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特許7315329液晶表示装置及び撮像機能を有する電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】液晶表示装置及び撮像機能を有する電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20230719BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G02F1/13357
G02F1/1333
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019010932
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020118879
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】沖田 光隆
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504242(JP,A)
【文献】特開2013-080646(JP,A)
【文献】特開2009-236987(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13357
G02F 1/1333
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列された表示領域を有する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面側に配置され、前記液晶表示パネルを通して前方を撮像する撮像素子と、
前記液晶表示パネルと前記撮像素子との間に配置され、前記表示領域と重なるように配置される光変調素子と、前記光変調素子を照明する光源と、を含む照明ユニットと、
前記液晶表示パネルの前記照明ユニット側に配置された第1反射型偏光板と、前記撮像素子と前記光変調素子との間に配置された第2反射型偏光板を有と、
を有し、
前記撮像素子は、前記表示領域と重なる領域に配置されている電子機器。
【請求項2】
前記光変調素子は、前記光源の出射光を前記液晶表示パネルの方向に散乱させる散乱状態と、前記撮像素子と重なる領域を透明にし、他の領域は散乱状態を維持する透過状態とに制御される、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記透過状態は、前記撮像素子の前方を部分的に透明にする部分的透過状態である、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記散乱状態のとき前記液晶表示パネルに映像を表示し、前記透過状態のとき前記液晶表示パネルは前記撮像素子と重なる領域で白表示を行い、前記撮像素子で撮像を行う、請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記光変調素子は、高分子分散型液晶パネルである、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記液晶表示パネルの前記第1反射型偏光板とは反対側の面に配置された透過型偏光板を有し、
前記第1反射型偏光板と前記透過型偏光板は透過偏光軸がクロスニコルに配置され、
前記第1反射型偏光板と前記第2反射型偏光板とは透過偏光軸が平行に配置されている、請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、電子機器に備えられる撮像素子の配置に関する。また、本発明の一実施形態は、液晶表示装置における液晶表示パネルと照明ユニットの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
情報をデジタル処理し、映像及び/又は音声を電気的にアナログ処理する電子機器として、スマートフォンと呼ばれる多機能携帯電話、タブレット端末と呼ばれるキーボードレスの携帯型端末が社会生活の中で広く普及している。このよう電子機器は、表示画面が設けられる側を前面とすると、前面側と背面側とにカメラが搭載されている。電子機器の前面側に配置されるカメラは、表示画面を囲む筐体の額縁部分に配置されている。電子機器において、表示画面を囲むフレームの部分(額縁とも呼ばれる)は、カメラを配置するために一定の面積を確保する必要がある。そのため、電子機器は、筐体のフレーム部分を狭くすることに限界があり、前方を撮像するカメラの搭載は狭額縁化の妨げとなっている。
【0003】
ところで、特許文献1には、液晶表示パネルの背面にビデオカメラが配置され、表示画面を通して被写体を撮影するように構成された画像撮影表示システムが開示されている。しかしながら、特許文献1に開示の画像撮影表示システムは、液晶パネルによる画像の表示モードと、ビデオカメラによる撮像モードとを交互に切り替える必要があり、画像の表示と撮像とを同時に行うことができないことが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-131766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、表示画面が設けられる側にカメラが配置される電子機器において、狭額縁化を図ること目的とする。また、本発明の一実施形態は、映像の表示と撮像とを同時に行うことのできる電子機器、並びに表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る電子機器は、複数の画素が配列された表示領域を有する液晶表示パネルと、液晶表示パネルの背面側に配置され、表示パネルを通して前方を撮像する撮像素子と、液晶表示パネルと撮像素子との間に配置された照明ユニットとを有する。
撮像素子は、表示領域と重なる領域に配置され、照明ユニットは、表示領域と重なるように配置される光変調素子と、光変調素子を照明する光源とを含む。
【0007】
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置は、複数の画素が配列された表示領域を有する液晶表示パネルと、液晶表示パネルと重ねて配置された照明ユニットとを有する。照明ユニットは、表示領域と重なるように配置される光変調素子と、光変調素子を照明する光源とを含み、光変調素子は、表示領域と重なる領域で部分的に散乱状態と透過状態との制御が可能とされている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の主要な構成要素を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子機器の構成を示し、(A)は正面図、(B)はカバーパネル、液晶表示装置及び撮像素子の配置を示す断面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電子機器の構成を示し、液晶表示装置及び撮像素子の配置及び撮像素子が撮像するときの状態を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電子機器に備えられる照明ユニットの動作を説明する断面図であり、(A)は非撮像モードにおける状態、(B)は撮像モードにおける状態を示す。
図5】本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電子機器が、撮像モードにあるときの表示領域に表示される画像の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。
図11】本発明の一実施形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。
【0010】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、断面視において、ベース部材に対してタッチセンサが設けられる側を「上」又は「上方」といい、「上」又は「上方」から見た面を「上面」又は「上面側」というものとし、その逆を「下」、「下方」、「下面」又は「下面側」というものとする。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器100の主要な構成要素を示す斜視図である。電子機器100は、液晶表示装置102及び撮像素子104、105を含む。液晶表示装置102は、液晶表示パネル110と照明ユニット112とを含んで構成される。液晶表示パネル110は、照明ユニット112の前面側に配置され、照明ユニット112は液晶表示パネル110を背面側から照明する。
【0012】
液晶表示パネル110は、複数の画素が配列された表示領域114を有する。照明ユニット112は、光源118と光変調素子120とを含んで構成される。光変調素子120は、照明光が出射される領域が面状に形成され、その光出射面が液晶表示パネル110と重なるように配置される。照明ユニット112は、液晶表示パネル110の表示領域114を背面から照明する。
【0013】
なお、本発明の一実施形態において、光変調素子とは、光を散乱する状態と、光を散乱せず透明な状態とに制御可能な素子を指す。例えば、光変調素子は、電気的なエネルギーで光学的な性質が変化する電気光学物質を含む素子によって実現される。光変調素子は、このような電気光学的作用により、光を出射する面内において、光強度の分布を制御する機能を有する。
【0014】
液晶表示装置102の前面には、任意の部材としてカバーパネル106が設けられている。カバーパネル106はガラス、プラスチック等を素材とする透明部材で形成される。電子機器100は、液晶表示装置102によって表示画面が形成され、利用者はカバーパネル106を通して表示画面に表示される画像を視認する。
【0015】
撮像素子104は液晶表示装置102の背面側に配置される。撮像素子104は、表示領域114と重なる位置に配置される。撮像素子104は液晶表示装置102の前方(カバーパネル106が設けられる側)を撮像するように受光面が向けられている。撮像素子105は、撮像素子104とは反対に背面方向を撮像するように受光面が向けられている。液晶表示装置102及び撮像素子104、105は、筐体108に収納される。撮像素子104は、筐体108の内部に収納された状態において、外部から視認されないように配置される。
【0016】
照明ユニット112において、光源118は、光変調素子120の側面側に配置される。光源118には、発光ダイオード(LED)又は冷陰極管が用いられる。光源118は、例えば、複数の発光ダイオードが、矩形状に形成された光変調素子120の一辺に沿って配列されている。光変調素子120は、側面から光源118の光が入射される。光変調素子120に入射された光は、内部で拡散し、散乱され、液晶表示パネル110が配置される側に光を出射する。
【0017】
撮像素子104は、液晶表示パネル110の表示領域114と重なる領域に配置される。撮像素子104は、液晶表示パネル110及び光変調素子120を透過した外光を受光して撮像する。撮像素子104は、例えば、CCD(Charged Coupled Devices)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のイメージセンサで形成される。
【0018】
このように、本発明の一実施形態に係る電子機器100は、撮像素子104が筐体108に収納されたとき、前面が液晶表示パネル110及び照明ユニット112、並びにカバーパネル106で覆われるので、外部に露出せず、利用者が直接的に視認しない位置に配置されている。撮像素子104は、表示領域114を囲む筐体108のフレーム部分に配置されないので、本発明の一実施形態に係る電子機器100は、狭額縁化を図ることができる。
【0019】
図2(A)は、電子機器100を正面から見た状態を示す。電子機器100は、カバーパネル106の背面側に、液晶表示装置102及び撮像素子104が重ねて配置される。カバーパネル106の面内には、液晶表示装置102によって表示領域114が形成される。表示領域114を囲む領域は、表示に直接寄与しない非表示領域116となる。非表示領域116は、表示領域114に表示される画像を囲むことから、額縁又は額縁領域と呼ばれることもある。なお、図2(A)は、表示領域114の周囲全体を囲むように非表示領域116が設けられる態様を示す。しかし、この態様は一例であり、本発明の一実施形態はこの態様に限定されるものではない。例えば、電子機器100は、正面から正視したとき略全面が表示領域114とされ、非表示領域116が視認されない構成を有していてもよい。
【0020】
撮像素子104は、非表示領域116に配置されるのではなく、表示領域114と重なる領域に配置される。撮像素子104は、画像の視認に影響を与えないように、液晶表示パネル110の背面側に配置される。したがって、表示領域114で画像を表示しているとき、電子機器100の利用者は、表示領域114を通して撮像素子104の位置を視認することはない。表示領域114と重なる領域において、撮像素子104は任意の位置に配置される。例えば、撮像素子104は、表示領域114の中央部に配置されてもよいし、表示領域114の周辺部寄りに配置されてもよい。また、撮像素子104は、表示領域114の面内に複数個配置されてもよい。
【0021】
図2(B)は、電子機器100の主要な構成を示す断面模式図を示す。図2(B)は、カバーパネル106、液晶表示装置102、及び撮像素子104の配置を示す。液晶表示装置102は、液晶表示パネル110と照明ユニット112とを含む。電子機器100は、視認側から、カバーパネル106、液晶表示装置102、撮像素子104の順に重ねられている。視認側から見たとき、照明ユニット112は、液晶表示パネル110を、背面側(カバーパネル106が配置される側とは反対側の面)から照明する。液晶表示パネル110は、液晶の電気光学効果を利用して透過光を変調し、表示領域114に画像を表示する。
【0022】
液晶表示パネル110は、第1基板122と第2基板124とを有し、第1基板122と第2基板124との間に液晶層128が設けられた構成を有する。液晶層128は、画素電極126によって液晶分子の配向状態が制御される。画素電極126は、表示領域114を形成する複数の画素のそれぞれに対応して設けられる。図2(B)では詳細に示さないが、画素電極126は各種液晶モードに対応した構造を有する。例えば、画素電極126は、IPS(In Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA方式(Multi-domain Vertical Alignment)、TN(Twisted Nematic)等の各種方式に対応した構成を有する。
【0023】
照明ユニット112において、光源118から光変調素子120に入射した照明光は、面内を拡散し、かつ散乱されることによって液晶表示パネル110の側に出射される。光変調素子120は、電気的な制御により、一部又は全面を、光を散乱させる散乱状態と光を透過させる透過状態とに制御する機能を有する。
【0024】
撮像素子104は、液晶表示装置102の背面側(カバーパネル106が配置される面とは反対側の面)に配置される。撮像素子104は、表示領域114と重なる領域に配置されるので、撮像素子104の前方(撮像する側)には、少なくとも液晶表示パネル110と光変調素子120が配置されている。光変調素子120が散乱状態にあるとき、外光(カバーパネル106の外側から入射する光)は光変調素子120で散乱され、少なくとも直達光は撮像素子104に入射しない。したがて、光変調素子120が散乱状態に制御されているときには、撮像素子104は液晶表示パネル110の前方を撮像することができない。一方、光変調素子120が透過状態に制御されているとき、撮像素子104に外光を入射させることが可能となる。したがって、電子機器100は、光変調素子120の光学的状態を制御することで、画像の表示及び撮像を適宜行うことができる。
【0025】
次に、電子機器100の基本的な動作について説明する。図2(B)は、表示領域114の全面で画像が表示されている状態を示す。この状態では、光が光変調素子120によって液晶表示パネル110の表示領域114の全面が照明される。この状態では、撮像素子104は、前面にある光変調素子120が散乱状態に制御されているので、液晶表示パネル110の前方を撮像することができない状態にある。したがって、電子機器100におけるこのような状態は、非撮像モードと呼ぶことができる。
【0026】
図3は、光変調素子120の光学的状態が、撮像素子104と重なる領域(撮像素子104の前面領域)において、散乱状体から透過状態に制御された状態を示す。図3に示すように、光変調素子120は、全体が透過状態となるのではなく、撮像素子104の撮像面に外光を入射させることが可能となるように、部分的に透過状態を形成するように制御される。したがって、光変調素子120におけるこの状態は、部分的透過状態と呼ぶこともできる。また、図3は、液晶表示パネル110の撮像素子104と重なる領域の画素が、白表示(透過状態)となるように液晶の配向が制御された状態を示す。このような制御により、撮像素子104には、液晶表示パネル110及び光変調素子120を通して、視認側から外光が入射する状態となる。この様態では、撮像素子104は、液晶表示パネル110の前方を撮像可能な状態となる。したがって、電子機器100におけるこのような状態は、撮像モードと呼ぶことができる。
【0027】
なお、撮像モードにおいても、撮像素子104と重ならない領域においては、光変調素子120は散乱状体を維持することができ、液晶表示パネル110は表示領域114画像を表示することができる状態にある。したがって、撮像モードでは、撮像のみならす、画像の表示を同時に行うことができる。
【0028】
図4(A)及び図4(B)は、照明ユニット112の動作を説明する断面図である。図4(A)は非撮像モードにおける状態、図4(B)は撮像モードにおける状態を示す。光変調素子120は、第3基板130と、第3基板130に対向して配置される第4基板132との間に調光層134が設けられた構成を有する。第3基板130には第1電極138が設けられ、第4基板132には第2電極140が設けられる。第1電極138及び第2電極140は、いずれも透明導電膜で形成される。第1電極138は、第3基板130の略全面に広がる共通電極として設けられ、第2電極140は、撮像素子104が配置される位置に対応して設けられ、他の領域と電気的に分離されている。ここで、以下の説明においては、光変調素子120において、第1電極138と第2電極140とが重畳する領域を第1領域201と呼び、それ以外の領域を第2領域202と呼ぶこととする。
【0029】
調光層134は、光を散乱する散乱状態と光を透過する透明状態との、少なくとも2つの状態を形成する特性を有する。このような調光層134は、例えば、高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いて形成される。高分子分散型液晶は、液晶中にポリマーによるネットワーク構造体を形成させたものである。高分子分散型液晶は、ポリマーネットワークの作用により、液晶分子136の配列が不規則な状態を誘起して光を散乱させる作用を有する。一方、高分子分散型液晶は、電圧が印加されて液晶分子136の配向が一方向に配向されたとき、その光を散乱せずに透過する作用を発現する。高分子分散型液晶は、電圧を印加することによって散乱状態から透明状態に変化するノーマリホワイト型と呼ばれるものと、電圧を印加することによって透明状態から散乱状態に変化するノーマリブラック型(リバースモードとも呼ばれる)と呼ばれるものとに分類される。本発明の一実施形態において、調光層134は、ノーマリホワイト型及びノーマリブラック型の双方の高分子分散型液晶を用いることができる。
【0030】
図4(A)は、ノーマリホワイト型の高分子分散型液晶で調光層134が設けられる場合を示す。図4(A)は、また、非撮像モードを示し、第1電極138と第2電極140との間に電圧が印加されない状態を示す。この状態では、調光層134は、第1領域201及び第2領域202において、共に散乱状態となっている。すなわち、高分子分散液晶は、液晶分子136がランダムな方向に配向して、光を散乱する状態となっている。したがって、光源118から光変調素子120に入射された光は、調光層134の中を拡散しかつ散乱されて、液晶表示パネル110の方向に照射される。
【0031】
図4(B)は、撮像モードを示し、第1領域201において第1電極138と第2電極140との間に電圧が印加され、第2領域202においては依然として電圧が印加されない状態を示す。調光層134は、第1領域201が透明状態に変化し、第2領域202は散乱状態を維持している。すなわち、高分子分散型液晶は、第1電極138と第2電極140で挟まれた領域において、電界の作用を受けて液晶分子136が一方向に配向する。第1領域201は、液晶分子136の配向が揃っているので、光を散乱する作用は低減して透明となる。
【0032】
その結果、光変調素子120は、撮像素子104の前面に位置する第1領域201が透明となり、外光が入射することが可能な状態となる。一方、第2領域202は、液晶分子136が依然としてランダムに配向した状態にあるので、散乱状態が維持される。それにより、第2領域202は液晶表示パネル110を照明することができ、液晶表示パネル110は、第2領域202に対応する領域で画像を表示することができる。
【0033】
このように、照明ユニット112は、光変調素子120を用いて部分的に散乱状態と透明状態とを制御することで、非撮像モードと撮像モードとを切り替えることができる。撮像モードにおいては、液晶表示パネル110によって表示領域114に画像を表示させつつ、撮像素子104を使って撮像を行うことが可能となる。
【0034】
なお、第2電極140は、他の領域と区別される個別電極として設けられるのではなく、第4基板132の略全面に形成されてもよい。このような構成によれば、光変調素子120の全体が散乱状態と透明状態とに同時に制御されることとなる。この場合は、液晶表示パネル110による画像の表示と、撮像素子104による撮像とを交互に行うことができる。また、光変調素子120は、パッシブマトリクス型の電極構造を備えていてもよい。光変調素子120は、パッシブマトリクス型の電極を備えることで、第1領域201に対応する領域において、散乱状態と透過状態とを制御することができる。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態に係る電子機器の動作を説明する図である。図5は、第1領域201及び第2領域202のそれぞれにおいて、液晶表示パネル110と光変調素子120の動作の状態を示す。
【0036】
図5に示すように、電子機器100が液晶表示パネル110で画像を表示している状態(非撮像モード)では、光変調素子120は、第1領域201及び第2領域202が共に散乱状態となっている。撮像素子104で撮像を行う撮像モードでは、光変調素子120の第1領域201が透明状態となり、第2領域202は散乱状態が維持される。撮像モードにおいて、液晶表示パネル110は、第1領域201に対応する領域の画素が白表示を行うときと同じように駆動される。具体的には、第1領域201に対応する領域に配置される、赤(R)画素、緑(G)画素、及び青(B)画素の各画素において、照明ユニット112の照明光が透過する状態となるように、液晶分子の配向が制御される。これにより、第1領域201は外光が入射可能な状態となり、撮像素子104により撮像が行われる。一方、撮像モードにおいても、第2領域202は、光変調素子120の散乱状態が維持される。そのため、第2領域202に対応する液晶表示パネル110の表示領域114では、画像の表示を行うことが可能となる。
【0037】
撮像モードでは、図6に示すように、表示領域114は、第1領域201に対応する領域が光変調素子120で照明されない領域となるため黒色に視認され、第2領域202に対応する領域は通常の画像が表示されることとなる。第1領域201には、撮像素子104に外光が入射し、撮像を行うことが可能な状態となる。なお、第1領域201の形状は任意であり、図6に示される形状に限定されない。
【0038】
その後、非撮像モードに移行すると、光変調素子120の第1領域201は、散乱状態に遷移する。それによって、液晶表示パネル110は、第1領域201及び第2領域202に対応する領域において通常の画像を表示する。
【0039】
図7は、電子機器100が画像を表示しながら撮像を行う動作の一例を示す。図7は、第1領域201及び第2領域202のそれぞれにおける液晶表示パネル110と光変調素子120の、1フレーム毎の動作を示す。
【0040】
図7に示すように、電子機器100は撮像素子104で撮像を行うとき、1フレーム内に画像表示期間と撮像期間が含まれる。具体的に、第1領域201では、1フレーム内で液晶表示パネル110が、画像の表示を行う画像表示期間と、白表示(表示領域114では、光変調素子120で照明されないため、図6で示すように黒表示と視認される。)を行うように画素が駆動される撮像期間が設けられる。光変調素子120は、第1領域201において、液晶表示パネル110の動作に同期して、散乱状態の期間と、透明状態の期間とに制御される。第2領域202では、液晶表示パネル110は画像の表示を行い、光変調素子120は散乱状態に制御される。
【0041】
液晶表示パネル110のフレーム周波数が60Hzの場合、1フレーム当たりの時間は16.7msecとなる。ここで、撮像素子104のシャッタースピードが1/1000秒であれば、撮像期間を1msecとしても、画像の表示に影響を与えることなく1フレーム内に撮像期間を設けることができる。なお、図7では、画像表示期間の後に撮像期間が設けられる一例を示すが、撮像期間は1フレーム内で任意に設けることができる。例えば、1フレーム期間の最初に撮像期間を設けることもできるし、1フレーム期間内の中間に撮像期間を設けることもできる。
【0042】
このように、1フレーム期間内に撮像期間を設けることで、電子機器100の表示領域114の全面に画像を表示しつつ撮像を行うことができる。撮像期間は1フレーム期間内の一部の時間として設定されるので、利用者の視覚に影響を与えることなく撮像を行うことができる。
【0043】
図8は、液晶表示装置102に設けられる偏光板と、照明ユニット112の出射光及び外光との関係を示す。液晶表示装置102には、液晶表示パネル110のカバーパネル106側の面に透過偏光板142が配置され、照明ユニット112側の面に第1反射偏光板144が設けられる。また、照明ユニット112と撮像素子104との間に第2反射偏光板が設けられる。
【0044】
図8は、図面の中にX軸、Y軸、Z軸を示す。このとき、Y軸に沿った方向を第1方向、Y軸方向と直交するZ軸に沿った方向を第2方向、Y軸方向及びZ軸方向と直行するX軸に沿った方向を第3方向というものとする。なお、他の図面においても、X軸、Y軸、Z軸が同様に示されるときは、同様に扱うものとする。
【0045】
透過偏光板142は、第1方向に透過偏光軸を有している。第1反射偏光板144は、第1方向と直交する第2方向に透過偏光軸を有し、第1方向に反射偏光軸を有するように配置される。すなわち、透過偏光板142と第1反射偏光板144とは、透過偏光軸がクロスニコルに配置されている。第2反射偏光板146は、第1方向と交差する第2方向に透過偏光軸を有し、第1方向に反射偏光軸を有するように配置される。すなわち、第1反射偏光板144と第2反射偏光板146とは、透過偏光軸が平行となるように配置されている。
【0046】
図8は、また、液晶表示パネル110の液晶層128が、横電界方式である場合を示す。この場合、液晶分子は、画素電極126に所定の電圧が印加されないとき第1方向に配向し、所定の電圧が印加されたとき第2方向に配向するものとする。
【0047】
光源118から出射された光は、光変調素子120で散乱され、その一部は液晶表示パネル110側に照射される。その照射光の内、第1反射偏光板144の透過偏光軸と平行な光の偏光成分が透過し、液晶表示パネル110に照射される。一方、第1反射偏光板144で反射された光は、偏光軸が第2反射偏光板146の透過偏光軸と直交するので、撮像素子104側へは透過しない。したがって、撮像素子104は照明ユニット112が出射する照明光の影響を受けにくい状態に配置される。
【0048】
液晶表示パネル110に対する照明光は、液晶層128に入射する。液晶表示パネル110では、各画素に画素電極126が設けられている。このとき、画素電極126に液晶分子を配向させる電圧が印加されない画素では、照明光の偏光軸が捩れないので、偏光方向が透過偏光板142の透過偏光軸と直交した状態にあり、視認側へは出射されない。一方、画素電極126に、液晶分子を配向させる電圧が印加された画素では、照射光が液晶層128を透過するとき、偏光軸が90度捩れることにより、偏光軸が透過偏光板142の透過偏光軸と平行になり、視認側に出射される。このように、液晶表示装置102は、個々の画素の電圧を制御することにより、表示領域114に画像を表示する。このとき、液晶表示装置102には、第2反射偏光板146が設けられているので、表示領域114に画像を表示するときでも、撮像素子104に影響を与えないようにすることができる。
【0049】
図9は、撮像素子104と重なる第1領域201に相当する領域に配置された画素に液晶分子を配向させる電圧が印加され、光変調素子120は、全体が散乱状態に制御されている状態を示す。第1領域201に相当する領域に配置された画素を透過する外光は、液晶層128で偏光軸が90度捩れる。その結果、液晶表示パネル110を透過した透過光の偏光軸は、第1反射偏光板144の透過偏光軸と平行になる。この状態では、外光が光変調素子120に照射されることになる。しかし、光変調素子120は散乱状態に制御されているため、外光は撮像素子104に直達しない。
【0050】
図10は、撮像素子104と重なる第1領域201に相当する領域に配置された画素に液晶分子を配向させる電圧が印加され、光変調素子120は、第1領域201が透明状態に制御され、第2領域202が散乱状態に制御されている状態を示す。この状態では、透過偏光板142を透過した光は偏光軸が90度捩れ、液晶表示パネル110を通過した光は第1反射偏光板144の透過偏光軸と同じ方向に偏光される。光変調素子120は、第1領域が透明状態に制御されているので、第1反射偏光板144を透過した光は、光変調素子120を透過する。さらに、第2反射偏光板146は、透過偏光軸が第1反射偏光板144と平行に配置されているので、光変調素子120を透過した光は撮像素子104に入射する。それにより、撮像素子104には外光が入射することとなり、液晶表示パネル110の前方を撮像することができる。
【0051】
このように、本発明の一実施形態によれば、照明ユニット112と撮像素子104との間に第2反射偏光板146を配置することにより、撮像素子104に照明光の影響を与えないようにすることができる。また、液晶表示パネル110を挟んで透過偏光板142と第1反射偏光板144とを、透過偏光軸をクロスニコルに配置すると共に、光変調素子120の散乱状態を画素と同期して制御することにより、画像を表示しつつ、撮像素子104で液晶表示パネル110の前方を撮像することができる。
【0052】
図11は、電子機器100の機能的構成の一例をブロック図として示す。電子機器100は、液晶表示装置102、撮像素子104、制御回路148、画像処理回路150、照明制御回路152、撮像素子制御回路154、読み出し回路156、記憶回路158、タッチセンサ制御回路160を組む。液晶表示装置102は、液晶表示パネル110、照明ユニット112を含む。また、液晶表示装置102は、液晶表示パネル110に重ねて配置されたタッチセンサ111を含む。タッチセンサ111の機能は、液晶表示パネル110に内蔵されていてもよい。
【0053】
制御回路148は、オペレーティングシステムに基づき動作する。制御回路148は、記憶回路158からデータを読み出し、画像処理回路150が液晶表示パネル110に画像を表示するように制御する。例えば、制御回路148は、操作画面のデータを画像処理回路150に出力する。画像処理回路150は、操作画面データに基づいて液晶表示パネル110に操作画面を表示するように動作する。また、制御回路148には、電気通信回線を介して取得されたビデオ信号が入力される。制御回路148は画像処理回路150にビデオ信号を出力し、画像処理回路150は液晶表示パネル110にビデオ信号を出力して画像を表示させる。制御回路148は、また、記憶回路158からアプリケーションプログラムを読み出し、画像処理回路150にアプリケーションプログラムを実行するデータを出力する。画像処理回路150は、アプリケーションプログラムが実行されるときに表示される画像を液晶表示パネル110に出力する。制御回路148は、さらに、画像処理回路150に画像を表示されるデータを出力するとき、これと同期するように照明制御回路152に照明ユニット112を駆動する命令を出力する。
【0054】
タッチセンサ制御回路160は、タッチセンサ111を駆動し、検出信号を制御回路148に出力する。制御回路148は、タッチセンサ制御回路160から出力される検出信号に基づき、操作画面の内容を書き換えるデータを画像処理回路150に出力し、また、アプリケーションプログラムの実行状態を制御する。
【0055】
例えば、タッチセンサ制御回路160によって、撮像を行うアプリケーションプログラムの実行が選択されたとき、制御回路148は、画像処理回路150に、液晶表示装置102が撮像モードに遷移する命令を出力する。画像処理回路150は、撮像素子104と重なる領域の画素を白表示とする画像データを出力する。制御回路148は、また、照明制御回路152に撮像モードに遷移する命令を出力する。照明制御回路152は、撮像素子104と重なる領域が透明状態となるように照明ユニット112を制御する。また、制御回路148は、画像処理回路150及び照明制御回路152の動作と同期するように、撮像素子制御回路154に制御信号を出力する。撮像素子制御回路154は、制御信号に基づいて撮像素子104を駆動する。
【0056】
撮像モードにおける、液晶表示装置102及び撮像素子104の動作は、図5及び図7を参照して説明される動作と同様である。撮像素子104で撮像された画像が、読み出し回路156によって読み出され、記憶回路158に記憶される。また、読み出し回路156によって読み出された画像データは、制御回路148に直接的に入力され、画像処理回路150によってリアルタイムに液晶表示装置102によって表示されてもよい。
【0057】
制御回路148は、画像処理回路150、照明制御回路152、読み出し回路156、タッチセンサ制御回路160、撮像素子制御回路154は、半導体集積回路によって形成される演算処理装置によって実現される。これらの各機能ブロックは、一つのCPUの中に集積されていてもよいし、マイクロプロセッサ、画像処理プロセッサ等の複数の専用集積回路がマザーボードに実装されて実現されていてもよい。また、記憶回路158は、半導体メモリによって実現される。半導体メモリとしては、揮発性のダイナミックメモリ、不揮性のフラッシュメモリによって実現される。
【0058】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、照明ユニット112に光変調素子120を用いることにより、液晶表示パネル110を照明する領域と照明しない領域とを設けることはできる。光変調素子120は、液晶表示パネル110を照明しない領域を透明状態とすることにより、この領域に重ねて配置される撮像素子104によって、液晶表示パネル110の前方を撮像可能な状態を形成することができる。このような構成により、本発明の一実施形態に係る電子機器100は、撮像素子104を液晶表示パネル110の背面に配置することができる。それにより、本発明の一実施形態に係る電子機器100は、狭額縁化を図ることができる。
【0059】
なお、本発明の一実施毛形態において電子機器100は、撮像素子104に代えて、光センサ(照度センサ、環境光センサ)が配置されてもよい。また、本発明の一実施毛形態において電子機器100は、光変調素子120が透過状態に制御される領域を複数設け、撮像素子104及び光センサをそれぞれ配置してもよい。それにより、筐体108のフレーム部分に撮像素子104、光センサを配置しなくても済むので、狭額縁化を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
100・・・電子機器、102・・・液晶表示装置、104、105・・・撮像素子、106・・・カバーパネル、108・・・筐体、110・・・液晶表示パネル、111・・・タッチセンサ、112・・・照明ユニット、114・・・表示領域、116・・・非表示領域、118・・・光源、120・・・光変調素子、122・・・第1基板、124・・・第2基板、126・・・画素電極、128・・・液晶層、130・・・第3基板、132・・・第4基板、134・・・調光層、136・・・液晶分子、138・・・第1電極、140・・・第2電極、142・・・透過偏光板、144・・・第1反射偏光板、146・・・第2反射偏光板、148・・・制御回路、150・・・画像処理回路、152・・・照明制御回路、154・・・撮像素子制御回路、156・・・読み出し回路、158・・・記憶回路、160・・・タッチセンサ制御回路、201・・・第1領域、202・・・第2領域
図1
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