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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0457 20230101AFI20230719BHJP
   H04W 16/04 20090101ALI20230719BHJP
   H04W 28/084 20230101ALI20230719BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20230719BHJP
【FI】
H04W72/0457
H04W16/04
H04W28/084
H04W88/08
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2019138893
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021022858
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】寺部 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊明
(72)【発明者】
【氏名】福田 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】平山 晴久
(72)【発明者】
【氏名】難波 忍
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0085493(US,A1)
【文献】特表2018-518109(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168112(WO,A1)
【文献】Samsung,"Slicing: Requirements for RAN",3GPP TSG-RAN WG2 NR_AH_2017_01 R2-1700380,[online],2017年01月06日,pages 1-4,[retrieved on 2023-02-02], <URL: https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_AHs/2017_01_NR/Docs/R2-1700380.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末に対して無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラによって使用される無線リソースを制御する制御装置であって、
それぞれ個別のDU(Distributed unit)に含まれる複数のスケジューラのそれぞれについて、1つのRU(無線ユニット)によって形成される同一のセル内の無線端末による無線通信のデータ量及び通信品質に基づいて、所定期間において各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定する特定手段であって、前記複数のスケジューラのそれぞれが、1つ以上のスライスに対応しており、かつ、前記1つのRUによって形成される前記同一のセル内で、対応するスライスを使用する無線端末に対して無線リソースのスケジューリングを行うように構成される、前記特定手段と、
前記複数のスケジューラのそれぞれに対して、前記特定手段によって特定された量の無線リソースと、前記スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンとを割り当てる割当手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記セル内の各無線端末による無線通信のデータ量及び通信品質に基づいて、無線端末ごとに、前記所定期間において必要な無線リソースの量を求め、
スケジューラごとに、対応するスライスを使用する1つ以上の無線端末に必要な無線リソースの合計量を、前記所定期間において当該スケジューラに必要な無線リソースの量として求める
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記割当手段によって前記複数のスケジューラのそれぞれに割り当てられた無線リソースは、各スケジューラによって、対応するスライスを使用する無線端末に対する前記スケジューリングに使用される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記複数のスケジューラのそれぞれによる前記スケジューリングは、前記割り当てられた無線リソースに、前記割り当てられたマージンを加えた範囲内の無線リソースを用いて行われる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記複数のスケジューラのそれぞれに対して前記割当手段により割り当てる前記マージンを決定する決定手段を更に備え、
前記決定手段は、前記所定期間における、前記割当手段により割り当て可能な無線リソースの総量から、前記特定手段によって特定された、各スケジューラに必要な無線リソースの量を差し引いた量の、残りの無線リソースを、前記複数のスケジューラに対して前記マージンとして配分する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記セル内の無線端末がそれぞれ使用するスライスと、スライスごとに予め定められたマージン情報とに基づいて、前記残りの無線リソースの配分を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記セル内の無線端末がそれぞれ使用するスライスと、スライスごとに予め定められたマージン情報とに基づいて、前記複数のスケジューラのそれぞれについての必要マージンを求め、求めた前記必要マージンに応じて前記残りの無線リソースの配分を行う
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記決定手段は、前記複数のスケジューラの前記必要マージンの比率に基づいて、前記残りの無線リソースの配分を行う
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記必要マージンは、前記セル内において対応するスライスを使用する1つ以上の無線端末についての必要マージンの総和によって求められる
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記マージン情報は、対応するスライスを無線端末が使用するための無線端末ごとの必要マージンを示す
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記マージン情報は、対応するスライスを無線端末が使用するための無線端末ごとの必要マージンの算出に用いられる係数値であって、前記所定期間における無線端末ごとの必要な無線リソースの量に対して乗算される係数値を示す
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
無線端末ごとの前記必要マージンは、当該無線端末が使用するスライスに対して定められた優先度に基づいて求められる
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
無線端末ごとの前記必要マージンは、当該無線端末が使用するスライスに対して定められた許容遅延に基づいて求められる
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
無線端末ごとの前記必要マージンは、当該無線端末に対して前記スケジューリングを行うスケジューラを提供している事業者に対して定められた優先度に基づいて求められる
ことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記決定手段は、前記複数のスケジューラに割り当てられる前記マージンの総量が前記残りの無線リソースの量を上回るように、前記残りの無線リソースの一部を、スケジューラ間で重複して割り当てる重複マージンとして決定する
ことを特徴とする請求項5から14のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記重複マージンに対応する無線リソースについてスケジューラ間で重複して前記スケジューリングが行われた過去の実績を示す実績情報を蓄積する蓄積手段を更に備え、
前記決定手段は、前記蓄積手段により蓄積されている前記実績情報に応じて、前記重複マージンを決定する
ことを特徴とする請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記蓄積手段は、前記複数のスケジューラのそれぞれから前記スケジューリングの結果を取得し、前記複数のスケジューラによる前記スケジューリングの結果に基づいて前記実績情報を蓄積する
ことを特徴とする請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記決定手段は、前記蓄積手段により蓄積されている前記実績情報が示す、過去にスケジューラ間で重複して前記スケジューリングが行われた無線リソースの量に応じて、以後に割り当てる前記重複マージンの量を制御する
ことを特徴とする請求項16又は17に記載の制御装置。
【請求項19】
前記決定手段は、前記複数のスケジューラのうちのスケジューラの組み合わせごとに、スケジューラ間の前記重複マージンを決定する
ことを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項20】
前記複数のスケジューラは、第1、第2及び第3スケジューラを含み、
前記決定手段は、前記第1及び第2スケジューラの組み合わせに対する前記重複マージンの量を、前記第1及び第3スケジューラの組み合わせに対する前記重複マージンの量より多くする
ことを特徴とする請求項19に記載の制御装置。
【請求項21】
前記決定手段は、前記セル内の無線端末が使用する、各スケジューラに対応するスライスに対して定められた優先度に応じて、スケジューラの組み合わせごとの前記重複マージンの量を制御する
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の制御装置。
【請求項22】
前記割当手段によって割り当てられた前記マージンの使用のルールであって、前記重複マージンとして割り当てられた無線リソースがスケジューラ間で同時に使用されないようにするためのルールを、前記RUに対して設定する設定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項15から21のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項23】
前記設定手段は、前記セル内の無線端末が使用する、各スケジューラに対応するスライスに対して定められた優先度に応じて、優先度が高いスライスに対応するスケジューラによる、前記重複マージンに対応する無線リソースの割り当てが、優先度が低いスライスに対応するスケジューラによる、前記重複マージンに対応する無線リソースの割り当てより優先して行われるように、前記ルールを設定する
ことを特徴とする請求項22に記載の制御装置。
【請求項24】
前記設定手段は、前記複数のスケジューラのそれぞれに対応するスライスに対して定められた優先度を、前記RUに対して通知し、
前記重複マージンに対応する無線リソースについて2つ以上のスケジューラ間で重複して前記スケジューリングが行われた場合、当該2つ以上のスケジューラのうちでいずれのスケジューラによる無線リソースの割り当てを優先するかが、前記通知された優先度に応じて前記RUによって決定される
ことを特徴とする請求項22又は23に記載の制御装置。
【請求項25】
前記特定手段は、前記所定期間ごとの、及び前記セル内の無線端末に対してスライスを設定する際の、少なくともいずれかのタイミングに、現時点からの前記所定期間において各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定する
ことを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項26】
前記所定期間は、前記セル内の無線端末による無線通信のデータ量及び無線品質の変動量が所定量以下となる期間である
ことを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項27】
前記特定手段は、
前記セル内の各無線端末から送信される上りリンクのデータ量を、各無線端末からの通知によって取得し、
前記セル内で各無線端末へ送信される下りリンクのデータ量を、前記複数のスケジューラからの通知によって取得する
ことを特徴とする請求項1から26のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項28】
前記特定手段は、
前記セル内の無線端末ごとの上りリンクの通信品質として、前記RUによる通信品質の測定結果を取得し、
前記セル内の無線端末ごとの下りリンクの通信品質として、各無線端末による通信品質の測定結果を取得する
ことを特徴とする請求項1から27いずれか1項に記載の制御装置。
【請求項29】
RU及び前記DUは、基地局システムを構成し、
前記RUは、前記基地局システムのアンテナサイトに配置され、
前記制御装置は、前記基地局システムと通信可能に接続される
ことを特徴とする請求項1から28のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項30】
無線端末に対して無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラによって使用される無線リソースを制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
それぞれ個別のDU(Distributed unit)に含まれる複数のスケジューラのそれぞれについて、1つのRU(無線ユニット)によって形成される同一のセル内の無線端末による無線通信のデータ量及び通信品質に基づいて、所定期間において各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定する特定工程であって、前記複数のスケジューラのそれぞれが、1つ以上のスライスに対応しており、かつ、前記1つのRUによって形成される前記同一のセル内で、対応するスライスを使用する無線端末に対して無線リソースのスケジューリングを行うように構成される、前記特定工程と、
前記複数のスケジューラのそれぞれに対して、前記特定工程で特定された量の無線リソースと、前記スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンとを割り当てる割当工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項31】
制御装置が備えるコンピュータに、請求項30に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークスライシングを適用した基地局システムのための制御装置及び制御方法、並びに当該制御装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
第5世代(5G)移動通信システムでは、サービスタイプが大容量(eMBB:enhanced Mobile BroadBand)、超低遅延(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、及び多接続(mMTC:massive Machine Type Communications)の三つに大別されており、それぞれのサービス要求が異なる。このように要件が異なるサービスを経済的かつ柔軟に提供するために、ネットワークスライシングが検討されている。
【0003】
また、3GPP Release15として初版仕様が策定された5Gでは、DU(Distributed Unit)と称される論理ノードとCU(Central Unit)と称される論理ノードとで基地局を構成し、DUとCUとの間で基地局の機能分割を行うことが採用されている。DUには、基地局機能(下位レイヤから順にRF(Radio Frequency layer),PHY(Physical layer),MAC(Media Access Control layer),RLC(Radio Link Control layer),PDCP(Packet Data Convergence Protocol layer))のうち、下位レイヤの機能が配置され、CUには、その他の上位レイヤの機能が配置される。
【0004】
このようにDU及びCUに機能分割が行われた基地局システムに対して上述のネットワークスライシングが適用された場合、それぞれ1つ以上のスライスに対応する複数のスケジューラが、異なるDUにそれぞれ配置される。各スケジューラは、対応する1つ以上のスライス内の無線端末に対する無線リソースのスケジューリングを行う。RF及びPHY等の機能を有する1つの無線ユニット(RU:Radio Unit)を複数のDUが共有する構成では、複数のスケジューラは、同じ基地局セル内で共通の無線リソースを用いてスケジューリングを行うことになる。このため、使用する無線リソースの競合がスケジューラ間(スライス間)で生じないように、無線リソースのアイソレーションを実現する必要がある。非特許文献1では、ネットワークスライシングを適用した場合に、スライス間のアイソレーションを確保するように、予め定められた配分率に基づいて、スケジューリング用の無線リソースを各スライスに配分する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】A. Ksentini and N. Nikaein "Toward Enforcing Network Slicing on RAN:Flexibility and Resources Abstraction," IEEE Communications Magazine, Jun. 2017, vol. 55, issue 6, pp. 102-108.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような基地局システムでは、各スライスが提供するサービスの品質を維持しつつ、無線リソースを無駄なく無線端末に対するスケジューリングに使用できるように、スケジューリング用の無線リソースを各スケジューラに配分する必要がある。しかし、複数のスケジューラがそれぞれ必要とする無線リソースの量は、スケジューリング対象の無線端末の通信データ量及び無線通信品質に依存して変化する。このため、例えば各スケジューラに無線リソースを固定的に配分した場合、いずれかのスケジューラにおいて無線リソースが不足する又は余り過ぎる状況が生じる可能性がある。
【0007】
また、いずれかのスケジューラにおいてスケジューリングに必要な無線リソースを確保できなければ、サービス自体を無線端末に提供できない状況が生じる可能性がある。例えば、ミッションクリティカルのサービスを提供するスライスにアクセスする無線端末に対しては、スケジューラが適切に無線リソースを割り当てられる必要がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、複数のスケジューラに対して、所定期間内の無線リソースのスケジューリングに適した量の無線リソースを割り当てるとともに、各スケジューラがより適切に無線リソースを確保できるようにする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の係る制御装置は、無線端末に対して無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラによって使用される無線リソースを制御する制御装置であって、それぞれ個別のDU(Distributed unit)に含まれる複数のスケジューラのそれぞれについて、1つのRU(無線ユニット)によって形成される同一のセル内の無線端末による無線通信のデータ量及び通信品質に基づいて、所定期間において各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定する特定手段であって、前記複数のスケジューラのそれぞれが、1つ以上のスライスに対応しており、かつ、前記1つのRUによって形成される前記同一のセル内で、対応するスライスを使用する無線端末に対して無線リソースのスケジューリングを行うように構成される、前記特定手段と、前記複数のスケジューラのそれぞれに対して、前記特定手段によって特定された量の無線リソースと、前記スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンとを割り当てる割当手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のスケジューラに対して、所定期間内の無線リソースのスケジューリングに適した量の無線リソースを割り当てるとともに、各スケジューラがより適切に無線リソースを確保できるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基地局システムにおけるCU、DU及びRUの機能構成例を示す図。
図2】基地局システムの構成例を示す図。
図3】RANコントローラのハードウェア構成例を示すブロック図。
図4】RANコントローラの機能構成例を示すブロック図。
図5】RANコントローラにより実行される処理の手順を示すフローチャート。
図6】基地局システムにおけるCU、DU及びRUの配置の例を示す図。
図7】RANコントローラにより使用されるUE情報及びマージン情報の例を示す図。
図8】各DU(各スケジューラ)に対する無線リソース及びマージンの割り当ての例を示す図。
図9】基地局システムにおけるCU、DU及びRUの配置の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
[第1実施形態]
<基地局の機能分割>
基地局(基地局システム)は、一般に、下位レイヤの機能から上位レイヤの機能まで複数の機能(RF,...,PDCP)を有し、これらの機能はDU及びCUに分割して配置される。
【0014】
図1は、基地局のそれぞれ異なるレイヤの複数の機能を、CU、DU及びRUに分割した構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態では、CU及びDUに加えて、RF及びPHY等の機能を有するRUを設ける。図1の基地局(基地局システム)は、CU10、DU20、及びRU30で構成され、CU10は、コアネットワーク(5GC(5G Core)、EPC(Evolved Packet Core)等)に接続され、DU20は、CU10とRU30との間に接続される。
【0015】
DU20は、基地局の機能のうちの、無線端末に無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューリング機能を少なくとも有する。CU10は、基地局の機能のうち、接続されたDU20が有する機能よりも上位レイヤの機能を有する。また、RU30は、基地局の機能のうちの、電波の送受信機能に相当するRFの機能を少なくとも有する。
【0016】
図1の構成例では、DU20は、スケジューリング機能に相当するHigh MACの機能だけでなく、RLC及びLow MACの機能も有しており、CU10は、DU20が有する機能より上位レイヤの機能である、SDAP(Service Data Adaptation Protocol layer)/RRC(Radio Resource Control layer)及びPDCPの機能を有している。また、RU30は、電波の送受信機能に相当するRFの機能だけでなく、PHYの機能も有している。なお、PHYの一部の機能のみをRU30に実装し、PHYの残りの機能をDU20に実装してもよい。
【0017】
以下では、図1に示される機能構成を一例として用いて、本実施形態に係る基地局システムの構成及び動作、並びに当該基地局システムの制御について具体的に説明する。
【0018】
<基地局システムの構成>
図2は、サービスタイプとしてmMTC、URLLC及びeMBBに対応するスライス1~3が生成された、基地局システムの基本的な構成例を示す図である。なお、CU10及びDU20は、RAN(無線アクセスネットワーク)コントローラ40によって制御及び管理がなされ、各スライスは、RANコントローラ40によって生成される。
【0019】
基地局システムは、1つ又は複数のCU10(10a,10b,10c)、1つ又は複数のDU20(20a,20b,20c)、及び1つのRU30で構成されている。CU10a及びDU20aはスライス1に、CU10b及びDU20bはスライス2に、CU10c及びDU20cはスライス3に対応している。このように、複数のCU10は、それぞれ異なるスライスに対応しており、当該複数のCU10に対応する複数のDU20も同様である。なお、複数のCU10は、それぞれ1つ以上のスライスに対応していてもよい。また、複数のDU20は、それぞれ1つ以上のスライスに対応していてもよい。
【0020】
DU20は、基地局の機能のうちの無線リソースのスケジューリング機能(例えば、High MACの機能)を少なくとも有する。DU20は、それぞれ、アンテナサイトに配置されるか、又はアンテナサイトとデータセンタとの間(の地方収容局)に配置される。
【0021】
CU10は、それぞれが、DU20のうちの異なる1つのDUとコアネットワークとの間に配置され、基地局の機能のうち、接続された当該1つのDUが有する機能よりも上位レイヤの機能(例えば、SDAP/RRC及びPDCPの機能)を有する。図2の例では、CU10a,10b,10cは、それぞれ、異なる1つのDU20a,20b,20cと接続される。
【0022】
単一のRU30は、基地局の機能のうちの電波の送受信機能(例えば、RFの機能)を少なくとも有する。RU30は、アンテナサイトに配置され、複数のDU20と接続される。これにより、複数のDU20を介して提供される複数のスライス1~3が、当該RU30によって形成される同一のセル内で提供される。
【0023】
このように、本実施形態の基地局システムは、スライス1~3のそれぞれに対応するCU10及びDU20と、複数のDU20と接続され、かつ、アンテナサイトに配置された単一のRU30とで構成されている。即ち、基地局システムは、スライスごとにRUを設けずに、複数のDU及びCUを単一のRUに対して接続する(即ち、複数のDU及びCUに対してRUを共通化する)構成を有している。これにより、単一のRUで複数のサービス(スライス)を収容可能にしている。
【0024】
本実施形態では、コアネットワーク又はRANに、RANの機能を制御する制御装置であるRANコントローラ40が設けられる。RANコントローラ40は、RAN上の基地局システムと通信可能に接続される。RANコントローラ40は、RAN上の1つ又は複数のCU10(10a,10b,10c)及び1つ又は複数のDU20(20a,20b,20c)に対して、サービス要件に対応したスライス1~3を設定(生成)する。なお、本実施形態においてRANコントローラ40は、無線端末に対して無線リソースを割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラによって使用される無線リソースを制御する制御装置の一例として機能する。
【0025】
図2の構成例では、一例として5Gのネットワーク構成を想定しており、5GC CPF(5GC Control Plane Function)60は、5Gコアネットワークの制御処理機能群である。5GC UPF(5G Core User Plane Function)50(50a,50b,50c)は、5Gコアネットワークのデータ処理機能群であり、スライスごとに設けられる。5GC UPF50aはスライス1に、5GC UPF50bはスライス2に、5GC UPF50cはスライス3に対応している。
【0026】
図2の構成例では、スライス(サービス)に応じて、対応するCU10及びDU20の配置が異なっている。CU10及びDU20の配置に依存して、基地局間連携(セル間協調)の性能、アプリケーションに与える遅延量、及びネットワークの利用効率等が異なる。このため、図2の構成例では、スライス(サービス)ごとに適したCU10及びDU20の配置がなされている。
【0027】
スライス1(mMTCスライス)については、CU10aは、コアネットワークが配置されているデータセンタに配置され、DU20aは、アンテナサイトに配置される。これは、統計多重効果によりデータセンタのコンピューティングリソースを効率的に利用可能にするためである。
【0028】
スライス2(URLLCスライス)については、CU10bは、地方収容局に配置され、DU20bは、アンテナサイトに配置される。これにより、MEC(Multi-Access Edge Computing)を導入可能にし、低遅延化が実現される。本実施形態では、CU10bは、エッジサイトに配置された、低遅延サービスを提供するためのアプリケーションを有するエッジサーバであるEdge App(Edge Application Server)70と接続されている。なお、Edge App70が配置されるエッジサイトは、CU10bが配置される地方収容局であってもよい。
【0029】
スライス3(eMBBスライス)については、CU10c及びDU20cのいずれも、地方収容局に配置される。これにより、DU20cを、それぞれ異なるアンテナサイトに配置される複数のRU30と接続可能にしている。図2の構成例では、DU20cが、それぞれ異なるセルを形成する複数のRU30と接続されており、接続されたRU間のセル間協調(例えば、CoMP(Coordinated Multi-Point Transmission/reception))のための処理を行う。このように、セル間協調を可能にすることで、無線通信品質を向上させることが可能である。
【0030】
図2に示されるように、DU20a,20b,20cは、それぞれ、無線リソースを無線端末に割り当てるためのスケジューリングを行うスケジューラ21a,21b,21cを含んでいる。図2の構成例では、スライス1,2に対応するスケジューラ21a,21bはアンテナサイトに配置され、スライス3に対応するスケジューラ21cは地方収容局に収容されている。このように、スケジューラ21a,21bとスケジューラ21cとで配置場所が異なっている。
【0031】
スケジューラ21a,21b,21cがそれぞれ含まれるDU20a,20b,20cは、上述のように、共通のRU30に接続されている。スケジューラ21a,21b,21cは、共通のRU30によって形成される同一のセル内で使用可能な共通の無線リソースを用いて、対応するスライスを使用する無線端末に対してスケジューリングを行う。各スケジューラ21a,21b,21cによるスケジューリングに用いられる無線リソースは、予めRANコントローラ40から割り当てられる。
【0032】
<装置構成>
RANコントローラ40は、一例として、図3に示されるようなハードウェア構成を有する。具体的には、RANコントローラ40は、CPU101、ROM102、RAM103、HDD等の外部記憶デバイス104、及び通信デバイス105を有する。
【0033】
RANコントローラ40では、例えばROM102、RAM103及び外部記憶デバイス104のいずれかに格納された、RANコントローラ40の各機能を実現するプログラムがCPU101によって実行される。なお、CPU101は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0034】
通信デバイス105は、CPU101により制御下で、制御対象のCU10及びDU20等の、外部装置との通信を行うための通信インタフェースである。RANコントローラ40は、それぞれ接続先が異なる複数の通信デバイス105を有していてもよい。
【0035】
なお、RANコントローラ40は、後述する各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
【0036】
また、CU10、DU20及びRU30も、図3に示されるようなハードウェア構成を有していてもよい。ただし、RU30は、通信デバイス105として、各DU20との通信のための通信インタフェースの他に、無線端末との無線通信のための無線通信インタフェースも備えている。
【0037】
図4は、RANコントローラ40の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態のRANコントローラ40は、情報取得部41、リソース制御部42、割当通知部43、及び情報記憶部44を有する。本実施形態では、CPU101による制御プログラムの実行により、CPU101上でこれらの機能部が実現されるが、各機能部を実現する専用のハードウェアが設けられてもよい。なお、図4には、RANコントローラ40が有する機能のうち、各スケジューラ21(各DU20)に対する無線リソースの割り当て(複数のスライスのそれぞれに対する、スライスごとのスケジューリングに用いられる無線リソースの割り当て)に関連する機能部のみが示されており、それ以外の機能に関連する機能部は省略されている。また、図4に示されるルール設定部45は、後述する第3実施形態のRANコントローラ40に設けられる。
【0038】
情報取得部41は、リソース制御部42による、各スケジューラ21への無線リソースの割り当て(配分)のために必要となる情報を、CU10、DU20及びRU30の少なくともいずれかから取得する。例えば、情報取得部41は、各DU20に対応するスライスにアクセスする1つ以上の無線端末についての通信データ量及び通信品質を取得する。情報取得部41は、取得した情報を、情報記憶部44に格納する。
【0039】
リソース制御部42は、情報取得部41によって取得された情報に基づいて、スケジューリング用の無線リソースを各スケジューラ21(各DU20)に割り当てる処理を行うことで、各スケジューラ21によって使用される無線リソースを制御する。リソース制御部42は、無線リソースの割り当てとともに、各スケジューラ21がスケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンの割り当ても行う。
【0040】
割当通知部43は、リソース制御部42による、各スケジューラ21(各DU20)に対する無線リソース及びマージンの割り当ての結果に従って、各スケジューラ21に対して、無線リソース及びマージンの割り当てを示す通知を送信する。これにより、複数のスケジューラ21(複数のDU20)に対する無線リソース及びマージンの割り当てが完了する。
【0041】
情報記憶部44は、記憶デバイス(例えば、RAM103又は外部記憶デバイス104)に設けられたデータベースに相当し、情報取得部41によって取得された情報、及びリソース制御部42による処理に使用される情報が格納される。
【0042】
<無線リソース及びマージンの割当処理>
本実施形態においてRANコントローラ40は、所定の時間間隔で、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当て(配分)を行う。また、RANコントローラ40は、無線リソースの割り当てとともに、各スケジューラ21に対して、無線リソースの不足が生じた場合にスケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンの割り当ても行う。
【0043】
ここで、本実施形態のような基地局システムのアーキテクチャでは、スケジューラが異なる場所(サイトに)に配置されうる。図2の構成例では、スケジューラ21cは、スケジューラ21a,21bとは異なる場所に配置されている。異なるスライスに対応する複数のスケジューラが異なる場所に配置されている場合、一般にスケジューリングの最小時間単位であるTTI(送信時間間隔)ごとに、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当てを更新することは難しい。このため、RANコントローラ40は、TTIより長い(例えば、100TTIの)時間間隔で、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当て(割り当ての更新)を行う。
【0044】
図5は、本実施形態に係る、RANコントローラ40によって実行される割当処理の手順を示すフローチャートである。この割当処理は、少なくとも、RU30によって形成されるセル内の無線端末(UE)に対してスライスを設定する際に、又は所定期間Tごとのタイミングに実行される。所定期間Tは、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当てを行う、上述の時間間隔に相当する。本実施形態では、RANコントローラ40は、上りリンク及び下りリンクのそれぞれについて、図5の割当処理を実行する。
【0045】
以下では、CU10、DU20及びRU30の配置として、図6に示される配置例を想定して、割当処理の例を説明する。図6の配置例では、RUがアンテナサイトに配置され、スライス1及び2に対応するDU#1が地方収容局に配置され、スライス1及び2に対応するCU#1がデータセンタに配置されている。また、スライス3に対応するDU#2及びCU#2が地方収容局に配置されている。なお、スライス1~3に対して、サービスレベルアグリーメント(SLA)として、SLA#1、SLA#2及びSLA#3がそれぞれ定められている。
【0046】
まずS51で、情報取得部41は、RU30によって形成されるセル内のUEによる無線通信のデータ量(通信データ量)及び通信品質を取得する。通信データ量は、例えば現時点から所定期間Tにおける、上りリンク又は下りリンクで送信予定のデータ量に相当する。また、通信品質は、各UEが行う無線通信における、現時点の(瞬時的な)無線通信品質に相当し、例えば、信号対雑音比(S/N)によって表される。
【0047】
情報取得部41は、セル内の各UEから送信される上りリンクのデータ量を、各UEからの通知によって取得する。各UEは、使用するスライスに対応するスケジューラ21に対して、上りリンクのデータ量を通知する。このため、情報取得部41は、各UEの上りリンクのデータ量の通知を、スケジューラ21を介して取得しうる。また、下りリンクのデータ量については基地局側(スケジューラ21)が把握している。このため、情報取得部41は、スケジューラ21からの通知によって、各UEの下りリンクのデータ量を取得しうる。
【0048】
また、情報取得部41は、セル内のUEごとの上りリンクの通信品質として、RU30による通信品質の測定結果を取得し、セル内のUEごとの下りリンクの通信品質として、各UEによる通信品質の測定結果を取得する。上りリンクの通信品質の測定結果は、RU30から取得されうる。下りリンクの通信品質の測定結果は、各UEから、使用するスライスに対応するスケジューラ21へ報告されることで、スケジューラ21を介して取得されうる。
【0049】
情報取得部41によって取得された、各UEの通信データ量及び通信品質は、UE情報として情報記憶部44に格納される。図7(A)は、各UEの通信データ量及び通信品質を含む、DU(スケジューラ)ごとのUE情報の例を示している。なお、上述のように、DU#1は、スライス1(SLA#1)及びスライス2(SLA#2)用に使用され、DU#2は、スライス3(SLA#3)用に使用されている。図7(A)に示されるように、UE情報において、各UEは、使用するスライスのSLAと、情報取得部41によって取得された通信データ量及び通信品質(S/N)と対応付けられている。
【0050】
次にS52で、リソース制御部42は、S51で取得された、セル内の各UEの通信データ量及び通信品質に基づいて、所定期間Tにおいて各スケジューラ21(各DU)に必要な無線リソースの量を特定する。これにより、スケジューラ21ごとに、所定期間Tにおいて必要になることが想定される無線リソースの量に応じて、無線リソースが不足する又は余り過ぎる状況が生じないように、適切な量の無線リソースを割り当てられるようにする。所定期間Tは、RU30によって形成されるセル内のUEによる無線通信のデータ量及び無線品質の変動量が所定量以下となる期間として定められる。これにより、所定期間Tにおいて各スケジューラ21(各DU)に必要となることが想定される無線リソースの量をより精度良く特定できる。また、そのような変動量が所定量以下となる範囲内で所定期間Tをできるだけ長くすることで、各スケジューラ21に対する無線リソースの割り当ての精度を維持しながら、頻繁に割り当ての更新を行うのを避けることが可能になる。
【0051】
具体的には、リソース制御部42は、セル内の各UEの通信データ量及び通信品質に基づいて、UEごとに、所定期間Tにおいて必要な無線リソースの量を求める。例えば、通信データ量が多いほど、UEごとの必要無線リソースの量は多くなり、通信データ量が少ないほど、UEごとの必要無線リソースの量は少なくなる。また、通信品質(S/N)が低いほど、UEごとの必要無線リソースの量は多くなり、通信品質(S/N)が高いほど、UEごとの必要無線リソースの量は少なくなる。
【0052】
更に、リソース制御部42は、スケジューラ21ごとに、対応するスライスを使用する1つ以上のUEに必要な無線リソースの合計量を、所定期間Tにおいて当該スケジューラに必要な無線リソースの量として求める。図7(A)の例では、DU#1についての所定期間Tにおける必要無線リソースの量は、物理リソースブロック(PRB)を単位として、UEごとの必要無線リソースの合計量により1300PRBと求められる。同様に、DU#2についての所定期間Tにおける必要無線リソースの量は、1100PRBと求められる。なお、T=100TTIである場合、1TTIあたりの必要無線リソースの量は、DU#1については13PRB、DU#2については11PRBと求められる。
【0053】
次にS53で、リソース制御部42は、複数のスケジューラ21(複数のDU)のそれぞれに対して割り当てるマージンであって、無線リソースの不足が生じた場合にスケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンを決定する。このマージンの割り当てにより、各スケジューラ21がより適切に必要な無線リソースを確保できるようにする。S53では、所定期間Tにおける割り当て可能な無線リソースの総量から、S52で特定された、各スケジューラ21の必要無線リソースの量を差し引いた量の、残りの無線リソースが、所定の方法で、複数のスケジューラに対してマージンとして配分される。なお、マージンのより具体的な決定方法の例については、第2及び第3実施形態において説明する。
【0054】
最後にS54で、リソース制御部42は、複数のスケジューラ21のそれぞれに対して、S52で特定された量の無線リソースを、S53で決定された、スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンとともに割り当てる。その後、割当通知部43が、S54における無線リソース及びマージンの割り当ての結果に従って、各スケジューラ21に対して、無線リソース及びマージンの割り当てを示す通知を送信する。以上により、図5の手順による割当処理が終了する。
【0055】
図8(A)は、各DU(各スケジューラ21)に対する無線リソース及びマージンの割り当ての例を示す図である。なお、図8(A)では、1TTIにおける割り当て可能な無線リソースの総量を100PRBとした場合の、1TTIにおける無線リソース及びマージンの割り当ての例を示している。この例では、DU#1に対して、無線リソースとして13PRB、マージンとして10PRBが割り当てられている。また、DU#2に対して、無線リソースとして11PRB、マージンとして66PRBが割り当てられている。なお、本例では、割り当て可能な無線リソースをTTIごとに周波数方向において分割して各DUに割り当てているが、無線リソースの分割は時間方向において行われてもよい。周波数方向における分割は、遅延の観点で有利である一方、時間方向における分割は、スケジューラの複雑度が低くなる点で有利である。
【0056】
リソース制御部42によって複数のスケジューラ21のそれぞれに割り当てられた無線リソースは、各スケジューラによって、対応するスライスを使用するUEに対するスケジューリングに使用される。また、複数のスケジューラ21のそれぞれによるスケジューリングは、割り当てられた無線リソースに、割り当てられたマージンを加えた範囲内の無線リソースを用いて行われる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の基地局システムにおいて、それぞれ1つ以上のスライスに対応する複数のスケジューラ21は、1つのRU30により形成される同一のセル内で、対応するスライスを使用するUEに対して無線リソースのスケジューリングを行う。RANコントローラ40は、複数のスケジューラ21のそれぞれについて、セル内のUEによる無線通信のデータ量及び通信品質に基づいて、所定期間Tにおいて各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定する。更に、RANコントローラ40は、複数のスケジューラ21のそれぞれに対して、特定された量の無線リソースと、スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンとを割り当てる。
【0058】
本実施形態によれば、RANコントローラ40は、スケジューラ(DU)ごとに、所定期間Tにおいて各スケジューラに必要な無線リソースの量を特定し、特定した量の無線リソースを割り当てる。これにより、複数のスケジューラ21に対して、所定期間T内の無線リソースのスケジューリングに適した量の無線リソースを割り当てることが可能になる。その結果、いずれかのスケジューラにおいて所定期間T内に無線リソースが不足する又は余り過ぎる状況が生じることを回避できる。また、RANコントローラ40は、複数のスケジューラ21に対して、無線リソースの割り当てとともに、スケジューリングに使用可能な無線リソースのマージンの割り当てを行う。これにより、各スケジューラがより適切に無線リソースを確保できるようにすることが可能になり、無線リソースを確保できないことに起因してサービス自体をUEに提供できない状況が生じることを回避できる。
【0059】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態で説明した、所定期間Tにおける残りの無線リソースを、各スケジューラ(各DU)に対してマージンとして配分する処理の具体例について説明する。以下では、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、リソース制御部42は、RU30により形成されるセル内のUEがそれぞれ使用するスライスと、スライスごとに予め定められたマージン情報とに基づいて、残りの無線リソースを複数のスケジューラ21に対してマージンとして配分する。ここで、残りの無線リソースとは、所定期間Tにおける割り当て可能な無線リソースの総量から、S52(図5)で特定された、各スケジューラ21の必要無線リソースの量を差し引いた量の無線リソースに相当する。即ち、残りの無線リソースは、S52で特定された量の必要無線リソースの割り当て後の余剰の無線リソースに相当する。
【0061】
より具体的には、リソース制御部42は、複数のスケジューラ21のそれぞれについての必要マージンを求め、求めた必要マージンに応じて、残りの無線リソースの配分を行う。スケジューラ(DU)ごとの必要マージンは、セル内において対応するスライスを使用する1つ以上のUEについての必要マージンの総和によって求めることができる。
【0062】
UEごとの必要マージンは、以下のように求められる。例えば、マージン情報は、各スライスをUEが使用する際に必要とするマージンそのものを示す情報として、予め定められ、情報記憶部44に格納されていてもよい。この場合、リソース制御部42は、情報記憶部44に格納されたマージン情報を参照して、セル内の各UEが使用するスライスに対応する必要マージンを、当該UEの必要マージンとして取得する。
【0063】
また、マージン情報は、対応するスライスをUEが使用するためのUEごとの必要マージンの算出に用いられる係数値であって、所定期間TにおけるUEごとの必要無線リソースの量に対して乗算される係数値を示す情報であってもよい。この場合、リソース制御部42は、情報記憶部44に格納されたマージン情報を参照して、セル内の各UEが使用するスライスに対応する係数値を取得し、S52で求めた、当該UEの必要無線リソースの量に対して当該係数値を乗算する。これにより、各UEの必要無線リソースの量から当該UEの必要マージンが求められる。
【0064】
図7(B)には、マージン情報の例として、スライス(SLA)に対応付けられた、このような係数値(乗算値)の例が示されている。図7(A)に例示されるUE情報には、図7(B)に例示される係数値を用いて必要無線リソースの量から求められた各UEの必要マージンが含められている。例えば、スライス3(SLA#3)を使用するUE#5の必要無線リソース(700PRB)に対して、SLA#3に対応する係数0.5が乗算されて、必要マージン(350PRB)が求められている。通信データ量及び必要無線リソースが0であるUEについては、上述の係数値を用いて求められる必要マージンは0になる。ただし、図7(A)の例におけるUE#6のように、必要無線リソースが0であるUEに対して、必要マージンが0にならないように、通信品質(S/N)に応じた必要マージンを与えることもできる。
【0065】
UEの必要マージンは、上述の方法に代えて又は上述の方法と組み合わせて、以下の方法で求められてもよい。例えば、UEの必要マージンは、当該UEが使用するスライスに対して定められた優先度に基づいて求められてもよい。例えば、ミッションクリティカルのサービスのように優先度が高いサービスを提供するスライスに対しては、高い優先度が設定され、ベストエフォートのサービスのように優先度が低いサービスを提供するスライスに対しては、低い優先度が設定される。このような優先度に応じて、優先度が高いスライスをUEが使用する場合には、当該UEの必要マージンを大きくし、優先度が低いスライスをUEが使用する場合には、当該UEの必要マージンを小さくしてもよい。
【0066】
また、UEの必要マージンは、当該UEが使用するスライスに対して定められた許容遅延に基づいて求められてもよい。例えば、このような許容遅延に応じて、ダウンロードサービスのように許容遅延の大きいサービスを提供するスライスをUEが使用する場合、当該UEの必要マージンを小さくしてもよい。一方、オンライン対戦ゲームのように許容遅延の小さいサービスを提供するスライスをUEが使用する場合、当該UEの必要マージンを大きくしてもよい。
【0067】
このようにして、スライスが提供するサービスに応じてUEの必要マージンを変化させることで、無線リソースの不足が生じた場合にサービス品質の低下による影響を小さくすることが可能になる。
【0068】
また、UEの必要マージンは、UEに対してスケジューリングを行うスケジューラ21を提供している事業者に対して定められた優先度に基づいて求められてもよい。図9には、複数の事業者(事業者A及びB)によってRUが共有され、当該RUに対して、それぞれ異なる事業者が提供する複数のDUが接続された、基地局システムの構成例が示されている。このような構成が採用された場合、事業者ごとのDU(スケジューラ)に対して、優先度を予め定めてもよい。この場合、事業者ごとに定められた優先度に応じて、優先度が高い事業者が提供するDU(スケジューラ)によるスケジューリングの対象となるUEについて、必要マージンを大きくしてもよい。また、優先度が低い事業者が提供するDU(スケジューラ)によるスケジューリングの対象となるUEについて、必要マージンを小さくしてもよい。
【0069】
リソース制御部42は、上述のようにスケジューラ(DU)ごとの必要マージンを求めた後、複数のスケジューラ21の必要マージンの比率に基づいて、残りの無線リソースの配分を行う。図7(A)の例によれば、DU#1に対して、DU#1の必要マージン(26+20+100+17=163[PRB])とDU#2の必要マージン(350+500+200=1050[PRB])の比率に基づいて、残りの無線リソースの配分が行われる。例えば、図8(A)の例のように、1TTIにおける割り当て可能な無線リソースの総量を100PRBとし、DU#1に対して13PRBの無線リソース、DU#2に対して11PRBの無線リソースを割り当てた場合、残りの無線リソースは76PRBである。この場合、残りの無線リソース(76PRB)を上記の比率に基づいて配分すると、図8(A)に示されるように、DU#1に対して10PRBのマージン、DU#2に対して66PRBのマージンが決定される。
【0070】
本実施形態によれば、複数のスケジューラ21に対する無線リソースのマージンとして、無線リソースを確保できないことに起因してサービス自体をUEに提供できない状況が生じないように、適切な量のマージンを決定することが可能になる。
【0071】
[第3実施形態]
第3実施形態では、所定期間Tにおける残りの無線リソースを各スケジューラにマージンとして割り当てる(配分する)際に、スケジューラ間で重複するマージンの割り当てを行う例について説明する。以下では、第1及び第2実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、リソース制御部42は、S53(図5)において、複数のスケジューラ21に割り当てられるマージンの総量が、残りの無線リソースの量を上回るように、当該残りの無線リソースの一部を、スケジューラ間で重複して割り当てる重複マージンとして決定する。この場合、各スケジューラ21(各DU)によるマージンの使用状況によっては、同じ無線リソースにおいて複数のスケジューラによる使用が競合し、セル内の信号干渉又は無線リソースの割り当ての失敗が生じる可能性がある。しかし、あるスケジューラでは無線リソースが不足する一方で、他のスケジューラでは無線リソースが余るといった状況(即ち、マージンの分割損)が生じる可能性を低くすることができる。
【0073】
<重複マージンの決定>
本実施形態では、情報取得部41は、重複マージンに対応する無線リソースについてスケジューラ間で重複してスケジューリングが行われた過去の実績を示す実績情報を、情報記憶部44に蓄積する。リソース制御部42は、情報記憶部44に蓄積されている実績情報に応じて、重複マージンを決定する。図8(B)には、DU#1のスケジューラとDU#2のスケジューラとの間で、残りの無線リソースのうちの一部が重複マージンとして決定された例が示されている。DU#1のスケジューラとDU#2のスケジューラのいずれも、割り当てられた無線リソースだけでは不足が生じた場合に、この重複マージンの無線リソースをスケジューリングに使用することが可能である。
【0074】
このような重複マージンの決定を実現するために、情報取得部41は、複数のスケジューラ21のそれぞれからスケジューリングの結果を取得し、当該複数のスケジューラによるスケジューリングの結果に基づいて、実績情報を情報記憶部44に蓄積する。
【0075】
リソース制御部42は、情報記憶部44により蓄積されている実績情報が示す、過去にスケジューラ間で重複してスケジューリングが行われた無線リソースの量に応じて、以後に割り当てる重複マージンの量を制御する。
【0076】
また、リソース制御部42は、複数のスケジューラ21のうちのスケジューラの組み合わせごとに、スケジューラ間の重複マージンを決定してもよい。例えば、複数のスケジューラが、第1、第2及び第3スケジューラ(DU#1、DU#2及びDU#3)を含む場合、リソース制御部42は、第1及び第2スケジューラ(DU#1及びDU#2)の組み合わせに対する重複マージンの量が、第1及び第3スケジューラ(DU#1及びDU#3)の組み合わせに対する重複マージンの量より多くなるように、重複マージンを決定してもよい。
【0077】
このような重複マージンの決定では、RU30により形成されるセル内のUEが使用する、各スケジューラに対応するスライスに対して定められた優先度に応じて、スケジューラの組み合わせごとの重複マージンの量が制御される。
【0078】
<重複マージンの使用ルールの設定>
本実施形態では、RANコントローラ40のルール設定部45は、上述のように決定された重複マージンについて、リソース制御部42によって割り当てられた重複マージンの使用のルールを、RU30に対して設定する。ルール設定部45は、重複マージンとして割り当てられた無線リソースがスケジューラ間で同時に使用されないようにするためのルールを設定する。これにより、同じ無線リソースにおいて複数のスケジューラによる使用が競合し、セル内の信号干渉又は無線リソースの割り当ての失敗が生じる可能性を低くする。
【0079】
図8(B)には、このような重複マージンの使用ルールの例が示されている。本例では、DU#1及びDU#2のスケジューラが、それぞれに割り当てられた、重複マージン以外のマージンの無線リソースを先に使用し、当該マージンの無線リソースを使い切った場合に重複マージンを使用するように、使用ルールが定められている。
【0080】
また、ルール設定部45は、セル内のUEが使用する、各スケジューラに対応するスライスに対して定められた優先度に応じて、使用ルールを設定してもよい。具体的には、ルール設定部45は、優先度が高いスライスに対応するスケジューラによる、重複マージンに対応する無線リソースの割り当てが、優先度が低いスライスに対応するスケジューラによる、重複マージンに対応する無線リソースの割り当てより優先して行われるように、使用ルールを設定してもよい。
【0081】
この場合、ルール設定部45は、複数のスケジューラ21のそれぞれに対応するスライスに対して定められた優先度を、RU30に対して通知する。RU30は、重複マージンに対応する無線リソースについて2つ以上のスケジューラ間で重複してスケジューリングが行われた場合、当該2つ以上のスケジューラのうちでいずれのスケジューラによる無線リソースの割り当てを優先するかを、通知された優先度に応じて決定する。
【0082】
以上説明したように、スケジューラ間で重複するマージンを複数のスケジューラに割り当てることにより、あるスケジューラでは無線リソースが不足する一方で、他のスケジューラでは無線リソースが余るといった状況が生じる可能性を低くすることができる。
【0083】
[その他の実施形態]
上述の第1乃至第3実施形態は種々の変更が可能である。例えば、図5のS51~S54の処理のうちS51及びS52の処理を各DU20で行うように、基地局システムを構成することも可能である。具体的には、各DU20が、各UEの通信データ量及び通信品質に基づいて、当該DUのスケジューラ21に必要な無線リソースの量を特定し、特定結果をRANコントローラ40へ通知してもよい。この場合、RANコントローラ40は、各DU20から通知を受けて、上述の実施形態と同様にS53及びS54の処理を行いうる。
【0084】
また、S51及びS52の処理に加えて、S53の処理の少なくとも一部を各DU20で行うように、基地局システムを構成することも可能である。具体的には、各DU20が、UEごとの必要マージンを取得し、取得結果をRANコントローラ40へ通知してもよい。この場合、RANコントローラ40は、各DU20からの通知を受けて、スケジューラ(DU)ごとの必要マージンを求め、最終的に各DUに割り当てるマージンを決定するともに、上述の実施形態と同様にS54の処理を行いうる。また、各DU20が、UEごとの必要マージンだけでなくDUごとの必要マージンも求め、それをRANコントローラ40へ通知してもよい。この場合、RANコントローラ40は、各DU20からの通知を受けて、最終的に各DUに割り当てるマージンを決定するともに、上述の実施形態と同様にS54の処理を行いうる。
【0085】
上述の実施形態に係る無線通信装置は、コンピュータを無線通信装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0086】
10:CU、20:DU、21:スケジューラ、30:RU、40:RANコントローラ、50:5GC UPF、60:5GC CPF、70:エッジアプリケーション、101:CPU、102:ROM、103:RAM、104:外部記憶デバイス、105:通信デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9