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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】可動コネクタ及びコネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20230719BHJP
   H01R 12/91 20110101ALI20230719BHJP
【FI】
H01R13/631
H01R12/91
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019038825
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145000
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛葉 大地
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229407(JP,A)
【文献】特開2007-018785(JP,A)
【文献】特開2017-220431(JP,A)
【文献】特開平11-265758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続相手と、前記接続相手と接続する可動コネクタと、を有するコネクタ組立体であって、
前記接続相手は、
第1側相手接触部を有する第1側相手端子と、
嵌合方向に直交する平面内の方向であって互いに垂直な方向である第1方向と第2方向のうち前記第1方向で前記第1側相手接触部と異なる位置に配置された第2側相手接触部を有する第2側相手端子と、
前記第1側相手端子及び前記第2側相手端子を保持する単一の相手ハウジングと、を備え、
前記可動コネクタは、
基板に固定される固定ハウジングと、
前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第1可動ハウジングと、
前記第1方向に前記第1可動ハウジングと並んで配置され、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第2可動ハウジングと、
前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第1可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第1側端子と、
前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第2可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第2側端子と、を備え、
前記第1側端子の前記接触部は、第1側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成されており、
前記第2側端子の前記接触部は、前記第1側相手接触部と前記第1方向で異なる位置に配置された第2側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成されており、
前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である、
コネクタ組立体。
【請求項2】
前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向の互いの間隔が狭まる方向と広がる方向の両方に相対移動可能である、
請求項1に記載のコネクタ組立体
【請求項3】
前記第1側端子の前記固定側被保持部は、当該第1側端子の前記可動側被保持部に対して前記第1方向一方側に配置され、
前記第2側端子の前記固定側被保持部は、当該第2側端子の前記可動側被保持部に対して前記第1方向他方側に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載のコネクタ組立体
【請求項4】
前記第1側端子は、前記第2方向に沿って複数配置され、
前記第2側端子は、前記第2方向に沿って複数配置される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のコネクタ組立体
【請求項5】
前記第1可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第1可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有し、
前記第2可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第2可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有し、
前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向で隣接して配置され、
前記第1可動ハウジングの前記上方向当接部は、当該第1可動ハウジングのうち前記第2可動ハウジングに隣接する側の一部にのみに形成され、
前記第2可動ハウジングの前記上方向当接部は、当該第2可動ハウジングのうち前記第1可動ハウジングに隣接する側の一部のみに形成されている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のコネクタ組立体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動コネクタ及びコネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動コネクタとして、特許文献1記載の可動コネクタ(1)が知られている。
【0003】
この可動コネクタ(1)は、基板に固定される固定ハウジング(3)と、固定ハウジング(3)に対して相対移動可能な可動ハウジング(4)と、端子(5)と、を備えている。端子(5)は、固定ハウジング(3)と可動ハウジング(4)とを架け渡しており、可動コネクタの長手方向(X方向)に沿って2列で配列されている。各端子(5)の可動部(5c)が変形することで可動ハウジング(4)が固定ハウジング(3)に対して相対移動する。また、各端子(5)の弾性腕(5e2)が、相手コネクタ(2)の相手端子(2a)に対して可動コネクタの短手方向(Y方向)から押圧接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-220431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、相手コネクタの相手接触部(相手端子における、可動コネクタの端子に接触する部分をいう。)は、可動コネクタの端子と同様に、可動コネクタの長手方向(X方向)に沿って2列に配列されている。しかしながら、2列に並んだ相手接触部同士のY方向での間隔は、製造公差の影響を受けるため、常に一定とは限らない。相手接触部のY方向の間隔に誤差が生じると、Y方向で相手接触部に押圧接触する端子の弾性腕の変位量も影響を受ける。
【0006】
そのため、例えば、上述の可動コネクタのように、接触部が相手接触部をY方向から挟持する一対の弾性腕を有している場合、一方の弾性腕のみが大きく変位する一方で、他方の弾性腕は相手接触部から離れてしまうおそれがある。また、接触部が相手接触部に対してY方向の一方側のみから接触する弾性腕を有する場合、弾性腕が相手接触部に接触できず導通接続できないおそれがある。
【0007】
以上のように、上述の可動コネクタには、第1方向(Y方向)で異なる位置に配置された相手接触部同士の第1方向(Y方向、つまり押圧接触方向)の間隔に誤差が生じた場合、相手端子と可動コネクタの端子との押圧接触状態がその誤差によって悪影響を受けてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、接続相手が備える第1方向で異なる位置に配置された複数の相手接触部に対し、第1方向から押圧接触する複数の端子を備える可動コネクタにおいて、複数の相手接触部同士の第1方向の間隔に誤差が生じても、適切な押圧接触状態を確保できる接続信頼性に優れた可動コネクタ及びコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る可動コネクタは、基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第1可動ハウジングと、嵌合方向に直交する平面内の方向であって互いに垂直な方向である第1方向と第2方向のうち前記第1方向に前記第1可動ハウジングと並んで配置され、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第2可動ハウジングと、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第1可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第1側端子と、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第2可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第2側端子と、を備える可動コネクタであって、前記第1側端子の前記接触部は、第1側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成され、前記第2側端子の前記接触部は、前記第1側相手接触部と前記第1方向で異なる位置に配置された第2側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成され、前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である。
なお、本開示における「嵌合方向」とは、可動コネクタに対して接続相手が接続される方向を意味し、例えば、後述の実施形態における下方向が「嵌合方向」に相当する。
【0010】
この態様では、可動コネクタが、基板に固定される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対移動可能な第1可動ハウジングと、固定ハウジングに対して相対移動可能な第2可動ハウジングと、を備える。第2可動ハウジングは、嵌合方向に直交する平面内の方向であって互いに垂直な方向である第1方向と第2方向のうち第1方向に第1可動ハウジングと並んで配置される。
【0011】
また、可動コネクタは、第1側端子と第2側端子とを備える。第1側端子は、固定ハウジングに保持される固定側被保持部、第1可動ハウジングに保持される可動側被保持部、固定側被保持部と可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、変形部が変形することで固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する。第2側端子は、固定ハウジングに保持される固定側被保持部、第2可動ハウジングに保持される可動側被保持部、固定側被保持部と可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、変形部が変形することで固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する。
このため、例えば、接続状態において基板に対して接続相手が相対移動した場合でも、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングが固定ハウジングに対して相対移動することで接続状態を良好に維持することができる。
【0012】
さらに、この態様では、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングが、第1方向の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である。
このため、第1側相手接触部と第2側相手接触部との第1方向の距離(以下「相手側距離」という。)に誤差が生じても、第1可動ハウジングと第2可動ハウジングとが相対移動して第1方向の互いの間隔を変化させることで、誤差を含んだ相手側距離に応じて第1側端子の接触部と第2側端子の接触部の第1方向の距離を変化させることができる。
【0013】
以上より、この態様によれば、接続相手が備える第1方向で異なる位置に配置された複数の相手接触部に対し、第1方向から押圧接触する複数の端子を備える可動コネクタにおいて、複数の相手接触部同士の第1方向の間隔に誤差が生じても、適切な押圧接触状態を確保できる接続信頼性に優れた可動コネクタとすることができる。
【0014】
なお、仮に、第1側端子の可動側被保持部と、第2側端子の可動側被保持部とが単一の可動ハウジングに保持される場合、当該可動ハウジングの成形精度や当該可動ハウジングに対する第1側端子及び第2側端子の組付け精度が、第1側端子の接触部と第2側端子の接触部との間隔に影響を与え、それが押圧接触状態に悪影響を与えるおそれもある。上記の態様では、このような課題も解決している。
【0015】
第2の態様に係る可動コネクタは、第1の態様において、前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向の互いの間隔が狭まる方向と広がる方向の両方に相対移動可能である。
【0016】
この態様では、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングは、第1方向の互いの間隔が狭まる方向と広がる方向の両方に相対移動可能である。このため、相手側距離が、第1側端子の接触部と第2側端子の接触部の第1方向の距離(第1側端子及び第2側端子が自由状態のときの距離)に対して長くても短くてもその差を吸収できる。
【0017】
第3の態様に係る可動コネクタは、第1又は第2の態様において、前記第1側端子の前記固定側被保持部は、当該第1側端子の前記可動側被保持部に対して前記第1方向一方側に配置され、前記第2側端子の前記固定側被保持部は、当該第2側端子の前記可動側被保持部に対して前記第1方向他方側に配置されている。
【0018】
この態様では、第1側端子の固定側被保持部は、当該第1側端子の可動側被保持部に対して第1方向一方側に配置され、第2側端子の固定側被保持部は、当該第2側端子の可動側被保持部に対して第1方向他方側に配置される。このため、可動コネクタを第2方向において小型化できる。
【0019】
第4の態様に係る可動コネクタは、第1~第3の何れかの態様において、前記第1側端子は、前記第2方向に沿って複数配置され、前記第2側端子は、前記第2方向に沿って複数配置される。
【0020】
この態様によれば、複数の相手接触部がそれぞれの平滑面を第1方向(列間方向)に向けて配列されている場合に、第1側端子及び第2側端子の接触部を相手接触部の平滑面に押圧接触させることができる。
【0021】
第5の態様に係る可動コネクタは、第1~第4の何れかの態様において、前記第1可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第1可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有し、前記第2可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第2可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有し、前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向で隣接して配置され、前記第1可動ハウジングの前記上方向当接部は、当該第1可動ハウジングのうち前記第2可動ハウジングに隣接する側の一部にのみに形成され、
前記第2可動ハウジングの前記上方向当接部は、当該第2可動ハウジングのうち前記第1可動ハウジングに隣接する側の一部のみに形成されている。
なお、本開示における「抜去方向」とは、可動コネクタに対する接続相手の接続が解除される方向、つまり「嵌合方向」に対して逆方向を意味する。例えば、後述の実施形態における上方向が「抜去方向」に相当する。
【0022】
この態様では、第1可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第1可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有し、第2可動ハウジングは、他の部材と当接することで当該第2可動ハウジングの抜去方向への移動範囲を制限する上方向当接部を有する。そして、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングは、第1方向で隣接して配置され、第1可動ハウジングの上方向当接部は、当該第1可動ハウジングのうち第2可動ハウジングに隣接する側の一部にのみに形成され、第2可動ハウジングの上方向当接部は、当該第2可動ハウジングのうち第1可動ハウジングに隣接する側の一部のみに形成されている。
このため、上方向当接部に当接する上方向規制部(他の部材)を第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングが隣接している付近の一箇所に形成することで、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングの両方の上方向の移動範囲を制限することができる。またこのため、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングの列間方向の移動範囲を維持しながらも、上方向規制部の列間方向の寸法を小さくすることができ、その結果、可動コネクタ10の列間方向での小型化が容易となる。
【0023】
第6の態様に係るコネクタ組立体は、接続相手と、前記接続相手と接続する可動コネクタと、を有するコネクタ組立体であって、前記接続相手は、第1側相手接触部を有する第1側相手端子と、嵌合方向に直交する平面内の方向であって互いに垂直な方向である第1方向と第2方向のうち前記第1方向で前記第1側相手接触部と異なる位置に配置された第2側相手接触部を有する第2側相手端子と、前記第1側相手端子及び前記第2側相手端子を保持する単一の相手ハウジングと、を備え、前記可動コネクタは、基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第1可動ハウジングと、前記第1方向に前記第1可動ハウジングと並んで配置され、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な第2可動ハウジングと、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第1可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第1側端子と、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部、前記第2可動ハウジングに保持される可動側被保持部、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部の間に位置する変形可能な変形部、及び、前記変形部が変形することで前記固定ハウジングに対して相対移動する接触部を有する第2側端子と、を備え、前記第1側端子の前記接触部は、第1側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成されており、前記第2側端子の前記接触部は、前記第1側相手接触部と前記第1方向で異なる位置に配置された第2側相手接触部に対し、前記第1方向から接触するように構成されており、前記第1可動ハウジング及び前記第2可動ハウジングは、前記第1方向の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である。
【0024】
この態様では、第1可動ハウジング及び第2可動ハウジングが、第1方向の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である。このため、相手側距離に誤差が生じても、第1可動ハウジングと第2可動ハウジングとが相対移動して第1方向の互いの間隔を変化させることで、誤差を含んだ相手側距離に応じて第1側端子の接触部と第2側端子の接触部の第1方向の距離を変化させることができる。
なお、本開示における「コネクタ組立体」という語は、接続相手と可動コネクタとが接続された状態であることを意味するものではない。未接続の接続相手及び可動コネクタも「コネクタ組立体」に相当する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、接続相手が備える第1方向で異なる位置に配置された複数の相手接触部に対し、第1方向から押圧接触する複数の端子を備える可動コネクタにおいて、複数の相手接触部同士の第1方向の間隔に誤差が生じても、適切な押圧接触状態を確保できる接続信頼性に優れた可動コネクタ及びコネクタ組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】可動コネクタの斜視図である。
図2】可動コネクタの断面斜視図である。
図3】固定ハウジングの斜視図である。
図4】前側可動ハウジングの斜視図である。
図5】後側可動ハウジングの斜視図である。
図6】複数の端子の斜視図である。
図7】接続状態のコネクタ組立体の斜視図である。
図8】接続相手の斜視図である。
図9】前側端子の斜視図である。
図10】後側端子の斜視図である。
図11】可動コネクタの平面図である。
図12】可動コネクタの断面図(Y方向に直交する断面図)である。
図13】接続相手の断面図(Y方向に直交する断面図)である。
図14】接続状態のコネクタ組立体の断面図(Y方向に直交する断面図)である。
図15】接続状態のコネクタ組立体の側面図(Y方向から見た図)である。
図16】前側可動ハウジングの斜視図(斜め下方から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
なお、説明の便宜上、各図の矢印Xをコネクタ前後方向前側、矢印Yをコネクタ左右方向左側、矢印Zをコネクタ上下方向上側とする。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、コネクタ前後、左右、上下を示すものとする。これらの方向は、使用状態での方向を限定するものではない。また、各図においては、図面を見易くする関係から、符号を省略している場合がある。
【0029】
図7には、本実施形態のコネクタ組立体Sが接続状態で示されている。コネクタ組立体Sは、接続相手60(図8参照)と、接続相手60に接続される可動コネクタ10(図1)と、を備える。
【0030】
(接続相手)
図8に示されるように、接続相手60は、相手ハウジング80と、複数の相手端子70A,70Bと、を備える。複数の相手端子70A,70Bは、単一の相手ハウジング80に保持されている。相手ハウジング80は、例えば合成樹脂の成形体である。相手ハウジング80の相手端子70A,70Bに対する保持は、圧入による保持やインサート成形による保持である。
【0031】
複数の相手端子70A,70Bは、左右方向に沿って前後2列に配列されている。すなわち、複数の相手端子70A,70Bは、左右方向をピッチ方向、前後方向を列間方向として配列されている。これにより、複数の相手端子70A,70Bは、列間方向一方側(前側)においてピッチ方向に並べられた複数の前側相手端子70A(「第1側相手端子」)と、列間方向他方側(後側)においてピッチ方向に並べられた複数の後側相手端子70B(「第2側相手端子」)と、から構成されている。
複数の相手端子70A,70Bは、何れも同一の構造とされる。そのため、前側相手端子70Aと後側相手端子70Bは、同一の構造となる。以下、単に相手端子70といった場合、前側相手端子70Aと後側相手端子70Bの両方を指す。
【0032】
図14に示されるように、相手端子70A,70Bの下部が、可動コネクタ10の端子20A,20Bと接触する。相手端子70A,70Bにおける、可動コネクタ10の端子20に接触する部分(本実施形態では下部)を相手接触部75A,75Bという(図13参照)。
【0033】
相手端子70A,70Bは、板材に打抜き加工などを施すことで製造される。したがって、図8に示されるように、相手端子70は、板材の状態で板材の平面を構成していた平滑面71と、打抜き加工により形成された切断面72と、を有する。そして、図11に示されるように、複数の相手端子70の相手接触部75A,75Bの各々は、平滑面71を列間方向に向けた状態で配列されている。このため、相手端子70の平滑面71が、可動コネクタ10の端子20と接触する(図14参照)。
【0034】
(可動コネクタ)
図1図2図12には、可動コネクタ10が示されている。
【0035】
可動コネクタ10は、基板91(図12参照)に固定される固定ハウジング30と、固定ハウジング30に対して相対移動可能な可動ハウジング40A,40Bと、を備える。
固定ハウジング30は、固定具50及び端子20A,20Bを介して基板91に固定される。可動ハウジング40A,40Bは、固定ハウジング30に対して相対移動可能に配置される前側可動ハウジング40A(「第1可動ハウジング」)と、後側可動ハウジング40B(「第2可動ハウジング」)と、から構成される。
【0036】
(端子)
可動コネクタ10は、複数の端子20A,20B(図6参照)を備える。
複数の端子20A,20Bは、前側可動ハウジング40Aに保持される前側端子20A(「第1側端子」)と、後側可動ハウジング40Bに保持される後側端子20B(「第2側端子」)と、から構成される。前側端子20A及び後側端子20Bは、共に複数設けられ、本実施形態では、同数(10個)設けられている。図14に示すように、前側端子20Aは、前側相手端子70Aと接触し、後側端子20Bは、後側相手端子70Bと接触する。
【0037】
前側端子20A及び後側端子20Bは、共に、単一の固定ハウジング30に保持される。したがって、前側端子20Aは、固定ハウジング30と前側可動ハウジング40Aとを架け渡し、後側端子20Bは、固定ハウジング30と後側可動ハウジング40Bとを架け渡す。
【0038】
複数の端子20A,20Bは、何れも同一の構造とされる。そのため、前側端子20Aと後側端子20Bは、同一の構造となる。以下、単に端子20といった場合、前側端子20Aと後側端子20Bの両方を指す。
【0039】
図10図9に示されるように、端子20は、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部22と、可動ハウジング40A,40Bに保持される可動側被保持部25A,26Bと、固定側被保持部22と可動側被保持部25A,26Bとの間の弾性変形可能な変形部23,24と、を有している。前側端子20Aの変形部23,24が変形することで、固定ハウジング30に対する前側可動ハウジング40Aの相対移動が許容され、後側端子20Bの変形部23,24が変形することで、固定ハウジング30に対する後側可動ハウジング40Bの相対移動が許容される。
【0040】
端子20は、基板91に半田付け等で固定される基板固定部21を有する。基板固定部21は基板91に形成された電気回路と接続される。その結果、端子20A,20Bと基板91の回路とが接続される。また、基板固定部21が基板91に固定されることで、端子20A,20Bを介して固定ハウジング30が基板91に固定される。
【0041】
端子20は、接続相手60の相手端子70と接触する接触部25B,26D,27Bを有する。接触部25B,26D,27Bは、変形部23,24に対して可動側被保持部25A,26B側に位置しており、変形部23,24が変形することで基板91や固定ハウジング30に対して相対移動する。
【0042】
端子20は、基板固定部21、固定側被保持部22、変形部23,24、可動側被保持部25A,26B及び接触部25B,26D,27Bを、一端側から他端側へ向けてこの順に有している。
【0043】
端子20は、板材に対し、打抜き加工や曲げ加工等を施すことで製造される。
【0044】
図6に示されるように、複数の前側端子20Aは、互いに同じ方向を向いた状態で、ピッチ方向に並んで配置される。複数の後側端子20Bも、互いに同じ方向を向いた状態で、ピッチ方向に並んで配置される。一方、前側端子20Aと後側端子20Bとは、互いに異なった方向を向けて配置される。具体的には、前側端子20Aと後側端子20Bは、互いの接触部25B,26D,27B同士を対向させた状態で配置される。換言すると、前側端子20Aは、接触部25B,26D,27Bを列間方向中央側に向けると共に固定側被保持部22や基板固定部21を列間方向外側に向けた状態とされ、後側端子20Bも、接触部25B,26D,27Bを列間方向中央側に向けると共に固定側被保持部22や基板固定部21を列間方向外側に向けた状態とされる。
【0045】
図10図9に示されるように、基板固定部21は、板厚方向を上下方向に向けている。基板固定部21は、一端側から他端側へ向けて、列間方向外側から内側へ延びている。基板固定部21の他端側は、板厚方向に曲げられた曲部を介して固定側被保持部22に繋がっている。
【0046】
固定側被保持部22は、板厚方向を列間方向に向けている。固定側被保持部22には、幅方向外側に突起が形成されている。この突起が固定ハウジング30に食い込むことで、固定側被保持部22が固定ハウジング30に保持される。固定側被保持部22は、固定ハウジング30に対して下側から上側へ向けて組付けられる。
【0047】
変形部23,24は、上方向が凸となるように板厚方向に曲げられた曲部23Bを有する山部23を含んで構成されている。山部23は、第1直線部23Aと、曲部23Bと、第2直線部23Cと、から構成されている。一端側から他端側へ向けて、第1直線部23Aは、斜め上方(上方かつ列間方向内側)に向かって延び、第2直線部23Cは、下方に向かって延びている。第1直線部23Aと固定側被保持部22との間には、板厚方向に曲げられた曲部が形成されている。
また、変形部23,24は、山部23と内側可動側被保持部25Aとを繋ぐ谷部24を含んで構成されている。谷部24は、曲部24A、第3直線部24B、曲部24C、及び第4直線部24Dから構成されている。一端側から他端側へ向けて、第3直線部24Bは、列間方向内側へ向かって延び、第4直線部24Dは、上方へ向かって延びている。
【0048】
可動側被保持部25A,26Bは、板厚方向を列間方向に向けている。可動側被保持部25A,26Bは、一端側から他端側に向けて、上方へ向かって延びている。可動側被保持部25A,26Bには、幅方向両側に突起が形成されている。この突起が前側可動ハウジング40A又は後側可動ハウジング40Bに食い込むことで、可動側被保持部25A,26Bが可動ハウジング40に保持される。可動側被保持部25A,26Bは、前側可動ハウジング40A又は後側可動ハウジング40Bに対して下側から上側へ向けて組み付けられる。
【0049】
接触部25B,26D,27Bは、相手端子70に対して両側から押圧接触するように構成されている。具体的には、接触部25B,26D,27Bは、相手端子70に対して列間方向内側から接触する内側接触部25Bと、相手端子70に対して列間方向外側から接触する外側接触部26D,27Bと、を有している。
【0050】
内側接触部25Bは、内側可動側被保持部25Aから曲部を介さずに上方へ延びた位置に形成されている。換言すると、内側可動側被保持部25A及び内側接触部25Bは、同一平面(列間方向に垂直な平面)上に位置している。更に換言すると、端子20は略平板状の平板部25を有しており、この平板部25は、可動ハウジング40に保持される内側可動側被保持部25Aとして機能すると共に、相手端子70に対して列間方向内側から接触する内側接触部25Bとして機能する。
【0051】
外側接触部26D,27Bは、嵌合方向(上下方向)に並んで2つの接触部を有する。すなわち、端子20は、嵌合方向手前側の第1外側接触部26Dと、嵌合方向奥側の第2外側接触部27Bと、を有する。第1外側接触部26Dは、平板部25の幅方向一方側から延出した第1腕部26の一部として形成され、第2外側接触部27Bは、平板部25の幅方向他方側から延出した第2腕部27の一部として形成されている。第1腕部26が平板部25から延出した位置は、第2腕部27が平板部25から延出した位置よりも下側とされている。第1腕部26が延出した位置、及び、第2腕部27が延出した位置は、共に内側可動側被保持部25Aよりも上側とされている。第2腕部27は、第2外側接触部27Bを弾性的に支持する弾性腕部27Aを有する(図10参照)。
【0052】
第1腕部26には、外側可動側被保持部26Bが形成されている。したがって、可動側被保持部25A,26Bは、平板部25の一部として形成された内側可動側被保持部25Aと、第1腕部26の一部として形成された外側可動側被保持部26Bと、から構成されている。また、第1腕部26は、第一腕部26の外側可動側被保持部26Bと平板部25とを連結する連結部26Aを有する。
【0053】
第1外側接触部26Dは、弾性腕部26Cを介して外側可動側被保持部26Bと接続されている。第2外側接触部27Bは、第1腕部26の弾性腕部26Cの列間方向内側に位置する。
【0054】
(固定ハウジング)
固定ハウジング30は、可動ハウジング40A,40Bに当接することで、可動ハウジング40A,40Bの列間方向外側、ピッチ方向両側及び上方向の移動範囲を規制する規制部(それぞれ「列間方向外側規制部」「ピッチ方向規制部」「上方向規制部」)を有する。
【0055】
図3に示されるように、固定ハウジング30は、コネクタ前部において左右方向に延在する前部30Aと、コネクタ後部において左右方向に延在する後部30Bと、コネクタ左側において前後方向に延在する左部30Cと、コネクタ右側において前後方向に延在する右部30Dと、から構成されている。これにより、固定ハウジング30は、平面視で矩形の枠形状とされ、図11に示されるように、枠内に前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bが配置される。
【0056】
固定ハウジング30は、端子20A,20Bの固定側被保持部22を保持する端子保持部(符号省略)を有する。端子保持部は、端子20A,20Bの固定側被保持部22が圧入されることで、端子20A,20Bを保持する。端子保持部は、前部30A及び後部30Bに形成されている。
【0057】
固定ハウジング30は、端子20の一部を保護する端子保護部31を有する。端子保護部31は、固定ハウジング30の前部30A及び後部30Bに形成されている。端子保護部31は、前後壁31Aと、上壁31Bと、左右壁31Dと、斜め壁31Cと、から構成されている。
図12に示されるように、前後壁31Aは、壁厚方向を前後方向に向け、端子20の変形部23に対して列間方向外側に配置される。上壁31Bは、壁厚方向を上下方向に向け、端子20の変形部23に対して上側に配置される。斜め壁31Cは、板厚方向を前後方向かつ上下方向の斜め方向に向けている。斜め壁31Cは、前後壁31Aの上端と上壁31Bの列間方向外側端とを接続している。左右壁31Dは、壁厚方向を左右方向(ピッチ方向)に向け、複数の端子20の変形部23に対してピッチ方向外側に配置される。左右壁31Dは、前後壁31A、上壁31B及び斜め壁31Cの各々のピッチ方向外側端と接続している。
【0058】
上壁31Bの列間方向内側端31B1(図3参照)は、端子20A,20Bの山部23よりも列間方向内側に位置する(図12参照)。
【0059】
上壁31Bの列間方向内側端31B1は、左右方向(ピッチ方向)に平行に直線状に延びている。左右壁31Dの列間方向内側端31D1は、上下方向に平行に直線状に延びている。上壁31Bの列間方向内側端31B1と、左右壁31Dの列間方向内側端31D1とは、列間方向の位置が一致している。
上壁31Bの列間方向内側端31B1と左右壁31Dの列間方向内側端31D1が、可動ハウジング40に当接することで、可動ハウジング40の列間方向の移動範囲が制限される。つまり、端子保護部31の上壁31B及び左右壁31Dが、「列間方向外側規制部」として機能する。
【0060】
固定ハウジング30は、上述したように、可動ハウジング40に当接することで可動ハウジング40の上方向の移動範囲を制限する「上方向規制部」を有する。
「上方向規制部」は、固定ハウジング30の左部30C及び右部30Dにそれぞれ形成されている。固定ハウジング30の右部30D及び左部30Cには、その下面が上方向に窪んだ窪部32が形成されており、窪部32の天面32T(図15参照)が「上方向規制部」として機能する。窪部32の天面32Tは、法線方向を下方向に向けた平面とされている。
【0061】
図11に示されるように、固定ハウジング30の右部30D及び左部30Cは、その前後方向中央部においてピッチ方向内側へ突出している。この突出した部分を内側突出部33という。図15に示すように、内側突出部33の下面は、窪部32の天面32Tと同一平面とされている(所謂面一)。また、図11に示されるように、内側突出部33のピッチ方向内側面が、可動ハウジング40に当接することで可動ハウジング40のピッチ方向の移動範囲を制限する「ピッチ方向規制部」として機能する。内側突出部33のピッチ方向内側面は、ピッチ方向内側を法線方向とする平面とされている。
【0062】
固定ハウジング30は、端子保護部31の内側に形成された複数の柱部34を有する(図3図12参照)。柱部34は、端子保護部31の前後壁31A及び斜め壁31Cから列間方向内側へ突出している。各柱部34は、隣合う端子20の固定側被保持部22の間に位置し、柱部34の間に固定側被保持部22が圧入される。複数の柱部34は、固定ハウジング30の端子保護部31を補強するようにも機能する。
【0063】
固定ハウジング30は、基板91への固定時の位置決め用のボス35を有する(図3図12参照)。ボス35は、左部30C及び右部30Dに形成されており、左部30C及び右部30Dの窪部32に対して列間方向外側に位置する。
【0064】
固定ハウジング30は、固定具50を保持する固定具保持部36を有する(図3参照)。固定具保持部36は、平面視で固定ハウジング30の四隅に設けられ、合計4つである。固定具保持部36の位置は、ピッチ方向で窪部32と重なっている。
【0065】
なお、本実施形態では、端子保護部31が「列間方向規制部」として機能する例を説明したが、窪部32の前後面32U(図15参照)が「列間方向規制部」として機能してもよい。例えば、窪部32の列間方向の寸法を狭めたり、前後の端子保護部31の前後間隔を広げることにより実現できる。
【0066】
(可動ハウジング)
前側可動ハウジング40A(図4参照)及び後側可動ハウジング40B(図5参照)は、互いに同一の構造とされている。単に可動ハウジング40というときは、前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bの両方を指す。
【0067】
可動ハウジング40は、例えば合成樹脂の成形体である。
【0068】
図12に示されるように、可動ハウジング40は、内部に端子20の一部が収容される貫通孔(符号省略)を有する。貫通孔は、複数形成されており、1つの端子20に対して1つの貫通孔が対応する。貫通孔は、上方へ向けて開放されており、この部分が、相手端子70が挿入される挿入口48となっている。
【0069】
可動ハウジング40は、他の部材と当接することでその移動範囲が制限される。すなわち、可動ハウジング40は、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40の列間方向外側への移動範囲を制限する「列間方向外側当接部」と、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40の列間方向内側への移動範囲を制限する「列間方向内側当接部」と、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40のピッチ方向の移動範囲を制限する「ピッチ方向当接部」と、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40の上方向の移動範囲を制限する「上方向当接部」と、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40の下方向の移動範囲を制限する「下方向当接部」と、を有する。
【0070】
図4図5に示されるように、可動ハウジング40は、外形状が略直方体形状の本体部41と、本体部41から水平方向に突出した突出部42と、を有する。
【0071】
上述の複数の貫通孔は、本体部41を上下方向に貫通するように形成されている。
本体部41は、上面41T、列間方向外側面41S、列間方向内側面41U、及び一対のピッチ方向外側面41Pを有している。上面41Tは、法線方向を上方向に向けた平面とされ、列間方向外側面41Sは、法線方向を列間方向外側に向けた平面とされ、列間方向内側面41Uは、法線方向を列間方向内側に向けた平面とされ、ピッチ方向外側面41Pは、法線方向をピッチ方向外側に向けた平面とされている。
【0072】
本体部41の列間方向外側面41Sが固定ハウジング30に当接することで「列間方向外側当接部」として機能する。本体部41のピッチ方向外側面41Pが固定ハウジング30に当接することで「ピッチ方向当接部」として機能する。本体部41の列間方向内側面41Uが隣合う可動ハウジング40の本体部41と当接することで「列間方向内側当接部」として機能する。
以上のように、可動ハウジング40のうち本体部41が、他の部材と当接することで当該可動ハウジング40の水平方向(本実施形態では、基板91の面に沿う方向)の移動範囲を制限する当接部として機能する。
【0073】
図15に示されるように、突出部42の上面42Tが、「上方向当接部」として機能する。突出部42の上面42Tは、法線方向を上方向に向けた平面とされている。図4図5に示されるように、突出部42は、本体部41のピッチ方向外側面41Pからピッチ方向外側に突出している。したがって、突出部42は、「ピッチ方向当接部」よりもピッチ方向外側に位置している。
【0074】
突出部42が突出した位置は、ピッチ方向外側面41Pの下端部かつ列間方向内側端部とされている。突出部42の前後寸法(列間方向の寸法)は、可動ハウジング40全体の前後寸法よりも小さい。突出部42の列間方向内側端と、可動ハウジング40全体の列間方向内側端とは、列間方向の位置が一致している。
【0075】
図16に示されるように、本体部41は、ピッチ方向外側面41Pを形成する一対のピッチ方向外側壁部43と、列間方向外側面41Sを形成する列間方向外側壁部44と、列間方向内側面41Uを形成する列間方向内側壁部45と、を含んで構成される。また、本体部41は、ピッチ方向外側壁部43、列間方向外側壁部44及び列間方向内側壁部45で囲まれる空間をピッチ方向で区画する複数の区画壁46を含んで構成されている。
【0076】
ピッチ方向外側壁部43の下面43Uは、法線方向を下方向に向けた平面とされている。ピッチ方向外側壁部43の下面43Uには、下方向に隆起した隆起部43U1が形成されている。この隆起部43U1が、「下方向当接部」とされている。隆起部43U1は、1つの可動ハウジング40に対して複数(本実施形態では4つ)形成されている。複数の隆起部43U1は、列間方向に並べられた2つの隆起部43U1を含んで構成されている。具体的には、一方のピッチ方向外側壁部43の下面43Uには、列間方向に離間した2つの隆起部43U1が形成されており、他方のピッチ方向外側壁部43の下面43Uにも、列間方向に離間した2つの隆起部43U1が形成されている。図12に示されるようにピッチ方向から見た場合、相手端子70の挿入軸(以下「相手挿入軸49A、49B」という。)は、列間方向に離間した2つの隆起部43U1の間に位置している。
【0077】
図16に示されるように、列間方向外側壁部44、列間方向内側壁部45及び複数の区画壁46の下面は、ピッチ方向外側壁部43の下面43Uよりも高い位置に形成され、基板91に当接する「下方向当接部」としては機能しない。また、図16に示されるように、ピッチ方向外側壁部43の下面43Uと、突出部42の下面42Uとは、所謂面一とされ、同一平面上に位置している。
【0078】
前側可動ハウジング40A(の本体部41)の列間方向内側面41Uと、後側可動ハウジング40B(の本体部41)の列間方向内側面41Uとは、列間方向に対向した状態となっている。そのため、何れか一方の可動ハウジング40が列間方向内側に移動すると、一方の可動ハウジング40の列間方向内側面41Uが他方の可動ハウジング40の列間方向内側面41Uに当接する。図12から判るように、前側可動ハウジング40Aの相手挿入軸49Aと、後側可動ハウジング40Bの相手挿入軸49Bとの列間方向の距離(可変距離D2)は、互いの列間方向内側面41U、41Uが接触している状態で最小値をとる。この最小値は、前側相手端子70Aと後側相手端子70Bとの距離(相手側距離D1、図13参照)の所望の値(設計値)よりも小さい。このため、前側相手端子70Aと後側相手端子70Bとの距離(相手側距離D1)が製造公差で設定値より小さくなった場合でも、前側可動ハウジング40Aと後側可動ハウジング40Bとが列間方向で近づくことで製造公差を吸収することができる。製造公差を吸収できればよいため、可変距離D2の最小値と相手側距離D1の設計値との差は、例えば0.2mm以下(好ましくは0.15mm以下)とされている。可変距離D2の最小値と、相手側距離D1の設計値との差を小さくすることで、可動コネクタ10の列間方向の寸法拡大を抑えることができる。
【0079】
また、可動ハウジング40は、端子20の可動側被保持部25A,26Bを保持する端子保持部(符号省略)を有している。端子保持部は、端子20A,20Bの可動側被保持部25A,26Bが圧入されることで、当該可動側被保持部25A,26Bを保持する。端子保持部は、上述の貫通孔の内部に形成されている。
【0080】
また、可動ハウジング40は、相手端子70が挿入される挿入口48を有する。挿入口48は、可動ハウジング40の本体部41の上壁を上下方向に貫通するように形成されている。相手端子70は、挿入口48を通過して端子20A,20Bの接触部25B,26D,27Bにまで到達する。挿入口48は、ピッチ方向に沿って前後2列に複数形成されている。
【0081】
可動ハウジング40は、相手端子70を誘導する誘導面48Rを有する。誘導面48Rは、挿入口48に形成されている。誘導面48Rは、挿入口48の外側(上側)に向けて、挿入口48の大きさが次第に広がるように形成されている。誘導面48Rは、可動ハウジング40に対する相手端子70の列間方向及びピッチ方向の位置を適切な位置まで誘導するように機能する。
【0082】
挿入口48の形状は、平面視で、各辺の方向を列間方向及びピッチ方向に向けた矩形(具体的には正方形)であり、誘導面48Rは、その法線方向が互いに異なる4つの面から構成されている(図11参照)。
【0083】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0084】
本実施形態では、可動コネクタ10が、基板91に固定される固定ハウジング30と、固定ハウジング30に対して相対移動可能な前側可動ハウジング40Aと、固定ハウジング30に対して相対移動可能な後側可動ハウジング40Bと、を備える。後側可動ハウジング40Bは、嵌合方向(±Z方向)に直交する平面(XY平面)内の方向であって互いに垂直な方向である第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)のうち第1方向(X方向)に前側可動ハウジング40Aと並んで配置される。
【0085】
また、可動コネクタ10は、前側端子20Aと後側端子20Bとを備える。前側端子20Aは、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部22、前側可動ハウジング40Aに保持される可動側被保持部25A,26B、固定側被保持部22と可動側被保持部25A,26Bの間に位置する変形可能な変形部23,24、及び、変形部23,24が変形することで固定ハウジング30に対して相対移動する接触部25B,26D,27Bを有する。後側端子20Bは、固定ハウジング30に保持される固定側被保持部22、後側可動ハウジング40Bに保持される可動側被保持部25A,26B、固定側被保持部22と可動側被保持部25A,26Bの間に位置する変形可能な変形部23,24、及び、変形部23,24が変形することで固定ハウジング30に対して相対移動する接触部25B,26D,27Bを有する。
このため、例えば、接続状態において基板91に対して接続相手60が相対移動した場合でも、前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bが固定ハウジング30に対して相対移動することで接続状態を良好に維持することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bが、第1方向(X方向)の互いの間隔を変化させるように相対移動可能である。
このため、前側相手接触部75Aと後側相手接触部75Bとの第1方向(X方向)の距離(「相手側距離D1」、図13参照)に誤差が生じても、前側可動ハウジング40Aと後側可動ハウジング40Bとが相対移動して第1方向(X方向)の互いの間隔を変化させることで、誤差を含んだ相手側距離D1に応じて前側端子20Aの接触部25B,26D,27Bと後側端子20Bの接触部25B,26D,27Bの第1方向(X方向)の距離(「可変距離D2」、図12参照)を変化させることができる。
【0087】
以上より、本実施形態によれば、接続相手60が備える第1方向(X方向)で異なる位置に配置された複数の相手接触部75A,75Bに対し、第1方向(X方向)から押圧接触する複数の端子20を備える可動コネクタ10において、複数の相手接触部75A,75B同士の第1方向の間隔(「相手側距離D1」、図13参照)に誤差が生じても、適切な押圧接触状態を確保できる。
【0088】
また、本実施形態では、前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bは、第1方向(X方向)の互いの間隔が狭まる方向と広がる方向の両方に相対移動可能である。具体的には、図12から判るように、前側可動ハウジング40Aと後側可動ハウジング40Bとの間に隙間C1が形成されている。このため、相手側距離D1が、前側端子20Aの接触部25B,26D,27Bと後側端子20Bの接触部25B,26D,27Bの第1方向(X方向)の可変距離D2の初期値(前側端子20A及び後側端子20Bが自由状態のときの距離)に対して長くても短くてもその差を吸収できる。
特に、本実施形態では、可変距離D2の最小値が、相手側距離D1の設定値よりも小さい。このため、相手側距離D1が、製造公差などによって設定値よりも小さくなった場合でも、設定値よりも小さくなった相手側距離D1に応じて可変距離D2を変化させることができる。
【0089】
また、本実施形態では、前側端子20A及び後側端子20Bが共に自由状態のときの可変距離D2(可変距離D2の初期値)が、相手側距離D1(図15参照)の設定値と略同一である。このため、可動コネクタ10と接続相手60との接続がスムーズである。なお、上述の「略同一」の「略」は、誤差として±3%を許容する趣旨である。
【0090】
また、本実施形態では、可変距離D2の最小値と、相手側距離D1の設定値との差(以下、「設定値と最小値との差」という。)が小さい。このため、設定値と最小値との差が大きな態様と比較して、可動コネクタ10の第1方向(X方向)の寸法を小型化しやすい。
相手側距離D1の設定値と可変距離D2の最小値との差(本実施形態ではC1)は、例えば、可動ハウジング40の第1方向(X方向)の移動範囲(C1+2×C2)の1/8以下であり、より好ましくは1/10以下である。
但し、設定値と最小値との差が小さすぎると、相手側距離D1の製造公差を吸収できなくなるので、設定値と最小値との差は、例えば、0.10mm以上が好ましい。
なお、本実施形態では、相手側距離D1の設定値と、可変距離D2の初期値(端子20が自由状態のときの値)とが略同一なので、上述の「相手側距離D1の設定値」は、「可変距離D2の初期値」と読み替えて理解することもできる。
【0091】
また、本実施形態では、図9などに示されるように、前側端子20Aの固定側被保持部22は、当該前側端子20Aの可動側被保持部25A,26Bに対して第1方向一方側(+X側)に配置され、後側端子20Bの固定側被保持部22は、当該後側端子20Bの可動側被保持部25A,26Bに対して第1方向他方側(-X側)に配置される。このため、可動コネクタ10を第2方向(Y方向)において小型化できる。
特に、本実施形態のように、前側端子20A及び後側端子20Bを第2方向(Y方向)に複数並べて配置する場合において、第2方向(Y方向)に並べる端子同士の間隔を狭くすることが容易である。
【0092】
また、本実施形態では、前側可動ハウジング40Aの「上方向当接部」が、前側可動ハウジング40Aのうち後側可動ハウジング40B側の一部にのみに形成され、後側可動ハウジング40Bの「上方向当接部」が、後側可動ハウジング40Bのうち前側可動ハウジング40A側の一部のみに形成されている。このため、「上方向当接部」に当接する「上方向規制部」を可動コネクタ10の第1方向(列間方向)中央付近の一箇所に形成することで、前側可動ハウジング40A及び後側可動ハウジング40Bの両方の上方向の移動範囲を制限させることができる。またこのため、可動ハウジング40の列間方向の移動範囲を維持しながら、「上方向規制部」の列間方向の寸法(本実施形態では窪部32の列間方向の寸法、図15参照)を小さくすることができ、その結果、可動コネクタ10の列間方向での小型化が容易となる。
【0093】
また、本実施形態では、前側端子20Aの変形部23を保護する前側の端子保護部31が、前側可動ハウジング40Aの前側に配置され、後側端子20Bの変形部23を保護する後側の端子保護部31が、後側可動ハウジング40Bの後側に配置される。そして、前側の端子保護部31が、前側可動ハウジング40Aの前側(列間方向一方側)の移動範囲を制限する「列間方向外側規制部」として機能し、後側の端子保護部31が、後側可動ハウジング40Bの後側(列間方向他方側)の移動範囲を制限する「列間方向外側規制部」として機能する。
このため、「列間方向外側規制部」の位置が高い位置となり、可動ハウジング40の姿勢が傾くことを効果的に抑制できる。
【0094】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、端子20を一端側から他端側へ延びる部材であると把握したとき、端子20の可動側被保持部と接触部とが別々の部分に形成された例を説明した。しかし、本開示の「端子」はこれに限定されず、可動側被保持部と接触部とが同一の部分であってもよい。換言すると、端子の一部分が、可動ハウジングに保持されると共に相手接触部に接触するように端子が構成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、端子20が一体である例を示したが、本開示の「端子」はこれに限定されない。例えば、「端子」は、基板固定部及び固定側被保持部の部分と、変形部、可動側被保持部及び接触部の部分とが別々に形成され、両者が接続されたものであってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、端子20が接触部(第1外側接触部26D)を支持する弾性腕部26Cを有する例を説明したが、本開示の「端子」は、これに限定されず、接触部を支持する弾性腕部を有しなくてもよい。
【0097】
また、相手側距離D1の設定値は、典型的には接続相手60の設計図に表れた値である。但し、相手側距離D1の設定値は、複数の前側相手端子70Aの中心軸と、複数の後側相手端子70Bの中心軸との第1方向の距離の平均値から推定することもできる。
【0098】
上記実施形態では、前側端子20A及び後側端子20Bが、共に、単一の固定ハウジング30に保持される例を説明した。しかし、本開示の「固定ハウジング」はこれに限定されず、例えば特許文献1のように分割された固定ハウジングであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 可動コネクタ
20A 前側端子(第1側端子)
20B 後側端子(第2側端子)
22 固定側被保持部
23,24 変形部
25A,26B 可動側被保持部
25B,26D,27B 接触部
30 固定ハウジング
40A 前側可動ハウジング(第1可動ハウジング)
40B 後側可動ハウジング(第2可動ハウジング)
42 突出部
42T 上面(上方向当接部)
60 接続相手
70A 前側相手端子(第1側相手端子)
70B 後側相手端子(第2側相手端子)
75A 前側相手接触部(第1側相手接触部)
75B 後側相手接触部(第2側相手接触部)
80 相手ハウジング
91 基板
S コネクタ組立体
図1
図2
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