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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】位置推定装置、及び位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20230719BHJP
   G01S 5/18 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S5/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019056068
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159705
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「IoT/5G時代の様々な電波環境に対応した最適通信方式選択技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】阿野 進
(72)【発明者】
【氏名】栗原 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義規
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200166(JP,A)
【文献】特開2009-065394(JP,A)
【文献】特開2001-313972(JP,A)
【文献】特開2017-142180(JP,A)
【文献】特開2013-205398(JP,A)
【文献】特開2008-178006(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062435(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 5/18- 5/30
H04B 17/00-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な位置推定装置であって、
複数の位置において未知の波源からの波を受信して、受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力取得部が受信電力に応じた波を受信した時点の前記位置推定装置の位置である受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備えた位置推定装置。
【請求項2】
1以上の未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、最適化された目的関数の値である最適値を推定波源数で除算した波源当たりの最適値が最適化されるように、推定波源数をも推定する、位置推定装置。
【請求項3】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、地図情報にアクセスして推定位置と受信位置との間の伝搬経路の種類を示す空間情報を取得し、当該空間情報に応じた伝搬損失を用いて、前記目的関数の最適化を行う、位置推定装置。
【請求項4】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、推定受信電力と受信電力との差に、当該推定受信電力の算出で用いる推定位置と受信位置との間の空間に関する空間情報に応じた重みを付けた目的関数を最適化する、位置推定装置。
【請求項5】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記未知の波源からの波は、指向性を有する機器で受信され、
受信電力に応じた波が受信された際の前記指向性を有する機器の方向を取得する方向取得部をさらに備え、
前記推定部は、推定位置の方向と前記指向性を有する機器の方向との角度に応じた伝搬損失を用いる、位置推定装置。
【請求項6】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、複数の初期値を用いた逐次的な演算処理によって前記目的関数の最適化を行う、位置推定装置。
【請求項7】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、逐次的な演算処理によって前記目的関数の最適化を行い、前記逐次的な演算処理において、目的関数が局所最適値に収束している場合には、ステップサイズをより大きい値に変更し、目的関数が大域最適値に収束している場合には、ステップサイズをより小さい値に変更する、位置推定装置。
【請求項8】
前記未知の波源は、電波の送信源であり、
前記電波は、アンテナによって受信される、請求項1から請求項のいずれか記載の位置推定装置。
【請求項9】
未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備え、
前記未知の波源は、音波の発信源であり、
前記音波は、マイクロフォンまたはハイドロフォンによって受信される、位置推定装置。
【請求項10】
移動可能な位置推定装置において処理される位置推定方法であって、
複数の位置において未知の波源からの波を受信して、受信電力を取得するステップと、
前記受信電力を取得するステップにおいて受信電力に応じた波を受信した時点の前記位置推定装置の位置である受信位置を取得するステップと、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定するステップと、を備えた位置推定方法。
【請求項11】
未知の波源からの波の受信電力を取得するステップと、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得するステップと、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定するステップと、を備え、
前記推定位置と推定送信電力とを推定するステップでは、推定受信電力と受信電力との差に、当該推定受信電力の算出で用いる推定位置と受信位置との間の空間に関する空間情報に応じた重みを付けた目的関数を最適化する、位置推定方法。
【請求項12】
未知の波源からの波の受信電力を取得するステップと、
前記受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得するステップと、
受信電力と受信位置との複数の組、前記未知の波源の推定位置、前記未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定するステップと、を備え、
前記未知の波源は、音波の発信源であり、
前記音波は、マイクロフォンまたはハイドロフォンによって受信される、位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未知の波源の位置と送信電力を、受信電力を用いて推定する位置推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を行うICT機器(Information and Communication Technology機器:情報通信装置)の普及により、空間には様々な電波が飛び交っている。それらの機器の中には、免許や適切な認定を受けることなく送信を行っているものがある。その電波は他の機器に干渉を与え、通信障害が発生することもある。
【0003】
このような状況を把握して対策を行うためには、電波を発する信号源の位置を特定する必要がある。その方法として主に次のような方法が知られている。
・信号源から発せられた電波のRSSI(Received Signal Strength Indication:受信信号強度)を複数の地点で測定し、その結果から三角測量の方法によって信号源の位置を推定する方法
・信号源から送信された信号を複数の地点で同時に受信し、その送達時間の差から信号源の位置を推定する方法(TDoA:Time Difference of Arrival)
・信号源から送信された信号を複数の地点で同時に受信し、その位相差から信号の到来方向を推定する方法(DoA:Direction of Arrival)
【0004】
TDoAやDoAによって信号源の位置を推定する場合は、複数の地点で同時に測定を行う必要がある。なお、電波は3×108(m/s)の極めて速い速度で伝搬する。したがって、複数地点で同時に伝搬時間差や位相差を測定するには、極めて高い時間分解能で受信する機構が必要になる。その際、離れた複数地点で「同時」を実現するのも難しいことになる。同時を実現しやすい近くの場合は、伝搬時間差や位相差が小さくなり、推定精度が低下するという問題がある。
【0005】
RSSIを用いる方法でも複数地点での測定は必要ではあるが、それらの場所で信号を同時に受信する必要はないため、一つの受信機を移動させてRSSIを記録することによって位置推定を行うこともできる。また、RSSIを用いる方法は、受信信号の強度のみを測定すればよく、平易な回路で実現できるという利点もある。
【0006】
しかしながら、電波は、信号源から受信機に直接伝わる以外にも、周囲の建物や路面などで反射して伝搬するものもある。受信機には、これらのマルチパスが合成されて入力される。また、反射物や遮蔽物の移動や、ちょっとした受信機の位置ずれによって、受信される合成電波の位相関係は変わることになる。それにしたがって、RSSIも大きく変動する。そのような変動するRSSIを用いて三角測量の方法で位置推定を行うと、大きな位置ずれが発生するという課題がある。
【0007】
また、電波を用いた位置推定については、例えば、特許文献1~3や非特許文献1に記載された方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6030976号公報
【文献】特許第5537284号公報
【文献】特開2016-170032号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】吾妻悠太、梅澤猛、大澤範高、「複数地点で観測した電波強度による位置指紋の相対位置を利用した屋内位置推定」、信学技報、vol. 115、no. 436、MoNA2015-37、pp. 1-6、2016年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の発明では、複数の基地局で端末からのRSSIを測定して位置を推定している。しかしながら、基地局の位置が未知であるという前提のために、それを決めるために基地局の位置も基地局間相互の受信電力から推定する、という処理を行う。この過程で基地局の位置がずれてしまっては、端末位置を正確に把握できない。また、複数の基地局が必要な方法でもある。
【0011】
特許文献2の発明では、信号強度とアクセスポイントまでの距離や角度などを記録したテーブルを参照しながら端末位置を推定している。この場合には、端末位置と受信電力を対応させるテーブルを事前に準備しておく必要がある。したがって、未知の場所の未知の機器から発せられる信号源の位置を特定するのには不適切な方法である。
【0012】
特許文献3の発明では、従来の信号源の位置の特定方法であるTDoAやDoAによる算出方法の欠点であるマルチパスなどによる精度の劣化を、複数回の算出や伝搬損失に応じた重み付けの適用などにより対策するものになっている。しかし基本的な信号源の位置推定方法としてはTDoAやDoAである。TDoAやDoAは先に記載したように、離れた複数地点で同時に高精度な測定を実施する必要がある。これを実現するのは難易度が極めて高いという問題がある。
【0013】
非特許文献1では、RSSIを使う方法としては三角測量法と位置指紋法をあげ、前者はマルチパスなどの影響で誤差が大きいとし、特許文献2のように位置とRSSIの対応(これを位置指紋と呼んでいる)と実際のRSSIの比較からの位置推定が優れているとしている。しかしながら、位置指紋法では特許文献2と同様に、事前に測定したテーブル(=位置指紋)を用意しておく必要があり、限定的な場所でしか使用できないという課題がある。
【0014】
一般的に言えば、TDoAやDoAを用いることなく、また、位置指紋などの事前の準備も必要せずに、マルチパスの影響がある場合であっても、未知の波源の位置を推定できるようにしたいという課題があった。
【0015】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、TDoAやDoAを用いることなく、また、位置指紋などの事前の準備も必要とせずに、マルチパスの影響がある場合であっても、未知の波源の位置を推定することができる位置推定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明による位置推定装置は、未知の波源からの波の受信電力を取得する受信電力取得部と、受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する受信位置取得部と、受信電力と受信位置との複数の組、未知の波源の推定位置、未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する推定部と、を備えたものである。
このような構成により、TDoAやDoAを用いることなく、また、位置指紋などの事前の準備も必要とせずに、未知の波源の位置、及び送信電力を推定することができるようになる。そのように、TDoA等を用いないため、簡易な構成により波源の位置の推定が可能になる。さらに、目的関数の最適化によって推定を行うため、十分な個数の受信電力と受信位置との組を用いることによって、マルチパスの影響も低減しながら、波源の位置などの推定を行うことができるようになる。
【0017】
また、本発明による位置推定装置では、受信電力取得部は、未知の波源からの波を受信して、受信電力を取得し、受信位置取得部は、受信電力取得部が受信電力に応じた波を受信した時点の位置推定装置の位置である受信位置を取得してもよい。
このような構成により、位置推定装置によって波源からの波の受信をも行うため、例えば、位置推定装置を移動させて受信位置等を記録することによって、位置推定を行うこともできる。その場合には、複数の受信装置を用いることなく、波源の位置の推定を行うことができるようになる。
【0018】
また、本発明による位置推定装置では、未知の波源は1以上存在し、推定部は、最適化された目的関数の値である最適値を推定波源数で除算した波源当たりの最適値が最適化されるように、推定波源数をも推定してもよい。
このような構成により、波源の個数の推定も行うことができるようになる。
【0019】
また、本発明による位置推定装置では、推定部は、推定位置と受信位置との間の空間に関する空間情報に応じた伝搬損失を用いて、目的関数の最適化を行ってもよい。
このような構成により、より精度の高い推定を実現することができるようになる。
【0020】
また、本発明による位置推定装置では、推定部は、推定受信電力と受信電力との差に、推定受信電力の算出で用いる推定位置と受信位置との間の空間に関する空間情報に応じた重みを付けた目的関数を最適化してもよい。
このような構成により、より精度の高い推定を実現することができるようになる。
【0021】
また、本発明による位置推定装置では、未知の波源からの波は、指向性を有する機器で受信され、受信電力に応じた波が受信された際の指向性を有する機器の方向を取得する方向取得部をさらに備え、推定部は、推定位置の方向と指向性を有する機器の方向との角度に応じた伝搬損失を用いてもよい。
このような構成により、例えば、アンテナやマイクロフォンなどの指向性も考慮した推定を行うことができ、より精度の高い推定を実現することができるようになる。
【0022】
また、本発明による位置推定装置では、推定部は、逐次的な演算処理によって目的関数の最適化を行ってもよい。
このような構成により、例えば、ニュートン法などの逐次的な演算によって、目的関数の最適化を行うことができるようになる。
【0023】
また、本発明による位置推定装置では、推定部は、複数の初期値を用いた逐次的な演算処理によって目的関数の最適化を行ってもよい。
このような構成により、最適解が局所最適値に対応したものとなることを回避することができ、より精度の高い推定を実現することができるようになる。
【0024】
また、本発明による位置推定装置では、推定部は、逐次的な演算処理において、目的関数が局所最適値に収束している場合には、ステップサイズをより大きい値に変更し、目的関数が大域最適値に収束している場合には、ステップサイズをより小さい値に変更してもよい。
このような構成により、最適解が局所最適値に対応したものとなることを回避することができ、より精度の高い推定を実現することができるようになる。
【0025】
また、本発明による位置推定装置では、未知の波源は、電波の送信源であり、電波は、アンテナによって受信されてもよい。
このような構成により、電波の送信源の位置を推定することができ、例えば、違法な電波の送信源を特定することができるようになる。
【0026】
また、本発明による位置推定装置では、未知の波源は、音波の発信源であり、音波は、マイクロフォンまたはハイドロフォンによって受信されてもよい。
このような構成により、音波の発信源の位置を推定することができ、例えば、異音の発生位置や所望の音源の位置などを特定することができるようになる。
【0027】
また、本発明による位置推定方法は、未知の波源からの波の受信電力を取得するステップと、受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得するステップと、受信電力と受信位置との複数の組、未知の波源の推定位置、未知の波源からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて受信位置ごとの推定受信電力を算出し、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明による位置推定装置等によれば、TDoAやDoAを用いることなく、また、位置指紋などの事前の準備も必要とせずに、未知の波源の位置、及び送信電力を推定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態による位置推定装置の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による位置推定装置の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態による位置推定装置の構成の他の一例を示すブロック図
図4】同実施の形態による位置推定装置の構成の他の一例を示すブロック図
図5】同実施の形態における指向性を有するアンテナを用いた位置推定について説明するための図
図6】同実施の形態による位置推定装置の動作の他の一例を示すフローチャート
図7】同実施の形態における波源数の最適化について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明による位置推定装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による位置推定装置は、未知の波源の位置と送信出力を、受信電力を用いた最適化によって推定するものである。
【0031】
図1は、本実施の形態による位置推定装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による位置推定装置1は、受信電力取得部11と、受信位置取得部12と、推定部13とを備える。後述するように、位置推定装置1は、波の受信を行うものであってもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、位置推定装置1は、位置を変更可能なもの(例えば、持ち運び可能な装置や、自動車等の移動体に搭載可能な装置等)であることが好適である。一方、電波の受信を行わない場合には、位置推定装置1は、例えば、1個または2個以上のクライアント装置から受信電力等を受け取るサーバ装置であってもよい。本実施の形態では、位置推定装置1が、位置を変更可能なものである場合について主に説明する。
【0032】
受信電力取得部11は、未知の波源5からの波の受信電力を取得する。未知の波源5からの波は、例えば、電波であってもよく、または、音波であってもよい。前者の場合には、未知の波源5は、電波の送信源となり、後者の場合には、未知の波源は、音波の発信源となる。本実施の形態では、その波が電波である場合について主に説明し、音波である場合については後述する。また、本実施の形態では、まず、未知の波源5の個数が1個である場合について主に説明し、未知の波源5の個数が1個以外であり得る場合については後述する。
【0033】
受信電力取得部11は、未知の波源5からの波を受信して、受信電力を取得するものであってもよく、他の装置で受信された波の受信電力を、他の装置から受け取るものであってもよい。本実施の形態では、上記のように、前者の場合について主に説明する。すなわち、本実施の形態では、受信電力取得部11が、アンテナ11aで電波を受信して、その電波の受信電力を取得するものとする。受信電力は、例えば、受信信号強度(RSSI)であってもよい。受信電力取得部11は、例えば、電波の受信信号強度を取得するスペクトラムアナライザであってもよく、電波を受信する他の構成であってもよい。受信電力取得部11がスペクトラムアナライザである場合には、受信電力取得部11は、受信した電波の波長も取得してもよい。また、スペクトラムアナライザである受信電力取得部11は、例えば、所望の周波数の電波の受信電力を取得してもよい。
【0034】
受信位置取得部12は、受信電力に応じた波が受信された際の受信位置を取得する。すなわち、未知の波源5からの波がアンテナ等によって受信された際のアンテナ等の位置が取得されることになる。受信位置取得部12は、受信電力取得部11が受信電力に応じた波を受信した時点の位置推定装置1の位置である受信位置を取得するものであってもよく、他の装置で波が受信された時点のその装置の位置である受信位置を、他の装置から受け取るものであってもよい。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。
【0035】
受信位置取得部12が位置を取得する方法は問わない。受信位置取得部12は、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて位置を取得してもよく、さらに準天頂衛星システムをも用いて位置を取得してもよく、位置推定装置1が車両等に搭載されている場合には、例えば、ジャイロなどの自律航法装置を用いて位置を取得してもよく、位置を示す位置情報に対応したコード等(例えば、QRコード(登録商標)等)の画像が、その位置情報の示す位置に配置されている場合には、例えば、そのコード等の画像を撮影して、位置情報を読み出すことによって位置を取得してもよく、その他の方法によって位置を取得してもよい。本実施の形態では、受信位置取得部12が、GPS衛星からの電波を、アンテナ12aを介して受信し、その受信した電波を用いて位置を取得する場合について主に説明する。受信位置取得部12によって取得される位置は、例えば、緯度と経度を示す座標であってもよく、その他の座標であってもよい。
【0036】
受信電力取得部11によって取得された受信電力と、その受信電力に応じた波に関して、受信位置取得部12によって取得された受信位置とは、紐付けられて管理されることが好適である。本実施の形態では、紐付けられた受信電力と受信位置とを、受信電力と受信位置との組と呼ぶことにする。受信電力取得部11によって受信電力が取得され、その受信電力に応じた受信位置が受信位置取得部12によって取得されることによって、受信電力と受信位置との組が複数取得されることになる。例えば、位置推定装置1が移動可能なものである場合には、複数の位置において未知の波源5からの波が受信されることによって、受信電力と受信位置との複数の組が取得されてもよい。
【0037】
推定部13は、受信電力と受信位置との複数の組、未知の波源5の推定位置、未知の波源5からの波の推定送信電力、波の伝搬損失を用いて、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数を最適化することによって推定位置と推定送信電力とを推定する。すなわち、測定結果である受信電力と受信位置との複数の組と、未知の波源の位置及び送信電力のそれぞれの推定値と、一般的な波の伝搬損失とを用いて、受信位置ごとの受信電力の推定値と受信電力の実測定値との誤差に応じた目的関数が最適化されるように(その誤差が小さくなるように)、目的関数を最適化する最適解(未知の波源の位置及び送信電力の推定値)を求めることになる。なお、推定部13は、受信位置と推定位置とを用いて、未知の波源5の推定位置から受信位置までの距離を算出でき、その距離と、推定送信電力と、伝搬損失とを用いて、受信位置での推定受信電力を推定することができる。
【0038】
目的関数は、受信位置ごとの受信電力の推定値と受信電力の実測定値との誤差が大きくなるほど、値が大きくなる関数であってもよく、または、その誤差が大きくなるほど、値が小さくなる関数であってもよい。前者の場合には、最適化は目的関数を最小化することになり、後者の場合には、最適化は目的関数を最大化することになる。本実施の形態では、前者の場合について主に説明する。また、受信位置ごとの受信電力の推定値と受信電力の実測定値との誤差が大きくなるほど、値が小さくなる関数としては、種々の関数を用いることができる。
【0039】
電波の伝搬損失としては、例えば、推定位置から受信位置までの伝搬経路に応じたモデル(例えば、自由空間モデルや、マルチパスの影響を考慮したモデル等)に応じた伝搬損失を用いてもよい。本実施の形態では、説明の簡単のため、自由空間モデルの伝搬損失を用いる場合について主に説明し、マルチパスの影響を考慮したモデルについて簡単に言及する。伝搬損失は、送信電力や距離を引数とする関数であると考えてもよい。
【0040】
推定部13は、推定位置と受信位置との間の空間に関する空間情報に応じた伝搬損失を用いて、目的関数の最適化を行ってもよい。その空間情報は、推定位置から受信位置までの伝搬経路の種類を示すものであってもよい。したがって、空間情報は、例えば、見通しや、市街地、山地などであってもよい。推定部13は、例えば、地図情報を用いて、受信位置及びその時点での推定位置を特定し、両位置の間に市街地や山がある場合には、両位置の間の空間情報が市街地や山地であると判断し、両位置の間に市街地や山などの障害物が何もない場合には、両位置の間の空間情報が見通しであると判断してもよい。そして、空間情報が見通しである場合には、例えば、自由空間モデルに対応した伝搬損失が用いられ、空間情報が市街地や山地などの障害物があることを示す場合には、例えば、マルチパスの影響を考慮したモデルに対応した伝搬損失が用いられてもよい。なお、空間情報は、例えば、推定部13が、位置推定装置1において保持されている地図情報にアクセスして取得してもよく、地図情報を保持しているサーバ等にアクセスすることによって取得してもよい。
【0041】
以下、目的関数を最適化することによって、推定位置及び推定送信電力を求める処理について具体的に説明する。なお、ここでは、波源5の個数が1個である場合について説明し、波源5の個数が1個以上の不定である場合については後述する。
【0042】
まず、未知の波源5の推定位置を(xe,ye,ze)とし、未知の波源5からの波の推定送信電力をpeとする。また、i番目の位置で取得された受信位置と受信電力とをそれぞれ(xi,yi,zi)、riとする。したがって、受信電力取得部11及び受信位置取得部12によって取得される受信電力と受信位置とのi番目の組は、例えば、(xi,yi,zi,ri)となる。なお、i=1,2,…,Nである。Nは、推定対象の未知数を超える整数であることが好適である。例えば、波源5が1個である場合には未知数は4となるため、Nは5以上であることが好適である。Nが未知数と同じである場合には、推定位置及び推定送信電力を求めることはできるが、実質的に三角測量と同程度の精度で推定を行うことになり、マルチパスの影響を低減することが困難になるからである。また、Nが大きいほど、マルチパスの影響をよりよく低減することができるため、波源5が1個である場合には、Nは、10以上や20以上などのように、5よりも十分大きい値であることがより好適である。
【0043】
未知の波源5からの波について、推定送信電力pe、伝搬損失、推定位置(xe,ye,ze)、受信位置(xi,yi,zi)を用いて算出した、受信位置(xi,yi,zi)における推定受信電力ri eは次式のようになる。なお、Grは、アンテナ11aのゲインであり、既知の値である。ここでは、アンテナ11aに指向性がなく、アンテナゲインGrが一定値である場合について説明し、アンテナに指向性がある場合、すなわち、アンテナゲインGrが角度を引数として有する場合については後述する。
【数1】
【0044】
上式において、diは、未知の波源5の推定位置(xe,ye,ze)から受信位置(xi,yi,zi)までの距離であり、次式のとおりである。
【数2】
【0045】
また、λは、受信された波の波長であり、例えば、受信電力取得部11がスペクトラムアナライザである場合には、受信電力取得部11によって取得されてもよい。また、受信された波がフーリエ変換され、周波数帯域におけるピークの波長λが取得されてもよい。なお、波源5は意図しないものであるため、無指向性であるとしている。そのため、アンテナゲインに相当する値は、実効放射電力として推定送信電力peに包含されることになる。
【0046】
また、上式では、自由空間での電波の伝搬損失の式を用いた推定受信電力を示しているが、波源5の位置から受信位置までの空間情報に応じて、それ以外の伝搬損失の式が用いられてもよいことは上記のとおりである。例えば、波源5の推定位置から受信位置までの空間情報が山地や市街地などのように障害物の存在を示す場合には、マルチパスの影響を考慮した伝搬損失を用いて、次式のように推定受信電力ri eを算出してもよい。また、次式のdi 2に代えて、di 3/2などのdi mを用いてもよい。ただし、mは、1から2までの実数である。
【数3】
【0047】
上記のように、N箇所で受信電力と受信位置とが取得された場合には、受信位置ごとの推定受信電力と受信電力との差に応じた目的関数(評価関数)fは、例えば、次のようになる。
【数4】
【0048】
なお、ここでは、目的関数が、受信電力と受信位置との差の二乗和である場合について示しているが、目的関数は、例えば、推定受信電力と受信電力と差の絶対値の受信位置ごとの和であってもよく、推定受信電力と受信電力と差の四乗や六乗の受信位置ごとの和であってもよいことは言うまでもない。また、その和(総和)において、上記目的関数fの式のように、推定受信電力と受信電力との差に重み付けがなされていてもよい。
【0049】
推定受信電力と受信電力との差に、重みを付けるとは、推定受信電力と受信電力との差に応じた値、例えば、差の二乗や、差の絶対値、差の四乗、差の六乗などに、重みを掛けることであってもよい。重みwiは、i番目の受信位置における測定結果に関する重みであり、通常、正の実数である。例えば、i番目の受信位置に応じた推定受信電力ri eと受信電力riとの差に、その推定受信電力ri eの算出で用いる推定位置(xe,ye,ze)と受信位置(xi,yi,zi)との間の空間に関する空間情報に応じた重みwiが付けられてもよい。具体的には、見通しであることを示す空間情報に対応する重みwiは大きい値、例えば「1」に設定され、市街地や山地などのように障害物の存在を示す空間情報に対応する重みwiは、見通しの空間情報に対応する重みよりも小さい値、例えば「0.3」や「0.5」などに設定されてもよい。また、障害物の程度に応じて、重みが変更されてもよい。その場合には、空間情報によって示される障害物が多いほど、より小さい重みが用いられてもよい。例えば、小数の高層建築物が存在することを示す空間情報に応じた重みは、「0.5」などのようにより大きい値に設定され、多数の高層建築物が存在することを示す空間情報に応じた重みは、「0.2」などのようにより小さい値に設定されてもよい。そのように、重みwiは、例えば、空間情報によってマルチパスの多いことが示される場合には、より小さい値に設定され、マルチパスの少ないことが示される場合には、より大きい値に設定されてもよい。また、重みwiは、例えば、受信信号の大きさや確度などに応じて変更されてもよい。その場合には、例えば、理想的な受信に近いほど、より大きい重みが用いられてもよい。なお、重みwiは、定数であってもよい。すなわち、目的関数は、受信位置ごとの重みを用いないものであってもよい。その場合には、上記wiは、例えば、1であってもよく、1/Nであってもよい。
【0050】
上記の目的関数fを最小にするxe,ye,ze,peが、推定対象である波源5の位置と送信電力となる。その目的関数fが最小になる解、すなわち最適解は、極小点に対応するため、目的関数fの各変数での偏微分が0になる。したがって、推定位置及び推定送信電力を求めることは、次式が成り立つ(xe,ye,ze,pe)を求めることになる。
【数5】
【0051】
そのような(xe,ye,ze,pe)を算出する方法、すなわち目的関数の最適化の方法としては、様々なアルゴリズムが考えられ、その一例として、ニュートン法や最急降下法などを挙げることができるが、それに限定されるものではなく、例えば、カルマンフィルタ等のパラメータ推定方法を用いて最適化を行ってもよい。例えば、最急降下法を用いた逐次的な演算を行う場合には、初期値として、(x0 e,y0 e,z0 e,p0 e)を設定し、正の実数である適切なステップサイズαkを設定して、次式の逐次演算を繰り返すことによって、目的関数fを最適化することができる。なお、k=0,1,2,…である。また、逐次演算に必要な∇f(xe,ye,ze,pe)は、事前に算出しておき、逐次演算にその算出結果を用いるようにしてもよい。また、ステップサイズαkを、最初には大きな値とし、収束状況に応じて小さな値とすることによって、演算回数を低減するようにしてもよい。
【数6】
【0052】
このように、推定部13は、逐次的な演算処理によって目的関数fの最適化を行ってもよい。その場合には、所定の終了条件が満たされたときに、最適化の処理が終了されてもよい。その終了条件は、例えば、収束条件が満たされたことであってもよく、kがあらかじめ決められた最大逐次演算回数を超えたことであってもよく、その他の条件であってもよい。推定部13は、例えば、kが1だけインクリメントされた際の目的関数fの値の変化の絶対値|f(xk+1 e,yk+1 e,zk+1 e,pk+1 e)-f(xk e,yk e,zk e,pk e)|が、あらかじめ決められた閾値よりも小さくなった場合に、収束条件が満たされたと判断してもよい。その閾値は、正の実数であり、通常、小さい値に設定される。また、推定部13は、例えば、目的関数fの値が、あらかじめ決められた値よりも小さい値となった場合に、収束条件が満たされたと判断してもよい。そのあらかじめ決められた値は、正の実数であり、通常、小さい値に設定される。
【0053】
なお、推定部13は、目的関数fの最適化が局所最適となることを避けるため、例えば、複数の初期値を用いた逐次的な演算処理によって目的関数fの最適化を行ってもよい。例えば、推定部13は、複数の初期値を設定し、各初期値を用いた最適化を行うことによって、初期値ごとに、最適解と、その最適解を目的関数に代入した値である最適値とを取得することができる。その後、推定部13は、複数の最適値のうち、最も適切である最適値に対応する最適解を、最終的な推定位置及び推定送信電力としてもよい。最適解とは、目的関数を最適化することによって求められた解(ここでは、推定位置及び推定送信電力)のことである。また、最適値が最も適切であるとは、最適化が最小化である場合には、最適値が最も小さいことであり、最適化が最大化である場合には、最適値が最も大きいことである。なお、初期値は、厳密には、推定位置及び推定送信電力のそれぞれの初期値である。推定位置の初期値は、例えば、N個の受信位置を含む領域(例えば、N個の受信位置を含む最も小さい領域であってもよい)において、ランダムに特定されてもよい。また、推定送信電力の初期値は、例えば、あらかじめ決められた複数の値や、あらかじめ決められた値の範囲からランダムに選択されてもよい。
【0054】
また、推定部13は、目的関数fの最適化が局所最適となることを避けるため、例えば、逐次的な演算処理において、目的関数fが局所最適値に収束している場合には、ステップサイズαkをより大きい値に変更し、目的関数fが大域最適値に収束している場合には、ステップサイズαkをより小さい値に変更してもよい。なお、目的関数fが局所最適値に収束しているのか、大域最適値に収束しているのかは、例えば、目的関数fの値が、理想的な最適値に近いかどうかによって判断されてもよい。目的関数fの値が、理想的な最適値に近い場合には大域最適値に収束していると判断され、理想的な最適値から遠い場合には局所最適値に収束していると判断されてもよい。より具体的には、最適化が最小化である場合には、例えば、目的関数fの値が第1の閾値よりも大きい値に収束しているときに局所最適値に収束していると判断され、目的関数fの値が第1の閾値より小さい値に収束しているときに大域最適値に収束していると判断されてもよい。最適化が最大化である場合には、例えば、目的関数fの値が第2の閾値よりも小さい値に収束しているときに局所最適値に収束していると判断され、目的関数fの値が第2の閾値より大きい値に収束しているときに大域最適値に収束していると判断されてもよい。なお、第1及び第2の閾値は、同じ値であってもよく、異なっていてもよい。両閾値は、通常、正の実数である。目的関数fが局所最適値に収束している場合に用いられるステップサイズαk、及び目的関数fが大域最適値に収束している場合に用いられるステップサイズαkは、あらかじめ決められていてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、目的関数fが局所最適値に収束しているときには、kの更新ごとに徐々に大きくなるステップサイズαkが用いられ、目的関数fが大域最適値に収束している場合には、kの更新ごとに徐々に小さくなるステップサイズαkが用いられてもよい。その場合であっても、ステップサイズの上限値や下限値は設定されていてもよい。
【0055】
推定部13によって取得された波源5の推定位置及び推定送信電力は、例えば、図示しない出力部によって出力されてもよい。その出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、記録媒体への蓄積でもよい。
【0056】
次に、位置推定装置1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。ここでは、逐次的な演算によって目的関数fの最適化が行われる場合について説明する。
【0057】
(ステップS101)受信電力取得部11及び受信位置取得部12は、未知の波源5からの波の受信電力と受信位置との複数の組を取得する。その複数の組は、例えば、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0058】
(ステップS102)推定部13は、推定位置及び推定送信電力の初期値を設定する。この初期値の設定は、例えば、あらかじめ決められた値の読み出しであってもよい。
【0059】
(ステップS103)推定部13は、カウンタkを1に設定する。カウンタkの値は、逐次演算回数を示すものである。
【0060】
(ステップS104)推定部13は、暫定的な推定位置及び推定送信電力を算出する。この暫定推定値の算出は、例えば、上式のように、推定位置及び推定送信電力が最適解に近づくように更新されることによって行われてもよい。
【0061】
(ステップS105)推定部13は、ステップS104で取得した推定位置及び推定送信電力に応じた目的関数fの値を算出する。
【0062】
(ステップS106)推定部13は、収束条件が満たされるかどうか判断する。そして、収束条件が満たされる場合には、推定位置及び推定送信電力を推定する一連の処理は終了となり、そうでない場合には、ステップS107に進む。
【0063】
(ステップS107)推定部13は、カウンタkを1だけインクリメントする。
【0064】
(ステップS108)推定部13は、カウンタkが最大逐次演算回数を超えたかどうか判断する。そして、kが最大逐次演算回数を超えた場合には、推定位置及び推定送信電力を推定する一連の処理は終了となり、そうでない場合には、ステップS104に戻る。
【0065】
推定位置及び推定送信電力を推定する一連の処理が終了された場合には、ステップS104で最後に算出された推定位置及び推定送信電力が、最終的な推定結果となる。
【0066】
なお、図2のフローチャートにおいて、複数の初期値を用いた逐次的な演算が行われてもよい。その場合には、初期値ごとに、ステップS102~S108の処理が繰り返され、各処理が終了した後に、最適な最適値に対応する最適解を、波源5の推定位置及び推定送信電力としてもよい。また、図2のフローチャートでは、まず、受信電力と受信位置との取得が行われ、その後に目的関数を最適化することによる波源5の位置等の推定が行われる場合について示しているが、そうでなくてもよい。例えば、所定の個数の地点での受信電力や受信位置の取得が終了すると、推定位置及び推定送信電力の推定を行い、その推定の処理を、受信電力や受信位置の取得個数が増えるごとに繰り返すようにしてもよい。そして、十分な精度の推定位置及び推定送信電力を取得できた時点で、受信電力等の取得や、推定位置等の推定の処理を終了するようにしてもよい。また、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。
【0067】
以上のように、本実施の形態による位置推定装置1によれば、TDoAやDoAを用いることなく、また、位置指紋などの事前の準備も必要とせずに、未知の波源5の位置、及び送信電力を推定することができる。そのように、TDoA等を用いないため、簡易な構成により波源5の位置の推定が可能になる。さらに、目的関数の最適化によって推定を行うため、十分な個数の受信電力と受信位置との組を用いることによって、マルチパスなどによる誤差の影響を低減した位置推定等が可能となる。また、位置推定装置1が複数の位置に移動されて、未知の波源5からの電波を受信し、受信電力と受信位置との組を複数取得する場合には、複数の受信装置を用いることなく、波源5の位置を推定することができるようになる。また、信頼できない値があったとしても、重みwiを調整することによって、その影響を低減することも可能となる。その結果、推定精度を向上させることができる。また、推定受信電力を求める式の伝搬損失を、空間情報に応じたものとすることによっても、推定精度を向上させることができる。
【0068】
次に、本実施の形態による位置推定装置1の変形例について説明する。
【0069】
[測定トリガに応じた位置の取得]
未知の波源5は、常に波を出力しているとは限らない。そこで、図3で示されるように、受信電力取得部11は、ターゲットとする波源5からの波を受信した場合に、その受信電力を取得すると共に、受信位置取得部12に対して、測定トリガを出力するようにしてもよい。そして、受信位置取得部12は、測定トリガを受け取った時点の位置である受信位置を取得してもよい。このようにして、波源5からの波が間欠的に出力されている場合であっても、受信電力と受信位置との組を適切に取得することができるようになる。なお、受信電力取得部11は、あらかじめ設定されている周波数の波を受信した場合や、過去に受信した波と同じ周波数の波を受信した場合などに、ターゲットとする波源5からの波を受信したと判断してもよい。また、受信電力取得部11は、受信した波の強度があらかじめ決められた閾値以上である場合、例えば、受信した波の受信信号強度(RSSI)が閾値以上である場合に、ターゲットとする波源5からの波を受信したと判断してもよい。
【0070】
[指向性に応じた推定]
上記実施の形態では、未知の波源5からの波が指向性のないアンテナ11aで受信される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。無指向性のアンテナ11aを用いた場合には、測定や計算が容易になるが、周囲構造物等からのマルチパスも受信するため、推定位置などに誤差が生じることがある。そのような問題を解決するため、波源5からの波は、指向性を有する機器で受信されてもよい。
【0071】
その指向性を有する機器は、例えば、波が電波である場合には、指向性を有するアンテナであってもよく、波が音波である場合には、指向性を有するマイクロフォンやハイドロフォンであってもよい。指向性を有するアンテナは、例えば、八木アンテナやパラボラアンテナなどのようなアンテナ構造によって、指向性を有するものであってもよく、アレーアンテナのように、複数のアンテナの受信信号に振幅と位相による重みを掛け合わせることによって指向性を持つようにしたアンテナであってもよい。
【0072】
図4は、指向性を有するアンテナ11bを介して電波を受信する位置推定装置1の構成を示すブロック図である。図4において、位置推定装置1は、方向取得部14をさらに備えている。
【0073】
方向取得部14は、受信電力に応じた波が受信された際の指向性を有する機器(図4では、アンテナ11b)の方向を取得する。方向取得部14は、例えば、地磁気センサなどのように、アンテナ11bの方向を取得できるものであることが好適である。また、方向取得部14は、指向性を有するアンテナ11bの金属による影響を受けないように、アンテナ11bの方向を取得できることが好適である。方向取得部14によって取得されるアンテナ11bの方向は、例えば、基準方向に対するアンテナ11bの方向であってもよい。基準方向は、例えば、北の方向などであってもよい。方向取得部14は、例えば、アンテナ11bの指向性の方向を示す方位角を取得するものであってもよい。
【0074】
指向性を有するアンテナ11bを用いて電波を受信する場合には、推定部13は、推定位置の方向と指向性を有する機器の方向との角度に応じた伝搬損失によって算出される推定受信電力を用いてもよい。推定位置の方向と指向性を有する機器の方向との角度に応じた伝搬損失とは、受信位置に対する推定位置の方向と指向性を有する機器の方向との角度のアンテナゲインに応じた伝搬損失であってもよい。すなわち、推定部13は、推定受信電力の算出に、指向性のないアンテナゲインGrではなく、次式のように、指向性のあるアンテナゲインGr(θi)を用いてもよい。
【数7】
【0075】
なお、θiは、i番目の受信位置(xi,yi,zi)における、推定位置の方向と、指向性を有するアンテナ11bの方向とのなす角度である。推定位置の方向とは、受信位置(xi,yi,zi)と推定位置(xe,ye,ze)とを結ぶ直線の方向である。角度θiを求める方法について、図5を用いて説明する。図5において、受信位置(xi,yi,zi)に、指向性を有するアンテナ11bが配置されているものとする。アンテナ11bの基準方向に対する角度φ1は、方向取得部14によって取得される。また、受信位置の座標(xi,yi,zi)と、推定位置との座標(xe,ye,ze)を用いることによって、基準方向と、受信位置と推定位置とを結ぶ直線とのなす角度φ2も取得することができる。そして、両角度φ1、φ2を用いることによって、アンテナ11bの方向と、受信位置と推定位置とを結ぶ直線とのなす角度θi(=φ2-φ1)を算出することができ、その角度θiに応じたアンテナゲインGr(θi)を用いることによって、指向性を有するアンテナ11bの方向に応じた推定受信電力を取得することができるようになる。なお、アンテナゲインGr(θi)の方向依存性(図5で示される、アンテナの指向性パターン)は、あらかじめ取得されているものとする。
【0076】
定数であるアンテナゲインGrに代えて、アンテナ11bの方向に応じたアンテナゲインGr(θi)を用いる以外は、上記と同様に目的関数fの最適化が行われるため、その詳細な説明は省略する。この場合にも、測定トリガに応じて、方向取得部14による方向の取得が行われてもよい。
【0077】
このように、指向性を有するアンテナ11bを用いることによって、周辺構造物からのマルチパスの影響を低減することができる。また、指向性アンテナは無指向性アンテナよりゲインが高いため、指向性方向からの信号の受信電力が強くなり、雑音の影響などを低減することができるようになる。その結果、波源5の位置と送信電力との推定精度を向上させることができる。
【0078】
なお、ここでは、方向取得部14が、指向性を有するアンテナ11bの方向を直接、取得する場合について説明したが、そうでなくてもよい。上記のように、受信電力取得部11や受信位置取得部12が、受信電力や受信位置を他の装置等から受け取る場合には、方向取得部14も、波源5からの波が受信された時点における、指向性を有する機器の方向を、他の装置等から受け取ってもよい。その場合には、他の装置等において、上記のように、地磁気センサ等を用いることによって、指向性を有する機器の方向の取得が行われてもよい。
【0079】
[波源の個数の推定]
上記実施の形態では、波源5の個数が1個である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。波源5の個数が複数や不定であってもよい。波源5の個数が不定である場合には、波源5の個数も推定されてもよい。
【0080】
波源5の個数が不定である場合には、推定部13は、最小波源数から、最大波源数までの各推定波源数について、それぞれ最適化によって各波源5の位置及び送信電力を推定してもよい。そして、推定部13は、最適化された目的関数の値である最適値を推定波源数で除算した波源当たりの最適値が最適化されるように、推定波源数をも推定してもよい。すなわち、波源数の推定のための目的関数を波源当たりの最適値として、その目的関数を最適化するように、波源数が推定されてもよい。なお、例えば、未知の波源5が1以上存在する場合には、最小波源数は1となる。最小波源数は、2以上であってもよい。
【0081】
なお、波源当たりの最適値が最適化されるように推定波源数を推定するとは、例えば、上記目的関数fの最適化が最小化である場合には、波源当たりの最適値が、最も小さくなる推定波源数を求めることであってもよく、上記目的関数fの最適化が最大化である場合には、波源当たりの最適値が、最も大きくなる推定波源数を求めることであってもよい。例えば、目的関数fの最適化が最小化であり、また、波源当たりの最適値の波源数に対する変化が、図7で示されるようになった場合には、推定部13は、波源当たりの最適値が最小となる波源数「3」が、未知の波源5の個数であると推定してもよい。その場合には、波源数を「3」として行われた最適化によって得られた最適解である推定位置及び推定送信電力が、3個の未知の波源5の推定位置及び推定送信電力となる。なお、図7は、実測値を示すものではなく、説明のために波源当たりの最適値の変化を示した図である。
【0082】
この場合には、仮の波源数をM個とすると、未知数は、4×Mだけ存在することになる。したがって、受信電力を取得する受信位置の個数Nは、4×Mを超えていることが好適である。なお、Mは1以上の整数である。また、最大波源数がMmaxであるとすると、受信電力を取得する受信位置の個数Nは、4×Mmaxを超えていることが好適である。例えば、図7で示されるように、最大波源数Mmax=6である場合には、25個以上の位置で受信電力の取得が行われていることが好適である。
【0083】
1以上の波源5が存在する場合には、j番目の波源5からの波のi番目の受信位置における推定受信電力は、次式のようになる。なお、jは、1以上の整数であり、M個の波源5がある場合には、j=1,2,…,Mとなる。
【数8】
【0084】
なお、上式において、di,jは、i番目の受信位置(xi,yi,zi)から、j番目の波源5の推定位置(xj e,yj e,zj e)までの距離であり、次式のとおりである。
【数9】
【0085】
また、波源5がM個である場合には、推定部13は、次式の目的関数fを用いてもよい。
【数10】
【0086】
上記目的関数fにおいて、i番目の受信位置における推定受信電力は、1個目からM個目までの各波源5からの波に関する各推定受信電力の合計となっている。なお、目的関数の最適化によって推定位置や推定送信電力を推定する処理は、目的関数において、1個の波源5からの波の推定受信電力に代えて、M個の波源5からの波の推定受信電力の合計が用いられる以外は、上記実施の形態と同様であり、その詳細な説明を省略する。この場合には、波源5の個数が1個の場合と比較して、目的関数の最適化によって求める変数の個数が多くなりうることになる。なお、M個の波源5を想定した場合には、M個の推定位置と、推定位置ごとの推定送信電力とが推定されることになる。すなわち、推定位置と推定送信電力とのM個の組が取得されることになる。
【0087】
図6は、波源5の個数をも推定する際の位置推定装置1の動作を示すフローチャートである。なお、ステップS101~S108の処理は、推定受信電力の式や目的関数fの式が上記のように変更される以外は、図2のフローチャートと同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0088】
(ステップS201)推定部13は、カウンタMを最小波源数に設定する。カウンタMの値は、仮の波源数を示すものである。
【0089】
(ステップS202)推定部13は、その時点における目的関数の最適値を、その時点のカウンタMで除算した値、すなわち波源当たりの最適値をG(M)に設定する。そのG(M)の値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0090】
(ステップS203)推定部13は、カウンタMを1だけインクリメントする。
【0091】
(ステップS204)推定部13は、カウンタMが最大波源数を超えているかどうか判断する。そして、カウンタMが最大波源数を超えている場合には、ステップS205に進み、そうでない場合には、ステップS102に戻る。なお、例えば、最小波源数が1であり、最大波源数が6であり、ステップS204からステップS205に進む場合には、G(1),G(2),…,G(6)の各値が取得されていることになる。
【0092】
(ステップS205)推定部13は、それまでに算出された波源当たりの最適値G(M)が最適化される推定波源数を特定する。例えば、最適化が最小化であり、G(1),G(2),…,G(6)の各値が取得されている場合には、最小であるG(M)のMの値(この値が最終的な推定波源数となる)が特定されると共に、カウンタMが最終的な推定波源数であるときに特定された推定位置及び推定送信電力の組が、各波源5の推定位置及び推定送信電力となる。このようにして、波源5の個数の推定と、推定された個数の各波源5に関する位置及び送信電力の推定との一連の処理が終了することになる。
【0093】
なお、図6のフローチャートでは、Mの値を1ずつインクリメントする場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、Mを飛び飛びの値で変化させ、そのようにして取得されたG(M)の値のうち、最適な1個または2個のMの値を特定し、その特定した1個または2個のMの値の近傍において、G(M)を算出することによって、推定波源数を求めるようにしてもよい。最適な1個または2個のMの値とは、例えば、最適化が最小化である場合には、G(M)の値が最小である1個または2個のMの値であってもよい。例えば、G(M)の最小値と、次に小さい値との差の絶対値が、あらかじめ決められた閾値よりも小さいときには、両方のMの値が特定され、そうでないときには、最小のG(M)のMの値のみが特定されてもよい。このようにすることで、例えば、最小波源数から最大波源数までのMの候補が多い場合に、より少ない処理によって推定波源数を求めることができるようになる。また、図6のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。
【0094】
このように、波源5の個数が分からない場合であっても、波源5の個数をも推定することができるようになる。なお、ここでは、波源5の個数が最大波源数となるまで処理を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。波源当たりの最適値の最適化に収束条件を設け、その収束条件が満たされた場合に処理を終了するようにしてもよい。例えば、波源当たりの最適値が、あらかじめ決めされた閾値よりも適切な側となった場合(例えば、最適化が最小化であれば、閾値よりも小さくなった場合であり、最適化が最大化であれば、閾値よりも大きくなった場合であってもよい)に、収束条件が満たされたと判断されてもよい。
【0095】
また、ここでは、波源5の個数が不明である場合について主に説明したが、波源5の個数が既知である場合にも、上記のようにして、各波源5の位置や送信電力を推定することができる。その場合には、あらかじめ分かっているMの値についてのみ、目的関数を最適化する処理を行えばよいことになる。
【0096】
[音波を発信する波源]
上記のように、波源は、電波の送信に代えて音波を発信するものであってもよい。波源からの波が音波であっても、上記電波の場合と同様にして、音波の波源の位置や、音波の送信電力(発信電力)を推定することができる。その場合には、アンテナに代えて、マイクロフォンやハイドロフォンによる音波の受信が行われることになる。なお、伝搬損失等についても、音波に応じた伝搬損失等が用いられてもよい。そして、上記電波の場合と同様にして目的関数が最適化されることによって、音波の発信源の位置や、音波の発信出力を推定できることは明らかであり、その詳細な説明を省略する。
【0097】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0100】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0101】
また、上記実施の形態において、位置推定装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0102】
また、上記各実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0103】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上より、本発明による位置推定装置等によれば、未知の波源の位置や、送信電力を推定できるという効果が得られ、例えば、違法電波の発信源を特定する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 位置推定装置
11 受信電力取得部
12 受信位置取得部
13 推定部
14 方向取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7