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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 25/00 20060101AFI20230719BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20230719BHJP
   B23Q 1/76 20060101ALI20230719BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20230719BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230719BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20230719BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230719BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
B23B25/00 Z
B23B1/00 G
B23Q1/76 R
B23Q11/10 A
B23Q11/00 P
B25J9/06 B
B23Q17/00 A
B23Q7/04 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019144867
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024047
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森村 章一
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-98479(JP,A)
【文献】特開2017-202547(JP,A)
【文献】特開2017-213658(JP,A)
【文献】特開2016-55370(JP,A)
【文献】特開昭61-214943(JP,A)
【文献】実開昭61-41478(JP,U)
【文献】特開2012-16791(JP,A)
【文献】特開2018-20402(JP,A)
【文献】実開昭59-66589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00,25/00,
B23Q 1/76,7/04,11/00,11/10,
17/00,17/09,
B25J 9/06,15/00-17/02,
B23P 23/00-23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の工具を保持する刃物台であり、第一軸に平行な方向、及び前記第一軸に直交する第二軸に平行な方向に直進移動する刃物台と、
前記第二軸に平行な軸回りに回転可能にワークを保持するワーク主軸装置と、
加工室内に設けられ、複数の関節と、前記関節を連結する複数のリンクとを有する機内ロボットと、
を備え、前記機内ロボットの前記複数の関節は、
前記第二軸に平行な軸回りに回転する基礎関節と、
前記基礎関節の回転軸に直交する単一の直交軸と平行な軸回りに回転し、前記基礎関節よりも先端側に配置された複数の平行関節と、
を備え、前記基礎関節の回転軸は、前記ワーク主軸装置の回転軸とずれており、
前記機内ロボットは、前記基礎関節を回転させることで、前記複数の平行関節の回転軸が前記第一軸及び前記第二軸に直交する第三軸と平行になる第一工具追従姿勢と、前記第一工具追従姿勢に対して前記基礎関節を180度回転した第二工具追従姿勢とに変化可能で、前記複数のリンクのうちの先端のリンク以外のリンクは、前記機内ロボットが前記第一工具追従姿勢と前記第二工具追従姿勢のいずれの場合にも、前記刃物台及び前記刃物台に保持される前記工具と干渉しない位置に取り付けられ
前記先端のリンクの先端は前記直交軸と平行な方向に分岐されてそれぞれに第一エンドエフェクタ及び第二エンドエフェクタが着脱自在に取り付けられ、
前記第一工具追従姿勢及び前記第二工具追従姿勢で前記第一エンドエフェクタと前記第二エンドエフェクタを使い分ける
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記先端のリンクとそれに隣接するリンクの接合部分において、前記先端のリンクおよびそれに隣接するリンクの一方のリンクの接合部が前記直交軸と平行な軸方向かつ他方のリンク側に向かって突出し、これにより、当該隣接する2つのリンクを前記直交軸と平行な軸方向に重ねたときに隙間が生じ、
前記第エンドエフェクタと前記第エンドエフェクタの少なくとも1つは、前記隣接する2つのリンクを重ねたときの前記隙間を通過し得るような高さに設定される
ことを特徴とする請求項に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第エンドエフェクタと前記第エンドエフェクタの少なくとも1つは、ハンド、ローラ、流体ノズルのいずれかである
ことを特徴とする請求項に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第一エンドエフェクタ及び前記第二エンドエフェクタは、互いに異なる機能を有し、
前記第一工具追従姿勢及び前記第二工具追従姿勢で前記第一エンドエフェクタと前記第二エンドエフェクタとがそれぞれ有する前記異なる機能を使い分ける
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第一エンドエフェクタは、前記先端のリンクに、第一の平行関節を介して接続されており、
前記第二エンドエフェクタは、前記先端のリンクに、第二の平行関節を介して接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械に関し、特に機内ロボットを備える工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、さらなる自動化が求められている。その1つの解決策として、工作機械の機内にロボットを用いることが挙げられる。ロボットを用いることで、工具・ワークの着脱、機内・工具・ワーク等の清掃、切粉の巻き付き防止、ワークのビビリ防止等、多種多様な作業を行うことができる。
【0003】
ロボットの構成に関し、特許文献1には、軸方向に移動位置決めされるとともに旋回位置決めされる枢軸の先端に第1アームを直角に設け、第1アーム端に旋回位置決め可能でT字型を形成するように第2アームを設け、第2アームの両端対称位置にグリッパを外端に有するシリンダ体を油圧旋回手段で反動可能に設け、シリンダ体のピストンロッドをグリッパの開閉部材に連結したロボット用ハンドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-66589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械の中にロボットを搭載しようとすると、ロボットをコンパクトに収めることが大きな課題となる。このため、本願出願人は、先に特開2019-98479号公報にて、3軸スカラロボットを根元で回転する構造とし、リンクの位置を刃物台に干渉しない高さに設定することでコンパクトなロボットを実現している。
【0006】
但し、工作機械の中にロボットを搭載して多種多様な作業を実現する場合、エンドエフェクタを使い分ける必要がある。作業内容毎にエンドエフェクタを交換すると時間がかかってしまうので、加工以外の無駄な時間が生じてしまう。一般的なロボットでは、複数の機能を持った大きなエンドエフェクタを用いるが、工作機械の中に搭載されるロボットではこのような大きなエンドエフェクタを用いることができない場合が多い。特開2019-98479号公報においても、エンドエフェクタの取り得る姿勢には制約があり、より容易にエンドエフェクタを使い分け得る構成が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、容易にエンドエフェクタの使い分けが可能なロボットを備える工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の工作機械は、1以上の工具を保持する刃物台であり、第一軸に平行な方向、及び前記第一軸に直交する第二軸に平行な方向に直進移動する刃物台と、前記第二軸に平行な軸回りに回転可能にワークを保持するワーク主軸装置と、加工室内に設けられ、複数の関節と、前記関節を連結する複数のリンクとを有する機内ロボットと、を備え、前記機内ロボットの前記複数の関節は、前記第二軸に平行な軸回りに回転する基礎関節と、前記基礎関節の回転軸に直交する単一の直交軸と平行な軸回りに回転し、前記基礎関節よりも先端側に配置された複数の平行関節と、を備え、前記基礎関節の回転軸は、前記ワーク主軸装置の回転軸とずれており、前記機内ロボットは、前記基礎関節を回転させることで、前記複数の平行関節の回転軸が前記第一軸及び前記第二軸に直交する第三軸と平行になる第一工具追従姿勢と、前記第一工具追従姿勢に対して前記基礎関節を180度回転した第二工具追従姿勢とに変化可能で、前記複数のリンクのうちの先端のリンク以外のリンクは、前記機内ロボットが前記第一工具追従姿勢と前記第二工具追従姿勢のいずれの場合にも、前記刃物台及び前記刃物台に保持される前記工具と干渉しない位置に取り付けられ、前記先端のリンクの先端は前記直交軸と平行な方向に分岐されてそれぞれに第一エンドエフェクタ及び第二エンドエフェクタが着脱自在に取り付けられ、前記第一工具追従姿勢及び前記第二工具追従姿勢で前記第一エンドエフェクタと前記第二エンドエフェクタを使い分けることを特徴とする。
【0009】
本発明において、機内ロボットの基礎関節を第二軸、すなわちワークを回転可能に保持するワーク主軸装置の回転軸に平行な軸の回りに回転させることで機内ロボットを第一工具追従姿勢と第二工具追従姿勢との間で変化するので、第1工具追従姿勢において第1エンドエフェクタを使用し、第二工具追従姿勢で第2エンドエフェクタを使用することによって、作業内容毎に交換することなくエンドエフェクタが使い分けられる。また、機内ロボットの複数のリンクのうちの先端のリンク以外のリンクは、機内ロボットが第一工具追従姿勢と第二工具追従姿勢のいずれの場合にも、刃物台及び刃物台に保持される工具と干渉しない位置に取り付けられることで、エンドエフェクタの工具に対する追従動作による加工の補助・監視作業が担保される。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、前記先端のリンクとそれに隣接するリンクの接合部分において、前記先端のリンクおよびそれに隣接するリンクの一方のリンクの接合部が前記直交軸と平行な軸方向かつ他方のリンク側に向かって突出し、これにより、当該隣接する2つのリンクを前記直交軸と平行な軸方向に重ねたときに隙間が生じ、前記第エンドエフェクタと前記第エンドエフェクタの少なくとも1つは、前記隣接する2つのリンクを重ねたときの前記隙間を通過し得るような高さに設定される。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記第エンドエフェクタと前記第エンドエフェクタの少なくとも1つは、ハンド、ローラ、流体ノズルのいずれかである。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、前記第一エンドエフェクタ及び前記第二エンドエフェクタは、互いに異なる機能を有し、前記第一工具追従姿勢及び前記第二工具追従姿勢で前記第一エンドエフェクタと前記第二エンドエフェクタとがそれぞれ有する前記異なる機能を使い分ける。
本発明のさらに他の実施形態では、前記第一エンドエフェクタは、前記先端のリンクに、第一の平行関節を介して接続されており、前記第二エンドエフェクタは、前記先端のリンクに、第二の平行関節を介して接続されている
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンドエフェクタの使い分けが可能となり、エンドエフェクタの交換頻度を下げて工作機械の非加工時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の工作機械の構成図である。
図2】実施形態の機内ロボットの斜視図である。
図3】実施形態の機内ロボットの第一工具追従姿勢における斜視図である。
図4】実施形態の機内ロボットの第二工具追従姿勢における斜視図である。
図5】実施形態の機内ロボットの第一工具追従姿勢におけるリンクと刃物台の位置関係を示す説明図である。
図6】実施形態の機内ロボットの第二工具追従姿勢におけるリンクと刃物台の位置関係を示す説明図である。
図7】他の実施形態の機内ロボットの斜視図である。
図8】他の実施形態の機内ロボットの第一工具追従姿勢における斜視図である。
図9】他の実施形態の機内ロボットの第二工具追従姿勢における斜視図である。
図10】変形例の機内ロボットの斜視図である。
図11】他の変形例の機内ロボットの第一工具追従姿勢における斜視図である。
図12】他の変形例の機内ロボットの第二工具追従姿勢における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、工作機械10の構成を示す。以下の説明では、ワーク主軸32のワーク回転軸Rwと平行な方向をZ軸、刃物台18のZ軸と直交する移動方向と平行な方向をX軸、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸と呼ぶ。また、Z軸においては、ワーク主軸32から心押台16に近づく向きをプラス方向、X軸においては、ワーク主軸32から刃物台18に近づく向きをプラス方向、Y軸においては、ワーク主軸32から上に向かう向きをプラス方向とする。また、以下の説明において、エンドエフェクタ40が「アクセスする」とは、機内ロボット20に取り付けられたエンドエフェクタ40が、当該エンドエフェクタ40の目的を達成できる位置まで対象物に接近することを意味する。
【0020】
工作機械10は、自転するワーク110に刃物台18で保持した工具100を当てることで、ワーク110を加工する旋盤である。より具体的には、工作機械10は、NC(Numerical Control)制御されるとともに、複数の工具100を保持するタレット19を備えたターニングセンタである。工作機械10の加工室12の周囲は、カバー(一部図示せず)で覆われている。加工室12の前面には、大きな開口部が形成されており、この開口部は、ドア(図示せず)により開閉される。工作機械10のオペレータは、この開口部を介して、加工室12内の各部にアクセスする。加工中、開口部に設けられたドアは閉鎖される。安全性や環境性等を担保するためである。
【0021】
工作機械10は、ワーク110の一端を自転可能に保持するワーク主軸装置と、工具100を保持する刃物台18と、ワーク110の他端を支える心押台16とを備える。ワーク主軸装置は、駆動用モータ等を内蔵した主軸台と、当該主軸台に取り付けられたワーク主軸32を備えている。ワーク主軸32は、ワーク110を着脱自在に保持するチャック33やコレットを備えており、保持するワーク110を適宜、交換できる。また、ワーク主軸32およびチャック33は、水平方向(図1におけるZ軸方向)に延びるワーク回転軸Rwを中心として自転する。
【0022】
心押台16は、Z軸方向に、ワーク主軸32と対向して配置され、ワーク主軸32で保持されたワーク110の他端を支える。心押台16は、その中心軸が、ワーク回転軸Rwと一致するような位置に設置される。心押台16には、先端が円錐形に尖ったセンタが取り付けられており、加工中は、当該センタの先端を、ワーク110の中心点に当接させる。心押台16は、ワーク110に対して接離できるように、Z軸方向に移動可能である。
【0023】
刃物台18は、工具100、例えば、バイトと呼ばれる工具を保持する。この刃物台18は、Z軸、すなわち、ワーク110の軸と平行な方向に移動可能である。また、刃物台18は、X軸と平行な方向、すなわち、ワーク110の径方向に延びるガイドレールに載置されており、X軸と平行な方向にも進退できる。
【0024】
なお、図1に示すように、X軸は、加工室12の開口部からみて、奥側に進むにつれ上方に進むように、水平方向に対して傾斜している。刃物台18の先端には、複数の工具100を保持可能なタレット19が設けられる。タレット19は、Z軸に平行な軸を中心として回転可能である。タレット19が回転することで、ワーク110の加工に用いられる工具100が適宜、変更される。刃物台18をZ軸と平行な方向に移動することで、タレット19に保持された工具100は、Z軸と平行な方向に移動する。また、刃物台18をX軸と平行な方向に移動させることで、タレット19に保持された工具100は、X軸に平行な方向に移動する。刃物台18をX軸に平行な方向に移動させることで、工具100によるワーク110の切り込み量等が変更される。つまり、刃物台18に取り付けられた工具100は、XZ平面と平行な平面内で移動可能である。以下では、この工具100の移動平面を、「工具移動平面」と呼ぶ。
【0025】
加工室12内には、機内ロボット20が搭載される。図1の例では、機内ロボット20の根元は、加工室12の壁面のうち、ワーク主軸32が突出する壁面に取り付けられる。また、機内ロボット20の根元は、ワーク主軸32より上方、かつ、ドア寄りに位置している。機内ロボット20は、加工の補助や各種センシング、補助的作業等に用いられる。
【0026】
制御装置36は、工作機械10のオペレータからの指示に応じて、工作機械10の各部の駆動を制御する。この制御装置36は、例えば、各種演算を行うCPUと、各種制御プログラムや制御パラメータを記憶するメモリとを含んで構成される。また、制御装置36は、通信機能を有しており、他の装置との間で各種データ、例えば、NCプログラムデータ等を授受できる。制御装置36は、例えば、工具100やワーク110の位置を随時演算する数値制御装置を含んでもよい。また、制御装置36は、単一の装置でもよいし、複数の演算装置を組み合わせて構成されてもよい。
【0027】
図2は、機内ロボット20の構成を示す。機内ロボット20は、複数のリンクと、各リンクを連結する複数の関節J1~J5を備える多関節ロボットである。各関節J1~J5には、モータ等のアクチュエータが取り付けられ、アクチュエータの駆動は、制御装置36からの制御信号により制御される。
【0028】
各関節J1~J5は、図中矢印で示す方向に回転可能で、最も根元側に位置する関節J1を基礎関節、関節J1よりも先端側に隣接して位置する関節J2~J5を平行関節と称する。基礎関節としての関節J1は、ワーク主軸32と平行なZ軸回りの回転軸を有している。但し、関節J1の回転軸は、ワーク主軸32の回転軸よりも上方、かつ手前側(ドア寄り)にずれている。平行関節としての関節J2~J5は、互いに平行な軸回りに回転する回転関節であり、関節J1の回転軸と直交する回転軸を有する。
【0029】
また、機内ロボット20の先端には、末端のリンク及び関節J4を介してツールチェンジャ22が取り付けられるとともに、末端のリンク及び関節J5を介してツールチェンジャ24が取り付けられる。ツールチェンジャ22,24には、それぞれエンドエフェクタが着脱自在に取り付けられる。従って、機内ロボット20の先端には、2つのエンドエフェクタが同時に取り付けられ得る。
【0030】
ここで、エンドエフェクタは、対象物にアクセスして何らかの作用を発揮するものである。エンドエフェクタは、機内ロボット20に離脱不能に取り付けられてもよいが、機内ロボット20の汎用性を向上するために、エンドエフェクタは、機内ロボット20に着脱自在に取り付けられることが望ましい。
【0031】
エンドエフェクタは、何らかの作用を発揮するものであれば、特に限定されない。したがって、エンドエフェクタは、例えば、対象物を保持する保持装置であってもよい。保持装置における保持の形式は、一対の部材で対象物を把持するハンド形式でもよいし、対象物を吸引保持する形式でもよいし、磁力等を利用して保持する形式等でもよい。
【0032】
また、エンドエフェクタは、対象物や対象物の周辺環境に関する情報をセンシングするセンサでもよい。センサとしては、例えば、対象物への接触の有無を検知する接触センサや、対象物までの距離を検知する距離センサ、対象物の振動を検知する振動センサ、対象物から付加される圧力を検知する圧力センサ、対象物の温度を検知する温度センサ等とすることができる。これらセンサでの検知結果は、関節の駆動量から算出されるエンドエフェクタの位置情報と関連付けて記憶され、解析される。例えば、エンドエフェクタが、接触センサの場合、制御装置36は、対象物への接触を検知したタイミングと、そのときの位置情報とに基づいて、対象物の位置や形状、動きを解析する。
【0033】
また、エンドエフェクタは、対象物を押圧する押圧機構としてもよい。具体的には、例えば、エンドエフェクタは、ワーク110に押し当てられて、当該ワーク110の振動を抑制するローラ等でもよい。また、エンドエフェクタは、加工を補助するための流体を出力する装置でもよい。具体的には、エンドエフェクタは、切粉を吹き飛ばすためのエアや、工具100またはワーク110を冷却するための冷却用流体(切削油や切削水等)を放出する装置でもよい。また、エンドエフェクタは、ワーク造形のためエネルギまたは材料を放出する装置でもよい。したがって、エンドエフェクタは、例えば、レーザやアークを放出する装置でもよいし、積層造形のために材料を放出する装置でもよい。さらに別の形態として、エンドエフェクタは、対象物を撮影するカメラでもよい。この場合、カメラで得た映像を操作パネル等に表示してもよい。
【0034】
本実施形態では、2つのツールチェンジャ22,24が設けられており、これらのツールチェンジャ22,24に異なる種類のエンドエフェクタを取り付け得る。機内ロボット20の根元部分、すなわち関節J1を回転駆動することで、旋盤の工具の移動平面と機内ロボット20のツールチェンジャ22に取り付けられたエンドエフェクタの移動平面を一致させることができる。このとき、平行関節としての関節J2~J5の回転軸は、Y軸と平行になる。これにより、当該エンドエフェクタが工具100の移動に追従して移動し、切削加工の補助や監視を行うことができる。この姿勢を第一工具追従姿勢と称する。
【0035】
そして、関節J1を180度回転させることで、機内ロボット20のツールチェンジャ22とツールチェンジャ24の位置が上下逆さまになり、これによりツールチェンジャ22に取り付けられたエンドエフェクタとツールチェンジャ24に取り付けられたエンドエフェクタの位置も上下逆さまとなり、旋盤の工具の移動平面と機内ロボット20のツールチェンジャ24に取り付けられたエンドエフェクタの移動平面を一致させることができる。このときも、平行関節としての関節J2~J5の回転軸は、Y軸と平行になる。これにより、当該エンドエフェクタが工具100の移動に追従して移動し、切削加工の補助や監視を行うことができる。この姿勢を第二工具追従姿勢と称する。
【0036】
第一工具追従姿勢から第二工具追従姿勢に変化させ、あるいは第二工具追従姿勢から第一工具追従姿勢に変化させることで、2つのエンドエフェクタの使い分けが可能となる。制御装置36は、各関節J1~J5に設けられたアクチュエータの駆動量から、機内ロボット20の先端、すなわちエンドエフェクタの位置を算出する。
【0037】
図3は、ツールチェンジャ22にエンドエフェクタとしてハンド26aを取り付け、ツールチェンジャ24にエンドエフェクタとしてローラ26bを取り付けた構成を示す。制御装置36は、関節J1~J5のアクチュエータを駆動することで第一工具追従姿勢に変化させ、旋盤の工具の移動平面とハンド26aの移動平面とを一致させ、ハンド26aによりワーク110の把持、把持した温度センサによる切削点の温度検出、把持したカメラによる切削点の撮像等を実行する。
【0038】
他方、図4は、図3の状態から関節J1を180度回転させて、第二工具追従姿勢に変化させ、ハンド26aとローラ26bの位置を上下逆さまとした状態を示す。旋盤の工具の移動平面とローラ26bの移動平面とを一致させ、ローラ26bにより加工中のワーク110を支持してワーク110の芯ぶれ、振動等を低減し得る。
【0039】
このように、機内ロボット20の先端に複数(例えば2個)のツールチェンジャ22,24を設け、複数のエンドエフェクタを取り付け可能な構成とし、関節J1~J5の駆動により複数のエンドエフェクタの使い分けを可能とすることで、エンドエフェクタの交換頻度を下げて工作機械の非加工時間を短縮化できる。
【0040】
ここで、本実施形態の機内ロボット20は、刃物台18より上方にオフセットした位置にロボットアームのリンクが位置しているので、ロボットアームが刃物台18と干渉することはない。
【0041】
図5及び図6は、Z軸方向から見た機内ロボット20と刃物台18との位置関係を示す。
【0042】
図5は、ハンド26aが下方に位置する第一工具追従姿勢の場合であり、図6は、ローラ26bが下方に位置する第二工具追従姿勢の場合である。
【0043】
既述したように、刃物台18は、X軸と平行な方向に進退でき、X軸は、加工室12の開口部からみて、奥側に進むにつれ上方に進むように、水平方向に対して傾斜している。機内ロボット20のリンク(先端のリンク以外のリンクであり、具体的には根元と関節J1を連結するリンク、関節J1と関節J2を連結するリンク、関節J2と関節J3を連結するリンク、関節J3と関節J4,J5を連結するリンク)上の最も刃物台寄りの点を通りX軸に平行な線を図中破線で示す。この破線と刃物台18との位置関係から明らかなように、機内ロボット20のロボットアームのリンクは刃物台18よりも上方にオフセットした位置にあり、機内ロボット20と刃物台18あるいはタレット19、工具100等が干渉することはない。すなわち、工具100でワーク110を加工中であっても、ハンド26a(図5の場合)及びローラ26b(図6の場合)で確実に作業を実行できる。
【0044】
なお、図5におけるローラ26bや図6におけるハンド26aのように、加工中に使用しないエンドエフェクタは機内ロボット20の上方に位置し、使用中のエンドエフェクタよりもさらに刃物台18よりも上方にオフセットした位置にあるから、こちらも刃物台18やタレット19、工具100、ワーク110等に干渉することはない。
【0045】
図3図6では、2つのツールチェンジャ22,24にそれぞれエンドエフェクタとしてハンド26aとローラ26bを取り付ける例を示したが、エンドエフェクタとしてはこれらに限定されるものではなく、一方のエンドエフェクタを流体ノズルとしてもよい。
【0046】
図7は、ツールチェンジャ24を設置せず、直接エンドエフェクタとして流体ノズル26cを取り付けた場合を示す。流体ノズル26cからは、切削水やエアを放出することができ、加工中の切削水の供給やワーク110の清掃等を実行し得る。
【0047】
図8は、ツールチェンジャ22にエンドエフェクタとしてハンド26aを取り付けた構成を示す。制御装置36は、関節J1~J5のアクチュエータを駆動することで第一工具追従姿勢に変化させ、旋盤の工具の移動平面とハンド26aの移動平面とを一致させ、ハンド26aによりワーク110の把持、把持した温度センサによる切削点の温度検出、把持したカメラによる切削点の撮像等を実行する。
【0048】
他方、図9は、図8の状態から関節J1を180度回転させて第二工具追従姿勢に変化させ、ハンド26aと流体ノズル26cの位置を上下逆さまとした状態を示す。旋盤の工具の移動平面と流体ノズル26cの移動平面とを一致させ、流体ノズル26cから切削水やエア(図では切削水等として示す)を供給する。
【0049】
なお、流体ノズル26c等は、エンドエフェクタ自体のサイズを小さくすることが可能であるが、図8図9に示すように、機内ロボット20の2つのリンクの間を通過し得るような高さを有する流体ノズル26cとすることで、エンドエフェクタと機内ロボット20が干渉することを防ぎ、機内ロボット20の可動域を広げることができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、2つのツールチェンジャ22,24にそれぞれ異なる種類のエンドエフェクタを取り付けて使い分けているが、2つのツールチェンジャ22,24に1つのエンドエフェクタを取り付けてもよい。
【0052】
図10は、ツールチェンジャ22,24に1つのエンドエフェクタとしてハンド26aを取り付けた場合を示す。2つのツールチェンジャ22,24に1つのハンド26aを取り付けるので、このハンド26aで重量物を運ぶことができる。すなわち、図3に示すようにツールチェンジャ22にハンド26aを取り付けた場合に運ぶことができない重量物であっても、図10のように2つのツールチェンジャ22,24にハンド26aを取り付けることで、当該重量物を運び得る。
【0053】
また、1つのエンドエフェクタが複数の機能を有していてもよい。
【0054】
図11は、ツールチェンジャ22に取り付けられた1つのエンドエフェクタの一方端にハンド26aが取り付けられ、他方端に流体ノズル26dが取り付けられる場合を示す。図11では、第一工具追従姿勢、すなわちハンド26aが下方に位置して旋盤の工具の移動平面とハンド26aの移動平面とを一致させ、ハンド26aによりワーク110の把持、把持した温度センサによる切削点の温度検出、把持したカメラによる切削点の撮像等を実行する。
【0055】
他方、図12は、図11の状態から関節J1を180度回転させて第二工具追従姿勢に変化させ、ハンド26aと流体ノズル26dの位置を上下逆さまとした状態を示す。流体ノズル26dから切削水やエアを供給する。
【0056】
図11図12の構成では、1つのエンドエフェクタを回転駆動することで複数の機能を使い分けることができるので、コストをさらに低減できる。
【符号の説明】
【0057】
10 工作機械、12 加工室、16 心押台、18 刃物台、19 タレット、20 機内ロボット、22,24 ツールチェンジャ、26a ハンド、26b ローラ、26c,26d 流体ノズル、36 制御装置、100 工具、110 ワーク。
図1
図2
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12