第1柱10の全
体及び第2柱20の全体を被覆する。
【0048】
主筋32A及び帯筋33Aは、柱本体31Aに埋め込まれる。主筋32Aは、例えば異
形棒鋼である。主筋32Aは、Z方向に沿って延びる。複数の主筋32Aは、第1柱10
及び第2柱20を囲むように配置される。主筋32Aの長手方向は、Z方向と平行である
。帯筋33Aは、例えば異形棒鋼である。帯筋33Aは、複数の主筋32Aを囲むように
配置される。
【0049】
以上で説明したように、第1変形例の架構式構造100Aにおいて、柱本体31Aは、
第1柱10の一対のフランジ(フランジ11及びフランジ12)及びウェブ13、並びに
第2柱20の一対のフランジ(フランジ21及びフランジ22)及びウェブ23を被覆す
る。
【0050】
これにより、第1柱10及び第2柱20が、上述した実施形態と比較してより強固に拘
束される。第3柱30Aによって、第1柱10及び第2柱20が並ぶ方向と平行な軸周り
(X軸周り)の第1柱10及び第2柱20の変形がより抑制される。このため、架構全体
の軸耐力が向上する。また、第3柱30Aが曲げモーメントを負担する。このため、架構
全体の曲げ耐力、及び曲げ剛性が向上する。架構式構造100Aは、連結されたH形鋼で
ある2つの柱を含む架構全体の軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性を向上させることができ
る。
【0051】
(第2変形例)
図6は、第2変形例の架構式構造の正面図である。なお、上述した実施形態で説明した
ものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0052】
図6に示すように、第2変形例の架構式構造100Bは、第3柱30Bを備える。第3
柱30Bは、Z方向に沿って延びる。第3柱30Bの長手方向は、Z方向と平行である。
Z方向において、第3柱30Bの長さは、第1柱10及び第2柱20の長さ以下である。
例えば架構式構造100Bにおいては、第3柱30Bの長さは、第1柱10及び第2柱2
0の長さよりも小さい。すなわち、Z方向において、第3柱30Bは、第1柱10及び第
2柱20よりも短い。第3柱30Bは、第1柱10の一部及び第2柱20の一部を被覆す
る。第3柱30Bの上端部は、Z方向に並ぶ2つの梁40の間に配置される。第3柱30
Bの内部構造は、第1変形例の第3柱30Aと同じである。
【0053】
以上で説明したように、第2変形例の架構式構造100Bでは、第1柱10の長手方向
(Z方向)において、第3柱30Bの長さは、第1柱10及び第2柱20の長さ以下であ
る。
【0054】
これにより、架構式構造100Bは、第1変形例の架構式構造100Aと比較して、使
用するコンクリートの量を低減できる。また、第1柱10及び第2柱20のうち第3柱3
0Bの上端部から突出する部分の長さは、第1柱10及び第2柱20の全長よりも短くな
る。このため、第1柱10及び第2柱20のうち第3柱30Bの上端部から突出する部分
の軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性は、第3柱30Bがない場合と比較して大きくなる。
【0055】
(第3変形例)
図7は、第3変形例の架構式構造の正面図である。図8は、図7におけるD-D断面図
である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して
重複する説明は省略する。
【0056】
図7に示すように、第3変形例の架構式構造100Cは、第3柱30Cを備える。第3
柱30は、Z方向に沿って延びる。第3柱30Cの長手方向は、Z方向と平行である。X
軸に関する第3柱30Cの断面二次モーメントは、X軸に関する第1柱10及び第2柱2
0の断面二次モーメントよりも大きい。Y方向における第3柱30Cの長さL3Cは、長
さL1及び長さL2以下であることが望ましい。第3変形例においては、長さL3Cは、
長さL1及び長さL2と等しい。
【0057】
第3柱30Cは、H形鋼である。第3柱30Cの水平断面は、H字状である。第3柱3
0Cは、フランジ35と、フランジ36と、ウェブ37と、を備える。フランジ35の厚
さ方向は、Y方向と平行である。フランジ36の厚さ方向は、Y方向と平行である。フラ
ンジ36は、フランジ35と平行である。フランジ35及びフランジ36の厚さ方向は、
第1柱10のフランジ11(フランジ12)及び第2柱20のフランジ21(フランジ2
2)の厚さ方向に対して直交する。ウェブ37の厚さ方向は、X方向と平行である。ウェ
ブ37は、フランジ35及びフランジ36に対して直交する。
【0058】
第3柱30Cは、X軸周りの曲げモーメントに対して比較的強く、Y軸周りの曲げモー
メントに対して比較的弱い。第3柱30Cにおいて、X軸周りの曲げモーメントが、強軸
周りの曲げモーメントである。第3柱30Cにおいて、Y軸周りの曲げモーメントが、弱
軸周りの曲げモーメントである。
【0059】
第3柱30Cは、例えば溶接によって第1柱10及び第2柱20と接合される。フラン
ジ35の-X方向の端部は、フランジ12の+Y方向の端部と接合される。フランジ35
の+X方向の端部は、フランジ21の+Y方向の端部と接合される。フランジ36の-X
方向の端部は、フランジ12の-Y方向の端部と接合される。フランジ36の+X方向の
端部は、フランジ21の-Y方向の端部と接合される。
【0060】
なお、Z方向において、第3柱30Cは、第1柱10及び第2柱20よりも短くてもよ
い。第3柱30Cの上端部が、Z方向に並ぶ2つの梁40の間に配置されてもよい。
【0061】
以上で説明したように、第3変形例の架構式構造100Cでは、第3柱30Cは、H形
鋼である。第3柱30Cのフランジ35(フランジ36)の厚さ方向は、第1柱10のフ
ランジ11(フランジ12)の厚さ方向に対して直交する。
【0062】
これにより、第3柱30Cによって、第1柱10及び第2柱20が並ぶ方向と平行な軸
周り(X軸周り)の第1柱10及び第2柱20の変形が抑制される。このため、架構全体
の軸耐力(座屈耐力)が向上する。また、第3柱30Cが曲げモーメントを負担する。こ
のため、架構全体の曲げ耐力、及び曲げ剛性が向上する。架構式構造100Cは、連結さ
れたH形鋼である2つの柱を含む架構全体の軸耐力、曲げ耐力、及び曲げ剛性を向上させ
ることができる。
【0063】
架構式構造100Cにおいては、第1柱10のウェブ13の厚さ方向と平行な奥行方向
(Y方向)における第3柱30Cの長さL3Cは、奥行方向における第1柱10のフラン
ジ11(フランジ12)の長さL1、及び奥行方向における第2柱20のフランジ21(
フランジ22)の長さL2以下である。
【0064】
これにより、架構式構造100Cが適用される建築物において、第3柱30Cの壁面か
らの張り出しを抑制できる。架構式構造100Cは、室内空間をより自由に利用すること
を可能にする。
【符号の説明】
【0065】
10 第1柱
11、12 フランジ
13 ウェブ
15 リブ
19 スタッド
21、22 フランジ
23 ウェブ
25 リブ
29 スタッド
30、30A、30B、30C 第3柱
31、31A 柱本体
32、32A 主筋
33、33A 帯筋
35、36 フランジ
37 ウェブ
40 梁
41、42 フランジ
43 ウェブ
50 連結材
51、52 フランジ
53 ウェブ
100、100A、100B、100C 架構式構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8