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  • 特許-ばねレールを備えた乾式壁構造システム 図1
  • 特許-ばねレールを備えた乾式壁構造システム 図2
  • 特許-ばねレールを備えた乾式壁構造システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】ばねレールを備えた乾式壁構造システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20230719BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20230719BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E04B1/82 N
E04B1/82 B
E04B1/82 W
E04B2/56 643F
E04B2/74 551Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018569016
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017000517
(87)【国際公開番号】W WO2018001539
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】102016007912.6
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100194858
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久子
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヘアフアト
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ミュラー
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】西田 秀彦
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0146180(US,A1)
【文献】米国特許第4660339(US,A)
【文献】米国特許第3477187(US,A)
【文献】W62 Knauf Knauf Furrings/Installation Shaft Walls <https://knaufegypt.com/en-us/knauf/library/Upload_Main_Entity_Db_AssetMedia_Filename_8264d03f541da8bff8020e365057254c.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/62-1/99
E04B2/56-2/70
E04B2/72-2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側において、乾式構造ボード取り付けられる複数の金属形材を備える乾式壁構造システムであって、
方の側で、前記金属形材と前記乾式構造ボードとの間に、ばねレールが配置されており、
前記ばねレールは、基部と、該基部から角度を成して両側に突出しているシャンクと、該シャンクに接合されたフランジとを有するトップハットレールであり、前記乾式構造ボードは、前記乾式構造ボードが前記金属形材に固定的に接続されないように前記ばねレールに固定されており、
前記ばねレールは、当該ばねレールの柔軟性を高める穴を有し、
トップハットレールは、前記金属形材に対して垂直に配置されており、
前記乾式構造ボードは、前記金属形材の両側に取り付けられており、
前記乾式構造ボードは、密度>1000kg/mを有するプラスターボードであり、
前記金属形材は、最小1mm~最大3mmの板厚を有しており、
前記金属形材の両側に取り付けられた乾式構造ボードの間のキャビティの容積の80%までが、前記金属形材の両側に取り付けられた乾式構造ボードの間に配置された遮音材料によって充填されており、
前記トップハットレールは、前記金属形材にねじ固定により留められており、
少なくとも前記一方の側に配置された前記乾式構造ボードは、前記金属形材にではなく、前記トップハットレールにねじ固定により固定されている、
ことを特徴とする、乾式壁構造システム。
【請求項2】
前記ばねレールの前記穴は、円形または楕円形である、請求項1記載の乾式壁構造システム。
【請求項3】
前記トップハットレールによって取り囲まれたキャビティには、遮音材料が充填されている、請求項1または2記載の乾式壁構造システム。
【請求項4】
前記金属形材は、軽量鋼形材であり、1.5mmよりも厚い板厚を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の乾式壁構造システム。
【請求項5】
前記乾式壁構造システムは、隔壁を構築する、請求項1から4までのいずれか1項記載の鑑識壁構造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねレールを備えた乾式壁構造システムに関する。特に本発明は、遮音特性を備えた、金属支持体とパネルとの間にばねレールが配置されている、乾式壁構造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遮音要求にも合致した乾式壁構造システムは当技術分野において公知である。両側にパネルを備えた金属ポストとビームとから構成された軽量壁の遮音特性は、本質的に、いわゆる質量-ばね-質量原理によって決定される。一般的な用語で言うならば、以下の2つの説明が適用される。
1)パネル層のボードが重いほど(質量-ばね-質量系における質量の増加)、かつ柔軟なほど、壁の遮音性は良好である。
2)対向するパネル層の音響的分離が良好であるほど(例えば、柔軟なばね弾性的な金属支持体により)、壁の遮音性は良好である(質量-ばね-質量系におけるばね剛性の減少)。
【0003】
これらの原理に基づく高性能の遮音壁システムの一例は、W112 Knauf wall systemである。このW112 Knauf wall systemは、12.5mmの公称厚さのKnauf Diamant Boards(1000kg/m超の粗密度を有した石膏プラスターボード)を使用した両側における2層のパネル、ならびに625mmの軸方向距離にあるCW100/50/06 Knauf Profiles(壁のための良好なばね性または弾性を備えた「音響」C字形材)の基礎構造、および80%の充填レベルでの鉱物綿によるキャビティ防音を有する。この構造は、テストベンチにおいて、63.2dBの音低減指数Rwを達成する。
【0004】
しかしながら、このような壁システムは、いかなる体系的な建物荷重にも対処することができない。何故ならば、鋼板厚が0.6mmしかないCW形材(100/50/06形材)が、そのような荷重に構造的に適していないからである。荷重支持壁は、C97/50/1.5コクーン(Cocoon)形材のような、より大きな板厚を持つ形材を必要とする。この軽量鋼形材は1.5mmの鋼板厚を有する。このような形材を、その他の点では設計変更のない壁と共に使用すると、音低減指数は、僅かRw51.1dBのテストベンチ値に著しく低下する。遮音性のこのような低下は、より大きな板厚を有するC97形材の使用によるものである。
【0005】
C97形材のより大きな板厚は、音響特性を考慮した乾式壁構造システムで使用される、0.6mmの板厚しか有していないCW100形材と比較して、ばね剛性が明らかに高まる。
【0006】
さらに、木造フレームを有する屋根裏部屋の改築の分野で使用されるばねレールまたは弾性バーが当技術分野において公知であり、この場合、ばねレールは、十分な遮音性を達成するために、木造フレームの高い音響スティフネスを補償するためのものである。しかしながら、我々の認識によると、このばねレールは、この分野でのみ使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に、耐荷重壁が、乾式壁原理(軽量鋼構造)により構築されている領域において、改善された遮音性を有する乾式壁構造システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1記載の、遮音性のための乾式壁構造システムによって達成される。本発明のさらなる有利な改良形は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明による乾式壁構造システムは、複数の金属形材を備えており、これらの金属形材は、少なくとも一方の側で、乾式構造ボードを使用してパネルで覆われている。少なくともこの一方の側で、金属形材と乾式構造ボードとの間に、ばねレールが配置されている。ばねレールは、乾式壁構造システムのパネルを形材から音響的に分離し、これにより上述した質量・ばね・質量系におけるばね作用が強化される。
【0010】
金属形材は、好適には、最小1mm~最大3mmの板厚を有する軽量の鋼形材である。好適には、板厚は、1.5mmよりも大きく、最大3mmである。これらの形材は、荷重支持構造での使用に適している。しかしながら、このような大きな板厚のため、これらの形材は、屈曲に抗して比較的剛性が高く、したがって、今日の遮音基準に従うためには追加の遮音手段が必要となる。形材とパネルとの間に配置されたばねレールによる分離によって、比較的大きな板厚の音響的欠点が補償され、実際には補償以上のものとなっている。
【0011】
分離エレメントとしてばねレールを使用する、本発明による乾式壁構造システムは、従来の乾式壁構造システムにおいても有利に使用することができる。この場合、使用される金属形材は、特に良好な音響特性を有するいわゆるばね形材である。これらばね形材の板厚は0.4mm~1mmである。これらばね形材と、パネル用に使用される乾式構造ボードとの間にばねレールを使用することにより、音低減指数のさらなる増加を達成することができる。
【0012】
本発明の特に好適な態様によれば、ばねレールはトップハットレールである。トップハットレールは、基部と、基部の両側に隣接するシャンクとを有しており、シャンクは、所定の角度を成して基部から突出している。シャンクはフランジに接合されていて、フランジもシャンクから所定の角度を成して延在している。
【0013】
フランジとベースとは、ばねレールを金属形材/構造ボードに取り付けるために使用される。アングル付きのシャンクは、ばねレールのばね作用を提供する。
【0014】
ばねレールは好適には金属に凹部を有している。凹部によりばねレールの柔軟性が高まり、ばねレールと金属形材との間の接触が少なくなり、したがって、金属形材とパネルとの間の分離がさらに改善される。特に好適には、凹部は、シャンクの近傍に設けられてよい。円形または楕円形の凹部は、レールの安定性と柔軟性との間の特に良好な関係を促進するので、特に好適である。
【0015】
乾式壁構造システムは、乾式構造ボードを使用する片側パネル及び両側パネルの両方に適している。片側パネルシステムは、既に存在する構造物において外層シェルとして主に使用される。両側または2面のパネルは、例えば(荷重支持式の)隔壁が構築される場合に使用される。さらに、このようなシステムは、隔壁を構築するため、および外壁を構築するためのいずれの場合にも、モジュラー構造システムでの使用に適している。
【0016】
本発明の典型的な態様によれば、ばねレールは、金属形材に対して垂直に配置されている。次いで、この形材格子に構造ボードを取り付けることができる。
【0017】
特に好適には、ばねレールは金属形材に留められており、例えばばねレールを、金属形材のフランジにねじを用いて固定することができる。構造ボードをばねレールに位置固定することができる。特に好適には、構造ボードはばねレールに、構造ボードが金属形材には固定的に接続されないように、固定される。この実施形態により、構造ボードを金属形材から最大限分離することができ、したがって、このシステムで達成することができる最大限の音低減指数が得られる。しかしながら、確かにこのシステムによる安定性は比較的低いので、本発明からその他の実施形態を除外することはできない。
【0018】
本発明のさらなる改良によれば、遮音性をさらに向上させるために遮音材料をキャビティに充填することができる。遮音材料は、ばねレールによって取り囲まれたキャビティ内に、およびばねレール間のキャビティ内に配置される。加えてまたは付加的に、金属ポスト間に遮音材料を配置することもでき、したがってボード間のキャビティが完全に、または少なくとも部分的に遮音材料で満たされる。特に好適には、乾式構造ボードの間の空間の容積の80%までが遮音材料で充填される。
【0019】
本発明の観点からは、鉱物綿が好適な遮音材料である。しかしながら、他の音響的に有効な遮音材料も等しく使用することができ、または互いに組み合わせて使用することもできる。
【0020】
以下、例示的な実施形態を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1Aは、異なる乾式壁構造システムに関する、周波数に依存した空気伝達音低減指数を示す図であり、図1Bは、本発明による乾式壁構造システムの概略断面図であり、図1Cは、一般的に使用される、遮音特性を備えた乾式壁構造システムの概略断面図であり、図1Dは、軽量鋼により形成された乾式壁構造システムの概略断面図である。
図2】ばねレールの一部を示す上面斜視図である。
図3】本発明による組み込み状態を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、様々な乾式壁構造システムについての、周波数に依存した音低減指数Rが示されている。図1B図1Dには、それぞれの乾式壁構造システムが概略的に水平断面図で示されている。図1Cには、遮音性に関して最適化された一般的に使用される乾式壁構造システムが示されている。この乾式壁構造システムは、両側2層パネルと共に、乾式壁構造システムで一般的に使用される金属形材(板厚0.6mmの形材)から成っている。金属形材の間の内側キャビティは容積の80%まで鉱物綿で充填されている。全ての石膏プラスターボード(粗密度>1000kg/m)は、金属形材のフランジに直接ねじ固定されている。矢印は、このような乾式壁構造システムに対して得られた関連する音響低減グラフを指している。○印のついたグラフを参照。
【0023】
図1Dには、図1Cに示した実施形態と同じシステム構成であるが、1.5mmの板厚を有する軽量の鋼形材を有するものが示されている。矢印は、関連する音響低減グラフを指している。△印のついたグラフを参照。図1Cの遮音システムと比較すると、乾式壁システムの遮音特性が、軽量鋼形材の使用によって低下することが明らかになっている。
【0024】
図1Bには、本発明による乾式壁構造システムの実施形態が示されており、これは、図1Dに示した実施形態とは、金属形材に対して垂直に延在するばねレールの存在により異なっている。ばねレールは、1.5mmの厚さの軽量鋼形材と、一方の側のパネルとの間に配置されている。ばねレールは、交点で金属形材にねじ固定される一方、石膏プラスターボードはばねレールのみにねじ固定される。パネルは金属形材から分離されているので、実際には音響エネルギのごく僅かな部分しか、他方の側に、システムを介して移送され得ない。矢印は、この乾式壁構造システムに関連する音響低減グラフを指している。×印のついたグラフを参照。このシステムは、図1Cに示した遮音システムに対してさえ、特に高周波範囲において優れていることがわかる。このことは音低減指数Rwを見ても明らかである。音低減指数は、本発明の実施形態では66.4dBであり、図1Cの遮音態様では63.2dBであり、さらなる対策を有さない軽量鋼の態様では僅か51.5dBである(図1D)。1.5mmの軽量鋼形材が遮音性に及ぼす悪影響は、ばねレールの組み込みによって単に補償されるだけでなく、明らかに十分に補償される。このような肯定的な結果は期待されていなかった。
【0025】
図2および図3には、トップハット形材の形態のばねレールの可能な実施形態が示されている。側面の領域で、ばねレールには楕円の穴が設けられており、これによりレールはより弾性的になっている。傾斜フランジも穴を備えていて、この穴は、金属形材にねじ固定するために利用することができる。
【0026】
図3には例として組み込まれた状態が縦断面図で示されている。金属形材1は、2つのフランジ2bを介してねじによってこの金属形材に固定されているトップハットレールまたはばねレール2を有している。2つの構造ボード3、この場合は石膏プラスターボードが、ねじによって1つの層で、ばねレール2の基部2aに固定されている。石膏プラスターボードを固定するためのねじは、プラスターボードをばねレール2にのみ固定し、金属形材1には固定しない。
図1
図2
図3