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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】修理計画作成システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20230719BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019125757
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021012496
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】林 智登士
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199128(JP,A)
【文献】特開2004-145734(JP,A)
【文献】特開平10-220004(JP,A)
【文献】特開2003-173384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が有する部位ごとに定められ、前記建物が被災した場合の被害内容と、当該被害内容ごとの被害程度とに分類された想定被害情報が、前記被害程度ごとに、修理に要する修理日数に対応づけられた状態で記憶されている記憶手段と、
災害発生時において、ユーザが有する端末から被災建物ごとに、被災部位と、当該部位について前記想定被害情報のうちどの被害内容及び被害程度にあたるかの被災状況情報を収集する収集手段と、
前記収集手段により収集された前記被災状況情報から、共通の被害部位を有する被災建物を抽出し、当該抽出した前記被災建物について前記想定被害情報に対応づけられた修理日数に基づいてそれぞれの修理日数を把握し、1日未満を有する修理日数となった前記被災建物同士が連続した修理対象となるように組み合わせた修理計画表を作成する修理計画表作成手段と、
を備えたことを特徴とする修理計画作成システム。
【請求項2】
前記修理計画表作成手段は、前記共通の被害部位を有する前記被災建物を抽出した後、当該抽出した前記被災建物を所定地域ごとに分類し、その上で修理計画を作成することを特徴とする請求項1に記載の修理計画作成システム。
【請求項3】
前記想定被害情報に対応づけられる前記修理日数は半日単位で定められており、
前記修理計画表作成手段は、前記所定の被害部位の修理日数が半日を有する被災建物同士を組み合わせて前記修理計画を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の修理計画作成システム。
【請求項4】
前記記憶手段には、前記想定被害情報について、前記被害程度ごと複数に段階づけられた修理緊急度が対応づけられて記憶されており、
前記修理計画表作成手段は、修理緊急度が高い前記被災建物が優先して修理対象となるように並べるとともに、1日未満を有する修理日数となった被災建物同士を組み合わせる場合には、修理緊急度が同じレベルの前記被災建物同士を組み合わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の修理計画作成システム。
【請求項5】
前記記憶手段には、前記被害程度ごとに、応急措置に要する応急措置日数が対応づけられた状態で記憶されており、
前記収集手段により収集された前記被災状況情報から、共通の被害部位を有する前記被災建物を抽出し、当該抽出した前記被災建物から修理緊急度が高い前記被災建物をさらに抽出し、当該抽出した修理緊急度が高い前記被災建物について前記想定被害情報に対応づけられた応急措置日数に基づいてそれぞれの応急措置日数を把握し、1日未満を有する応急措置日数となった前記被災建物同士が連続した応急措置の対象となるように組み合わせて初期対応計画表を作成する初期対応計画表作成手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の修理計画作成システム。
【請求項6】
前記想定被害情報は、前記建物の敷地内に設けられる外構についても、その部位ごとに、被害内容及び被害程度が分類されており、
前記記憶手段は、前記外構の被害程度ごとに、修理に要する修理日数が対応づけられた状態で記憶されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の修理計画作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時における修理計画作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時において、住民避難や被災建物の補修等に役立てるためのシステムが知られている。例えば、携帯端末によって現在位置の緯度経度情報と当該位置での被災状況を表す被災情報とを収集し、地図上に、緯度経度情報によって特定される地点と当該地点に関連付けられた被災情報とを表示させる表示システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-240827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記表示システムは、確かに、地図上の被災建物を選択すれば、当該建物の被災状況を把握することができるため、被災状況の把握には役立つ。
【0005】
しかしながら、被災建物の修理計画を立てる上では、地図が表示された画面を見ながら建物を一つ一つ選択し、建物ごとの被災状況を確認し、その上で、どのような修理が必要かを把握しなければならない。被災地域の被災建物についてすべてそれを行っていては、迅速かつ効率的に修理計画を立てることができず、被災建物の修理も遅延してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、被災地域における被災建物の修理計画を迅速かつ効率的に立て、また実施することができる災害発生時の修理計画作成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、災害発生時の修理計画作成システムであって、
建物が有する部位ごとに定められ、前記建物が被災した場合の被害内容と、当該被害内容ごとの被害程度とに分類された想定被害情報が、前記被害程度ごとに、修理に要する修理日数に対応づけられた状態で記憶されている記憶手段と、
災害発生時において、ユーザが有する端末から被災建物ごとに、被災部位と、当該部位について前記想定被害情報のうちどの被害内容及び被害程度にあたるかの被災状況情報を収集する収集手段と、
前記収集手段により収集された前記被災状況情報から、共通の被害部位を有する被災建物を抽出し、当該抽出した前記被災建物について前記想定被害情報に対応づけられた修理日数に基づいてそれぞれの修理日数を把握し、1日未満を有する修理日数となった前記被災建物同士が連続した修理対象となるように組み合わせた修理計画表を作成する修理計画表作成手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、共通の被害部位(例えば「屋根」)を有する被災建物のうち、1日未満を有する修理日数となった被災建物同士が連続した修理対象となるように組み合わされた修理計画表が作成される。この修理計画表にしたがって建物修理を実施すれば、所定の被災建物に対する修理作業が1日未満で終了すると、別の被災建物であって1日未満の修理日数を含むことが想定されている被災建物で修理作業に着手できる。これにより、修理が1日未満で終了した日について、終了後の時間が無駄にならないため、被災建物の修理計画を迅速かつ効率的に立て、また実施することができる。
【0009】
なお、本発明において、修理作業が1日未満を有する修理日数とは、1日未満で修理作業の全体が終了する場合だけでなく、1日又は数日の修理日数に加えて1日未満の修理作業が必要な場合も含む。また、1日とは、1日の修理作業時間として想定された時間(例えば8時間)を意味し、1日未満とはその想定時間未満であることを意味する。
【0010】
第2の発明は、前記修理計画表作成手段は、前記共通の被害部位を有する前記被災建物を抽出した後、当該抽出した前記被災建物を所定地域ごとに分類し、その上で修理計画を作成することを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、修理計画表が所定地域ごとに分類されたものとなるため、当該所定地域の近くに所在する修理業者を担当させたり、修理作業が1日未満で終了して次の被災建物に移動する場合の移動距離を短くしたりすることができる。これにより、修理作業をより効率的に行うことができる。
【0012】
第3の発明では、前記想定被害情報に対応づけられる前記修理日数は半日単位で設定され、
前記修理計画表作成手段は、前記所定の被害部位の修理日数が半日を有する被災建物同士を組み合わせて前記修理計画を作成することを特徴とする。
【0013】
想定被害情報に対応づけられる修理日数の単位を、30分や1時間単位等のように細かく設定しすぎると、修理現場で想定外の事項が発生した場合への対応が困難となるなど、修理現場での柔軟な作業を阻害し、計画どおりに進まない可能性が生じる。この点、第3の発明によれば、想定被害情報に対応づけられる修理日数が半日単位と、比較的単位を緩く設定しているため、修理現場での柔軟な作業を阻害し、計画どおりに進まない可能性が生じるおそれを低減できる。
【0014】
なお、半日とは、1日の作業時間として想定された時間(例えば8時間)を基準に、その時間の半分の時間を意味する。
【0015】
第4の発明では、前記記憶手段には、前記想定被害情報について、前記被害程度ごと複数に段階づけられた修理緊急度が対応づけられて記憶されており、
前記修理計画表作成手段は、修理緊急度が高い前記被災建物が優先して修理対象となるように並べるとともに、1日未満を有する修理日数となった被災建物同士を組み合わせる場合には、修理緊急度が同じレベルの前記被災建物同士を組み合わせることを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、修理計画表にしたがって修理を実施することで、修理緊急度が高い順に修理が実施されるため、居住困難な状況が早期に改善され、避難生活からの脱却を早期に実現することができる。
【0017】
第5の発明では、前記記憶手段には、前記被害程度ごとに、応急措置に要する応急措置日数が対応づけられた状態で記憶されており、
前記収集手段により収集された前記被災状況情報から、共通の被害部位を有する前記被災建物を抽出し、当該抽出した前記被災建物から修理緊急度が高い前記被災建物をさらに抽出し、当該抽出した修理緊急度が高い前記被災建物について前記想定被害情報に対応づけられた応急措置日数に基づいてそれぞれの応急措置日数を把握し、1日未満を有する応急措置日数となった前記被災建物同士が連続した応急措置の対象となるように組み合わせて初期対応計画表を作成する初期対応計画表作成手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
第5の発明によれば、修理緊急度が高い被災建物のみを抽出し、共通の被害部位(例えば「屋根」等)を有する被災建物のうち、1日未満を有する応急日数となった被災建物同士が連続した修理対象となるように組み合わされた初期対応計画表が作成される。この初期対応計画表にしたがって応急措置を実施すれば、時間の無駄を省きながら、修理緊急度の高い被災建物のみを優先して応急措置を実施することができる。これにより、居住困難な状況が早期に改善され、避難生活からの脱却を早期に実現することができる。
【0019】
第6の発明では、前記想定被害情報は、前記建物の敷地内に設けられる外構についても、その部位ごとに、被害内容及び被害程度が分類されており、
前記記憶手段は、前記外構の被害程度ごとに、修理に要する修理日数が対応づけられた状態で記憶されていることを特徴とする。
【0020】
第6の発明によれば、建物本体が有する部位だけでなく外構についても同様に修理計画表の作成対象となり、被災によって損傷した外構の修理について、修理計画を迅速かつ効率的に立て、また実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】修理計画作成システムを示すブロック図。
図2】建物の部位ごとの想定被害状況リストを示す表。
図3】被災情報収集処理を示すフローチャート。
図4】修理計画作成処理を示すフローチャート。
図5】被害状況リストを示す表。
図6】被害分類リストを示す表。
図7】修理計画表を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した災害発生時の修理計画作成システムの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の修理計画システムは、建物としての住宅について、その修理計画を作成する。
【0023】
はじめに、本実施形態の修理計画作成システムのシステム構成について説明する。図1に示すように、修理計画作成システム10は、システム全体を司る修理計画作成サーバ11と、被災状況情報を収集するための一つ又は複数の携帯端末12とを有して構成されている。修理計画作成サーバ11と携帯端末12とは、インターネット網Nを介して接続されている。
【0024】
修理計画作成サーバ11は、例えば住宅建築会社等の社内に設置されている。一方、携帯端末12は、修理計画作成サーバ11が設置された会社の社員等がユーザとなって、当該社員等によって携帯される。携帯端末12は、災害発生時において、当該社員等が被災地域を訪れて被災状況を確認する際に持参される。携帯端末12は、本システム専用の端末であってもよいし、市販されているスマートフォンやタブレット端末等であってもよい。後者の場合は、当該端末に本システム用のアプリを導入し、当該アプリを起動することにより本システムへのアクセスが可能となる。
【0025】
修理計画作成サーバ11は、記憶部21と、プログラム処理部22と、通信部23と、表示部24とを備えている。
【0026】
記憶部21には、本システムの処理実行に必要な記憶領域を備え、処理実行に必要な各種情報が記憶されている。その詳細は後述する。プログラム処理部22は、CPUやメモリ等によって構成されるマイクロコンピュータであり、記憶部21に記憶された情報等を用いつつ処理プログラムを実行することにより、修理計画表L3(後述する図7参照)を作成する。通信部23は、プログラム処理部22をインターネット網Nへ接続し、携帯端末12との間で情報を送受信する。表示部24は液晶ディスプレイ等であり、プログラム処理部22により作成された被害状況リストL1、被害分類リストL2、修理計画表L3等を操作者の入力操作に応じて画面に表示する。
【0027】
記憶部21の構成についてさらに説明すると、記憶部21は、プログラム記憶部31と、想定被害情報データベース32と、お客様情報データベース33と、被害情報記憶部34とを備えている。なお、記憶部21は記憶手段に相当する。
【0028】
プログラム記憶部31には、本システムにおいて修理計画作成処理を実行するための処理プログラムが記憶されている。
【0029】
想定被害情報データベース32には、図2に示すように、建物が有する部位及び建物の敷地内に設けられる外構の部位ごとに、当該部位が被災した場合に想定される被害内容と、当該被害内容ごとに想定される被害程度とが分類され、想定被害情報として登録されている。また、想定被害情報のうちの被害程度ごとに、それぞれの修理緊急度と、その被害を修理するのに必要な想定日数とが対応付けられて登録されている。なお、ここでいう「修理」とは、応急措置で済ませるものではなく、元通りに修復された状態となるまで行うことをいう。
【0030】
図2に示すリストは、部位ごとの被害情報の一例である。被害程度や修理緊急度の分類数は任意であるが、ここでは、それぞれ3段階(被害程度は大中小、緊急度はA,B,C)に分けられている。緊急度を示すA~Cのうち、Aが最も緊急度が高い場合を意味している。想定日数の単位も1日未満であれば、1時間単位としたり、数時間単位としたりするなど任意に設定できるが、ここでは半日単位で設定されている。ここでいう1日とは、1日の修理作業時間として想定された時間(例えば8時間)を意味し、半日とは1日の作業時間を基準に、その時間の半分の時間を意味する。
【0031】
図2(a)に示す「屋根」の部位においては、瓦屋根を有する建物を想定し、被害内容が「屋根崩壊」、「瓦飛散」、「瓦割れ」の3つにまず分類され、それぞれにおいて被害規模の程度が大、中、小の3つに分類されている。「屋根崩壊」については、「全面崩壊」している場合が被害程度「大」とされ、「二面崩壊」している場合が被害程度「中」とされ、「一面崩壊」している場合が被害程度「小」とされている。「瓦飛散」や「瓦割れ」については、飛散や割れた瓦の枚数に応じて「大」、「中」、「小」に分類されている。屋根瓦が被災した場合、それは雨漏れに結び付くため、緊急度は比較的高く、「屋根崩壊」の場合はすべての被害程度について、「瓦飛散」や「瓦割れ」の場合は被害程度が「大」のとき、それぞれ緊急度が3段階のうち最も高いAに設定されている。それ以外の被害程度は、中程度の緊急度を示すBに設定されている。
【0032】
図2(b)に示す「外壁」の部位においては、被害内容が「陥没(外装材の交換が必要)」、「陥没(外装材の交換までは必要ない)」、「小傷・欠け」の3つにまず分類され、それぞれにおいて被害規模の程度が大、中、小の3つに分類されている。外装材の交換が必要な「陥没」については、「全面陥没」している場合が被害程度「大」とされ、「二面が陥没」している場合が被害程度「中」とされ、「一面が陥没」している場合が被害程度「小」とされている。外装材の交換までは不要な「陥没」や「小傷・欠け」の被害程度については、陥没したり小傷や欠けが生じたりした外装材の枚数に応じて「大」、「中」、「小」に分けられている。外壁が被災した場合、それは雨水や外気の侵入に結び付くため、緊急度は比較的高く、外装材の交換が必要な「陥没」の場合はすべての被害程度について、外装材の交換不要な「陥没」や「小傷・欠け」の場合は被害程度が「大」について、それぞれ緊急度が3段階のうち最も高いAに設定されている。それ以外の被害程度は、中程度の緊急度を示すBに設定されている。
【0033】
図2(c)に示す「内装」の部位においては、二階建て建物を想定し、被害内容が「床上浸水」、「床下浸水」、「壁ボード割れ」の3つにまず分類され、それぞれにおいて被害規模の程度が大、中、小の3つに分類されている。「床上浸水」については、建物二階に至る程度に浸水している場合が被害程度「大」とされ、建物一階まで浸水している場合が被害程度「中」とされ、床上1mまで浸水している場合が被害程度「小」とされている。「床下浸水」や「壁ボード割れ」の被害程度については、浸水した箇所の数や割れが生じた壁ボードの枚数に応じて「大」、「中」、「小」に分類されている。内装が被災した場合、床上浸水をした建物に居住することは困難であるため、すべての被害程度において緊急度は高く、3段階のうち最も高いAに設定されている。床下浸水や壁ボードの割れの場合も、浸水が建物躯体に影響を及ぼすおそれがあり、また、割れを放置すれば割れ被害の程度が拡大するおそれがあるため、緊急度は中程度のBに設定されている。
【0034】
図2(d)に示す「外構」においては、被害内容が「カーポート・サイクルポート屋根飛散」、「コンクリートブロック損傷」、「フェンス倒れ」の3つにまず分類され、それぞれにおいて被害規模の程度が大、中、小の3つに分類されている。「カーポート・サイクルポート屋根飛散」については、屋根パネルのすべてが損傷又は損失している場合が被害程度「大」とされ、「5枚」程度を残して損傷又は損失している場合が被害程度「中」とされ、それ以下の場合が被害程度「小」とされている。「コンクリートブロック破損」の被害程度については破損部分の長さに応じて、「フェンス倒れ」の被害程度については倒れたフェンスの枚数に応じて、それぞれ「大」、「中」、「小」に分類されている。外構が被災した場合、それは建物本体の被災とは異なり、建物に居住すること自体に直接的な影響はない。そのため、緊急度は比較的低く、すべての被害程度について緊急度が3段階のうち最も低いCに設定されている。
【0035】
記憶部21が有する構成要素の説明に戻り、図1に示すように、記憶部21が有するお客様情報データベース33には、修理計画作成サーバ11が設置されている建築会社が請け負って、過去に建てた住宅のお客様情報が登録されている。お客様情報に含まれる情報としては、例えば住所、氏名、家族構成、電話番号等の連絡先、引渡し日等である。携帯端末12によって収集され、携帯端末12から被災状況情報を送信して修理計画作成サーバ11がこれを受信すると、受信するたびに当該情報が被害情報記憶部34に順次記憶される。
【0036】
次に、図1に戻り、本修理計画作成システム10において、携帯端末12は、記憶部41と、プログラム処理部42と、通信部43と、表示部44と、入力部45と、カメラ部46とを備えている。
【0037】
記憶部41には、被災地域における個々の建物の被災状況情報を収集するための処理実行に必要な記憶領域を備え、また処理実行に必要なプログラムが記憶されている。例えば、携帯端末12が本システム専用の端末であれば、被災状況情報を収集するためのプログラムが記憶されている。携帯端末12が市販のスマートフォンやタブレット端末等であれば、被災状況情報を収集するためのアプリが記憶されている。また、記憶部41には、修理計画作成サーバ11の想定被害情報データベース32に登録された想定被害情報と同じ想定被害情報が登録されている。
【0038】
プログラム処理部42は、CPUやメモリ等によって構成されるマイクロコンピュータであり、記憶部41に記憶された情報等を用いつつ処理プログラムを実行することにより、被災状況情報を収集する。通信部43は、プログラム処理部42をインターネット網Nへ接続し、修理計画作成サーバ11との間で情報を送受信する。
【0039】
表示部44は液晶ディスプレイ等であり、被災状況情報を収集するための各種画面を表示する。入力部45は、例えば表示部44に表示された入力ボタンであり、被災建物についてその被災状況情報を入力する。カメラ部46は静止画又は動画を撮影する機能を有し、撮影された画像データを所定のデータフォーマットで記憶部41に記憶する。
【0040】
以上の構成を有する修理計画作成システム10により、災害発生時において建物の修理計画を作成する処理について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0041】
はじめに、携帯端末12によって実行される被災状況情報を収集する被災状況情報収集処理について説明する。この処理は、災害が発生した場合に、携帯端末12を持参しながら情報収集担当者がその被災地域に入り、携帯端末12の処理プログラムを起動することによって開始され、プログラム処理部42によって実行される。
【0042】
図3に示すように、ステップS11では、修理計画作成サーバ11の記憶部21に登録されているお客様情報を取得する。続くステップS12において、取得したお客様情報の中から、被災状況情報の収集する対象となる特定の一つの建物(お客様)を選択するための建物選択画面を表示部24に表示させる。操作者の選択入力操作によって選択画面から特定の建物が選択されると、当該建物を被災状況情報の収集対象として特定する。
【0043】
続いて、ステップS13において、記憶部41から想定被害情報を取得し、情報収集対象となった建物について、想定被害情報のうちどの被災部位、被害内容及び被害程度に該当するかを選択するための被害選択画面を表示部44に表示させる。操作者の目視確認に基づいた選択入力操作により、被災部位、被害内容及び被害程度が選択されると、選択された情報を被災情報として、選択中の建物に対応づけて記憶部41に登録する。この時、カメラ部46によって建物の被害状況を撮影し、撮影した画像データも記憶部41に記憶する。
【0044】
ステップS14では、被害情報が選択された建物と、その被害情報と、被害状況画像とを、当該選択された建物についての被災状況情報として、修理計画作成サーバ11に送信する。
【0045】
続くステップS15では、被災地域において、お客様情報として登録されている建物が他にあるかどうかを判定する。他にあれば判定を肯定してステップS12に戻り、再度、被災情報の収集対象となる建物を特定し、被災情報の収集を継続する。一方、他に建物がなく、被災地域に存在し、お客様情報として登録されている建物すべてについて被災情報が収集された場合には、判定を否定して処理を終了する。
【0046】
次に、修理計画作成サーバ11によって実行され、修理計画を作成する修理計画作成勝利について説明する。この処理は、災害発生した場合に、修理計画作成サーバ11のプログラム処理部22によって実行される。
【0047】
図4に示すように、ステップS21にて、携帯端末12から送信される被災建物ごとの被災状況情報を収集する。このステップS21は、収集手段に相当する。続くステップS22では、お客様情報データベース33から取得したお客様情報に基づいて、被災地域に居住するすべてのお客様の建物について、携帯端末12を利用した被害情報収集が完了したか否かを判定する。いまだ完了していない場合は判定を否定し、被害情報の収集を継続する。一方、完了した場合は判定を肯定し、次のステップS23に進む。
【0048】
ステップS23では、携帯端末12によって収集した被災状況情報(建物とその被害情報等)を集約し、当該被災状況情報と、想定被害情報に対応づけられた緊急度及び修理日数と、お客様情報とに基づいて、被害状況リストL1を作成し、表示部24に表示させる。被害状況リストL1は、図5に示すように、被災地域に存在するお客様の建物、お客様情報(引渡し日等)、当該建物の住所、被害部位、被害内容、被害程度、緊急度、修理日数、被害状況画像がリスト化されたものである。被害状況画像については、図示のように、「写真」の文字を、画像データを表示させる画面にリンクさせるようにしてもよい。
【0049】
続くステップS24では、作成された被害状況リストL1に基づいて、被害分類リストL2を作成する。被害分類リストL2は、被害状況リストL1の中から、住所が同一地域であり、かつ同一の被害部位の被災建物のみを抽出し、緊急度の高い被災建物が優先して修理対象となるように並べてリスト化したものである。図6は、住所がA区であり、被害部位が屋根である建物を抽出した例を示している。
【0050】
なお、住所が同一地域であると判断する基準は任意であり、例えば政令指定都市であれば行政区を、それ以外の市区町村では当該市区町村又は市区町村内で区割りされた地区等を基準とすることができる。
【0051】
続くステップS25では、作成された被害分類リストL2おいて、修理日数が半日を含む被災建物が複数存在するか否かを判定する。当該被災建物が存在しない又は一つである場合は判定を否定し、ステップS26に進み、被害分類リストL2をそのまま修理計画表L3とする。操作者の入力操作に基づいて修理計画表L3を表示部24に表示させ、処理は終了する。一方、修理日数が半日を含む被災建物が複数存在する場合は判定を肯定し、次のステップS27に進む。
【0052】
ステップS27では、図6に示すように、被害分類リストL2に示された建物の中で、修理日数が半日を含む2つの被災建物が連続した修理対象となるように組み合わせ、その組み合わせが反映された結果である修理計画表L3を作成する。例えば、図7は、図6に示された「A区・屋根」の被害分類リストL2に基づいて修理計画表L3を作成した例を示している。ここでは、被害分類リストL2の段階で、緊急度がAを示す「A様邸」の修理日数は「3.5」日、「C様邸」の修理日数は「5.5」日であり、この両者を組み合わせている。また、緊急度がBを示す「E様邸」における修理日数は「3.5」日、「G様邸」における修理日数は「3.5」日であり、この両者を組み合わせている。
【0053】
組み合わせにあたっては、緊急度が同じレベルの被災建物同士を組み合わせる。そのため、図7の例では、緊急度がAを示す「A様邸」と緊急度がBを示す「E様邸」とでは、いずれも修理日数として半日を含むが、両者は緊急度のレベルが異なるため、これら異なるレベルの被災建物同士を組み合わせることはしない。
【0054】
その後、修理計画表L3を表示部24に表示させて処理は終了する。なお、上記ステップS23~ステップS27までの処理が、修理計画表作成手段に相当する。
【0055】
このように、半日を含む修理日数となっている同一地域の建物同士が連続した修理対象となるように組み合わせることで、修理業者が修理を実施する際に、半日を無駄にすることなく修理のための時間をして使うことができる。修理業者は、この修理計画にしたがって修理を順次実施することにより、被災建物の修理を迅速かつ効率よく行うことができる。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態の修理計画作成システム10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
【0057】
(1)共通の被害部位(例えば「屋根」、「外壁」、「内装」、「外構」等)を有する被災建物のうち、半日を有する修理日数となった被災建物同士が連続した修理対象となるように組み合わされた修理計画表L3が作成される。この修理計画表L3にしたがって建物修理を実施すれば、所定の被災建物に対する修理作業が半日で終了すると、別の被災建物であって半日の修理日数を含むことが想定されている被災建物で修理作業に着手できる。これにより、修理が半日で終了した日について、終了後の時間が無駄にならないため、被災建物の修理計画を迅速かつ効率的に立て、また実施することができる。
【0058】
(2)共通の被害部位を有する被災建物を抽出した後、当該抽出された被災建物を所定地域ごとに分類し、その上で修理計画表L3を作成している。そのため、当該所定地域の近くに所在する修理業者を担当させたり、修理作業が半日で終了して次の被災建物に移動する場合の移動距離を短くしたりすることができる。これにより、修理作業をより効率的に行うことができる。
【0059】
(3)想定被害情報に対応づけられる修理日数の単位を、30分や1時間単位等のように細かく設定しすぎると、修理現場で想定外の事項が発生した場合への対応が困難となるなど、修理現場での柔軟な作業を阻害し、計画どおりに進まない可能性が生じる。この点、想定被害情報に対応づけられる修理日数が半日単位と、比較的単位を緩く設定しているため、修理現場での柔軟な作業を阻害し、計画どおりに進まない可能性が生じるおそれを低減できる。
【0060】
(4)修理計画表L3は、修理緊急度が高い被災建物が低い被災建物よりも先に修理対象となるように並べられるとともに、半日を有する修理日数となった被災建物同士を組み合わせる場合には、修理緊急度が同じレベルの被災建物同士を組み合わせている。この修理計画表L3にしたがって修理を実施することで、修理緊急度が高い順に修理が実施されるため、居住困難な状況が早期に改善され、避難生活からの脱却を早期に実現することができる。
【0061】
(5)「屋根」、「外壁」、「内壁」等の建物本体の部位だけでなく、外構についても修理計画表L3が作成される。そのため、被災によって損傷した外構の修理についても、修理計画を迅速かつ効率的に立て、また実施することができる。
【0062】
なお、本発明の修理計画作成システムは、上記実施の形態の修理計画作成システム10に限定されず、次のように実施してもよい。
【0063】
(a)上記実施の形態の修理計画作成システム10では、被災地域に居住するすべてのお客様の建物について、携帯端末12を利用した被害情報収集が完了した場合に、修理計画作成処理を進めるようにした。災害発生時においては、発生直後に被災地域へ立ち入ることが制限される場合や、被災地域が多数の市区町村にまたがるような広範囲となる場合もある。そのような場合に、すべてのお客様の建物について被害情報収集がされるのを待っていると、修理が遅れてしまうこともあり得る。そこで、例えば数日~1週間程度の時間を設定し、当該時間が経過した時点で被害情報が収集された建物について修理計画表L3を作成することを繰り返すようにしてもよい。
【0064】
(b)上記実施の形態の修理計画作成システム10では、想定被害情報に修理日数が対応づけられ、被災建物の被災部位を修理するための修理計画表L3を作成している。これに加え、被害程度ごとに応急措置に要すると想定される応急措置日数を対応づけ、修理緊急度の高い被災建物について、修理計画と同様の初期対応計画表を作成するようにしてもよい。応急措置とは、例えば、被災部位が「屋根」や「外壁」であれば、被害箇所にブルーシートや木製合板を取り付けることが考えられる。また、被害部位が「内装」であれば、汚泥の排除、洗浄、殺菌処理等が考えられる。
【0065】
この場合、携帯端末12によって被災状況情報が収集された被災建物から共通の被害部位(「屋根」、「外壁」、「内壁」等)を有する被災建物を抽出し、当該抽出した被災建物から修理緊急度が高い被災建物をさらに抽出する。次いで、当該抽出された修理緊急度が高い前記被災建物について、想定被害情報に対応づけられた応急措置日数に基づいてそれぞれの応急措置日数を把握し、1日未満を有する応急措置日数となった被災建物同士が連続した応急措置の対象となるように組み合わせ、初期対応計画表が作成される。
【0066】
この初期対応計画表にしたがって応急措置を実施すれば、時間の無駄を省きながら、修理緊急度の高い被災建物のみを優先して応急措置を実施することができる。これにより、居住困難な状況が早期に改善され、避難生活からの脱却を早期に実現することができる。なお、初期対応計画表を作成する上記処理は、修理計画作成サーバ11のプログラム処理部22によって実行されるため、プログラム処理部22が初期対応計画表作成手段に相当する。
【0067】
(c)上記実施の形態の修理計画作成システム10では、被害分類リストL2の段階で、半日の修理日数を含む被災建物同士を組み合わせる場合、緊急度が同じレベル同士であることのみを条件としている。これに代えて、住所をより細かく分類した上で、同一町内や同一学区内等に所在する被災建物を組み合わせたり、被害程度が高い被災建物同士を組み合わせたりするなど、組み合わせの条件を各種設定してもよい。これにより、修理の効率をより高めることができる。
【0068】
(d)上記実施の形態の修理計画作成システム10では、携帯端末12は、修理計画作成サーバ11が設置された会社の社員等によって携帯されるものとしたが、被災建物の住人が保有するスマートフォンやタブレット端末等であってもよい。住人が保有する携帯端末12から被災状況情報を収集することで、当該情報収集をより迅速に行える。
【0069】
(e)上記実施の形態の修理計画作成システム10は、建物としての住宅について、その修理計画表L3を作成している。住宅兼店舗、店舗、ビルなどの住宅以外の建物について修理計画表L3を作成するシステムであってもよい。
【0070】
(f)上記実施の形態の修理計画作成システム10は、住宅建築会社に使用されることを想定し、当該会社のお客様の建物について修理計画表L3を作成している。これに代えて、被災地域の建物全般について修理計画を作成するシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…修理計画作成システム、11…修理計画作成サーバ(収集手段、修理計画表作成手段、初期対応計画表作成手段)、12…携帯端末、21…記憶部(記憶手段)、
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