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特許7315333建設機械の制御システム、及び建設機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】建設機械の制御システム、及び建設機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20230719BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230719BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
E02F3/43 E
E02F9/26 B
E02F9/22 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019016477
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122380
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179961(JP,A)
【文献】特許第6046320(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/26
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
前記建設機械の少なくとも一部を操作する操作装置と、
制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記チルトバケットと第1設計面との距離及び前記チルトバケットと前記第1設計面に隣接する第2設計面との距離に基づいて、前記第1設計面及び前記第2設計面から制御対象面を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御する作業機制御部と、
前記決定部により決定された前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させる表示制御部と、
前記操作装置が操作されることにより生成される操作データを取得する操作データ取得部と、を備え、
前記作業機制御部は、前記操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かを判定し、
前記特定操作が維持されている期間において、前記決定部によって決定された前記制御対象面を維持する、
建設機械の制御システム。
【請求項2】
アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
制御対象面を選択するために操作される入力装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記入力装置が操作されることにより生成される入力データを取得する入力データ取得部と、
取得した前記入力データに基づいて、第1設計面及び第2設計面から制御対象面を決定する決定部と、
前記決定部によって決定された前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させる表示制御部と、
前記決定部により決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御する作業機制御部と、
を備える建設機械の制御システム。
【請求項3】
前記特定操作は、前記アームを駆動する操作を含む、
請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項4】
前記特定操作は、前記建設機械の走行体を駆動する操作を含む、
請求項3に記載の建設機械の制御システム。
【請求項5】
アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
前記チルトバケットと第1設計面との距離及び前記チルトバケットと前記第1設計面に隣接する第2設計面との距離に基づいて、前記第1設計面及び前記第2設計面から制御対象面を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御する作業機制御部と、
前記決定部により決定された前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させる表示制御部と、
前記建設機械の少なくとも一部を操作する操作装置が操作されることにより生成される操作データを取得する操作データ取得部と、を備え、
前記決定部は、前記第1設計面及び前記第2設計面のうち前記チルトバケットとの距離が短い設計面を制御対象面に決定し、
前記作業機制御部は、前記操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かを判定し、
前記制御対象面が前記第1設計面に決定されている場合において、前記作業機制御部は、前記チルトバケットとの距離が短い設計面が前記第1設計面から前記第2設計面に変化しても、前記特定操作が維持されている期間において、前記制御対象面を前記第1設計面に維持した状態で前記チルト軸を制御する、
建設機械の制御システム。
【請求項6】
アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、
前記チルトバケットと記第1設計面との距離及び前記チルトバケットと前記第1設計面に隣接する第2設計面との距離に基づいて、前記第1設計面及び前記第2設計面から制御対象面を決定することと、
決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御することと、
決定された前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させることと、
操作装置が操作されることにより生成される操作データを取得することと、
前記操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かを判定することと、
前記特定操作が維持されている期間において、決定された前記制御対象面を維持することと、
を含む建設機械の制御方法。
【請求項7】
アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、
制御対象面を選択するために操作された入力装置の操作により生成される入力データを取得することと、
前記入力データに基づいて、第1設計面及び前記第1設計面に隣接する第2設計面から制御対象面を決定することと、
決定された前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させることと、
決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御することと、
を含む建設機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の制御システム、及び建設機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、施工対象の目標形状を示す目標施工データに基づいてチルトバケットを制御する建設機械の制御システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6046320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標施工データが第1設計面及び第1設計面に隣接する第2設計面を含む場合がある。第1設計面に追従するようにチルトバケットを制御する場合、建設機械の運転者は、作業機を駆動するための操作装置を操作して、チルトバケットを第1設計面に近付ける必要がある。チルトバケットを第1設計面に近付けることに時間を要してしまうと、作業効率が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、チルトバケットを有する建設機械の作業効率の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、アーム及びチルトバケットを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、前記チルトバケットと第1設計面との距離及び前記チルトバケットと前記第1設計面に隣接する第2設計面との距離に基づいて、前記第1設計面及び前記第2設計面から制御対象面を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記制御対象面に基づいて、前記チルトバケットのチルト軸を制御する作業機制御部と、前記制御対象面と前記制御対象面以外の面とを異なる表示形態で表示装置に表示させる表示制御部と、を備える建設機械の制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、チルトバケットを有する建設機械の作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る建設機械の一例を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る建設機械の制御システムの一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る建設機械を模式的に示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係るバケットを模式的に示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図6図6は、第1実施形態に係る決定部の処理の一例を説明するための模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係る建設機械の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態に係る建設機械の動作の一例を説明するための平面図である。
図9図9は、第1実施形態に係る建設機械の動作の一例を説明するための斜視図である。
図10図10は、第1実施形態に係る建設機械の動作の一例を説明するための模式図である。
図11図11は、第1実施形態に係る表示装置の表示例を示す模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係る建設機械の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、本実施形態に係るコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
以下の説明においては、3次元の車体座標系(X,Y,Z)を規定して、各部の位置関係について説明する。車体座標系とは、建設機械に固定された原点を基準とする座標系をいう。車体座標系は、建設機械に設定された原点を基準として規定方向に延在するX軸と、X軸と直交するY軸と、X軸及びY軸のそれぞれと直交するZ軸とによって規定される。X軸と平行な方向をX軸方向とする。Y軸と平行な方向をY軸方向とする。Z軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸を中心とする回転又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZ方向とする。
【0011】
[第1実施形態]
<建設機械>
図1は、本実施形態に係る建設機械100の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明においては、建設機械100を適宜、油圧ショベル100、と称する。
【0012】
図1に示すように、油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機1と、作業機1を支持する旋回体2と、旋回体2を支持する走行体3とを備える。旋回体2は、運転者が搭乗する運転室4を有する。運転室4には、運転者が着座するシート4Sが配置される。旋回体2は、走行体3に支持された状態で旋回軸RXを中心に旋回可能である。
【0013】
走行体3は、一対の履帯3Cを有する。履帯3Cの回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、走行体3がタイヤを有してもよい。
【0014】
作業機1は、旋回体2に支持される。作業機1は、旋回体2に連結されるブーム6と、ブーム6の先端部に連結されるアーム7と、アーム7の先端部に連結されるバケット8とを有する。バケット8は、刃先9を有する。本実施形態において、バケット8の刃先9は、ストレート形状の刃の先端部である。なお、バケット8の刃先9は、バケット8に設けられた凸形状の刃の先端部でもよい。
【0015】
ブーム6は、ブーム軸AX1を中心に旋回体2に対して回転可能である。アーム7は、アーム軸AX2を中心にブーム6に対して回転可能である。本実施形態において、バケット8は、チルトバケットである。バケット8は、バケット軸AX3及びチルト軸AX4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能である。ブーム軸AX1、アーム軸AX2、及びバケット軸AX3は、Y軸と平行である。チルト軸AX4は、バケット軸AX3と直交する。旋回軸RXは、Z軸と平行である。X軸方向は、旋回体2の前後方向である。Y軸方向は、旋回体2の車幅方向である。Z軸方向は、旋回体2の上下方向である。シート4Sに着座した運転者を基準として作業機1が存在する方向が前方である。
【0016】
<制御システム>
図2は、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御システム200の一例を示すブロック図である。図3は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す図である。図4は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す図である。
【0017】
図2に示すように、油圧ショベル100の制御システム200は、エンジン5と、作業機1を駆動する複数の油圧シリンダ10と、旋回体2を駆動する旋回モータ16と、走行体3を駆動する走行モータ15と、作動油を吐出する油圧ポンプ17と、油圧ポンプ17から吐出された作動油を複数の油圧シリンダ10、走行モータ15、及び旋回モータ16のそれぞれに分配するバルブ装置18と、旋回体2の位置データを算出する車体位置演算装置20と、作業機1の角度θを検出する角度検出装置30と、油圧ショベル100の少なくとも一部を操作する操作装置40と、制御装置50と、表示装置80と、入力装置90とを備える。
【0018】
作業機1は、油圧シリンダ10が発生する動力により作動する。油圧シリンダ10は、油圧ポンプ17から供給された作動油に基づいて駆動する。油圧シリンダ10は、ブーム6を作動させるブームシリンダ11と、アーム7を作動させるアームシリンダ12と、バケット8を作動させるバケットシリンダ13及びチルトシリンダ14とを含む。ブームシリンダ11は、ブーム軸AX1を中心にブーム6を回転させる動力を発生する。アームシリンダ12は、アーム軸AX2を中心にアーム7を回転させる動力を発生する。バケットシリンダ13は、バケット軸AX3を中心にバケット8を回転させる動力を発生する。チルトシリンダ14は、チルト軸AX4を中心にバケット8を回転させる動力を発生する。
【0019】
以下の説明においては、バケット軸AX3を中心とするバケット8の回転を適宜、バケット回転、と称し、チルト軸AX4を中心とするバケット8の回転を適宜、チルト回転、と称する。
【0020】
旋回体2は、旋回モータ16が発生する動力により旋回する。旋回モータ16は、油圧モータであり、油圧ポンプ17から供給された作動油に基づいて駆動する。旋回モータ16は、旋回軸RXを中心に旋回体2を旋回させる動力を発生する。
【0021】
走行体3は、走行モータ15が発生する動力により走行する。走行モータ15は、油圧モータであり、油圧ポンプ17から供給された作動油に基づいて駆動する。走行モータ15は、走行体3を前進又は後進させる動力を発生する。
【0022】
エンジン5は、旋回体2に搭載される。エンジン5は、油圧ポンプ17を駆動するための動力を発生する。
【0023】
油圧ポンプ17は、油圧シリンダ10、旋回モータ16、及び走行モータ15を駆動するための作動油を吐出する。
【0024】
バルブ装置18は、油圧ポンプ17から供給された作動油を複数の油圧シリンダ10、旋回モータ16、及び走行モータ15に分配する複数のバルブを有する。バルブ装置18は、複数の油圧シリンダ10のそれぞれに供給される作動油の流量を調整する。油圧シリンダ10に供給される作動油の流量が調整されることにより、作業機1の作動速度が調整される。バルブ装置18は、旋回モータ16に供給される作動油の流量を調整する。旋回モータ16に供給される作動油の流量が調整されることにより、旋回体2の旋回速度が調整される。バルブ装置18は、走行モータ15に供給される作動油の流量を調整する。走行モータ15に供給される作動油の流量が調整されることにより、走行体3の走行速度が調整される。
【0025】
車体位置演算装置20は、旋回体2の位置データを算出する。旋回体2の位置データは、旋回体2の位置、旋回体2の姿勢、及び旋回体2の方位を含む。車体位置演算装置20は、旋回体2の位置を算出する位置演算器21と、旋回体2の姿勢を算出する姿勢演算器22と、旋回体2の方位を算出する方位演算器23とを有する。
【0026】
位置演算器21は、旋回体2の位置として、グローバル座標系における旋回体2の位置を算出する。位置演算器21は、旋回体2に配置される。グローバル座標系とは、地球に固定された原点を基準とする座標系をいう。グローバル座標系は、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって規定される座標系である。GNSSとは、全地球航法衛星システムをいう。全地球航法衛星システムとして、GPS(Global Positioning System)が例示される。GNSSは、複数の測位衛星を有する。GNSSは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される位置を検出する。旋回体2にGPSアンテナが設けられる。GPSアンテナは、GPS衛星から電波を受信して、受信した電波に基づいて生成した信号を位置演算器21に出力する。位置演算器21は、GPSアンテナから供給された信号に基づいて、グローバル座標系における旋回体2の位置を算出する。位置演算器21は、例えば図3に示すような、旋回体2の代表点Oの位置を算出する。図3に示す例において、旋回体2の代表点Oは、旋回軸RXに設定される。なお、代表点Oは、ブーム軸AX1に設定されてもよい。
【0027】
姿勢演算器22は、旋回体2の姿勢として、グローバル座標系における水平面に対する旋回体2の傾斜角度を算出する。姿勢演算器22は、旋回体2に配置される。姿勢演算器22は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。水平面に対する旋回体2の傾斜角度は、車幅方向における旋回体2の傾斜角度を示すロール角度α、及び前後方向における旋回体2の傾斜角度を示すピッチ角度βを含む。
【0028】
方位演算器23は、旋回体2の方位として、グローバル座標系における基準方位に対する旋回体2の方位を算出する。基準方位は、例えば北である。方位演算器23は、旋回体2に配置される。方位演算器23は、ジャイロセンサを含む。なお、方位演算器23は、GPSアンテナから供給された信号に基づいて方位を算出してもよい。基準方位に対する旋回体2の方位は、基準方位と旋回体2の方位とがなす角度を示すヨー角度γを含む。
【0029】
角度検出装置30は、作業機1の角度θを検出する。角度検出装置30は、作業機1に配置される。図3及び図4に示すように、作業機1の角度θは、Z軸に対するブーム6の角度を示すブーム角度θ1と、ブーム6に対するアーム7の角度を示すアーム角度θ2と、アーム7に対するバケット回転方向のバケット8の角度を示すバケット角度θ3と、XY平面に対するチルト回転方向のバケット8の角度を示すチルト角度θ4とを含む。
【0030】
角度検出装置30は、ブーム角度θ1を検出するブーム角度検出器31と、アーム角度θ2を検出するアーム角度検出器32と、バケット角度θ3を検出するバケット角度検出器33と、チルト角度θ4を検出するチルト角度検出器34とを有する。角度検出装置30は、油圧シリンダ10のストロークを検出するストロークセンサを含んでもよいし、ロータリーエンコーダのような作業機1の角度θを検出する角度センサを含んでもよい。角度検出装置30がストロークセンサを含む場合、角度検出装置30は、ストロークセンサの検出データに基づいて、作業機1の角度θを算出する。
【0031】
操作装置40は、油圧シリンダ10、旋回モータ16、及び走行モータ15を駆動するために運転者に操作される。操作装置40は、運転室4に配置される。運転者により操作装置40が操作されることにより、作業機1が作動する。操作装置40は、油圧ショベル100の運転者に操作されるレバーを含む。操作装置40のレバーは、右操作レバー41と、左操作レバー42と、チルト操作レバー43とを含む。
【0032】
中立位置にある右操作レバー41が前方に操作されると、ブーム6が下げ動作し、後方に操作されると、ブーム6が上げ動作する。中立位置にある右操作レバー41が右方に操作されると、バケット8がダンプ動作し、左方に操作されると、バケット8が掘削動作する。
【0033】
中立位置にある左操作レバー42が前方に操作されると、アーム7がダンプ動作し、後方に操作されると、アーム7が掘削動作する。中立位置にある左操作レバー42が右方に操作されると、旋回体2が右旋回し、左方に操作されると、旋回体2が左旋回する。
【0034】
チルト操作レバー43が操作されると、バケット8がチルト回転する。
【0035】
また、操作装置40は、不図示の走行レバーを含む。走行レバーが操作されることにより、走行体3の前進又は後進が切り換えられる。走行レバーが操作れることにより、走行体3の走行速度が調整される。
【0036】
表示装置80は、表示データを表示する。表示装置80は、運転室4に配置される。表示装置80として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0037】
入力装置90は、入力データを制御装置50に入力するために運転者により操作される。入力装置90は、運転室4に配置される。入力装置90として、コンピュータ用キーボード、マウス、タッチパネル、操作スイッチ、及び操作ボタンのような、運転者の手によって操作される接触式入力装置が例示される。なお、入力装置90は、管理者の音声によって操作される音声入力装置でもよい。
【0038】
<制御装置>
図5は、本実施形態に係る制御装置50の一例を示す機能ブロック図である。制御装置50は、車体位置データ取得部51と、角度データ取得部52と、操作データ取得部53と、入力データ取得部54と、目標施工データ取得部55と、バケット位置データ算出部56と、決定部57と、記憶部60と、作業機制御部61と、表示制御部62とを有する。
【0039】
車体位置データ取得部51は、車体位置演算装置20から旋回体2の位置データを取得する。旋回体2の位置データは、旋回体2の位置、旋回体2の姿勢、及び旋回体2の方位を含む。
【0040】
角度データ取得部52は、角度検出装置30から作業機1の角度θを示す角度データを取得する。作業機1の角度データは、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、及びチルト角度θ4を含む。
【0041】
操作データ取得部53は、操作装置40が操作されることにより生成される操作データを取得する。操作装置40の操作データは、操作装置40が操作された量を含む。操作装置40には、レバーが操作された量を検出する操作量センサが設けられる。操作データ取得部53は、操作装置40の操作量センサから操作装置40の操作データを取得する。操作データは、作業機1を作動させるために生成された操作データ、旋回体2を旋回させるために生成された操作データ、及び走行体3を走行させるために生成された操作データを含む。
【0042】
入力データ取得部54は、入力装置90が操作されることにより生成される入力データを取得する。
【0043】
目標施工データ取得部55は、施工対象の目標形状を示す目標施工データCSを取得する。目標施工データCSは、油圧ショベル100による施工後の3次元の目標形状を示す。本実施形態において、目標施工データCSは、車体座標系において規定される。なお、目標施工データCSは、グローバル座標系において規定されてもよい。本実施形態においては、目標施工データ供給装置70により、目標施工データCSが生成される。目標施工データ取得部55は、目標施工データ供給装置70から目標施工データを取得する。目標施工データ供給装置70は、油圧ショベル100の遠隔地に設けられてもよい。目標施工データ供給装置70で生成された目標施工データCSは、通信システムを介して制御装置50に送信されてもよい。なお、目標施工データ供給装置70により生成された目標施工データが記憶部60に記憶されてもよい。目標施工データ取得部55は、記憶部60から目標施工データCSを取得してもよい。目標施工データCSは、車体座標系において規定される。
【0044】
バケット位置データ算出部56は、バケット8に設定された規定点RPの位置データを算出する。バケット位置データ算出部56は、車体位置データ取得部51により取得された旋回体2の位置データと、角度データ取得部52により取得された作業機1の角度データと、記憶部60に記憶されている作業機データとに基づいて、バケット8に設定される規定点RPの位置データを算出する。
【0045】
図3及び図4に示すように、作業機データは、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット幅L5を含む。ブーム長さL1は、ブーム軸AX1とアーム軸AX2との距離である。アーム長さL2は、アーム軸AX2とバケット軸AX3との距離である。バケット長さL3は、バケット軸AX3とバケット8の刃先9との距離である。チルト長さL4は、バケット軸AX3とチルト軸AX4との距離である。バケット幅L5は、バケット8の幅方向の寸法である。作業機データは、バケット8の形状及び寸法を示すバケット外形データを含む。バケット外形データは、バケット8の外面の輪郭を含むバケット8の外面データを含む。バケット外形データは、バケット8の所定部位を基準としたバケット8の複数の規定点RPの座標データを含む。
【0046】
バケット位置データ算出部56は、旋回体2の代表点Oに対する複数の規定点RPそれぞれの相対位置を算出する。また、バケット位置データ算出部56は、複数の規定点RPそれぞれの絶対位置を算出する。
【0047】
バケット位置データ算出部56は、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット外形データを含む作業機データと、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、及びチルト角度θ4を含む作業機角度データとに基づいて、代表点Oに対する複数の規定点RPのそれぞれの相対位置を算出することができる。図3に示すように、代表点Oは、旋回体2の旋回軸RXに設定される。なお、代表点Oは、ブーム軸AX1に設定されてもよい。
【0048】
バケット位置データ算出部56は、車体位置演算装置20によって算出された旋回体2の絶対位置と、代表点Oとバケット8との相対位置とに基づいて、バケット8の絶対位置を算出可能である。旋回体2の絶対位置と代表点Oとの相対位置は、油圧ショベル100の諸元データから導出される既知データである。バケット位置データ算出部56は、旋回体2の絶対位置を含む位置データと、代表点Oとバケット8との相対位置と、作業機データと、作業機角度データとに基づいて、バケット8の複数の規定点RPのそれぞれの絶対位置を算出することができる。
【0049】
決定部57は、目標施工データ取得部55により取得された目標施工データCSと、バケット位置データ算出部56により取得されたた規定点RPの位置データから、バケット8の制御に使用する制御対象面Fcを決定する。
【0050】
図6は、本実施形態に係る決定部57の処理の一例を説明するための模式図である。図6に示すように、目標施工データCSは、複数の設計面Fを含む。設計面Fは、施工対象の目標形状を示す。
【0051】
決定部57は、目標施工データCSの複数の設計面Fから、バケット8の制御に使用する制御対象面Fcを決定する。また、決定部57は、目標施工データCSの複数の設計面Fから、バケット8の制御に使用しない非制御対象面Fnを決定する。本実施形態において、バケット8の制御は、少なくともバケット8のチルト軸AX4の制御を含む。バケット8のチルト軸AX4の制御は、チルト回転方向におけるバケット8の角度(位置)を示すチルト角度θ4、チルト回転方向におけるバケット8の回転速度、及びチルト回転方向におけるバケット8の回転加速度の少なくとも一つの制御を含む。
【0052】
なお、バケット8の制御は、バケット8のバケット軸AX3の制御を含んでもよい。バケット8のバケット軸AX3制御は、バケット回転方向におけるバケット8の角度(位置)を示すバケット角度θ3、バケット回転方向におけるバケット8の回転速度、及びバケット回転方向におけるバケット8の回転加速度の少なくとも一つの制御を含む。
【0053】
バケット8は、制御対象面Fcに基づいてチルト軸AX4を制御される。決定部57は、目標施工データの複数の設計面Fから、バケット8のチルト軸AX4の制御に使用する制御対象面Fcを決定する。また、決定部57は、目標施工データの複数の設計面Fから、バケット8のチルト軸の制御に使用しない非制御対象面Fnを決定する。バケット8のチルト軸AX4の制御に使用される制御対象面Fcは、目標施工データCSの複数の設計面Fのうち、バケット8との距離が最も短い設計面Fに決定される。本実施形態において、複数の設計面Fを含む目標施工データCSは、車体座標系において規定される。バケット8(規定点RP)の位置データも、車体座標系において規定される。決定部57は、目標施工データCSのうち、バケット位置データ算出部56により算出されたバケット8との距離(垂直距離)が最も短い点APを決定する。決定部57は、点APを含む設計面Fを、バケット8との距離が最も短い制御対象面Fcに決定する。
【0054】
バケット8のチルト軸AX4の制御に使用されない非制御対象面Fnは、制御対象面Fcの周囲の少なくとも一部に配置される。制御対象面Fcと非制御対象面Fnとは隣接する。制御対象面Fcとバケット8との距離は、非制御対象面Fnとバケット8との距離よりも短い。
【0055】
また、決定部57は、点AP及びバケット8を通りバケット軸AX3と直交する作業機動作平面WPを決定する。作業機動作平面WPは、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つの動作によりバケット8が移動する動作平面であり、車体座標系におけるXZ平面と平行である。
【0056】
また、決定部57は、作業機動作平面WPと目標施工データCSとの交線であるラインLXを決定する。また、決定部57は、点APを通り目標施工データCSにおいてラインLXと交差するラインLYを決定する。
【0057】
決定部57は、目標施工データ取得部55により取得された目標施工データCSと、バケット位置データ算出部56により取得された規定点RPの位置データに基づいて決定された制御対象面Fcが、前回の制御対象面Fbから切り換わっているか否かを判定する。制御対象面Fcが前回の制御対象面Fbと同じ場合には、制御対象面Fcを前回の制御対象面Fbに維持する。
【0058】
決定部57は、制御対象面Fcが前回の制御対象面Fbから切り換わっている場合には、操作データ取得部53により取得された操作データに基づいて、作業機1の特定操作が維持されているか否かを判定する。作業機1の特定操作が維持されている場合には、制御対象面Fcを前回の制御対象面Fbに維持する。特定操作が維持されていない場合には、目標施工データCSと、規定点RPの位置データに基づく制御対象面Fcを維持する。
【0059】
作業機制御部61は、決定部57により決定された制御対象面Fcに基づいて、バケット8が設計面Fを掘り込まないように、バケット8のチルト軸AX4を制御する。また、作業機制御部61は、決定部57により決定された制御対象面Fcに基づいて、バケット8が設計面Fを掘り込まないように、バケット8のバケット軸AX3を制御する。また、作業機制御部61は、バケット8が設計面Fを掘り込まないように、ブーム6を制御する。すなわち、作業機制御部61は、バケット8が制御対象面Fcに追従するように、少なくともチルト軸AX4の制御を含む作業機1の制御を実行する。
【0060】
作業機制御部61は、ラインLXに沿って、ブーム6及びアーム7を移動させたり、バケット8をバケット回転させたりする。また、作業機制御部61は、ラインLYに沿って、バケット8をチルト回転させる。作業機制御部61は、チルト回転方向におけるバケット8と制御対象面FcのラインLYとの相対角度が維持されるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する。
【0061】
表示制御部62は、表示装置80に表示データを表示させる。表示制御部62は、決定部57により決定された制御対象面Fcと制御対象面Fc以外の面とを異なる表示形態で表示装置80に表示させる。表示制御部62は、決定部57により決定された制御対象面Fcと非制御対象面Fnとを異なる表示形態で表示装置80に表示させる。
【0062】
<制御方法>
図7は、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0063】
目標施工データ取得部55は、目標施工データCSを取得する(ステップS10)。
【0064】
車体位置データ取得部51は、車体位置演算装置20から旋回体2の位置データを取得する。角度データ取得部52は、角度検出装置30から作業機1の角度データを取得する。バケット位置データ算出部56は、旋回体2の位置データと、作業機1の角度データと、記憶部60に記憶されている作業機データとに基づいて、バケット8(規定点RP)の位置を算出する。
【0065】
目標施工データCSは、第1設計面F1と、第1設計面F1に隣接する第2設計面F2とを含む。第1設計面F1の勾配と第2設計面F2の勾配とは異なる。決定部57は、バケット8の位置データと、目標施工データCSとに基づいて、バケット8と第1設計面F1との距離d1、及びバケット8と第2設計面F2との距離d2を算出する(ステップS20)。
【0066】
本実施形態において、距離d1及び距離d2は、車体座標系において規定される。なお、距離d1及び距離d2は、グローバル座標系において規定されてもよい。
【0067】
決定部57は、バケット8と第1設計面F1との距離d1及びバケット8と第2設計面F2との距離d2に基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcを決定する(ステップS30)。
【0068】
以下の説明においては、一例として、距離d1が距離d2よりも短く、第1設計面F1が制御対象面Fcに決定され、第1設計面F1に隣接する第2設計面F2が非制御対象面Fnに決定されることとする。
【0069】
図8は、本実施形態に係る油圧ショベル100の動作の一例を説明するための平面図である。図9は、本実施形態に係る油圧ショベル100の動作の一例を説明するための斜視図である。図8及び図9に示すように、運転者は、チルト軸AX4を制御されるバケット8が、第1設計面F1の第1位置P1から第2位置P2を経て第3位置P3に移動するように、操作装置40を操作する。第1位置P1は、旋回体2から遠い第1設計面F1の位置である。第2位置P2は、第1位置P1よりも旋回体2に近い第1設計面F1の位置である。第3位置P3は、第2位置P2よりも旋回体2に近い第1設計面F1の位置である。
【0070】
第1設計面F1は、XY平面に対して傾斜する斜面である。運転者は、チルト軸AX4を制御されるバケット8が旋回体2に近付くように、操作装置40を操作して少なくともアーム7を駆動することにより、施工対象に斜面を形成することができる。
【0071】
なお、図8及び図9に示すように、車幅方向の旋回体2の中心の位置と第1設計面F1の中心の位置とが異なる場合、バケット8が第1設計面F1を掘り込まないように、運転者は、操作装置40を操作して、旋回体2を旋回させながら作業機1を作動させてもよい。
【0072】
決定部57は、制御対象面Fcが切り換わったか否かを判定する。すなわち、決定部57は、バケット8と第1設計面F1との距離d1及びバケット8と第2設計面F2との距離d2に基づいて、制御対象面Fcが第1設計面F1から第2設計面F2に切り換わったか否かを判定する(ステップS40)。
【0073】
ステップS40において、制御対象面Fcが第1設計面F1から第2設計面F2に切り換わったと判定された場合(ステップS40:Yes)、ステップS50に進む。
【0074】
ステップS40において、制御対象面Fcが第1設計面F1から第2設計面F2に切り換わっていないと判定された場合(ステップS40:No)、すなわち制御対象面Fcが第1設計面F1に維持されている場合、ステップS70に進む。
【0075】
操作装置40の操作データは、操作データ取得部53により取得される。決定部57は、操作データ取得部53により取得された操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かを判定する(ステップS50)。
【0076】
本実施形態において、特定操作は、バケット8が第1位置P1から第3位置P3に移動するように、アーム7を駆動する操作である。決定部57は、アーム7を駆動するための操作装置40(左操作レバー42)の操作が継続されているか否かを判定する。
【0077】
ステップS50において、特定操作が維持されていると判定された場合(ステップS50:Yes)、決定部57は、特定操作が維持されている期間において、制御対象面Fcを第2設計面F2に切り換えることなく、第1設計面F1に維持する(ステップS60)。
【0078】
ステップS50において、特定操作が維持されていないと判定された場合(ステップS50:No)、決定部57は、第1設計面F1及び第2設計面F2のうちバケット8との距離が短い設計面Fを制御対象面Fcに決定し、ステップS70に進む。
【0079】
例えば、バケット8が第1位置P1から第3位置P3に向かって移動しているときに、運転者がアーム7を操作する操作装置40(左操作レバー42)が操作を辞めてしまい、第1設計面F1及び第2設計面F2のうち、運転者がアーム7の操作を辞めた時点におけるバケット8との距離が短い設計面Fが第1設計面F1である場合、作業機制御部61は、バケット8の刃先9と第1設計面F1とが平行になるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する。一方、第1設計面F1及び第2設計面F2のうち、運転者がアーム7の操作を辞めた時点におけるバケット8との距離が短い設計面Fが第2設計面F2である場合、作業機制御部61は、バケット8の刃先9と第2設計面F2とが平行になるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する。
【0080】
表示制御部62は、決定部57により決定された制御対象面Fcと制御対象面Fc以外の面とを異なる表示形態で表示装置80に表示させる(ステップS70)。
【0081】
作業機制御部61は、決定部57により決定された制御対象面Fcである第1設計面F1に基づいて、バケット8の刃先9と第1設計面F1とが平行となるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する(ステップS80)。
【0082】
図10は、本実施形態に係る油圧ショベル100の動作の一例を説明するための模式図である。図10は、バケット8が第1位置P1、第2位置P2、及び第3位置P3のそれぞれに移動したときのバケット8の刃先9と第1設計面F1との相対角度を示す。
【0083】
図10に示すように、第1位置P1及び第2位置P2のそれぞれにおいては、第1設計面F1及び第2設計面F2のうち、バケット8との距離が短い設計面Fは、第1設計面F1である。そのため、決定部57は、第1設計面F1及び第2設計面F2のうちバケット8との距離が短い第1設計面F1を制御対象面Fcに決定する。
【0084】
図10に示すように、例えば第3位置P3において、バケット8との距離が短い設計面Fが第1設計面F1から第2設計面F2に変化する場合がある。本実施形態においては、制御対象面Fcが第1設計面F1に決定されている場合において、決定部57は、バケット8との距離が短い設計面Fが第1設計面F1から第2設計面F2に変化しても、特定操作(アーム7を駆動する操作)が維持されている期間において、制御対象面Fcを第1設計面F1に維持し、作業機制御部61は、制御対象面Fcに基づいて、バケット8のチルト軸AX4を制御する。すなわち、制御対象面Fcが第1設計面F1に決定されている場合において、作業機制御部61は、バケット8との距離が短い設計面が第1設計面F1から第2設計面F2に変化しても、特定操作(アーム7を駆動する操作)が維持されている期間において、チルト回転方向におけるバケット8と制御対象面Fc(第1設計面F1)との相対角度が維持されるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する。
【0085】
図11は、本実施形態に係る表示装置80の表示例を示す模式図である。図11に示すように、表示制御部62は、目標施工データCSに基づいて、第1設計面F1及び第1設計面F1に隣接する第2設計面F2を表示装置80に表示させる。本実施形態において、第1設計面F1の勾配と第2設計面F2の勾配とは異なる。図11に示すように、第1設計面F1と第2設計面F2とにより、溝(谷)が形成される。第1設計面F1及び第2設計面F2のそれぞれは平坦である。第1設計面F1と第2設計面F2とにより、アルファベットの「V」状の溝が形成される。
【0086】
表示制御部62は、制御対象面Fcと非制御対象面Fnとを異なる表示形態で表示装置80に表示させる。第1設計面F1が制御対象面Fcに決定され、第2設計面F2が非制御対象面Fnに決定された場合、表示制御部62は、第1設計面F1と第2設計面F2とを異なる表示形態で表示装置80に表示させる。図11に示す例において、表示制御部62は、制御対象面Fcである第1設計面F1を指し示す図形データ81を第1設計面F1の近傍に表示させる。非制御対象面Fnである第2設計面F2の近傍には図形データ81は表示されない。運転者は、表示装置80を見ることにより、第1設計面F1と第2設計面F2とのどちらが制御対象面Fcであるかを、視覚を通じて認識することができる。
【0087】
運転者は、表示装置80を見ながら、バケット8が制御対象面Fcである第1設計面F1に近付くように、すなわち、バケット8が第1設計面F1に対向(正対)するように、操作装置40を操作する。運転者は、操作装置40を操作して、作業機1を駆動したり、旋回体2を旋回させたりすることにより、バケット8を制御対象面Fcである第1設計面F1に近付けることができる。制御対象面Fcである第1設計面F1が第2設計面F2とは異なる表示形態で表示されているので、運転者は、表示装置80を見ながら、短時間で円滑にバケット8を第1設計面F1に近付けることができる。
【0088】
なお、制御対象面Fcと非制御対象面Fnとが表示装置80に異なる表示形態で表示されればよい。例えば制御対象面Fcが第1の色(例えば赤色)で表示され、非制御対象面Fnが第1の色とは異なる第2の色(例えば黄色)で表示されてもよい。例えば制御対象面Fcが間欠点灯(点滅)するように表示され、非制御対象面Fnが連続点灯するように表示されてもよい。
【0089】
作業者は、バケット8が第2設計面F2に沿って移動するように、操作装置40を操作して、少なくともアーム7を駆動する。なお、作業者は、操作装置40を操作して、ブーム6を駆動してもよいし、アーム7及びブーム6の両方を駆動してもよい。
【0090】
すなわち、第2設計面F2が制御対象面Fcに決定され、第1設計面F1が非制御対象面Fnに決定された場合、表示制御部62は、例えば制御対象面Fcである第2設計面F2を指し示す図形データ81を第2設計面F2の近傍に表示させる。
【0091】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、バケット8と第1設計面F1との距離d1及びバケット8と第2設計面F2との距離d2に基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcが決定される。表示制御部62は、制御対象面Fcと制御対象面Fc以外の面とを異なる表示形態で表示装置80に表示させる。これにより、運転者は、第1設計面F1と第2設計面F2とのどちらが制御対象面Fcであるかを、視覚を通じて認識することができる。そのため、運転者は、表示装置80を見ながら、バケット8が制御対象面Fcである第1設計面F1に近付くように、すなわち、バケット8が第1設計面F1に対向(正対)するように、操作装置40を操作することができる。運転者は、表示装置80を見ながら、短時間で円滑にバケット8を第1設計面F1に近付けることができる。バケット8を第1設計面F1に近付けることに要する時間が短縮されるので、油圧ショベル100の作業効率の低下が抑制される。
【0092】
本実施形態においては、操作装置40の操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かが判定され、特定操作が維持されている期間において、制御対象面Fcが維持された状態で、チルト軸AX4が制御される。例えば制御対象面Fcが第1設計面F1に決定されている場合において、バケット8との距離が短い設計面が第1設計面F1から第2設計面F2に変化しても、特定操作が維持されている期間においては、制御対象面Fcが第1設計面F1に維持される。これにより、運転者の意思に反して、バケット8がチルト回転することが抑制される。すなわち、第1設計面F1に基づいて施工対象を施工しようとする意思が運転者にあり、第1設計面F1に基づいてチルト軸AX4を制御されているバケット8を第1位置P1から第3位置にP3に移動するためにアーム7を操作しているにもかかわらず、第1設計面F1に基づいてバケット8のチルト軸AX4が制御されている状態から第2設計面F2に基づいてバケット8のチルト軸AX4が制御される状態に変化してしまうと、バケット8が設計面Fを大きく掘り込んでしまう可能性がある。本実施形態においては、操作装置40(左操作レバー42)が操作されている期間においては、作業機制御部61は、第1設計面F1に基づいて施工対象を施工しようとする意思が運転者にあると認定する。第1設計面F1に基づいて施工対象を施工しようとする意思が運転者にあると認定した場合、作業機制御部61は、バケット8と第2設計面F2との距離d2がバケット8と第1設計面F1との距離d1よりも短くなっても、第1設計面F1に基づいてバケット8のチルト軸AX4を制御する。これにより、運転者の意思が尊重され、バケット8が設計面Fを掘り込んでしまうことが抑制される。
【0093】
なお、本実施形態において、特定操作は、アーム7を駆動する操作であることとした。特定操作は、油圧ショベル100の走行体3を駆動する操作でもよい。例えばチルト軸AX4を制御されるバケット8を第1位置P1から第3位置P3に移動する場合、アーム7を駆動せずに、走行体3を後進させる場合がある。作業機制御部61は、走行体3を操作する操作装置40(走行レバー)の操作データに基づいて、特定操作が維持されているか否かを判定してもよい。
【0094】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0095】
本実施形態においては、制御対象面Fc及び非制御対象面Fnが入力装置90の入力データに基づいて決定される例について説明する。
【0096】
図12は、第2実施形態に係る建設機械の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0097】
目標施工データ取得部55は、第1設計面F1及び第2設計面F2を含む目標施工データCSを取得する(ステップS10)。
【0098】
表示制御部62は、第1設計面F1及び第2設計面F2を含む目標施工データCSを表示装置80に表示させる(ステップS15)。
【0099】
運転者は、表示装置80を見ながら、入力装置90を操作して、表示装置80に表示されている第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcを選択する。入力データ取得部54は、入力装置90の操作により生成される入力データを取得する(ステップS25)。
【0100】
表示制御部62は、表示装置80に、例えば第1設計面F1の断面を示す第1ラインと第2設計面F2の断面を示す第2ラインとを表示させてもよい。表示制御部62は、表示装置80の表示画面において、第1ラインと第2ラインとを異なる角度で表示させてもよい。これにより、運転者は、第1設計面F1を示す画像データと第2設計面F2を示す画像データとを区別することができる。
【0101】
決定部57は、入力データ取得部54により取得された入力データに基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcを決定する(ステップS30)。
【0102】
表示制御部62は、第1設計面F1と第2設計面F2とを異なる表示形態で表示装置80に表示させる(ステップS35)。
【0103】
作業機制御部61は、決定部57により決定された制御対象面Fcである第1設計面F1に基づいて、バケット8の刃先9と第1設計面F1とが平行となるように、バケット8のチルト軸AX4を制御する(ステップS80)。
【0104】
なお、第1設計面F1と第2設計面F2とは、運転者が視覚を通じて区別できる表示形態で表示されればよい。例えば、第1設計面F1を示す画像データが第1の色(例えば赤色)で表示され、第2設計面F2を示す画像データが第1の色とは異なる第2の色(例えば黄色)で表示されてもよい。第1設計面F1を示す画像データが間欠点灯(点滅)するように表示され、第2設計面F2を示す画像データが連続点灯するように表示されてもよい。また、第1設計面F1及び第2設計面F2を示す文字データが表示装置80に表示されてもよい。
【0105】
以下の説明においては、一例として、運転者により、第1設計面F1が制御対象面Fcに選択され、決定部87により、第1設計面F1が制御対象面Fcに決定され、第1設計面F1に隣接する第2設計面F2が非制御対象面Fnに決定されることとする。
【0106】
車体位置データ取得部51は、車体位置演算装置20から旋回体2の位置データを取得する。角度データ取得部52は、角度検出装置30から作業機1の角度データを取得する。バケット位置データ算出部56は、旋回体2の位置データと、作業機1の角度データと、記憶部60に記憶されている作業機データとに基づいて、バケット8(規定点RP)の位置を算出する。
【0107】
また、作業者は、バケット8が第1設計面F1に沿って移動するように、操作装置40を操作して、少なくともアーム7を駆動する。なお、作業者は、操作装置40を操作して、ブーム6を駆動してもよいし、アーム7及びブーム6の両方を駆動してもよい。
【0108】
運転者は、チルト軸AX4を制御されるバケット8が第1位置P1から第3位置P3に移動するように、操作装置40を操作する。
【0109】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、入力装置90が操作されることにより生成された入力データに基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcが決定される。すなわち、運転者は、第1設計面F1と第2設計面F2とのどちらを制御対象面Fcにするかを、運転者自身で決定することができる。そのため、運転者は、バケット8が制御対象面Fcである第1設計面F1に近付くように、すなわち、バケット8が第1設計面F1に対向(正対)するように、操作装置40を操作することができる。運転者が希望の制御対象面Fcを選択するため、非制御対象面Fnにバケット8が近付いても、制御対象面Fcが切り換わって設計面Fを掘り込んでしまうことが抑制される。これにより、油圧ショベル100は、円滑に作業を実施することができる。また、バケット8を第1設計面F1に近付けることに要する時間が短縮されるので、油圧ショベル100の作業効率の低下が抑制される。
【0110】
[コンピュータシステム]
図13は、本実施形態に係るコンピュータシステム1000の一例を示すブロック図である。上述の制御装置50は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の制御装置50の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0111】
コンピュータシステム1000は、上述の実施形態に従って、第1設計面F1及び第1設計面F1に隣接する第2設計面F2を含み施工対象の目標形状を示す目標施工データを取得することと、バケット8と第1設計面F1との距離d1及びバケット8と第2設計面F2との距離d2に基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcを決定することと、決定された制御対象面Fcに基づいて、バケット8のチルト軸AX4を制御することと、制御対象面Fcと制御対象面Fc以外の面とを異なる表示形態で表示装置80に表示させることと、を実行することができる。
【0112】
また、コンピュータシステム1000は、上述の実施形態に従って、第1設計面F1及び第1設計面F1に隣接する第2設計面F2を含み施工対象の目標形状を示す目標施工データを取得することと、入力装置90の操作により生成される入力データを取得することと、入力データに基づいて、第1設計面F1及び第2設計面F2から制御対象面Fcを決定することと、決定された制御対象面Fcに基づいて、バケット8のチルト軸AX4を制御することと、を実行することができる。
【0113】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルであることとした。上述の実施形態で説明した構成要素は、油圧ショベルとは別の、作業機を有する建設機械に適用可能である。
【0114】
なお、上述の実施形態において、旋回体2を旋回させる旋回モータ16は、油圧モータでなくてもよい。旋回モータ16は、電力が供給されることにより駆動する電動モータでもよい。また、作業機1は、油圧シリンダ10によらずに、例えば電気モータのような電動アクチュエータが発生する動力により作動してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…作業機、2…旋回体、3…走行体、3C…履帯、4…運転室、4S…シート、5…エンジン、6…ブーム、7…アーム、8…バケット、9…刃先、10…油圧シリンダ、11…ブームシリンダ、12…アームシリンダ、13…バケットシリンダ、14…チルトシリンダ、15…走行モータ、16…旋回モータ、17…油圧ポンプ、18…バルブ装置、20…車体位置演算装置、21…位置演算器、22…姿勢演算器、23…方位演算器、30…角度検出装置、31…ブーム角度検出器、32…アーム角度検出器、33…バケット角度検出器、34…チルト角度検出器、40…操作装置、41…右操作レバー、42…左操作レバー、43…チルト操作レバー、50…制御装置、51…車体位置データ取得部、52…角度データ取得部、53…操作データ取得部、54…入力データ取得部、55…目標施工データ取得部、56…バケット位置データ算出部、57…決定部、60…記憶部、61…作業機制御部、62…表示制御部、70…目標施工データ供給装置、80…表示装置、90…入力装置、100…建設機械、200…制御システム、AX1…ブーム軸、AX2…アーム軸、AX3…バケット軸、AX4…チルト軸、F1…第1設計面、F2…第2設計面、Fc…制御対象面、Fn…非制御対象面。
図1
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