(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230719BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230719BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 643A
H01L21/304 648L
H01L21/304 648G
H01L21/304 651L
H01L21/306 R
H01L21/30 569C
(21)【出願番号】P 2019122134
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-176026(JP,A)
【文献】特開2011-061034(JP,A)
【文献】特開2017-183552(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146635(WO,A1)
【文献】特開2016-157802(JP,A)
【文献】特開2019-046892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
平面視で基板よりも小さいベースプレートを有し、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を前記チャンバー内
において水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、
前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、
前記不活性ガス供給ユニットおよび前記薬液供給ユニットを制御する制御装置と、を含み、
前記処理カップの前記第1のガード先端部の内周端が、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向しており、
前記制御装置が、
前記不活性ガス供給ユニットによって前記第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、
前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に前記薬液供給ユニットによって薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を実行する、基板処理装置。
【請求項2】
前記陽圧維持工程が、前記排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスを前記第2の空間に供給する工程を含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
チャンバーと、
前記チャンバー内に収容されて、基板の中央部を支持して当該基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、
前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、第1の環状隙間を隔てて水平方向に対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、第2の環状隙間を隔てて水平方向に対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、
前記不活性ガス供給ユニットおよび前記薬液供給ユニットを制御する制御装置と、を含み、
前記排気経路における流路幅が、前記第1の環状隙間の距離と、前記第2の環状隙間の距離と、の合計である隙間合計距離以下であ
り、
前記制御装置が、
前記不活性ガス供給ユニットによって前記第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、
前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に前記薬液供給ユニットによって薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を実行する、基板処理装置。
【請求項4】
前記隙間合計距離が、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面と前記遮断部材の前記基板対向面との間隔以下である、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排気経路における流路幅が、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面と前記遮断部材の前記基板対向面との間隔以下である、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記排気経路における前記流路幅が、前記第1の空間における前記第1の円筒部と前記第2の円筒部との径方向の距離である、請求項3~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記排気経路に設けられ、前記チャンバーの雰囲気を前記チャンバーの外に排出させる排気ユニットをさらに含み、
前記排気ユニットが、前記第1の空間および第2の空間の雰囲気と、前記処理カップ外でかつ前記チャンバー内の空間の雰囲気と、の双方を排気する、請求項3~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記内側ガードと前記外側ガードとが、互いに独立して昇降可能に設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記内側ガードの前記内周端が、前記円板部の前記外周端よりも、水平方向に関して内側に位置している、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
チャンバーと、
前記チャンバー内に収容されて、基板の中央部を支持して当該基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、
前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、第1の環状隙間を隔てて水平方向に対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、第2の環状隙間を隔てて水平方向に対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、
前記不活性ガス供給ユニットおよび前記薬液供給ユニットを制御する制御装置と、を含み、
前記内側ガードと前記外側ガードとが、互いに独立して昇降可能に設けられており、
前記制御装置が、
前記不活性ガス供給ユニットによって前記第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、
前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に前記薬液供給ユニットによって薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を実行し、
前記内側ガードおよび前記外側ガードの少なくとも一方に、当該ガードの昇降に同伴昇降可能なリングであって、昇降によって前記排気経路の流路幅を調整することにより、前記排気経路の排気流量を調整する排気流量調整リングを、さらに含む
、基板処理装置。
【請求項11】
チャンバーと、
平面視で基板よりも小さいベースプレートを有し、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を前記チャンバー内
において水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有する内側ガードと、前記内側ガードの周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有する外側ガードと、を有する処理カップと、を含む基板処理装置において実行される基板処理方法であって、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、前記基板対向面と当該基板の上面との間隔が所定間隔になるように前記遮断部材を対向配置させる遮断部材対向工程と、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周端面に前記第1のガード先端部の内周端が水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向するように、かつ前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周端面に前記第2のガード先端部の内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向するように、前記内側ガードおよび前記外側ガードを配置することにより、前記処理カップの内部に、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、を形成するガード対向工程
であって、前記処理カップの前記第1のガード先端部の内周端を、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向させるガード対向工程と、
前記遮断部材対向工程および前記ガード対向工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、
前記遮断部材対向工程、前記ガード対向工程および前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項12】
前記陽圧維持工程が、前記排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスを前記第2の空間に供給する工程を含む、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
チャンバーと、
平面視で基板よりも小さいベースプレートを有し、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を前記チャンバー内
において水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、
前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップ
であって、前記第1のガード先端部の内周端が、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向する処理カップと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される空間であって前記第1の空間に連通する第2の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給する薬液供給ユニットと、を含む
、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象になる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハなどの基板の表面に薬液等の処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。この枚葉式の基板処理装置は、チャンバー内に、たとえば、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板に処理液を供給するためのノズルと、スピンチャックに保持された基板の表面(上面)に近接した位置に対向配置される遮断部材と、基板から排出される処理液を捕獲して排液するための処理カップと、を含む。
【0003】
下記特許文献1において、スピンチャックは、たとえば、処理対象の基板の外径よりも大きな外径を有する円板状のスピンベースと、スピンベースの上面の外周部において、基板の外周形状に対応する円周上に適当な間隔を空けて設けられた複数の挟持部材と、を含む。
また、特許文献1において、遮断部材は、基板の上方の上方空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)と、上方空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)外側の外方空間と、をより効果的に遮断するために、スピンチャックに保持されている基板の上方に配置される円板部と、円板部との周縁から垂下する円筒部と、を備えている。遮断部材の円筒部の下端部と、スピンベースの上面の外周端縁との間に形成される隙間が狭く保たれるから(特許文献1の
図3ご参照)、外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が上方空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)に進入することを効果的に抑制できる。これにより、上方空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)を低酸素環境下に保つことができる。
【0004】
また、特許文献1において、処理カップは、ガードを複数備えている。複数のガードによって、排気液経路が区画されている。排気装置の駆動によって排気液経路が減圧されることにより、排気される。各ガードの内周端が、円筒部の側方に隣接して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピンチャックとして、基板の外周部を支持するタイプのものではなく、基板の中央部を吸着保持するタイプのものが用いられる。基板の中央部を支持するタイプのスピンチャックは、スピンベースが設けられている。
この場合、大径のスピンベースが存在しない。大径のスピンベースがないので、基板の周端面よりも側方に張り出す部材がない。そのため、
図12に示すように、スピンチャックに保持されている基板の周端面と、ガードの内周端との間に大きな隙間が形成される。この場合、その隙間を通って、基板の上面と遮断部材との間に、酸素を含む、その周囲の雰囲気が進入するおそれがある。この場合、基板の上面と遮断部材との間を、低酸素環境下に保つことができない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、基板の中央部を支持する場合において、低酸素環境下で、薬液を用いた処理を基板の上面に施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面は、チャンバーと、前記チャンバー内に収容されて、基板の中央部を支持して当該基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、第1の環状隙間を隔てて水平方向に対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、内周端が第2の環状隙間を隔てて水平方向に対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給するための薬液供給ユニットと、前記不活性ガス供給ユニットおよび前記薬液供給ユニットを制御する制御装置と、を含む、基板処理装置を提供する。前記制御装置が、前記不活性ガス供給ユニットによって前記第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に前記薬液供給ユニットによって薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を実行する。
【0009】
この構成によれば、基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、遮断部材が、基板対向面と基板の上面との間隔が所定間隔になるように対向している。また、基板の周端面に、第1のガード先端部の内周端が第1の環状隙間を隔てて水平方向に対向している。また、円板部の外周端に、第2のガード先端部の内周端が第2の環状隙間を隔てて水平方向に対向している。基板および円板部を、処理カップに対して回転可能に設ける場合には、基板の周端面と第1のガード先端部との間、および円板部の外周端と第1のガード先端部との間に、それぞれ環状隙間(第1の環状隙間、第2の環状隙間)を設ける必要がある。
【0010】
そして、第2の空間に不活性ガスを供給することにより、第1の空間(第1のガード先端部と第2のガード先端部とによって区画される空間)、および第2の空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)の双方を陽圧に保つ。これらにより、第1の空間および第2空間の外側の空間である外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを、効果的に抑制できる。これにより、第2の空間を低酸素環境下に保つことができる。
【0011】
そして、不活性ガスの供給によって第1の空間および第2の空間が陽圧に保たれている状態で、薬液を用いた処理が基板の上面に施される。これにより、薬液を用いた処理を、低酸素環境下で基板に施すことができる。
ゆえに、基板の中央部を支持する場合において、低酸素環境下で、薬液を用いた処理を基板の上面に施すことができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記陽圧維持工程が、前記排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスを前記第2の空間に供給する工程を含む。
この構成によれば、排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスが、第2の空間に供給される。これにより、第1の空間および第2の空間を比較的容易に陽圧に保つことができる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記排気経路における流路幅が、第1の環状隙間の距離と、前記第2の環状隙間の距離と、の合計である隙間合計距離以下である。
この構成によれば、排気経路の流路幅が狭く設けられることにより、第1の空間および第2の空間を比較的容易に陽圧に保つことができる。また、隙間合計距離が、排気経路における流路幅以上であるので、陽圧状態にある第2の空間の雰囲気が、第1の環状隙間および第2の環状隙間を通って外方空間に流出し易い。これにより、外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、これら2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを抑制または防止できる。
【0014】
そして、前記隙間合計距離が、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面と前記遮断部材の前記基板対向面との距離以下であってもよい。
この構成によれば、2つの環状隙間のそれぞれが狭く設けられる。これにより、外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、これら2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを、より一層効果的に、抑制または防止できる。これにより、第2の空間を低酸素環境下に保つことができる。
【0015】
また、この発明の一実施形態では、前記排気経路における流路幅が、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面と前記遮断部材の前記基板対向面との間隔以下であってもよい。
この構成によれば、排気経路を狭く設けることにより、第1の空間および第2の空間を比較的容易に陽圧に保つことができる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記排気経路における前記流路幅が、前記第1の空間における前記第1の円筒部と前記第2の円筒部との径方向の距離であることが好ましい。
この構成によれば、2つの環状隙間の隙間合計距離が、第1の空間における第1の円筒部と第2の円筒部との径方向の距離以下である。2つの環状隙間のそれぞれを狭く設けることにより、外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、これら2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを、効果的に抑制できる。これにより、第2の空間を低酸素環境下に保つことができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記チャンバーの雰囲気を、前記排気経路を通って前記チャンバーの外に排出させる排気ユニットをさらに含む。そして、前記排気ユニットが、前記第1の空間および第2の空間の雰囲気と、前記処理カップ外でかつ前記チャンバー内の空間の雰囲気と、の双方を排気する。
この構成によれば、排気ユニットによって、第1の空間の雰囲気および第2の空間の雰囲気と、処理カップ外でかつチャンバー内の空間の雰囲気と、の双方が排気される。チャンバー内の気流を安定に保つ必要があるために、排気ユニットの排気力を過度に高めることはできない。
しかしながら、排気経路における流路幅を前述のように規定することにより、強い排気力を用いて排気することなく、第1の空間および第2の空間を比較的容易に陽圧に保つことができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記内側ガードと前記外側ガードとが、互いに独立して昇降可能に設けられている。
この構成によれば、第1のガード先端部と第2のガード先端部との上下方向の距離を調整できる。これにより、基板の上面と遮断部材の基板対向面との間隔によらずに、第1のガード先端部の基板の周端面への対向、および第2のガード先端部の円板部の外周端への対向を、容易に実現できる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記内側ガードの前記内周端が、前記円板部の前記外周端よりも、水平方向に関して内側に位置している。
この構成によれば、基板の周端面との間で第1の環状隙間を形成する内側ガードの内周端が、外側ガードの内周端との間で第2の環状隙間を形成する円板部の外周端よりも、内側に位置するので、第2の隙間を基板の周端面から遠ざけることが可能である。仮に、基板の周端面が第2の隙間に近いと、酸素を含む雰囲気が第2の隙間を通って第2の空間に進入したときに、基板の上面の外周部が酸化されるおそれがある。
【0020】
本構成では、第2の隙間を基板の周端面から遠ざけることが可能であるので、万が一、酸素を含む雰囲気が第2の隙間を通って第2の空間に進入した場合であっても、基板の上面が酸化されるのを抑制または防止できる。
また、この発明の一実施形態では、前記内側ガードおよび前記外側ガードの少なくとも一方に、当該ガードの昇降に同伴昇降可能なリングであって、昇降によって前記排気経路の流路幅を調整することにより、前記排気経路の排気流量を調整する排気流量調整リングを、さらに含む。
【0021】
この構成によれば、内側ガードおよび外側ガードの相対的な上下関係を変更することにより、排気経路の流路幅を狭めて排気経路の圧力損失を高めることが可能である。これにより、第1の空間および第2の空間の双方を、さらに容易に陽圧に保つことが可能である。
前記基板保持ユニットが、平面視で前記基板よりも小さいベースプレートを有していてもよい。前記基板保持ユニットが、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を保持してもよい。
前記処理カップの前記第1のガード先端部の内周端が、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向していてもよい。
また、この発明の第2の局面は、チャンバーと、前記チャンバー内に収容されて、基板の中央部を支持して当該基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有する内側ガードと、前記内側ガードの周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有する外側ガードと、を有する処理カップと、を含む基板処理装置において実行される基板処理方法であって、前記基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、前記基板対向面と当該基板の上面との間隔が所定間隔になるように前記遮断部材を対向配置させる遮断部材対向工程と、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周端面に前記第1のガード先端部の内周端が水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向するように、かつ前記基板保持ユニットによって保持されている基板の周端面に前記第2のガード先端部の内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向するように、前記内側ガードおよび前記外側ガードを配置することにより、前記処理カップの内部に、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、を形成するガード対向工程と、前記遮断部材対向工程および前記ガード対向工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される第2の空間に不活性ガスを供給して、前記第1の空間および前記第2の空間の双方を陽圧に保つ陽圧維持工程と、前記遮断部材対向工程、前記ガード対向工程および前記陽圧維持工程に並行して、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給して、当該基板の上面に薬液を用いた処理を施す薬液処理工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0022】
この方法によれば、基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、遮断部材が、基板対向面と基板の上面との間隔が所定間隔になるように対向している。また、基板の周端面に、第1のガード先端部の内周端が水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向している。また、円板部の外周端に、第2のガード先端部の内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向している。基板および円板部を、処理カップに対して回転可能に設ける場合には、基板の周端面と第1のガード先端部との間、および円板部の外周端と第1のガード先端部との間に、それぞれ環状隙間(第1の環状隙間、第2の環状隙間)を設ける必要がある。
【0023】
そして、第2の空間に不活性ガスを供給することにより、第1の空間(第1のガード先端部と第2のガード先端部とによって区画される空間)と第2の空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)との双方を陽圧に保つ。これらにより、第1の空間および第2空間の外側の空間である外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを、効果的に抑制できる。これにより、第2の空間を低酸素環境下に保つことができる。
【0024】
そして、不活性ガスの供給によって第1の空間および第2の空間が陽圧に保たれている状態で、薬液を用いた処理が基板の上面に施される。これにより、薬液を用いた処理を、低酸素環境下で基板に施すことができる。
ゆえに、基板の中央部を支持する場合において、低酸素環境下で、薬液を用いた処理を基板の上面に施すことができる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記陽圧維持工程が、前記排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスを前記第2の空間に供給する工程を含む。
この方法によれば、排気経路から排出される排気の流量よりも多い流量の不活性ガスが、第2の空間に供給される。これにより、第1の空間および第2の空間を比較的容易に陽圧に保つことができる。
前記基板保持ユニットが、平面視で前記基板よりも小さいベースプレートを有していてもよい。前記基板保持ユニットが、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を保持してもよい。
前記ガード対向工程が、前記処理カップの前記第1のガード先端部の内周端を、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向させる工程を含んでいてもよい。
【0026】
この発明の第3の局面は、チャンバーと、前記チャンバー内に収容されて、基板の中央部を支持して当該基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に所定間隔を空けて対向する基板対向面を有する円板部を有する遮断部材と、前記基板保持ユニットの周囲を取り囲む第1の円筒部と、前記第1の円筒部の上端から、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の中央部を通る鉛直線に向けて近づくように延びる第1のガード先端部と、を有し、前記第1のガード先端部の内周端が、当該基板の周端面に、水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向する内側ガードと、前記第1の円筒部の周囲を取り囲む第2の円筒部と、前記第2の円筒部の上端から前記鉛直線に向けて近づくように延び、かつ前記第1のガード先端部よりも上方に位置する第2のガード先端部と、を有し、前記第2のガード先端部の内周端が、前記円板部の外周端に、内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向する外側ガードと、を有し、前記第1のガード先端部と前記第2のガード先端部とによって区画される第1の空間と、前記第1の空間に連通する排気経路と、が内部に形成された処理カップと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板と前記遮断部材との間に形成される空間であって前記第1の空間に連通する第2の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の上面に薬液を供給する薬液供給ユニットと、を含む基板処理装置を提供する。
【0027】
この構成によれば、基板保持ユニットに保持されている基板の上方に、遮断部材が、基板対向面と基板の上面との間隔が所定間隔になるように対向している。また、基板の周端面に、第1のガード先端部の内周端が水平方向に第1の環状隙間を隔てて対向している。また、円板部の外周端に、第2のガード先端部の内周端が水平方向に第2の環状隙間を隔てて対向している。第1の空間(第1のガード先端部と第2のガード先端部とによって区画される空間)と、第2の空間(基板と前記遮断部材との間に形成される空間)とが連通している。基板および円板部を、処理カップに対して回転可能に設ける場合には、基板の周端面と第1のガード先端部との間、および円板部の外周端と第1のガード先端部との間に、それぞれ環状隙間(第1の環状隙間、第2の環状隙間)を設ける必要がある。
【0028】
そして、第2の空間に不活性ガスを供給することにより、第1の空間および第2の空間の双方を陽圧に保つことが可能である。この場合、第1の空間および第2空間の外側の空間である外方空間に含まれる、酸素を含む雰囲気が、2つの環状隙間を通って第2の空間に進入するのを、効果的に抑制することが可能である。これにより、第2の空間を低酸素環境下に保つことが可能である。
【0029】
そして、不活性ガスの供給によって第1の空間および第2の空間が陽圧に保たれている状態で、薬液を用いた処理を基板の上面に施すことにより、薬液を用いた処理を、低酸素環境下で基板に施すことが可能である。
ゆえに、基板の中央部を支持する場合において、低酸素環境下で、薬液を用いた処理を基板の上面に施すことが可能である。
前記基板保持ユニットが、平面視で前記基板よりも小さいベースプレートを有していてもよい。前記基板保持ユニットが、前記基板の中央部を前記ベースプレートに吸着させることにより、前記ベースプレート上の前記基板を保持してもよい。
前記処理カップの前記第1のガード先端部の内周端が、前記基板の全周にわたって前記基板の周端面に直接対向していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
【
図3】
図3は、前記処理ユニットに備えられた遮断部材の底面図である。
【
図4A】
図4Aは、前記処理ユニットに備えられた処理カップのガード非対向状態を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、前記処理ユニットに備えられた処理カップのガード捕獲状態の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置による処理対象の基板の表面を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、前記処理ユニットにおいて実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
【
図8A】
図8Aは、前記基板処理例を説明するための図解的な図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の変形例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2の変形例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の変形例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、基板の中央部を吸着保持するスピンチャックを用いた基板処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理流体を用いて基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容する基板収容器Cが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRおよび搬送ロボットCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3と、を含む。インデクサロボットIRは、基板収容器Cと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0032】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3は、遮断部材6の底面図である。
図4Aは、処理カップ13のガード非対向状態を示す図である。
図4Bは、処理カップ13のガード捕獲状態(第2のガード捕獲状態)の一例を示す図である。
図2に示すように、処理ユニット2は、箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線(所定の鉛直線)A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面(表面Wa(
図6参照))の上方の空間をその周囲の雰囲気から遮断するための遮断部材6と、遮断部材6の内部を上下に挿通し、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面の中央部に向けて処理液(薬液、リンス液、有機溶剤等)を吐出するための中央ノズル7と、薬液の一例としてのフッ酸を中央ノズル7に供給するための薬液供給ユニット8と、リンス液を中央ノズル7に供給するためのリンス液供給ユニット9と、低表面張力液体としての有機溶剤を中央ノズル7に供給する有機溶剤供給ユニット10と、不活性ガスを中央ノズル7に供給する不活性ガス供給ユニット11と、スピンチャック5の側方を取り囲む筒状の処理カップ13と、を含む。
【0033】
チャンバー4は、スピンチャック5や遮断部材を収容する箱状の隔壁18と、隔壁18の上部から隔壁18内に清浄空気(フィルタによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)19と、隔壁18の下部からチャンバー4内の気体を排出する排気ダクト(排気ユニット)20と、を含む。FFU19は、隔壁18の上方に配置されており、隔壁18の天井に取り付けられている。FFU19は、隔壁18の天井からチャンバー4内に下向きに清浄空気を送る。排気ダクト20は、処理カップ13の後述する円筒部材70に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気装置(排気ユニット)14に下流端が接続されている。
【0034】
排気ダクト20は、排気装置14に向けてチャンバー4内の気体を導出する。したがって、チャンバー4内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU19および排気ダクト20によって形成される。基板Wの処理は、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
図2に示すように、スピンチャック5は、この実施形態では、真空吸着式のチャックである。スピンチャック5は、基板Wの下面(表面Waと反対側の裏面)の中央部を吸着支持している。スピンチャック5は、鉛直な方向に延びた下スピン軸21と、この下スピン軸21の上端に取り付けられて、基板Wを水平な姿勢でその下面を吸着して保持するスピンベース22と、下スピン軸21と同軸に結合された回転軸を有するスピンモータ23と、を備えている。スピンベース22は、基板Wの外径よりも小さな外径を有する水平な円形の上面22aを含む。基板Wの下面がスピンベース22に吸着保持された状態では、基板Wの外周部が、スピンベース22の周端縁よりも外側にはみ出ている。スピンモータ23が駆動されることにより、下スピン軸21の中心軸線まわりに基板Wが回転される。
【0035】
遮断部材6は、遮断板26と、遮断板26に一体回転可能に設けられた上スピン軸27と、を含む。遮断板26は、水平な姿勢で保持された円板部28を含む。円板部28は、円板部28の中央部には、遮断板26および上スピン軸27を上下に貫通する円筒状の貫通穴が形成されている。貫通穴の内周壁は、円筒面によって区画されている。貫通穴には、中央ノズル7が上下に挿通している。遮断板26(すなわち円板部28)は、基板Wの径よりも大きい円板状である。
【0036】
遮断板26(円板部28)の下面には、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面の上方に対向する基板対向面26aが形成されている。基板対向面26aは、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面と平行な平坦面である。
中央ノズル7は、遮断板26(円板部28)および基板Wの中心を通る鉛直な軸線、すなわち、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。中央ノズル7は、スピンチャック5の上方に配置され、遮断板26および上スピン軸27の内部空間を挿通する。中央ノズル7は、遮断板26および上スピン軸27と共に昇降する。
【0037】
上スピン軸27は、遮断板26の上方で水平に延びる支持アーム31に相対回転可能に支持されている。遮断板26および上スピン軸27には、電動モータ等を含む構成の遮断板回転ユニット32が結合されている。遮断板回転ユニット32は、遮断板26および上スピン軸27を、支持アーム31に対して回転軸線A1と同軸の中心軸線まわりに回転させる。
【0038】
また、支持アーム31には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の遮断部材昇降ユニット33が結合されている。遮断部材昇降ユニット33は、遮断部材6(遮断板26および上スピン軸27)および中央ノズル7を、支持アーム31と共に鉛直方向に昇降させる。
遮断部材昇降ユニット33は、遮断板26を、基板対向面26aがスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に近接するような下位置(
図2に破線で示す位置)と、下位置よりも大きく上方に退避した上位置(
図2に実線で示す位置)と、の間で昇降させる。
【0039】
遮断部材6が下位置に位置する状態で、基板対向面26aと基板Wの上面との間の空間(第2の空間)SP2(以下、「基板上空間SP2」という。
図4B等参照)が、後述するガード間空間SP1(
図4B等参照)と協働して遮断空間を形成する。この遮断空間は、その周囲の空間から完全に隔離されているわけではないが、基板上空間SP2およびガード間空間SP1は、それらの外側の空間(以下、「外方空間SP3」(
図4B等参照)という)との間で流体の流通がほとんどない。
【0040】
中央ノズル7は、貫通穴(図示しない)の内部を上下に延びる円柱状のケーシング40と、それぞれケーシング40の内部を上下に挿通する第1のノズル配管41、第2のノズル配管46、第3のノズル配管51および第4のノズル配管56と、を含む。第1~第4のノズル配管41,46,51,56は、それぞれインナーチューブである。
図3に示すように、第1のノズル配管41の下端は、ケーシング40の下端面に開口して、第1の吐出口(中央部吐出口)41aを形成している。第1のノズル配管41には、薬液供給ユニット8からの薬液が供給される。
【0041】
図2に示すように、薬液供給ユニット8は、第1のノズル配管41の上流端側に接続された薬液配管42と、薬液配管42の途中部に介装された薬液バルブ43と、薬液配管42の開度を調整する第1の流量調整バルブ44と、を含む。薬液配管42には、薬液供給源から溶存酸素量が低減された(溶存酸素濃度の低い)薬液が供給される。第1の流量調整バルブ44は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータと、を含む構成であってもよい。他の流量調整バルブも、同等の構成である。
【0042】
薬液バルブ43が開かれると、第1の吐出口41aから下方に向けて液体の薬液が吐出される。薬液バルブ43が閉じられると、第1の吐出口41aからの薬液の吐出が停止される。第1の流量調整バルブ44によって、第1の吐出口41aからの薬液の吐出流量が調整される。薬液は、フッ酸(希フッ酸)、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、FOM(フッ酸オゾン)、FPM(フッ酸過酸化水素水混合液)、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)およびポリマー除去液などを例示できる。フッ酸を含む薬液(フッ酸、バファードフッ酸、FOM、FPM等)は、酸化膜(シリコン酸化膜)を除去するエッチング液として好適である。
【0043】
フッ酸を含む薬液を用いる場合、薬液配管42に供給されるフッ酸を含む薬液は、フッ酸中の酸素によって基板Wの表面Waが酸化されることを防止するために、溶存酸素量が十分に低減されたものである
。溶存酸素量が低減された後の薬液が
、薬液供給源から薬液配管42に供給されている。
図3に示すように、第2のノズル配管46の下端は、ケーシング40の下端面に開口して、第2の吐出口(中央部吐出口)46aを形成している。第2のノズル配管46には、リンス液供給ユニット9からのリンス液が供給される。
【0044】
図2に示すように、リンス液供給ユニット9は、第2のノズル配管46の上流端側に接続されたリンス液配管47と、リンス液配管47の途中部に介装されたリンス液バルブ48と、リンス液配管47の開度を調整する第2の流量調整バルブ49と、を含む。リンス液バルブ48が開かれると、第2の吐出口46aから下方に向けてリンス液が吐出される。リンス液バルブ48が閉じられると、第2の吐出口46aからのリンス液の吐出が停止される。第2の流量調整バルブ49によって、第2の吐出口46aからのリンス液の吐出流量が調整される。リンス液は、水である。水は、たとえば脱イオン水(DIW)であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0045】
図3に示すように、第3のノズル配管51の下端は、ケーシング40の下端面に開口して、第3の吐出口(中央部吐出口)51aを形成している。第3のノズル配管51には、有機溶剤供給ユニット10からの有機溶剤が供給される。
図2に示すように、有機溶剤供給ユニット10は、第3のノズル配管51の上流端側に接続された有機溶剤配管52と、有機溶剤配管52の途中部に介装された有機溶剤バルブ53と、有機溶剤配管52の開度を調整する第3の流量調整バルブ54と、を含む。有機溶剤バルブ53が開かれると、第3の吐出口51aから下方に向けて有機溶剤が吐出される。有機溶剤バルブ53が閉じられると、第3の吐出口51aからの有機溶剤の吐出が停止される。第3の流量調整バルブ54によって、第3の吐出口51aからの有機溶剤の吐出流量が調整される。
【0046】
有機溶剤配管52に供給される有機溶剤は、水よりも表面張力が低い溶剤である。有機溶剤の具体例としては、アルコールや、フッ素系有機溶剤とアルコールの混合液が挙げられる。アルコールは、たとえば、メチルアルコール、エタノール、プロピルアルコール、およびIPAの少なくとも一つを含む。フッ素系有機溶剤は、たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の少なくとも一つを含む。以下の説明では、有機溶剤がIPA(isopropyl alcohol)である場合を例に挙げる。
【0047】
図3に示すように、第4のノズル配管56の下端は、ケーシング40の下端面に開口して、第4の吐出口(不活性ガス吐出口)56aを形成している。第4のノズル配管56には、不活性ガス供給ユニット11からの不活性ガスが供給される。
図2に示すように、不活性ガス供給ユニット11は、第4のノズル配管56の上流端側に接続された不活性ガス配管57と、不活性ガス配管57の途中部に介装された不活性ガスバルブ58と、不活性ガス配管57の開度を調整する第4の流量調整バルブ59と、を含む。不活性ガスバルブ58が開かれると、第4の吐出口56aから下方に向けて不活性ガスが吐出される(吹き出される)。不活性ガスバルブ58が閉じられると、第4の吐出口56aからの不活性ガスの吐出が停止される。第4の流量調整バルブ59によって、第4の吐出口56aからの不活性ガスの吐出流量が調整される。不活性ガスは、たとえば、窒素ガスであるが、アルゴンガス等であってもよい。
【0048】
図2、
図4Aおよび
図4Bに示すように、処理カップ13は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
以下、主として
図4Aおよび
図4Bを参照しながら、処理カップ13について説明する。
処理カップ13は、スピンチャック5に保持されている基板Wから排出される処理液(薬液、リンス液、有機溶剤等)を捕獲し、処理液の液種に応じた排液設備に送る。処理カップ13は、スピンチャック5に保持されている基板W上の雰囲気を排気ダクト20を介して排気装置14に送る。
【0049】
処理カップ13は、円筒部材70と、円筒部材70の内側においてスピンチャック5の周囲を取り囲む複数のカップ(第1のカップ71、第2のカップ72、第3のカップ73)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数(
図2の例では3つ)のガード(第1のガード(内側ガード)74、第2のガード(外側ガード)75、第3のガード76)と、複数(
図2の例では3つ)のガード(第1のガード74、第2のガード75、第3のガード76)を個別に昇降させるガード昇降ユニット78と、を含む。処理カップ13は、スピンチャック5に保持されている基板Wの外周よりも外側(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。
【0050】
各カップ(第1のカップ71、第2のカップ72、第3のカップ73)は、円筒状(円環状)であり、スピンチャック5の周囲を取り囲んでいる。内側から2番目の第2のカップ72は、第1のカップ71よりも外側に配置されており、最も外側の第3のカップ73は、第2のカップ72よりも外側に配置されている。第3のカップ73は、たとえば、第2のガード75と一体であり、第2のガード75と共に昇降する。各カップ(第1のカップ71、第2のカップ72、第3のカップ73)は、上向きに開いた環状の溝を形成している。
【0051】
第1のカップ71の溝には、第1の排液配管79が接続されている。第1のカップ71の溝に導かれた処理液(主としてリンス液)は、第1の排液配管79を通して機外の排液処理設備に送られ、この排液処理設備において処理される。
第2のカップ72の溝には、第2の排液配管80が接続されている。第2のカップ72の溝に導かれた処理液(主として薬液)は、第2の排液配管80を通して機外の排液処理設備に送られ、この排液処理設備において処理される。
【0052】
第3のカップ73の溝には、第3の排液配管81が接続されている。第3のカップ73の溝に導かれた処理液(主として有機溶剤)は、第3の排液配管81を通して機外の排液処理設備に送られ、この排液処理設備において処理される。
最も内側の第1のガード74は、スピンチャック5の周囲を取り囲み、スピンチャック5による基板Wの回転軸線A1(
図2参照)に対して、平面視でほぼ回転対称な形状を有している。第1のガード74は、スピンチャック5の周囲を取り囲む円筒状の下端部83と、下端部83の上端から外方(基板Wの回転軸線A1から遠ざかる方向)に延びる筒状部84と、筒状部84の上面外周部から鉛直上方に延びる中段の第1の円筒部85と、第1の円筒部85の上端から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に向かって延びる円環状の第1のガード先端部86と、を含む。下端部83は、第1のカップ71の溝上に位置し、第1のガード74と第1のカップ71とが最も近接した状態で、第1のカップ71の溝の内部に収容される。第1のガード74の内周端74a(第1のガード先端部86の先端)は、平面視で、スピンチャック5に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。第1のガード先端部86は、第1の円筒部85の上端から内側に、斜め上方に向けて延びる傾斜部である。第1のガード先端部86は、
図4A、
図4B等に示すようにその断面形状が直線状である。
【0053】
内側から2番目の第2のガード75は、第1のガード74の外側において、スピンチャック5の周囲を取り囲み、スピンチャック5による基板Wの回転軸線A1に対してほぼ回転対称な形状を有している。第2のガード75は、第1のガード74と同軸の第2の円筒部87と、第2の円筒部87の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に延びる第2のガード先端部88と、を有している。第2のガード先端部88は、第2の円筒部87の上端から内側に、斜め上方に向けて延びる傾斜部である。第2のガード先端部88は、
図4A、
図4B等に示すようにその断面形状が直線状である。第2のガード75の内周端75a(第2のガード先端部88の先端)は、平面視で、スピンチャック5に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。
【0054】
第2の円筒部87は、第2のカップ72の溝上に位置している。また、第2のガード先端部88は、第1のガード74の第1のガード先端部86の上方に重なるように設けられ、第1のガード74と第2のガード75とが最も近接した状態で第1のガード先端部86に対して接触せずに近接するように形成されている。
最も外側の第3のガード76は、第2のガード75の外側において、スピンチャック5の周囲を取り囲み、スピンチャック5による基板Wの回転軸線A1に対して、平面視でほぼ回転対称な形状を有している。第3のガード76の内周端76a(第3のガード先端部90の先端)は、平面視で、スピンチャック5に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。第3のガード先端部90は、円筒部89の上端から内側に、斜め上方に向けて延びる傾斜部である。第3のガード先端部90は、
図4A、
図4B等に示すようにその断面形状が直線状である。第3のガード76は、第2のガード75と同軸の円筒部89と、円筒部89の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に延びる第3のガード先端部90と、を有している。
【0055】
円筒部89は、第3のカップ73の溝上に位置している。また、第3のガード先端部90は、第2のガード75の第2のガード先端部88と上方に重なるように設けられ、第2のガード75と第3のガード76とが最も近接した状態で第2のガード先端部88に対して接触せずに近接するように形成されている。
各先端部(第1のガード先端部86、第2のガード先端部88、第3のガード先端部90)の内周端(すなわち、先端)74a,75a,76aは、下方に向けて折れ曲がった折り返し部の内周端によって規定されている。
【0056】
すなわち、処理カップ13は、折り畳み可能に設けられている。ガード昇降ユニット78が3つのガード(第1のガード74、第2のガード75、第3のガード76)の少なくとも一つを昇降させることにより、処理カップ13の展開および折り畳みが行われる。
ガード昇降ユニット78は、各ガード(第1のガード74、第2のガード75、第3のガード76)を、上位置(先端部(第1のガード先端部86、第2のガード先端部88、第3のガード先端部90)の内周端が、基板Wの上面よりも上方の位置)と、下位置(先端部の内周端が、基板Wの上面よりも下方の位置)と、の間で昇降させることが可能である。また、ガード昇降ユニット78は、各ガードを、上位置と下位置との間の所望の位置に支持可能である。
【0057】
また、第2のガード75の内周端75aおよび第3のガード76の内周端76aが、第1のガード74の内周端74aよりも、径方向外方に位置している。すなわち、第2のガード75の内周端75aおよび第3のガード76の内周端76aによって区画される円周の直径D2(
図4A参照)が、第1のガード74の内周端74aによって区画される円周の直径D1(
図4A参照)よりも大きい(D2>D1)。直径D2と直径D1との差は、たとえば10mmである。
【0058】
また、第1のガード74の内周端74aによって区画される円周の直径D1は、遮断部材6の円板部28の外径(すなわち、遮断板26の外径)D3(
図4B参照)よりも小さい。
図4Aに示すように、3つのガードの全て(第1のガード74、第2のガード75、第3のガード76)が下位置に位置している場合、いずれのガードも基板Wの周端面Wcに対向しないガード非対向状態が実現される。
【0059】
基板Wへの処理液(薬液、リンス液、有機溶剤等)の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガードが、基板Wの周端面Wcに対向している状態で行われる。
また、基板Wの外周部から排出される処理液を第1のガード74によって捕獲可能な状態(後述する
図8Aに示す状態。以下、この状態を「第1のガード捕獲状態」という。)を実現するために、3つのガードの全てを上位置に配置する。第1のガード捕獲状態では、回転状態にある基板Wの外周部から排出される処理液の全てが、第1のガード74によって受け止められる(捕獲される)。
【0060】
また、基板Wの外周部から排出される処理液を第3のガード76によって捕獲可能な状態(後述する
図8Cに示す状態。以下、この状態を「第3のガード捕獲状態」という。)を実現するために、第1のガード74および第2のガード75を下位置に配置し、第3のガード76を上位置に配置する。第3のガード捕獲状態では、回転状態にある基板Wの外周部から排出される処理液の全てが、第3のガード76によって受け止められる(捕獲される)。
【0061】
図4Bに示す第2のガード捕獲状態では、回転状態にある基板Wの外周部から排出される処理液の全てが、第2のガード75によって受け止められる(捕獲される)。処理カップ13の第2のガード捕獲状態では、第2のガード75および第3のガード76は、上位置に位置している。一方、第1のガード74は、下位置ではなく、下位置よりも上方でかつ上位置よりも下寄りに設けられた周端面対向位置(
図4Bおよび後述する
図8Aに示す第1のガード74の位置)に位置している。
【0062】
また、処理カップ13の第2のガード捕獲状態では、第1のガード74と第2のガード75との間に、ガード間空間(第1の空間)SP1が形成される。これにより、基板対向面26aと基板Wの上面(表面Wa)との間の空間である基板上空間(第2の空間)SP2の外側に隣接して、第1のガード74と第2のガード75との間に形成されるガード間空間SP1が、基板上空間SP2に連通するように設けられる。スピンチャック5に保持されている基板Wの外周部から排出される処理液は、ガード間空間SP1に進入し、第2のガード75の内壁によって受け止められている。
【0063】
処理カップ13の第2のガード捕獲状態では、基板Wの周端面Wcに、第1のガード先端部86の内周端74aが水平方向に微小の第1の環状隙間C1を隔てて対向している。また、円板部28の外周端28cに、第2のガード先端部88の内周端75aが水平方向に微小の第2の環状隙間C2を隔てて対向している。
基板Wおよび円板部28を、処理カップ13に対して回転可能に設けるので、基板Wの周端面Wcと第1のガード先端部86との間、および円板部28の外周端28cと第1のガード先端部86との間に、それぞれ環状隙間(第1の環状隙間C1、第2の環状隙間C2)を設ける必要がある。第1の環状隙間C1の距離L1と、第2の環状隙間C2の距離L2と、の合計距離(すなわち、L1+L2)を、隙間合計距離とすると、隙間合計距離(L1+L2)は、排気経路EPにおける流路幅WFが、隙間合計距離(L1+L2)以下である(WF<(L1+L2))。
【0064】
また、前述のように、第1のガード74の内周端74aが遮断部材6の円板部28の外周端28cよりも水平方向に関して内側に位置している。そのため、第2の環状隙間C2を基板Wの外周端28cから遠ざけることが可能である。
また、円筒部材70の側壁には開口70a(
図2参照)が形成されており、その開口70aには排気ダクト20(
図2参照)が接続されている。開口70aは、排気装置14の排気用力によって常に排気されている(つまり減圧状態にある)。
【0065】
そのため、処理カップ13の第2のガード捕獲状態では、第1のガード74と第2のガード75との間に、ガード間空間SP1に連通する排気経路EPが形成される。具体的には、排気経路EPは、第1の円筒部85と第2の円筒部87とによって区画される狭流路P1と、第2の円筒部87と第2のカップ72の外壁72aとによって区画される流路P2と、第2のカップ72の外壁72aと第3のカップ73の内壁73aとによって区画される流路P3と、を含む。この実施形態では、狭流路P1が最も狭く、そのため、狭流路P1の流路幅(狭流路P1の、基板Wの半径方向の間隔)が、排気経路EPの流路幅WFとされている。第2のカップ72と第3のカップ73との間から、円筒部材70の内部空間に排出された排気は、開口70aを介して排気ダクト20に取り込まれる。
【0066】
処理カップ13の第2のガード捕獲状態において、基板Wの上方にある雰囲気(基板上空間SP2の雰囲気)は、ガード間空間SP1および排気経路EPを通って、排気ダクト20および排気装置14によって排気される。
また、排気ダクト20および排気装置14は、基板Wの上方にある雰囲気(基板上空間SP2の雰囲気)だけでなく、チャンバー4の内部の雰囲気を排気する。具体的には、排気ダクト20による開口70aの排気によって、チャンバー4の内部の雰囲気が、円筒部材70の内部に取り込まれる。円筒部材70の内部に取り込まれた雰囲気は、開口70aおよび排気ダクト20を介して排気装置14に送られる。
【0067】
すなわち、排気ダクト20および排気装置14は、ガード間空間SP1および基板上空間SP2の雰囲気と、処理カップ13外でかつチャンバー4の内部の雰囲気と、の双方を排気する。
処理ユニット2によって実行される基板処理例では、処理カップ13が第2のガード捕獲状態を実現している状態で、遮断部材6が下位置に配置される。すなわち、スピンチャック5に保持されている基板Wの上方に、遮断部材6が、基板対向面26aと基板Wの上面とが、所定の間隔(所定間隔
)WUを保ちながら対向している。この間隔WUは、隙間合計距離(L1+L2)以上である(WU≧(L1+L2))。
【0068】
すなわち、隙間合計距離(L1+L2)は、排気経路EPにおける流路幅WF以上であり、基板対向面26aと基板Wの上面との間隔WU以下である(WF≦(L1+L2)≦WU)。
図5は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0069】
また、制御装置3には、制御対象として、スピンモータ23、遮断部材昇降ユニット33、遮断板回転ユニット32およびガード昇降ユニット78等が接続されている。制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ23、遮断部材昇降ユニット33、遮断板回転ユニット32およびガード昇降ユニット78等の動作を制御する。
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、薬液バルブ43、リンス液バルブ48、有機溶剤バルブ53、不活性ガスバルブ58等を開閉する。
【0070】
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、第1の流量調整バルブ44、第2の流量調整バルブ49、第3の流量調整バルブ54、第4の流量調整バルブ59等の開度を調整する。
以下では、デバイス形成面である表面Waに、パターンが形成された基板Wを処理する場合について説明する。
【0071】
図6は、基板処理装置1による処理対象の基板Wの表面Waを拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面Waにパターン100が形成されている。パターン100は、たとえば微細パターンである。パターン100は、
図6に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体101が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体101の線幅W1はたとえば10ナノメートル~45ナノメートル程度に、パターン100の隙間W2はたとえば10ナノメートル~数マイクロメートル程度に、それぞれ設けられている。パターン100の膜厚Tは、たとえば、1マイクロメートル程度である。また、パターン100は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5~500程度であってもよい(典型的には、5~50程度である)。
【0072】
また、パターン100は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターン100は、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターン100は、たとえば絶縁膜を含む。また、パターン100は、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターン100は、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターン100は、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。
【0073】
また、パターン100は、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図7は、処理ユニット2において実行される基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
図8A~8Cは、前記基板処理例を説明する模式的な図である。
図1~
図7を参照しながら、前記基板処理例について説明する。
図8A~8Cについては適宜参照する。
【0074】
まず、未処理の基板W(たとえば直径300mmの円形基板)は、インデクサロボットIRおよび搬送ロボットCRによって基板収容器Cから処理ユニット2に搬入され、チャンバー4の内部に搬入される(
図7のS1)。搬入されてきた基板Wは、その表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡される。その後、基板Wの下面中央部が吸着支持されることにより、スピンチャック5によって基板Wが保持される。
【0075】
チャンバー4への基板Wの搬入は、かつガードが下位置に配置された状態(
図4Aに示すガード非対向状態)、かつ、遮断部材6が上位置に退避されている状態で行われる。
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御装置3は、スピンモータ23を制御してスピンベース22の回転速度を、所定の液処理速度(約10~1200rpmの範囲内で、たとえば約800rpm)まで上昇させ、その液処理速度に維持させる(
図7のS2:基板W回転開始)。
【0076】
搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御装置3は、遮断部材昇降ユニット33を制御して、遮断部材6を下降させ、
図8Aに示すように、下位置に配置する(
図7のS2:遮断部材降下。遮断部材対向工程)。これにより、基板対向面26aと基板Wの上面との間に、基板上空間SP2が形成される。
次いで、制御装置3は、スピンモータ23を制御してスピンベース22の回転速度を、所定の液処理速度(10~1200rpmの範囲内で、たとえば1000rpm)まで上昇させ、その液処理速度に維持する(
図7のS3:基板W回転開始)。スピンベース22の回転に同伴して、基板Wが回転軸線A1まわりに、回転させられる。
【0077】
また、制御装置3は、遮断板回転ユニット32を制御して、遮断板26を、回転に同期して(つまり、基板Wの回転と同じ回転方向および同じ回転速度で)、回転軸線A1まわりに回転させる。
また、制御装置3は、ガード昇降ユニット78を制御して、第2のガード75および第3のガード76を上位置に上昇させ、かつ第1のガード74を、周端面対向位置(
図4Bに示す位置)に配置する。この状態で、処理カップ13の第2のガード捕獲状態(
図4Bを併せて参照)が実現され、基板Wの周端面Wcに、第1のガード先端部86の内周端74aが水平方向に対向し、円板部28の外周端28cに、第2のガード先端部88の内周端75aが水平方向に対向する(ガード対向工程)。これにより、基板上空間SP2の外側に隣接して、基板上空間SP2に連通するガード間空間SP1が設けられる。
【0078】
また、制御装置3は不活性ガスバルブ58を開く。これにより、
図8Aに示すように、中央ノズル7(第4のノズル配管56)の第4の吐出口56aから下方に向けて(すなわち、基板Wの上面の中央部に向けて)不活性ガスが吐出される。第4の吐出口56aから吐出された不活性ガスは、基板Wの上面と遮断部材6の基板対向面26aとの間の基板上空間SP2を、基板Wの上面に沿って広がる。これにより、基板上空間SP2の雰囲気が不活性ガスに置換されることにより、基板上空間SP2の雰囲気中の酸素濃度の低減が図られる。
【0079】
このときの不活性ガスの吐出流量は、第4の流量調整バルブ59によって、たとえば100(リットル/分)に調整されている。この流量は、処理カップ13の第2のガード捕獲状態において形成される排気経路EPの流路幅WFおよび排気装置14の排気用力によって定まる、排気経路EPを通る排気の流量よりも多い流量である。すなわち、排気経路EPから排出される排気流量よりも多い流量の不活性ガスが、基板上空間SP2に供給される。
【0080】
基板上空間SP2の雰囲気が低酸素濃度状態(たとえば、酸素濃度100ppm未満の状態)になるのに十分な不活性ガス供給時間が経過し、かつ基板Wの回転が液処理速度に達すると、制御装置3は、
図8Aに示すように、薬液の一例としてのフッ酸を用いて基板Wの表面Waを、処理する薬液処理工程(
図7のS4)を実行開始する。
薬液処理工程(
図7のS4)において、制御装置3は、薬液バルブ43を開く。それにより、回転状態の基板Wの上面(表面Wa)の中央部に向けて、中央ノズル7(第1のノズル配管41)の第1の吐出口41aからフッ酸が吐出される(薬液供給工程)。このときのフッ酸の吐出流量は、たとえば2(リットル/分)である。基板Wの上面に供給されるフッ酸として、溶存酸素量が十分に低減されたものが用いられる。
【0081】
基板Wの上面に供給されたフッ酸は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの外周部に移動する。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆うフッ酸の液膜LF1が形成される。すなわち、基板Wの表面Waが、フッ酸によりカバレッジされる。フッ酸の液膜LF1に含まれるフッ酸が、基板Wの表面Waに接液することにより、表面Waがフッ酸を用いて処理される。具体的には、表面Waに形成された自然酸化膜(シリコン酸化膜)が、フッ酸によって除去される。
【0082】
基板Wの外周部に移動したフッ酸は、基板Wの外周部から基板Wの側方に向けて飛散する。基板Wから飛散したフッ酸は、第2のガード75の内壁に受け止められ、第2のガード75の内壁を伝って流下し、第2のカップ72および第2の排液配管80を介して、機外の排液処理設備に送られる。
薬液処理工程(
図7のS4)において、不活性ガスが前記の流量で連続的に供給される。制御装置3が基板上空間SP2に不活性ガスを供給することにより、ガード間空間SP1および基板上空間SP2の双方が陽圧に保たれる(陽圧維持工程)。これらにより、外方空間SP3に含まれる、酸素を含む雰囲気が、第1の環状隙間C1および第2の環状隙間C2を通って基板上空間SP2に進入するのを、効果的に抑制できる。これにより、基板上空間SP2を低酸素環境下に保つことができる。
【0083】
そして、不活性ガスの供給によってガード間空間SP1および基板上空間SP2が陽圧に保たれている状態で、フッ酸を用いた処理が基板Wの表面Waに施される。これにより、フッ酸を用いた処理を、低酸素環境下で基板Wに施すことができる。
薬液処理工程(
図7のS4)において、パターン形成面である基板Wの表面Waから酸化膜が除去される。その結果、薬液処理工程(
図7のS4)において、基板Wの表面Waが退縮するおそれがある。それに伴って、基板Wの表面Waに形成されているパターン100が脆弱化することがある。
【0084】
そして、酸素濃度の低い雰囲気下において、フッ酸を用いた薬液処理を基板Wの表面Waに施すことにより、薬液処理工程(
図7のS4)における表面Waの酸化を抑制または防止できる。これにより、基板Wの表面Waの酸化に伴うパターン100が脆弱化を抑制または防止できる。
フッ酸の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ43を閉じて、中央ノズル7(第1のノズル配管41)からのフッ酸の吐出を停止する。これにより、薬液処理工程(
図7のS4)が終了する。
【0085】
次いで、制御装置3は、基板W上のフッ酸をリンス液に置換して基板W上からフッ酸を排除するためのリンス工程(
図7のS5)を実行する。具体的には、制御装置3は、ガード昇降ユニット78を制御して、第2のガード捕獲状態にある処理カップ13の第1のガード74を、周端面対向位置から上昇させることにより、
図8Bに示すように、第1のガード74を基板Wの側方に対向させる(第1のガード捕獲状態を実現)。
【0086】
制御装置3は、基板Wおよび遮断板26の回転を液処理速度に維持しながら、リンス液バルブ48を開く。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央部に向けて、中央ノズル7(第2のノズル配管46)の第2の吐出口46aから、リンス液が吐出される。基板Wの上面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの外周部に移動する。これにより、基板Wの上面に、上面の全域を覆うリンス液の液膜LF2が形成される。基板Wの表面Waがリンス液によりカバレッジされることにより、表面Waに付着しているフッ酸が、リンス液によって洗い流される。
【0087】
基板Wの外周部に移動したリンス液は、基板Wの外周部から基板Wの側方に向けて飛散する。基板Wから飛散したリンス液は、第1のガード74の内壁に受け止められ、第1のガード74の内壁を伝って流下し、第1のカップ71および第1の排液配管79を介して、機外の排液処理設備に送られる。
リンス液の供給開始から予め定める期間が経過すると、基板Wの上面の全域がリンス液に覆われている状態で、制御装置3は、リンス液の吐出を続行させながら、スピンモータ23および遮断板回転ユニット32を制御して、基板Wおよび遮断板26の回転速度を液処理速度からパドル速度(零または40rpm以下の低回転速度。この基板処理例では、たとえば10rpm)まで段階的に減速させる。その後、基板Wの回転速度をそのパドル速度に維持する(パドルリンス工程(
図7のS6))。これにより、基板Wの上面に、その全域を覆うリンス液の液膜LF2がパドル状に支持される。この状態では、リンス液の液膜LF2に作用する遠心力がリンス液と基板Wの上面との間で作用する表面張力よりも小さいか、あるいは前記の遠心力と前記の表面張力とがほぼ拮抗している。基板Wの減速により、基板W上のリンス液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出されるリンス液の量が減少する。これにより、基板Wの上面に保持されているリンス液の液膜LF2の厚みが大きくなる。
【0088】
基板Wの回転をパドル速度に減速してから予め定める期間が経過すると、制御装置3は、基板Wの回転をパドル速度に維持しながら、リンス液バルブ48を閉じて、中央ノズル7(第2のノズル配管46)からのリンス液の吐出を停止する。
次いで、制御装置3は、置換工程(
図7のS7)の実行を開始する。具体的には、制御装置3は、基板Wの回転速度をパドル速度に維持しながら、有機溶剤バルブ53を開く。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央部に向けて、中央ノズル7(第3のノズル配管51)の第3の吐出口51aから、有機溶剤の一例としてのIPAが吐出される。これにより、リンス液の液膜LF2に含まれるリンス液がIPAに順次置換されていく。これにより、基板Wの上面に、基板Wの上面全域を覆うIPAの液膜LF3がパドル状に保持される。
【0089】
IPAの吐出開始から予め定める期間(液膜が完全にIPAに置換されるのに十分な期間)が経過すると、制御装置3は、ガード昇降ユニット78を制御して、第1のガード捕獲状態にある処理カップ13の第1のガード74および第2のガード75を、下位置に下降させることにより、
図8Cに示すように、第3のガード76を基板Wの側方に対向させる(第3のガード捕獲状態を実現)。
【0090】
基板Wの外周部からは、IPAが排出される。基板Wの外周部から排出されたIPAは、第3のガード76の内壁に受け止められ、第3のガード76の内壁を伝って流下し、第3のカップ73および第3の排液配管81を介して、機外の排液処理設備に送られる。
有機溶剤バルブ53が開かれてから予め定める期間が経過すると、制御装置3は有機溶剤バルブ53を閉じる。これにより、置換工程(
図7のS7)が終了する。
【0091】
次いで、基板Wを乾燥させる乾燥工程(
図7のS8)が行われる。
具体的には、制御装置3は、処理カップ13の状態を第3のガード対向状態に保ち、遮断部材6を下位置に配置し、中央ノズル7からの不活性ガスの吐出を継続させた状態で、制御装置3は、スピンモータ23および遮断板回転ユニット32を制御して、基板Wおよび遮断板26の回転速度を乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板W
および遮断板26を加速させ、その乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。
【0092】
基板Wの加速開始から所定期間が経過すると
、制御装置3は、スピンモータ23を制御することにより、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる(
図7のS9)。また、制御装置3は、遮断板回転ユニット32を制御して、遮断板26の回転を停止させる。その後、制御装置3は、遮断部材昇降ユニット33を制御して、遮断部材6を上昇させて、上位置に退避させる。
【0093】
その後、チャンバー4内から基板Wが搬出される(
図7のS10)。具体的には、制御装置3は、搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4の内部に進入させる。制御装置3は、スピンチャック5による基板Wの吸着を解除する。そして、制御装置3は、吸着が解除された基板Wを、搬送ロボットCRのハンドに保持させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットCRのハンドをチャンバー4内から退避させる。これにより、処理後の基板Wがチャンバー4から搬出され、一連の基板処理例は終了する。搬出された基板Wは、搬送ロボットCRからインデクサロボットIRへと渡され、インデクサロボットIRによって、基板収容器Cに収納される。
【0094】
以上によりこの実施形態によれば、遮断部材6が下位置に配置される。すなわち、スピンチャック5に保持されている基板Wの上方に、遮断部材6が、基板対向面26aと基板Wの上面との間隔を所定の間隔WUに保ちながら対向している。また、基板Wの周端面Wcに、第1のガード先端部86の内周端74aが水平方向に第1の環状隙間C1を隔てて対向している。また、円板部28の外周端に、第2のガード先端部88の内周端75aが水平方向に第2の環状隙間C2を隔てて対向している。これにより、基板対向面26aと基板Wの上面との間の空間である基板上空間SP2の外側に隣接して、第1のガード74と第2のガード75との間に形成されるガード間空間SP1が、基板上空間SP2に連通するように設けられる。
【0095】
そして、基板上空間SP2に不活性ガスを供給することにより、ガード間空間SP1および基板上空間SP2の双方を陽圧に保つ。これらにより、外方空間SP3に含まれる、酸素を含む雰囲気が、2つの環状隙間(第1の環状隙間C1、第2の環状隙間C2)を通って基板上空間SP2に進入するのを、効果的に抑制できる。これにより、基板上空間SP2を低酸素環境下に保つことができる。
【0096】
そして、不活性ガスの供給によってガード間空間SP1および基板上空間SP2が陽圧に保たれている状態で、薬液(フッ酸を含む薬液)を用いた処理が基板Wの表面Waに施される。これにより、薬液(フッ酸を含む薬液)を用いた処理を、低酸素環境下で基板Wの表面Waに施すことができる。
ゆえに、スピンチャック5(バキュームチャック)によって基板Wの外周部ではなく基板Wの中央部を支持する場合であっても、低酸素環境下で、薬液(フッ酸)を用いた処理を基板Wの表面Waに施すことができる。
【0097】
また、排気経路EPにおける流路幅WFが、第1の環状隙間C1の距離L1と、第2の環状隙間C2の距離L2と、の合計である隙間合計距離(L1+L2)以下である。このように、排気経路EPにおける流路幅WFが狭く設けられることにより、処理カップ13が第2のガード捕獲状態にあるときの排気経路EPの圧力損失が大きいので、ガード間空間SP1および基板上空間SP2を比較的容易に陽圧に保つことができる。また、隙間合計距離(L1+L2)が、排気経路EPにおける流路幅WF以上であるので、陽圧状態にある基板上空間SP2の雰囲気が、第1の環状隙間C1および第2の環状隙間C2を通って外方空間SP3に流出し易い。これにより、外方空間SP3に含まれる、酸素を含む雰囲気が、これら2つの環状隙間(第1の環状隙間C1、第2の環状隙間C2)を通って第2の空間に進入するのを抑制または防止できる。
【0098】
また、隙間合計距離(L1+L2)が、遮断部材6が下位置に位置しているときの、基板対向面26aと基板Wの上面との間隔WU以下である。そのため、2つの環状隙間(第1の環状隙間C1、第2の環状隙間C2)のそれぞれが狭く設けられる。これにより、外方空間SP3に含まれる、酸素を含む雰囲気が、これら2つの環状隙間(第1の環状隙間C1、第2の環状隙間C2)を通って基板上空間SP2に進入するのを、より一層効果的に、抑制または防止できる。これにより、基板上空間SP2を低酸素環境下に保つことができる。
【0099】
また、排気ダクト20および排気装置14によって、ガード間空間SP1の雰囲気および基板上空間SP2の雰囲気と、処理カップ13外でかつチャンバー4内の空間の雰囲気と、の双方が排気される。チャンバー4内の気流を安定に保つ必要があるために、排気装置14の排気力を過度に高めることはできない。排気装置14が、基板処理装置1が設置される工場で共用される共用排気源である場合、工場において準備可能な排気用力による制限のために、処理カップ13の十分な排気を実現可能な強い排気力の確保が困難な場合もある。しかしながら、排気経路EPにおける流路幅WFを前述のように規定することにより、強い排気力を用いて排気することなく、ガード間空間SP1の雰囲気および基板上空間SP2を比較的容易に陽圧に保つことができる。
【0100】
また、第1のガード74の内周端74aが遮断部材6の円板部28の外周端28cよりも水平方向に関して内側に位置しているので、第2の環状隙間C2を基板Wの周端面Wcから遠ざけることが可能である。仮に、基板Wの周端面Wcが第2の環状隙間C2に近いと、酸素を含む雰囲気が第2の環状隙間C2を通って基板上空間SP2に進入したときに、この雰囲気によって基板Wの表面Waの外周部が酸化されるおそれがある。
【0101】
しかし、この実施形態では、第2の環状隙間C2を基板Wの周端面Wcから遠ざけるので、万が一、酸素を含む雰囲気が第2の環状隙間C2を通って基板上空間SP2に進入した場合であっても、基板Wの表面Waの外周部が酸化されるのを抑制または防止できる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
【0102】
たとえば、処理カップ13の第3のガード捕獲状態において、第1のガード74および第2のガード75を、下位置ではなく、
図8Cの破線に示すような高さ位置に配置してもよい。この場合、基板Wと遮断部材6との間の空間に、酸素を含む雰囲気が進入するのを抑制できる。
また、前述の基板処理例において、少なくとも薬液処理工程(
図7のS4)において遮断部材6を下位置に配置していれば足り、それ以降のリンス工程(
図7のS5)、パドルリンス工程(
図7のS6)および置換工程(
図7のS7)において、遮断部材6が上位置に配置されていてもよい。
【0103】
この場合、中央ノズル7とは別のノズル(たとえば、基板Wの上面に沿って移動可能なスキャンノズル)を用いて、リンス液や有機溶剤を供給するようにしてもよい。
また、
図9に示すように、第1のガード74の内周端74aが、第2および第3のガード75,76の内周端75a,76aと、径方向に関して揃っていてもよい。この場合、遮断部材6の円板部28の外径(すなわち、遮断板26の外径)D3は、スピンチャック5に保持される基板Wの外径と同程度である。
【0104】
また、前述の実施形態では、第1の円筒部85と第2の円筒部87とによって区画される流路(狭流路P1)の水平方向の間隔を、排気経路EPの流路幅WFとして説明したが、排気経路EPの流路幅WFを区画する最狭部分を、他の部材で構成してもよい。
また、
図10Aおよび
図10Bに示すように、第1のガードと第2のガードとが、互いに一体移動可能に連結されていてもよい。
図10Aには、基板Wから排出される処理液を、第2のガード先端部88で捕獲する第2のガード捕獲状態を示す。
図10Bには、基板Wから排出される処理液を、第1のガード先端部86で捕獲する第1のガード捕獲状態を示す。
【0105】
この変形例に係る処理カップでは、第1のガードを第2のガードに一体化させている。具体的には、
図4A等に示す処理カップ13から、第1のカップ71および第1のガード74を廃止するとともに、第1のガード74の第1のガード先端部86のみを第2のガード先端部88の下方に設け、第1のガード先端部86を第2の円筒部87の途中部(上下方向の途中部)上端部に結合(一体化)させている。
【0106】
第1のガード先端部86の根元部には、第2のガード先端部88によって受けた処理液を、第2の円筒部87に向けて案内するための透穴201が形成されている。
さらに、
図11Aおよび
図11Bに示すように、排気経路EPに、排気経路EPの流路幅WFを調整するための円環状の排気流量調整リング301を設けるようにしてもよい。排気流量調整リング301は、第2のガード75に同伴して昇降可能に設けられている。第2のガード75の昇降させることにより、
図11Aおよび
図11Bに示すように、処理カップ13の第2のガード捕獲状態にあるときに、排気経路EPの流路幅WFを調整できる。たとえば、
図11Bに示すように、遮断部材6および第2のガード75の高さ位置を、
図11Aに比べてそれぞれ下寄りに配置することにより、排気経路EPの流路幅WFを狭めて排気経路EPの圧力損失を高めて、排気経路EPの排気流量を弱める(調整する)ことが可能であり、これにより、ガード間空間SP1および基板上空間SP2を、さらに容易に陽圧に保つことができる。なお、排気流量調整リング301は、第1のガード74に昇降可能に設けられていてもよい。
【0107】
また、前述の実施形態では、遮断部材6を昇降させることにより、遮断部材6とスピンチャック5との上下位置を相対的に変更するものについて説明したが、遮断部材6およびスピンチャック5の双方、ならびにスピンチャック5を昇降させることにより、遮断部材6とスピンチャック5との上下位置を相対的に変更するものであってもよい。
また、処理カップ13の各ガードのガード先端部(第1のガード先端部86,第2のガード先端部88,第3のガード先端部90)は、その断面形状が、たとえば滑らかな上に凸の円弧を描きつつ延びていてもよい。
【0108】
また、ガード間空間SP1が、第1のガード74と第2のガード75とによって区画されるのではなく、第2のガード75と第3のガード76とによって区画されていてもよい。
さらには、処理カップ13が3段のカップである場合を例に挙げて説明したが、処理カップ13は、内側のガードおよび外側のガードを備えていれば、2段のカップであってもよいし、4段以上の多段カップであってもよい。
【0109】
また、前述の実施形態において、基板処理装置が半導体ウエハからなる基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置が、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理する装置であってもよい。
【0110】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
4 :チャンバー
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
6 :遮断部材
8 :薬液供給ユニット
11 :不活性ガス供給ユニット
13 :処理カップ
14 :排気装置(排気ユニット)
20 :排気ダクト(排気ユニット)
26 :遮断板
26a :基板対向面
28 :円板部
28c :外周端
74 :第1のガード(内側ガード)
74a :内周端
75 :第2のガード(外側ガード)
75a :内周端
85 :第1の円筒部
86 :第1のガード先端部
87 :第2の円筒部
88 :第2のガード先端部
A1 :回転軸線(鉛直線)
C1 :第1の環状隙間
C2 :第2の環状隙間
EP :排気経路
L1 :距離(第1の環状隙間の距離)
L2 :距離(第2の環状隙間の距離)
SP1 :ガード間空間(第1の空間)
SP2 :基板上空間(第2の空間)
Wa :表面
Wc :周端面
WF :流路幅
WU :間隔(基板の上面と基板対向面との間隔)