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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
H04R3/00 320
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019079693
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020178255
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成
(72)【発明者】
【氏名】植田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 敏之
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-104660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037112(US,A1)
【文献】特開昭58-006609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00-3/14
H03F 1/00-3/72
H01H 13/00-13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流駆動方式の測定装置において、
測定センサ部に直流定電流を供給する直流定電流回路と、
前記測定センサ部のセンサ出力信号を入力信号とするアンプ回路と、
前記アンプ回路への直流バイアスの通電を遮断するカップリングキャパシタと、
前記カップリングキャパシタと接続し前記アンプ回路の前段回路を構成すると伴にインピーダンスを可変とするインピーダンス部と、
前記直流定電流の供給開始から測定動作開始までの間における所定期間において、前記インピーダンス部を制御して前記アンプ回路の前段回路の時定数を、測定動作期間の所定の時定数より小さくする時定数制御部と、
前記直流定電流の供給を検知する電流センサとを備え
前記インピーダンス部は、並列および/または直列の抵抗器と、前記抵抗器の一つと接続され回路を閉状態および開状態にするスイッチ部とを備え、
前記時定数制御部は、前記スイッチ部の閉状態と開状態を切り替えることで前記インピーダンス部のインピーダンスの大きさを切り替え、
前記時定数制御部は、前記電流センサにより検知された前記直流定電流の供給時に前記インピーダンスを小さくし所定期間後に前記インピーダンスを元に戻すように前記スイッチ部を切り替えるコントローラを備えること、
を特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記スイッチ部は、プッシュスイッチであり、前記時定数制御部と一体であることを特徴とする請求項記載の測定装置。
【請求項3】
前記プッシュスイッチは、前記プッシュスイッチを押下げると、前記測定装置への電源の供給を開始させるとともに、押下げている間は前記インピーダンスを小さくし、前記所定期間経過後に当該プッシュスイッチを離すと前記インピーダンスが元に戻る連動スイッチであることを特徴とする請求項記載の測定装置。
【請求項4】
定電流駆動方式の測定装置において、
測定センサ部に直流定電流を供給する直流定電流回路と、
前記測定センサ部のセンサ出力信号を入力信号とするアンプ回路と、
前記アンプ回路への直流バイアスの通電を遮断するカップリングキャパシタと、
前記カップリングキャパシタと接続し前記アンプ回路の前段回路を構成すると伴にインピーダンスを可変とするインピーダンス部と、
前記直流定電流の供給開始から測定動作開始までの間における所定期間において、前記インピーダンス部を制御して前記アンプ回路の前段回路の時定数を、測定動作期間の所定の時定数より小さくする時定数制御部と、
を備え、
前記インピーダンス部は、並列および/または直列の抵抗器と、前記抵抗器の一つと接続され回路を閉状態および開状態にするスイッチ部とを備え、
前記時定数制御部は、前記スイッチ部の閉状態と開状態を切り替えることで前記インピーダンス部のインピーダンスの大きさを切り替え、
前記スイッチ部は、プッシュスイッチであり、前記時定数制御部と一体であり、
前記プッシュスイッチは、前記プッシュスイッチを押下げると、前記測定装置への電源の供給を開始させるとともに、押下げている間は前記インピーダンスを小さくし、前記所定期間経過後に当該プッシュスイッチを離すと前記インピーダンスが元に戻る連動スイッチであること、
を特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響振動測定装置などの測定装置の測定センサ部には、定電流駆動(CCLD:Constant Current Line Drive)方式のセンサ部を使用しているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そのような装置では、装置本体側からセンサ駆動用の直流定電流が同軸ケーブルなどのケーブルを介して測定センサ部に供給され、測定センサ部から出力されるセンサ出力信号(交流信号)がそのケーブルを介して装置本体側へ伝播する。装置本体側では、直流バイアスとセンサ出力信号を分離するために、カップリングキャパシタが設けられており、カップリングキャパシタを介してセンサ出力信号が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-521225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、センサ出力信号は微弱であるため、装置本体側の入力インピーダンスは比較的高く設定されている。そのため、アンプ回路の前段回路における時定数が大きくなり、測定装置本体の電源オン時などの測定センサ部への直流定電流供給開始時における過渡応答の時間が比較的長くなってしまい、当該測定装置での測定が可能となるまで比較的長い時間待機する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、測定センサ部への直流定電流供給開始時における待機時間が短い測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測定装置は、定電流駆動方式の測定装置であって、測定センサ部に直流定電流を供給する直流定電流回路と、測定センサ部のセンサ出力信号を入力信号とするアンプ回路と、アンプ回路への直流バイアスの通電を遮断するカップリングキャパシタと、カップリングキャパシタと接続しアンプ回路の前段回路を構成すると伴にインピーダンスを可変とするインピーダンス部と、直流定電流の供給開始から測定動作開始までの間における所定期間において、インピーダンス部を制御してアンプ回路の前段回路の時定数を、測定動作期間の所定の時定数より小さくする時定数制御部とを備える。さらに、次の(A)または(B)の構成を備える。(A)上述の直流定電流の供給を検知する電流センサをさらに備え、インピーダンス部は、並列および/または直列の抵抗器と、その抵抗器の一つと接続され回路を閉状態および開状態にするスイッチ部とを備え、時定数制御部は、スイッチ部の閉状態と開状態を切り替えることでインピーダンス部のインピーダンスの大きさを切り替え、また、時定数制御部は、電流センサにより検知された直流定電流の供給時に上述のインピーダンスを小さくし所定期間後に上述のインピーダンスを元に戻すようにスイッチ部を切り替えるコントローラを備える。(B)インピーダンス部は、並列および/または直列の抵抗器と、その抵抗器の一つと接続され回路を閉状態および開状態にするスイッチ部とを備え、時定数制御部は、スイッチ部の閉状態と開状態を切り替えることでインピーダンス部のインピーダンスの大きさを切り替え、スイッチ部は、プッシュスイッチであり、時定数制御部と一体であり、そのプッシュスイッチは、そのプッシュスイッチを押下げると、測定装置への電源の供給を開始させるとともに、押下げている間はインピーダンスを小さくし、所定期間経過後に当該プッシュスイッチを離すとインピーダンスが元に戻る連動スイッチである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直流定電流供給開始時における待機時間が短い測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る測定装置の構成を示す回路図である。
図2図2は、本発明の実施の形態2に係る測定装置の構成を示す回路図である。
図3図3は、本発明の実施の形態3に係る測定装置の構成を示す回路図である。
図4図4は、本発明の実施の形態4に係る測定装置の構成を示す回路図である。
図5図5は、本発明の実施の形態5に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
実施の形態1.
【0012】
図1は、本発明の実施の形態1に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【0013】
図1に示す測定装置は、定電流駆動方式の測定装置であって、例えば、音響振動計測器である。図1に示す測定装置は、装置本体1および測定センサ部2を備える。例えば、装置本体1および測定センサ部2は同軸ケーブルなどのケーブル3で接続される。例えば、ケーブル3は、コネクタなどで、装置本体1および測定センサ部2の一方または両方に対して着脱可能となっている。なお、装置本体1および測定センサ部2が一体として構成される場合、外部に露出したケーブル3の代わりに当該測定装置内部の配線が使用される。
【0014】
図1に示すように、装置本体1は、直流定電流回路11、電流センサ12、アンプ回路13、信号処理部14、時定数制御部15、前段回路16を備える。前段回路16は、カップリングキャパシタCc、およびインピーダンス部17で構成される。
【0015】
直流定電流回路11は、所定電源電圧Vcc(例えば+24ボルト)の定電圧電源に接続され、所定値の定電流(直流電流)を生成する電源回路であって、測定センサ部2に直流定電流を供給する。この実施の形態では、直流定電流回路11は、ケーブル3を介して測定センサ部2に直流定電流を供給する。そのため例えば、装置本体1(定電圧電源および直流定電流回路11)が電源オン状態であっても、ケーブル3が接続されていない状態では、直流定電流回路11の出力電流は、略ゼロとなる。
【0016】
電流センサ12は、直流定電流回路11とケーブル3(あるいは上述の内部配線)との間に設けられ、直流定電流回路11の出力電流を検知する。つまり、電流センサ12は、上述の直流定電流の供給を検知する。
【0017】
カップリングキャパシタCcは、アンプ回路13への上述の直流バイアスの通電を遮断する。この実施の形態では、カップリングキャパシタCcは、ケーブル3(あるいは上述の内部配線)とアンプ回路13との間に設けられている。
【0018】
アンプ回路13は、測定センサ部2のセンサ出力信号を入力信号とする回路である。この実施の形態では、アンプ回路13は、カップリングキャパシタCcを介して、ケーブル3(あるいは上述の内部配線)に電気的に接続される。
【0019】
インピーダンス部17は、例えば抵抗素子であって、アンプ回路13の入力インピーダンスを設定するためのものである。センサ出力信号(交流信号)の振幅は小さいため、入力インピーダンスを高めるために、比較的高い抵抗値(例えば1メガオーム)の抵抗素子がインピーダンス部17に使用される。
【0020】
信号処理部14は、例えば、センサ出力信号のA/D変換するA/D変換器と、A/D変換後のセンサ出力信号を処理する信号処理プログラムを実行するDSP(Digital Signal Processor)とを備え、センサ出力信号に対して所定の信号処理を行い、測定対象の数値を導出し、図示せぬ表示装置で表示したり、図示せぬ通信装置で外部へ送信する。例えば、当該測定装置が騒音計である場合、測定センサ部にマイクロホンが使用され、信号処理部14は、センサ出力信号から音圧レベルの周波数分布などを導出する。また、例えば、当該測定装置が振動系である場合、測定センサ部に加速度ピックアップが使用され、信号処理部14は、センサ出力信号から振動強度(振幅)の周波数分布などを導出する。
【0021】
なお、当該測定装置に信号処理部14を設けず、センサ出力信号を外部へ出力するまたは記録するようにしてもよい。
【0022】
時定数制御部15は、上述の直流定電流の供給開始から測定動作開始までの間における所定期間において、アンプ回路13の前段回路16の時定数を、測定動作期間(測定動作開始から測定動作終了までの期間、つまり、センサ出力信号に基づき測定対象の値が適切に導出される期間)の所定の時定数より小さくする制御を行う回路である。
【0023】
つまり、アンプ回路13の前段回路16におけるインピーダンス部17とカップリングキャパシタCcは、1次のハイパスフィルタとみなせ、その時定数は、主にインピーダンス部17の抵抗値とカップリングキャパシタCcの静電容量値との積となる。そして、この時定数が大きいほど、直流定電流の供給開始時における当該前段回路16の過渡応答(略ステップ応答)の収束時間が長くなる。他方、測定精度に対応して、所望のレベルまで、この過渡応答が収束するのを待つ必要がある。そのため、時定数制御部15は、上述の所定期間(つまり、供給開始から測定動作開始までの非測定期間)において、当該前段回路16の時定数を小さくする制御を行うことで、過渡応答の収束時間を強制的に短くし、測定動作開始までの時間(つまりの上述の所定期間の時間長)を短くする。
【0024】
実施の形態1では、インピーダンス部17は、(a)抵抗Rinと、(b)抵抗Rtと、(c)スイッチ部SWとを備える。具体的には、実施の形態1では、スイッチ部SWは、抵抗Rtと直列に接続され当該部分の回路を閉状態または開状態にすることにより抵抗Rinと抵抗Rtとを並列に電気的に接続して合成抵抗を形成したり、抵抗Rinと抵抗Rtを電気的に切断して抵抗Rtを電気的に無効にしたりする。実施の形態1では、スイッチ部SWは、トランジスタなどの半導体スイッチング素子、リレーなどであって、制御信号によって電気的に動作するスイッチである。
【0025】
実施の形態1では、抵抗Rtは、抵抗Rinの抵抗値より十分小さい抵抗値(例えば10オーム)を有する。
【0026】
さらに、実施の形態1では、時定数制御部15は、コントローラ15aを備える。コントローラ15aは、電流センサ12により検知された直流定電流供給開始時からの所定期間においてスイッチ部SWを閉状態および開状態の一方から他方へ切り替える。コントローラ15aは、マイクロコンピュータによって構成されていても、専用の電子回路によって構成されていてもよい。
【0027】
具体的には、実施の形態1では、上述の所定期間においてスイッチ部SWが閉状態となるように、コントローラ15aはスイッチ部SWを制御する。
【0028】
なお、ここでは、抵抗Rtは、固定抵抗値の抵抗素子であるが、その代わりに、可変抵抗であってもよい。
【0029】
次に、実施の形態1に係る測定装置の動作について説明する。
【0030】
装置本体1と測定センサ部2とがケーブル3(あるいは内部配線)で電気的に接続された状態でユーザの操作によって装置本体1の電源が投入された時、装置本体1の電源が投入された後にユーザによって装置本体1と測定センサ部2とがケーブル3(あるいは内部配線)で電気的に接続された時などに、直流定電流回路11から測定用センサの直流定電流の供給が開始する。
【0031】
コントローラ15aは、電流センサ12によって上述の直流定電流の供給開始が検知されると、スイッチ部SWを開状態から閉状態へ変化させる。これにより、抵抗Rtが電気的に並列に抵抗Rinに接続される。したがって、アンプ回路13の前段回路16の時定数が、抵抗Rinと抵抗Rtとの合成抵抗値(Rin×Rt/(Rin+Rt))とカップリングキャパシタCcの静電容量値との積となり、スイッチ部SWが開状態であるときより小さくなる。
【0032】
このため、直流定電流の供給開始に対する前段回路16の過渡応答が短時間で収束し、短時間で信号処理部14の測定動作開始が可能となる。
【0033】
コントローラ15aは、スイッチ部SWを閉状態に変化させた時点からタイマなどで計時し所定時間(つまり、過渡応答の収束に十分な時間であって、上述の所定期間の時間長)が経過すると、スイッチ部SWを開状態に戻す。これにより、測定動作開始時には、アンプ回路13の入力インピーダンスが高い状態となり、測定動作期間において、センサ出力信号が適切にアンプ回路13に入力される。
【0034】
以上のように、上記実施の形態1によれば、定電流駆動方式の測定装置において、直流定電流回路11は、測定センサ部2に直流定電流を供給し、アンプ回路13は、測定センサ部2のセンサ出力信号を入力信号とする。カップリングキャパシタCcは、アンプ回路への直流バイアスの供給を遮断する。時定数制御部15は、直流定電流の供給開始から測定動作開始までの間における所定期間において、アンプ回路13の前段回路16の時定数を、測定動作期間の所定の時定数より小さく制御を行う。
【0035】
これにより、定電流駆動方式の測定装置において、測定開始時における待機時間が短く設定できる。
【0036】
実施の形態2.
【0037】
図2は、本発明の実施の形態2に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【0038】
実施の形態2では、時定数制御部15および前段回路16において、コントローラ15aおよびスイッチ部SWの代わりに、手動スイッチSW1が使用される。
【0039】
ここでは、手動スイッチSW1として、(a)前記測定装置への電源の供給を開始させるとともに、(b)(上述のスイッチ部SWのように)抵抗Rtと直列に接続され当該部分の回路を閉状態または開状態にする連動スイッチが使用される。つまり、例えば図2に示すように、連動スイッチとしての手動スイッチSW1は、電源ライン21にも接続され、電源スイッチとして使用される。電源ライン21は、電源ラインその物と接続されている回路だけではなくトランジスタなどの半導体スイッチング素子、リレーなどと接続された電源ラインを制御する電源制御ラインであってもよい。あるいは、連動スイッチとしての手動スイッチSW1は、信号処理部14などのマイクロコンピュータのリセットラインにも接続され、リセットスイッチとして使用される。
【0040】
実施の形態2では、手動スイッチSW1は、ユーザが押下している間のみ、閉状態(導通状態)となるプッシュスイッチであって、上述の所定期間が、ユーザが手動スイッチSW1を押下して手動で時定数制御をしている時間となる。したがって、インピーダンス部17の抵抗Rtの抵抗値は、一般的なユーザのスイッチ押下の操作時間で十分に上述の過渡応答が収束するような値に設定される。あるいはSW1は、タイマ機能も備えユーザが押下した後に所定期間閉状態を保ち、所定期間経過後に開状態となるようなものでもよい。その場合に抵抗Rtの抵抗値は、所定期間で十分に上述の過渡応答が収束するような値に設定される。
【0041】
また、手動スイッチSW1は、単独スイッチでもよく、その場合には、ユーザが、電源オンや信号処理部14などのマイクロコンピュータのリセットをスイッチSW1とは別の手段で実行させた後で測定開始前の期間において手動スイッチSW1を押下する。
【0042】
なお、実施の形態2に係る測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。なお、実施の形態2では、実施の形態1における電流センサ12は特に必要としない。
【0043】
以上のように、上記実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、上述の所定期間においてアンプ回路13の前段回路の時定数を小さくすることで、直流定電流供給開始時の過渡応答を短時間で収束させる。これにより、定電流駆動方式の測定装置での測定開始時における待機時間が短く設定できる。
【0044】
実施の形態3.
【0045】
図3は、本発明の実施の形態3に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【0046】
実施の形態3では、インピーダンス部17において、抵抗Rtおよびスイッチ部SWの代わりに、可変抵抗部VRtが使用され、コントローラ15aは、可変抵抗部VRtの抵抗値を制御する。可変抵抗部VRtとしては、例えば、デジタルポテンショメータ、電子ボリュームなどが使用される。
【0047】
実施の形態3では、可変抵抗部VRtは、抵抗Rinに電気的に並列に接続されており、コントローラ15aは、上述の所定期間において可変抵抗部VRtの抵抗値を所定の第1抵抗値より低い第2抵抗値に変化させて、アンプ回路13の前段回路の時定数を、測定動作期間の所定の時定数より小さくする。
【0048】
実施の形態3では、測定動作期間におけるアンプ回路13の入力インピーダンスは、抵抗Rinの抵抗値と可変抵抗部VRtの第1抵抗値との合成抵抗値となる。したがって、適切な測定動作のために入力インピーダンスが十分高くなるように可変抵抗部VRtの第1抵抗値および抵抗Rinの抵抗値が設定される。また、上述の所定期間における時定数が十分小さくなるように、抵抗Rinの抵抗値および可変抵抗部VRtの第2抵抗値が設定される。実施の形態3では、第2抵抗値は、第1抵抗値より十分小さい値とされる。
【0049】
次に、実施の形態3に係る測定装置の動作について説明する。
【0050】
実施の形態3では、コントローラ15aは、電流センサ12によって上述の直流定電流の供給開始が検知されると、可変抵抗部VRtの抵抗値を第1抵抗値から第2抵抗値へ変化させる。これにより、アンプ回路13の前段回路の時定数が、抵抗Rinの抵抗値と第2抵抗値との合成抵抗値とカップリングキャパシタCcの静電容量値との積となり、可変抵抗部VRtの抵抗値が第1抵抗値であるときより小さくなる。
【0051】
コントローラ15aは、可変抵抗部VRtの抵抗値を第2抵抗値へ変化させた時点からタイマなどで計時し所定時間(つまり、上述の所定期間の時間長)が経過すると、可変抵抗部VRtの抵抗値を第1抵抗値に変化させる。これにより、測定動作開始時には、アンプ回路13の入力インピーダンスが高い状態となり、測定動作期間において、センサ出力信号が適切にアンプ回路13に入力される。
【0052】
このため、直流定電流の供給開始に対する前段回路(カップリングCc、抵抗Rin、可変抵抗部VRtなど)の過渡応答が短時間で収束し、短時間で信号処理部14の測定動作開始が可能となる。
【0053】
なお、実施の形態3に係る測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
以上のように、上記実施の形態3によれば、実施の形態1および実施の形態2と同様に、時定数制御部15は、上述の所定期間においてアンプ回路13の前段回路の時定数を小さくする制御を行うことで、直流定電流供給開始時の過渡応答を短時間で収束させる。これにより、定電流駆動方式の測定装置での測定開始時における待機時間が短く設定できる。
【0055】
実施の形態4.
【0056】
図4は、本発明の実施の形態4に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【0057】
実施の形態4では、インピーダンス部17は、(a)抵抗Rinと直列に接続された抵抗Rtと、(b)抵抗Rinと並列に接続され当該部分の回路を閉状態または開状態にするスイッチ部SWとを備える。具体的には、実施の形態1,2においては、時定数制御部15が抵抗Rinに対して並列な抵抗成分の接続および切断の制御を行っているが、実施の形態4では、抵抗Rinに対して直列に抵抗Rtが接続され、上述の所定期間において、抵抗Rinがバイパスされる。つまり、抵抗Rinの両端が短絡されると、抵抗Rinは電気的に無効となる。
【0058】
図4に示す測定装置では、抵抗Rtが抵抗Rinに直列に接続されており、実施の形態1におけるスイッチ部SWが抵抗Rinに並列に接続されている。コントローラ15aは、上述の所定期間においては、スイッチ部SWを閉状態とし、測定動作期間においては、スイッチ部SWを開状態とする。これにより、上述の所定期間においては、アンプ回路13の前段回路の時定数が、抵抗Rtの抵抗値とカップリングキャパシタCcの静電容量値との積となり、測定動作期間においては、アンプ回路13の入力インピーダンスは、抵抗Rinと抵抗Rtとの和となる。したがって、抵抗Rtの抵抗値を抵抗Rinより十分小さく設定することで、上述の所定期間におけるアンプ回路13の前段回路の時定数が小さくなるとともに、測定動作期間におけるアンプ回路13の入力インピーダンスが十分大きくなる。
【0059】
なお、スイッチ部SWを実施の形態2における手動スイッチSW1に変更するようにしてもよい。その場合、実施の形態2と同様に、コントローラ15aおよび電流センサ12は特に必要としない。
【0060】
なお、実施の形態4に係る測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1または実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。また、実施の形態4において、抵抗Rtは、可変抵抗としてもよい。さらに、実施の形態4において、スイッチ部SWおよびコントローラ15aを、実施の形態2の手動スイッチSW1に変更してもよい(その場合、電流センサ12は特に必要としない)。さらに、実施の形態4において、スイッチ部SWおよび抵抗Rtを、実施の形態3の可変抵抗部VRtに変更してもよい。
【0061】
以上のように、上記実施の形態4によれば、実施の形態1~3と同様に、時定数制御部15は、上述の所定期間においてアンプ回路13の前段回路の時定数を小さくする制御を行うことで、直流定電流供給開始時の過渡応答を短時間で収束させる。これにより、定電流駆動方式の測定装置での直流定電流供給開始時における待機時間が短く設定できる。
【0062】
実施の形態5.
【0063】
図5は、本発明の実施の形態5に係る測定装置の構成を示す回路図である。
【0064】
実施の形態5では、抵抗Rinが可変抵抗部VRinを備え、コントローラ15aは、可変抵抗部VRinの抵抗値を制御し、上述の所定期間において、可変抵抗部VRinの抵抗値を測定動作期間における第1抵抗値より低い第2抵抗値にすることで、アンプ回路13の前段回路の時定数を、上述の第1抵抗値と前記カップリングキャパシタの静電容量値とに基づく所定の時定数より小さくする。
【0065】
なお、可変抵抗部VRinとしては、例えば、デジタルポテンショメータ、電子ボリュームなどが使用される。また、実施の形態5において、可変抵抗部VRinに対して直列に抵抗Rtが設けられていてもよい。
【0066】
次に、実施の形態5に係る測定装置の動作について説明する。
【0067】
実施の形態3では、コントローラ15aは、電流センサ12によって上述の直流定電流の供給開始が検知されると、可変抵抗部VRinの抵抗値を第1抵抗値から第2抵抗値へ変化させる。これにより、アンプ回路13の前段回路の時定数が、可変抵抗部VRinの第2抵抗値とカップリングキャパシタCcの静電容量値との積となり、可変抵抗部VRinの抵抗値が第1抵抗値であるときより小さくなる。
【0068】
このため、直流定電流の供給開始に対する前段回路(カップリングCc、抵抗Rin、可変抵抗部VRtなど)の過渡応答が短時間で収束し、短時間で信号処理部14の測定動作開始が可能となる。
【0069】
コントローラ15aは、可変抵抗部VRinの抵抗値を第2抵抗値へ変化させた時点からタイマなどで計時し所定時間(つまり、上述の所定期間の時間長)が経過すると、可変抵抗部VRinの抵抗値を第1抵抗値に変化させる。これにより、測定動作開始時には、アンプ回路13の入力インピーダンスが高い状態となり、測定動作期間において、センサ出力信号が適切にアンプ回路13に入力される。
【0070】
なお、実施の形態5に係る測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0071】
以上のように、上記実施の形態5によれば、実施の形態1~4と同様に、時定数制御部15は、上述の所定期間においてアンプ回路13の前段回路の時定数を小さくする制御を行うことで、直流定電流供給開始時の過渡応答を短時間で収束させる。これにより、定電流駆動方式の測定装置での直流定電流供給開始時における待機時間が短く設定できる。
【0072】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0073】
例えば、上記実施の形態1~5では、アンプ回路13の前段回路の抵抗成分の値を変化させて時定数を変化させているが、その代わりに、あるいは併せて静電容量成分の値(カップリングキャパシタCcの静電容量値など)を変化させて時定数を同様に変化させるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態1,2,4において、スイッチ部SWと手動スイッチ部SW1とを並列に設け、ユーザの操作、および電流センサ12による直流定電流供給開始の検出のいずれによっても、時定数制御部15が、所定期間においてアンプ回路13の前段回路の時定数を上述のように小さくするように制御を行ってもよい。
【0075】
また、上記実施の形態1~5では、測定装置の一例として音響振動計測器を示しているが、定電流駆動方式を採用する他の測定装置でも勿論よい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えば、音響振動計測器などといった測定装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
11 直流定電流回路
12 電流センサ
13 アンプ回路
14 信号処理部
15 時定数制御部
15a コントローラ
16 前段回路
17 インピーダンス部
Cc カップリングキャパシタ
Rin 抵抗
Rt 抵抗
SW スイッチ部
SW1 手動スイッチ部(スイッチ部の一例)
VRt,VRin 可変抵抗部
図1
図2
図3
図4
図5