(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】重量部材の吊り上げ移動機構とその吊り上げ移動方法
(51)【国際特許分類】
E01B 31/00 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
E01B31/00
(21)【出願番号】P 2019228971
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390035312
【氏名又は名称】東光産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594107826
【氏名又は名称】東急軌道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】今▲崎▼ 長穂
(72)【発明者】
【氏名】金川 周平
(72)【発明者】
【氏名】赤松 学
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光市
(72)【発明者】
【氏名】杉野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】石川 知幸
(72)【発明者】
【氏名】本田 英司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 隆
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3027912(JP,U)
【文献】特開2014-156727(JP,A)
【文献】特開2010-216167(JP,A)
【文献】国際公開第2012/003526(WO,A1)
【文献】特開2006-009343(JP,A)
【文献】特開2018-165189(JP,A)
【文献】特開平05-118200(JP,A)
【文献】特開平08-324957(JP,A)
【文献】特開2008-163566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、
構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケットと、これらブラケットに連結されたガイドレールとを有する案内機構と、
上部に第1の転動部材を有し前記ガイドレールに係脱自在に装着される支持梁と、この支持梁に吊支される第1の吊り上げ装置と、一端が支持梁に係止される連結部材とを有する複数の可動体ユニットと、
両端に前記第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と前記連結部材の他端がそれぞれ係脱自在に係止されるガータと、このガータに第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる第2の吊り上げ装置とを有する支持体ユニットとを備えて構成されることを特徴とする重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項2】
ガイドレールは、構造躯体の左右両壁上部または構造躯体の天井部左右両側に設けられ、複数の断面エ字状レール片を接続し所望の長さに延長して構成されることを特徴とする請求項
1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項3】
ガイドレールの端部には、支持梁脱落防止用ストッパが設けられ、
支持梁脱落防止用ストッパは、第1の転動部材が外部からガイドレールへ進入するのを許容し、ガイドレール内の第1の転動部材が外方へ脱落するのを阻止するよう構成されることを特徴とする請求項
2に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項4】
第1の吊り上げ装置は、支持梁の下面中央に吊支され、連結部材は、一対のワイヤから構成され、各ワイヤの一端は、支持梁下面中央から等間隔を隔てて係止されることを特徴とする請求項
1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項5】
ガータは、構造躯体の軌間方向幅に応じて長さを調整可能にしたことを特徴とする請求項
1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項6】
支持梁には、ガータの位置を検知する検知装置を設けたことを特徴とする請求項
1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項7】
ガータの両端には、防護パッドを側壁に接離可能に伸縮させるアジャストパッドを設けたことを特徴とする請求項
1、5または6に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項8】
ガータには、水準器が取り付けられることを特徴とする請求項
1、5ないし7のうちいずれか1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項9】
構造躯体は、上下左右が囲まれ軌道空間が制限されたトンネルまたは架構体、上下左右のうち上側が開放された掘込み構造体または架構体、あるいは軌床に組み立てられた仮設の工事用架構体を含むことを特徴とする請求項
1に記載の重量部材の吊り上げ移動機構。
【請求項10】
延長方向
に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる吊り上げ移動方法であって、
構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケットと、これらブラケットに連結されたガイドレールとを有する案内機構と、
上部に第1の転動部材を有し前記ガイドレールに係脱自在に装着される支持梁と、この支持梁に吊支される第1の吊り上げ装置と、一端が支持梁に係止される連結部材とを有する複数の可動体ユニットと、
両端に前記第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と前記連結部材の他端がそれぞれ係脱自在に係止されるガータと、このガータに第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる第2の吊り上げ装置とを有する支持体ユニットとを備えて構成し、
構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って
所定間隔毎にブラケットを設け、これらブラケットにガイドレールを連結する第1のステップと、
複数の支持梁を、各ガイドレール
の上部に
第1の転動部材を係脱自在に装着しそれぞれ移動可能に取り付け
、第1の吊り上げ装置を支持梁に吊支し、連結部材の一端を支持梁に係止して複数の可動体ユニットを構成し、これら可動体ユニットをガイドレールにそれぞれ移動可能に取り付ける第2のステップと、
ガータに、第2の吊り上げ装置を第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着し、左右で向かい合う
支持梁の第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と連結部材の他端をガータの両端に係脱自在に係止して支持体ユニットを構成する第3のステップと、
支持体
ユニットの第2の吊り上げ装置に重量部材を着脱自在に連結し、吊り上げて移動させる第4のステップとを有することを特徴とする重量部材の吊り上げ移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用の構造躯体においてレールや分岐器等の重量部材を作業現場で吊り上げ移動させる重量部材の吊り上げ移動機構とその吊り上げ移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道の軌道交換・更新時には、交換される古い軌框や分岐器(長尺重量部材)を撤去して搬出し、新たな軌框や分岐器を作業現場に運び込んで設置される。従来、軌框や分岐器のような長尺の重量部材を作業現場に搬出入する際には、まず、軌道上に複数の重量部材運搬車を配置するとともに、複数の山越器を設置して重量部材を移動させることが知られている。つまり、軌道上に複数の重量部材運搬車を配置して、この運搬車に長尺の重量部材を積載して重量部材に移動用レールを取り付けた後、作業場所に複数の山越器を設置し、山越器のチェーンブロックに移動用レールを掛止して長尺重量部材を移動させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の重量部材の吊り上げ移動方法では、軌道の周囲に山越器を設置する空間や十分な作業空間が確保されていれば、複数の作業を並行して行うことができる。しかしながら、上下左右が囲まれ軌道空間が制限されたトンネルや、上下左右のうち上側が開放された掘込み構造体のような構造躯体内では、作業空間に制約があり、山越器を設置してしまうと、設置場所近傍での作業がしにくく、一つひとつの作業を経時的に行わなければならず、同時に複数の作業を並行して行うことが難しく、作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、第1には、軌道が敷設された狭隘な構造躯体内でも作業効率の向上と省力化を図ることができる重量部材の吊り上げ移動機構とその吊り上げ移動方法を提供することを目的としている。また、第2には、作業効率の向上を図ることができる重量部材の吊り上げ移動機構に用いられる案内治具とその案内治具を用いた支持梁の装着方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明の請求項1に係る重量部材の吊り上げ移動機構は、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設けられる案内手段と、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付けられる複数の可動体と、両端が向かい合う可動体にそれぞれ吊支され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる支持体とを備えて構成されることを特徴としている。
【0007】
本発明の第1の発明の請求項1に係る重量部材の吊り上げ移動機構では、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設けられる案内手段と、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付けられる複数の可動体と、両端が向かい合う可動体にそれぞれ吊支され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる支持体とを備えて構成されるようにしたことにより、重量部材を支持体に吊り上げた状態で移動させ、案内手段に沿って作業場所から離れた場所で待機させることができ、同時に複数の作業を行うことができる。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業効率が向上する。さらに、現場で、案内手段に取り付ける可動体の数を調整するだけで重量部材の長さに対応させることができる。
【0008】
本発明の第1の発明の請求項2に係る重量部材の吊り上げ移動機構は、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケットと、これらブラケットに連結されたガイドレールとを有する案内機構と、上部に第1の転動部材を有し前記ガイドレールに係脱自在に装着される支持梁と、この支持梁に吊支される第1の吊り上げ装置と、一端が支持梁に係止される連結部材とを有する複数の可動体ユニットと、両端に前記第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と前記連結部材の他端がそれぞれ係脱自在に係止されるガータと、このガータに第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる第2の吊り上げ装置とを有する支持体ユニットとを備えて構成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第1の発明の請求項2に係る重量部材の吊り上げ移動機構では、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケットと、これらブラケットに連結されたガイドレールとを有する案内機構と、上部に第1の転動部材を有し前記ガイドレールに係脱自在に装着される支持梁と、この支持梁に吊支される第1の吊り上げ装置と、一端が支持梁に係止される連結部材とを有する複数の可動体ユニットと、両端に前記第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と前記連結部材の他端がそれぞれ係脱自在に係止されるガータと、このガータに第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる第2の吊り上げ装置とを有する支持体ユニットとを備えて構成されるようにしたことにより、重量部材を支持体ユニットに吊り上げた状態で、案内機構に沿って作業場所から離れた場所で待機させることができ、同時に複数の作業を行うことができる。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業効率が向上する。さらに、現場で、案内機構に取り付ける可動体ユニットの数を調整するだけで重量部材の長さに対応させることができる。
【0010】
また、本発明の第1の発明に係る重量部材の吊り上げ移動機構は、ガイドレールは、構造躯体の左右両壁上部または構造躯体の天井部左右両側に設けられ、複数の断面エ字状レール片を接続し所望の長さに延長して構成されることが好ましい。係る構成とすることにより、ガイドレールを作業内容に応じた長さにすることができる。さらに、ガイドレールの端部には、支持梁脱落防止用ストッパが設けられ、支持梁脱落防止用ストッパは、第1の転動部材が外部からガイドレールへ進入するのを許容し、ガイドレール内の第1の転動部材が外方へ脱落するのを阻止するよう構成されるようにしてもよい。係る構成とすることにより、支持梁が逸走してガイドレールから脱落することがなく、ガイドレールに支持梁を容易に装着することができる。また、第1の吊り上げ装置は、支持梁の下面中央に吊支され、連結部材は、一対のワイヤから構成され、各ワイヤの一端は、支持梁下面中央から等間隔を隔てて係止されるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、支持体ユニットは、支持梁にバランスよく連結される。
【0011】
さらに、ガータは、構造躯体の軌間方向幅に応じて長さを調整可能にするようにしてもよい。係る構成とすることにより、構造躯体の幅が異なってもガータの長さをその構造躯体の幅に対応させることができる。また、支持梁には、ガータの位置を検知する検知装置を設けることが好ましい。係る構成とすることにより、ガータの吊り上げ時、ガータが傾斜しないよう確認しながら吊り上げることができる。さらに、ガータの両端には、防護パッドを側壁に接離可能に伸縮させるアジャストパッドを設けることが好ましい。係る構成とすることにより、たとえ、ガータが軌間方向に揺れてもガータの端部が構造躯体の壁面に当たることがない。また、ガータには、水準器が取り付けられるようにしてもよい。係る構成とすることにより、ガータの水平を確認しながら作業を行うことができる。さらに、構造躯体は、上下左右が囲まれ軌道空間が制限されたトンネルまたは架構体、上下左右のうち上側が開放された掘込み構造体または架構体、あるいは軌床に組み立てられた仮設の工事用架構体を含むようにしてもよい。係る構成とすることにより、狭隘な空間でも作業を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明の第1の発明の請求項12に係る重量部材の吊り上げ移動方法は、延長方向軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる吊り上げ移動方法であって、案内手段を、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設ける第1のステップと、複数の可動体を、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付ける第2のステップと、支持体を、左右で向かい合う可動体に吊支する第3のステップと、支持体により重量部材を着脱自在に連結し、吊り上げて移動させる第4のステップとを有することを特徴としている。
【0015】
本発明の第1の発明の請求項12に係る重量部材の吊り上げ移動方法では、延長方向軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる吊り上げ移動方法であって、案内手段を、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設ける第1のステップと、複数の可動体を、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付ける第2のステップと、支持体を、左右で向かい合う可動体に吊支する第3のステップと、支持体により重量部材を着脱自在に連結し、吊り上げて移動させる第4のステップとを有するようにしたことにより、重量部材を支持体ユニットに吊り上げた状態で、案内機構に沿って作業場所から離れた場所で待機させることができ、同時に複数の作業を行うことができる。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業効率が向上する。さらに、現場で、案内機構に取り付ける可動体ユニットの数を調整するだけで重量部材の長さに対応させることができる。
【0016】
本発明の第2の発明に係る案内治具は、支持梁上部に設けられた転動部材を、ガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成され、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能に構成されるとともに、一端がガイドレール端部に導かれると、前記転動面がガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致するように構成されることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の発明に係る案内治具では、支持梁上部に設けられた転動部材を、ガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成され、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能に構成されるとともに、一端がガイドレール端部に導かれると、前記転動面がガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致するように構成されることにより、案内治具を支持梁と転動部材との間に差し入れて、案内治具を支持梁と一体に吊り上げ、案内治具の一端をガイドレール端部に導くと、案内治具の転動面とガイドレールの転動部材走行面とがほぼ同一レベルに合致する。支持梁をガイドレール側に移動させると、転動部材はガイドレールの転動部材走行面に導かれるので、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【0018】
本発明の第2の発明に係る案内治具は、支持梁上部に設けられた転動部材を、縦壁を有するガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成された転動部を有し、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能な平板材と、転動部の端部上方から外側に突出し、ガイドレールの縦壁を挟み込み可能な位置決め部と、平板材の下面端部から外側に突出して設けられ、ガイドレール下面に当接して上方への変位が規制されるとともに、平板材の転動面をガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致させる規制部とを有して構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の第2の発明に係る案内治具では、支持梁上部に設けられた転動部材を、縦壁を有するガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成された転動部を有し、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能な平板材と、転動部の端部上方から外側に突出し、ガイドレールの縦壁を挟み込み可能な位置決め部と、平板材の下面端部から外側に突出して設けられ、ガイドレール下面に当接して上方への変位が規制されるとともに、平板材の転動面をガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致させる規制部とを有して構成されるようにしたことにより、案内治具を支持梁と転動部材との間に差し入れて、案内治具を支持梁と一体に吊り上げ、案内治具の位置決め部をガイドレールの縦壁に挟み込み、規制部をガイドレール下面に当接させると、案内治具の転動部端部とガイドレールの端部とが正確に突き合わせられ、案内治具の転動部の転動面とガイドレールの転動部材走行面とがほぼ同一レベルに合致する。支持梁をガイドレール側に移動させると、転動部材はガイドレールの転動部材走行面に導かれるので、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【0020】
本発明の第2の発明に係る案内治具を用いた支持梁の装着方法は、支持梁上部に設けられた転動部材と支持梁との間に差し入れられる案内治具を用いて、支持梁の転動部材を、構造躯体上部に延長方向に延設されたガイドレールに案内して支持梁をガイドレールに装着する支持梁の装着方法であって、支持梁と転動部材との間に案内治具を差し入れる第1のステップと、案内治具を支持梁と一体に引き上げ、ガイドレールの端部に案内治具の端部を配置して突き合わせる第2のステップと、支持梁をガイドレール側に移動させ、転動部材をガイドレールの転動部材走行面に導く第3のステップとを有するようにしたことを特徴としている。
【0021】
本発明の第2の発明に係る案内治具を用いた支持梁の装着方法では、支持梁上部に設けられた転動部材と支持梁との間に差し入れられる案内治具を用いて、支持梁の転動部材を、構造躯体上部に延長方向に延設されたガイドレールに案内して支持梁をガイドレールに装着する支持梁の装着方法であって、支持梁と転動部材との間に案内治具を差し入れる第1のステップと、案内治具を支持梁と一体に引き上げ、ガイドレールの端部に案内治具の端部を配置して突き合わせる第2のステップと、支持梁をガイドレール側に移動させ、転動部材をガイドレールの転動部材走行面に導く第3のステップとを有するようにしたことにより、第1のステップで、案内治具を支持梁と転動部材との間に差し入れ、第2のステップで、案内治具を支持梁と一体に引き上げ、ガイドレールの端部に案内治具の端部を配置して突き合わせ、第3のステップで、支持梁をガイドレール側に移動させると、転動部材がガイドレールの走行面に導かれ、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【0022】
また、本発明の第2の発明に係る案内治具を用いた支持梁の装着方法は、ガイドレール端部近傍の側壁に滑車を取り付け、第2のステップで、案内治具を引き上げるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、案内治具の引き上げが容易になる。さらに、本発明に係る案内治具を用いた支持梁の装着方法は、案内治具の端部を、ガイドレールの端部に突き合わせて配置し、ガイドレールから支持梁を移動させて転動部材を案内治具に導き、案内治具と支持梁を引き下ろしてガイドレールから支持梁を離脱させるようにしてもよい。係る構成とすることにより、支持梁をガイドレールから容易に離脱させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の発明の請求項1に係る重量部材の吊り上げ移動機構は、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設けられる案内手段と、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付けられる複数の可動体と、両端が向かい合う可動体にそれぞれ吊支され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる支持体とを備えて構成されるようにしたので、同時に複数の作業を行うことができ、作業効率が向上する。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業性がよくなる。
【0024】
本発明の第1の発明の請求項2に係る重量部材の吊り上げ移動機構は、延長方向に軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる機構であって、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケットと、これらブラケットに連結されたガイドレールとを有する案内機構と、上部に第1の転動部材を有し前記ガイドレールに係脱自在に装着される支持梁と、この支持梁に吊支される第1の吊り上げ装置と、一端が支持梁に係止される連結部材とを有する複数の可動体ユニットと、両端に前記第1の吊り上げ装置の吊り上げ部と前記連結部材の他端がそれぞれ係脱自在に係止されるガータと、このガータに第2の転動部材を介して長手方向に変位可能に装着され、重量部材を着脱自在に連結して吊り上げる第2の吊り上げ装置とを有する支持体ユニットとを備えて構成されるようにしたので、同時に複数の作業を行うことができ、作業効率が向上する。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業性がよくなる。
【0026】
本発明の第1の発明の請求項12に係る重量部材の吊り上げ移動方法は、延長方向軌道が敷設される構造躯体内で、重量部材を吊り上げて移動させる吊り上げ移動方法であって、案内手段を、構造躯体上部の左右両側に、延長方向に沿って設ける第1のステップと、複数の可動体を、各案内手段にそれぞれ移動可能に取り付ける第2のステップと、支持体を、左右で向かい合う可動体に吊支する第3のステップと、支持体により重量部材を着脱自在に連結し、吊り上げて移動させる第4のステップとを有するようにしたので、同時に複数の作業を行うことができ、作業効率が向上する。また、道床に山越器等の障害物が存在しなくなるので作業しやすくなり作業性がよくなる。
【0027】
本発明の第2の発明に係る案内治具は、支持梁上部に設けられた転動部材を、ガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成され、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能に構成されるとともに、一端がガイドレール端部に導かれると、前記転動面がガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致するように構成されるようにしたので、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【0028】
本発明の第2の発明に係る案内治具は、支持梁上部に設けられた転動部材を、縦壁を有するガイドレールに案内する案内治具であって、上面に転動部材の転動面が形成された転動部を有し、支持梁と転動部材との間に差し入れ可能な平板材と、転動部の端部上方から外側に突出し、ガイドレールの縦壁を挟み込み可能な位置決め部と、平板材の下面端部から外側に突出して設けられ、ガイドレール下面に当接して上方への変位が規制されるとともに、平板材の転動面をガイドレールの転動部材走行面とほぼ同一レベルに合致させる規制部とを有して構成するようにしたので、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【0029】
本発明の第2の発明に係る案内治具を用いた支持梁の装着方法は、支持梁上部に設けられた転動部材と支持梁との間に差し入れられる案内治具を用いて、支持梁の転動部材を、構造躯体上部に延長方向に延設されたガイドレールに案内して支持梁をガイドレールに装着する支持梁の装着方法であって、支持梁と転動部材との間に案内治具を差し入れる第1のステップと、案内治具を支持梁と一体に引き上げ、ガイドレールの端部に案内治具の端部を配置して突き合わせる第2のステップと、支持梁をガイドレール側に移動させ、転動部材をガイドレールの転動部材走行面に導く第3のステップとを有するようにしたので、支持梁を容易にガイドレールに導くことができ、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の第1の発明の一実施形態に係る重量部材の吊り上げ移動機構の全体構成を示す全体構成図である。
【
図2】
図2の(A)ないし(C)はそれぞれ、
図1の重量部材の吊り上げ移動機構の構造躯体天井面から見た平面図、構造躯体側壁の可動ユニットを示す説明図および構造躯体内の重量部材の吊り上げ移動機構を示す正面図である。
【
図3】
図3の(A)ないし(C)はそれぞれ、
図1の重量部材の吊り上げ移動機構のガイドレールを示す一部省略平面図、そのガイドレールの一部省略側面図およびガイドレールの正面図である。
【
図4】
図4の(A)および(B)はそれぞれ、
図1の可動体ユニットの支持梁を示す平面図および可動体ユニットを示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1の重量部材の吊り上げ移動機構の支持体ユニットの側面図である。レール吊上器の配置の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、可動体ユニットのギヤードトロリを示す説明図である。
【
図7】
図7は、支持梁にチェーンブロックとワイヤを吊り下げた状態を示す説明図である。
【
図8】
図8は、支持梁に設けたガータの位置検出装置を示す説明図である。
【
図9】
図9の(A)ないし(C)はそれぞれ、
図1のガータのI-I線断面図、II-II線断面図および要部の拡大側面図である。
【
図10】
図10の(A)ないし(C)はそれぞれ、本発明の第2の発明の一実施形態に係る案内治具の平面図、側面図および下面図である。
【
図13】
図13の(A)および(B)はそれぞれ、ガイドレールのストッパと案内治具の装着および取り外し時の状態を示す説明図である。
【
図14】
図14の(A)ないし(C)はそれぞれ、
図10の案内治具を用いて可動体ユニットの支持梁をガイドレールに装着する工程を、順を追って説明する説明図である。
【
図15】
図15の(A)ないし(D)はそれぞれ、軌道空間が閉塞された構造躯体の例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、構造躯体を、軌床に組み立てられた仮設の工事用の骨組み構造から構成した場合の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に示す一の実施形態により本発明の第1の発明を説明する。本発明の第1の発明の一実施形態に係る重量部材の吊り上げ移動機構2は、延長方向に軌道が敷設され上下左右が囲まれたトンネル(構造躯体)3内で軌框や分岐器のような長尺の重量部材Wを吊り上げて移動するもので、トンネル3内に設けられる。この重量部材の吊り上げ移動機構2は、
図1および
図2に示すように、案内機構(案内手段)6と可動体ユニット(可動体)24と支持体ユニット(支持体)42とを備えて構成される。案内機構6は、トンネル3の左右両側壁3A、3Bの上部に延長方向に沿って所定間隔毎に設けられたブラケット4とこれらブラケット4に連結されるガイドレール5を備えている。可動体ユニット24は、上部の両端に一対のトロリ11、12を有しガイドレール5に係脱自在に装着される支持梁13を備えている。支持体ユニット42は、両端が、両側壁3A、3B側の、向かい合う支持梁13A、13Bにそれぞれ吊支され、重量部材Wを着脱自在に連結して吊り上げるガータ31を備えている。可動体ユニット24は、上部の両端に一対のトロリ(第1の転動部材)11、12を有し、ガイドレール5に係脱自在に装着される支持梁13を備えて構成される。支持体ユニット42は、両端が、両側壁3A、3B側の、向かい合う支持梁13A、13Bにそれぞれ吊支され、重量部材Wを着脱自在に連結して吊り上げるガータ31を備えて構成される。
【0032】
案内機構6のブラケット4は、
図2の(B)、(C)に示すように、両側壁3A、3Bの最上部で、天井に近い部位に取り付けられる。案内機構6のガイドレール5は、複数の断面エ字状レール片(H型鋼)を接続し所望の長さL(本実施形態では、例えば、82m)となるように水平を確保して設置される。ガイドレール5は中央に縦壁5Aを有し、縦壁5Aの下側平坦面がトロリ11、12の走行面となっている。ガイドレール5の一端には、
図2の(A)および
図13の(A)、(B)に示すように、第1の支持梁脱落防止用ストッパ7が、他端には、後述するトロリ11,12外側からの進入を許容し、ガイドレール5上にあるトロリ11、12が外側へ脱落するのを阻止する第2の支持梁脱落防止用ストッパ8が設けられる。この第2の支持梁脱落防止用ストッパ8は、
図3および
図10に示すように、ガイドレール5からトロリ11、12を外側へ取り外す際には、脱落を阻止するストッパを強制的に解除する解除レバー9を備えている。この第2の支持梁脱落防止用ストッパ8は、ガイドレール5内のトロリ11、12が外方へ脱落するのを阻止し、トロリ11、12が外部からガイドレール5へ進入するのを許すよう構成され、取り外し時には、人力により解除レバー9を操作して強制的にストッパ機能を解除するようになっている。例えば、第2の支持梁脱落防止用ストッパ8は、図示しない軸芯が軌間方向に合致するピンにストッパ板の中心を嵌装して弾発付勢させて構成し、トロリが外側から付勢力に抗して進入する際には進入を許容し、ガイドレール5から外側に向かって走行する際には走行をブロックするよう構成し、解除レバー9により外側への走行を許容させるようにしている。
【0033】
このように、案内機構6は、ブラケット4とこれらブラケット4に連結されたガイドレール5とガイドレール5の両端にそれぞれ設けられた第1の支持梁脱落防止用ストッパ7と第2の支持梁脱落防止用ストッパ8とを有して構成される。案内機構6は、作業場所だけでなく作業場所から離れた場所まで重量部材Wを移動させて待機させることができる距離を延長方向に確保するようになっている。すなわち、本発明では、狭隘なトンネル3の軌間方向の幅の作業上の制約を、作業場所から離れた延長方向の空間を、特にトンネル3の上方の空間を有効に利用することで作業効率の向上を図るようにしている。
【0034】
支持梁13は、所定の長さ(本実施形態では、2500mm)のH型鋼から構成され、両側壁3A、3B側の、向かい合う支持梁13A、13Bが、ガータ31を支持するようになっている。支持梁13の上面両端には、
図4および
図6に示すように、鍔付きヒンジピン23、23が設けられ、トロリ11、12にそれぞれ係止される。支持梁13の下面中央には、
図4および
図7に示すように、U字状係止部14が設けられ、チェーンブロック15(第1の吊り上げ装置)が係止される。このチェーンブロック15は、下端にフック16を有し、ガータ31の両端に設けられたヒンジピン32に離脱可能に係止される。支持梁13下面には、
図7に示すように、一対のワイヤ(連結部材)17,18がそれぞれ、U字状係止部14から等距離隔てて懸吊される。すなわち、これらワイヤ17、18の上側環状端部17A、18Aは、支持梁13のU字状係止部14から等間隔を隔てて設けられた鍔付きヒンジピン19、19に係止され、下側環状端部17B、18Bが自由端となっている。これら下側環状端部17B、18Bは、チェーンブロック15、15がガータ31を吊り上げて所定の高さに達すると、ガータ31の両端に設けられた舌付きピン33A、33Bに係止され、チェーンブロック15、15のフック16、16がヒンジピン32から外されると、これら一対のワイヤ17、18が、ほぼ60度の角度でガータ31を支持梁13にバランスよく安定させて支持するようになっている。つまり、ワイヤ17、18が等辺三角形の2等辺をなすようになっている。
【0035】
トロリ11、12は、一方がプレーントロリ11から、他方がギヤードトロリ12(
図6参照)から構成される。左右両側壁3A、3B側でそれぞれ向き合う各支持梁13A、13Bには、
図8に示すように、ガータ31をチェーンブロック15、15で吊り上げる際に、ガータ31の位置を検知する検知装置20が設けられる。検知装置20は、ガータ31を支持する両支持梁13、13のうち、一方の支持梁13Aに設けられたレーザ照射装置21と、他方の支持梁13Bに設けられ、照射されたレーザ光を受けてガータ31の位置がずれているかどうかが表示されるインジケータ22とを備えて構成される。このように、可動体ユニット24は、支持梁13とトロリ11、12とチェーンブロック15とワイヤ17、18と検知装置20とを有して構成される。可動体ユニット24は、左右のガイドレール5、5に多数装着可能になっている。搬出入する重量部材Wの重さと寸法が決まっていれば、それに応じた数の可動体ユニット24を装着するようになっている。
【0036】
ガータ31は、
図1に示すように、異なる寸法の複数のH型鋼31A、31Bを、構造躯体3の軌間方向幅に応じて接続して構成される。本実施形態では、同一長さの2本のH型鋼31A、31Aを長さの異なるH型鋼31の両端に接続して、例えば、7100mmの長さとなるようにしている。ガータ31は、左右両側壁3A、3B側の各支持梁13、13のうち、互いに向き合う支持梁13A、13Bに連結される。つまり、
図9の(C)に示すように、ガータ31の上面両端部に形成された鍔部34には、ヒンジピン32とそのヒンジピン32の下方両側に舌付きピン33A、33Bが設けられ、ヒンジピン32は、チェーンブロック15のフック16に、舌付きピン33A、33Bは、ワイヤ17、18の下側環状端部17B、18Bにそれぞれ係止されるようになっている。支持梁13からガータ31までの距離は、ワイヤ17、18の長さとこれらワイヤ17、18が、ガータ31に係止された際の角度とからに基づいて設定される。ワイヤ17、18の長さが長くなればその分両ワイヤ17、18間の角度は小さくなる。つまり、ガイドレール5の高さと、ガイドレール5と支持梁13との間の距離(または支持梁13の床からの高さ)は予め決まっているので、ワイヤ17、18の長さと係止時の角度がわかれば、支持梁13とガータ31との距離が求められる。従って、支持梁13とガータ31との距離からガータ31の高さが導かれる。ワイヤ17、18は長さの異なる複数の種類が用意され、作業内容に応じてガータ31の高さが設定されるようになっている。
【0037】
ガータ31には、
図2および
図9の(A)に示すように、チェーンブロック(第2の吊り上げ装置)34、35が、プレーントロリ36、37(第2の転動部材)を介して長手方向に変位可能に装着される。プレーントロリ36、37は、チェーンブロック34、35に係脱自在に連結される。プレーントロリ36、37は、ガータ31の組み立て時、接続前のガータ片31A、31A、31Bのいずれかに装着される。ガータ31は、プレーントロリ36、37の装着後、分割されたガータ片31A、31A、31Bを接続して組み立てられる。チェーンブロック34、35は、下端のフック39(連結部)に、重量部材Wを着脱自在に連結し吊り上げるようになっている。チェーンブロック34、35は、重量部材Wの吊り上げ高さを作業員が重量部材Wに対して作業しやすい高さに設定することもできれば、作業員の作業空間の上限高さより上方の位置に設定することもできるようになっている。
【0038】
プレーントロリ36、37は、
図9の(B)に示すように、断面H型ガータ31の下面に形成された転動面31Sを走行する際、ガータ片31A、31A、31Bの接続部38と干渉することなく走行するようにローラ間に所望の空隙が確保される。ガータ31の両端部下面には、アジャストパッド40が設けられる。アジャストパッド40は、防護パッド41を側壁に接離可能に伸縮させるようになっている。アジャストパッド40は、ガータ31が軌間方向に揺れることがあっても、防護パッド41が壁面3A、3Bに当接して、揺れを押さえるようになっている。必要に応じて、防護パッド41を伸張させ壁面3A、3Bに当てると、ガータ31は動きが静止される。また、ガータ31には、水準器(図示せず)が取り付けられ、水平を保持しているかどうか確認することができる。このように、支持体ユニット42は、ガータ31とプレーントロリ36、37とチェーンブロック34、35とアジャストパッド40とを有して構成される。支持体ユニット42は、搬出入する重量部材Wの重さと寸法に応じて、連結される支持体ユニット42の数が決められる。
【0039】
次に、本発明の第1の発明に係る重量部材の吊り上げ移動方法について、上記実施形態に係る重量部材の吊り上げ移動機構2の動作に基づいて説明する。重量部材の吊り上げ移動機構2では、まず、ブラケット4をトンネル3の左右両側壁3A、3Bの上部に延長方向に沿って所定間隔毎に設け、これらブラケット4にガイドレール5、5を連結し案内機構6を設置する(第1のステップS1)。次に、可動体ユニット24のトロリ11、12を、ガイドレール5に取り外し可能に装着する。このとき、重量部材Wの重さや寸法に応じて可動体ユニット24の数を決定し、決められた複数の可動体ユニット24を両ガイドレールに装着する(第2のステップS2)。これら第1のステップS1または/および第2のステップS2の間に、ガータ片31A、31A、31Bをかさ上げ用の脚立や踏み台(図示せず)に載せてプレーントロリ36,37を装着し、ガータ片31A、31A、31Bを接続してガータ31を組み立てる。第2のステップS2の次に、ガータ31の両端を、両側壁3A、3B側の、互いに向かい合う支持梁13A、13Bのチェーンブロック15、15に係止してガータ31を吊り上げ、所定高さに達すると、ワイヤ17,18をガータ31の舌付きピン33A、33Bに係止してチェーンブロック15、15のフック16をヒンジピン32から外す。こうして、支持体ユニット42のガータ31は、両端がワイヤ17,18を介して支持梁13A、13Bに連結されて吊支される(第3のステップS3)。次に、複数のガータ31を重量部材Wの上方に移動させ、チェーンブロック34、35のフック39により重量部材Wを連結すると、重量部材Wを所望の高さに吊り上げる。そうして、重量部材Wが吊り下げられたガータ31を作業場所から離れた場所に移動する(第4のステップS4)。このように、重量部材の吊り上げ移動機構2の吊り上げ移動方法では、重量部材Wを所定高さのガータ31に連結した後、重量部材Wを所望の高さに吊り上げ、重量部材Wを吊り上げて保持したまま支持体を延長方向に移動させることができるようになっている。このため、作業場所から離れた場所に移動させると、作業場所が確保されるようになっている。また、移動された場所で待機している重量部材Wに対して作業を行うと同時に、他の作業場所でも作業を並行して同時に行うことができ、作業効率を向上させることができる。さらに、道床上に山越器等の機器を設置する必要がないので、作業空間を広く確保することができる。
【0040】
このように、上記実施形態に係る重量部材の吊り上げ移動機構2を用いた重量部材の吊り上げ移動方法では、重量部材Wをトンネル3内に搬出入する際にも効率的に搬出入作業を行うことができる。つまり、狭隘なトンネル等の構造躯体3内の作業場所(
図2の(A)参照)に、外部から新たな重量部材Wを搬入する際、軌道のレール上に図示しない重量部材運搬用車両を載置して、その車両上に重量部材Wを積載し、ガイドレール5の延設された場所まで運び込む。ガイドレール5の延長方向に沿って、ガータ31は複数配置されており、これらガータ31を運び込まれた新たな重量部材Wの場所まで移動し、チェーンブロック34、35によりこの重量部材Wを連結して所定の高さまで吊り上げる。そして、新たな重量部材Wを作業場所から離れた場所に移動させると、作業場所が確保される。移動された支持体ユニット42は、吊り上げた重量部材Wを保持したまま、待機するようになっている。また、他の作業と並行して、移動された場所で待機している重量部材Wに対しても作業を行うことができる。トンネル3内から撤去される軌框や分岐器等重量部材Wを搬出する場合、ガイドレール5、5の延長方向に沿って複数の支持体ユニット42を撤去用重量部材W上に配置し、チェーンブロック34、35に連結した後、撤去用重量部材Wを吊り上げ、吊り上げた状態で移動して待機させ、新たな軌框や分岐器が交換または更新されると、図示しない重量部材運搬用車両に撤去用重量部材Wを載置して、外部に搬出することもできる。必要な時まで、つまり、搬出時まで待機させることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、重量部材Wを所定高さのガータ31に連結した後、重量部材Wを所望の高さに吊り上げるようにしているが、吊り上げ高さは、長さの異なるワイヤ17、18の長さに応じて自在に設定でき、作業員が作業しやすい高さに設定してもよいし、作業員の作業空間の上限高さより上方に設定してもよい。また、上記実施形態では、吊り上げた重量部材Wを移動させるようにしているがそれに限られるものではなく、吊り上げた場所で重量部材Wを吊り上げたまま保持するようにしてもよい。
【0042】
次に本発明の第2の発明に係る案内治具の一実施形態について、上記第1の発明の一実施形態に係る重量部材の吊り上げ移動機構2に用いられる態様に基づいて説明する。本発明の第2の発明に係る案内治具102は、
図10ないし
図13に示すように、支持梁13のトロリ11、12をガイドレール5に案内する案内治具である。案内治具102は、上面にトロリ11、12の転動面103Aが形成された転動部103を有し、支持梁13とトロリ11、12のローラ11A、12Aとの間に差し入れ可能な平板材104により構成される。案内治具102には、転動部103の中央線を挟んで平行に立ち上がる立設部105が形成され、この立設部105の端部105Aの上部から外側に突出し、ガイドレール5の縦壁5Aを挟み込み可能な位置決め部106が形成される。さらに、案内治具102には、平板材104の下面104Aの端部107に接合されたスペーサ108を介して外側に突出して設けられ、ガイドレール5の下面5Bに当接して上方への変位が規制される規制部109が設けられる。この規制部109は、平板材104の端部107がガイドレール5に突き当たると、平板材104の転動面103Aをガイドレール5の転動部材走行面5Cとほぼ同一レベルに合致させるようになっている。転動部103の他端には、転動面103Aから立ち上がりトロリ11、12の脱落を阻止するストッパ部110が形成される。案内治具102には、立設部105に長手方向中心からほぼ等距離を隔てて係止部111、112が設けられる。これら係止部111、112は、案内治具102が吊り上げられる際、吊り上げ索121A、121Bに係止されるようになっている。
【0043】
次に、本発明の第2の発明に係る案内治具102を用いた支持梁の装着方法について、案内治具102の動作に基づいて説明する。まず、
図14の(A)に示すように、ガイドレール5両端のうち、第2の支持梁脱落防止用ストッパ8が設けられた側の端部5Dの近傍上方の壁面3A、3Bに定滑車を備えた引き上げ具120A、120Bを水平方向に設置する。これら引き上げ具120A、120B間の距離は案内治具102の係止部111、112間の距離に対応している。引き上げ具120A、120Bは、定滑車に巻回される吊り上げ索121A、121Bを備え、吊り上げ索121A、121Bの一端にフック122A、122Bが、他端に操作部123A、123Bがそれぞれ設けられて構成され、操作部123A、123Bを操作してフック122A、122Bを上下動させるようになっている。これら引き上げ具120A、120Bは、案内治具102を吊り上げ索121A、121Bにより垂直に吊り上げると、案内治具102の位置決め部106がガイドレル5の縦壁5Aに向き合い、規制部109が、ガイドレール5の下面端部側に突出して当接するように取り付けられる。
【0044】
ガイドレール5の端部5Dの下方には、道床に図示しないかさ上げ台を配置し、その上に可動体ユニット24を載置する。次に、案内治具102を、載置された可動体ユニット24の支持梁13とトロリ11、12のローラ11A、12Aとの間に差し入れ支持梁13上面に載置する(第1のステップS11)。次に、吊り上げ索121A、121Bのフック122A、122Bをそれぞれ、係止部111、112に係止し、吊り上げ索121A、121Bの操作部123A、123Bを操作し、案内治具102を水平を維持して引き上げる。すると、案内治具120の転動部103がトロリ11、12のローラ11A、12Aに当接してトロリ11、12とともに可動体ユニット24を上方に引き上げる。次に、案内治具102の位置決め部106がガイドレール5の縦壁5Aに向き合う位置に達すると(
図14の(B)参照)、可動体ユニット24のチェーンブロック15のチェーンまたはワイヤ17、18を引っ張って案内治具102をガイドレール5側に押すと、位置決め部106が縦壁5Aを挟み込み、幅方向の位置決めがなされる。そして、さらに案内治具102を上方に引き上げると、規制部109がガイドレール5の端部5D下面に当接して上方への変位が規制され、平板材104の端部107がガイドレール5に突き当たると、平板材104の転動面103Aとガイドレール5の転動部材走行面5Cとがほぼ同一レベルとなり、案内治具102とガードレール5とに同一転動面が形成される(第2のステップS12)。
【0045】
次に、チェーンブロック15のチェーンまたはワイヤ17、18を引っ張って可動体ユニット24をガイドレール5側に押すと、ガイドレール5側のトロリ11は、第2の支持梁脱落防止用ストッパ8に突き当たる。このとき、ストッパ8は外部から進入するトロリ11の通行を許容し、トロリ11、12をガイドレール5に導く(第3のステップS13、
図14の(C)参照)。このとき、案内治具102は、ガイドレール5の端部5Dで位置決めされた状態となっているので、引き上げ具120A、120Bの操作部123A、123Bを操作して、引き下げると、位置決め部106と縦壁5Aとの係合が解かれる。このように係合解除後、案内治具102を床側に引き下ろすようになっている。
【0046】
可動体ユニット24をガイドレール5から取り外す際には、上記工程と逆に、案内治具102をガイドレール5の端部5Dと向き合わせて配置し、位置決め部106を縦壁5Aに係合させ、第2の支持梁脱落防止用ストッパ8の解除レバー9でストッパを強制的に解除し、トロリ12、11を案内治具102に導くようになっている。案内治具102に導かれた可動体ユニット24は、引き上げ具120A、120Bにより引き下ろされるようになっている。
【0047】
このように、本発明の第2の発明に係る案内治具102を用いた支持梁の装着方法は、叙上の如く構成されているので、案内治具102を支持梁13とトロリ11、12のローラ11A、12Aとの間に差し入れ、引き上げ具120A、120Bにより案内治具102を支持梁13と一体に吊り上げ、案内治具102の位置決め部106をガイドレール5の縦壁5Aに挟み込み、規制部109をガイドレール5の下面に当接させると、案内治具102の転動部端部105Aとガイドレール5の端部5Dとが正確に突き合わせられ、案内治具102の転動部103の転動面とガイドレール5の転動部材走行面5Cとがほぼ同一レベルに合致する。この状態で、支持梁103をガイドレール5側に移動させると、トロリ11、12は、第2の支持梁脱落防止用ストッパ8を通過して、ガイドレール5の転動部材走行面5Cに円滑に導かれるので、支持梁103を容易にガイドレール5に導くことができ、作業効率が向上する。
【0048】
なお、上記実施形態では、支持梁13に装着される転動部材を、プレーントロリ11とギヤードトロリ12とにより構成しているがこれに限られるものではなく、ガイドレール5の転送部材走行面5Cを自在に走行可能なものであればよく、ローラや車輪であってもよい。また、上記実施形態では、支持梁13とガータ31との間を、連結部材としてワイヤ17、18により連結するようにしているがこれに限られるものではなく、棒材を用いるようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、ガイドレール5は断面がエ字状のH型鋼を用いているがこれに限られるものではなく、断面I字状、断面コ字状、断面L字状のレールまたは断面コ字状のレールを横倒し上方が開放されるレールにより構成されるようにしてもよい。また、上記実施形態では、鉄道用の構造躯体を、上下左右が囲まれ軌道空間が制限されたトンネル3として述べているが、上下左右のうち上側が開放された掘込み構造体であってもよく、また、上下左右が囲まれ軌道空間が制限された架構体(骨組体)、あるいは上下左右のうち上側が開放された架構体(骨組体)であってもよい。架構体は、作業時に組み立て作業後に撤去するようにしてもよい。上記実施形態では、ガイドレール5を構造躯体の左右両側壁上部に設けているがこれに限られるものではなく、天井部の左右両側に設けるようにしてもよいし、側壁と天井部との間のハンチに設けるようにしてもよい。また、上記実施形態では、構造躯体を、
図15の(A)に示すように、断面矩形状の二線部箱形トンネルとしているが、これに限られるものではなく、
図15の(B)に示すように、ハンチを段状とした二線部箱形トンネルでもよいし、
図15の(C)に示すように、軌床から立ち上がる壁部や天井部がアーチ状に形成されたルーフシールドトンネルでもよい。また、
図15の(D)に示すようなアーチ型トンネルでもよい。壁部と天井部がアーチ状の構造躯体の場合、ガイドレールは構造躯体の上部に所望の高さを確保して設けてさえあればよい。さらに、
図16に示すように、構造躯体を、軌床に組み立てられた仮設の工事用梁と桁とからなる骨組み構造から構成するようにしてもよい。また、上記実施形態では、重量部材Wを支持体ユニット42に吊り上げた状態で、案内機構6に沿って作業場所から離れた場所に移動させて待機させる際、支持体ユニット42を下から支える支持材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 重量部材の吊り上げ移動機構
3 トンネル(構造躯体)
3A、3B 側壁
4 ブラケット
5 ガイドレール
6 案内機構
11、12 トロリ
13 支持梁
24 可動体ユニット
31 ガータ
34、35 チェーンブロック
36、37 トロリ
42 支持体ユニット
W 重量部材