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特許7315372インピーダンス測定システム及びインピーダンス測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】インピーダンス測定システム及びインピーダンス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20230719BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230719BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019090009
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186946
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】木本 基明
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014603(JP,A)
【文献】特開2018-109585(JP,A)
【文献】特開2001-281280(JP,A)
【文献】特開2010-002199(JP,A)
【文献】特開2011-257340(JP,A)
【文献】国際公開第2005/078673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 27/00-27/32、
31/36-31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源と、
前記測定対象電子部品に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記測定対象電子部品の端子間に発生する電圧を測定する電圧検出部とを含み、
前記測定対象電子部品のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置を有するインピーダンス測定システムであって、
前記測定対象電子部品は、少なくとも一対の端子を有し、
前記測定信号発生源は、少なくとも一対の出力端子を有し、
前記測定対象電子部品は、互いに重ね合わされて配設された二つの測定対象電子部品が一組となり、該一組の測定対象電子部品は、一方の測定対象電子部品の一方の端子と、他方の測定対象電子部品の一方の端子とが短絡して直列に接続され、一方の測定対象電子部品に流れる電流の向きが、他方の測定対象電子部品に流れる電流の向き逆方向となるように電流経路が形成され、
前記一組の測定対象電子部品の一方の測定対象電子部品であって他方の測定対象電子部品に接続されない端子に、前記測定信号発生源の一方の出力端子に接続されるプローブが接続され、
前記一組の測定対象電子部品の他方の測定対象電子部品であって前記一方の測定対象電子部品の端子に接続されない端子に、前記測定信号発生源の他方の出力端子に接続されるプローブが接続され、
それぞれの前記測定対象電子部品の一対の端子には、前記電圧検出部に接続されるプローブが接続される、
ことを特徴とするインピーダンス測定システム。
【請求項2】
前記一組の測定対象電子部品が複数組配設されている場合に、前記電圧検出部は前記各組の測定対象電子部品の内の一方の測定対象電子部品及び他方の測定対象電子部品に対応する数だけ配設され、前記各電圧検出部によって前記各組のそれぞれの測定対象電子部品の両端子間の電圧が検出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のインピーダンス測定システム。
【請求項3】
測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源と、
前記測定対象電子部品に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記測定対象電子部品の端子間に発生する電圧を測定する電圧検出部とを含み、
前記測定対象電子部品のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置を有するインピーダンス測定システムであって、
前記測定対象電子部品は、少なくとも一対の端子を有し、
前記測定信号発生源は、少なくとも一対の出力端子を有し、
前記測定対象電子部品は、互いに重ね合わされて配設された二つの測定対象電子部品が一組となり、該一組の測定対象電子部品は、一方の測定対象電子部品の一方の端子と、他方の測定対象電子部品の一方の端子とが短絡して直列に接続され、一方の測定対象電子部品に流れる電流の向きが、他方の測定対象電子部品に流れる電流の向き逆方向となるように電流経路が形成され
前記測定対象電子部品が第1の測定対象電子部品~第n(nは2以上の偶数)の測定対象電子部品から構成され、第1の測定対象電子部品~第nの測定対象電子部品がその順に互いに隣接して配置されている場合に、前記第1の測定対象電子部品の前記測定信号発生源側にある端子に前記測定信号発生源の一対の出力端子の一方に接続されるプローブが接続され、
前記第nの測定対象電子部品の前記測定信号発生源側にある端子に前記測定信号発生源の一対の出力端子の他方に接続されるプローブが接続され、
前記第1の測定対象電子部品から前記第nの測定対象電子部品までが直列に接続されるように隣接する測定対象電子部品において自己側の一方の端子と相手側の他方の端子とが短絡され、
それぞれの前記測定対象電子部品の一対の端子には、前記電圧検出部に接続されるプローブが接続される、
ことを特徴とするインピーダンス測定システム。
【請求項4】
前記一組の測定対象電子部品が複数組配設されている場合に、
複数のスイッチを有する信号選択部を備え、
前記複数のスイッチは、少なくとも前記測定信号発生源に接続された第1のスイッチ群と、電流検出部に接続された第2のスイッチ群と、電圧検出部に接続された第3のスイッチ群とからなり、
前記第1のスイッチ群は、
前記測定信号発生源の出力側に接続されている第1の入力端子と、
前記第1の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第1の出力端子と、
前記第1の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第2の出力端子と、
前記測定信号発生源の入力側に接続されている第2の入力端子と、
前記第2の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第3の出力端子と、
前記第2の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第4の出力端子と、
を含んで構成され、
前記第2のスイッチ群は、
前記電流検出部に接続されている第3の入力端子と、
前記第3の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第5の出力端子と、
前記第3の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第6の出力端子と、
前記電流検出部に接続されている第4の入力端子と、
前記第4の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第7の出力端子と、
前記第4の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第8の出力端子と、
を含んで構成され、
前記第3のスイッチ群は、
前記電圧検出部に接続されている第5の入力端子と、
前記第5の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第9の出力端子と、
前記第5の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第10の出力端子と、
前記電圧検出部に接続されている第6の入力端子と、
前記第6の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の一組の測定対象電子部品側に接続されている第11の出力端子と、
前記第6の入力端子と接断され前記複数組の測定対象電子部品の他の組の測定対象電子部品側に接続されている第12の出力端子と、
を含んで構成され、
前記信号選択部は、前記複数組の測定対象電子部品の各組ごとに、測定対象の変更に応じて前記第1のスイッチ群~第3のスイッチ群における前記第1の出力端子と前記第2の出力端子、前記第3の出力端子と前記第4の出力端子、前記第5の出力端子と前記第6の出力端子、前記第7の出力端子と前記第8の出力端子、前記第9の出力端子と前記第10の出力端子、前記第11の出力端子と前記第12の出力端子とを切替え、
前記切替えによって、前記各組の測定対象電子部品の一方及び他方の測定対象電子部品の両端にかかる電圧が前記各組の測定対象電子部品ごとに検出される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインピーダンス測定システム。
【請求項5】
測定信号発生源が、測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給し、
電流検出部が、前記測定対象電子部品に流れる電流を検出し、
電圧検出部が、前記測定対象電子部品の端子間に発生する電圧を測定し、
検出された電流の電流値と測定された電圧の電圧値に基づいて前記測定対象電子部品のインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、
前記測定対象電子部品は、少なくとも一対の端子を有し、
前記測定対象電子部品は、互いに重ね合わされて配設された二つの測定対象電子部品が一組となり、該一組の測定対象電子部品は、前記一組の測定対象電子部品の一方の端子と、他方の測定対象電子部品の一方の端子とが短絡して直列に接続され、一方の測定対象電子部品に流れる電流の向きが、他方の測定対象電子部品に流れる電流の向き逆方向となるように電流経路が形成され
前記一組の測定対象電子部品の一方の測定対象電子部品であって他の測定対象電子部品に接続されない端子に、前記測定信号発生源の出力に接続されるプローブを接続し、
前記一組の測定対象電子部品の他方の測定対象電子部品であって前記一方の測定対象電子部品の端子に接続されない端子に、前記測定信号発生源の入力に接続されるプローブを接続し、
それぞれの前記測定対象電子部品の一対の端子には、前記電圧検出部に接続されるプローブを接続する、
ことを特徴とするインピーダンス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定システム及びインピーダンス測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に存在する導体パターン、電池、素子等(以下、これらを「被測定試料(DUT)」という)のインピーダンスを測定する方法の一つとして4端子法(以下の特許文献1参照)が知られている。4端子法を用いるインピーダンス測定装置は、測定信号源の一対の出力端子からの電流計測線と電圧計からの電圧計測線を捩ってなるツイストケーブルを用いて構成されている(図5参照)。図5において、インピーダンス測定システム200は、バッテリセル220に電流計測線(電流ケーブル)213,214、電圧計測線(電圧ケーブル)215,216を介して接続されるインピーダンス測定装置203を有して構成されている。インピーダンス測定装置203は、測定信号を発生する測定信号源205と、電圧検出手段としての電圧計209と、電流検出手段としての電流計207を含んで構成されている。
【0003】
具体的には、図5に示すように、測定信号源205より電流計測線213,214を捩ってなるツイストケーブルを介して測定対象としてのバッテリセル220のタブ端子220a,220bに測定電流Isを流し、その時同時に電圧計209によってバッテリセル220のタブ端子220a,220b間の電圧の電圧値Vが計測され、電流計207によって測定電流Isの電流値が計測される。測定電流Isの電流値と電圧値Vに基づいてバッテリセル220のインピーダンスZが算出される。この4端子法を用いるインピーダンス測定装置によれば、測定系の電気配線(リード線)の配線抵抗や被測定試料との接触抵抗の影響をほとんど排除することができる。
【0004】
また、被測定試料(DUT)のインピーダンスを測定する他の方法として4端子対法が知られている(以下の特許文献1参照)。4端子対法を用いるインピーダンス測定装置は、4つの電流プローブの電気配線として同軸ケーブルを用いて各同軸ケーブルの各外部導体(シールド被覆線)のすべてを各プローブの基端付近でリード線にて接続し短絡させる構成となっている。
【0005】
上記した4端子法によれば、測定電流径路内において、測定電流Isの往路と復路とが重ね合わされるため、測定電流により生ずる磁束の影響(電磁誘導)を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-257340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、4端子法においては、電流計測線に流れる測定電流により発生する磁束(図5の磁束線参照)によって電圧計測線に誘導電圧が誘起され、その誘起された誘導電圧が電圧計で計測する電池両端電圧に重畳されることで測定結果に誤差を生じさせてしまう。また、図5に示すように、測定対象が例えばEV向けのラミネート型電池セル(一次電池、二次電池等)の場合には、電池セルの端子間の距離は長いもので約800mm程度となるケースもある。電池セル近辺では、測定電流を印加する電流経路(図5の楕円で囲まれた領域)において漏れ磁束が発生するループができてしまう。
【0008】
また、電圧検出部と電池セルを接続している電圧計測線の経路(図5の楕円で囲まれた領域)にも、電流経路に発生する上述した漏れ磁束と交錯するループが生じてしまう。したがって、物理的に電流計測線の経路及び電圧計測線の経路におけるループ同士が重なり合ってしまうため、電磁誘導の影響を受けやすくなるという問題があった。
【0009】
また、測定対象が複数あった場合には、測定対象を変える度に、電流計測線及び電圧計測線の測定対象側の端子を変更後の測定対象の端子に接続し直さなければならず処理時間の遅延につながっていた。
【0010】
したがって、本発明の課題は、測定対象の端子付近における電流計測線の一部で発生する磁束漏れループ、測定対象の端子付近における電圧計測線の一部で生じる磁束漏れによる電磁誘導の影響を抑制できるインピーダンス測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るインピーダンス測定システムの一側面は、少なくとも一対の端子を有する測定対象電子部品であって、少なくとも一組の測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源と、測定信号発生源の一対の出力端子の一方から他方の間に配置された測定対象電子部品に流れる電流を検出する電流検出部と、一組の測定対象電子部品のそれぞれの両端子間に発生する電圧を測定する少なくとも一つの電圧検出部とを含み、各測定対象電子部品のそれぞれのインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置を有するインピーダンス測定システムであって、測定信号発生源の一対の出力端子の一方と他方の間の電流経路内に前記一組の測定対象電子部品の一方と他方が重ね合わせて配設され、一組の測定対象電子部品の一方に流れる電流の向きと一組の測定対象電子部品の他方に流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、一組の測定対象電子部品と測定信号発生源及び前記電流検出部との間で電流経路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るインピーダンス測定システムの他の側面は、少なくとも一対の端子を有する測定対象電子部品であって、少なくとも一組の測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源と、測定信号発生源の一対の出力端子の一方から他方の間に配置された前記測定対象電子部品に流れる電流を検出する電流検出部と、一組の測定対象電子部品のそれぞれの両端子間に発生する電圧を測定する少なくとも一つの電圧検出部とを含み、各測定対象電子部品のそれぞれのインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置を有するインピーダンス測定システムであって、測定信号発生源の一対の出力端子の一方と他方の間の電流経路内に一組の測定対象電子部品が配設され、一組の測定対象電子部品の内の一方の測定対象電子部品の一方の端子と、他方の測定対象電子部品の他方の端子とを短絡させて一方の測定対象電子部品と他方の測定対象電子部品が直列接続されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るインピーダンス測定システムの他の側面は、一組の測定対象電子部品が複数組配設されている場合に、電圧検出部は各組の測定対象電子部品の内の一方の測定対象電子部品及び他方の測定対象電子部品に対応する数だけ配設され、各電圧検出部によって各組のそれぞれの測定対象電子部品の両端子間の電圧が検出されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るインピーダンス測定システムの他の側面は、複数組の測定対象電子部品が第1の測定対象電子部品~第n(nは2以上の整数)の測定対象電子部品から構成され、第1の測定対象電子部品~第nの測定対象電子部品がその順に互いに隣接して配置されている場合に、測定信号発生源の一対の出力端子の一方が第1の測定対象電子部品の測定信号発生源側にある端子に接続され、測定信号発生源の一対の出力端子の他方が電流検出部を介して第nの測定対象電子部品の測定信号発生源側にある端子に接続され、第1の測定対象電子部品から第nの測定対象電子部品までが直列に接続されるように隣接する測定対象電子部品において自己側の一方の端子と相手側の他方の端子を短絡させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るインピーダンス測定システムの他の側面は、一組の測定対象電子部品が複数組配設されている場合に、電圧検出部は、第1の測定対象電子部品~第nの測定対象電子部品の測定ごとに、それぞれ第1の測定対象電子部品~第nの測定対象電子部品へ接続されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るインピーダンス測定システムの他の側面は、一組の測定対象電子部品が複数組配設されている場合に、複数のスイッチを有する信号選択部を備え、複数のスイッチは、少なくとも前記測定信号発生源に接続された第1のスイッチ群と、電流検出部に接続された第2のスイッチ群と、電圧検出部に接続された第3のスイッチ群とからなり、第1のスイッチ群は、少なくとも測定信号発生源に接続されている電流計測線の他端側における第1の電流計測線端部に接続されている第1の入力端子と、電流計測線の他端側における第2の電流計測線端部に接続されている第2の入力端子と、一の測定対象電子部品に接続されている電流計測線の他端側における第3の電流計測線端部に接続されている第1の出力端子と、電流計測線の他端側における第4の電流計測線端部に接続されている第2の出力端子を含んで構成され、第2のスイッチ群は、少なくとも電流検出部に接続されている電流計測線の他端側における第1の電流計測線端部に接続されている第3の入力端子と、電流計測線の他端側における第2の電流計測線端部に接続されている第4の入力端子と、一の測定対象電子部品に接続されている電流計測線の他端側における第3の電流計測線端部に接続されている第3の出力端子と、電流計測線の他端側における第4の電流計測線端部に接続されている第4の出力端子を含んで構成され、第3のスイッチ群は、少なくとも電圧検出部に接続されている電圧計測線の他端側における第1の電圧計測線端部に接続されている第5の入力端子と、電圧計測線の他端側における第2の電圧計測線端部に接続されている第6の入力端子と、一の測定対象電子部品に接続されている電圧計測線の他端側における第3の電圧計測線端部に接続されている第5の出力端子と、電圧計測線の他端側における第4の電圧計測線端部に接続されている第6の出力端子を含んで構成され、信号選択部は、複数組の測定対象電子部品の各組ごとに、測定対象の変更に応じて前記第1のスイッチ群~第3のスイッチ群における第1~第6の出力端子を切り換え、切替えによって、各組の測定対象電子部品の一方及び他方の測定対象電子部品の両端にかかる電圧が各組の測定対象電子部品ごとに検出されることを特徴とする。
【0017】
本発明のインピーダンス測定方法の一側面は、少なくとも一対の端子を有する測定対象電子部品であって、少なくとも一組の測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源の一対の出力端子の一方から他方の間に配置された前記測定対象電子部品に流れる電流を電流検出部が検出し、一組の測定対象電子部品のそれぞれの両端子間に発生する電圧を少なくとも一つの電圧検出部が測定し、検出された電流の電流値と測定された電圧の電圧値に基づいて、各測定対象電子部品のそれぞれのインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、測定信号発生源の一対の出力端子の一方と他方の間の電流経路内に前記一組の測定対象電子部品の一方と他方を重ね合わせて配設し、一組の測定対象電子部品の一方に流れる電流の向きと一組の測定対象電子部品の他方に流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、一組の測定対象電子部品と測定信号発生源及び電流検出部間で電流経路を形成することを特徴とする
【0018】
本発明のインピーダンス測定方法の他の側面は、少なくとも一対の端子を有する測定対象電子部品であって、少なくとも一組の測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源の一対の出力端子の一方から他方の間に配置された前記測定対象電子部品に流れる電流を電流検出部が検出し、一組の測定対象電子部品のそれぞれの両端子間に発生する電圧を少なくとも一つの電圧検出部が測定し、検出された電流の電流値と測定された電圧の電圧値に基づいて、各測定対象電子部品のそれぞれのインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、測定信号発生源の一対の出力端子の一方と他方の間の電流経路内に一組の測定対象電子部品の一方と他方を重ね合わせて配設し、一組の測定対象電子部品の一方に流れる電流の向きと一組の測定対象電子部品の他方に流れる電流の向きが互いに逆方向になるように、一組の測定対象電子部品と測定信号発生源及び電流検出部間で電流経路を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明のインピーダンス測定方法の他の側面は、少なくとも一対の端子を有する測定対象電子部品であって、少なくとも一組の測定対象電子部品に所定周波数の測定信号を供給する測定信号発生源の一対の出力端子の一方から他方の間に配置された測定対象電子部品に流れる電流を電流検出部が検出し、一組の測定対象電子部品のそれぞれの両端子間に発生する電圧を少なくとも一つの電圧検出部が測定し、検出された電流の電流値と測定された電圧の電圧値に基づいて、各測定対象電子部品のそれぞれのインピーダンスを測定するインピーダンス測定方法であって、測定信号発生源の一対の出力端子の一方と他方の間の電流経路内に一組の測定対象電子部品が配設され、一組の測定対象電子部品の内の一方の測定対象電子部品の一方の端子と、他方の測定対象電子部品の他方の端子とを短絡させて一方の測定対象電子部品と他方の測定対象電子部品を直列接続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
測定対象の端子付近における電流計測線の一部で発生する磁束漏れループ、測定対象の端子付近における電圧計測線の一部で生じる磁束漏れによる電磁誘導の影響を抑制するとともに測定処理時間の短縮を図ることができるインピーダンス測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインピーダンス測定システムの構成を示し、第1の接続構成態様を示した図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係るインピーダンス測定システムの構成を示し、第2の接続構成態様を示した図である。
図3】本発明の第2の実施の形態の変形例に係るインピーダンス測定システムの構成を示した図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係るインピーダンス測定システムの構成を示した図である。
図5】従来のインピーダンス測定システムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施の形態>
以下に、図1を参照して本発明に係るインピーダンス測定システムの第1の実施の形態について説明する。なお、インピーダンス測定システムの測定対象電子部品(以下、「測定対象」と呼ぶ。)は、バッテリセル(電池セル)、電気回路を構成する素子であり、インピーダンスの測定は、バッテリセルや素子の特性評価等に重要な電気的パラメータとしてのインピーダンスを測定する。本実施の形態では測定対象としてバッテリセルを例に挙げて説明する。本発明はインピーダンス測定システムを構成するインピーダンス測定装置とバッテリセルとの接続態様に特徴があり、それに関連してバッテリセルは少なくとも2つ必要であり、互いに近距離で重ね合わせて配置されている。
【0023】
[インピーダンス測定システムの構成]
インピーダンス測定システム1は、バッテリセル31、33にシールド線21,27を介して接続されるインピーダンス測定装置3を有して構成されている。インピーダンス測定装置3は、測定信号を発生する測定信号源11、電流検出部としての電流計13及び電圧検出部としての第1の電圧計15及び第2の電圧計17を含んで構成されている。なお、測定信号源11は請求項1の測定信号発生源に相当する。
【0024】
[測定装置とバッテリセルとの接続態様]
以下に、インピーダンス測定装置3と測定対象であるバッテリセル31、33との接続態様について説明する。インピーダンス測定装置3でバッテリセル31、33のインピーダンスを測定するにあたって、測定信号源11、第1の電圧計15、第2の電圧計17及び電流計13とバッテリセル31、33とをプローブP1~P8を介して接続させる必要がある。これらの各プローブは構造的には変わらないが、本明細書では、説明の便宜上、電流系統側のものを電流プローブといい、電圧系統側のものを電圧プローブという。
プローブとしては、測定信号源11からバッテリセル31、33に流れる電流の経路である測定電流ループ内に含まれる4つの電流プローブP1、P2、P3、P4と、バッテリセル31の電圧検出ループ内に含まれる2つの電圧プローブP5、P6、バッテリセル33の電圧検出ループ内に含まれる2つの電圧プローブP7、P8が用いられる。
【0025】
ここで、電流プローブP1、P2、P3、P4の電気配線としてシールド線(同軸ケーブル)21,27を用い、電圧プローブP5、P6の電気配線として電圧計測線23a,23bを互いに捩って形成されたツイストケーブル23が用いられ、電圧プローブP7、P8の電気配線として電圧計測線25a,25bを互いに捩って形成されたツイストケーブル25が用いられる。
【0026】
バッテリセル31のタブ端子31aは、プローブP1、シールド線21の芯線21aを介して測定信号源11の一対の出力端子の一方に接続され、もう一方のタブ端子31bは、プローブP3、シールド線27の芯線27aを介して電流計13の入力部に接続されている。バッテリセル33のタブ端子33aはプローブP2、シールド線21のシールド導体21b(リターン線)を介して測定信号源11の一対の出力端子の他方に接続され、もう一方のタブ端子33bはプローブP4、シールド線27のシールド導体27b(リターン線)を介して電流計13の出力部に接続されている。
【0027】
このように、バッテリセル31に流れる測定電流の向きとバッテリセル33に流れる測定電流の向きが逆向きになるようにバッテリセル31、33が配置される。図1の例では、バッテリセル31に流れる測定電流の向きは測定信号源11から電流計に向かう向き(左向きの矢印)となり、バッテリセル33に流れる測定電流の向きは電流計13から測定信号源11に向かう向き(右向きの矢印)となり互いに逆向きとなる。
【0028】
バッテリセル31のタブ端子31aは、プローブP5を介して、ツイストケーブル23の電圧計測線23aに接続され、もう一方のタブ端子31bは、プローブP6を介して、ツイストケーブル23の電圧計測線23bに接続されている。
第1の電圧計15は、ツイストケーブル23の一端側における電圧計測線23aの端部と電圧計測線23bの端部との間に配設され、上記測定電流ループに流れる測定電流Isに起因して電圧計測線23aの端部と電圧計測線23bの端部との間に生じる電圧Vを測定し、測定された電圧Vは図示しない演算処理部(測定装置3内に含まれる)に出力される。第2の電圧計17は、ツイストケーブル25の一端側における電圧計測線25aの端部と電圧計測線25bの端部との間に配設され、上記測定電流ループに流れる測定電流Isに起因して電圧計測線25aの端部と電圧計測線25bの端部との間に生じる電圧Vを測定し、測定された電圧Vは上記した演算処理部に出力される。
【0029】
[測定方法]
バッテリセル31のインピーダンス測定については、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル31に流れる電流)の電流値と、バッテリセル31の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル31のインピーダンスZ31が算出される。
【0030】
バッテリセル33のインピーダンス測定については、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル33に流れる電流)の電流値と、バッテリセル33の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル33のインピーダンスZ33が算出される。
【0031】
なお、バッテリセル31,33のそれぞれの端子間電圧V,Vの測定は同時に行われ、第1の電圧計15と第2の電圧計17は、測定電流Isの極性(正極、負極)が反転してしまうので測定電流Isの極性に合わせて検出される。本例では電圧計が2つの場合について説明したが、後述するスキャナー(図4参照)を用いた場合には電圧計が1つであっても、測定対象を変更する毎にスキャナーを構成するスイッチによる切替えを行って順次インピーダンス測定すればよい。
【0032】
[効果]
上記した第1の実施の形態に係るインピーダンス測定システムによれば、一組のバッテリセルを用いてそれぞれのバッテリセルに流れる電流の向きを異ならせる構成にしたので、バッテリセルにおいて磁束の発生を抑制できる。また、測定電流Isを印加する測定信号源11からバッテリセルを介して流れる測定電流ループのループ長を従来(図5参照)の測定電流ループのループ長に比較して最小化できるので測定電流により発生する磁束が漏れるループを最小限にできる。
【0033】
電圧計を起点とする電圧検出ループの位置と測定電流ループの位置を分離することができるため、測定電流ループと電圧検出ループの重なり合いによって生じる電磁誘導の影響を低減することができる。また、電圧計が2チャンネルの場合には、2つのバッテリセルが同時に測定できるため測定時間を短縮することができる。なお、ラミネート型バッテリセル以外の円筒型、角型セルや、電池以外の測定対象においても同様に電磁誘導の影響を低減することができる。
【0034】
<第2の実施の形態>
以下に、図2を参照して本発明に係るインピーダンス測定システムの第2の実施の形態について説明する。なお、本第2の実施の形態においても、上記した第1の実施の形態と同様に、1組のバッテリセルであって、互いに近距離で重ね合わせて配置されているバッテリセルを測定対象の例として説明するが、それ以外の例えば電気回路を構成する素子等であっても適用できる。
【0035】
[インピーダンス測定システムの構成]
インピーダンス測定システム40は、バッテリセル61、63に電流計測線(電流ケーブル)51,52、電圧計測線(電圧ケーブル)53,54,55,56を介して接続されるインピーダンス測定装置43を有して構成されている。インピーダンス測定装置43は、測定信号を発生する測定信号源44と、電圧検出手段としての第1の電圧計46及び第2の電圧計48と、電流検出手段としての電流計45を含んで構成されている。なお、測定信号源44は請求項1の測定信号発生源に相当する。
【0036】
[測定装置とバッテリセルとの接続態様]
以下に、インピーダンス測定装置43と測定対象であるバッテリセル61、63との接続態様について説明する。インピーダンス測定装置43で測定対象としてのバッテリセル61、63のそれぞれのインピーダンスZ61,Z63を測定するにあたって、測定信号源44、電流計45、第1の電圧計46、第2の電圧計48とバッテリセル61,63とを電流計測線51,52、電圧計測線53,54,55,56を介して接続させる。ここで、測定信号源44からバッテリセル61,63を介して電流計45に流れる電流の経路である測定電流ループ内に含まれる2つの電流プローブP1、P2と、バッテリセル61の電圧検出の経路である電圧検出ループ内に含まれる2つの電圧プローブP3、P4、バッテリセル63の電圧検出の経路である電圧検出ループ内に含まれる2つの電圧プローブP5、P6が用いられる。また、電流プローブP1、P2の電気配線として電流計測線51,52を互いに捩って形成されたツイストケーブルが用いられ、電圧プローブP3、P4の電気配線として電圧計測線53,54を互いに捩って形成されたツイストケーブルが用いられ、電圧プローブP5、P6の電気配線として電圧計測線55,56を互いに捩って形成されたツイストケーブルが用いられる。
【0037】
測定信号源44の一対の出力端子(図示せず)の一方は、電流計測線51、電流プローブP1を介してバッテリセル61のタブ端子61aに接続され、測定信号源44の一対の出力端子の他方は、電流計45、電流計測線52、電流プローブP2を介してバッテリセル63のタブ端子63aに接続されている。
【0038】
このように、バッテリセル61に流れる測定電流の向きとバッテリセル63に流れる測定電流の向きが逆向きになるようにバッテリセル61、63が配置される。図2の例では、バッテリセル61に流れる測定電流の向きは測定信号源44の一方の出力端子から離れる方向に(図2の右向きの矢印)となり、バッテリセル63に流れる測定電流の向きは測定信号源44に向かう向き(図2の左向きの矢印)となり互いに逆向きとなる。
【0039】
バッテリセル61のタブ端子61bは、短絡線58を介してバッテリセル63のタブ端子63bに接続されている。第1の電圧計46は、電圧計測線53の端部と電圧計測線54の端部との間に配設され、上記測定電流ループに流れる測定電流Isに起因して電圧計測線53の端部と電圧計測線54の端部との間に生じる電圧Vを測定し、測定された電圧Vは図示しない演算処理部に出力される。
【0040】
第2の電圧計48は、電圧計測線55の端部と電圧計測線56の端部との間に配設され、上記測定電流ループに流れる測定電流Isに起因して電圧計測線55の端部と電圧計測線56の端部との間に生じる電圧Vを測定し、測定された電圧Vは図示しない演算処理部(測定部に含まれる)に出力される。
【0041】
[測定方法]
バッテリセル61のインピーダンス測定については、演算処理部において電流計45で測定された測定電流Is(バッテリセル61に流れる電流)の電流値と、バッテリセル61の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル61のインピーダンスZ61が算出される。
【0042】
バッテリセル63のインピーダンス測定については、演算処理部において電流計45で測定された測定電流Is(バッテリセル63に流れる電流)の電流値と、バッテリセル63の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル63のインピーダンスZ63が算出される。
【0043】
なお、バッテリセル61,63のそれぞれの端子間電圧V,Vの測定は同時に行われ、第1の電圧計46と第2の電圧計48は、測定電流Isの極性(正極、負極)が反転してしまうので測定電流Isの極性に合わせて検出される。本例では電圧計が2つの場合について説明したが、後述するスキャナーを用いた場合には電圧計が1つであっても、測定対象を変更する毎にスキャナーを構成するスイッチによる切替えを行って順次インピーダンス測定すればよい。
【0044】
[効果]
上記した第2の実施の形態に係るインピーダンス測定システムによれば、一組のバッテリセルを用いてそれぞれのバッテリセル61,63に流れる電流の向きを異ならせる構成にしたので、バッテリセル61,63において磁束の発生を抑制できる。また、測定電流Isを印加する測定信号源44からバッテリセル61,63を介して流れる測定電流ループのループ長を従来(図5参照)の測定電流ループのループ長に比較して最小化できるので測定電流により発生する磁束が漏れるループを最小限にできる。
【0045】
電圧計を起点とする電圧検出ループの位置と測定電流ループの位置を分離することができるため、測定電流ループと電圧検出ループの重なり合いによって生じる電磁誘導の影響を低減することができる。また、電圧計を2つ用いており2つのバッテリセルが同時に測定できるため測定時間を短縮することができる。なお、ラミネート型バッテリセル以外の円筒型、角型セルや、電池以外の測定対象においても同様に電磁誘導の影響を低減することができる。
【0046】
<変形例>
以下に、図3を参照して上記した第2の実施の形態に係るインピーダンス測定システムの変形例について説明する。上記した第2の実施の形態では測定対象が一組のバッテリセル(セルの個数は2つ)であるのに対して、本変形例の測定対象は二組のバッテリセル(セルの個数は4つ)であり、互いに近距離で重ね合わせて配置されている。なお、本変形例ではバッテリセルを測定対象の例として説明するが、それ以外の例えば電気回路を構成する素子等であっても適用できる。また、上記した第2の実施の形態とは、インピーダンス測定装置とバッテリセルとの接続態様、バッテリセルの個数が異なる以外は同様であるので、異なる部分のみ説明することとする。
【0047】
[測定装置とバッテリセルとの接続態様]
以下に、インピーダンス測定システム70と測定対象であるバッテリセル91,93,95,97との接続態様について説明する。インピーダンス測定システム70で測定対象としてのバッテリセル91,93,95,97のそれぞれのインピーダンスZ91,Z93,Z95,Z97を測定するにあたって、測定信号源81、電流計82、電圧計83を含んで構成されるインピーダンス測定装置73とバッテリセル91,93,95,97とを電流計測線84,85、電圧計測線86,87を介して接続させる。
測定信号源81の一対の出力端子(図示せず)の一方は、電流計測線84を介してバッテリセル91のタブ端子91bに接続され、測定信号源81の一対の出力端子の他方は、電流計82、電流計測線85を介してバッテリセル97のタブ端子97bに接続されている。バッテリセル91のタブ端子91aとバッテリセル93のタブ端子93bとが短絡線88を介して接続され、バッテリセル93のタブ端子93aとバッテリセル95のタブ端子95bとが短絡線89を介して接続され、バッテリセル95のタブ端子95aとバッテリセル97のタブ端子97aが短絡線90を介して接続されている。
このように、バッテリセル91,93,95,97同志の接続態様を、バッテリセル91,93,95,97のそれぞれに流れる測定電流の向きが隣接するバッテリセルに流れる測定電流の向きと逆向きになるようにしている。
【0048】
[測定方法]
バッテリセル91,93,95,97のそれぞれのタブ端子間の電圧測定は、電圧計測線86,87のそれぞれの端部に位置する電圧プローブP3,P4を、測定電流Isの極性に合わせて、バッテリセル91,93,95,97の順に切り替えることによって行われる。具体的には、まず、電圧プローブP3,P4をそれぞれバッテリセル91の一対のタブ端子91b、91aに接続して測定電流Isの極性(例えば正極性)に合わせて、バッテリセル91のタブ端子91b、91a間の電圧Vが計測される。その後電圧プローブP3,P4をそれぞれバッテリセル93の一対のタブ端子93a、93bに接続して測定電流Isの極性(例えば正極性)に合わせて、バッテリセル93のタブ端子93a、93b間の電圧Vが計測される。その後電圧プローブP3,P4をそれぞれバッテリセル95の一対のタブ端子95b、95aに接続して測定電流Isの極性(例えば正極性)に合わせて、バッテリセル95のタブ端子95a、95b間の電圧Vが計測される。その後電圧プローブP3,P4をそれぞれバッテリセル97の一対のタブ端子97b、97aに接続して測定電流Isの極性(例えば正極性)に合わせて、バッテリセル97のタブ端子97a、97b間の電圧Vが計測される。
【0049】
[効果]
上記した変形例に係るインピーダンス測定システムによれば、二組のバッテリセルを用いてバッテリセル91,93,95,97のそれぞれに流れる測定電流の向きが隣接するバッテリセルに流れる測定電流の向きと逆向きになるような構成にしたので、バッテリセル91,93,95,97において磁束の発生を抑制できる。また、測定電流Isを印加する測定信号源81からバッテリセル91,93,95,97を介して流れる測定電流ループのループ長を従来(図5参照)の測定電流ループのループ長に比較して最小化できるので測定電流により発生する磁束が漏れるループを最小限にできる。
【0050】
電圧計を起点とする電圧検出ループの位置と測定電流ループの位置を分離することができるため、測定電流ループと電圧検出ループの重なり合いによって生じる電磁誘導の影響を低減することができる。なお、ラミネート型バッテリセル以外の円筒型、角型セルや、電池以外の測定対象においても同様に電磁誘導の影響を低減することができる。
【0051】
<第3の実施の形態>
以下に、図4を参照して本発明に係るインピーダンス測定システムの第3の実施の形態について説明する。本第3の実施の形態は、上記した第1の実施の形態に係るインピーダンス測定システムとは、インピーダンス測定装置3とバッテリセル31,33,35,37の間にスキャナー5を配置している点と、一対のバッテリセルが二組配設している点を除いて同様であるので、主に異なる点を詳細に説明する。なお、一方の組のバッテリセル31、33と他方の組のバッテリセル35、37は近接して配置されているが、図4では作図の関係で所定間隔離をおいた状態で示されている。なお、スキャナー5は請求項5の信号選択部に相当する。
【0052】
[インピーダンス測定システムの構成]
インピーダンス測定システム100は、インピーダンス測定装置3と、スキャナー5と、第1の組のバッテリセル31,33、第2の組のバッテリセル35,37を含んで構成されている。インピーダンス測定装置3は、測定信号源11と、第1の電圧計15及び第2の電圧計17と、電流計13とを有して構成されている。シールド線21,27及びツイストケーブル23,25は上記した第1の実施の形態と同様であるが、スキャナー5のスイッチ101~108の選択によってシールド線21はシールド線121,221のいずれかに接続され、ツイストケーブル23はツイストケーブル123,223のいずれかに接続され、ツイストケーブル25はツイストケーブル125,225のいずれかに接続され、シールド線27はシールド線127,227のいずれかに接続される。なお、スイッチ101,102は請求項5の第1のスイッチ群に相当し、スイッチ107,108は請求項5の第2のスイッチ群に相当し、スイッチ103,104及びスイッチ105,106は請求項5の第3のスイッチ群に相当する。なお、電流プローブP1、P2、P3、P4の電気配線としてシールド線121,127,221,227を構成する芯線121aとシールド導体121b(リターン線),芯線127aとシールド導体127b(リターン線),芯線221aとシールド導体221b(リターン線),芯線227aとシールド導体227b(リターン線)において、それぞれの芯線とリターン線はスキャナー5内部の電磁誘導抑制のために互いに近接して並走配置されている。これによって電流ループは小さくなる。また、電圧プローブP5,P7および電圧プローブP6,P8を並走させ電圧計測ループも小さくできる。また、スキャナー5の内部においても、例えば、スイッチ101の端子b1と芯線121aを結ぶ電流計測線と、スイッチ102の端子b2とシールド導体121bを結ぶ電流計測線とを近接で並走させ、スイッチ101の端子c1と芯線221aを結ぶ電流計測線と、スイッチ102の端子c2とシールド導体221bを結ぶ電流計測線とを近接で並走させ、スイッチ107の端子b7と芯線127aを結ぶ電流計測線と、スイッチ108の端子b8とシールド導体127bを結ぶ電流計測線とを近接で並走させ、スイッチ107の端子c7と芯線227aを結ぶ電流計測線と、スイッチ108の端子c8とシールド導体227bを結ぶ電流計測線とを近接で並走させることで、スキャナー5の内部においても電磁誘導を抑制させることができる。さらに、スイッチ103~106とツイストケーブル123,125,223,225を結ぶ電圧計測線についても上記同様に近接で並走させることで、スキャナー5の内部においても電磁誘導を抑制させることができる。
【0053】
[測定装置とバッテリセルとの接続態様]
スキャナー5は、図4に示すように、信号選択部としてのスイッチ101~108を備え、スイッチ101~スイッチ108の選択(切り換え)の態様によって第1の接続態様と第2の接続態様が生じる。したがって、以下では、第1の接続態様と第2の接続態様に分けて説明する。
【0054】
第1の接続態様では、スイッチ101によってシールド線121の芯線121aに接続されている端子b1が選択され、スイッチ102によってシールド線121のシールド導体121bに接続されている端子b2が選択される。スイッチ103によってツイストケーブル123の電圧計測線123aに接続されている端子b3が選択され、スイッチ104によってツイストケーブル123の電圧計測線123bに接続されている端子b4が選択される。スイッチ105によってツイストケーブル125の電圧計測線125aに接続されている端子b5が選択され、スイッチ106によってツイストケーブル125の電圧計測線125bに接続されている端子b6が選択される。スイッチ107によってシールド線127の芯線127aに接続されている端子b7が選択され、スイッチ108によってシールド線127のシールド導体127bに接続されている端子b8が選択される。
【0055】
この第1の接続態様によって、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル31に流れる電流)の電流値と、電圧計15で測定されたバッテリセル31の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル31のインピーダンスZ31が算出される。さらに、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル33に流れる電流)の電流値と、電圧計17で測定されたバッテリセル33の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル33のインピーダンスZ33が算出される。その後、後述する第2の接続態様において図示しない操作部によって切換え操作を行ってバッテリセル35,37のインピーダンスZ35,Z37が算出される。
【0056】
なお、端子a1~a4,a7,a8、b1~b4,b7,b8と請求項5に記載の用語との対応関係については、端子a1は請求項5の「第1の入力端子」に相当し、端子a2は「第2の入力端子」に相当し、端子a3は「第5の入力端子」に相当し、端子a4は「第6の入力端子」に相当し、端子a7は「第3の入力端子」に相当し、端子a8は「第4の入力端子」に相当し、端子b1は「第1の出力端子」に相当し、端子b2は「第2の出力端子」に相当し、端子b3は「第5の出力端子」に相当し、端子b4は「第6の出力端子」に相当し、端子b7は「第3の出力端子」に相当し、端子b8は「第4の出力端子」に相当する。
【0057】
第2の接続態様では、スイッチ101によってシールド線221の芯線221aに接続されている端子c1が選択され、スイッチ102によってシールド線221のシールド導体221bに接続されている端子c2が選択される。スイッチ103によってツイストケーブル223の電圧計測線223aに接続されている端子c3が選択され、スイッチ104によってツイストケーブル223の電圧計測線223bに接続されている端子c4が選択される。スイッチ105によってツイストケーブル225の電圧計測線225aに接続されている端子c5が選択され、スイッチ106によってツイストケーブル225の電圧計測線225bに接続されている端子c6が選択される。スイッチ107によってシールド線227の芯線227aに接続されている端子c7が選択され、スイッチ108によってシールド線227のシールド導体227bに接続されている端子c8が選択される。なお、プローブP11~P18の機能は、それぞれ上記した第1の接続態様におけるプローブP1~P8の機能と同様である。
【0058】
この第2の接続態様によって、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル35に流れる電流)の電流値と、電圧計15で測定されたバッテリセル35の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル35のインピーダンスZ35が算出される。さらに、演算処理部において電流計13で測定された測定電流Is(バッテリセル33に流れる電流)の電流値と、電圧計17で測定されたバッテリセル37の両端に発生する電圧Vの電圧値とに基づいて、バッテリセル37のインピーダンスZ37が算出される。
【0059】
なお、上記したスキャナー5は8チャンネル(8入力)の構成であるが、チャンネル数をさらに増やせば、測定対象であるバッテリセルの組数を増加することができることはいうまでもない。また、電圧計15、17に接続される電圧計測線はツイストケーブルでなくシールド線であってもよい。
【0060】
[効果]
上記したように、本第3の実施の形態によれば、上記した第1の実施の形態に係るインピーダンス測定システムで得られる効果に加えて、測定対象となるバッテリセルの組数を増加させることができ、より効率的なインピーダンス測定を実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,40,70,100 インピーダンス測定システム
3,43,73 インピーダンス測定装置
5 スキャナー
11,44,81 測定信号源
13,45,82 電流計
15,17,46,48,83 電圧計
21,35,27,121,127,221,227 シールド線
21a,27a,121a,127a,221a,227a 芯線
21b,27b,121b,127b,221b,227b シールド導体
23,25,123,125,223,225 ツイストケーブル
23a,25a,123a,125a,223a,225a,23b,25b,123b,125b,223b,225b 電圧計測線
31,33,35,37,61,63,91,93,95,97 バッテリセル
31a,31b,33a,33b,35a,35b,37a,37b,61a,61b,63a,63b,91a,91b,93a,93b,95a,95b,97a,97b タブ端子
51,52,84,85 電流計測線
53,54,55,56,86,87 電圧計測線
58,88,89,90 短絡線
101,102,103,104,105,106,107,108 スイッチ

図1
図2
図3
図4
図5