(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】清浄剤化合物を含有する潤滑エンジン油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 129/54 20060101AFI20230719BHJP
C10M 159/22 20060101ALI20230719BHJP
C10M 141/12 20060101ALI20230719BHJP
C10M 163/00 20060101ALI20230719BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20230719BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20230719BHJP
C10M 129/70 20060101ALN20230719BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20230719BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20230719BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20230719BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20230719BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20230719BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20230719BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230719BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230719BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20230719BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230719BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230719BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230719BHJP
【FI】
C10M129/54
C10M159/22
C10M141/12
C10M163/00
C10M139/00 Z
C10M133/16
C10M129/70
C10M139/00 A
C10M159/24
C10M137/10 A
C10N30:04
C10N20:00 Z
C10N10:12
C10N10:02
C10N40:25
C10N30:06
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N40:08
C10N40:04
(21)【出願番号】P 2019571479
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2018054804
(87)【国際公開番号】W WO2019003177
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】598066514
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッファ、アリグザンダー ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゲル、バルテル アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ、セイエデー マーブーベー
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ジェイコブ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ル デオール、クリストフ ペ.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ブレンダン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】トゥ、シャオミン ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カーティス ベイ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユエ - ロン
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532209(JP,A)
【文献】特表2011-508063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0130522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
10~C
40異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を使用する方法であって、
ASTM D2896に従って測定した前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmであり、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、
主要量の潤滑粘度の油を含む潤滑油組成物中のCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり、ここで主要量は該組成物の50重量%を超える量を意味し、
該潤滑油組成物は前記アルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算
で0.01~2.0重量%含有することにより、該潤滑油組成物により潤滑されるエンジンの摩擦を低下させ、ここで摩擦性能はMTMベンチ試験により測定され、又はTE-77高周波摩擦機を使用して得られる、上記方法。
【請求項2】
前記潤滑油組成物がモリブデン化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モリブデン化合物がモリブデンスクシンイミドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が摩擦調整剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記摩擦調整剤が脂肪酸誘導体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪酸誘導体が、脂肪酸エステル、ホウ素化脂肪酸エステル、またはアミドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記潤滑油組成物がフェネート、スルホネート、サリチレート、サリキサレート、サリゲニン、複合清浄剤およびナフテネート清浄剤から選択される清浄剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記清浄剤が過塩基性スルホネートである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが
、0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有し、
ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当た
り14
~28個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当た
り18
~24個の炭素原子を有する、請求項1に方法。
【請求項12】
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当た
り20
~24個の炭素原子を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、アルキル化ヒドロキシベンゾエート清浄剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が金属ジチオホスフェートをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金属ジチオホスフェートが、第2級アルキル基を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年6月30日に提出された米国仮出願第62/527,211号の利益およびこれに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
中性および過塩基性清浄剤によって、潤滑特性が得られることは十分に説明されている。多くの場合、そのような清浄剤添加剤は、他の潤滑添加剤と共に配合されて、潤滑油組成物を形成し、特定の所望の潤滑特性を発揮する。金属含有清浄剤は、沈殿物を抑制する清浄剤および酸中和剤または防錆剤の両方として機能し、これにより、摩耗および腐食を低減し、かつエンジン寿命を延ばす。清浄剤は、これらの利点のために潤滑剤に利用されるが、それらの使用には欠点もある。清浄剤は摩擦性能には不利であることが知られている。摩擦の増加は燃費の低下に繋がり、燃費の改善は環境およびコスト削減の理由から重要であるため、このことは欠点となり得る。
エンジン油配合物の主要な目的は、摩耗抑制と腐食防止を同時に達成しつつ、さらに燃費を改善する潤滑油組成物を開発することである。驚くべきことに、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を配合した潤滑剤は、酸化低減、腐食防止および摩擦性能の改善を示すことがわかった。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一実施形態では、以下を含む潤滑油組成を提供する:
a. 主要量の潤滑粘度の油、および
b. C10~C40異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmである、化合物。
さらに、エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを、以下を含む潤滑油組成物で潤滑することを含む方法を提供する:
a. 主要量の潤滑粘度の油、および
b. C10~C40異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmである、化合物。
【0004】
開示の詳細な説明
本発明は、種々の改変および代替の形態を許容するが、本明細書では、その具体的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の記載によって、本発明を開示した特定の形態に限定することを意図するものではなく、それとは反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に入るすべての改変、等価物、および代替物を含むことを意図するものと理解されるべきである。
【0005】
本明細書に開示する主題の理解を容易にするために、本明細書で使用するいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない用語、略語または略記は、本出願の提出と同時期の当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
なお、下記[1]から[17]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)C
10
~C
40
異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmである、上記化合物
を含む潤滑油組成物。
[2]
モリブデン化合物をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
前記モリブデン化合物がモリブデンスクシンイミドである、[3](2)に記載の潤滑油組成物。
[4]
摩擦調整剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[5]
前記摩擦調整剤が脂肪酸誘導体である、[4]に記載の潤滑油組成物。
[6]
前記脂肪酸誘導体が、脂肪酸エステル、ホウ素化脂肪酸エステル、またはアミドである、[5]に記載の潤滑油組成物。
[7]
フェネート、スルホネート、サリチレート、サリキサレート、サリゲニン、複合清浄剤およびナフテネート清浄剤から選択される清浄剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[8]
前記清浄剤が過塩基性スルホネートである、[7]に記載の潤滑油組成物。
[9]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[10]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当たり約14~約28個の炭素原子を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[11]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当たり約18~約24個の炭素原子を有する、[1]に記載のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[12]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、1分子当たり約20~約24個の炭素原子を有する、[1]に記載のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[13]
前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、アルキル化ヒドロキシベンゾエート清浄剤である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[14]
前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[15]
金属ジチオホスフェートをさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[16]
前記金属ジチオホスフェートが、第2級アルキル基を含む、[15]に記載の潤滑油組成物。
[17]
エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを以下を含む潤滑油組成物で潤滑することを含む上記方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)C
10
~C
40
異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmである、上記化合物。
【0006】
定義
本明細書で使用する場合、以下の用語は、それに反する明示の断りがない限り、以下の意味を有する。この明細書では、以下の単語と表現は、使用される場合には、以下に示す意味を有する。
【0007】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0008】
「より少ない量」とは、組成物の50重量%より少ないことを意味し、記載された添加剤に関して、および組成物中に存在するすべての添加剤の全質量に関して表され、1種または複数種の添加剤の活性成分として示される。
【0009】
「活性成分(active ingredients)」もしくは「活性成分(actives)」とは、希釈剤または溶媒ではない添加物質を指す。
【0010】
記載されるすべての百分率は、断りがない限り、活性成分基準(すなわち、担体または希釈油なし)での重量%である。
【0011】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、重量による百万分率を意味する。
【0012】
全塩基価(TBN)は、ASTM D2896に従って測定した。
【0013】
150℃での高温高剪断(HTHS)粘度は、ASTM D4863に従って測定した。
【0014】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って測定した。
【0015】
-35℃でのコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度は、ASTM D5293に従って測定した。
【0016】
Noack揮発性は、ASTM D5800に従って測定した。
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0017】
オレフィン-「オレフィン」という用語は、多くのプロセスによって得られる、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素のクラスを指す。1つの二重結合を含むものはモノアルケンと呼ばれ、2つの二重結合を有するものはジエン、アルキルジエン、またはジオレフィンと呼ばれる。アルファオレフィンは、二重結合が1番目と2番目の炭素の間にあるため、特に反応性が高い。例には、1-オクテンおよび1-オクタデセンがあり、これらは中程度の生分解性界面活性剤の出発点として使用される。線状および分岐状オレフィンもまたオレフィンの定義に含まれる。
【0018】
ノルマルアルファオレフィン-「ノルマルアルファオレフィン」という用語は、炭化水素鎖のアルファまたはプライマリ位置に炭素-炭素二重結合が存在する直鎖非分岐炭化水素であるオレフィンを指す。
【0019】
異性化ノルマルアルファオレフィン-本明細書で使用される「異性化ノルマルアルファオレフィン」という用語は、異性化条件に供されたアルファオレフィンを指し、その結果として、存在するオレフィン種の分布の変更および/またはアルキル鎖に沿った分岐の導入をもたらす。異性化オレフィン生成物は、約10~約40個の炭素原子、好ましくは約20~約28個の炭素原子、好ましくは約20~約24個の炭素原子を含む線状アルファオレフィンを異性化することにより得ることができる。
【0020】
本明細書で言及されるすべてのASTM標準は、本出願の出願日現在の最新バージョンである。
【0021】
一態様では、本開示は、以下を含む潤滑油組成物を目的とする:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)C10~C40異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物がオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmのTBNを有する、化合物。
【0022】
別の態様では、潤滑油組成物はモリブデン化合物を含む。
【0023】
別の態様では、エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを、以下を含む潤滑油組成物で潤滑することを含む方法を提供する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)C10~C40異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であって、前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNがオイルフリー基準で10~300mgKOH/gmである、化合物。
【0024】
別の態様では、本開示は、一般的に、自動車エンジン、オートバイエンジン、天然ガスエンジン、デュアル燃料エンジン、鉄道機関車エンジン、モバイル天然ガスエンジンに適しており、自動車および産業用途用の機能性流体として適している潤滑油組成物に関する。
【0025】
異性化ノーマルアルファオレフィン(NAO)から誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤
【0026】
本開示の一態様では、C10~C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、活性成分基準で10~300、好ましくは50~300、より好ましくは100~300、さらにより好ましくは150~300、最も好ましくは、175~250mgKOH/gmのTBNを有する。
【0027】
本開示の一態様では、C10~C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、Caアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である。
【0028】
本開示の一態様では、C10~C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、アルキル化ヒドロキシベンゾエート清浄剤であり得る。別の実施形態では、清浄剤はサリチレート清浄剤であり得る。別の実施形態では、清浄剤はカルボキシレート清浄剤であり得る。
【0029】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、米国特許第8,893,499号に記載されているように調製することができ、本明細書に、その全体を援用する。
【0030】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、1分子当り約14~約28個の炭素、好ましくは1分子当り約20~約24個の炭素(原子)、または好ましくは約20~約28個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから作られる。
【0031】
本開示の一態様では、活性成分基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、約0.10~約0.40、好ましくは約0.10~約0.35、好ましくは約0.10~約0.30、より好ましくは約0.12~約0.30の異性化レベル(i)を有する異性化NAOから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから作られる。
【0032】
本開示の一態様では、活性成分基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10~C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、C10~C40異性化NAOから誘導されるアルキル基を有する1種以上のアルキルフェノールおよびC10-C40異性化NAOとは異なるアルキル基を有する1種以上のアルキルフェノールから作られる。
【0033】
本開示の一態様では、アルキルヒドロキシベンゾエートの異性化NAOは、約0.16の異性化レベルを有し、約20~約24個の炭素原子を有する。
【0034】
本開示の一態様では、アルキルヒドロキシベンゾエートの異性化NAOは、約0.26の異性化レベルを有し、約20~約24個の炭素原子を有する。
【0035】
本開示の一態様では、潤滑油組成物は、活性成分基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で約0.01~2.0重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%含む。
【0036】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む潤滑油組成物は、自動車エンジン油組成物、ガスエンジン油組成物、デュアル燃料エンジン油組成物、モバイルガスエンジン油組成物、または機関車エンジン油組成物である。
【0037】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む潤滑油組成物は、自動車および産業用途用の機能性流体、例えばトランスミッション油、油圧油、トラクター流体、ギア油などである。
【0038】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む潤滑油組成物は、マルチグレードオイルまたはモノグレードオイルである。
【0039】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で10~300(mgKOH/gm)のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む潤滑油組成物は、クランクケース、ギア、ならびにクラッチを潤滑する。
【0040】
有機モリブデン化合物
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン、炭素および水素原子を含むが、さらに、硫黄、リン、窒素および/または酸素原子もまた含むことができる。適切な有機モリブデン化合物には、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、および種々の有機モリブデン錯体、例えば、カルボン酸モリブデン、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどが含まれ、これらは、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムを脂肪、グリセリドもしくは脂肪酸、または脂肪酸誘導体(例えば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得ることができる。「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖を意味し、典型的には、炭素の直鎖を意味する。
【0041】
一実施形態では、モリブデンアミンは、モリブデンスクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物を構造(式)(3)もしくは(4)のポリアミンまたはそれらの混合物のアルキルまたはアルケニルスクシンイミドと反応させることを含むプロセスによって調製され、式中、Rは、C
24~C
350(例えば、C
70~C
128)アルキルまたはアルケニル基であり;R’は、2~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xは1から11であり、yは1~10である。
【化1】
【0042】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性」とは、モリブデン化合物がASTM D664またはD2896で測定される塩基性窒素化合物と反応することを意味する。一般的に、酸性モリブデン化合物は六価である。適切なモリブデン化合物の代表例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のモリブデン酸アルカリ金属塩ならびに他のモリブデン塩、例えば水素塩、(例えば、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6などが含まれる。
【0043】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用することができるスクシンイミドは、多数の文献に開示されており、当技術分野で周知である。「スクシンイミド」という技術用語に包含される特定の基本的な種類のスクシンイミドおよび関連物質は、米国特許第3,172,892号;第3,219,666号;および第3,272,746号に教示されている。「スクシンイミド」という用語は、当技術分野では、形成することができるアミド、イミド、およびアミジン種の多くもまた含むと理解される。しかしながら、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、一般的に、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸または無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸とトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびそれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンとを反応させることにより調製されるものである。
【0044】
モリブデン-スクシンイミド錯体を、適切な圧力および120℃を超えない温度にて硫黄源で後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を得ることができる。硫化ステップは、約0.5~5時間(例えば、0.5~2時間)行なうことができる。適切な硫黄源には、元素硫黄、硫化水素、五硫化リン、式R2Sxの有機ポリスルフィド(式中、Rはヒドロカルビル(例えば、C1~C10アルキル)であり、xは少なくとも3である。)、C1~C10メルカプタン、無機硫化物およびポリスルフィド、チオアセトアミド、ならびにチオ尿素が含まれる。
【0045】
モリブデン化合物は、潤滑油組成物に対して、モリブデンの重量で、少なくとも50ppm、少なくとも70ppm、少なくとも90ppm、少なくとも110ppm、少なくとも130ppm、少なくとも150ppm、または少なくとも200ppm(例えば、50~1500ppm、70~1500ppm、90~1000ppm、110~1000ppm、130~1000ppm、150~1000ppm、または200~1000ppm)を提供する量で使用される
【0046】
摩擦調整剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、可動部品間の摩擦を低下させることができる摩擦調整剤を含むことができる。当業者に知られている任意の摩擦調整剤を潤滑油組成物に使用することができる。適切な摩擦調整剤の非限定的な例には、脂肪カルボン酸;脂肪カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸エステル、アミド、金属塩など);モノ-、ジ-もしくはトリ-アルキル置換リン酸またはホスホン酸;モノ-、ジ-もしくはトリ-アルキル置換リン酸もしくはホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩など);モノ-、ジ-もしくはトリ-アルキル置換アミン;モノ-もしくはジ-アルキル置換アミドおよびそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、脂肪族アミン、エトキシル化脂肪族アミン、脂肪族カルボン酸アミド、エトキシル化脂肪族エーテルアミン、脂肪族カルボン酸、グリセロールエステル、脂肪族カルボン酸エステルアミド、脂肪イミダゾリン、脂肪第三級アミンからなる群から選択され、脂肪族基または脂肪基には、化合物を適切に油溶性にするために、約8個を超える炭素原子が含まれる。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は脂肪酸誘導体である。いくつかの実施形態では、脂肪酸誘導体は、脂肪酸エステル、ホウ素化脂肪酸エステル、またはアミドである。他の実施形態では、摩擦調整剤には、脂肪族コハク酸または無水物とアンモニアまたは第一級アミンとを反応させることにより形成される脂肪族置換スクシンイミドが含まれる。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約3重量%で変化させ得る。
【0047】
耐摩耗剤
耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。適切な耐摩耗剤には、式(式1)のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が含まれる:
Zn[S-P(=S)(OR1)(OR2)]2 式1
式中、R1およびR2は、1~18個(例えば、2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式ラジカルなどのラジカルを含むヒドロカルビルラジカルであり、同じか(of)異なってもよい。R1およびR2基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキル基は、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の全数(すなわち、R1+R2)は少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第1級、第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。
【0048】
ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。
【0049】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムサリチレート清浄剤を含有する潤滑油組成物は、酸化防止剤化合物をさらに含む。一実施形態では、酸化防止剤はジフェニルアミン酸化防止剤である。別の実施形態では、酸化防止剤はヒンダードフェノール酸化防止剤である。さらに別の実施形態では、酸化防止剤は、ジフェニルアミン酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤との組み合わせである。
【0050】
酸化防止剤
酸化防止剤は、使用中に鉱油が劣化する傾向を低減する。酸化劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス状の堆積物、および粘度の増加によって証拠付けられ得る。適切な酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、硫化アルキルフェノール、およびそれらのアルカリおよびアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0051】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、多くの場合、立体障害基としてセカンダリブチルおよび/またはターシャリブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には線状または分岐状アルキル)および/または別の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;および4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。他の有用なヒンダードフェノール酸化防止剤には、CibaからのIRGANOX(登録商標)L-135などの2,6-ジアルキル-フェノールプロピオン酸エステル誘導体、および4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)および4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのビスフェノール系酸化防止剤が含まれる。
【0052】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、1つのアミン窒素に直接結合した少なくとも2つの芳香族基を有する。典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。本明細書で有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例には、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-(4-tert-オクチル(octy)フェニル)-1-ナフチルアミン、およびN-(4-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミンが含まれる。
【0053】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば、0.1~2重量%)で存在し得る。
【0054】
分散剤
分散剤は、エンジン操作中の酸化から生じる油に不溶性の物質を懸濁液中に維持し、これにより、スラッジの凝集および沈殿または金属部品上への堆積を防止する。本明細書で有用な分散剤には、ガソリンおよびディーゼルエンジンで使用する際の堆積物の形成を低減するのに有効であることが知られている窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤が含まれる。
【0055】
適切な分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、ならびにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒドおよびポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が含まれる。ポリアミンとヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物も適している。これらの分散剤の混合物も使用することがでる。
【0056】
基本的な窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、その調製方法は特許文献に多く記載されている。好ましい分散剤は、アルケニル置換基が好ましくは40個を超える炭素原子の長鎖である、アルケニルスクシンイミドおよびスクシンアミドである。これらの物質は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質をアミン官能基含有分子と反応させることにより容易に生成される。適切なアミンの例は、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミンなどのポリアミンである。
【0057】
特に好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸およびポリアルキレンポリアミン、例えば式2のポリエチレンポリアミンから形成されるポリイソブテニルスクシンイミドである:
NH2(CH2CH2NH)zH 式2
式中、zは1~11である。ポリイソブテニル基はポリイソブテンから誘導され、好ましくは700~3000ダルトン(例えば、900~2500ダルトン)の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。例えば、ポリイソブテニルスクシンイミドは、900から2500ダルトンのMnを有するポリイソブテニル基から誘導されるビススクシンイミドであってもよい。
【0058】
当該技術分野で知られているように、分散剤は(例えば、ホウ素化剤または環状カルボネートなどで)後処理されてもよい。
【0059】
窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤は塩基性であり、追加的な硫酸化灰を導入することなく、それらが添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。
【0060】
分散剤は、潤滑油組成物の0.1~10重量%(例えば、2~5重量%)で存在し得る。
【0061】
追加的な清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、活性成分基準で10~800、10~700、30~690、100~600、150~600、150~500、200~450mgKOH/gのTBNを有する1種以上の過塩基性清浄剤をさらに含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、使用することができる清浄剤には、油溶性スルホネート、過塩基性スルホネート、硫黄非含有フェネート、硫化フェネート、サリキサレート、サリチレート、サリゲニン、複合清浄剤およびナフテネート清浄剤、ならびに金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウム(これらは両方とも潤滑剤に使用される清浄剤に存在する)、ならびに、ナトリウムとカルシウムおよび/またはマグネシウムとの混合物である。
【0063】
過塩基性金属清浄剤は、一般的に、炭化水素、清浄剤酸、例えば、スルホン酸、アルキルヒドロキシベンゾエートなど、金属の酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)および促進剤、例えばキシレン、メタノールおよび水の混合物を炭酸化することによって製造される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、炭酸化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムは気体二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は、過剰のCaOまたはCa(OH)2で中和されて、スルホネートを形成する。
【0064】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、活性成分基準で100未満のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約100であり得る。別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約80であり得る。過塩基性清浄剤は中過塩基性、例えば、約100~約250のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約100~約200であり得る。別の実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約125~約175であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、高過塩基性塩のTBNは、活性成分基準で約250~約800であり得る。
【0065】
一実施形態では、清浄剤は、1種以上のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、1~4個、好ましくは1~3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシおよびポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなどが含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0066】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10~約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導される。使用されるオレフィンは、線状、異性化線状、分岐状または部分的に分岐状の線状であり得る。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐オレフィンの混合物、部分的に分岐状の線状オレフィンの混合物、または前述のいずれかの混合物であり得る。
【0067】
一実施形態では、使用され得る線状オレフィンの混合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体または液体触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0068】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ土類金属塩洗浄剤のアルキル基などのアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩内に含まれるアルキル基の少なくとも約50モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%は、C20以上である。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、アルキル基がC20~約C28ノルマルアルファオレフィンであるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導されるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩である。別の実施形態では、アルキル基は少なくとも2種のアルキル化フェノールから誘導される。少なくとも2種のアルキルフェノールのうちの少なくとも1種にあるアルキル基は、異性化アルファオレフィンから誘導される。別のアルキルフェノールにあるアルキル基は、分岐状または部分的に分岐状のオレフィン、高度に異性化されたオレフィンまたはそれらの混合物から誘導され得る。
【0069】
別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、20~40個の炭素原子、好ましくは20~28個の炭素原子、より好ましくは20~24個の炭素原子を有する異性化NAO(isomerized 20-24 NAO)を有するアルキル基から誘導されるサリチレートである。
【0070】
スルホネートは、典型的には、アルキル置換芳香族炭化水素、例えば、石油の留分から又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるもののスルホン化によって得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化は、触媒の存在下で、約3~70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートには、通常、アルキル置換芳香族部分1つ当たり約9~約80個以上の炭素原子、好ましくは約16~約60個の炭素原子、好ましくは約16~30個の炭素原子、およびより好ましくは20~24個の炭素原子が含まれる。
【0071】
フェノールの金属塩および硫化フェノールの金属塩(硫化フェネート清浄剤である)は、酸化物または水酸化物などの適切な金属化合物との反応によって調製され、中性または過塩基性生成物は、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを硫黄または硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄などの硫黄含有化合物と反応させることにより調製することができ、一般的には2つ以上のフェノールが硫黄含有ブリッジで架橋された化合物の混合物である生成物が形成される。
【0072】
硫化フェネートの一般的な調製に関する追加的な詳細は、例えば、米国特許第2,680,096号;第3,178,368号、第3,801,507号、および第8,580,717号に見出すことができ、これらの内容を参照により本明細書に援用する。
【0073】
ここで、本プロセスで使用される反応物および試薬を詳細に検討すると、先ず硫黄のすべての同素体形態を使用することができる。硫黄は、溶融硫黄として、または固体(例えば、粉末または微粒子)として、または適合性のある炭化水素液体中の固体懸濁液として使用することができる。
【0074】
例えば、酸化カルシウムと比べて取り扱いが便利であり、さらに優れた結果が得られるため、カルシウム塩基として水酸化カルシウムを使用することが望ましい。他のカルシウム塩基、例えばカルシウムアルコキシドもまた使用することができる。
【0075】
使用できる適切なアルキルフェノールは、アルキル置換基が、得られる過塩基性硫化カルシウムアルキルフェネート組成物を油溶性にするのに十分な数の炭素原子を含むものである。油溶性は、単一の長鎖アルキル置換体またはアルキル置換基の組み合わせによって得ることができる。典型的には、使用されるアルキルフェノールは、種々のアルキルフェノール、例えば、C20~C24アルキルフェノールの混合物である。
【0076】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のアルファオレフィンの異性化レベル(l)を有する異性化アルファオレフィンアルキル基から誘導される。一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、約9~約80個の炭素原子を有する分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物であるアルキル基から誘導される。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約40個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約18個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約12個の炭素原子を有する。
【0077】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、蒸留カシューナッツ殻液(CNSL)または水素化蒸留カシューナッツ殻液を含む。蒸留CNSLは、生分解性のメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物であり、該ヒドロカルビル基は、線状かつ不飽和であり、カルダノールを含む。蒸留CNSLの接触水素化により、3-ペンタデシルフェノールが主に豊富なメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0078】
アルキルフェノールは、パラアルキルフェノール、メタアルキルフェノールまたはオルトアルキルフェノールであり得る。p-アルキルフェノールは高度に過塩基性のカルシウム硫化アルキルフェネートの調製を促進すると考えられているため、過塩基性生成物を望む場合、アルキルフェノールは、好ましくは主にパラアルキルフェノールであり、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約45モルパーセント以下であり、より好ましくは、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約35モルパーセント以下である。アルキルヒドロキシトルエンまたはキシレン、および少なくとも1つの長鎖アルキル置換基に加えて1つ以上のアルキル置換基を有する他のアルキルフェノールもまた使用できる。蒸留カシューナッツ殻液の場合、蒸留CNSLの接触水素化により、メタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0079】
一実施形態では、1種以上の過塩基性洗浄剤は、上記の少なくとも2種の界面活性剤から誘導される界面活性剤系を含む当技術分野で知られている複合またはハイブリッド清浄剤であり得る。
【0080】
一般的に、清浄剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約50重量%、または約0.05重量%~約25重量%、または約0.1重量%~約20重量%、または約0.01~15重量%であり得る。
【0081】
追加的な共添加剤
本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物のいずれかの所望の特性を付与または改善することができる他の従来の添加剤もまた含有することができ、これらの添加剤は、潤滑油組成物中に分散または溶解されている。本明細書に開示する潤滑油組成物には、当業者に知られている任意の添加剤を使用することができる。いくつかの適切な添加剤は、Mortierらの「潤滑剤の化学及び技術(Chemistry and Technology of Lubricats)」第2版、ロンドン、Springer、(1996年);及びLeslie R.Rudnickの「潤滑剤添加剤:化学及び応用(Lubricat Additives:Chemistry and Applications)」ニューヨーク、Marcel Dekker、(2003年)に記載されており、これらの両方を参照により本明細書に援用する。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、金属清浄剤等の清浄剤、防錆剤、抗曇り剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など、およびそれらの混合物をブレンドすることができる。種々の添加剤が知られており、そして市販されている。これらの添加剤又はこれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により、本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0082】
潤滑油配合物の調製では、炭化水素油、例えば、鉱物潤滑油、または他の適切な溶媒に、添加剤を10~100重量%の活性成分濃縮物の形態で導入することが一般的な慣行である。
【0083】
通常、これらの濃縮物は、最終的な潤滑剤、例えば、クランクケースモーターオイルを形成する際、添加剤パッケージの1重量部あたり3~100、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈することができる。濃縮物の目的は、もちろん、種々の物質の取り扱いの困難さおよび煩わしさを少なくすること、さらに、最終的なブレンドでの溶解または分散を促進することである。
【0084】
前述の添加剤のそれぞれは、使用の際、潤滑剤に所望の特性を付与するのに機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量となる。
【0085】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用の際、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の全量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0086】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることがある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を製造するために、これに添加剤および可能な他の油がブレンドされる。基油は、濃縮物を製造するのに、ならびにそれから潤滑油組成物を製造するのに有用であり、天然および合成の潤滑油およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0087】
天然油には、動物性および植物性油、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製された溶媒処理された鉱物潤滑油が含まれる。石炭またはシェールに由来する潤滑粘度の油も有用な基油である。
【0088】
合成潤滑油には、重合および共重合(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン;ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および同族体などの炭化水素油が含まれる。
【0089】
別の適切なクラスの合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2-エチルヘキサン酸2モルとを反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0090】
合成油として有用なエステルには、C5~C12モノカルボン酸とポリオール、およびポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールとから作られるものも含まれる。
【0091】
基油は、Fischer-Tropsch法により合成された炭化水素から誘導することができる。Fischer-Tropsch法で合成された炭化水素は、Fischer-Tropsch触媒を使用して、H2とCOを含む合成ガスから作られる。そのような炭化水素は、典型的には、基油として有用であるためには、さらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、当業者に知られているプロセスを使用して、水素異性化;水素化分解および水素異性化;脱ろう;または水素異性化および脱ろうをされ得る。
【0092】
本発明の潤滑油組成物には、未精製油、精製油および再精製油を使用することができる。未精製油は、更なる精製処理をすることなく天然又は合成供給源から直接得られるものである。たとえば、レトルト処理操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理をすることなく使用されるエステル油が未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油に似ている。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、ろ過および浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に知られている。
【0093】
再精製油は、既に使用されている精製油に適用され、精製油を得るために使用されるプロセスと類似のプロセスによって得られる。そのような再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、多くの場合、使用済み添加剤および油分解生成物を除去(approval)するための技術によってさらに処理される。
【0094】
したがって、本潤滑油組成物を製造するのに使用できる基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(API出版物1509)で指定されているグループI-Vの基油のいずれかから選択できる。このような基油グループを、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0095】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油およびそれらの組み合わせに対応する任意の種類、好ましくは、並外れた揮発性、安定性、ビスコメトリック性および清浄性の特性のためにグループIIIからグループVの油である。
【0096】
基油とも呼ばれる本開示の潤滑油組成物で使用するための潤滑粘度の油は、典型的には、主要量、例えば、該組成物の全重量に基づいて、50重量%を超える量、好ましくは約70重量%を超える量、より好ましくは約80~約99.5重量%、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造者により同じ仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、且つ独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味するように理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えば、エンジン油、船舶用シリンダー油、機能性流体、例えば、油圧油、ギア油、トランスミッション流体などの任意のそして全てのこのような用途に対する潤滑油組成物を配合する際に使用される潤滑粘度の任意の現在知られている又は後に発見される油であり得る。加えて、本明細書で使用するための基油は、任意選択的に、粘度指数向上剤、例えば、ポリマー性アルキルメタクリレート;オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマーなど;およびそれらの混合物を含有し得る。
【0097】
当業者には容易に分かるだろうが、基油の粘度は、その用途に依存する。従って、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常は、摂氏100度(100℃)で約2~約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般的に、エンジン油として個々に使用される基油は、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、そして最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の使用目的及び最終的な油中の添加剤に応じて選択され又はブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、又は15W-40、30、40などのSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物が得られる。
【0098】
潤滑油組成物
一般に、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.7重量%以下であり、例えば硫黄のレベルは、約0.01重量%~約0.70重量%、0.01~0.6重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.4重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.2重量%、0.01重量%~0.10重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.60重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下である。
【0099】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.12重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.12重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.11重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.11重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.10重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.10重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.09重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.09重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.08重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.08重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.07重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.07重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.05重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.05重量%である。
【0100】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約1.60重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約1.60重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約1.00重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約1.00重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.80重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約0.80重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.60重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10から約0.60重量%である。
【0101】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されているが、記載された具体的な実施形態に本発明を限定する意図はない。断りがない限り、すべての部および百分率は重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられる場合、記載した範囲外側にある実施形態は依然として本発明の範囲内に含まれ得ることが理解されるべきである。各例で説明されている具体的な細目は、本発明の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、単に例示を目的とする意図であり、本開示の範囲を決して限定しない。
【0103】
異性化レベルは、NMR法によって測定した。
異性化レベル(I)およびNMR法
【0104】
オレフィンの異性化レベル(I)は、水素-1(1H)NMRにより測定した。NMRスペクトルは、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た。
【0105】
異性化レベル(I)は、メチレン骨格基(-CH2-)(化学シフト1.01~1.38ppm)に結合したメチル基(-CH3)(化学シフト0.3~1.01ppm)の相対的な量を表し、以下に示す方程式(1)により定義される、
I=m/(m+n) 方程式(1)
式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である。
【0106】
ベースライン配合物1
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤とを含有する15W-40潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛との混合物;
(3)ジフェニルアミン酸化防止剤;
(4)硫黄含有モリブデンスクシンイミドをモリブデン含有量換算で45ppm;および
(5)消泡剤。
【0107】
ベースライン配合物2
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤とを含有する15W-40潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(3)ジフェニルアミン酸化防止剤;
(4)硫黄含有モリブデンスクシンイミドをモリブデン含有量換算で380ppm;および
(5)消泡剤。
【0108】
ベースライン配合物3
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤とを含有する15W-40潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(3)ジフェニルアミン酸化防止剤;
(4)硫黄非含有モリブデンスクシンイミドをモリブデン含有量換算で380ppm;および
(5)消泡剤。
【0109】
実施例A
アルキル化フェノールおよびアルキル化Caアルキルヒドロキシベンゾエートを、CP Chem.から入手可能なC20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,993,499号と実質的に同じ方法で調製した。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16である。得られたアルキル化アルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約225mgKOH/gmのTBNおよび8重量%のCa含有量を有する。
【0110】
実施例B
アルキル化フェノールおよびアルキル化Caアルキルヒドロキシベンゾエートを、CP Chem.から入手可能なC20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,993,499号と実質的に同じ方法で調製した。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16である。得られたアルキル化アルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約120mgKOH/gmのTBNおよび4.2重量%のCa含有量を有する。
【0111】
比較例A
アルキル化フェノールおよびアルキル化Caアルキルヒドロキシベンゾエートを、CP Chem.から入手可能なC20-28ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,030,258号と実質的に同じ方法で調製した。得られたアルキル化アルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約230(mgKOH/gm)のTBNおよび8重量%のCa含有量を有する。
【0112】
比較例B
アルキル化アルキルヒドロキシベンゾエートを、C14~C18ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから調製し、これは、オイルフリー基準で約300mgKOH/gmのTBNおよび約10.6重量%のCa含有量を有する。
【0113】
比較例C
アルキル化アルキルヒドロキシベンゾエートは、C20~C28ノルマルアルファオレフィンから誘導したアルキル基を有するアルキルフェノールから調製し、これは、オイルフリー基準で約115mgKOH/gmのTBNおよび約4重量%のCa含有量を有する。
【0114】
比較例D
オイルフリー基準で約700mgKOH/gmのTBNおよび約26重量%のCa含有量を有する高度に過塩基性のCaスルホネート。
【0115】
実施例1
ベースライン配合物1に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.21重量%のS、0.1重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0116】
比較例1
ベースライン配合物1に、比較例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.22重量%のS、0.1重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0117】
比較例2
ベースライン配合物1に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.22重量%のS、0.1重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0118】
実施例2
ベースライン配合物2に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.17重量%のS、0.07重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0119】
比較例3
ベースライン配合物2に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.16重量%のS、0.07重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0120】
実施例3
ベースライン配合物3に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で、0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.17重量%のS、0.07重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0121】
比較例4
ベースライン配合物3に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.35重量%添加した。潤滑油組成物は、0.16重量%のS、0.07重量%のP、および1.3重量%の灰分を有する。
【0122】
実施例1~3、および比較例1~4を、以下に記載されるTEOST MHT4およびHTCBT試験で評価した。結果を表2に示す。
【0123】
TEOST MHT4
ASTM D7097 TEOST MHT4試験は、ピストンリングベルトおよび上部ピストンクラウン領域におけるエンジン油の堆積物形成傾向を予測するように設計されている。TEOST MHT手順とTU3MHプジョーエンジン試験の間には、堆積物形成における相関関係が見られた。この試験では、285°Cの酸化および触媒条件下で、特別に形成した試験ロッド上を繰り返し通過する8.5gのエンジン油に曝露させることにより、該ロッド上に薄膜状に形成された堆積物の質量を測定する。酸化条件下でのエンジン油の堆積物形成傾向は、少量の油試料(8.4g)と非常に少量の有機金属触媒(0.1g)とを含む油触媒混合物を循環させることによって測定する。この混合物は、TEOST MHT装置内で、特別な巻線デポジッターロッド上の最高温度の場所が285℃の制御された温度になるように電流により加熱された該ロッド上に、24時間循環される。試験の前後でロッドの重量を測定する。35mgの堆積物重量は、合格/不合格の基準と見なされる。
【0124】
HTCBT
種々の金属、特にカムフォロアおよびベアリングで一般的に使用される鉛と銅の合金を腐食させる傾向を判定するために、ASTM D6594 HTCBT試験を使用して、ディーゼルエンジン潤滑剤を試験する。銅、鉛、スズおよびリン青銅の4つの金属試験片を、測定量のエンジン油に浸す。上昇した温度(170℃)の油に、一定時間(168時間)、空気(5リットル/時)を吹き込む。試験が完了すると、銅試験片とストレスを受けた油を検査して、腐食と腐食生成物をそれぞれ検出する。新しい油およびストレスを受けた油中の銅、鉛、およびスズの濃度と、それぞれの金属濃度の変化を記載する。合格するためには、鉛の濃度は120ppmを超えてはならず、銅は20ppmである必要がある。
【表2】
【0125】
C20~C24異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートは、同等のCaレベルで、非異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートよりも、驚くほど良好な腐食抑制および堆積物抑制性能を有する。この効果は、有効なレベルのモリブデン化合物の存在下で強化される。
【0126】
ベースライン配合物4
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含有する5W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛および第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(4)モリブデンスクシンイミドとジフェニルアミン酸化防止剤の混合物;および
(5)消泡剤。
【0127】
実施例4
ベースライン配合物4に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.18重量%添加した。潤滑油組成物は、0.16重量%のS、0.077重量%のP、および0.75重量%の灰分を有する。
【0128】
実施例5
ベースライン配合物4に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.18重量%およびホウ素化グリセロールモノオレエート(Glymo)摩擦調整剤をホウ素含有量換算で68ppm添加した。潤滑油組成物は、0.16重量%のS、0.077重量%のP、および0.76重量%の灰分を有する。
【0129】
比較例8
ベースライン配合物4に、高度に過塩基性のCaスルホネート清浄剤をCa含有量換算で0.18重量%およびホウ素化グリセロールモノオレエート(Glymo)摩擦調整剤をB含有量換算で68ppm添加した。潤滑油組成物は、0.18重量%のS、0.077重量%のP、および0.75重量%の灰分を有する。
【0130】
比較例9
ベースライン配合物4に、比較例DをCa含有量換算で0.18重量%添加した。潤滑油組成物は、0.18重量%のS、0.077重量%のP、および0.76重量%の灰分を有する。
【0131】
MTM試験
実施例4から5、および比較例8および9について、ミニトラクションマシン(MTM)ベンチ試験で摩擦性能を試験した。MTMはPCS Instrumentsによって製造され、回転ディスク(52100スチール)に対してボール(0.75インチ8620スチールボール)の荷重をかけて動作させる。条件は、約10~30ニュートンの荷重、約10~2000mm/sの速度および約125~150℃の温度を使用する。このベンチ試験では、転がり/滑り接触下での配合物の境界摩擦性能を、低速トラクション係数によって測定する。低速トラクション係数は、15~20mm/sの第二ストライベック(Stribeck)の平均トラクション係数である。低速トラクション係数が低いほど、オイルの境界摩擦性能が向上する。結果を表3に示す。
【0132】
【0133】
C20~C24異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートは、同等のCaレベルで、高度に過塩基性のCaスルホネートと類似の境界摩擦性能を有する。しかしながら、C20~C24異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートと摩擦調整剤との組み合わせは、高度に過塩基性のCaスルホネートと摩擦調整剤の組み合わせまたはアルキルヒドロキシベンゾエート単独の場合よりも、はるかに良好な境界摩擦性能を有し、アルキルヒドロキシベンゾエートと摩擦調整剤との相乗効果を示す。
【0134】
ベースライン配合物5
主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含有する鉄道潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)フェネート系清浄剤の混合物;
(3)モリブデン(Moly)スクシンイミドとジフェニルアミン酸化防止剤との混合物;
(4)摩擦調整剤;
(5)消泡剤;
(6)粘度調整剤。
【0135】
実施例6
ベースライン配合物5に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.05重量%添加した。
【0136】
比較例10
ベースライン配合物5に、比較例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.04重量%添加した。
【0137】
実施例6および比較例10を、以下に記載されるように、B2-7酸化試験およびB72-2Ali Silver潤滑試験で評価した。
【0138】
B2-7試験
B2-7試験は、以下の条件を用いる酸化試験である:
【表4】
【0139】
B2-7試験に従って、試験する油を、酸素をバブリングしながら300°Fで96時間加熱する。銅、鉄及び鉛の試験片を、油中に吊るす。50ミリリットルの試料を48時間、72時間及び96時間で採取する。48時間及び72時間での試料に新鮮な油を補充する。油試験試料を塩基価、酸価、pHおよび鉛について評価する。
比較例10および本発明の実施例6を全塩基価(TBN)の減少について評価した。結果を表4に示す。
【表5】
【0140】
TBN低下の数値が大きいほど、油中の塩基の減少が大きいことを示しており、好ましくないと考えられる。機関車用ディーゼルエンジンで長期間使用する油は、TBNを保持するのが理想的である。
【0141】
結果は、C20~C24異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、非異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤と比較した場合、より良好なBN保持性をもたらすことを示す。
【0142】
ベースライン配合物6
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含む5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)ホウ素化ビススクシンイミド;
(2)炭酸エチレン処理ビススクシンイミド;
(3)高度に過塩基性のCaスルホネート清浄剤;
(4)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛との混合物;
(5)モリブデン(Moly)スクシンイミドとジフェニルアミン酸化防止剤との混合物;
(6)摩擦調整剤;
(7)消泡剤;
(8)流動点降下剤;
(9)粘度調整剤。
【0143】
実施例7
ベースライン配合物6に、実施例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.1重量%添加した。
【0144】
比較例11
ベースライン配合物6に、比較例CのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.1重量%添加した。
【0145】
実施例7および比較例11について、以下に記載されるようにMRV試験で評価した。
MRV(ミニ回転粘度計)
ASTM D4684 MRV試験には、-10から-40℃の最終的な試験温度まで、45時間を超えない期間にわたって制御された速度で冷却した後の、エンジン油の降伏応力(0<Y<35 最大)および粘度(60,000cp 最大)の測定が含まれる。MRV試験では、エンジン油試料を80℃に保持し、その後、プログラムされた冷却速度で最終的な試験温度に冷却する。低いトルクをローターシャフトに加えて、降伏応力を測定する。次に、より高いトルクを加えて、試料の見かけの粘度を測定する。粘度測定は、0.4~15s
-1のせん断速度にわたって525Paのせん断応力で行う。
【表6】
【0146】
C20~C24異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートは、同等のCaレベルで、非異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートよりも、驚くほど良好な低温性能を有する。
【0147】
ベースライン配合物7
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含有する5W-20潤滑油組成物を調製した:
(1)ホウ素化ビススクシンイミド;
(2)炭酸エチレン処理ビススクシンイミド;
(3)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛との混合物;
(4)モリブデン(Moly)スクシンイミドとジフェニルアミン酸化防止剤との混合物;
(5)摩擦調整剤;
(6)消泡剤;
(7)流動点降下剤;
(8)粘度調整剤。
【0148】
実施例8
(9)ベースライン配合物7に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.06重量%および比較例DのものをCa含有量換算で0.12重量%添加した。
【0149】
実施例9
(10)ベースライン配合物7に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.12重量%および比較例DのものをCa含有量換算で0.06重量%添加した。
【0150】
比較例12
(11)ベースライン配合物7に、比較例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.18重量%添加した。
【0151】
比較例13
(12)ベースライン配合物7に、比較例DのものをCa含有量換算で0.18重量%添加した。
(13)実施例8、9ならびに比較例12および13について、以下に記載されるようにTE77試験で評価した。
【0152】
Plint TE 77高周波摩擦機
実施例8および9、ならびに比較例12および13の境界摩擦係数測定値を、Plint TE-77高周波摩擦機(Phoenix Tribologyから市販されている)を使用して得た。
各試験用の5mLの試験油の試料を装置に入れた。TE-77を100℃で実行し、56Nの荷重を試験片にかけた。往復速度を10Hzから1Hzにスイープし、摩擦係数データを試験の間、収集した。摩擦係数の測定値を表6に示す。
【表7】
【0153】
1~2Hzの往復速度でこれらの油について収集された摩擦係数データは、境界摩擦レジームにある。
低粘度エンジン油の設計では、境界摩擦レジームが重要な考慮事項である。2つの表面を分離する流体膜が表面の凹凸の高さより薄くなると、境界摩擦が発生する。結果として生じる表面同士の接触は、エンジンに望ましくない高い摩擦と劣悪な燃費をもたらす。エンジンの境界摩擦は、高負荷、低エンジン速度、および低粘度油で発生し得る。低粘度のエンジン油の場合、油が薄く、層(film)の堅牢性が低いために、エンジンは、境界摩擦状態での操作の影響を受けやすくなる。基油ではなく添加剤が境界条件下での摩擦係数に影響するため、TE-77の境界条件下でより低い摩擦係数を示す添加剤により、エンジンにおける低粘度油にて優れた燃費が得られる。
【0154】
実施例8および9からの境界摩擦レジームの結果に基づいて、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを過塩基性Caスルホネートと一緒に使用すると相乗効果が得られることが明らかである。
【0155】
ベースライン配合物8
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤を含有する5W-30潤滑油組成物を調製した:
(1)炭酸エチレン処理ビススクシンイミド;
(2)高度に過塩基性のCaスルホネート清浄剤
(3)第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(4)ジフェニルアミン酸化防止剤
(5)消泡剤
(6)流動点降下剤
(7)粘度調整剤
【0156】
実施例10
(8)ベースライン配合物8に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.2重量%添加した。
【0157】
比較例13
(9)ベースライン配合物8に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエートをCa含有量換算で0.2重量%添加した。
【0158】
シーケンスIVA試験
実施例10および比較例13の潤滑油組成物を、ガソリンエンジンにおけるバルブトラム摩耗について評価した:シーケンスIVA、ASTM D 6891、平均カム摩耗(7つの位置での平均、μm)。この試験の合格限界は最大90μmである。
【表8】
【0159】
C20~C24異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートは、同等のCaレベルで、非異性化NAOから誘導されるCaアルキルヒドロキシベンゾエートよりも驚くほど良好なバルブトラム摩耗性能を有する。