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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】消泡装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/02 20060101AFI20230719BHJP
【FI】
B01D19/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010704
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021115525
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】520032572
【氏名又は名称】日本マニュファクチャリングサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】伊豫部 亨
(72)【発明者】
【氏名】渡部 繁信
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207294770(CN,U)
【文献】特公昭38-020212(JP,B1)
【文献】特開2004-208580(JP,A)
【文献】実開昭53-110995(JP,U)
【文献】実開昭53-060364(JP,U)
【文献】特開2014-064986(JP,A)
【文献】特開平10-015775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/02
B23Q 11/00
B23Q 11/10
C12M 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台ユニットと、
前記基台ユニットに支持されたモータと、
前記モータに接続されると共に先端を下方に向けた状態で前記基台ユニットの下方に延出されたブラシと
を備え、
前記ブラシは、
前記モータ側を根本部とされた軸部と、
前記軸部から前記軸部の径方向に沿って突出された複数の毛材と
を備え、
前記軸部の先端部側領域に配置された前記毛材の長さ寸法と、前記軸部の根本部側領域に配置された前記毛材の長さ寸法とよりも、前記先端部側領域と前記根本部側領域との間に位置する中央領域に配置された前記毛材の長さ寸法が短い
ことを特徴とする消泡装置。
【請求項2】
基台ユニットと、
前記基台ユニットに支持されたモータと、
前記モータに接続されると共に先端を下方に向けた状態で前記基台ユニットの下方に延出されたブラシと
を備え、
前記ブラシは、
前記モータ側を根本部とされた軸部と、
前記軸部から前記軸部の径方向に沿って突出された複数の毛材と
を備え、
前記複数の毛材は、前記軸部を中心とする螺旋状に配列されている
ことを特徴とする消泡装置。
【請求項3】
前記複数の毛材は、前記ブラシが回転されることで泡を下方に向けて移動可能な方向に巻かれた螺旋状に配列されていることを特徴とする請求項記載の消泡装置。
【請求項4】
前記基台ユニットは、
前記モータが固定された上側基台と、
前記上側基台の下方に配置された下側基台と、
前記上側基台と前記下側基台とに接続されると共に前記上側基台と前記下側基台との離間距離を調節する離間距離調節部と
を備えることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の消泡装置。
【請求項5】
前記モータの回転数を変更可能とするモータ制御部を備えることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の消泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属加工等においては、潤滑剤や冷却材として機能する加工液を連続的に加工位置に対して供給しながら加工を行う。このような加工液は、例えば濾過装置によってスラッジを分離された後に、再度加工位置に供給される。つまり、加工液は、例えば特許文献1に開示されているように、濾過装置を介して循環されている。このような加工液を循環する加工液循環システムは、フィルタの他に、加工液を圧送する供給ポンプや、加工液を貯留する加工液タンク等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-29636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述のように循環される加工液は、供給ポンプの圧力が高い場合、フィルタの通過した場合、循環流路が狭隘化している場合、加工液タンクの液面の上方位置から加工液タンクに返流される場合等、様々な状況において発泡する。このように発生した泡は、加工液タンクに貯留された加工液の液面上に堆積する。このような泡の堆積量が経時的に増加すると、加工液タンクから泡が溢れる可能性がある。このため、従来においては、加工液タンクに貯留する加工液の量を泡の堆積を想定して予め少なくしておく等の対策をする必要があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、液体を貯留するタンクにて泡の堆積を抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、消泡装置であって、基台ユニットと、上記基台ユニットに支持されたモータと、上記モータに接続されると共に先端を下方に向けた状態で上記基台ユニットの下方に延出されたブラシとを備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ブラシが、上記モータ側を根本部とされた軸部と、上記軸部から上記軸部の径方向に沿って突出された複数の毛材とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記軸部の先端部側領域に配置された上記毛材の長さ寸法と、上記軸部の根本部側領域に配置された上記毛材の長さ寸法とよりも、上記先端部側領域と上記根本部側領域との間に位置する中央領域に配置された上記毛材の長さ寸法が短いという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記複数の毛材が、上記軸部を中心とする螺旋状に配列されているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記複数の毛材が、上記ブラシが回転されることで泡を下方に向けて移動可能な方向に巻かれた螺旋状に配列されているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記基台ユニットが、上記モータが固定された上側基台と、上記上側基台の下方に配置された下側基台と、上記上側基台と上記下側基台とに接続されると共に上記上側基台と上記下側基台との離間距離を調節する離間距離調節部とを備えるという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記モータの回転数を変更可能とするモータ制御部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ブラシを泡の堆積層に入れ、この状態でモータによってブラシを回転させることによって、泡を剪断して消失あるいは微細化することができる。このため、本発明によれば、液体を貯留するタンクにて泡の堆積を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における消泡装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態における消泡装置が備えるブラシの拡大図である。
図3】本発明の一実施形態における消泡装置を加工液タンクに設置した状態を示す模式図であり、(a)が動作前の様子を示し、(b)が動作中の様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る消泡装置の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の消泡装置1の概略構成を模式的に示す側面図である。本実施形態の消泡装置1は、加工液タンクT(図3参照)に貯留された加工液の液面上に堆積した泡の増加を抑制するものであり、図1に示すように、基台ユニット2と、モータ3と、カップリング4と、ブラシ5と、収容ケース6と、モータコントローラ7(モータ制御部)とを備えている。
【0018】
基台ユニット2は、モータ3、カップリング4、ブラシ5、収容ケース6及びモータコントローラ7を直接的あるいは間接的に支持しており、上側パネル2a(上側基台)と、下側パネル2b(下側基台)と、昇降機構2c(離間距離調節部)とを備えている。
【0019】
上側パネル2aは、モータ3を下方から直接的に支持する板状の支持台である。この上側パネル2aは、中央部に上下に貫通する貫通孔2a1を備えている。この貫通孔2a1は、モータ3の後述するシャフト3b及びカップリング4が配置されている。また、上側パネル2aの四隅には、昇降機構2cの後述するスタッドボルト2c1が挿通される挿通孔2a2が設けられている。これらの挿通孔2a2は、上側パネル2aを上方方向に貫通して設けられている。
【0020】
下側パネル2bは、上側パネル2aの下方に配置されており、上側パネル2aに対して上方方向に離間された状態で対向配置された板状の支持台である。この下側パネル2bは、例えば、加工液タンクT(図3参照)の蓋部に載置され、昇降機構2cを介して、上側パネル2a等を支持している。この下側パネル2bは、中央部に上下に貫通する貫通孔2b1を備えている。この貫通孔2b1は、上方から見て、上側パネル2aの貫通孔2a1に重なるように配置されている。この貫通孔2b1には、ブラシ5の後述する軸部5aが上下方向に挿通されている。また、下側パネル2bの四隅には、昇降機構2cのスタッドボルト2c1の先端部(下端部)が固定されている。つまり、下側パネル2bは、スタッドボルト2c1の先端部に接続されている。
【0021】
昇降機構2cは、スタッドボルト2c1と、皿ナット2c2と、蝶ナット2c3とを備えている。なお、本実施形態において昇降機構2cは、4つのスタッドボルト2c1を備えている。また、各々のスタッドボルト2c1に対して1つずつ皿ナット2c2及び蝶ナット2c3が設けられている。つまり、本実施形態において昇降機構2cは、スタッドボルト2c1と皿ナット2c2と蝶ナット2c3とからなるユニットを4つ備えている。
【0022】
スタッドボルト2c1は、上述のように下端が下側パネル2bに固定された状態で軸心が鉛直方向に沿うように下側パネル2bから上方に延伸されている。各々のスタッドボルト2c1は、先端が上側パネル2aの上方に位置するように上側パネル2aの挿通孔2a2に挿通されている。皿ナット2c2は、スタッドボルト2c1に対して回転可能に螺合されており、図1に示すように、上側パネル2aの下方に配置されている。蝶ナット2c3は、スタッドボルト2c1に対して回転可能に螺合されており、図1に示すように、上側パネル2aの上方に配置されている。これらの皿ナット2c2及び蝶ナット2c3は、スタッドボルト2c1に対して回転させることによって、スタッドボルト2c1の軸心に沿った方向(すなわち上下方向)に移動される。このような皿ナット2c2と蝶ナット2c3によって上側パネル2aを上下方向から挟み込むことによって、上側パネル2aのスタッドボルト2c1に対する位置が固定され、さらには上側パネル2aと下側パネル2bとの上下方向の離間距離が固定される。
【0023】
このような昇降機構2cは、皿ナット2c2及び蝶ナット2c3のスタッドボルト2c1に対する位置を移動させることによって、上側パネル2aと下側パネル2bとの離間距離を変更することが可能となっている。つまり、本実施形態において昇降機構2cは、上側パネル2aと下側パネル2bとに接続されており、これらの上側パネル2aと下側パネル2bとの離間距離を調節可能としている。
【0024】
モータ3は、不図示のステータコアやロータリコアを有するモータ本体部3aと、モータ本体部3aによって生成された回転動力を外部に出力するためのシャフト3bとを備えている。このモータ3は、外部電源からの電力供給によって回転動力を生成して出力する。このようなモータ3は、モータ本体部3aが上側パネル2aの上面に載置された状態で、上側パネル2aに固定されている。また、モータ3は、シャフト3bがモータ本体部3aから下方に向けて突出される姿勢にて、上側パネル2aに固定されている。
【0025】
カップリング4は、シャフト3bの先端(下端)に固定されており、シャフト3bとブラシ5とを接続している。このカップリング4は、モータ本体部3aに対して上下方向に一定の隙間を空けて配置されている。このため、シャフト3bが回転される場合にカップリング4がモータ本体部3aに対して摺動して回転抵抗が増加することを防止することができる。
【0026】
ブラシ5は、図1に示すように、モータ3に接続されると共に先端を下方に向けた状態で基台ユニット2の下方まで延出されている。図2は、ブラシ5の拡大図である。この図に示すように、ブラシ5は、軸部5aと、複数の毛材5bとを備えている。
【0027】
軸部5aは、軸心が鉛直方向に沿うように配置された棒状部材である。この軸部5aは、最上部の根本部がカップリング4を介してモータ3のシャフト3bと接続されている。つまり、軸部5aは、先端部が下方に向けられた状態で根本部がカップリング4に固定されている。毛材5bは、軸部5aから軸部5aの径方向(水平方向)に沿って突出されている。これらの毛材5bは、金属等で形成された可撓性を有する直線状の線材からなる。また、毛材5bは、図1に示すように、軸部5aの先端部から下側パネル2bに到達しない一定の高さ位置の範囲に亘って設けられている。このようなブラシ5は、モータ3のシャフト3bが回転されることによって、軸部5aを中心として毛材5bが軸部5aの周方向に移動される。
【0028】
また、図2に示すように、軸部5aの毛材5bが設けられた範囲にて最も上方の領域を根本部側領域R1とし、最も下方の領域を先端部側領域R2とし、根本部側領域R1と先端部側領域R2とに上下方向に挟まれた領域を中央領域R3とする。この場合に、先端部側領域R2に配置された毛材5bの長さ寸法と、根本部側領域R1に配置された毛材5bの長さ寸法とよりも、中央領域R3に配置された毛材5bの長さ寸法が短くされている。つまり、本実施形態においては、軸部5aの軸心方向にて、上部と下部の領域に配置された毛材5bよりも、中央部の領域に配置された毛材5bの長さ寸法が短くされている。
【0029】
さらに、図2の仮想線で示すように、複数の毛材5bは、軸部5aを中心として螺旋状に配列されている。本実施形態においては、図2の矢印に示すように、平面視にてブラシ5が軸部5aを中心として右回りに回転される。また、複数の毛材5bは、ブラシ5が上記のように右回りに回転されることで、毛材5bに当たる泡を下方に向けて移動させるように配列されている。つまり、複数の毛材5bは、ブラシ5が回転されることで泡を下方に向けて移動可能な方向に巻かれた螺旋状に配列されている。より具体的には、本実施形態において複数の毛材5bは、平面視にて右回りに軸部5aを中心とする周方向に進行するに連れて、軸部5aの先端(下端)側に設けられるように配置されることで螺旋状とされている。
【0030】
なお、図2においては、1本ずつの毛材5bが螺旋状に配列された様子を示している。しかしながら、このような構造に限定されるものではなく、毛材5bを螺旋状に配列するとは、例えば毛材5bの束を螺旋状に配列するような場合も含む。
【0031】
図1に戻り、収容ケース6は、上側パネル2aの上面に固定されており、モータ3を内部に収容している。この収容ケース6は、内部に収容されたモータ3を保護する。モータコントローラ7は、収容ケース6に固定されており、モータ3に対して電気的に接続されている。このモータコントローラ7は、例えばインバータやインバータを駆動する駆動回路を有しており、モータ3の回転数を変更可能としている。
【0032】
図3は、本実施形態の消泡装置1を加工液タンクTに設置した状態を示す模式図であり、(a)が動作前の様子を示し、(b)が動作中の様子を示している。本実施形態の消泡装置1を用いて加工液タンクTの内部を泡の堆積を抑える場合には、図3(a)に示すように、まず基台ユニット2の下側パネル2bを開口T1が設けられた加工液タンクTの蓋に載置する。ここでは、ブラシ5が開口T1を介して加工液タンクTの内部に挿入されるように本実施形態の消泡装置1を加工液タンクTの蓋に載置する。
【0033】
続いて、ブラシ5の高さ位置を調整する。ブラシ5を上昇させる場合には、基台ユニット2の蝶ナット2c3を対となっている皿ナット2c2から遠ざけるように回転させる。つまり、蝶ナット2c3が上方に移動されるように、蝶ナット2c3をスタッドボルト2c1に対して回動させる。その後、皿ナット2c2が上方に移動されるように皿ナット2c2をスタッドボルト2c1に対して回動させる。これによって、皿ナット2c2によって下方から支えられた上側パネル2aが上方に移動され、上側パネル2aに支持されたモータ3及びブラシ5が上方に移動される。最後に、蝶ナット2c3を皿ナット2c2に近づけるように回転させて、蝶ナット2c3及び皿ナット2c2で上側パネル2aを挟持することで上側パネル2aを固定する。
【0034】
また、ブラシ5を下降させる場合には、基台ユニット2の皿ナット2c2が下方に移動されるように皿ナット2c2をスタッドボルト2c1に対して回動させる。これによって、皿ナット2c2によって下方から支えられた上側パネル2aが下方に移動され、上側パネル2aに支持されたモータ3及びブラシ5が下方に移動される。最後に、蝶ナット2c3を皿ナット2c2に近づけるように回転させて、蝶ナット2c3及び皿ナット2c2で上側パネル2aを挟持することで上側パネル2aを固定する。
【0035】
なお、図3(a)に示すように、本実施形態においては、ブラシ5の先端部が加工液Xに浸かるようにブラシ5の高さ位置を調節する。より詳細には、加工液Xの加工位置に対する供給が開始されると、図3(b)に示すように加工液タンクTの内部の加工液Xの液面が下がるため、下がった液面に対してブラシ5の先端位置が僅かに上に位置されるようにブラシ5の高さ位置を調節する。
【0036】
加工位置に対して加工液Xの供給が開始されると、図3(b)に示すように加工液Xの液面が下がると共に、加工液Xの循環によって加工液Xの液面上に泡が堆積する。ここで、本実施形態の消泡装置1を動作させることでブラシ5を回転させる。このようにブラシ5が回転されると、ブラシ5の毛材5bが軸部5aを中心とする周方向に沿って回転され、接触した泡を剪断する。この結果、泡が消失あるいは微細化され、加工液Xの液面上における泡の堆積量が増加することが抑止される。
【0037】
以上のような本実施形態の消泡装置1は、基台ユニット2と、基台ユニット2に支持されたモータ3と、モータ3に接続されると共に先端を下方に向けた状態で基台ユニット2の下方に延出されたブラシ5とを備えている。このような本実施形態の消泡装置1によれば、ブラシ5を泡の堆積層に入れ、この状態でモータ3によってブラシ5を回転させることによって、泡を剪断して消失あるいは微細化することができる。このため、本実施形態の消泡装置1によれば、加工液Xを貯留する加工液タンクTにて泡の堆積を抑制することが可能となる。
【0038】
また、ブラシ5を回転させることによって、ブラシ5の周囲の泡がブラシ5の回転に伴って巻回し、加工液Xの表層に上方から見てブラシ5を中心とする渦流が形成される。このため、泡が渦流の中心すなわちブラシ5に引き込まれることとなり、多くの泡を効率的に剪断することが可能となる。
【0039】
さらに、加工液Xに対して消泡剤が含まれている場合もある。一般的に消泡剤による消泡効果は、加工液Xに流れが形成されることによって高まる。本実施形態の消泡装置1においては、上述のように加工液Xの表層に渦流を形成するため、消泡剤の消泡効果を高めることができる。なお、本実施形態の消泡装置1においては、上述のように、泡をブラシ5周りに回転させることで加工液Xを流すことができる。このため、ブラシ5を直接的に加工液Xに浸漬させなくても加工液Xに流れを形成することができる。したがって、ブラシ5が加工液Xを攪拌して新たな泡を生じさせることを抑制しながら、消泡剤の消泡効果を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態の消泡装置1においては、ブラシ5が、モータ3側を根本部とされた軸部5aと、軸部5aから軸部5aの径方向に沿って突出された複数の毛材5bとを備えている。このような本実施形態の消泡装置1によれば、簡易な構造のブラシ5によって泡を剪断することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の消泡装置1においては、軸部5aの先端部側領域R2に配置された毛材5bの長さ寸法と、軸部5aの根本部側領域R1に配置された毛材5bの長さ寸法とよりも、先端部側領域R2と根本部側領域R1との間に位置する中央領域R3に配置された毛材5bの長さ寸法が短い。このため、中央領域R3にてブラシ5の中心(軸部5a)寄りまで泡を取り込み、この取り込んだ泡を逃がすことなく、先端部側領域R2と根本部側領域R1とに配置された長い毛材5bで上下方向の両側から剪断することができる。したがって、本実施形態の消泡装置1によれば、より効率的に泡の堆積量が増加することを防止できる。
【0042】
また、本実施形態の消泡装置1においては、複数の毛材5bが、軸部5aを中心とする螺旋状に配列されている。このため、軸部5aの軸心方向に毛材5bを分散して配置することができ、ブラシ5の中心寄りに周囲の泡をより取り込みやすくなる。
【0043】
さらに、本実施形態の消泡装置1においては、複数の毛材5bが、ブラシ5が回転されることで泡を下方に向けて移動可能な方向に巻かれた螺旋状に配列されている。このため、ブラシ5が回転することで泡に対して下方に向かう力が作用し、泡が加工液タンクTから溢れることをより確実に防止することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の消泡装置1においては、基台ユニット2が、モータ3が固定された上側パネル2aと、上側パネル2aの下方に配置された下側パネル2bと、上側パネル2aと下側パネル2bとに接続されると共に上側パネル2aと下側パネル2bとの離間距離を調節する昇降機構2cとを備えている。このため、本実施形態によれば、加工液Xの液面に合わせてブラシ5の高さ位置を容易に変更することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の消泡装置1においては、モータ3の回転数を変更可能とするモータコントローラ7を備えている。泡の発生状態は、加工液Xの温度や循環流量等の多くのパラメータによって変化する。このため、泡の堆積を抑止する最適なブラシ5の回転数は、加工液タンクTが設置される現場ごとに変化する。これに対して、本実施形態の消泡装置1によれば、モータコントローラ7によってモータ3の回転数を変化させ、ブラシ5の回転数を変化させることができる。よって、本実施形態の消泡装置1によれば、ブラシ5の回転数を泡の堆積を抑止する最適な値に調節することが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、本発明の消泡装置によって加工液タンクT内部の泡の堆積を抑止する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、加工液Xと異なる液体を貯留するタンクにて液面上に泡が堆積することを防止するための消泡装置として用いることが可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、ブラシ5が軸部5aと軸部5aから径方向に伸びる複数の毛材5bとを有している構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレート状の基部に対して毛材が設けられたブラシ等の異なる形状のブラシを用いることも可能である。
【0049】
また、上記実施形態においては、ブラシ5を1つのみ備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ブラシ5を複数備える構成を採用することも可能である。
【0050】
また、上記実施形態においては、基台ユニット2がブラシ5の高さ位置を調節可能な構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ブラシ5の高さ位置が固定された構成を採用することも可能である。このような場合には、例えば基台ユニット2を上側パネル2aのみで構成することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1……消泡装置、2……基台ユニット、2a……上側パネル(上側基台)、2a1……貫通孔、2a2……挿通孔、2b……下側パネル(下側基台)、2b1……貫通孔、2c……昇降機構(離間距離調節部)、2c1……スタッドボルト、2c2……皿ナット、2c3……蝶ナット、3……モータ、3a……モータ本体部、3b……シャフト、4……カップリング、5……ブラシ、5a……軸部、5b……毛材、6……収容ケース、7……モータコントローラ(モータ制御部)、R1……根本部側領域、R2……先端部側領域、R3……中央領域、T……加工液タンク、T1……開口、X……加工液
図1
図2
図3